説明

放射線治療計画に使用される補償器のための対話型のコンピュータを利用したエディタ

イオン又はプロトンの放射線ビームを使用する放射線治療のための補償器を構成するとき、コンピュータを利用した補償器編集方法は、患者にある標的質量(例えば腫瘍)の解剖学的画像の上に、放射線の線量分布の情報と共に、最初の3Dの補償器モデルを重畳することを含む。ユーザは表示装置上の補償器モデルにおけるピクセル又はボクセルを操作し、処理器はユーザの編集に従って自動的に前記線量分布を調節する。ユーザは、線量分布が最適化されるまで、前記補償器モデルを繰り返し調節し、最適化したとき、最適化した補償器モデルは、メモリに記憶される及び/又は最適化したモデルから補償器を構成するマシン装置に出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は特に、放射線治療計画(RTP)システムにおいて有用性を見つけている。しかしながら、開示される技術は、他の形式の治療計画システム、他のコンピュータを利用した編集システム及び/又は他の治療応用にも応用される。
【背景技術】
【0002】
プロトン及び重イオン治療において、粒子は、媒体、粒子及び送達装置のエネルギー並びに特徴に基づいて、一定の深さの後、媒体に "停止する(stopping)"特徴を持っている。媒体に送達される最大線量は、粒子範囲の端にあるいわゆる"ブラッグピーク(Bragg Peak)"に送達される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
プロトン及び重イオンの放射線治療において、補償器(compensator)は一般に、放射線源と被験者との間に置かれている。この補償器は、各々の患者にあつらえて製造される。補償器は一般に、一様な線量が標的に、すなわち標的上にあるブラッグピークの位置に送達されるように、異なるビーム角でビームと標的との間にある夫々の組織を補償するために、異なる領域に異なる厚さを持つプレクシグラス(plexiglass)の形をとる。
【0004】
外部ビーム放射線治療計画において、前記補償器は各々の患者に対し特注され、その患者に送達される放射線量を調節する。初期設計は一般に、前記治療計画システムにおいて計算及び最適化され、この補償器の厚さの値からなる行列様式の表現により表示される。この行列は、補償器の設計に関して殆ど有用なフィードバックをユーザに提供しない。一般的に、ユーザは、スプレッドシート記入方式で個別のピクセルの何れかのピクセルの値を変更することが認められる。しかしながら、これらの変更は、揃える及び定量化するのが難しい。ユーザは、例えば患者内における放射線量のホットスポット(hot spot)及びコールドスポット(cold spot)を無くすため、勾配が急すぎる場合、僅かに患者の設定を誤ったとき、標的又は危険器官に送達される線量の大幅な変化を引き起こす隣接するピクセル間の勾配を弱めるため、標的器官を大体覆うように補償器の形状を広げる又は狭めるため、又は最初のコンピュータアルゴリズムにより供給される線量分布は許容できないため、の理由により前記補償器を編集したいと思っている。
【0005】
プロトン及びイオン治療は、例えばガンマ放射線の光子と比較して多くの臨床的利点を持っている。プロトン及びイオンビームは、新しいやり方で組み合わされることができ、媒体における複雑な標的に一様な線量分布を送達する。これら技術の1つは、いわゆる"パッチ領域(Patch field)"技術であり、この技術において、2つ以上のビームは本質的に互いに垂直である。例えば"スルー(through)"ビームは縦方向に放射線を照射し、パッチビームは横方向に放射線を照射する。パッチビーム及びスルービームの機械的特徴は、重複領域、すなわち標的に一様な線量を供給するように調節される。前記パッチシステムは、放射線治療に用いられる知られた技術である。しかしながら、この技術を実施及び最適化するためのツールはそこまで進んでいない。
【0006】
特に、(以後、総称して"イオン治療"と呼ばれる)イオン又はプロトンベースの治療において、初期設計は一般に、標的組織の遠位端への線量に一致するように、単一の目的を用いて前記治療計画システムにおいて計算及び最適化される。これは、イオン治療源から患者への線量分布を形づくるというユーザの能力を制限する。補償器のピクセルに手動の編集を行ったとしても、このような編集は、試行錯誤に基づくと共に、補償器の設計に対する将来的な計画法を考慮される。イオン治療における補償器の初期設計は、複数の要因が考えられるとき、理想的ではない。例えば、標的組織が危険器官(OAR: organ at risk)のすぐ近くにある場合、このとき、この標的の一様な適用範囲は、多すぎる線量をOAR内に流出させるかもしれない。さらに、標的の形状に加えられる如何なるマージンもOAR内の線量をさらに増大させるかもしれない。理想的に、ユーザは、周囲組織への線量に関して、前記標的への線量分布とのある妥協点を考察したいと思っている。
