説明

放射線検出装置

【課題】光検出部の検出信号やノイズ等に基づく不感時間を短縮させ、誤った識別情報の出力を減少させる放射線検出装置を提供する。
【解決手段】放射線検出装置1は、放射線11を透過する遮光部2と、多重発光特性を有する発光部3と、光を集光する集光部4と、光を検出信号に変換する光検出部5とを備えている。光検出部5には、検出信号の波高が第1閾値を超えた場合にトリガ信号を出力する第1ディスクリミネータ7と、検出信号の波高が第2閾値を超えた場合に計数信号を出力する第2ディスクリミネータ8とが接続されている。第1ディスクリミネータ7には、トリガ信号を受けてゲート発生信号を出力するゲート発生部9が接続されている。ゲート発生部9および第2ディスクリミネータ8には、一定時間幅における計数信号の数を計測し、この計数信号の数に基づいて識別情報を出力する計数部10が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば原子力発電所等の放射性物質を取り扱う施設で用いられる放射線検出装置に係り、とりわけ多重発光特性を有する発光部を用いて放射線を監視する放射線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、多重発光特性を有するシンチレータ等の発光部を備えた放射線検出装置が知られている。ここで、シンチレータ等の発光部は、一つの放射線入射事象に対応して即時に第1の光パルスを放出し、その後、第1の光パルスから時間遅れを伴う遅発発光として複数個の光パルスを放出する性質(多重発光特性)を有する。また、この遅発発光として放出された光パルスの発生確率あるいは発生頻度は、入射放射線のエネルギー、線種、比エネルギー損失等により異なる。
【0003】
また、多重発光特性を有する発光部は、発光部への一つの放射線入射事象に対して複数の光パルスを放出するが、これら複数の光パルスの信号幅は互いに略同一となる性質を有している。しかしながら、これら複数の光パルスの光量は互いに異なっており、最初の発光による光パルスの光量が最も多く、2回目以降の発光による光パルスの光量は、後になるほど少なくなる傾向がある。
【0004】
従来の放射線検出装置として、例えば特許文献1に示す線種弁別型放射線検出装置が開示されている。
この線種弁別型放射線検出装置は、放射線照射により発光するシンチレータと、このシンチレータの発光を用いて放射線の線種弁別を行う弁別手段とを備えている。このうちシンチレータは、上述した多重発光特性を有している。一方、前記弁別手段は弁別機能を有しており、この弁別機能とは、第1の光パルスと第2の光パルスの発生確率あるいは頻度を測定することで、シンチレータに入射した放射線の線種、エネルギー、比エネルギー損失等の区別を行ないながら放射線の測定を行なう機能である。
【0005】
また特許文献2には、αβ検出器および同検出器を用いたαβ検出装置が開示されている。これは、α線およびβ線のいずれも最大限の感度を確保しながら、独立して、かつ同時にα線およびβ線を検出することができるαβ検出器である。
【0006】
ここで、従来の放射線検出装置の一例を図3に示す。ここで、図3は、従来の放射線検出装置を示す構成図である。
以下、図3を用いて、従来の放射線検出装置の概略を説明する。
【0007】
図3において、放射線検出装置30は、前方から入射する放射線11を透過するとともに、前方からの光の入射を阻止する遮光部2と、遮光部2の後方に設けられた発光部3と、発光部3の後方に設けられた集光部4と、集光部4の後方に設けられた光検出部5とを備えている。このうち、発光部3は、遮光部2を通過して入射した一つの放射線入射事象に対して複数回発光する多重発光特性を有する。また、光検出部5にはディスクリミネータ31が接続されており、ディスクリミネータ31にはゲート発生部32が接続されている。さらに、ゲート発生部32には計数部33が接続されている。
【0008】
図3において、遮光部2を通過して発光部3に放射線11が入射すると、発光部3は、一つの放射線入射事象に対して複数回の光を発光する。集光部4は、発光部3で発光した光を集光する。次に、集光部4で集光された光は光検出部5で検出され、光検出部5は、この検出した光を検出信号に変換する。すなわち、遮光部2への一つの放射線入射事象に対し、光検出部5は複数回の検出信号を出力することになる。
【0009】
