説明

放射線治療システム、放射線治療支援装置及び放射線治療支援プログラム

【課題】放射線照射治療において、術者に治療部位への過少照射や正常組織への過剰照射を防ぐための情報を提供し、正確かつ安全に治療を行えるようにする。
【解決手段】放射線照射システム2は、被検体に対して治療用放射線ビームを照射し、散乱線検出システム3は、治療用放射線ビームに基づいて発生する散乱線を検出する。データ処理システム5は、治療用放射線ビームの照射毎に散乱線のデータから被照射位置及び吸収線量を取得する。そして、取得された被照射位置及び吸収線量の少なくとも一方と、被検体の治療部位及び正常部位の位置毎の基準線量とを対比させた情報を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療の際に術者に治療を支援するための情報を提供する機能を有する放射線治療システム、放射線治療支援装置及び放射線治療支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線外照射治療に代表される放射線治療では、治療前に、患者画像上で照射計画(治療部位に対してどの方向から、どれだけの線量を照射するか)が立案され、これに基づいて患者への照射行われる。しかし、現在のところ実際に計画通りの位置、線量が患者に照射されているか否かを確認する手段がなく、治療部位への過少照射や正常組織への過剰照射が起こっても気づかれないのが現状である。照射前にファントムとX線検出器を用いて、計画通りの照射が行えることが確認されることもあるが、簡便に持ち運びができ、自由に位置を調整できるファントムと異なり、患者を寝台上の、照射計画どおりの位置に置くことは困難であり、これらの照射前確認は、患者への計画通りの照射を完全に保証するものではない。
【0003】
なお、本願に関連する公知文献としては、例えば次のようなものがある。
【特許文献1】特開平5−146426号公報 この特許文献が開示する技術は、X線被写体の散乱X線を検出し、被写体の断層像を得るものである。ペンシル状ビームを走査することにより被写体の3次元散乱線像を再構成して得ることが特徴である。すなわち、本技術はペンシル状ビームのみを想定しており、X線治療で用いられる、有限の幅をもったビームが通過した領域の散乱像(治療ビームによる線量の空間分布)を得るものではない。また、エネルギーの高い治療ビーム(数MeV)の被写体内での散乱は前方散乱が優位となるため、入射X線方向に検出器を配置すると散乱線と透過線の区別が難しく、散乱線の検出に補正処理を必須としている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医療過誤に対して社会的関心が高まる中、放射線治療においても、患者への過剰照射が報告され問題となった。患者のどの部位にどれだけの線量が照射されたかという、行われた医療行為の“事実”を記録することは、今後ますます重要になると予測される。また昨今、X線外照射治療の分野では、呼吸等による患者体内での腫瘍の動きに同期・追従して照射する方法や、腫瘍形状に合わせて治療X線ビームをコリメートして照射する方法など、病変部に対してより精密に照射する試みが行われつつある。これらの精密照射は、病変部に線量を集中させることを目的としている。このため、万一、治療X線ビームが照射目標から外れた場合には、正常組織に甚大な損傷を与える。そのため、照射の精密化に伴って、計画通りの照射が行われている否かを確認することが重要となる。
【0005】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、その目的とするところは、放射線照射治療において、術者に治療部位への過少照射や正常組織への過剰照射を防ぐための情報を提供し、正確かつ安全に治療を行うことを可能とする放射線治療システム、放射線治療支援装置及び放射線治療支援プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0007】
本発明に係る放射線治療システムは、被検体に治療用放射線ビームを照射する照射手段と、前記治療用放射線ビームに基づいて発生する散乱線を検出する検出手段と、前記治療用放射線ビームの照射毎に前記散乱線のデータから被照射位置及び吸収線量を取得する取得手段と、前記取得された被照射位置及び吸収線量の少なくとも一方と、前記被検体の治療部位及び正常部位の位置毎の基準線量とを対比させた情報を生成する生成手段とを具備する。
【0008】
本発明に係る放射線治療支援装置は、被検体に治療用放射線ビームを照射し、前記治療用放射線ビームに基づいて発生する散乱線を検出することで得られる散乱線データを用いて治療支援情報を生成する放射線治療情報提供装置であって、前記治療用放射線ビームの照射毎に前記散乱線のデータから被照射位置及び吸収線量を取得する取得手段と、前記取得された被照射位置及び吸収線量の少なくとも一方と、前記被検体の治療部位及び正常部位の位置毎の基準線量とを対比させた情報を生成する生成手段とを具備する。
【0009】
本発明に係る放射線治療支援プログラムは、被検体に治療用放射線ビームを照射し、前記治療用放射線ビームに基づいて発生する散乱線を検出することで得られる散乱線データを用いて治療支援情報を生成する放射線治療情報提供装置を制御するプログラムであって、コンピュータに、前記治療用放射線ビームの照射毎に前記散乱線のデータから被照射位置及び吸収線量を取得する取得機能と、前記取得された被照射位置及び吸収線量の少なくとも一方と、前記被検体の治療部位及び正常部位の位置毎の基準線量とを対比させた情報を生成する生成機能とを実行させるものである。
【発明の効果】
【0010】
以上本発明によれば、放射線照射治療において、術者に治療部位への過少照射や正常組織への過剰照射を防ぐための情報を提供し、正確かつ安全に治療を行うことを可能とする放射線治療システム、放射線治療支援装置及び放射線治療支援プログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0012】
[原理と方法]
本実施形態に係る放射線治療システムは、被検体に対して照射した放射線に基づく当該被検体からの散乱線を計測し、これに基づいて被検体のどの部位に、どれだけの線量が照射されたかを客観的に示す情報を取得するものである。その原理と方法は、次の様である。
【0013】
図1は、本放射線治療システムの治療用放射線に基づく被検体からの散乱線計測の原理、方法を説明するための図である。
【0014】
外照射X線照射による治療効果は、主として患者体内で起こるX線の散乱によってもたらされる。すなわち、治療X線ビームが患者体内の電子によって散乱される際、エネルギーを受け取った電子は組織内を飛行したのち、停止する。このとき、電子は停止するまでに、組織内の分子をラジカル化し、細胞内のDNAに損傷を与える。そして、損傷を受け、修復することができなかった細胞は最終的に死に至る。これがX線照射による治療効果である。反跳電子が多く発生すればするほど組織を構成する細胞が死に至る確率が高くなるため、治療効果は、散乱反応が起こる回数に比例する。
【0015】
上述から、組織内で起こった散乱の回数が分かれば、治療効果(=組織がどれだけ損傷を受けたか)を知ることができる。そして起こった散乱の回数は、散乱線の数を測定することで知ることができる。散乱されたX線の多くは、電子に進行方向を変えられた後、患者体外に出てくるため、患者体外に設置したX線検出器で測定することができる。
【0016】
本実施形態の第1の実施例に係る放射線治療システムでは、治療X線ビームに対して特定の角度をなす位置にコリメータを備えた検出器を設置し、その方向に来た散乱線のみを選択的に検出する。コンプトン散乱で、どの角度に、どれだけX線が散乱されるかは理論的に分かるため、ある角度での散乱線を検出できれば、他の角度への散乱線の数も推定できる。さらに、患者体内の、散乱の起こった場所の分布を3次元的に得るために、照射中に検出器を回転させ、すべての方向から散乱線の測定を行う(例えば、図5参照)。その後、再構成処理を行い、被検体内部の散乱線の発生分布を3次元的に画像化する。
【0017】
また、本実施形態の第2の実施例に係る放射線治療システムでは、治療X線ビームに対して所定の角度(散乱角)をなす位置にコリメータを備えた検出器を設置し、その方向に来た散乱線のみを選択的に検出し、この検出を照射部から照射される治療用X線ビームの軸と検出器の検出面とのなす角を維持しつつ治療用X線ビームと検出面とを移動させながら実行することで、被検体内の3次元領域をスキャンする。得られた所定の散乱角に関する3次元散乱線データを用いて、散乱線ボリュームデータを再構成すると共に、当該散乱線ボリュームデータを吸収された放射線量の3次元分布を示す吸収線量ボリュームデータに変換し、吸収線量画像を生成する。
【0018】
[構成]
図2は、本実施形態に係る放射線治療システム1のブロック構成図を示している。同図に示すように、本放射線治療システム1は、放射線照射システム2、散乱線検出システム3、データ取得制御部4、データ処理システム5、表示部6、記憶部7、操作部8、ネットワークI/F9を具備している。放射線照射システム2及び散乱線検出システム3は架台(ガントリ)に設置され、架台を移動、回転させることで、被検体に対して任意の位置に配置することができる。また、データ取得制御部4、データ処理システム5、表示部6、記憶部7、操作部8、ネットワークI/F9は、例えば放射線治療システム1の本体(筐体)に設置される。
【0019】
[放射線照射システム]
放射線照射システム2は、電力供給部201、照射部203、タイミング制御部205、ガントリ制御部207を有している。
【0020】
電力供給部201は、データ取得制御部4からの制御に従って照射部203に電力を供給する。
【0021】
照射部203は、例えば線形加速器(ライナック)等の機構を有する放射線照射装置である。当該照射部203では、加速管の一端に設けられた電子銃により、陰極から放射された熱電子は数100keVになるまで加速される。次に、クライストロンで発生したマイクロ波は導波管を使って加速管まで導かれ、そこでこの熱電子は数MeVのエネルギーに達するまで加速される。この加速された熱電子は磁石によってその方向を変えられ、透過型ターゲットに衝突する。このとき制動放射により、数MeVのエネルギーのX線が発生する。照射部203は、コリメータによってこのX線を所定の形状(例えば、円錐形状、或いは薄い平面形状)に成形し、寝台上に配置された被検体の三次元領域に照射する。
【0022】
