説明

放射線治療装置において標的容積を位置決めするための装置および方法

人体模型または患者の腫瘍などのような標的容積(112)に向かって放射線ビーム(105)を向ける放射線治療装置において前記標的容積(112)を位置決めするための装置であって、標的を固定する標的支持台(100)と、前記標的支持台(100)とは既知の幾何的関係に、固定手段(101,102,104,106,107;301,302,304,305,306;208,209)によって固定され、前記放射線ビーム(105)との交差位置を検出することができる2次元放射線検知器(103)と、前記検出された交差位置に基づいて、前記ビーム(105)と前記標的支持台(100)との相対位置を補正する補正手段を含むことを特徴とする装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療の分野に関する。より具体的には、本発明は、放射線治療装置において標的容積を位置決めする装置および方法に関する。前記標的としては、患者または照射試験において使用される前記患者を模した人体模型がある。
【0002】
関連技術の説明
患者の身体に腫瘍が発見されたら、さらなる診断のため、先ず腫瘍を可視化する必要がある。この可視化は、例えば、コンピューター断層撮影(CT)走査システムまたはMRI装置のような撮像システムで行なうことができる。これによって腫瘍容積の3D画像が得られる。こうして収集されたデータに基づいて臨床治療計画を作成することができる。ここで初めて放射線治療装置による実際の治療を開始することができる。
【0003】
例えば、陽子治療に使用されるような公知のハドロン粒子治療装置においては、サイクロトロンのような加速機によって加速された治療放射線ビームを、治療ベッドのような治療テーブルに患者が固定されている治療室へ誘導する。照射に先立って、患者の身体のうち、照射を受ける部位が治療放射線ビームと整合するように位置決めシステムによって治療テーブルを正確に位置決めしなければならない。
【0004】
多くの場合、照射はさまざまの異なる角度から行なわれる。その場合、放射線源を回転させるためにガントリー・システムが使用される。ハドロン粒子治療においては、例えば、陽子、中性子、アルファ粒子または炭素イオンのビームのような強粒子ビームを患者の特定標的部位、例えば、治療すべき腫瘍に向かってノズルから発射するのが典型的な方法である。腫瘍部位は、撮像システム(CT−スキャンまたはMRI)において、マーカーと一緒に、またはマーカーを介して判定される。マーカーとしては、診断用撮像システムで視認できる患者自身の骨、または患者の皮下に挿入されたゴールド・シード、またはCT−スキャン撮影の場合なら患者の皮膚に設けた放射線不透過インクによるマークのような人工的なマーカーが使用される。いずれの場合にも、診断用撮像システムにおいても、放射線治療装置に患者を位置決めするのに使用されるシステムにおいても、これらのマーカーを視認できることが必須条件である。
【0005】
ガントリー型放射線治療装置においては、アイソセンターは、ノズルからのビーム経路軸がガントリーの回転軸と交差する点として定義される。このアイソセンターは治療の進行中、終始一定の位置に保たれる。
【0006】
ビームが治療計画で定められた標的だけを照射するように、放射線治療装置に対して患者を正確に位置決めしなければならない。さもないと、ビームが患者の体内の健康な細胞を損傷する恐れがある。従って、治療開始前の患者位置決めの正確さが治療を成功させる上で極めて重要になる。
【0007】
多くの場合、治療の対象となる患者は、周期的な治療を受け、長期に亘って標的に繰返し照射が行なわれる。従って、毎回の治療において、患者を正確に位置決めする必要がある。
【0008】
既に述べたように、適量の治療用放射線を照射する直前に標的容積の正確な位置を識別するプロセスは極めて重要である。治療装置に対して患者を正確に位置決めするため、先ず患者の体内の1つまたは2つ以上のモニュメントに対する標的の位置を正確に規定する。この作業は、PET−スキャナーのような外部診断撮像システムで行なわれる。標準的な患者位置決めにおいては、モニュメントは患者の骨構造上の点から成り、これらのモニュメントを基準にして標的位置が規定される。次いで、治療装置における患者位置決め装置のベッドに患者を配置する。患者位置決め装置をいわゆる「セットアップ位置」へ移動させ、この位置において、放射線写真、レーザー光線および/またはその他の、前記モニュメントを位置検出できる手段を利用して患者位置を決定する。必要に応じて補正量を求める。次いで、患者位置決め装置を使用して患者を適正な治療位置へ移動させる。セットアップ位置では、患者はアイソセンターまたはその近傍に位置する。このようなアプローチでは、CT−スキャンおよびすべての治療日の間に腫瘍が転位しないことを前提としている。