ディスクリミネータ31は、光検出部5からの検出信号の波高値が所定の閾値を超えた場合にパルス信号を出力する。次に、ゲート発生部32は、ディスクリミネータ31からの1回目のパルス信号を受けて、ゲート発生信号を出力する。その後、計数部33は、ゲート発生部32からゲート発生信号が出力された後の一定時間幅における、ディスクリミネータ31からの2回目以降のパルス信号の数を計測する。このようにして計数部33は、ディスクリミネータ31からのパルス信号の数が一定数に達した場合と一定数に達しない場合とで、それぞれ異なる識別情報を出力する。
【特許文献1】特開2001−42043号公報
【特許文献2】特開2000−193749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した従来の放射線検出装置30は、ディスクリミネータ31には1つの閾値のみしか設定されていない。このため、ゲート発生部32に、例えばノイズや2回目以降のパルス信号等、1回目のパルス信号以外のパルス信号が入力した場合にもゲート発生部32がゲート発生信号を誤って出力する場合がある。
【0011】
このように、ゲート発生部32から誤ってゲート発生信号が出力された後、一定時間(以下、不感時間と称する)正しい測定が行えないという問題が生じている。また、計数部33がディスクリミネータ31からのパルス信号の数を誤って計測することにより、計数部33が誤った識別情報を出力するという問題も生じている。
【0012】
すなわち、上述のように、発光部3は、発光部3への一つの放射線入射事象に対して複数回の光パルスを生じさせる。一方、これに対応して光検出部5で変換される複数回の検出信号(パルス信号)の波高値は、概ね後のものほど小さくなるという性質を有する。このため、ディスクリミネータ31の閾値を比較的高く設定した場合、光検出部5からの2回目以降のパルス信号の波高値が閾値を下回って計数部33に入力されず、これにより、計数部33がパルス信号の数を少なめに計測して誤った識別情報を出力するおそれがある。
【0013】
一方、ディスクリミネータ31の閾値を比較的低く設定した場合、ゲート発生信号が出力された後の前記一定時間を経過した後の2回目以降のパルス信号の波高値やノイズによるパルス信号の波高値が、閾値を上回って計数部33に入力される。これにより、このような2回目以降のパルス信号やノイズを、ゲート発生部32が1回目のパルス信号であると誤認してゲート発生信号を出力するおそれがある。
【0014】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、2回目以降の光検出部の検出信号やノイズに基づく不感時間を短縮させることができ、また、放射線検出装置の計数部が誤った識別情報を出力することを減少させることができる放射線検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、前方から入射する放射線を透過するとともに、前方からの光の入射を阻止する遮光部と、遮光部の後方に設けられ、遮光部を通過して入射した一つの放射線入射事象に対して複数回発光する多重発光特性を有する発光部と、発光部の後方に設けられ、発光部からの光を集光する集光部と、集光部の後方に設けられ、集光部で集光された光を検出するとともに、検出した光を検出信号に変換する光検出部と、光検出部に接続され、光検出部からの検出信号の波高値が第1閾値を超えた場合にトリガ信号を出力する第1ディスクリミネータと、第1ディスクリミネータに接続され、第1ディスクリミネータからのトリガ信号を受けて、一定時間幅のゲート発生信号を出力するゲート発生部と、光検出部に接続され、光検出部からの検出信号の波高値が第1閾値より小さな第2閾値を超えた場合に計数信号を出力する第2ディスクリミネータと、ゲート発生部および第2ディスクリミネータに接続され、ゲート発生部からゲート発生信号が出力されている一定時間幅における第2ディスクリミネータからの計数信号の数を計測し、第2ディスクリミネータからの計数信号の数が一定数に達した場合と一定数に達しない場合とで、それぞれ異なる識別情報を出力する計数部と、を備えたことを特徴とする放射線検出装置である。
【0016】
本発明は、ゲート発生部は、自らがゲート発生信号を出力していない場合に、第1ディスクリミネータからのトリガ信号を受けて、一定時間幅のゲート発生信号を出力することを特徴とする放射線検出装置である。
【0017】