タイミング制御部205は、データ取得制御部4からの制御に従って所定のタイミングで照射部203に電力が供給されるように、電力供給部201を制御する。
【0023】
ガントリ制御部207は、例えば操作部8やデータ取得制御部4からの制御指示に従って、ガントリの移動位置・回転位置を制御する。
【0024】
[散乱線検出システム]
散乱線検出システム3は、検出器301、コリメータ303、移動機構部305、位置検出部307を有している。
【0025】
検出器301は、数100keVのX線を検出できる半導体検出器や、イメージング・プレート等であり、被検体に対して照射した放射線に基づく当該被検体からの散乱線を検出する。この検出器の好ましいサイズ、照射ビーム軸に対する配置角度、画素数等については、後述する。
【0026】
コリメータ303は、特定の方向に来た散乱線のみを選択的に検出するための絞り装置である。
【0027】
移動機構部305は、照射部203の照射ビーム軸に対する検出器301の検出面の角度(すなわち、照射ビーム軸と検出器301の検出面の法線との角度)、放射線ビーム軸を中心とした検出器301の回転角、被検体と検出器301の検出面との距離等を制御するために、検出器301の位置や角度を移動させるための移動機構部である。
【0028】
位置検出部307は、検出器301の位置を検出するためのエンコーダである。
【0029】
[データ取得制御部]
データ取得制御部4は、放射線治療時における散乱線計測に関する総合的な制御を行う。例えば、データ取得制御部4は、放射線照射システム2のタイミング制御部205からの信号を得て、散乱線検出システム3に対して散乱線計測開始トリガーや検出データの伝送トリガーを送信する等、放射線照射、散乱線計測、データ処理、画像表示、ネットワーク通信等について、本放射線治療システム1を静的又は動的に制御する。また、データ取得制御部4は、必要に応じて、ネットワークを介して放射線治療計画装置から受け取った治療計画に基づいて、各照射の照射時間に合わせてスキャン時間を最適化する。
【0030】
[データ処理システム]
図3は、データ処理システム5の構成を示す機能ブロック図である。
【0031】
データ処理システム5は、補正処理部501、再構成処理部503、変換処理部505、データ処理部507を有している。
【0032】
補正処理部501は、必要に応じてデータのキャリブレーション処理やノイズを除去するための補正処理等を行う。当該補正処理部501が実行する補正処理の内容については、後で詳しく説明する。
【0033】
再構成処理部503は、散乱線検出システム3において検出された散乱線画像データと各散乱線画像データを検出した位置を示す位置情報とを用いて画像再構成処理を実行し、散乱イベント回数(散乱発生回数)の密度の三次元的分布を示す散乱線ボリュームデータを取得する。再構成方式としては、例えば、コリメータの方向がスキャン軸と直交していればCTの再構成手法を、一方直交していなければ、断層撮影の再構成手法を用いる。
【0034】
変換処理部505は、画像再構成処理によって得られた三次元画像データを、吸収された放射線量(吸収線量)の三次元分布を示す吸収線量ボリュームデータに変換する。
【0035】
データ処理部507は、融合モデルモジュール511、計画評価モジュール513、及び計画更新モジュール515を有する。
【0036】
融合モデルモジュール511は、X線撮像装置やCTの他のモダリティによって取得された形態画像データをもとに3次元モデルを作成し、吸収線量ボリュームデータを用いて3次元モデルに吸収線量画像をフュージョン(Fusion)した融合モデルデータを作成する。
【0037】
計画評価モジュール513は、放射線照射計画と照射実績とを比較表示し、次回以降の照射の影響を予測するためのシミュレーションを行う。
【0038】
計画更新モジュール515は、吸収線量データをもとに照射計画の適否を所定の評価基準をもとに判定し、最適な治療計画を提供する。なお、上記各モジュールの詳細については後述する。
【0039】
[表示部、記憶部、操作部、ネットワークI/F]
表示部6は、LCD等のディスプレイで構成される。表示部6は、上記データ処理部507の各種モジュールにより出力されるデータをもとに、例えば、吸収線量画像を計画画像や照射直前、照射中に得た画像とフュージョンして表示を行う。
【0040】
記憶部7は、図4に示すように、照射する放射線ビームの軸を中心として検出器301を回転させながら散乱線データを取得(スキャン)するための所定のスキャンシーケンス701、補正処理、画像再構成処理、変換処理、表示処理等の実行、および治療計画を当該システムで表示、編集するための制御プログラム702や、当該放射線治療システム1によって取得された散乱線ボリュームデータ703、吸収線量ボリュームデータ704、X線コンピュータ断層撮影装置等の他のモダリティによって取得された形態画像データ705等を記憶する。当該記憶部7に記憶されているこれらのデータは、ネットワークI/F90を経由して外部装置へ転送することも可能となっている。
【0041】
また、記憶部7には、ネットワークI/F90を介して外部の治療計画装置等から取り込まれた許容線量テーブル706、治療計画データ707、治療履歴データ708が記憶される。さらに、記憶部7は、上記融合モデルモジュール511により作成される融合モデルデータ709を記憶する。
【0042】
操作部8は、オペレータからの各種指示、条件、関心領域(ROI)の設定指示、種々の画質条件設定指示等を装置本体11にとりこむための各種スイッチ、ボタン、トラックボール13s、マウス13c、キーボード13d等を有している。
【0043】
ネットワークI/F9は、当該放射線治療システム1によって得られた吸収線量画像データ等をネットワーク経由で他の装置に転送し、また、例えば放射線治療計画装置において作成された治療計画等をネットワーク経由で取得する。
【0044】
(吸収線量画像データの生成方法)
(第1の実施例)
次に、第1の実施例に係る放射線治療システム1を用いた吸収線量画像データの生成方法について説明する。本実施例に係る放射線治療システムでは、治療X線ビームに対して特定の角度をなす位置にコリメータを備えた検出器を設置し、その方向に来た散乱線のみを選択的に検出する。さらに、患者体内の、散乱の起こった場所の分布を3次元的に得るために、照射中に検出器を回転させ、すべての方向から散乱線の測定を行う(例えば、図6参照)。その後、再構成処理を行い、被検体内部の散乱線の発生分布を3次元的に画像化する。
【0045】
図5は、本実施例に係る吸収線量画像データの生成処理を含む放射線治療時における処理の流れを示したフローチャートである。以下、各ステップの処理内容について説明する。
【0046】
[被検体の配置等:ステップS1a]
まず、データ取得制御部4は、例えばネットワークを介して当該被検体に関する治療計画情報を取得し、表示部6に表示する。術者は、表示された治療計画に従って寝台上に被検体を配置すると共に、操作部8を介して、放射線照射時間の設定、1回転の中で散乱線計測を行う回数や計測する角度の設定など、スキャンシーケンスの選択等を行う(ステップS1a)。なお、放射線照射時間の設定等については、取得した治療計画情報に基づいて、自動的に行うようにしてもよい。
【0047】
[放射線照射/多方向における散乱線画像データの取得:ステップS2a]
図6は、本放射線治療システム1の散乱線の測定形態を示した図である。同図に示すように、放射線照射システム2は被検体に対して、三次元領域を照射するための治療用放射線を所定のタイミングで発生する。また、散乱線検出システム3は、当該照射放射線に基づいて被検体外に出てくる散乱線を照射される放射線ビームの軸を中心とした複数の回転角において検出する(ステップS2a)。例えば、ある1つの方向から3分間照射が行える場合、1方向につき10秒ずつ、18方向のデータを収集する。このとき、18方向はビーム軸を中心として等角度間隔であることが好ましい。検出器301が各方向で検出した散乱線のカウント数及び位置検出部307で計測した散乱線検出時における検出器301の位置情報は、データ処理システム5に伝送される。
【0048】
なお、本実施例では、検出器301の配置角度を、散乱角θが120°≦θ≦165°の範囲のいずれか(例えば、155°)である後方散乱線を検出するように、検出器301の配置角度を設定するものとする。
【0049】
また、上記の例において、例えば2Gyの照射が3方向から行われる場合、1方向あたりのカウント数は、1.24×105× 1/3≒4×104[counts/cm2]である。1方向あたり180秒で照射されるとして10秒間測定すると、4×104×10/180=2×103[counts/cm2]となるが、S/N比に問題はない。
【0050】
また、散乱線の検出は、少なくとも2つ以上の方向が必要であるが、現実にはできる限り多くの方向において検出することが好ましい。また、各検出位置は、照射ビームの軸を中心として等角度間隔に配置されていることが好ましい。
【0051】
[前処理(補正処理等):ステップS3a]
収集されたデータは、検出器設置角度方向に散乱されたX線のみカウントしている。しかし実際には、X線はあらゆる方向への散乱が起こっている。データ処理システム5の補正処理部501は、検出器のカウント値を補正し、所定の計算しきに従って、すべての方向への散乱数を取得する(ステップS3a)。
【0052】
[画像再構成処理:ステップS4a]
次に、データ処理システム5の再構成処理部503は、多方向の投影データを用いて画像再構成処理を実行し、散乱線ボリュームデータを取得する(ステップS4a)。このとき、検出器301の回転軸とコリメータの方向が直交しており、180度(+α)以上の角度範囲で画像を撮影する場合はCTの再構成方法を用いればよいが、その他の場合は断層撮影の再構成方法を用いる。断層撮影の手法として、例えば投影画像にフィルタ処理を適用した後バックプロジェクション処理を行うfiltered backprojection法を用いる。filterの構成方法としては古典的なShepp-Logan filterや、特願2006−284325, 特願2007−269447に開示されているフィルタを用いる。特に、特願2006−284325, 特願2007−269447に記載されている方法を用いれば、物理的意味が明確な散乱源分布画像を生成することができる。
【0053】
検出器画像にフィルタ処理を施し、バックプロジェクションを行って得られる画像は、単位体積あたりの散乱線発生密度(単位体積あたりの散乱回数)である。上記の再構成処理の全ステップ(各種補正処理、フィルタ処理、バックプロジェクション処理)をとおして、治療用放射線が被検体を通過する近傍での散乱線発生密度の3次元分布(散乱線ボリュームデータ)を取得することができる。