【背景技術】
【0009】
公知技術の検討
米国特許第5,117,829号明細書は、患者位置整合システムおよび放射線治療方法を開示している。この文献に開示されている方法は、
治療すべき部位の3D画像をモニュメントと共に得、
治療装置内に配置された撮像システムが前記治療すべき部位およびモニュメントから得るであろう画像を表わすディジタル再現X−線画像(DRR)を前記3D画像から算出し、
モニュメントの位置を含むディジタルX−線画像(DR)を得、
DRRおよびDR上のモニュメント位置を比較し、この比較から患者位置に関する補正量を算出する
ステップを含む。
DRは、補正のタイプに応じて前後(AP)方向または左右方向に求めることができる。AP画像の場合、治療ビームの方向に沿って撮像ビームを向けるようにX線源をノズルに挿入し、治療ビームを発射する前に取り除かねばならない。但し、この方法は、発射される治療ビームに対する治療装置内の撮像装置の幾何的関係が確実に既知であることを前提としている。このような患者位置決め方法においては、並進座標および角座標に対する補正手段を有する高精度且つ高再現性の機械的患者位置決め装置が要求される。
【0010】
放射線治療装置において患者を位置決めする公知の方法の多くは、ガントリー放射線治療装置を念頭に設計されている。このような方法および装置の1例が、上記米国特許第5,117,829号明細書に開示されている。この文献では、治療ビームを向けるべき治療容積内の特定位置を識別するため、標的のアイソセンター位置を選択し、マークする。放射線治療装置アイソセンターは、ビームの起点であるガントリー周りの位置に関係なく、ビームが集束するガントリーの中心における点90である。従って、治療計画の目的は、問題の組織容積、即ち、標的のアイソセンターを放射線治療装置のアイソセンター90と所定の幾何的関係にあるスペース内の特定の点に合わせることにある。多くの場合、治療計画として、標的のアイソセンターを放射線治療装置のアイソセンター90に直接整合させる。しかし、全く異なる原理に基づいて設計された放射線治療装置もある。特許文献としての国際公開第2005/053794号パンフレットは、いわゆる「偏心」ガントリーが前記ガントリーの回転軸から2つ以上の別の治療ルームに向かって移動させる構成を開示している。適切な遮蔽構造を設けることにより、別の患者が別の治療ルームに待機している間、患者はこれら複数の治療ルームの1つで治療をうけることができる。この装置では、アイソセンターというコンセプトは存在しない。
【0011】
従って、アイソセンターのコンセプトを欠く装置にも適用でき、高い精度と信頼性を以って、放射線治療装置において患者を位置決めできる装置および方法の実現が望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
発明の概要
本発明は、公知技術の問題点を克服し、公知装置では意図されなかった他の利点を達成することができる。
【0013】
本発明は、その第1の対象として、人体模型または患者における腫瘍のような標的容積に向かって放射線ビームを向ける放射線治療装置において、前記標的容積を位置決めするための装置を開示する。この装置は有益な構成として、
標的を固定する標的支持体と、
標的支持体とは既知の幾何的関係に、固定手段によって固定され、放射線ビームとの交差位置を検出することができる2次元放射線検知器と、
前記検出された交差位置に基づいて、ビームと標的支持体との相対位置を補正する補正手段と
を含むことを特徴とする。
【0014】
装置は、第1の方向に向けられた第1組の電離箱と、第2の方向に向けられた第2組の電離箱とを含み、交差点を求めることを可能にする。マトリックス装置を使用することが可能である。
【0015】
固定手段として、標的支持体に、例えば、標識を付されている固定用孔に固定された固定用フレームを採用することができ、この固定用フレームによって検知器を標的の可能な限り近傍に配置することができる。検知器を標的、特に患者の腫瘍の近傍に配置することによって検知器の解像度と同様に高い位置決め精度が得られる。
【0016】
固定手段を、レール上を摺動する摺動可能なキャリッジを有する標的支持体に固定された固定用フレームとして構成することも可能であり、この固定フレームにより検知器を標的、特に患者の腫瘍の近傍に連続的に位置決めすることができる。