【0007】
複雑な標的の適用範囲は、放射線治療計画におけるもう1つの大きな問題である。標的の解剖学的構造に送達される放射線量は、適切である一方、隣接する危険器官への線量を最少にすることが必要である。標的の形状が複雑なとき、複数のビームが前記標的の別々の部分に及ぶように用いられてもよい。この場合、これらビームによる線量の重複が、標的組織の内部に不要なホットスポット及び低下した一様性を引き起こす。
【0008】
ユーザが補償器のピクセルを手動で調節するのを助けるために、患者の解剖学的構造及び線量分布等を含め、補償器を3次元で対話式に表示するのを容易にして、それにより上述した欠点を克服するシステム及び方法に対する満たされていない要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ある態様によれば、放射線治療計画に使用するためのコンピュータで作った3Dの補償器モデルは、表示装置及びユーザ入力装置を含むグラフィカルユーザインタフェース(GUI)、及びメモリに記憶されるコンピュータ実施可能な命令を実施する処理器を含んでいる。前記命令は、補償器モデルを前記表示装置上においてユーザに表示する命令、補償器モデルの編集を含むユーザ入力装置からのユーザ入力を受け取る命令、前記ユーザ入力に基づいて補償器モデルを最適化する命令、及び前記メモリ又はコンピュータ読み取り可能記憶媒体に前記最適化した補償器モデルを記憶する命令を有する。
【0010】
他の態様によれば、放射線治療に使用される補償器に対するコンピュータを利用した補償器モデルの最適化の方法は、患者の解剖学的領域の患者画像上に補償器モデルを表示するステップ、この補償器モデルの編集を含むユーザ入力を受け取るステップ、及び前記ユーザ入力に基づいて前記補償器モデルを更新するステップ、を有する。前記命令はさらに、更新した補償器モデルをメモリ又はコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶する命令を含む。
【0011】
他の態様によれば、患者の不規則な形状の標的質量に対する放射線の線量分布を最適化する一方、近傍の器官への放射線量を軽減する方法は、前記標的質量のコンピュータ化したモデルの横断面及び遠位断面、並びにこれら横断面と遠位断面との間の接点を特定するステップ、並びにこの接点に沿った前記モデルの仮想のカットを作成するステップを有する。この方法はさらに、放射線量分布を最適化するために、横断面及び遠位断面の輪郭を繰り返し調節するステップ、並びに線量分布の最適化中、ユーザが評価するために前記標的質量を含む患者画像上に重畳される線量分布を表示するステップ、を有する。
【0012】
ある利点は、補償器の製造が改善されることである。
【0013】
他の利点は、患者への不要な放射線の線量を最少にすることにある。
【0014】
他の利点は、補償器の設計を簡略化することにあり、これは設計の精度を向上させる。
【0015】
本発明のさらに他の利点は、以下の詳細な説明を読み、理解すると、当業者によって分かるだろう。
【0016】
図面は、様々な態様を説明することだけを目的にし、限定するとは考えるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】放射線治療計画及び患者に放射線量を当てている間に使用される補償器を編集するシステムを説明する。
【図2】図1の表示装置上に表示されるような、補償器を編集するグラフィカルユーザインタフェース(GUI)の一例である。
【図3】患者の頭蓋骨において一般にL字型の標的質量を含む補償器を編集するGUIの一例であり、ここで前記質量は放射線治療中、夫々に放射線が照射されるスルー(遠位)領域とパッチ(横方向)領域とに分割される一例である。
【図4】複数のピクセルからなる仮想の補償器モデルの見おろし図(top down view)を示すGUIのスクリーンショットである。
【図5】略L字型の標的質量が危険器官のすぐ近くに位置決められているGUIのスクリーンショットである。
【図6】図1の処理器にビーム形状アルゴリズムを実行させ、ビーム形状データを調節しパッチビームデータ及びスルービームデータを発生させるようにユーザが選択する"パッチ"ツールを含むGUIのスクリーンショットであり、これらデータは、標的質量のパッチ部及び標的質量のスルー部夫々に放射線を照射するのに使用されるスクリーンショット。