【0054】
[変換処理:ステップS5a]
次に、データ処理システム5の変換処理部505は、ボクセル(voxel)ごとに算出された単位体積あたりの散乱回数nを、吸収線量に換算することで、散乱線ボリュームデータを吸収された放射線量(吸収線量)の三次元分布を示す吸収線量ボリュームデータに変換する(ステップS5a)。
【0055】
[吸収線量画像データの生成/画像データの表示:ステップS6a、S7a]
次に、データ処理部507は、被検体CT画像の所定部位に関する吸収された放射線量(吸収線量)の分布を示す吸収線量画像データを生成し、例えばCT画像と合成する(ステップS6a)。表示部6は、所定の形態にて吸収線量画像を表示する(ステップS7a)。
【0056】
(第2の実施例)
次に、第2の実施例に係る放射線治療システム1を用いた吸収線量画像データの生成方法について説明する。本実施例に係る放射線治療システムでは、治療X線ビームに対して所定の角度(散乱角)をなす位置にコリメータを備えた検出器を設置し、その方向に来た散乱線のみを選択的に検出し、この検出を照射部から照射される治療用X線ビームの軸と検出器の検出面とのなす角を維持しつつ治療用X線ビームと検出面とを移動させながら実行することで、被検体内の3次元領域をスキャンする。得られた所定の散乱角に関する3次元散乱線データを用いて、散乱線ボリュームデータを再構成すると共に、当該散乱線ボリュームデータを吸収された放射線量の3次元分布を示す吸収線量ボリュームデータに変換し、吸収線量画像を生成する。
【0057】
図7は、本実施例に係る吸収線量画像データの生成処理を含む放射線治療時における処理の流れを示したフローチャートである。以下、各ステップの処理内容について説明する。
【0058】
[被検体の配置等:ステップS1b]
まず、第1の実施例と同様に、被検体の配置等が実行される(ステップS1b)。
【0059】
[放射線照射(散乱線データの取得):ステップS2]
図8は、本放射線治療システム1の散乱線の測定形態の一例を示した図である。同図に示すように、放射線照射システム2は、被検体に対して薄い平面状に整形されたX線ビームB2を所定のタイミングで照射し、散乱線検出システム3は、当該照射放射線に基づいて被検体外に出てくる所定の散乱角の散乱線を検出する。また、データ取得制御部4は、照射部203から照射される治療用のX線ビームB2の軸と検出器301の視線方向とのなす角を維持しながらX線ビームB2による励起断面を移動させ、当該被検体内の3次元領域を走査(スキャン)するように、ガントリ制御部207或いは移動機構部305を制御する(ステップS2)。この治療用のX線ビームB2を用いた3次元領域のスキャンにより、X線ビームB2の平面に対応する複数の二次元散乱線データからなる3次元散乱線データが取得される。
【0060】
なお、図8は、散乱線の測定形態の一例である。従って、本実施例に係る散乱線の測定形態は、当該例に拘泥されない。例えば、図9に示すように、検出器301の検出面(及びコリメータ303の開口面)を、治療用放射線ビームの照射方向に対する検出面のなす角度を一定に保ちながら、治療用放射線ビームの軸の位置の移動に連動して移動させることによっても、複数の二次元散乱線データからなる3次元散乱線データを取得することができる。
【0061】
[前処理(補正処理等):ステップS3b]
次に、データ処理システム5の補正処理部501は、減弱補正を含む前処理を実行し、投影データを取得する(ステップS3)。ここで、減弱補正とは、治療用放射線や散乱線が被検体内を伝播することに起因する信号減弱に関する補正処理である。
【0062】
[画像再構成処理:ステップS4b]
次に、データ処理システム5の再構成処理部503は、取得された投影データを用いて画像再構成処理を実行し、散乱線ボリュームデータを取得する(ステップS4)。
【0063】
[変換処理:ステップS5b]
次に、データ処理システム5の変換処理部505は、第1の実施例と同様に、散乱線ボリュームデータを吸収された放射線量(吸収線量)の3次元分布を示す吸収線量ボリュームデータに変換する(ステップS5)。
【0064】
[吸収線量画像データの生成/画像データの表示:ステップS6b、S7b]
次に、データ処理部507は、吸収線量ボリュームデータ等を用いて、被検体の所定部位に関する吸収された放射線量(吸収線量)の分布を示す吸収線量画像データを生成し、例えばフュージョン表示するためにCT画像と合成する(ステップS6b)。表示部6は、所定の形態にて吸収線量画像を表示する(ステップS7b)。
【0065】
次に、データ処理システムの各モジュールの動作について詳細に説明する。
【0066】
(融合モデルモジュール)
融合モデルモジュール511の処理について説明する。
[融合モデルデータの構築]
図10は、放射線照射システム2、散乱線検出システム3、及びX線撮像システム101,102の位置関係を示したものである。
X線撮像システム101,102は、複数方向から形態画像を計測する手段であり、本実施形態では、X線バイプレーンで示しているが、CT、MRI装置、超音波装置などでも構わない。これら撮像装置により撮像された画像は、記憶部7に形態画像データ705として蓄積される。
【0067】
図11は、融合モデルモジュール511の処理手順を示すフローチャートである。
図11において、融合モデルモジュール511は、記憶部7に記憶された形態画像データ705のうち、放射線治療前に取得したCTやPETなどの三次元画像(例えば、形態画像、代謝画像、機能画像)を用いて、融合モデルのベースとなる三次元モデル画像を作成する(ステップS1c)。その一方で、放射線治療中にCT、X線撮像装置、MRI装置などから治療部位の二次元/三次元のリアルタイム画像を取得する(ステップS2c)。
【0068】
融合モデルモジュール511は、上記それぞれの画像について、特徴点抽出、腫瘍形状の表面トレースを行い、抽出された特徴点やトレース画像のフィッティングを行うことで、三次元モデルとリアルタイム画像を合成する(ステップS3c)。特徴点としては、骨や予め埋め込まれたマーカーなどを用いる。そして、融合モデルモジュール511は、リアルタイム画像が合成された三次元モデルを複数のセグメントに分割する(ステップS4c)。分割された各セグメントそれぞれに対応付けて吸収線量ボリュームデータ704を記憶する融合モデルデータ709を構築する(ステップS5c)。この対応付けは、例えば、三次元モデルとリアルタイム画像の特徴点などによるフィッティング結果および、リアルタイム画像を撮影したX線撮像装置と吸収線量ボリュームデータを生成する基となった散乱線検出装置の機械的位置関係により行う。上記の結果、複数のセグメントに対応する吸収線量が融合モデルデータとして記憶される。また、セグメントを対応付けるためのフィッティングパラメータや機械的位置関係も融合モデルデータの一部として記憶する。
【0069】
さらに、この融合モデルデータ709について、「X線吸収度」、「機能情報」、「放射線感受性」などのパラメータ(属性情報)を上記と同様の方法を用いて各セグメントに対応付けて記憶しておく。X線吸収度は、他のモダリティから取得されたCT値やX線の吸収係数などから得ることができる。また、機能(MI)情報や代謝情報は、PETやMRS画像などから得られ、特に、PETなどを用いた分子イメージング画像により、がんの活性度や低酸素状態などを把握できる。また、組織部位や治療対象のターゲット部位が特定できれば、予め保持しているデータベースの情報(組織と放射線感受性のテーブル情報)から放射線感受性も把握できる。
【0070】
[融合モデルデータを用いた吸収線量の表示]
上記融合モデルデータ709を用いることで任意の断面の吸収線量を表す画像を表示部6に表示することができる。「放射線照射方向の位置情報」と「画像取得方向の位置情報」を用いて、例えば、放射線照射方向と垂直な断面の画像や照射方向に水平な断面の画像を作成する。また、放射線吸収線量の累積情報については、1回、1回の吸収線量の再構成結果を、各測定毎に融合処理を行って融合モデル上に累積していくことで、ターゲット部位や組織部位に累積する放射線情報を表示することができる。なお、表示部位の特定は、操作者により指定された組織について融合モデル画像上で、組織認識を行う。操作者が指定して、組織認識を行う方法もあるし、自動的にセグメンテーションを行い、組織部位やターゲット部位を選択することで組織認識を行う手法もある。
【0071】
以下に、上記作成された融合モデルの表示例を示す。
【0072】
[表示例1]
図12は、融合モデルにより表示される吸収線量画像の一例である。図12上段は、治療放射線ビームの照射方向に垂直な断面の画像であり、図12下段は、治療放射線ビームの照射方向に水平な断面の画像である。図12(a)は、腫瘍(治療の標的領域)を含み、放射線を照射した部位および累積吸収線量を重畳表示した表示例である。図12(c)は、治療放射線ビームの通過領域近傍に存在する、放射線照射に対して比較的弱い組織(リスクオーガン:危険領域)を表示している。放射線の照射履歴や累積値を表示することで、被曝限界を超えていないか、その場で見て確認することが出来る。図12(b)は、上記図12(a)と図12(b)の画像を重畳表示した表示例である。
【0073】
上記図12では、腫瘍、リスクオーガンを含む一断面を表示する例を示しているが、それぞれ腫瘍、リスクオーガンが含まれる厚みつき画像を表示してもよい。その場合、図12(b)、図12(c)にそれぞれ示すように、累積線量は、腫瘍ではMinimum Intensity Projectionで、リスクオーガンではMaximum Intensity Projectionで算出した数値を示す。また、あるスライスピッチで表示しても構わない。また、累積吸収線量は、数値で表示しても良いし、色や輝度で表すこともできる。
【0074】
[表示例2]
図13は、放射線感度閾値表示に対する吸収線量画像の表示例を示す。図12と同様に、上段は、放射線ビームの照射方向に垂直な断面、下段は、治療放射線ビームの照射方向に水平な断面である。
【0075】
治療したい部位(がん標的部位)については、所定の治療放射線量を超えていない場合は、警告表示する。例えば、閾値を超えていない場合は、色を変えて表示する。反対に、治療対象範囲外で、特に、放射線感受性の高い組織部位については、閾値に達成したら、警告表示する。例えば、閾値を超えた場合は、色を変えて表示する。
【0076】
[表示例3]