【0017】
固定用フレームを円弧状または多角形状に形成することができる。
【0018】
好ましくは、放射線ビームが検知器とほぼ直交方向に交差するように検知器および前記放射線ビームを位置させることにより、交差点の精度を高くする。
【0019】
補正手段は、放射線ビームを正確に位置補正する手段として構成することができる。この構成は、特にビームを移動させるための走査マグネットを有する放射線治療装置に好適である。この場合、補正オフセットを走査マグネットに適用するだけでよい。補正手段は、標的支持体を正確に位置補正する手段として構成することもできる。検知器は標的の前方に配置される。
【0020】
本発明の第2の対象として、放射線治療装置において標的を位置決めする方法であって、下記ステップ、即ち、
標的と放射線検知器との相対位置を求め、
後続のステップにおいて前記相対位置が固定されたままに維持する手段を設け、
放射線ビームと検知器との所期の交差点を求め、
低治療レベル放射線ビームを検知器に向け、前記ビームと前記検知器との実交差点を求め、
2つの位置の差に相当する補正ベクトルを算出し、
実交差点が前記所期の交差点と一致するように放射線ビームと放射線検知器との相対位置を補正する
ステップを含むことを特徴とする方法を提供する。標的としては、照射試験用の人体模型または患者の腫瘍がある。
【0021】
放射線ビームと放射線検知器との相対位置を補正するステップは、好ましくは、放射線ビームを移動させるステップを含む。これに代わる態様では、放射線ビームと放射線検知器との相対位置を補正するステップが、標的および放射線検知器を一緒に移動させるステップを含む。
【0022】
標的と検知器との相対位置を求めるステップは、好ましくは、
標的支持体に対して3つ以上の固定点を有し、固定点が検知器と既知の幾何的関係を有する検知器を設け、
標的支持体に標的を固定し、
標的支持体の検知器固定点に、画像診断の際に視認できるマーカーを設け、
標的およびマーカーの双方を視認可能な画像診断技術を利用して標的の画像を得、
画像から、標的とマーカーとの幾何的関係を求め、
画像から標的と検知器との幾何的関係を推測する
ステップを含む。
【0023】
本発明の第3の対象は、偏心ガントリーを有する放射線治療装置における本発明の装置および/または本発明の方法の使用である。
【0024】
本発明のその他の対象および利点の詳細を添付図面に示す実施形態を例にとって以下に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
実施形態の詳細な説明
図1は、本発明の装置を利用する放射線治療装置の部分図である。放射線ビーム105は、患者支持体100に横たわる患者111に向けられる。照射ノズルは、偏向マグネット113として象徴的に図示されている。本発明では、図1に断面図で示す放射線検知器103を、患者111およびその腫瘍112の近くに位置する患者支持体100に固定し、ほぼ直交の状態でビーム105を検知器103と交差させる。
【0026】
図2を参照して、放射線治療装置における患者の位置決めの基本となる幾何学的原理を説明する。(図示しないが)患者はベッド100またはその他の患者支持体上に臥せている。患者座標系(Xp,Yp,Zp)は、その原点を腫瘍における基準点に有する。Yp軸はベッド100の長軸と平行である。Xp軸はベッド100の短軸と平行である。Zp軸は垂直である。治療ビーム105はノズル110によって供給される。ノズル110には座標系(Xn,Yn,Zn)を対応させる。軸Znは治療ビームと共線関係にある。軸XnおよびYnはノズルにおけるアパーチュアの方向を規定する。
【0027】
治療ビーム105の位置は、下記条件によって決定される。即ち、
1.治療ビーム105は、(腫瘍中の基準点は患者座標系の中心に位置するから)患者座標系の中心と交差しなければならない。
2.患者座標系の原点とノズルとの間の距離Dは、治療計画システムによって規定される。この距離を正確に測定することは必須条件ではない。即ち、患者における粒子の飛程は組織の厚さに応じて異なる。もし距離Dが大きすぎると(または小さ過ぎると)、患者とノズルとの間の空隙が広過ぎる(または狭過ぎる)ことになる。組織の厚さは変わらない。従って、空隙が広くなる(狭くなる)ことは、患者における粒子飛程に大した影響を及ぼすことはない。
3.治療ビームと(Xp,Yp)平面との間の仰角βは、治療計画ソフトウェア(TPS)によって決められる。この角度はガントリー角度に関連する。