【図7】システムがパッチアルゴリズムを実施する前の、パッチ断面及びスルー断面における放射線の線量分布を示す一方、器官を保護しているGUIのスクリーンショット。
【図8】システムがパッチアルゴリズムを実施した後の、前記パッチ部及びスルー部における最適化した放射線量分布を示す一方、器官を保護しているGUIのスクリーンショット。
【図9】上述した様々な態様に従って、3D補償器モデルのコンピュータを利用した編集のための方法を説明する。
【図10】上述した様々な態様に従って、不規則な形状の標的質量に対する放射線量を最適化する一方、近くにある器官等の不要な放射線の照射を軽減するための方法を説明する。
【図11】上述した様々な態様に従って、放射線治療に使用される放射線の逆最適化及び設計を行うための方法を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ある実施例において、ここに開示されるシステム及び方法は、詳細な視覚化のために、補償器のピクセルの射影及び患者の解剖学的組織の上に重畳される放射線治療ビームの線量分布を表示するコンピュータシステムに関する。加えて、前記線量分布に対する変化を対話形式で表示する間、ユーザの意図に基づいて補償器を調整及び編集する編集ツールが供給される。
【0019】
他の実施例において、コンピュータアルゴリズムは、一様の線量分布を供給するために、送達される粒子の標的形状、ビーム線量及び特徴を言及している。GUI及び編集ツールは、許容可能な標的への放射線の照射を保証するために、ビームのパラメタの操作を容易にする。
【0020】
他の実施例において、補償器の設計及び最適化のためのコンピュータ編集ツール及びアルゴリズムが供給される。これらアルゴリズムは、プロトン及びイオンベースの治療において、患者、標的及び周囲組織への所望する線量に対しユーザが指定する目標及び目的を計算に入れている。
【0021】
図1は、放射線治療計画中に、及び患者に放射線量を当てている間に使用される補償器を編集するためのシステム10を説明している。このシステムは、ここに開示される様々な方法及び/又は技術を実行するためのコンピュータ実施可能命令を実施する処理器12、並びにこの命令を記憶するメモリ14又は他のコンピュータ読み取り可能媒体を含む。処理器とメモリとはバス15を介して互いに結合され、このバスは、撮像装置16(例えばCT装置、磁気共鳴撮像装置、核スキャン装置等)及び表示装置18にも結合される。撮像装置は、被験者又は患者の走査データを生成し、このデータは、メモリ14に記憶されると共に、表示装置18に表示される患者画像データ20を生成するために、再構成処理器により再構成される。ある実施例において、処理器12は、再構成アルゴリズム等を実施する再構成処理器を含む。
【0022】
メモリ14は、1つ以上の3Dの補償器モデル22も記憶している。ユーザは、編集ツール24を用いて補償器モデル22を選択し、このツールはマウス、スタイラス、キーボード又は他の入力装置を含んでもよい。前記メモリは、補償器のピクセルデータ26、補償器モデル22のスライスに対応する2Dの断面データ28及び補償器の勾配厚みデータ30も追加として記憶している。加えて、ビーム形状データ32は、前記メモリに記憶され、患者にある標的質量に当てられる放射線ビームのための、パッチパラメタ34及び/又はアルゴリズム、並びにスルーパラメタ36及び/又はアルゴリズムを含む。前記ビーム形状データは、患者の標的組織に放射線を照射するとき、この放射線ビームを発生させる治療装置38に供給される。
【0023】
前記メモリはさらに、補償器の設計及び最適化のための1つ以上のアルゴリズム(例えばコンピュータ実施可能命令)を記憶する。例えば、3Dの補償器モデルは、事前に生成される又は各々の患者の治療に対し特に生成されることができる。前記編集ツールを使用して、ユーザは表示装置上で選択したモデルを調節し、改訂版が別バージョンの補償器モデルとして記憶される。ユーザによる各々の編集入力が前記処理器に最適化アルゴリズムを実行させ、それに応じて前記モデルを調節させる。ユーザは次いで、編集したモデルを点検し、変更を承認又は否認する。ユーザが前記変更を承認する場合、改訂したモデルは、放射線治療の事象中に使用するためにメモリに記憶される。
【0024】
ある実施例によれば、ユーザが選択した補償器22は、BEV(beam's eye view)表示における線量分布マップ42と一緒に、表示装置18に表示される患者の解剖学的画像の上に射影される。編集ツール24を用いて、ユーザは、患者の解剖学的画像20の解剖学的スライスをステップスルー(step through)する。このようにして、個々の補償器ピクセルは、線量分布及び解剖学的特徴までを突き止められる。