図14は、分子レベルの活性度情報を付加した場合の吸収線量画像の表示例を示す。図12と同様に、上段は、放射線ビームの照射方向に垂直な断面、下段は、治療放射線ビームの照射方向に水平な断面である。
FDGに代表される分子診断薬を用いた分子イメージング技術を活用して、低酸素状態やがんの活性度を重畳表示する。
【0077】
以上述べたように、三次元モデルに吸収線量を対応付けた融合モデルデータを用いることで、治療中にリアルタイムに放射線照射に直交する角度もしくは任意角度の吸収線量画像を表示することが可能となる。また、治療用放射線ビームの照射毎の吸収線量を重ね合わせた累積吸収線量画像の作成や、放射線感度閾値や分子レベルの活性度情報等を重畳表示することができる。特に、放射線照射に直交する角度の画像に標的領域および危険領域を表示し、吸収線量または蓄積吸収線量をMaximum Intensity ProjectionまたはMinimum Intensity Projectionにより重畳表示することにより、標的領域や危険領域の吸収線量(蓄積吸収線量)が閾値を越えたかどうかを、2次元画像にて判断できる画像を提供できるようになる。本来3次元的な情報を持つ吸収線量を2次元画像上にて操作者に提供できるため、操作者の判断が容易になるという効果がある。
【0078】
(計画評価モジュール)
次に、計画評価モジュール513の処理について説明する。
(第1の実施例)
図15は、本発明に係る放射線治療システム1における放射線治療のワークフローの一例である。このワークフローに従って、計画評価モジュール513の第1の実施例について説明する。
【0079】
[治療計画の取得:ステップS1d]
図15において、まず、患者に対する放射線照射方法(照射位置、回数)等の治療計画が治療前に予め治療計画装置上で術者等によって決められ、ネットワークインタフェース9を介して記憶部7に治療計画データ707として記憶される。治療計画の詳細は後述する。
【0080】
[放射線の照射:ステップS3d]
図6に示したように、治療開始時に、患者は放射線照射システム2の寝台上に治療計画と同じ位置になるように固定される。術者が治療開始ボタン(図示せず)を押すと、治療開始の信号がデータ取得制御部4に伝わり、データ取得制御部4は記憶部7から治療計画データ707を読み出し、治療計画にしたがって放射線照射システム2を制御する。これにより放射線照射システム2から患者の決められた位置に放射線が照射される。
【0081】
[照射位置および吸収線量の記録:ステップS4d]
放射線照射システム2からの放射線照射時にデータ取得制御部4は散乱線検出システム3を制御し、放射線照射システム2から患者に照射された放射線の照射位置およびこの照射により発生する散乱線量を測定する。データ処理システム5は、変換処理部505により、測定された散乱線量から照射位置と吸収線量を求める。求められた照射位置(以下、実測照射位置)と、吸収線量(以下、実測吸収線量)は記憶部7に時系列的に記憶される。
【0082】
[照射計画と実測値の比較:ステップS5d]
計画評価モジュール513は、一度照射が終わった時点で、記憶部7に記憶された治療計画データ707と実測照射位置および実測吸収線量を手動あるいは自動的に呼び出し、表示部6の画面上に表示する。例えば図16(a)のように計画画像上(例えば術前に撮影したCT画像)に実測値を重ねて表示する。図16(a)は、計画照射位置と実測照射位置とを重畳表示したもので、照射位置のずれを一目で把握することができる。
【0083】
さらに、計画照射線量と実測吸収線量とが計画評価モジュール513によって比較され、差分の有無、差分があった場合の差の値、差の値が許容できるかどうかの判定等が術者にわかるように示される。例えば、図16(b)のような表形式や、図16(c)のようなグラフ形式で表すことができる。更に、図16(b)に示すように、心臓のような放射線に弱い危険臓器を強調表示し、特に注意を促すようにすると良い。また、図17に示すように、1照射毎の吸収線量を重ね合わせて、腫瘍ターゲットに対する吸収線量を等高線で表わし、治療部位の形態画像に合成表示することもできる。
【0084】
[一致したかどうかの判定:ステップS6d]
計画評価モジュール513は、治療計画と実測値の比較の結果、両者が完全に一致するか、差分が許容範囲に収まった場合は、データ取得制御部4は次の照射を開始する信号を手動または自動で放射線照射システム2に送信する。放射線照射システム2は治療計画に基づいた量の放射線を治療計画に基づいた位置に照射する。治療計画と実測値が一致するか許容範囲に収まっている間は、特別な変更が生じない限り図15のステップS1d〜6dの作業が、計画の終了(ワークフローの[終了:ステップS8d])に達するまで繰り返される。
【0085】
記憶部7には一照射ごとの実測照射位置および実測吸収線量、実測値と計画値の差が時系列的に記憶され、術者は必要に応じて治療中の任意の時間や任意の位置における吸収線量の積算値等を計算させて表示させることができる。
【0086】
[警告:ステップS7d]
一方、治療計画と実測値の間に許容できない差が生じた場合は、図15のステップS7dに示すように、計画評価モジュール513により警告が出力され、治療が(一時)中止される。治療計画通りか、治療計画の変更か、治療中止のいずれかで全体の治療が終了した時は、計画評価モジュール513は一連の治療のデータ(一照射ごとの実測照射位置および実測吸収線量、実測値と計画値の差等)をセットにして記憶部7に記憶させる。これらのデータセットは例えば治療効果の確認に用いたり、次回の治療計画に反映させたり、放射線の遅発性影響の検討に用いたりすることができる。
【0087】
(第2の実施例)
図18は、本発明に係る放射線治療システム1における放射線治療のワークフローの他の例である。このワークフローに従って、計画評価モジュール513の第2の実施例について説明する。
【0088】
[治療計画:ステップS1e]
まず、患者に対する放射線照射方法等の治療計画が治療前に予めネットワーク上の治療計画装置(図示せず)で術者等によって決められ、記憶部7に記憶される(治療計画の詳細は後述する)。
【0089】
[直前画像撮影:ステップS3e]
治療開始時に、患者は放射線照射システム2の寝台上に治療計画と同じ位置になるように固定される。術者は図10のように配置された画像撮影装置101,102を操作して、患者の放射線照射領域の治療直前画像を撮影する。画像撮影装置101,102は、例えばX線撮像装置やX線CT装置、3D超音波診断装置等を用いることができる。ここで、治療計画装置と画像撮影装置101,102および放射線照射システム2の座標は位置合わせされている必要がある。座標の位置合わせは、前述のとおりデータ処理システムの融合モデルにて実行される。治療時の寝台上の任意の点や患者の一部に置いたマーカーや患者体内または体外のランドマークとなる特徴を持つ部位の座標を基点にすること等も考えられるが、ここでは放射線照射システム2の照射中心に全ての画像の位置が合わせられているものとする。
【0090】
[照射計画と直前画像の比較:ステップS4e]
図19(a)は治療計画に基づく照射位置を示す計画画像であり、計画評価モジュール513は、治療計画画像と治療直前画像とを図19(b)のように重ねて表示部6のディスプレイ上に表示する。
【0091】
[一致したかどうかの判定:ステップS5e]
この表示により、治療に影響が出るような位置ずれの有無が術者の目視によって確認される。例えば腫瘍等の治療対象の位置が放射線照射位置から外れている、放射線に弱い危険臓器が放射線通過領域に入っている等の重要な位置ずれが最優先される。
【0092】
[位置合わせ:ステップS7e]
もしもこれらの重要な位置ずれが生じていた場合は、術者は、患者や寝台を動かし、治療計画上の位置と一致するように調整する。
【0093】
ここで、術者の目視によらず、予め決められた画像上のマーカー位置や臓器の輪郭や特徴量等から自動的に位置ずれを検出するようにすることもできる。図20に、この場合の位置合わせ処理の手順を示すフローチャートを示す。計画評価モジュール513は、予め決められた画像上のマーカー位置や臓器の輪郭や特徴量等から上記位置ずれを自動で検出する(ステップS1f)。位置ずれが許容範囲内であれば照射を継続する(ステップS3f)。その一方、許容範囲を超えて位置ずれが検出された場合には、計画評価モジュール513は、表示部6に位置合わせを促す旨の警告表示を行う(ステップS2f)。これらの許容範囲を超えた位置ずれが生じていた場合(ステップS2f:YES)は、治療を一時中止し(ステップS4f)、術者は、患者や寝台を動かして、治療計画上の位置と一致するように調整する(ステップS5f)。ここで、術者の目視によらず、目視検出、自動検出のいずれの場合も、重要な位置ずれが検出された場合には、医療事故を防ぐためにデータ取得制御部4が術者に警告したり、放射線治療システム1が作動しないようにロックがかかったりすることが望ましい。
【0094】
[放射線照射:ステップS6e]
患者の位置ずれが治療計画に対し許容範囲内であることを術者が確認すると、術者がボタンを押す等の操作によりデータ取得制御部4は放射線照射システム2を駆動して治療計画に基づいて、図19(c)に示すように患者に放射線を照射する。
【0095】
[実測照射位置および実測吸収線量の記録:ステップS8e]
放射線照射システム2からの放射線照射時にデータ取得制御部4は散乱線検出システム3を制御し、放射線照射システム2から患者に照射された放射線の照射位置およびこの照射により発生する散乱線量を測定する。データ処理システム5は、変換処理部505により、測定された散乱線量から実測照射位置と実測吸収線量を求める。実測照射位置と実測吸収線量は記憶部7に時系列的に記憶される。
【0096】
[直前画像の撮影2:ステップS9e]
一度照射が終わった時点で、計画評価モジュール513は再び患者の治療直前画像を撮影する。固定不足による患者の動きの他に、治療中に臓器が変形したりして、位置ずれが生じる場合があるため、正確な治療をするためにはほぼリアルタイムで治療対象の周辺を確認することが望ましい。治療対象が許容範囲を超えて位置ずれしていると判定されたときには、一度治療を中止し、患者や寝台を動かして正しい位置に修正したりする必要がある。
【0097】
[次回照射の影響の確認:ステップS10e]
次に撮影された治療直前画像に記憶部7に記憶された治療結果(実測照射位置および実測吸収線量)を重ねて表示部6のディスプレイ上に表示する(図21(a))。