本発明は、ゲート発生部は、自らがゲート発生信号を出力している間に第1ディスクリミネータからのトリガ信号を受けた場合、再度一定時間幅のゲート発生信号を出力し、計数部は、ゲート発生部からの再度のゲート発生信号を受けた場合、計数信号の数をリセットし、ゲート発生部から再度のゲート発生信号が出力された後の、再度のゲート発生信号の一定時間内における第2ディスクリミネータからの計数信号の数を再計測し、第2ディスクリミネータからの計数信号の数が一定数に達した場合と一定数に達しない場合とで、それぞれ異なる識別情報を出力することを特徴とする放射線検出装置である。
【0018】
本発明は、前方から入射する放射線を透過するとともに、前方からの光の入射を阻止する遮光部と、
遮光部の後方に設けられ、遮光部を通過して入射した一つの放射線入射事象に対して複数回発光する多重発光特性を有する発光部と、発光部の後方に設けられ、発光部からの光を集光する集光部と、集光部の後方に設けられ、集光部で集光された光を検出するとともに、検出した光を検出信号に変換する光検出部と、光検出部に接続され、光検出部からの検出信号の波高値が第1閾値を超えた場合にトリガ信号を出力するとともに、トリガ信号を出力した後であって、光検出部からの検出信号の波高値が第1閾値より小さな第2閾値を超えた場合に計数信号を出力するディスクリミネータと、ディスクリミネータに接続され、ディスクリミネータからのトリガ信号を受けて、トリガ信号を受けてから一定時間内における、ディスクリミネータからの計数信号の数を計測し、ディスクリミネータからの計数信号の数が一定数に達した場合と一定数に達しない場合とで、それぞれ異なる識別情報を出力する計数部と、を備えたことを特徴とする放射線検出装置である。
【0019】
本発明は、計数部は、自らがディスクリミネータからの計数信号の数を計測している間にディスクリミネータから再度のトリガ信号を受けた場合、計数信号の数をリセットし、ディスクリミネータからの再度のトリガ信号の一定時間内におけるディスクリミネータからの計数信号の数を再計測し、ディスクリミネータからの計数信号の数が一定数に達した場合と一定数に達しない場合とで、それぞれ異なる識別情報を出力することを特徴とする放射線検出装置である。
【0020】
本発明は、ディスクリミネータに接続された可変機構をさらに備え、ディスクリミネータの第1閾値および第2閾値は、可変機構を介して設定されることを特徴とする放射線検出装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、検出信号の波高値が第1閾値を超えたときに第1ディスクリミネータからトリガ信号を出力し、かつ第1閾値より小さな第2閾値を超えたとき第2ディスクリミネータから計数信号を出力する。あるいは検出信号の波高値が第1閾値を超えたときにディスクリミネータからトリガ信号を出力し、かつ第1閾値より小さな第2閾値を超えたときディスクリミネータから計数信号を出力する。このため、光検出部の検出信号やノイズ等に基づく不感時間を短縮することができる。
【0022】
また、本発明によれば、放射線検出装置の計数部が誤った識別情報を出力することを減少させることができる。
【0023】
さらに、本発明によれば、計数部は、ゲート発生部からの再度のゲート発生信号を受けた場合、計数信号の数をリセットする。あるいは、計数部は、自らがディスクリミネータからの計数信号の数を計測している間にディスクリミネータから再度のトリガ信号を受けた場合、計数信号の数をリセットする。このため、複数の放射線入射事象が重複し、複数の放射線入射事象に基づく2回目以降の光検出部の検出信号が重なった際、この重なった検出信号に起因してゲート発生部がゲート発生信号を出力することを減少させることができる。
【0024】
さらにまた、本発明によれば、ディスクリミネータに接続された可変機構により、ディスクリミネータの第1閾値および第2閾値を容易に変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
第1の実施の形態
以下、本発明の第1の実施の形態について、図1を参照して説明する。
ここで、図1は、本発明の第1の実施の形態を示す構成図である。
【0026】
まず、図1により本発明による放射線検出装置の概略について説明する。
