説明

放射線治療と組み合わせたVEGFアンタゴニストの使用

癌を処置し、そして/または腫瘍増殖を減少もしくは阻害する必要のある被験体において、癌を処置し、そして/または腫瘍増殖を減少もしくは阻害する方法であって、この方法は、血管内皮増殖因子(VEGF)インヒビターまたはトラップ(例えば、配列番号1または配列番号3のVEGFトラップ)を含有する薬学的組成物を、放射線治療(電離放射線および/または治療用放射線医薬品を含む)と組み合わせて投与する工程を包含する。本発明の分野は、放射線治療と組み合わせて、血管内皮増殖因子(VEGF)に結合可能かつVEGFを阻害可能であるVEGFトラップを用いて、哺乳動物において癌を処置する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景)
(発明の分野)
本発明の分野は、放射線治療と組み合わせて、血管内皮増殖因子(VEGF)に結合可能かつVEGFを阻害可能であるVEGFトラップを用いて、哺乳動物において癌を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連分野の説明)
血管内皮増殖因子(VEGF)は、病理学的状態における血管形成の一次刺激として認識されている。VEGFをブロックする方法へのアプローチとしては、可溶性レセプター構築物、アンチセンス分子、RNAアプタマーおよび抗体が挙げられる。VEGF−レセプターベースのトラップアンタゴニストの説明については、例えば、PCT WO/0075319を参照のこと。
【0003】
放射線治療は、単独で、あるいは手術および/または抗腫瘍剤と組み合わせて、癌の処置のために広く使用される。放射線治療およびスクアラミンを使用する組み合わせ治療は、公知である(米国特許第6,596,712号を参照のこと)。近年の前臨床研究は、VEGF標的剤と組み合わせた放射線治療が、腫瘍細胞および腫瘍血管の両方を標的にする電離放射線の治療度合を強化することを示唆している。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の簡単な説明)
本発明は、臨床的に関連するヒトグリア芽細胞腫モデルにおいてVEGFトラップと放射線治療との組み合わせ治療が腫瘍増殖の有意な阻害を生じることを示す、以下に説明される実験の結果に、部分的に基づいている。
【0005】
従って、第一の局面において、本発明は、癌の処置の必要のある被験体において癌を処置する方法を特徴とし、この方法は、この被験体に放射線治療と組み合わせてVEGFトラップを投与する工程を包含し、これによりその癌が処置される。本発明の1つの実施形態において、そのVEGFトラップは、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)(配列番号1〜2)、またはVEGFR1R2−FcΔC1(a)(配列番号3〜4)である。
特定の実施形態において、投与されるVEGFトラップの量は、低用量(例えば、およそ約1mg/kgまたはそれ未満)である。別の実施形態において、投与されるVEGFトラップの量は、高用量(約2.5mg/kg以上)である。投与は、当該分野において公知である任意の方法により行われ得、この方法としては、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、静脈内、鼻腔内、硬膜外または経口が挙げられる。好ましくは、投与は、皮下または静脈内、あるいはそれらの組み合わせである。投与は、同時的(例えば、同時)であっても、連続的(例えば、放射線投与に先立ってか、またはその後に引き続いて)であってもよい。1つの実施形態において、低用量(1.0mg/kg以下)のVEGFトラップが、週1回または2〜4週間の間隔で、放射線と同時的に投与される。別の実施形態において、高用量(2.5mg/kg以上)のVEGFトラップが、週1回または2〜4週間の間隔で、放射線と共に同時的に投与される。別の実施形態において、低用量(1.0mg/kg以下)が、月1回または2〜4ヶ月間隔で、放射線と共に投与される。
【0006】
放射線治療(治療用放射線医薬品を含む)は、上記哺乳動物に、当該分野において一般的に使用され、当業者に公知であるプロトコールに従って投与され得る。このような治療としては、セシウム照射、イリジウム照射、ヨウ素照射またはコバルト照射が挙げられ得る。1つの実施形態において、その放射線治療は、電離放射線治療である。
【0007】
第二の局面において、本発明は、腫瘍増殖を減少または阻害する必要のある被験体において、腫瘍増殖を減少または阻害する方法を特徴とし、この方法は、その被験体に放射線治療と組み合わせてVEGFトラップを投与する工程を包含し、これにより腫瘍増殖が減少または阻害される。本発明の1つの実施形態において、そのVEGFトラップは、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)(配列番号1〜2)、またはVEGFR1R2−FcΔC1(a)(配列番号3〜4)である。
【0008】
第三の局面において、本発明は、癌に苦しんでいるヒト患者を処置する方法を特徴とし、この方法は、有効量の血管内皮増殖因子(VEGF)トラップおよび放射線を、そのヒト患者に投与する工程を包含し、その患者に1.0mg/kg以下の初期用量のVEGFトラップを放射線治療と共に投与する工程を包含する。特定の実施形態において、VEGFトラップおよび放射線の初期投与に引き続き、その初期用量とおよそ同じかまたはそれ未満の量のVEGFトラップおよび放射線が複数回投薬される。ここで、その引き続く投薬は、互いに少なくとも1週間、時期を隔てられる。