ここで、次回の放射線照射が治療対象および周辺臓器に与える影響のシミュレーションを図21を用いて説明する。図21(a)は、上記治療直前画像と治療結果を重ねて表示した画像である。実測照射位置をライン、実測吸収線量を数字で示している。この治療直前画像と治療結果とを重ねた画像に記憶部7から次の治療計画を呼び出して重ねたものが図21(b)である。
【0098】
まず、治療計画上の次に照射する予定の放射線照射位置と照射線量をそのまま表示し、治療目標をはずしていないか、危険臓器に許容以上の照射をすることがないかを確認することが考えられる。更に望ましいのは現在の治療結果に次の治療がどのように影響するかをシミュレーションし、特に放射線量の過不足が生じないかを確かめることである。現在までの実測吸収線量に次に照射する計画の放射線量を融合モデルを用いて位置合わせの上、足した値を表示する方法を用いる。モンテカルロ法等を用いて放射線の吸収や散乱を考慮して次に照射する計画の放射線量を求め、実測吸収線量の累積値と合計した予測値を表示する。図21(c)のようにシミュレーション結果を図で示したり、図22のように現在の状態とシミュレーション結果を表形式で表すことも可能である。
【0099】
図21(c)に示すように、予測値が予め決められた照射容量を超えた場合には、計画評価モジュールが音や光や文字等の警告手段で警告する。例えば、計画評価モジュール513は、図23のフローチャートに基づいて、上記シミュレーションで次の照射計画が不適切と判断した場合には(ステップS1g:YES)、治療を一時中止する(ステップS3g)。そして、術者にそのまま治療を続けるか、治療計画を中止するかを選択させる(ステップS4g)。また、安全のために自動または手動で放射線照射システム2は作動しないようにロックされることが望ましい。
【0100】
[次回照射の影響の確認:ステップS11e]
次の放射線照射が治療対象および周辺臓器に与える影響をシミュレーションで予測する方法を上記で述べたが、より正確に判断するために、プレ照射を行うことも考えられる。これは、治療に影響しない程度の弱い放射線を放射線照射システム2から患者の次回の照射の計画通りの位置へ照射し、その照射位置を散乱線検出システム3により実測し、計画と実測の位置にずれがないかを、治療計画画像と実測吸収線画像との比較によって判断する。CT値等の画像上の値から自動的にずれが判定されてもよいし、図24のように画像上にスケーラーが表示されて、ずれの量を目視で確認できるようにすることも考えられる。
【0101】
(治療計画について)
ここで、治療計画について図25乃至図29を用いて一例を述べる。
正常細胞の許容線量は臓器ごとに異なるため、放射線を比較的多く当ててよい臓器の方向から治療用放射線を照射し、極力避けるべき臓器への照射を最小限にする等の工夫が治療計画の目的の一つである。そこでまず、計画画像にて図25のように臓器ごとにセグメンテーションを行う。具体的には、同じ臓器に属するボクセル(実際は1〜5mm程度を想定するが、説明の便宜上大きなボクセルで示す。またはいくつかのボクセルをまとめたボクセル群として大きな四角柱等で表したものとしてもよい)を同じ群として登録する。ここでは肝悪性腫瘍群a、肝臓正常組織群c、胃正常組織群e、腸正常組織群f、脊髄正常細胞群g・・・等とする。セグメンテーションは画像上のCT値等の情報から自動で行っても、タッチペン等を用いて手動で行ってもよい。
【0102】
臓器の境目のボクセルが複数の臓器に属する場合は、全てが正常組織であった場合は、許容線量が最も小さい臓器に属するものとして登録する方が副作用の危険が少なくなる。ただし、必ず決められた値の放射線量を照射しなければならない腫瘍の領域が入った場合には、腫瘍の領域として登録する必要がある。また、放射線は図26のように裾があるため、腫瘍に放射線ビームを当てた時に犠牲になる正常組織が生じる。この犠牲となる正常組織の範囲を“マージン領域b”として登録する。
【0103】
なお、正常組織の許容線量は日本放射線科専門医会・医会の「放射線治療計画ガイドライン・2004」等で参考値が示されている。
【0104】
本実施形態では、図4に示したように、記憶部7に臓器ごとの許容線量を記憶した許容線量テーブルを持っている。そこで1つ1つのボクセルには例えば図27に示す表のように、臓器名に対応して任意につけられる領域名と領域内のアドレスが与えられる。ここでは肝臓正常組織の領域名を領域cとし、領域cの中のボクセルがn個あるとすると、アドレスはそれぞれc1〜cnとなる。
更にボクセルごとに許容線量の情報を与える。胃、腸、脊髄の正常組織のように、任意の1点ごと(1細胞ごと)に対する許容線量が決められている場合と、予備能の観点から臓器の体積の1/3、2/3、3/3までのそれぞれの許容線量が決められている場合とがある(図27参照)。このため、胃、腸、脊髄の正常組織の領域では、最低1つのボクセルに対する放射線量が許容量を超えるか、超えそうだと判断された場合に警告が出されるが、肝臓正常組織の領域の場合には、肝臓全体に対して何パーセントのボクセルに放射線が当たったかと、各ボクセルに当たった放射線量の平均値の2つの情報により放射線量が許容値を超えるかどうかの判定がなされる(図27参照)。
【0105】
一方、治療対象の悪性腫瘍の領域aに属するボクセルに対しては、治療に必要な放射線の最低値の情報が与えられ、最終的に最低値を超えて照射できるかどうかが判定の基準となる。
【0106】
各細胞はそれぞれ、図28に示すような放射線に対する生存曲線を有することが知られている。実際に吸収線量を測定することで、あるボクセルの細胞にどれだけの放射線が当たったかを知ることができるため、そのボクセルの属する臓器の細胞の生存曲線により、細胞の生存率を予測し、次の照射を計画通りに行えるかどうかの判定に用いることができる。ネットワーク上の治療計画装置から生存曲線のテーブルを取得し、ボクセルごとの細胞の生存率を計算することができる。また、遺伝子情報により個人ごとに異なる放射線感受性がわかっている場合には、その情報を許容線量の設定に反映させることもできるため、治療計画装置から患者の遺伝子情報のテーブルを取得するようにするとよい。
【0107】
また計画時には、図29に示すように、例えば肝臓正常組織に対して残存組織の割合の最小値を設定する。実測吸収線量の累積値を基に各ボクセルの生存率が算出されると、肝臓正常組織の全ボクセルに対しての生存率が算出され、計画時に設定した最小値と照合され、警告を行う。
【0108】
装置の精度から得られる誤差の値も図30のように各ボクセルまたはボクセル群に対して設定され、許容量の閾値に反映される。
【0109】
(第3の実施例)
上記図18のワークフローを用いて、計画評価モジュール513の第3の実施例について説明する。
【0110】
[治療計画:ステップS1e]
まず、患者に対する放射線照射方法等の治療計画が図31の表に示すように治療前に予め治療計画装置上で術者等によって決められ、記憶部7に記憶される。ここでは1日3方向からの照射で3日間行う分割照射を想定する。6回分の照射の計画が表示部6のディスプレイ上に表や図で表して見られるようになっている。
【0111】
[直前画像撮影:ステップS3e]
治療開始時に、患者は放射線照射システム2の寝台上に治療計画と同じ位置になるように固定される。術者は図10のように配置された画像撮影装置101,102を操作して、患者の放射線照射領域の治療直前画像(図32)を撮影する。画像撮影装置101,102は、例えばX線撮像装置やX線CT装置、3D超音波診断装置等を用いることができる。ここでは放射線照射システム2と一体化したX線透視装置を用いたkv画像とする。ここで、治療計画装置と画像撮影装置101,102および放射線照射システム2の座標は一致している必要がある。座標を一致させる方法としては、治療時の寝台上の任意の点や患者の一部に置いたマーカーや患者体内または体外のランドマークとなる特徴を持つ部位の座標を基点にすること等も考えられるが、ここでは放射線照射システム2の照射中心に全ての画像の位置が合わせられているとする。
【0112】
[照射計画と直前画像の比較:ステップS4e]
計画評価モジュール513は、治療計画画像と治療直前画像は図33のように表示部6のディスプレイ上に重ねて表示する。
【0113】
[一致したかどうかの判定:ステップS5e]
上記表示により、治療に影響が出るような位置ずれの有無が術者の目視によって確認される。例えば腫瘍等の治療対象の位置が放射線照射位置から外れている、放射線に弱い危険臓器が放射線通過領域に入っている等の重要な位置ずれが最優先される。
【0114】
[位置合わせ:ステップS7e]
もしもこれらの重要な位置ずれが生じていた場合は、術者は、患者や寝台9を動かし、治療計画上の位置と一致するように調整する。
【0115】
ここで、術者の目視によらず、予め決められた画像上のマーカー位置や臓器の輪郭や特徴量等から自動的にずれが検出するようにすることもできる。目視検出、自動検出のいずれの場合も、重要な位置ずれが検出された場合には、医療事故を防ぐために制御装置が術者に警告したり、放射線治療装置が作動しないようにロックがかかったりすることが望ましい。
【0116】
[放射線照射:ステップS6e]
患者の位置が治療計画と一致すると、ボタンを押す等の術者の操作によりデータ取得制御部4は放射線照射システム2を駆動して治療計画に基づいて患者に放射線を照射する。
【0117】
[実測照射位置および実測吸収線量の記録:ステップS8e]
放射線照射システム2からの放射線照射時にデータ取得制御部4は散乱線検出システム3を制御し、放射線照射システム2から患者に照射された放射線の照射位置およびこの照射により発生する散乱線量を測定する。データ処理システム5は、変換処理部505により、測定された散乱線量から実測照射位置および実測吸収線量を求める。実測照射位置および実測吸収線量は、図34に示すように記憶部7に時系列的に記憶される。また、図35に示すように、吸収線量の分布図で表すこともできる。
【0118】
また、撮影された治療直前画像に記憶部7に記憶された治療結果(実測照射位置および実測吸収線量)と治療計画画像とを重畳した画像が表示部6のディスプレイ上に表示される(図36、37)。計画評価モジュール513は、各ボクセルに設定された予定照射量との差や、許容線量を超えていないかどうか等の判定を行う。一例として、図38の表に肝臓領域の場合の判定手順例を示す。上記判定により実測された吸収線量が許容範囲を超えた等の異常が発見された場合は図39のように光や音や文字表示で警告し、術者に注意を促す。
【0119】
[直前画像の撮影2:ステップS9e]