図1に示すように、放射線検出装置1は、前方から入射する放射線11を透過するとともに、前方からの光の入射を阻止する遮光部2と、遮光部2の後方に設けられた発光部3と、発光部3の後方に設けられた集光部4と、集光部4の後方に設けられた光検出部5とを備えている。このうち、発光部3は、遮光部2を通過して入射した一つの放射線入射事象に対して複数回発光する多重発光特性を有する。また、遮光部2の後面には外光を遮断するためのケース6が設けられており、発光部3、集光部4および光検出部5の一部は、ケース6内に配置されている。
【0027】
また、光検出部5には第1ディスクリミネータ7および第2ディスクリミネータ8が接続されており、第1ディスクリミネータ7にはゲート発生部9が接続されている。さらに、計数部10は、第2ディスクリミネータ8およびゲート発生部9に接続されている。このうち第1ディスクリミネータ7は、光検出部5からの検出信号の波高値が第1閾値を超えた場合にトリガ信号を出力する。また、第2ディスクリミネータ8は、光検出部5からの検出信号の波高値が第1閾値より小さな第2閾値を超えた場合に計数信号を出力する。
【0028】
また発光部3は、上述のように多重発光特性を有するシンチレータからなるのが好ましい。このような多重発光特性を有するシンチレータの具体例としては、酸硫化ガドリニウム(GdS)(以下、GOSと記す)や酸硫化イットリウム(YS)(以下、YOSと記す)を母材とするシンチレータが挙げられる。とりわけ、ユーロピウム(Eu)やテルビウム(Tb)で活性化したYOS:Eu、GOS:Eu、YOS:Tb、GOS:Tbが顕著な多重発光特性を示す。
【0029】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。
まず、放射線11が遮光部2を通過して発光部3に入射すると、多重発光特性を有する発光部3は、一つの放射線入射事象に対して複数回の光を発光する。次に、集光部4は、発光部3で発光した光を集光する。その後、集光部4で集光された光は光検出部5で検出され、光検出部5は、この検出した光を検出信号に変換する。すなわち、遮光部2への一つの放射線入射事象に対し、光検出部5は複数の検出信号を出力することになる。なお、光検出部5は発光部3に入射する光の光量に対応する波高値を有する検出信号を生成する。
【0030】
次に、第1ディスクリミネータ7は、光検出部5からの検出信号の波高値が予め設定された第1閾値を超えた場合にトリガ信号を出力する。その後、ゲート発生部9は、第1ディスクリミネータ7からのトリガ信号を受けて、一定時間幅のゲート発生信号を出力する。一方、第2ディスクリミネータ8は、光検出部5からの検出信号の波高値が予め設定された第1閾値より小さな第2閾値を超えた場合に計数信号を出力する。次に、計数部10は、ゲート発生部9から一定時間幅のゲート発生信号が出力されている間における、第2ディスクリミネータ8からの計数信号の数を計測する。その後、計数部10は、第2ディスクリミネータ8からの計数信号の数が一定数に達した場合と一定数に達しない場合とで、それぞれ異なる識別情報を出力する。
【0031】
なお、この計数部10が出力する識別情報は放射線の線種に関する情報を含んでいる。例えば、計数部10は、第2ディスクリミネータ8からの計数信号の数が一定数に達した場合、遮光部2に入射した放射線11がα線であると判断する。一方、第2ディスクリミネータ8からの計数信号の数が一定数に達しなかった場合、遮光部2に入射した放射線11がα線以外の放射線、例えばβ線であると判断する。
【0032】
すなわち、発光部3は一つの放射線入射事象に対して複数回発光し、これに対応して光検出部5が複数の検出信号を出力する。第1ディスクリミネータ7は、この複数の検出信号のうち1回目の検出信号に基づいてトリガ信号を発生させるようになっている。一方、第2ディスクリミネータ8は、複数の検出信号のうち2回目以降の検出信号をそれぞれ検知して、その都度計数信号を発生させるようになっている。
【0033】
ところで、光検出部5から複数回出力される検出信号のうち、1回目の検出信号の波高値が最も高く、2回目以降の検出信号の波高値は、後になるほど低くなる傾向がある。したがって、第1ディスクリミネータ7に設定される第1閾値は、第2ディスクリミネータ8に設定される第2閾値より高くなっている。また、第1閾値は、光検出部5から出力される1回目の検出信号の波高値を下回る値とし、かつ、光検出部5から出力される2回目以降の検出信号の波高値を上回る値とするのが好ましい。
【0034】