【0009】
他の目的および利点は、以下の詳細な説明を精査することにより、明らかになる。
【0010】
(詳細な説明)
本発明の方法を説明する前に、本発明は、説明される特定の方法、および実験条件に限定されないことが理解されるべきである。なぜなら、このような方法および条件は、変動し得るからである。本明細書中で使用される用語法が、特定の実施形態を説明するためのみのものであり、制限することを意図されないこともまた、理解されるべきである。なぜなら、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ、制限されるからである。
【0011】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確にそうでないと示さない限り、複数の参照を含む。従って、例えば、「方法(a method)」への参照は、1つ以上の方法、および/または本明細書中に記載される型の工程、ならびに/または本開示を読めば当業者に明らかとなることを含む、などである。
【0012】
他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中に記載されるものと類似または等価な任意の方法および物質が、本発明の実施または試験において使用され得るが、好ましい方法および物質は、ここで説明される。本明細書中で言及した全ての刊行物は、その全体が、本明細書中に参考として援用される。
【0013】
(一般的な説明)
本発明は、VEGFに結合し、VEGFの生物学的活性を阻害する能力のあるVEGFトラップ(例えば、VEGFトラップVEGFR1R2−FcΔC1(a)(配列番号3〜4))の、電離放射線治療および/または治療用放射線医薬品と組み合わせた投与が、腫瘍増殖の有意な阻害を生じるという発見に基づく。VEGFトラップおよび放射線治療の組み合わせの腫瘍増殖に対する効果は、ヒトの癌の処置への有望な治療的アプローチを提供する。VEGF−レセプターベースのアンタゴニストであるVEGFトラップのFlt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)(配列番号1〜2)およびVEGFR1R2−FcΔC1(a)(配列番号3〜4)の説明については、PCT WO/0075319を参照のこと(この内容は、その全体が本明細書中に参考として援用される)。
【0014】
(投与方法)
本発明は、処置の方法を提供し、この方法は、被験体に、放射線治療と組み合わせて、VEGFトラップを含む有効量の薬学的組成物を投与する工程を包含する。種々の送達系が公知であり、そして本発明の組成物を投与するために使用され得る。この送達系は、例えば、リポソーム内のカプセル化、微小粒子、マイクロカプセル、その化合物を発現可能な組み換え細胞、レセプター媒介性のエンドサイトーシス(例えば、WuおよびWu、1987、J.Biol.Chem.262:4429−4432)、レトロウイルスベクターまたは他のベクターの一部としての核酸の構築物などである。導入方法は、経腸的または非経口的であり得、そして皮内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、静脈内経路、皮下経路、鼻腔内経路、眼内経路および経口経路が挙げられるが、これらに限定されない。この化合物は、任意の従来の経路により(例えば、注入または大量瞬時注射により、内皮または粘膜皮膚内面(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜および腸粘膜など)を通した吸収により)投与され得、そして他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与され得る。投与は、全身性であっても、局所性であってもよい。投与は、急性的であっても、慢性的(例えば、毎日、毎週、毎月など)であってもよく、または他の薬剤と組み合わされてもよい。肺投与もまた、例えば吸入器または噴霧器の使用およびエアロゾル化剤を用いて製剤化することにより、使用され得る。
【0015】
別の実施形態において、その活性薬剤は、小胞(特にリポソーム)内に、制御放出系またはポンプで、送達され得る。本発明の活性薬剤がタンパク質をコードする核酸である別の実施形態において、その核酸は、適切な核酸発現ベクターの一部として構築してそれが細胞内物質になるように(例えば、レトロウイルスベクターの使用(例えば、米国特許第4,980,286号を参照のこと)により、直接注入により、または微小粒子照射の使用により、または脂質もしくは細胞表面レセプターもしくはトランスフェクション剤でコーティングすることにより)投与することにより、あるいは核内に移行することが公知であるホメオボックス様ペプチド(例えば、Joliotら、1991、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:1864−1868)へ結合させて投与することなどにより、そのコードするタンパク質の発現を促進するようにインビボで投与され得る。あるいは、核酸は、相同組み換えにより、細胞内に導入され得、そして発現のために宿主細胞のDNA内に組み込まれ得る。
【0016】