一度照射が終わった時点で、計画評価モジュール513は再び患者の治療直前画像を撮影する。固定不足による患者の動きの他に、治療中に臓器が変形したりして、位置ずれが生じる場合があるため、正確な治療をするためにはほぼリアルタイムで治療対象の周辺を確認することが望ましい。治療対象が許容範囲を超えて位置ずれしていると判定されたときには、一度治療を中止し、患者や寝台を動かして正しい位置に修正したりする必要がある。
【0120】
[次回照射の影響の確認:ステップS10e]
図40は、2回目の治療計画画像である。数値は次に照射する予定の放射線の分布を示している。これに上記2回目の直前画像(kv画像)を重ねて表示することにより、位置ずれが確認できる。次に治療に影響しない程度の弱い放射線を放射線照射システム2から患者の次回の照射の計画通りの位置へ照射(プレ照射)し、その照射位置を散乱線検出システム3により実測し、計画と実測の位置にずれがないかを、治療計画画像と実測吸収線画像との比較によって判断する(図41)。
【0121】
CT値等の画像上の値から計画評価モジュールにより自動的にずれが判定されてもよいし、画像上にスケーラーが表示されて、ずれの量を目視で確認できるようにすることも考えられる。修正できないずれ等で次の照射計画が不適切と判断された場合には、術者はそのまま治療を続けるか、治療を一時中止するか、治療計画を変更するかの選択をすることになる。
【0122】
このように、治療の途中で実際の照射状況を確認し、照射計画と照合しながら照射を実施することにより、正確かつ安全な放射線治療を行うことが可能となる。また、治療部位に対する照射漏れや正常部位に対する過剰照射を少なくすることができる。
【0123】
(計画更新モジュール)
次に、計画更新モジュール515の処理について説明する。
(第1の実施例)
計画更新モジュール515の第1の実施例は、実測された吸収線量を勘案して照射計画を評価し、放射線照射システム2の照射部203の最適な照射条件(位置および出力線量)を術者に提示するものである。
【0124】
なお、以下では、照射線量とは照射ヘッドから照射された線量、吸収線量とは人体組織が吸収した線量、蓄積線量とはある組織の吸収線量の累計を示すものとする。
【0125】
また、図42において、下記の通り変数を定義する。
A:放射線治療装置の出力 (k回目の照射における値)
exposure:放射線治療装置の照射ヘッド位置 (k回目の照射における値)
u:放射線治療装置の照射ヘッドの向き (k回目の照射における値)
r:座標系内の任意ボクセルへのベクトル
(r):任意のボクセルでの吸収線量(実測値)
w:各ボクセルの質量
R:要素の重心へのベクトル
μ:照射領域の吸収係数分布(全ボクセルの値を並べたベクトル)
μは、例えば、計画CTの画素値から求められる。
【0126】
(実績吸収線量の把握方法)
[吸収線量の定義]
リアルタイムに撮影されたCT、MRI等の医用画像から、主要臓器、組織を抽出・セグメンテーションを行い、対象腫瘍(治療部位)及びリスクオーガン(危険部位)を定義する。
【0127】
セグメンテーションされた対象腫瘍及びリスクオーガンをM個に要素分割(Meshing)する。このとき、各要素が均質と見なされる程度の大きさに分割を行う。変数7個(後述A、rexposureおよびu)が存在するので、要素分割数は7個以上とする。
【0128】
にあるボクセルの吸収線量はf(r)と定義されるため、重心位置Rが、
【数1】

【0129】
であるi番目の要素の平均吸収線量を、この要素に含まれる各ボクセルの吸収線量にボクセル毎の質量を乗じて加重平均された値として、以下のように定義する。
【数2】

【0130】
[構造物の同定]
照射計画において照射線量を定める場合、前回までに各構造物(主要組織、リスクオーガンなど)が吸収した線量(吸収線量)を考慮する必要がある。各構造物の過去の吸収線量を決めるためには、構造物の位置を追跡せねばならない。例えば、図43に示すように構造物が移動(回転および並進)し、かつ変形した場合、前回の構造物領域を要素分割する。前回の構造物の輪郭を移動および変形により調整を行い、今回の構造物の輪郭に重ね合わせる(前回の構造物の輪郭上にある節点を今回の構造物上に重ね合わせる)。前回の構造物と今回の構造物の容積を比較し、各要素の体積拡大・縮小率のバラツキが最小となるように今回の構造物内部の節点の位置を定める。これにより各要素の吸収線量を追跡できる。
【0131】
(多門照射プランの生成方法)
[各種の評価基準]
本日の全照射回数をK回とする。n回目まで照射した実測吸収線量をF、本日のK回の全照射に対する腫瘍領域の目標線量をdtumorとする。
【0132】
[条件1:腫瘍組織の線量評価]
腫瘍の全領域で吸収線量がdtumorを超えなければならない。
【0133】
n+1回目からK回目の照射予定の各吸収線量分布をE(A,rexposure,u,μ)、腫瘍組織の吸収線量が目標線量dtumor以上となるためには、r∈Ωtumor(Ωtumorは腫瘍領域を表す)なる全ての領域iについて、すなわち、腫瘍領域に属する全セグメントについて、下記の式を満たす必要がある。
【数3】

【0134】
[条件2:リスクオーガンへの照射線量評価]
リスクオーガンに対する照射線量も主要組織の照射線量と同様に吸収線量を評価する。
【0135】
N+1回目からK回目の照射予定の各吸収線量分布をE(A,rexposure,u,μ)とすると、リスクオーガンの吸収線量を許容線量 driskOrgan未満に抑えるためには、各リスクオーガンのセグメントに含まれる各要素が、r∈ΩriskOrganなる全ての領域iについて、下記式を満たす必要がある。
【数4】

【0136】
ただし、ΩriskOrganは、複数のリスクオーガンがあるうちのj番目のリスクオーガンの領域を表す。
【0137】
[条件3:リスクオーガンへの照射線量評価(その2)]
あるリスクオーガンの、ごく一部の限られた領域が許容蓄積線量を超過するからといって、機能がすべて消失してしまうとは限らない。リスクオーガンへの放射線線量の基準の別の方法として、「リスクオーガンの細胞の生存割合を、一定値以上にする」という基準も考えられる。リスクオーガンの残存機能(機能残存率)を次式により評価する。
【数5】

【0138】
ここで、Vは領域iの体積、priskOrganA(F)は、吸収線量Fがリスクオーガンjに照射されたときその組織の細胞が生存する確率である。ここで、Volume(r∈ΩriskOrgan)は該当する領域の体積の総和を表す。
【0139】
さらに、生体の維持のために必要なリスクオーガンjの残存機能率をratesurviveと定義すると次式を満たすかどうかで、その照射方法が適切かどうか判定できる。もし、不等式を満たすならば、そのときのA、rexposure、uを用いた照射は可能である。ratesurviveは計画時に設定する値である。
【数6】

【0140】
(照射方法の決定方法)
上記の評価基準(条件式1〜3)を用いて、次のような方針に基づいて照射方法を決定する。
条件式1〜3を満たすA、rexposure、uの組み合わせのなかで、機能残存率SriskOrgan(A,rexposure,u,μ)を最大にするA、rexposure、uを求める。ただしA、rexposure、uは装置の設計による条件、放射線照射システム2の幾何学的な制約条件(アーム長)や最大出力も満たす必要がある。なお、A、rexposure、uはk回目の照射の照射条件であり、n+1回目からK回目までのK−n回の全ての照射条件を決める必要がある。
【0141】
まず、条件式1〜3と装置の設計条件を制約条件として用いて、照射可能なA、rexposure、uの組み合わせの例をL個求め、これをC(l=1,...,L)とする。具体的な方法としては、乱数で発生させたK−n回の照射条件A、rexposure、uを条件式1〜3と設計条件でテストし、テストに合格したものをCとする方法がある。
【0142】
次に、これらL個の条件を用いて、次式を計算する。
【数7】

【0143】
これらSの中で最大の値を持つCが、照射プランの最適なプロトコルとしてユーザーに提示される。minj(..)は複数のjにおける括弧内の値のうち最小の値を求めることを表す。
【0144】
(照射計画更新)
[ステップ1:最初の照射計画]
Lとして(例えば)10万程度の大きな数を用い、前節の多門照射プランの生成方法を用いて、照射プランを作成する。この際、10万種類の照射条件Cの全部についてK個のE(A,rexposure,u,μ)を計算する必要があるが、これは、公知のコンピュータシミュレーションによる方法を用いれば実行可能である。このステップでK回全ての照射条件が一旦、決定される。Kは例えば10回などの比較的小さい値を設定する。最初の照射計画では終了した照射の回数は0なのでn=0とする。
【0145】
[ステップ2]
K回の照射条件の各々の照射を実行し、吸収線量分布を測定する(プレ照射)。ただし、被ばく線量を小さくするため、出力Aは実際の数百分の一とし、測定した吸収線量にその逆数を乗じることが必要である。
【0146】
[ステップ3]
1回目の照射条件(k=1)にて、その照射を実行した時の予測線量E(A,rexposure,u,μ)を画面に表示する。このとき表示するE(A,rexposure,u,μ)はステップ2で得たものである。
【0147】
[ステップ4]
1回目の照射条件で照射を実行する。
【0148】
[ステップ5]
1回目の照射における実績吸収線量を測定する(n=1)。
【0149】
[ステップ6]
1回目の実績吸収線量を用い、2回目以降の照射プランを再生成する。その際、LとしてKの数倍程度の値を用いる。初回で用いた10万種類より、大幅に小さい値を用いるため、高速に実行でき、照射の間の短時間に実行可能である。初回で決定した照射条件をCとした時、2回目の照射プランに用いるCはCに近い値から選ぶのが良い。このような選び方を用いれば、1回照射した後に更新した照射プランは初回の照射プランからの微修正となる。最初の照射計画ではE(A,rexposure,u,μ)をシミュレーションで求めたが、2回目以降では、シミュレーションとプレ照射の測定値を用いてE(A,rexposure,u,μ)を求める。すなわち、微修正に対する吸収線量分布の変化をシミュレーションで求め、ステップ2で測定した吸収線量に同様の変形を適用して、L個の照射プラン候補Cの各々についてk=n+1からk=KのK−n個の予測線量E(A,rexposure,u,μ)を求める。ここでは、照射が1回終わっているのでn=1である。
【0150】
[ステップ7]
2回目の照射条件(k=2)と、その照射を実行したときの予測線量を画面に表示する。
【0151】
[ステップ8]
2回目の照射条件で照射を実行する。
【0152】