なお、本実施の形態において、ゲート発生部9は、前記一定時間幅が経過したことを計測する機能を有しており、この一定時間が経過するまでゲート発生信号を出力し続けるようになっている。一方、計数部10が前記一定時間幅が経過したことを計測する機能を有していても良い。この場合、ゲート発生部9は、第1ディスクリミネータ7からのトリガ信号を受けてゲート発生信号を微少時間出力し、このゲート発生信号を受けて、計数部10が、一定時間幅内における第2ディスクリミネータ8からの計数信号数を計測しても良い。
【0035】
ところで、ゲート発生部9は、自らがゲート発生信号を出力していない場合に、第1ディスクリミネータ7からのトリガ信号を受けて、一定時間幅のゲート発生信号を出力するようになっている。
【0036】
また、ゲート発生部9は、自らがゲート発生信号を出力している間に第1ディスクリミネータ7からのトリガ信号を受けた場合、再度一定時間幅のゲート発生信号を出力するようになっている。また計数部10は、ゲート発生部9からの再度のゲート発生信号を受けた場合、計数信号の数をリセットする。その後、計数部10は、ゲート発生部9から再度のゲート発生信号が出力された後の、再度のゲート発生信号の一定時間内における第2ディスクリミネータ8からの計数信号の数を再計測する。この結果、計数部10は、第2ディスクリミネータ8からの計数信号の数が一定数に達した場合と一定数に達しない場合とで、それぞれ異なる識別情報を出力するようになっている。
【0037】
このように、本実施の形態によれば、検出信号の波高値が第1閾値を超えたときに第1ディスクリミネータ7からトリガ信号を出力し、かつ第1閾値より小さな第2閾値を超えたとき第2ディスクリミネータ8から計数信号を出力する。このため、光検出部5の検出信号やノイズ等に基づく不感時間を短縮することができる。
【0038】
また、本実施の形態によれば、放射線検出装置1の計数部10が誤った識別情報を出力することを減少させることができる。
【0039】
さらに、本実施の形態によれば、計数部10は、ゲート発生部9からの再度のゲート発生信号を受けた場合、計数信号の数をリセットする。このため、複数の放射線入射事象が重複し、複数の放射線入射事象に基づく2回目以降の光検出部5の検出信号が重なった際、この重なった検出信号に起因してゲート発生部9がゲート発生信号を出力することを減少させることができる。
【0040】
第2の実施の形態
次に、本発明による放射線検出装置の第2の実施の形態について図2を参照して説明する。
ここで、図2は、本発明の第2の実施の形態を示す構成図である。図2に示す第2の実施の形態は、ディスクリミネータおよび計数部の構成が異なるものであり、他の構成は上述した第1の実施の形態と略同一である。図2において、図1に示す第1の実施の形態と同一部分には同一の部号を付して詳細な説明は省略する。
【0041】
まず、図2により本発明による放射線検出装置の概略について説明する。
図2に示すように、放射線検出装置1は、前方から入射する放射線11を透過するとともに、前方からの光の入射を阻止する遮光部2と、遮光部2の後方に設けられた発光部3と、発光部3の後方に設けられた集光部4と、集光部4の後方に設けられた光検出部5とを備えている。このうち、発光部3は、遮光部2を通過して入射した一つの放射線入射事象に対して複数回発光する多重発光特性を有する。また、遮光部2の後面には外光を遮断するためのケース6が設けられており、発光部3、集光部4および光検出部5の一部は、ケース6内に配置されている。
【0042】
また、光検出部5にはディスクリミネータ21が接続されており、このディスクリミネータ21には計数部22および可変機構23が接続されている。このうち、ディスクリミネータ21は、光検出部5からの検出信号の波高値が第1閾値を超えた場合にトリガ信号を出力するとともに、トリガ信号を出力した後であって、光検出部5からの検出信号の波高値が第1閾値より小さな第2閾値を超えた場合に計数信号を出力する。また、可変機構23は、ディスクリミネータ21の第1閾値および第2閾値を設定する。
【0043】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。