特定の実施形態において、本発明の薬学的組成物が、処置の必要のある領域に局所的に投与されることが所望され;これは例えば、手術の間の局所的注入により達成され得るが、これに限定されない。局所的適用は、例えば、注入によるもの、カテーテルの手段によるもの、または移植物の手段によるものであり、この移植物は、多孔性物質、非多孔性物質またはゼラチン状物質のものであり、サイラスティック膜のような膜、線維、または市販の皮膚代用品が挙げられる。
【0017】
本発明の方法の実施において有用な組成物は、本発明の薬剤を溶液、懸濁液、またはその両方で含む液体であり得る。用語「溶液/懸濁液」は、液体基質の懸濁液において、その活性薬剤の第一部分が溶液中に存在し、かつその活性薬剤の第二部分が粒子形態で存在する液体組成物をいう。液体組成物としてはまた、ゲルも挙げられる。その液体組成物は、水性であってもよいし、軟膏の形態であってもよい。
【0018】
本発明の方法の実施のために有用な水性懸濁液または溶液/懸濁液は、懸濁剤として1つ以上のポリマーを含み得る。有用なポリマーとしては、セルロースポリマーのような水溶性ポリマーおよび架橋カルボキシル含有ポリマーのような水不溶性ポリマーが挙げられる。本発明の水性懸濁液または溶液/懸濁液は、好ましくは、粘稠性または粘膜付着性であり、あるいはさらにより好ましくは、粘性かつ粘膜付着性の両方である。
【0019】
(放射線治療および治療用放射線医薬品)
放射線は、多くの型の癌の治療的処置として使用され、疾患、その部位、そしてその段階に依存して種々の方法で送達される。このような治療としては、セシウム照射、イリジウム照射、ヨウ素照射またはコバルト照射が挙げられ得る。その放射線治療は、全身照射であっても、身体内または身体上の特定の部位または組織へ局所的に向けられてもよい。代表的に、放射線治療は、約1週間〜2週間の期間にわたってパルス投与される。しかし、その放射線治療は、より長期間にわたっても投与され得る。必要に応じて、その放射線治療は、単回の投薬として投与されても、複数の連続的な投薬として投与されてもよい。放射線治療の例としては、原体照射法、冠状動脈近接照射療法、高速ニュートロン放射線治療、強度変調放射線治療(IMRT)、術中照射法(interoperative radiotherapy)、間質性近接照射療法、間質性乳房近接照射療法、臓器保存治療(organ preservation therapy)、および定位手術的照射が挙げられる。治療用放射線医薬品の使用もまた、本発明に包含される。治療用放射線医薬品の例としては、例えば、P32リン酸クロムコロイド、P32クロム酸ナトリウム、Sr89塩化物、Sm153 EDTMPレキシドロナム(lexidronam)、I131ヨウ化ナトリウム、Y90イブリツモマブ チウキセタン(ibritumomab tiuxetan)、In111トシツモマブ(tositumomab)、およびY90微粒子が挙げられる。上記VEGFトラップは、上記患者に、放射線および/または治療用放射線医薬品化合物と組み合わせた処置として、同時的または連続的に投与される。そのVEGFトラップおよび放射線の投与に引き続き、その患者の癌および生理学的状態は、当業者に周知である種々の方法でモニターされ得る。例えば、腫瘤(tumor mass)は、理学的に、生検により、または標準的なX線造影技術により観察され得る。
【0020】
(薬学的組成物)
本発明は、VEGFトラップおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物を提供する。用語「薬学的に受容可能」は、動物における(より具体的には、ヒトにおける)使用について、連邦政府の管理機関または州政府の管理機関により認可されているか、あるいは米局薬局方または他の一般的に認識されている薬局方に列挙されていることを意味する。用語「キャリア」は、上記治療剤と一緒に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤またはビヒクルをいう。このような薬学的キャリアは、水および油のような無菌の液体であり得、この液体としては石油由来、動物由来、植物由来または合成由来のもの(例えば、ピーナツ油、大豆油、無機油、ゴマ油など)が挙げられる。適切な薬学的賦形剤としては、でんぷん、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦、胡粉、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、滑石、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。所望される場合、その組成物は、少量の湿潤剤または乳化剤、あるいはpH緩衝剤もまた、含み得る。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、ピル、カプセル、散剤、徐放処方物などの形態を取り得る。適切な薬学的キャリアの例は、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。
【0021】
本発明の組成物は、中和形態または塩形態として処方され得る。薬学的に受容可能な塩としては、遊離アミノ基で形成された塩(例えば、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来する塩)、ならびに遊離カルボキシル基で形成された塩(ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化鉄(III)、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来する塩)が挙げられる。
【0022】