4.Yp軸を中心とする(Xp,Yp)平面における治療ビームの発射の水平回転角度αは、TPSによって規定される。この角度はベッドの回転角度に関連する。
5.放射線ビームを中心とする(Xn,Yn)座標系の回転は、TPSに従って計算される角度γによって規定される。この角度は患者に対するビーム・アパーチャーの回転角度を規定する。シンメトリカル・ビームの場合、この角度は重要ではない。
【0028】
結論として、患者座標系(Xp,Yp,Zp)とノズル座標系(Xn,Yn,Zn)との相対位置を規定するのに6つのパラメータが必要である:
・ノズル座標系における患者座標系の原点の位置を規定する3つの座標。これら3つの座標は条件(1)および(2)によって規定される。
・患者座標系とノズル座標系との相対方向を規定する3つの角度(α,β,γ)。これら3つの角度は条件(3),(4)および(5)によって規定される。
【0029】
患者とノズルとの相対位置および相対方向は、図2に示す座標系中の6つのパラメータによって規定されている。勿論、上記座標系とは異なる座標系を使用することも可能である。例えば、図2に示すような角度(α,β,γ)に代えてベッドの回転、ピッチおよびロール角度を規定することができる。但し、いかなる座標系を使用する場合でも、3つの角度および3つの位置座標を規定することが必須条件である。座標変換を行なうことによって座標系をコンバートすることができる。従って、普遍性を損なわないように、ここでは図2に示す座標系に基づいて説明する。
【0030】
公知の位置決め装置および位置決め方法においては、ノズル座標系と既知の幾何的関係にある撮像光源および撮像受光器から成る撮像システムを患者に向ける。前記撮像システムは、腫瘍基準点と既知の幾何的関係にある可視標識の位置を識別する。これらの標識の予期位置と検知された位置との差から、補正ベクトルを算出する。
【0031】
発明者は本発明の構成に新しい座標系を導入する。測定平面120が治療ビーム105内に存在すれば、ビーム・プロフィールはこの平面内で測定される。理想的には、この平面は治療ビームと直交する。測定平面は2つの座標軸:Xd,Ydによって規定される。3つの角度(αd,βd,γd)がノズル座標系に対する測定平面座標の相対方向を規定する。
【0032】
治療中、ノズルに対する患者の方向角度(α,β,γ)は、適正なベッド回転角度、ベッド・ピッチ角度およびロール角度およびガントリー回転角度を選択することによって設定される。ベッドの適正な方向角度およびガントリーの適正なガントリー回転角度は、治療室環境の幾何的条件を知ることによって得られる。さらに、これらの位置は、公知技術(例えば、ノズルおよび患者またはベッドにおけるマーカーの位置をチェックするための、例えば、文献US2002/0065461号に記載されているようなステレオ・カメラ)を利用してチェックすることができる。
【0033】
患者の方向角度をチェックしたら、患者の並進位置を検証しなければならない。既に述べたように、並進方向の1つ(Zn軸)に沿った位置は重要ではない。本発明は残る2つの並進方向:XnおよびYn軸に沿った患者と治療ビームとの相対位置をチェックする方法を開示する。
【0034】
患者はベッド100上に臥せることになる(図3参照)。ベッド100には2列の固定用孔107が設けてある。これらの孔には標識を付してあり、患者固定装置をベッド100に取り付けるのに使用される。こうすることによって、ベッド100上での患者の位置決めが高い再現性を提供することになる。平面放射線検知器103は放射線ビーム105の強さの2次元空間分布を測定する。放射線検知器は放射線ビーム105の軸とほぼ直交する平面における2次元の強さ分布を測定することができる。この放射線検知器は、1つの方向に延びる細長い第1電離箱と、他の方向に延びる細長い第2電離箱とで構成することができる。放射線検知器103をピクセル電離箱として構成することもできる。半導体またはフィルムのようなタイプの放射線検知器を利用することもできる。治療中、取り付けたままにして置いてもよいという点で、放射線‐透過性の放射線検知器を選択することが好ましい。放射線検知器103の平面と放射線ビームとの間の角度値は既知である。
【0035】
ベッド100または患者に少なくとも3つの位置マーカー108を取り付ける。位置マーカー108は、CTスキャナーでも治療室に設置された患者位置決めシステム(例えば、立体視赤外線カメラまたはX−線撮像システム)でも視認可能な材料から製造する。これらのマーカーは、例えば、米国特許第6,865,253号明細書から公知である。
【0036】