【0025】
編集ツール24は、ユーザにBEV表現で前記補償器ピクセル26を編集することを可能にする。ユーザは、値を加えたり、引いたり、平均したりする等により、前記補償器ピクセルを変更してもよい。さらに、ユーザにより入力された変更は、補償器の3次元モデルで更新される。BEV及び3次元モデルに加え、補償器の2次元の断面28は、ユーザが補償器22の厚み勾配30を可視化するのを助ける。ユーザが補償器を編集した後、処理器12は、改訂された補償器を用いてビームの線量分布42を再計算し、ユーザは、その結果を本来の分布と比較する。ユーザは次いで、変更を"元に戻す(Undo)"のもよいし、又はさらに編集を続けてもよい。終了した時、前記編集は保存され、送達用の本来のビームにコピーされることができる。
【0026】
他の実施例によれば、1つ以上のビーム制御アルゴリズム44は、ビーム形状32及び対応する治療装置38(例えばイオンビーム発生器、プロトンビーム発生器等)並びに一様な線量分布を前記標的に供給するために、標的形状、ビーム線量及び送達される粒子の特徴の原因となるパラメタを自動的に調節するために、処理器12により実施される。この標的組織における"パッチ"接点が決定され、ビーム制御アルゴリズム4により前記標的の3次元の"カット(cut)"が行われる。前記パッチ及びスルービームの標的の輪郭は、別々に取り扱われ、これらパッチ若しくはスルービームの何れか一方の線量分布及び特徴に基づいて、ビーム制御アルゴリズムにより手動で又は自動的に調節されてもよい。ユーザは、標的の外形を描く関心領域(ROI)の輪郭、及びビームパラメタと対話して、ユーザが満足するまで線量を調整する。ユーザは、評価及び再最適化のために、補更新した線量分布マップ42を表示することができ、これは各々の補償器の編集と共に前記標的に送達される放射線量を示す。
【0027】
他の実施例において、ユーザは、表示装置18及び編集ツール24(例えばGUI)を供給され、これらを用いて患者のある地点、器官又は領域に線量分布のための目標及び目的を設定する。ユーザは、特定の領域が受けるべき線量の強さを、範囲、一様性又は生物学的に同等の効果として、並びにこれらの目的の各々に対するランクとして規定することができ、このランクはこれらの目的に応じる相対的重要度を伝える。処理器12は次いで、補償器を設計するために補償器設計及び最適化アルゴリズム40を実施する及び/又はこれらの目的に応じようと試みるために、これらに限定されないがビームの範囲、変調、マージン及びエネルギーを含むビーム形状パラメタを調節する。さらに、ユーザは、例えば患者の動き及び密度変換のような何らかの不確実性を含んでいる。処理器が計算を終了した後、ユーザは、その結果を点検し、パラメタをさらに調節する機会が与えられ、これは再最適化を必要としてもよい。
【0028】
前記GUIは、治療を最適化するのに使用されるソフトウェアコード及びアルゴリズムとユーザが対話することを可能にする。これらアルゴリズムは、線量分布を計算し、補償器ピクセル及び治療装置のパラメタを調節することにより、ユーザが定義した目標に対する解決法を決定するためにコード化されることができる。点検インタフェースは、ユーザが前記最適化の結果を点検することを可能にする。
【0029】
他の実施例において、"テキストベース"の様式で前記目的に入力する代わりに、ユーザは、表示スクリーン上に所望する線量分布を(例えばマウス又はスタイラスのような入力装置を用いて)"描く"ことができ、アルゴリズムは、例えば補償器、変調等のような、線量送達に関する上述したパラメタを調節及び最適化することにより、前記線量の図形表現に対応する。
【0030】
システム10は、ユーザにより承認された最終的な補償器モデルを収容する補償器マシン46も含み、これはモデルの設計パラメタに従って実際の補償器を構成する。ある実施例において、この補償器マシンは、システム10と同じ側に置かれ、補償器はそこに作成される。他の実施例において、補償器マシンは、システム10から離れて置かれ(例えば別の部屋、ビル、都市、州、国等)、承認された補償器モデルのデータは、システム側にあるコンピュータ読み取り可能記憶媒体(例えばディスク、メモリスティック又は他の何らかの適切な記憶媒体)に記憶され、そのモデルのデータは補償器マシンにアップロードされる補償器マシンの側に移送される。代わりに、3D補償器モデルのデータが例えばEメール、ワイヤレス通信リンク、赤外線、無線周波数等により、補償器マシンに電子的に送られることができる。
【0031】