まず、放射線11が遮光部2を通過して発光部3に入射すると、多重発光特性を有する発光部3は、一つの放射線入射事象に対して複数回の光を発光する。次に、集光部4は、発光部3で発光した光を集光する。その後、集光部4で集光された光は光検出部5で検出され、光検出部5は、この検出した光を検出信号に変換する。すなわち、遮光部2への一つの放射線入射事象に対し、光検出部5は複数の検出信号を出力することになる。
【0044】
次に、光検出部5からの複数の検出信号は、ディスクリミネータ21に入射する。ここで、ディスクリミネータ21には2つの閾値(第1閾値および第2閾値)が設定されており、ディスクリミネータ21の第1閾値および第2閾値は、可変機構23を介して設定され、かつ第1閾値は第2閾値より大きくなっている。このディスクリミネータ21は、光検出部5からの検出信号の波高が第1閾値を超えた場合にトリガ信号を出力するとともに、トリガ信号を出力した後であって、光検出部5からの検出信号の波高が第2閾値を超えた場合に計数信号を出力する。すなわち、ディスクリミネータ21は、光検出部5からの複数の検出信号のうち1回目の検出信号に基づいて1回トリガ信号を出力し、2回目以降の検出信号に基づいて複数回計数信号を出力する。
【0045】
次に、ディスクリミネータ21から出力されたトリガ信号および計数信号は計数部22に入力される。計数部22は、ディスクリミネータ21からのトリガ信号を受けて、トリガ信号を受けてから一定時間内における、ディスクリミネータ21からの計数信号の数を計測する。その後、計数部22は、ディスクリミネータ21からの計数信号の数が一定数に達した場合と一定数に達しない場合とで、それぞれ異なる識別情報を出力する。
【0046】
この計数部22が出力する識別情報は放射線の線種に関する情報を含んでいる。例えば、計数部22は、ディスクリミネータ21からの計数信号の数が一定数に達した場合、遮光部2に入射した放射線11がα線であると判断し、ディスクリミネータ21からの計数信号の数が一定数に達しなかった場合、遮光部2に入射した放射線11がα線以外、例えばβ線であると判断する。
【0047】
また、計数部22は、自らがディスクリミネータ21からの計数信号の数を計測している間にディスクリミネータ21から再度のトリガ信号を受けた場合、計数信号の数をリセットする。その後、ディスクリミネータ21からの再度のトリガ信号の一定時間内におけるディスクリミネータ21からの計数信号の数を再計測し、ディスクリミネータ21からの計数信号の数が一定数に達した場合と一定数に達しない場合とで、それぞれ異なる識別情報を出力するようになっている。
【0048】
このように、本実施の形態によれば、検出信号の波高値が第1閾値を超えたときにディスクリミネータ21からトリガ信号を出力し、かつ第1閾値より小さな第2閾値を超えたときディスクリミネータ21から計数信号を出力する。このため、光検出部5の検出信号やノイズ等に基づく不感時間を短縮することができる。
【0049】
また、本実施の形態によれば、放射線検出装置1の計数部22が誤った識別情報を出力することを減少させることができる。
【0050】
さらに、本実施の形態によれば、計数部22は、自らがディスクリミネータ21からの計数信号の数を計測している間にディスクリミネータ21から再度のトリガ信号を受けた場合、計数信号の数をリセットする。このため、複数の放射線入射事象が重複し、複数の放射線入射事象に基づく2回目以降の光検出部5の検出信号が重なった際、この重なった検出信号に基づく不感時間を短縮することができる。
【0051】
さらにまた、本実施の形態によれば、ディスクリミネータ21に接続された可変機構23により、ディスクリミネータ21の第1閾値および第2閾値を容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明による放射線検出装置の第1の実施の形態を示す構成図。
【図2】本発明による放射線検出装置の第2の実施の形態を示す構成図。
【図3】従来の放射線検出装置を示す構成図。
【符号の説明】
【0053】
1 放射線検出装置
2 遮光部
3 発光部
4 集光部
5 光検出部
6 ケース
7 第1ディスクリミネータ
8 第2ディスクリミネータ
9 ゲート発生部
10 計数部
11 放射線
21 ディスクリミネータ
22 計数部
23 可変機構
30 放射線検出装置
31 ディスクリミネータ
32 ゲート発生部
33 計数部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方から入射する放射線を透過するとともに、前方からの光の入射を阻止する遮光部と、