ベッドには2つのフレームを取り付ける。フレーム集合体には幾つかのタイプがある。即ち、第1の実施形態では、フレームは半円形を呈する(図3参照)。固定用孔107を利用して2つのフレーム101,102をベッド100に固定する。フレーム101,102を取り付ける際に利用される固定用孔107は、患者における腫瘍の凡その位置と第1フレーム101との間の距離が腫瘍と第2固定用フレーム102との間の距離とほぼ等しくなるように選択される。従って、腫瘍は2つのフレームのほぼ中間位置に来る。粒子ビームがベッドの上方から来る場合には、半円形フレームをベッドの頂部に取り付けことができる。粒子ビームがベッドの下方から来る場合には、ベッドの底部に取り付けることができる。図3は、陽子ビームがベッドの上方から来る場合の形態のみを示している。円弧状固定用フレーム101,102のリムには固定用孔401が等間隔に形成されている(図6参照)。固定用孔には標識が付されている。3本の固定用脚104,106が固定用孔401に挿入される。放射線検知器103は固定用脚に挿入される。3つの固定用孔401と固定用脚104,106の長さは、放射線検知器103が放射線ビームとほぼ直交する平面内で放射線の場を測定するように選択される。固定用脚は患者ごとに異なる。適正な固定用孔401が使用されるように機構が構成されている(図6参照)。固定用フレーム101または102のリムにはプラスチック片402が取り付けられている。プラスチック片402には2つの孔403が形成されている。固定用フレーム102を被覆するプラスチックには1つの孔が形成されている。放射線検知器103の脚104,106を固定するのに使用されるリムの孔を除いて、プラスチック片はリムの孔401すべてを被覆する。プラスチック片402には、固定用フレーム101,102のリムにおける固定点405,406にプラスチック片を取り付ける2つの固定システム410,411を設ける。固定システム410,411は対称であるから、プラスチック片402をリムに当接させる位置は1つだけである。これら2つのフレームのプラスチック片が裏返しになるのを避けるため、フレーム101および102に使用される固定システムが互いに異なるように構成されている。孔403の位置は、測定平面放射線検知器が放射線ビームとほぼ直交するように慎重に選択される。従って、孔の位置は個々の患者ごとに異なる。プラスチック片と患者とを独自にリンクさせるため、プラスチック片402に標識を貼り付ける。標識としては、例えば、バー・コードを採用することができる。固定用脚104または106は孔401に挿入される。脚104,106の端部には、マーカー407が配置される。これらのマーカーは放射線検知器の位置をシミュレートする。マーカーはCT‐スキャナーで視認することができる。固定用フレーム101,102は円弧状であり、固定用孔401が等間隔に配置されているから、患者を中心に広い角度範囲内で放射線検知器103を固定することができる。角度範囲は不連続角度ステップによってカバーされる。
【0037】
第2の実施形態でも、フレームは半円形に形成される(図4)。ベッド100の両側に2本のレール208が配置されている。レール208上を摺動するキャリッジ209に2つの半円形フレーム101,102が取り付けられている。レール上でのキャリッジの位置は、半円形フレームを規定の位置へ再現可能に移動させることができるように割出しする。腫瘍が2つの固定用フレーム101,102のほぼ中間位置に来るようにキャリッジを移動させる。放射線検知器は、第1実施形態に関して上述したように、フレーム101,102に固定する。プラスチック片402も第1実施形態に関して上述したように使用する。
【0038】
第3実施形態では、フレームが非円弧状の形状を有し、例えば、台形を有することができる(図5参照)。これら2つの台形フレーム301,302を、固定用孔107を用いてベッド100に固定する。台形固定用フレーム301のそれぞれの側に2つの固定用孔を設ける。台形フレーム302のそれぞれの側には1つの固定用孔を設ける。放射線検知器103の脚304,305および306をこれらの固定用孔に挿入する。この実施形態では、患者を中心とする3つの異なる位置に放射線検知器を配置することができる。
【0039】
患者位置決め方法は2つのステップを含む。即ち、治療に先立って放射線検知器を較正するステップと、治療中に患者を実際に位置決めするステップである。
【0040】