上述したように、前記システムは、ここに開示される様々な機能及び/又は方法を実行するためのコンピュータ読み取り可能命令を実行する処理器12及びその命令を記憶するメモリ14を含んでいる。メモリ14は、制御プログラムが記憶されるコンピュータ読み取り可能媒体、例えばディスク、ハードドライブ等でもよい。コンピュータ読み取り可能媒体の一般的な形式は、例えばフロッピーディスク(登録商標)、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、又は他の何れかの磁気記憶媒体、例えばCD−ROM、DVD、又は他の何れかの光学媒体、例えばRAM、ROM、PROM、RPROM、FLASH−ROM、それらの変形例、他のメモリチップ若しくはカートリッジ、又は処理器12が読み取り及び実行可能である他の何れかの有形媒体を含む。この文脈において、前記システム10は、1つ以上の汎用のコンピュータ、特定用途のコンピュータ、プログラムされたマイクロ処理器若しくはマイクロ制御器及び周辺の集積回路要素、ASIC又は他の集積回路、デジタル信号処理器、配線接続される(hard-wired)電子機器又は論理回路、例えば個別素子回路、プロブラム可能な論理装置、例えばPLD、PLA、FPGA、GPU又はPAL等として又はそれらに実装されてもよい。
【0032】
図2は、例えば図1の表示装置18に表示されるような補償器編集GUI60の一例である。このGUIは、1つ以上の患者画像20a、20bを含む。患者画像20aは、この患者画像20aの上に重畳される仮想の補償器62を示す。患者画像20bは、補償器62を介して標的質量に放射線を照射するために、患者内に射影される放射線ビーム64のBEVを示す。さらに、補償器を介する2Dの垂直スライス66及び補償器を介する2Dの水平スライス68も示される。GUIは、ユーザが前記標的質量に所望する放射線線量を達成するように前記仮想の補償器を調節することを可能にする。ユーザは、補償器が前記標的質量に適切な放射線量を上手く当てる一方、危険器官又は放射線量を望まない他の組織への放射線量を軽減するように洗練されたことに一度満足すると、仮想の補償器モデル62の構成は、メモリに保存され、患者の放射線治療中に使用するための物理的な補償器を構成するのに使用される。
【0033】
図3は、患者の頭蓋骨83内に一般にL字型の標的質量82を含む補償器編集GUI80の一例であり、ここで質量は、放射線治療中、個々に放射線が照射されるスルー領域84及びパッチ(横方向)領域に分割される。
【0034】
図4は、仮想の補償器モデル62の見おろし図を示すGUI100のスクリーンショットであり、このモデルは複数のピクセル102を有する。各々のピクセルは、前記モデルを使用して(例えば図1の補償器マシン46により)生成される実際の補償器上のある地点に対応している。モデル62が一度ユーザにより承認されると、このモデルはメモリに記憶され、補償器マシンに出力される。
【0035】
図5は、略L字型の標的質量122は、危険器官124(例えば標的質量に放射線を照射中、照射されるべきではない器官)のすぐ近くに位置決められているGUI120のスクリーンショットである。イオンビーム126は、標的質量全体を覆うように示され、この場合、危険器官は不必要に放射線が照射される。しかしながら、適切に設計された補償器を用いた場合、ブラッグピーク(Bragg Peak)が標的領域のアーム部に位置決められ、幾つかのイオンが危険器官に到達する。
【0036】
図6は、図1の処理器12にビーム形状アルゴリズムを実行させ、パッチビームデータ34及びスルービームデータ36(図1参照)を生成するようにビーム形状データ32を調節させるようにユーザが選択(例えばクリック等)する"パッチ"ツール142を含むGUI140のスクリーンショットであり、これらはパッチ領域84及びスルー領域86の両方に略一様な線量を一緒に送達する。これらパッチ及びスルー技術は、標的質量122に放射線をより正確に照射する一方、危険器官124に危害を加えない。
【0037】
これらパッチ及びスルー技術を使用する場合、複数のビームが用いられ、複雑な標的質量を良好な一様性及び危険器官に最少の線量で覆う。前記アルゴリズムは、前記標的質量を図で表すことを含み、これは(例えばスタイラス、マウス又は他の何らかの入力ツールを使用して)前記標的質量を患者画像の上に示す又は輪郭を描くことにより、ユーザによって行われる。パッチツール142が開始され、前記標的質量を自動的にパッチ部分とスルー部分とに分割する。代わりに、このステップがユーザにより手動で行われることができる。ある実施例において、総放射線線量の50%がスルー部分86を介して横方向に供給され、残りの50%はパッチ部分84を介して遠位(distally)に供給される。しかしながら、ユーザは、必要ならば、これらの比率を調節することが許され、所望の線量密度又は線量パターンを達成する。