遮光部の後方に設けられ、遮光部を通過して入射した一つの放射線入射事象に対して複数回発光する多重発光特性を有する発光部と、
発光部の後方に設けられ、発光部からの光を集光する集光部と、
集光部の後方に設けられ、集光部で集光された光を検出するとともに、検出した光を検出信号に変換する光検出部と、
光検出部に接続され、光検出部からの検出信号の波高値が第1閾値を超えた場合にトリガ信号を出力する第1ディスクリミネータと、
第1ディスクリミネータに接続され、第1ディスクリミネータからのトリガ信号を受けて、一定時間幅のゲート発生信号を出力するゲート発生部と、
光検出部に接続され、光検出部からの検出信号の波高値が第1閾値より小さな第2閾値を超えた場合に計数信号を出力する第2ディスクリミネータと、
ゲート発生部および第2ディスクリミネータに接続され、ゲート発生部からゲート発生信号が出力されている一定時間幅における第2ディスクリミネータからの計数信号の数を計測し、第2ディスクリミネータからの計数信号の数が一定数に達した場合と一定数に達しない場合とで、それぞれ異なる識別情報を出力する計数部と、
を備えたことを特徴とする放射線検出装置。
【請求項2】
ゲート発生部は、自らがゲート発生信号を出力していない場合に、第1ディスクリミネータからのトリガ信号を受けて、一定時間幅のゲート発生信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の放射線検出装置。
【請求項3】
ゲート発生部は、自らがゲート発生信号を出力している間に第1ディスクリミネータからのトリガ信号を受けた場合、再度一定時間幅のゲート発生信号を出力し、
計数部は、ゲート発生部からの再度のゲート発生信号を受けた場合、計数信号の数をリセットし、ゲート発生部から再度のゲート発生信号が出力された後の、再度のゲート発生信号の一定時間内における第2ディスクリミネータからの計数信号の数を再計測し、第2ディスクリミネータからの計数信号の数が一定数に達した場合と一定数に達しない場合とで、それぞれ異なる識別情報を出力することを特徴とする請求項2に記載の放射線検出装置。
【請求項4】
前方から入射する放射線を透過するとともに、前方からの光の入射を阻止する遮光部と、
遮光部の後方に設けられ、遮光部を通過して入射した一つの放射線入射事象に対して複数回発光する多重発光特性を有する発光部と、
発光部の後方に設けられ、発光部からの光を集光する集光部と、
集光部の後方に設けられ、集光部で集光された光を検出するとともに、検出した光を検出信号に変換する光検出部と、
光検出部に接続され、光検出部からの検出信号の波高値が第1閾値を超えた場合にトリガ信号を出力するとともに、トリガ信号を出力した後であって、光検出部からの検出信号の波高値が第1閾値より小さな第2閾値を超えた場合に計数信号を出力するディスクリミネータと、
ディスクリミネータに接続され、ディスクリミネータからのトリガ信号を受けて、トリガ信号を受けてから一定時間内における、ディスクリミネータからの計数信号の数を計測し、ディスクリミネータからの計数信号の数が一定数に達した場合と一定数に達しない場合とで、それぞれ異なる識別情報を出力する計数部と、
を備えたことを特徴とする放射線検出装置。
【請求項5】
計数部は、自らがディスクリミネータからの計数信号の数を計測している間にディスクリミネータから再度のトリガ信号を受けた場合、計数信号の数をリセットし、ディスクリミネータからの再度のトリガ信号の一定時間内におけるディスクリミネータからの計数信号の数を再計測し、ディスクリミネータからの計数信号の数が一定数に達した場合と一定数に達しない場合とで、それぞれ異なる識別情報を出力することを特徴とする請求項4に記載の放射線検出装置。
【請求項6】
ディスクリミネータに接続された可変機構をさらに備え、
ディスクリミネータの第1閾値および第2閾値は、可変機構を介して設定されることを特徴とする請求項4または5に記載の放射線検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−285711(P2007−285711A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−109767(P2006−109767)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】