意図された治療用途のために有効である本発明の組成物の量は、本記載に基づく標準的な臨床技術により、決定され得る。さらに、インビトロでのアッセイが、最適な投薬量範囲の同定を補助するために、必要に応じて使用され得る。一般に、静脈内投与のための適した投薬量範囲は、体重1キログラム当たり、約20μg〜約500μgの活性化合物である。鼻腔内投与のための適した投薬量範囲は、一般に、体重1kg当たり、約0.01pg〜1mgである。有効用量は、インビトロでの試験系または動物モデルの試験系から導かれた用量反応曲線から外挿され得る。
【0023】
全身投与については、治療有効用量はまず、インビトロでのアッセイから計算され得る。例えば、ある用量が動物モデルに処方され、細胞培養において決定されたIC50を含む循環濃度の範囲を達成し得る。このような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために、使用され得る。初回投薬量もまた、当該分野において周知の技術を使用して、インビボ(例えば、動物モデル)でのデータから計算され得る。当業者は、動物データに基づいて、ヒトへの投与を容易に最適化し得る。
【0024】
投薬量および投薬間隔は、個々に調整され得、治療効果を維持するために十分な上記化合物の血漿レベルを提供し得る。局所的投与または選択的取り込みの場合、その化合物の有効な局所的濃度は、血漿濃度と関係し得ない。当業者は、過度な実験をすることなく、治療的に有効な局所投薬量を最適化することが可能である。
【0025】
投与される化合物の量は、当然、処置される被験体、その被験体の体重、苦痛の重症度、投与の様式、および処方医の判断に依存する。その治療は、症状が検出可能である間か、またはそれが検出可能でないときであっても、断続的に繰り返され得る。その治療は、単独で行われてもよいし、他の薬物と組み合わせて行われてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(特定の実施形態)
実施例1は、マウスにおいて増殖したU−87グリア芽細胞腫細胞由来の腫瘍を、低用量または高用量の配列番号3〜4のVEGFトラップと、単回用量の放射線または放射線なしとの組み合わせで処置した実験を説明する。その結果は、VEGFインヒビターおよび放射線治療の組み合わせでの、腫瘍増殖の、強化された抑制および遅延を示した。
【0027】
本発明の他の特徴は、以下の例示的実施形態の説明の過程で明らかとなる。この例示的実施形態は、本発明の例示のために与えられ、本発明を制限することを意図されない。
【実施例】
【0028】
以下の実施例は、当業者に、本発明の方法および組成物を作製および使用する方法の完全な開示および説明を提供するために提案され、発明者らが彼らの発明とみなすものの範囲を制限することを意図されない。使用された数字(例えば量、温度など)に関して精度を保証するための努力はなされたが、それに対するいくつかの実験誤差または偏差は、当然許容されるべきである。他に示されない限り、部は重量部、分子量は平均分子量、温度はセ氏温度、そして圧力は大気圧またはほぼ大気圧である。
【0029】
(実施例1.VEGFトラップおよび放射線を組み合わせることによる腫瘍制御の向上)
(材料および方法)
U−87細胞(臨床的に関連するヒトグリア芽細胞腫細胞株)を、胸腺欠損NCR NUMマウスの右後肢に皮下注射(0.1ml PBS中の5×10細胞)し、処置前に直径4mm〜5mmに達するまで増殖させた。腫瘍増殖の遅延(TGD)を、腫瘍が1000mmまで増殖するための時間(日数)を使用して、決定した。1回の実験において、VEGFトラップ(配列番号3〜4)を、単回用量の10グレイ(Gy)の放射線と共にまたはなしで、同じスケジュールを使用して2つの用量(3日ごとに高用量(25mg/kg)および低用量(2.5mg/kg)を3週間まで与えた)で使用した。
【0030】
第二の実験において、VEGFトラップを、中用量(10mg/kg)または低用量(2.5mg/kg)のいずれかで使用し、そして処置を単回用量の照射の1週間前に開始し、次いで放射線処置を行い、VEGFトラップ処置をさらに21日間継続し、再度3日ごとに投与した。
【0031】
(結果)
第一の研究において、コントロールの腫瘍は平均10日間のTGDを有したが、一方で低用量のVEGFトラップは、さらに10日間TGDを増加させた。単回用量の10Gyの放射線は、コントロールのTGDを上回って10日間TGDを増加させたが、一方放射線+低用量のVEGFトラップは、コントロールのTGDを上回って20日間〜25日間TGDを増加させた。高用量のVEGFトラップは、コントロールのTGDを上回って40日間TGDを増加させたが、放射線と組み合わせた場合には、何も増加の利点を示さなかった。この第二の研究において、10mg/kgまたは2.5mg/kgのいずれかのVEGFトラップを放射線治療と組み合わせた場合、強化された腫瘍抑制を観察した。表1に見出られるように、VEGFトラップ(VEGFT)を放射線と組み合わせる場合、本研究における暫定時点(研究日数35日)での平均腫瘍サイズは、減少する。さらに、組み合わせ治療を行う場合、ほとんどの腫瘍が、この時点までに指定された研究のエンドポイントに到達しない。この結果は、腫瘍増殖における抑制および遅延が、組み合わせ処置により達成されることを示す。
【0032】
単独のVEGFトラップは、U−87グリア芽細胞腫モデルにおける腫瘍増殖の有効なインヒビターであり、そして単回用量の放射線と組み合わせた低用量または中用量のVEGFトラップは、腫瘍細胞の死滅において強化された効果を有すると結論付けられる。これらの結果は、ヒトの癌の処置について重要な意味を有する。