【0038】
他の実施例において、前記システムはパッチ及びスルービームを自動的に調節し、標的質量を通る線量の一様性を最適化する。ユーザは、標的質量のパッチ部分及びスルー部分の境界を調節することが許され、これは、前記システムがビームのパラメタを再最適化させ、それにより標的質量のために生成される補償器モデルの形状及び/又は厚さを変更させる。
【0039】
図7は、前記システムによりパッチアルゴリズム(例えば図6のパッチツール142の選択)を実施する前の、パッチ区域84及びスルー区域86における放射線の線量分布162を示す一方、器官124を保護しているGUI160のスクリーンショットである。
【0040】
図8は、前記システムによりパッチアルゴリズム(例えば図6のパッチツール142の選択)を実施した後の、パッチ区域84及びスルー区域86における放射線の線量分布162を示す一方、器官124を保護しているGUI180のスクリーンショットである。
【0041】
図9は、ここに述べた様々な態様に従って、3Dの補償器モデルをコンピュータを使って編集するための方法を説明する。200において、補償器は、BEV64の表示装置(図2参照)において線量分布と一緒に患者画像の上に射影される。202において、ユーザは、患者画像の解剖学的スライスをステップスルーし、それに従って補償器の射影が調節される。このようにして、個々の補償器ピクセルは、204において、線量分布及び解剖学的特徴まで突き止められる。206において、ユーザは、編集ツールを用いて、BEV表現で補償器ピクセルを編集する。ユーザは、値を加えたり、引いたり、平均したりすることにより、補償器ピクセルを変更する。208において、ユーザにより入力された変更は、補償器の3Dモデルで更新させる。210において、前記補償器の2Dの断面がユーザに示され、ユーザが厚み勾配の可視化するのを助ける。ユーザが補償器を編集した後、212において、新しい補償器を用いたビームの線量分布が再計算される。214において、再計算された線量分布は本来の線量分布と比較される。216において、ユーザは、変更を元に戻す"Undo"、変更を承認する及び/又はさらに編集を続けることができる。完了したとき、218において、前記編集は、補償器モデルの最終バージョンとして保存され、これは、補償器を構成するのに使用されることができる。
【0042】
図10は、ここに述べた様々な態様に従って、不規則な形状の標的質量に対する放射線量を最適化する一方、近くの器官等の不要な放射線の照射を軽減するための方法を説明する。230において、標的質量は、"パッチ"(例えば遠位)領域及び"スルー"(例えば横方向)領域に分割され、それらの間の接点が決定される。232において、前記標的の三次元の"カット"は、アルゴリズムにより行われる。前記パッチ及びスルービームの標的(例えば夫々、標的質量のパッチ区域及びビーム区域)の輪郭は、別々に取り扱われ、パッチ又はスルービームの何れか一方の線量分布及び特徴に基づいて、手動で又は前記アルゴリズムにより自動的に調節されてもよい。ユーザは、234において、前記標的の外形を描く輪郭の関心領域及びビームパラメタと対話し、満足するまで線量を調整することができる。ユーザはさらに、236において、評価及び再最適化のために、標的に送達される線量を表示することができる。
【0043】
図11は、ここに述べた様々な態様に従って、放射線治療に使用される補償器の逆最適化及び設計を行うための方法を説明する。250において、ユーザは、患者のある地点、器官又は領域(例えば標的質量及び/又は周囲領域)に対する線量分布の目標及び目的を設定する。ユーザは、特定の領域が受けるべき線量がどの位であるかを範囲、一様性又は生物学的同等の効果として規定することができる。252において、ユーザは前記目標の各々の目標に対しランクを規定し、このランクはその目的に応じる相対的重要度を伝える。コンピュータシステムは、254において、補償器モデルを設計する及び/又はそれらに限定されないが、前記目的に応じるためのビームの範囲、変調、マージン及びエネルギーを含むビームパラメタを調節する。256において、ユーザは、例えば補償器の設計中に検討する不確定性、例えば患者の動き及び画像ピクセル/停止電力(image pixel-to-stopping power)又は密度変換を任意に含む。コンピュータシステムが補償器モデルの計算を終了した後、ユーザは、258において、その結果を検討し、前記パラメタをさらに調節する機会が与えられ、これは再最適化を必要としてもよい。前記方法は、補償器モデルは最適化されたとユーザが満足するまで繰り返し行われ、前記モデルは、記憶される及び/又は補償器を構成する補償器マシンに出力される。
