説明

放射線検出装置

【課題】X線検出パネルの誘導電荷の発生を抑制し、外部電波の影響を受けることをなくし、ノイズや画像ムラの少ない放射線検出装置を提供する。
【解決手段】
X線検出パネル10と、X線検出パネル10を支持する導電性の支持部材25と、X線検出パネル10を駆動する回路基板群24と、X線検出パネル10と回路基板群24とを電気的に接続するフレキシブル回路部材と、X線検出パネル10、回路基板群24、支持部材25、フレキシブル回路部材を収納する導電性の筐体21と、X線検出パネル10に間隔を置いて対向配置され、導電性を付与したX線入射窓31とを有し、支持部材25、筐体21、X線入射窓31が同電位となるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、X線やガンマ線などの放射線を検出するための放射線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線やガンマ線などの放射線を検出する放射線検出装置は、工業用の非破壊検査や医療診断、構造解析などの科学研究用など広い分野で利用されている。
【0003】
特に、X線診断装置に用いられる平面型X線検出装置として、複数のフォトセンサー及びTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)の電気素子が2次元に配置されている光電変換素子部からなる光検出器上に、放射線を光電変換素子で検出可能な光に変換するための蛍光体層を直接形成してなる放射線検出装置が知られている。
【0004】
光電変換素子を有する光検出器で得られる信号は非常に微小で数十nAレベルである。従って、僅かなリーク電流の増加でも影響は大きく、取得したデータの補正が必要になる。
【0005】
図3に従来の放射線検出装置に用いられるX線検出パネルの構成、図4に従来の放射線検出装置の構成を示す。
【0006】
図3に示すX線検出パネル50は、ガラス基板11上に、複数のフォトセンサーとTFTとが2次元に配置された光電変換素子部12、光電変換素子部12と接続される配線部13、配線部13に接続されガラス基板11の端部に形成される電極パッド部14、及び光電変換素子部12上に形成される蛍光体層15を備えている。
【0007】
また、電極パッド部14上では、検出用集積回路IC35(図4参照)が実装されたフレキシブル回路基板34(図4参照)と接続されたフレキシブル回路16が異方導電性接着層17を介して電極パッド部14と接続されている。
【0008】
なお、X線検出パネル50の電極パッド部14と異方導電性接着層17とは、熱圧着により貼り合わされている。
【0009】
図4に示す放射線検出装置60は、板状の支持部材(冷却機構付金属基板)61上に、順にガラス板62、接着層63、図3に示すX線検出パネル50を設けて形成されている。また、支持部材61の反対面側には、アナログ回路基板67がスペーサ68で固定されている。
【0010】
また、検出用集積回路IC35が実装されたフレキシブル回路基板34の反対面側端部には、コネクタ66が配置され、アナログ回路基板67と接続されている。
【0011】
更に、放射線を透過するX線入射窓69がX線検出パネル50に対向配置され、外部筐体70に固定される。このX線入射窓69は、X線を透過させるために透過率がよく散乱しない材質のもの、例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3957803号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記の放射線検出装置60によると以下のような問題が生じる。
【0014】
放射線検出装置60では、X線入射窓69の電気抵抗が大きいため、X線検出パネル50の表面に誘導電荷が発生する。発生した誘導電荷の影響により、画像にむらやノイズが発生してしまう。
【0015】
放射線検出装置60においてX線検出パネル50の表面から誘導電荷を取り除くことは難しく、また、外部から電磁波の影響を受けてしまう。
【0016】
さらに、X線検出パネル50の表面に接する内部空気は、外部環境と接するX線入射窓69の表面の温度変動・分布の影響を大きく受けるため、X線検出パネル50自体にも温度分布が発生する。この温度分布は、X線検出パネル50において部分的に暗電流及びリーク電流の値の変動につながり、固定ノイズが変化することで発生する画像むらの原因となる。
【0017】