第1のステップである放射線検知器の較正について以下に説明する。即ち、新しい放射線検知器を使用する際には、較正しなければならない。放射線検知器は測定平面における放射線の強度分布を測定する。この強度分布は放射線検知器の座標系(図2のXd,Yd)で表わされる。この座標系の原点の位置および軸の方向はそれぞれの放射線検知器ごとに異なる。また、座標系の原点の位置とマーカー407の相対位置もそれぞれの検知器ごとに異なる。しかも、マーカー位置407に対する放射線検知器403の座標軸の方向も、それぞれの放射線検知器ごとに異なる。較正はマーカー407に対する放射線検知器座標系の原点の位置を発見することにある。較正はまた、マーカー407に対する放射線検知器座標系の軸の方向を発見することでもある。この較正プロセスは公知の方法を利用して行なわれる。この較正は新しい放射線検知器を使用する度に実施しなければならない。
【0041】
患者を実際に位置決めする第2ステップは、下記ステップを含む。即ち、
1.CTスキャナーにおいて患者のCTスキャンを入手し;
2.治療計画ソフトウェアを利用して、オペレーターは腫瘍の位置を特定し、治療ビームの入射角を求め、治療計画に備え;
3.それぞれ異なる治療ビームの入射角が判明すると、オペレーターはそれぞれの治療ビームに偏心ガントリーのどの治療ルームを使用するかを決める。さらに、オペレーターは、固定用フレーム101,102における放射線検知器103の最適位置、固定用フレーム101,102の使用すべき固定用孔401、および固定用脚104,106の最適長さを決定する。放射線検知器の測定平面が治療ビームとほぼ直交するようにパラメータを選択する。適正位置に孔403が形成されているプラスチック片402を用意する。
4.治療日に、患者はベッド101上に臥せる。オペレーターは患者をベッド上のほぼ正確な位置に固定するため、患者に固定用装置を取り付ける。オペレーターはベッドに固定用フレーム101,102を取り付ける。オペレーターはこの患者のためのプラスチック片402を取り付ける。オペレーターは固定用フレームに固定用脚104,106を取り付ける。オペレーターは固定用脚にマーカー407を配置する。
5.患者、マーカー108およびマーカー407のCTスキャンまたはCBCTスキャンを得る。位置決めソフトウェアを利用して、オペレーターは腫瘍とマーカー407との相対位置を求める。オペレーターはまた、マーカー108に対する患者座標系の方向およびマーカー108に対する腫瘍の位置を求める。
6.マーカー407の位置および上記較正処理に基づいて、ソフトウェアは患者座標系に対する検知器座標系の位置および方向を求める。患者座標系における治療ビームの入射角、腫瘍の位置および測定平面の位置に関する知見に基づいて、ソフトウェアは放射線ビームと測定平面との交差点を求める。放射線検知器座標系で表わされる交差点501の理論上の座標は、放射線ビームの中心が向かう点である。
7.患者はベッド上で不動の状態にある。ベッドはCTスキャナーから治療装置へ移動させられる。患者はその腫瘍がほぼ放射線ビームの軸上に来るように治療ビーム発射ノズルの前方に位置させられる。
8.治療ビームに対する患者の方向角度は、公知の技術(例えば、ステレオビジョン赤外線カメラ)を利用してマーカー108の位置を測定することによって検証される。患者の方向角度は、マーカー108の方向角度測定値が適正値となるまで、ベッドのピッチ、ロールおよび回転角度を変えることによって調整される。これによって患者の方向角度が最適化される。
9.ここで、オペレーターは、図2のXnおよびYn軸に沿って患者とビームとの相対並進位置を調整しなければならない。治療ビームと放射線検知器平面103との交差点の理論上の座標は、ステップ6において算出されている。治療レベル以下の強度の粒子ビーム500を、治療ビームによって使用されるのと全く同じ起動に沿って患者に照射する。このビームの強度は、放射線検知器103によって検知されるのに充分であるが、患者に何らかの損傷を与えるほど高くはない。患者と治療ビームとの相対並進位置は下記方法のいずれか1つを利用して治療レベルに達しない強度のビーム500によって調整される:
a.治療レベルに達しない強度のビーム500が、理論位置501において検知器平面と交差するまで、(Xn,Yn)平面ト平行な軸に沿ってベッドを移動させる。これは二重散乱モードには好ましい整合方法である。
b.理論位置501において検知器平面と交差するまで治療レベルに達しない強度のビーム500を(Xn,Yn)平面内を横方向に移動させる。治療レベルに達しない強度のビーム500を移動させるために、ビーム走査マグネットにDC電圧を印加する。均一走査およびペンシル・ビーム走査にはこの方法が好ましい。