【0044】
本発明は幾つかの実施例を参照して説明される。上記詳細な説明を読み、理解すると、改良及び変更が他の者に思い浮かぶことがある。本発明は、上記改良及び変更の全てが添付する特許請求の範囲又はそれに相当する物の範囲内にある限り、これら全てを含んでいると考えられると意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線治療計画に使用するためのコンピュータで作成した3Dの補償器モデルを最適化することを容易にするシステムであり、前記システムは、
表示装置及びユーザ入力装置を含むグラフィカルユーザインタフェース(GUI)、及び
メモリに記憶されるコンピュータ実施可能な命令を実施する処理器、
を有し、前記命令は、
補償器モデルを前記表示装置上においてユーザに表示する命令、
前記補償器モデルの編集を含む前記ユーザ入力装置からのユーザ入力を受け取る命令、
前記ユーザ入力に基づいて前記補償器モデルを最適化する命令、及び
前記メモリ又はコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に前記最適化した補償器モデルを記憶する命令
を有するシステム。
【請求項2】
前記命令はさらに、
複数の編集ツールをユーザに表示する命令、
前記最適化した補償器モデルに基づいて前記放射線の線量分布を再計算する命令、及び
前記再計算した放射線の線量分布を前記表示装置に表示する命令
を含み、前記補償器モデルは、前記患者画像の上に重畳される放射線の線量分布と共に、解剖学的患者画像の上に射影され、
前記最適化した補償器モデルは、前記最適化した補償器モデルをユーザが承認すると、前記メモリ又はコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記命令はさらに、
前記患者画像の複数の解剖学的スライスをステップスルー及び表示する命令、並びに
前記ユーザ入力の編集を受け取るのに応じて、前記患者画像の各スライスに対し、前記補償器モデルにおけるピクセルを編集する命令
を有する請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記命令はさらに、
最適化中、前記補償器モデルの厚み勾配を示す前記補償器モデルの複数の2D断面を前記表示装置においてユーザに表示する命令、
を有する請求項1、2又は3に記載のシステム。
【請求項5】
前記命令はさらに、
比較のために、前記最適化した補償器モデル及び本来の補償器モデルを前記表示装置においてユーザに表示する命令、
前記本来の補償器モデルに対する変更をユーザが承認又は否認することを認める命令、並びに
前記ユーザ入力装置のユーザによる入力に応じて、前記補償器モデルを繰り返し編集する命令
を有する請求項1乃至4の何れか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記命令はさらに、最適化した補償器モデルに従って補償器を構成するマシンに前記最適化した補償器モデルを出力する命令、
を有する請求項1乃至5の何れか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記命令はさらに、
前記ユーザ入力装置を用いてランク付けした放射線の線量分布の目的を入力する命令、
前記線量分布の目的をランク順で応じるように、前記補償器モデルを最適化する命令、及び
前記最適化した補償器モデル及び線量分布を前記表示装置上において前記ユーザに表示する命令
を有する請求項1乃至6の何れか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記最適化した補償器モデルを使用して構成される補償器をさらに含む請求項1乃至7の何れか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記補償器が構成された患者を治療するとき、前記補償器を通過する放射線ビームを発生させる放射線ビーム発生器、をさらに含み、前記放射線ビーム発生器は、イオンビーム及びプロトンビームの一方を発生させる、請求項1乃至8の何れか一項に記載のシステム。
【請求項10】
患者の解剖学的領域の患者画像に補償器モデルを表示するステップ、
前記補償器モデルのユーザ入力の編集を受け取るステップ、
前記ユーザ入力に基づいて、前記補償器モデルを更新するステップ、及び