本発明は、このような観点に鑑みてなされたものであり、X線検出パネルの誘導電荷の発生を抑制し、外部電波の影響を受けることをなくし、ノイズや画像ムラの少ない放射線検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述の目的を達成するため、本放射線検出装置は、放射線を検出する放射線検出パネルと、前記放射線検出パネルを支持する導電性の支持部材と、前記支持部材における前記放射線検出パネル支持面の反対側の面に支持され、前記放射線検出パネルを駆動する回路基板と、前記放射線検出パネルと前記回路基板とを電気的に接続するフレキシブル回路部材と、前記放射線検出パネル、前記回路基板、前記支持部材、及び前記フレキシブル回路部材を収納する導電性の筐体と、前記放射線検出パネルに間隔を置いて対向配置され、導電性を付与した放射線入射窓と、を有し、前記支持部材、前記筐体、及び前記放射線入射窓が同電位となるようにしたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施の形態に係るX線検出パネルを示す模式断面図。
【図2】本実施の形態に係る放射線検出装置を示す模式断面図。
【図3】従来のX線検出パネルを示す模式断面図。
【図4】従来の放射線検出装置を示す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
図1は本実施の形態に係るX線検出パネル、図2はそのX線検出パネルを用いた放射線検出装置の例を示すものである。
【0022】
(X線検出パネル10)
X線検出パネル10は、ガラス基板11上に、複数のフォトセンサーとTFTとが2次元に配置された光電変換素子部12、光電変換素子部12と接続される配線部13、配線部13に接続されガラス基板11の端部に形成される電極パッド部14、光電変換素子部12上に形成される蛍光体層15、及び蛍光体層15を覆って形成される導電性保護層18を備えている。
【0023】
また、電極パッド部14上では、検出用集積回路IC35が実装されたフレキシブル回路基板34と接続されたフレキシブル回路16が異方導電性接着層17を介して電極パッド部14と接続されている。
【0024】
なお、X線検出パネル10の電極パッド部14と異方導電性接着層17とは、熱圧着により貼り合わされている。
【0025】
(放射線検出装置20)
本放射線検出装置20では、筐体21内に設けられた支柱23に支持されている板状の支持部材25上に、放射線検出パネルとしての図1に示すX線検出パネル10が配置されている。
【0026】
また、検出用集積回路IC35が実装されたフレキシブル回路基板34の反対面側には、コネクタ22が配置され、アナログ回路基板26と接続されている。アナログ回路基板26は、デジタル回路基板27と共に回路基板群24を構成し、スペーサ38によって支持部材25と固定されている。回路基板群24は、X線検出パネル10を電気的に駆動する。
【0027】
更に、放射線を透過するX線入射窓31がX線検出パネル10に対向配置され、縁状の入射窓保持材33を介して筐体21に固定されている。
【0028】
ここで、支持部材25及び支柱23は、導電性を有する材料で形成されている。筐体21もまた導電性を有する材料で形成されており、X線検出パネル10、支持部材25、回路基板群24、フレキシブル回路基板34、及びフレキシブル回路16を収納している。
【0029】
また、筐体21内には、X線検出パネル10と対向した位置に開口部29が形成されている。更に、開口部29とX線入射窓31をつないでいる入射窓保持材33もまた導電性を有する材料で形成されている。
【0030】
支柱23は、支持部材25及び筐体21を電気的に導通させる。また、X線入射窓31のX線検出パネル10側の表面には金属箔28、例えば、アルミテープがX線入射窓31の全面に貼り付けられる。
【0031】
縁状の入射窓保持材33は、筐体21とX線入射窓31の金属箔28を電気的に導通させる。
【0032】
回路基板群24は、いずれも支持部材25に固定されるか、もしくは、アナログ回路基板26とデジタル回路基板27のうちの一方の回路基板が支持部材25に接続され、かつ他方の回路基板が上記の一方の回路基板に固定されている。また、各回路基板からは、支持部材25へフレームグランドが落ちている。
【0033】
以上説明したように、X線検出パネル10は、支持部材25、筐体21、X線入射窓31で周りを囲まれており、X線入射窓31上に形成された金属箔28、支持部材25、支柱23、筐体21、縁状の入射窓保持材33、は電気的に導電性であるため、回路のグランドと同電位となる。
【0034】
また、X線検出パネル10の表面は、導電性保護層18で覆われている。導電性保護層18と金属箔28は同一物質でも良い。導電性保護層18は、縁上の入射窓保持材33もしくは、支持部材25へ電気的に接続されている。
【0035】
また、X線入射窓31とX線検出パネル10間は、内部空気により断熱されている。
【0036】