【0033】
【表1】

本発明は、他の特定の形態において、本発明の精神またはその本質的な特性から外れることなく、実施され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌の処置の必要のある被験体において癌を処置する方法、あるいは腫瘍増殖を阻害または減少させるための方法における放射線治療と組み合わせるための医薬の調製における、血管内皮増殖因子(VEGF)インヒビターまたはVEGFトラップの、使用。
【請求項2】
前記VEGFトラップが、VEGFR1R2−FcΔC1(a)またはFlt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記VEGFトラップが、配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列を含有する、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
VEGFトラップおよび放射線の投与が、同時的または連続的である、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
放射線が、電離放射線治療および/または治療用放射線医薬品である、請求項1〜4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
放射線治療が、単回用量としてかまたは複数用量で投与される、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記VEGFトラップが、少なくとも約2.5mg/kgの高用量で投与される、請求項1〜6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
前記VEGFトラップが、約1.0mg/kgまたはそれ未満の低用量で投与される、請求項1〜6のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
前記被験体がヒト被験体である、請求項1〜8のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
投与が、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、静脈内、鼻腔内、硬膜外または経口である、請求項1〜9に記載の使用。
【請求項11】
腫瘍増殖を減少させる必要のある被験体において腫瘍増殖を減少させる方法であって、該方法は、該被験体に、血管内皮増殖因子(VEGF)トラップおよび放射線治療を投与する工程を包含し、ここで該腫瘍増殖が減少される、方法。
【請求項12】
前記VEGFトラップがVEGFR1R2−FcΔC1(a)またはFlt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記VEGFトラップが、配列番号1または配列番号3のアミノ酸配列を含有する、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記VEGFトラップが、放射線治療と同時的または連続的に投与される、請求項11〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記放射線治療が、電離放射線治療および/または治療用放射線医薬品である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記被験体がヒト被験体である、請求項11〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記VEGFトラップの投与が、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、静脈内、鼻腔内、硬膜外または経口である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
製品であって、該製品は、以下:
(a)包装材料;および
(b)該包装材料内に含まれる薬剤、
を含有し、ここで該薬剤が、少なくとも1用量の血管内皮増殖因子(VEGF)トラップを含有し、そして該包装材料が、該VEGFトラップが癌の処置または腫瘍増殖の減少のために放射線治療と組み合わせて使用され得ることを示す、製品。

【公表番号】特表2007−501239(P2007−501239A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522633(P2006−522633)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/024675
【国際公開番号】WO2005/016369
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(597160510)リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (50)
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
【出願人】(597177242)トーマス・ジェファーソン・ユニバーシティ (12)
【氏名又は名称原語表記】Thomas Jefferson University
【Fターム(参考)】