これらのステップは、いずれもテクニカル・オペレーターによって、またはテクニカル・オペレーターの制御下に専用のソフトウェア計算機を介してコンピューターによって行なわれる。
これらのステップがすべて行なわれた後、初めて、本発明の方法には含まれない治療ステップである、例えば、患者への放射線照射である最終ステップが行なわれる。
照射試験の場合、人体模型に対して照射ビームが当てられる。治療の場合、ステップ9において上述のように、患者位置と治療レベルに達しない強度のビーム位置を調整した後、治療ビームにこれと同じ設定を使用する。この最後のステップだけは、ドクターのコントロール下に行われる。
なお、検知器は、患者または人体模型の前方に位置させることが好ましい。このことは、照射ビームによる患者治療中、検知器が透過性であるか、さもなければそれぞれの位置から除去しなければならないことを意味する。
【0042】
本発明の装置および方法を使用することによって、治療ビームに対する患者の位置決め精度を高めることができる。この装置および方法は、他にも用途はあるが、特に、偏心ガントリーを有する放射線治療装置用として好適である。放射線検知器は、患者の肌に近接しているから、ビームに対する患者の位置決め誤差は放射線検知器の解像度と同様に小さい。ビームをオフセットすることによって位置補正を行なう方法および装置の実施形態を採用することによって、高精度の患者位置決め装置の複雑さと高コストを回避することができる。患者支持体の名目位置は本発明の解決における重要な要素ではない。さらに、本発明の構成では、ビーム発射手段ではなく患者に対する実ビーム位置が求められる。従って、ノズルに対する治療ビームの整合誤差を招く恐れはない。
【0043】
本明細書中における用語および記述内容はあくまでも説明のためのものであって本発明を制限するものではない。当業者には明らかなように、後記する請求項において定義される本発明およびその等価物の思想および範囲内で多様な変更が可能である。後記する請求項において、すべての用語はいずれも特に断らない限り、最も広い意味に理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、本発明の装置を利用する放射線治療装置の簡略図である。
【図2】図2は、標的支持体の座標系およびノズル座標系の定義を示す。
【図3】本発明のベッドの第1実施態様を示す。
【図4】本発明のベッドの第2実施態様を示す。
【図5】本発明のベッドの第3実施態様を示す。
【図6】図6は、円弧状固定用フレームの簡略図である。
【符号の説明】
【0045】
100 標的支持体(ベッド)
101 固定用フレーム(半円)
102 固定用フレーム
103 放射線検知器
104 固定用脚
106 固定用脚
105 治療ビーム
107 固定用孔
108 位置マーカー
110 ノズル
111 患者
112 標的(腫瘍または人体模型)
113 ガントリー・マグネット
120 測定平面
301 台形フレーム
302 台形フレーム
304 脚
305 脚
306 脚
208 ベッド両側における2本のレール
209 キャリッジ
401 固定用孔
402 プラスチック片
403 放射線検知器
403 孔
405 固定点
406 固定点
407 マーカー
410 固定用システム
411 固定用システム
412 標識
500 低治療レベル粒子ビーム
501 交差点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体模型または患者における腫瘍のような標的容積(112)に向かって放射線ビーム(105)を向ける放射線治療装置において前記標的容積(112)を位置決めするための装置であって、前記標的容積(112)を位置決めするための装置は、
標的を固定する標的支持体(100)と、
前記標的支持体(100)とは既知の幾何的関係に、固定手段(101,102,104,106,107;301,302,304,305,306;208,209)によって固定され、前記放射線ビーム(105)との交差位置を検出することができる2次元放射線検知器(103)と、
前記検出された交差位置に基づいて、前記ビーム(105)と前記標的支持体(100)との相対位置を補正する補正手段と
を含むことを特徴とする前記装置。
【請求項2】