更に、X線検出パネル10の表面を覆う導電性保護層18の放射率は、ガラスよりも小さく、対抗配置されるX線入射窓31の内側表面を覆う金属箔28の放射率は、X線入射窓31を形成する材料よりも小さくなるように形成されている。
【0037】
(放射線検出装置20の作用・効果)
放射線検出装置20では、筐体21内部にあるX線検出パネル10を取り囲むように高い導電性を有する部品を配置し、電気的に導通できる状態にしている。
【0038】
よって、X線検出パネル10を取り囲む部品がX線検出パネル10と同電位となり、外部からの静電気や誘導電界等のノイズの影響を低減でき、画像ムラの少ないX線平面検出器の実現が可能となる。
【0039】
また、X線検出パネル10及びX線検出パネル10に対向したX線入射窓31の表面には電気伝導性に優れた金属材質を有するため、外部から筐体21内部への電磁波を削減し、逆に内部から外部への電磁波も削減することができる。
【0040】
更に、熱伝導性に優れた導電性物質がX線入射窓31の内面を覆い、X線入射窓31表面とX線検出パネル10表面間の熱放射を下げ、X線検出パネル10への熱の伝搬を緩和、および均一化できるので、熱要因のムラを低減することができ、画像ムラの少ない放射線検出装置20とすることができる。
【0041】
(その他の実施の形態)
この発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0042】
また、この発明は、上記のX線検出パネル10及び放射線検出装置20に限定されるものではなく、各種のX線検出パネル10及び放射線検出装置20に適用することが可能である。
【0043】
具体的には、上記放射線検出装置20ではX線入射窓31のX線検出パネル10側の表面に金属箔28を貼り付けたが、金属箔28の代わりに、入射窓を形成する物質よりも電気抵抗の低い導電性を有する材料を蒸着、塗布、コーティング等によって形成しても良い。
【0044】
また、X線入射窓31の表面に形成される金属等の導電性材料は、片面だけでなく両面に形成しても良い。
【0045】
更に、上記放射線検出装置20では導電性保護層18と金属箔28の双方を設けたが、場合により、どちらか一方を省略しても良い。
【符号の説明】
【0046】
10 X線検出パネル
11 ガラス基板
12 光電変換素子部
13 配線部
14 電極パッド部
15 蛍光体層
16 フレキシブル回路
17 異方導電性接着層
18 導電性保護層
20 放射線検出装置
21 筐体
22 コネクタ
23 支柱
24 回路基板群
25 支持部材
26 アナログ回路基板
27 デジタル回路基板
28 金属箔
29 開口部
31 X線入射窓
33 入射窓保持材
34 フレキシブル回路基板
35 検出用集積回路IC
38 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を検出する放射線検出パネルと、
前記放射線検出パネルを支持する導電性の支持部材と、
前記支持部材における前記放射線検出パネル支持面の反対側の面に支持され、前記放射線検出パネルを駆動する回路基板と、
前記放射線検出パネルと前記回路基板とを電気的に接続するフレキシブル回路部材と、
前記放射線検出パネル、前記回路基板、前記支持部材、及び前記フレキシブル回路部材を収納する導電性の筐体と、
前記放射線検出パネルに間隔を置いて対向配置され、導電性を付与した放射線入射窓と、
を有し、前記支持部材、前記筐体、及び前記放射線入射窓が同電位となるようにしたことを特徴とする放射線検出装置。
【請求項2】
前記放射線入射窓の少なくとも片面に、前記放射線入射窓を形成する材料よりも電気抵抗の低い材料を形成すると共に、前記筐体に接続したことを特徴とする請求項1記載の放射線検出装置。
【請求項3】
前記放射線検出パネルの表面を導電性材料によって被覆し、前記支持部材と電気的に接続したことを特徴とする請求項1記載の放射線検出装置。
【請求項4】
前記放射線入射窓の前記放射線検出パネル側表面を、前記放射線入射窓を形成する材料よりも熱伝導性に優れた材料で被覆したことを特徴とする請求項1記載の放射線検出装置。
【請求項5】
前記放射線入射窓と前記放射線検出パネルとの間を、内部空気により断熱したことを特徴とする請求項1記載の放射線検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−42224(P2012−42224A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181026(P2010−181026)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(503382542)東芝電子管デバイス株式会社 (369)
【Fターム(参考)】