[ステップ9]
2回目の照射における実績吸収線量を測定し、1回目と2回目の実績吸収線量を合計した蓄積線量を求める(n=2)。蓄積線量を求めるためには、前述した融合モデルが用いられる。
【0153】
[ステップ10]
ステップ6と同様にして、3回目以降の照射プランを再生成する。
【0154】
[ステップ11]
同様に第K照射まで実行する。
【0155】
上記の照射治療中に、以下説明する画面表示を行う。医師はこの画面を見て照射の過程が計画通りに進行しているかを判断する。設定したX線吸収係数の誤差や照射過程中に患者が大きく動くなどにより、計画と大幅なズレが生じた場合、例えば図49のように、リスクオーガンへの予測蓄積線量が許容線量を超えてしまうことがありうる。そのような場合は、ステップ6ではなくて、ステップ1と同様の手法で照射プランの再作成を行う。このようにすると、照射条件は最初の計画からの微修正でなく、これまでの蓄積線量を考慮に入れた上で、照射プランを大きく変更できるようになるため、リスクオーガンへの予測蓄積線量が許容線量以下になるような照射プランを見つけることが可能になる。
【0156】
(照射計画の更新フロー)
図44は、計画更新モジュール515における照射計画の更新処理の手順を示すフローチャートである。
【0157】
術者は、操作部8により患者情報を入力し(ステップS1h)、過去の放射線治療履歴の取得を要求する(ステップS2h)。計画更新モジュール515は、この要求を受け付けると、該当患者の過去の放射線治療履歴を記憶部7から読み出して表示部6に出力する(ステップS3h)。
【0158】
術者は、照射分割回数・照射線量等の設定情報を入力し(ステップS4h)、治療計画の作成を要求する(ステップS5h)。計画更新モジュール515は、医用画像から腫瘍・リスクオーガン等の構造物をセグメンテーションする(ステップS6h)。そして、セグメンテーションされた腫瘍・リスクオーガン等の構造物を過去の画像とレジストレーションする(ステップS7h)。
【0159】
計画更新モジュール515は、腫瘍・リスクオーガン等の構造物ごと過去の吸収線量と計画の照射線量を重ね合せる(ステップS8h)。腫瘍・リスクオーガン等の構造物ごとに吸収線量が目標吸収線量に達し、かつ許容吸収線量内に収まるか判定する(ステップS9h)。上記判定において条件が満たされない場合は、表示部6にその旨が提示され、術者は例えばリスクオーガンの機能損失を許容した条件を追加する(ステップS10h)。再度ステップS9hの判定を行い、条件が満たされた場合は、プロトコルを提示する(ステップS11h)。
【0160】
照射計画が条件を満たすかどうかの判定結果、および条件を満たすプロトコルの提示は、次のようになされる。計画を修正しない場合、ステップ6記載の方法で計画を微修正した場合、ステップ1記載の方法で計画を変更した場合の3つのケースの各々について、蓄積線量と予測線量の合計を求め、画面に表示する。その画面上にて、3つの各々のケースに対して条件を満たすかどうかの判定結果が提示される。術者は表示された画像と判定結果を参照して3つのうちのどのプロトコルを採用するかを決定し、採用するプロトコルを操作画面にて選択する。ステップ1記載の方法に対する画像表示と判定結果の提示は、最初表示されず、ユーザの操作に応じて表示されるように構成しても良い。
【0161】
術者により提示プロトコルが採用されると(ステップS12h)、計画更新モジュール515は、提示プロトコルをデータ取得制御部4に転送する(ステップS13h)。計画更新モジュール515は、再構成された吸収線量分布を取得し(ステップS14h)、腫瘍・リスクオーガン等の構造物ごとに吸収線量が目標吸収線量に達し、かつ許容吸収線量内に収まるかを判定する(ステップS15h)。この判定条件が満たされない場合は、術者は、再度リスクオーガンの機能損失を許容した条件を追加する(ステップS16h)。
【0162】
上記判定条件が満たされる場合は、計画更新モジュール515は、腫瘍・リスクオーガン等の構造物ごとに吸収線量が目標吸収線量に達するか、許容吸収線量内に収まるかを評価し、最適な照射プロトコルを導出する(ステップS17h)。そして、最適なプロトコルとして術者に提示する(ステップS18h)。
【0163】
(表示GUIイメージ)
図45および図46は、表示部6に表示されるGUIイメージの画面構成例である。
治療を開始する前に、術者は患者IDと患者氏名を入力し、過去の放射線治療データを要求する。このとき、放射線治療データとして、リスクオーガンの要素毎の吸収線量及び腫瘍組織毎の要素毎の吸収線量を要求する。
【0164】
[過去の治療履歴]
表示に際しては、リスクオーガンに含まれる要素毎の吸収線量に要素の重量を掛けて加重平均した吸収線量をリスクオーガンの吸収線量として表示する。腫瘍組織のも同様に、加重平均した吸収線量を腫瘍組織の吸収線量として表示する。
【0165】
リスクオーガンの許容限界を手動または自動(ガイドライン等で定められている基準値DBから数値を引っ張ってくる、など)で設定し、今回照射する門数、照射線量を設定し、計画の作成を要求する。
【0166】
[リスクオーガンの許容限界の設定]
自動の場合は、予め定めた許容蓄積線量、機能残存率を表示する。
【0167】
許容機能残存率は、いずれの照射ビーム経路でもリスクオーガンが曝露する場合に許容限界(ratesurvive)として利用する。残存機能率は、リスクオーガンに含まれる全要素のうち、許容蓄積線量を超過していない要素が占める割合で表現される。
【0168】
[照射分割数・線量の設定]
治療計画を作成するための条件を入力する。
【0169】
[多門照射プランの提示]
前述の条件を満足し、前述の計画線量の評価により最適なプロトコルを表示する。(照射後、Update要求することにより、1門前までの吸収線量を取得し、前述の多門照射プランの生成処理を用いて最適なプロトコルを生成し表示する。)
指定した門目の期待効果(あるいは、照射後は、その実績)、とプロトコルを視覚的に確認するために“照射最適位置“、”実測・予測吸収線量“及び吸収線量履歴を表示する。
【0170】
[照射可能範囲の表示]
図47は、照射位置の提示方法を示す図である。前述の計画線量の評価を満たす照射位置・領域をリスクオーガンに損傷を与える領域、腫瘍組織に十分な線量を照射できる領域に色別して表示する。図中の治療装置をドラッグし、回転させるとその照射位置に応じた“実測・予測吸収線量”および“吸収線量履歴”が表示される。これにより、術者は効果を確認できる。術者が図内の治療装置をドラッグした位置から照射を行う場合は、“submit”ボタンを押して“多門計画プラン”に反映する(→術者が手動で決めることもできる)。“多門計画プラン”にて“update”することで術者が指定した照射位置に基づいてそれ以降の計画を更新する。
【0171】
[各構造物の吸収線量と残存機能]
図48は、腫瘍およびリスクオーガンにおける吸収線量と要素数の関係を示す図である。または、生存率を表示してもよい。1回ごとの照射についての予定値を示してもよいし、本日予定している全ての照射終了後の予定値を示してもよい。当然、実際に照射されると、その実測値を表示させる。すでに終了した照射の実測値と、残りの照射の予定値を表示してもよい。それにより、最終的に予定していた目標を達成できるかどうかが、途中で分かるようになる。
【0172】
[過去の吸収線量履歴の表示]
腫瘍、リスクオーガンへの蓄積線量(予想値、実測値の両方)を表示する。たとえば、照射直前は図49に示すように、1〜5(最終)門までの予想値がプロットされており、腫瘍に十分は線量を照射すると同時に、リスクオーガンへの線量は許容値以下となっている。
【0173】
第1門の照射を行い、ずれが生じた場合が図50である。第1門の実測値と、2〜5最終)門までの予想値がプロットされ、このまま照射を続けた場合、目標を達成できないことが分かる。こうした場合には、ステップ(6)あるいはステップ(1)に戻って、計画修正を行う。
【0174】
腫瘍組織の割合(治療達成率)を
【数8】

【0175】
と定義し、これを縦軸に用いても良い。ここで、Volume(..)は該当する領域の体積の総和を表す。
【0176】
このように、第1の実施例では、過去の吸収線量を勘案して照射計画の評価関数を作成し、評価関数を満たす放射線照射システム2の照射部203の位置および出力線量を術者に提示するものである。
【0177】
(第2の実施例)
計画更新モジュール515の第2の実施例は、リスクオーガン(危険部位)が放射線ビームに曝露されるリスクを評価する。実測された吸収線量を勘案して照射計画を評価し、放射線照射システム2の照射部203の最適な照射条件(位置および出力線量)を術者に提示するものである。
【0178】
リスクーガンが放射線ビームに曝露するリスクはビーム経路とリスクオーガンの配置に依存する。よって、評価指標として、放射線ビームの中心からリスクオーガンまでの距離を考える。リスクオーガンに含まれる各要素から放射線ビームまでの距離の和を最大にするビーム経路を、リスクオーガンが放射線ビームに曝露するリスクの最も低い最適なビーム経路として術者に提案する。
【0179】
リスクオーガンが複数ある場合は全てのリスクオーガンに含まれる要素から放射線ビーム経路への距離の総和を最大にするビーム経路を最適なビーム経路として術者に提案する。例えば、図51に示したi番目のリスクオーガンに含まれるj番目の要素からビーム経路までの距離は、次式のように表される。
【数9】

【0180】
全てのリスクオーガンの全ての要素からの距離はΣΣ|hij|となり、計画更新モジュール515は、この距離を最大とするビーム経路(rexposureおよびu)を術者に対し提示する。mini,j(hij)を最大とする経路を求めて提示しても良い。
【0181】
上記第2の実施例では、リスクオーガンが放射線ビームに曝露するリスクをリスクオーガンとビーム経路までの距離で評価する。このように、予防領域を数値的に導入することにより、リスクオーガンが放射線ビームに曝露するリスクを低減するビーム経路を提示することが可能となる。
【0182】
以上述べたように上記実施形態によれば、放射線吸収線量がリアルタイムに任意断面の形態画像に重畳表示されるため、放射線が照射された位置や吸収線量を迅速且つ簡単に視覚的に確認することができる。さらに、取得された吸収線量に基づいて、治療計画を事前に評価するための情報や、最適な治療計画などの治療支援情報を得ることが可能となる。これにより、治療計画通りに放射線治療が行われているか否かを治療中に把握することができ、放射線の治療部位に対する過少照射やその周辺の正常部位に対する過剰照射等を防ぐことができる。その結果、放射線治療の効果を向上、被検体への余分な被曝量を低減を実現することができ、放射線治療の質の向上に寄与することができる。