前記2次元放射線検知器(103)が第1の方向に向けられた第1組の電離箱と第2の方向に向けられた第2組の電離箱とを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記固定手段が、標的支持体(100)に、好ましくは標識を付されている固定用孔(107)に固定された固定用フレーム(101,102;301,302)であり、前記固定用フレームによって前記検知器(103)を標的(112)の近傍に配置できることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記固定手段が、レール(208)上を摺動する摺動可能なキャリッジ(209)を有する標的支持体(100)に固定された固定用フレーム(101,102)を含み,前記固定フレームにより前記検知器を標的(112)の近傍に配置できることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記固定用フレーム(101,102;301,302)が、円弧状または多角形の形状を有することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記放射線ビーム(105)が前記検知器(103)とほぼ直交方向に交差するように前記検知器(103)および前記放射線ビーム(105)を配置することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記補正手段が、前記放射線ビーム(105)を正確に位置補正する手段を含むことを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記補正手段が、前記標的支持体(100)を正確に位置補正する手段を含むことを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
放射線治療装置において人体模型または患者における腫瘍のような標的容積(112)を位置決めする方法であって、
標的(112)と放射線検知器(103)との相対位置を求め、
後続のステップにおいて前記相対位置が固定されたままに維持する手段を設け、
放射線ビームと検知器との所期の交差点を求め、
低治療レベル放射線ビームを検知器に向け、前記ビームと前記検知器との実交差点を求め、
2つの位置の差に相当する補正ベクトルを算出し、
実交差点が前記所期の交差点と一致するように放射線ビーム(105)と放射線検知器(103)との相対位置を補正するステップを含むことを特徴とする前記方法。
【請求項10】
放射線ビーム(105)と放射線検知器(103)との相対位置を補正するステップが、放射線ビーム(105)を移動させるステップを含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
放射線ビーム(105)と放射線検知器(103)との相対位置を補正するステップが、標的(112)および放射線検知器(103)を移動させるステップを含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
標的(112)と検知器との相対位置を求めるステップが、
標的支持体に対して3つ以上の固定点を有し、前記固定点が前記検知器と既知の幾何的関係を有する検知器を設け、
標的支持体(100)に標的(112)を固定し、
前記標的支持体(100)の前記検知器固定点に、画像診断の際に視認できるマーカー(407)を設け、
前記標的および前記マーカーの双方を視認可能な画像診断を利用して前記標的(112)の画像を得、
前記画像から、前記標的(112)と前記マーカーとの幾何的関係を求め、
前記画像から前記標的と前記検知器(103)との幾何的関係を推測する
ステップを含むことを特徴とする請求項9から請求項11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
偏心ガントリーを有する放射線治療装置における請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の装置および/または請求項9から請求項12までのいずれか1項に記載の方法の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−518079(P2009−518079A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543618(P2008−543618)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【国際出願番号】PCT/BE2006/000133
【国際公開番号】WO2007/068066
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(502017227)
【Fターム(参考)】