【0183】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。具体的な変形例としては、例えば次のようなものがある。
【0184】
本実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布することも可能である。
【0185】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0186】
以上本発明によれば、放射線照射治療において、実際に患者のどの部位に、どれだけの線量が照射されたかを実際に計測し、その結果を所定の形態で提供することで、病変部への過剰照射や正常組織への過剰照射を防ぐことを可能とする放射線治療システム、放射線治療支援装置及び放射線治療支援プログラムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1】図1は、本放射線治療システムの治療用放射線に基づく被検体からの散乱線計測の原理、方法を説明するための図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る放射線治療システムのブロック構成図を示している。
【図3】図3は、データ処理システムの構成を示す機能ブロック図である。
【図4】図4は、記憶部に記憶されるデータ構成を示す図である。
【図5】図5は、本放射線治療システムの動作を含む放射線治療時における処理の流れを示したフローチャートである。
【図6】図6は、本放射線治療システムの散乱線の測定形態の一例を示した図である。
【図7】図7は、本放射線治療システムの動作を含む放射線治療時における処理の流れを示したフローチャートである。
【図8】図8は、本放射線治療システムの散乱線の測定形態の一例を示した図である。
【図9】図9は、本放射線治療システムの散乱線の測定形態を別の例を示した図である。
【図10】図10は、各システムの位置関係を示した図である。
【図11】図11は、融合モデルモジュールの処理手順を示すフローチャートである。
【図12】図12は、融合モデルデータにより表示される吸収線量画像の表示例である。
【図13】図13は、放射線感度閾値表示に対する吸収線量画像の表示例である。
【図14】図14は、分子レベルの活性度情報を付加した場合の吸収線量画像の表示例である。
【図15】図15は、本放射線治療システムの放射線治療のワークフローの一例を示す図である。
【図16】図16は、計画評価モジュールにより生成される表示画像の一例を示す図である。
【図17】図17は、計画評価モジュールにより生成される表示画像の一例を示す図である。
【図18】図18は、本放射線治療システムの放射線治療のワークフローの他の例を示す図である。
【図19】図19は、計画評価モジュールにより生成される表示画像の一例を示す図である。
【図20】図20は、位置合わせ処理の手順を示すフローチャートである。
【図21】図21は、計画評価モジュールにより生成される表示画像の一例を示す図である。
【図22】図22は、現在の状態とシミュレーション結果を表形式で表した例を示す図である。
【図23】図23は、照射容量を超えた場合の警告処理の手順を示すフローチャートである。
【図24】図24は、計画画像と実測吸収線画像との位置ずれを判定するためにスケーラーを表示した例を示す図である。
【図25】図25は、計画画像をセグメント分割した図である。
【図26】図26は、放射線ビームの照射範囲を示す図である。
【図27】図27は、許容線量テーブルの構成の一例を示す図である。
【図28】図28は、放射線に対する細胞の生存曲線の一例を示す図である。
【図29】図29は、治療計画を表形式で表した一例を示す図である。
【図30】図30は、計画値に許容誤差を反映した図である。
【図31】図31は、治療計画を表形式で表した一例を示す図である。
【図32】図32は、放射線照射領域の治療直前画像の一例を示す図である。
【図33】図33は、計画画像と治療直前画像の一例を示す図である。
【図34】図34は、記憶部7に記憶される実測照射位置および実測吸収線量を表した図である。
【図35】図35は、実測照射位置および実測吸収線量を分布図で表した図である。
【図36】図36は、治療直前画像に治療結果と治療計画画像と重畳した画像の一例を示す図である。
【図37】図37は、治療直前画像に治療結果と治療計画画像と重畳した画像の一例を示す図である。
【図38】図38は、肝臓領域の場合の判定手順の一例を示す図である。
【図39】図39は、実測された吸収線量が許容範囲を超えた際の警告表示の一例を示す図である。
【図40】図40は、次回照射の治療計画画像の影響を示す図である。
【図41】図41は、治療計画画像と実測吸収線画像を重畳した画像の一例を示す図である。
【図42】図42は、変数の定義を説明するための図である。
【図43】図43は、セグメント分割を説明するための図である。
【図44】図44は、照射計画の更新処理の手順を示すフローチャートである。
【図45】図45は、表示部に表示される画面イメージの一例を示す図である。
【図46】図46は、表示部に表示される画面イメージの一例を示す図である。
【図47】図47は、照射位置の提示方法を示す図である。
【図48】図48は、腫瘍およびリスクオーガンにおける吸収線量と要素数の関係を示す図である。
【図49】図49は、腫瘍、リスクオーガンへの蓄積線量を表示した図である。
【図50】図50は、腫瘍、リスクオーガンへの蓄積線量を表示した図である。
【図51】図51は、リスクオーガンと放射線ビームの配置を示した図である。
【符号の説明】
【0188】
1…放射線治療システム、2…放射線照射システム、3…散乱線検出システム、4…データ取得制御部、5…データ処理システム、6…表示部、7…記憶部、8…操作部、9…ネットワークI/F、201…電力供給部、203…照射部、205…タイミング制御部、207…ガントリ制御部、301…検出器、303…コリメータ、305…移動機構部、307…位置検出部、501…補正処理部、503…再構成処理部、505…変換処理部、507…データ処理部、511…融合モデルモジュール、513…計画評価モジュール、515…計画更新モジュール、701…スキャンシーケンス、702…制御プログラム、703…散乱線ボリュームデータ、704…吸収線量ボリュームデータ、705…形態画像データ、706…許容線量テーブル、707…治療計画データ、708…治療履歴データ、709…融合モデルデータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に治療用放射線ビームを照射する照射手段と、
前記治療用放射線ビームに基づいて発生する散乱線を検出する検出手段と、
前記治療用放射線ビームの照射毎に前記散乱線のデータから被照射位置及び吸収線量を取得する取得手段と、
前記取得された被照射位置及び吸収線量の少なくとも一方と、前記被検体の治療部位及び正常部位の位置毎の基準線量とを対比させた情報を生成する生成手段と
を具備することを特徴とする放射線治療システム。
【請求項2】
被検体に治療用放射線ビームを照射し、前記治療用放射線ビームに基づいて発生する散乱線を検出することで得られる散乱線データを用いて治療支援情報を生成する放射線治療情報提供装置であって、
前記治療用放射線ビームの照射毎に前記散乱線のデータから被照射位置及び吸収線量を取得する取得手段と、
前記取得された被照射位置及び吸収線量の少なくとも一方と、前記被検体の治療部位及び正常部位の位置毎の基準線量とを対比させた情報を生成する生成手段と
を具備することを特徴とする放射線治療支援装置。
【請求項3】
前記被検体の治療部位及び正常部位の位置毎の基準線量と前記被照射位置及び吸収線量を照合する照合手段と、
前記生成された前記対比させた情報と前記照合結果を提示する提示手段と
をさらに備えることを特徴とする請求項2の放射線治療装置。
【請求項4】
前記生成手段は、前記取得された被照射位置と前記基準線量に基づいて計画された照射位置とを重ね合わせた画像を生成することを特徴とする請求項2記載の放射線治療支援装置。
【請求項5】
前記生成手段は、前記治療用放射線ビームの照射毎の吸収線量を累積した累積吸収線量と前記基準線量とを対比させた情報を生成することを特徴とする請求項2記載の放射線治療支援装置。
【請求項6】
前記生成手段は、前記累積吸収線量を等高線表示することをさらに特徴とする請求項5記載の放射線治療支援装置。
【請求項7】
前記提示手段は、各部位の累積吸収線量が当該部位の基準線量を超えた場合に、警告情報を提示することをさらに特徴とする請求項5記載の放射線治療支援装置。
【請求項8】
前記提示手段は、各部位の累積吸収線量が当該部位の基準線量に満たない場合に、警告情報を提示することをさらに特徴とする請求項5記載の放射線治療支援装置。
【請求項9】
前記提示手段は、正常部位の各区分の生存率が当該区分の基準値を下回る場合に、警告情報を提示することをさらに特徴とする請求項5記載の放射線治療支援装置。
【請求項10】
前記照合手段は、前記正常部位の体積に応じて基準線量が異なる場合に、前記被検体の正常部位における吸収線量をもとに当該正常部位に照射された体積を求め、この体積に応じた基準線量を用いることをさらに特徴とする請求項3記載の放射線治療支援装置。
【請求項11】
前記治療用放射線ビームより線量の少ない照射を行うプレ照射手段をさらに具備し、
前記生成手段は、前記プレ照射により取得された被照射位置及び吸収線量の少なくとも一方と前記基準線量とを対比させた情報を生成することを特徴とする請求項2記載の放射線治療支援装置。
【請求項12】
被検体に治療用放射線ビームを照射し、前記治療用放射線ビームに基づいて発生する散乱線を検出することで得られる散乱線データを用いて治療支援情報を生成する放射線治療情報提供装置を制御するプログラムであって、
コンピュータに、
前記治療用放射線ビームの照射毎に前記散乱線のデータから被照射位置及び吸収線量を取得する取得機能と、
前記取得された被照射位置及び吸収線量の少なくとも一方と、前記被検体の治療部位及び正常部位の位置毎の基準線量とを対比させた情報を生成する生成機能と
を実行させることを特徴とする放射線治療支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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