前記更新した補償器モデルをメモリ又はコンピュータ読み取り可能記憶媒体に記憶するステップ、
を有する、放射線治療に使用される補償器に対するコンピュータを利用した補償器モデルの最適化の方法。
【請求項11】
前記補償器モデルを通過し解剖学的領域に入るイオン又はプロトンビーム放射線に対する放射線の線量分布を計算するステップ、
前記患者画像の上に重畳される前記放射線の線量分布と共に、解剖学的患者画像の上に射影される前記補償器モデルをユーザに表示するステップ、
前記更新した補償器モデルに基づいて前記放射線の線量分布を再計算するステップ、
前記患者画像の上に重畳される前記再計算した放射線の線量分布を表示するステップ、及び
前記更新した補償器モデルをユーザが承認すると、前記更新した補償器モデルをメモリ又はコンピュータ読み取り可能記憶な記憶媒体に記憶するステップ、
をさらに有する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記患者画像の複数の解剖学的スライスをステップスルー及び表示する命令、並びに
前記患者画像の各スライスにおけるピクセルの編集を有するユーザ入力を受け取るステップ
をさらに有する請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記補償器モデルの厚み勾配を示す前記補償器モデルの複数の2D断面をユーザに表示するステップ、
をさらに有する請求項10、11又は12に記載の方法。
【請求項14】
比較のために、前記更新した補償器モデル及び本来の補償器モデルをユーザに表示するステップ、
前記本来の補償器モデルに対する変更を前記ユーザが承認又は否認することを認めるステップ、並びに
前記補償器モデルが最適化されるまで、前記補償器モデルを繰り返し編集するステップ
をさらに有する請求項10乃至13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
最適化した補償器モデルに従って補償器を構成するマシンに前記最適化した補償器モデルを出力するステップ
をさらに有する請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ランク付けした放射線の線量分布の目的を有するユーザ入力を受け取るステップ、
前記線量分布の目的をランク付けした順で応じるように、前記補償器モデルを最適化するステップ、並びに
前記最適化した補償器ステップ及び線量分布を前記ユーザに表示するステップ
をさらに有する請求項10乃至15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
標的質量のコンピュータ化したモデルの横断面及び遠位断面、並びに前記横断面と前記遠位断面との間の接点を特定するステップ、
前記接点に沿って前記モデルの仮想のカットを行うステップ、
線量分布を最適化するために、前記横断面及び遠位断面の輪郭を繰り返し調節するステップ、並びに
前記線量分布の最適化中、ユーザが評価するために、前記標的質量を含む患者画像の上に重畳される線量分布を表示するステップ
をさらに有する請求項10乃至16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
患者にある不規則な形状の標的質量に対する放射線の線量分布を最適化する一方、近傍の器官への放射線量を軽減する方法において、
前記標的質量のコンピュータ化したモデルの横断面及び遠位断面、並びに前記横断面と前記遠位断面との間の接点を特定するステップ、
前記接点に沿って前記モデルの仮想のカットを行うステップ、
放射線の線量分布を最適化するために、前記横断面及び前記遠位断面の輪郭を繰り返し調節するステップ、並びに
前記線量分布の最適化中、ユーザが評価するために、前記標的質量を含む患者画像の上に重畳される線量分布を表示するステップ
をさらに有する方法。
【請求項19】
前記最適化した線量分布に従って放射線ビームのパラメタを調節するステップ、及び
前記調節した放射線ビームパラメタに従って前記患者にある前記標的質量にプロトン又はイオンビームを当てるステップ
をさらに有する請求項18に記載の方法。
【請求項20】
患者の解剖学的領域の患者画像の上に補償器モデルを重畳するステップ、
前記補償器モデルを通過し前記解剖学的領域に入るイオン又はプロトンビーム放射線に対する前記放射線の線量分布を計算するステップ、
前記患者画像の上に重畳される前記放射線の線量分布と共に、前記患者画像に射影される前記補償器モデルをユーザに表示するステップ、
前記補償器モデルにおけるピクセルのユーザ入力の編集を受け取るステップ、
前記ユーザ入力に基づいて前記補償器モデルを更新するステップ、並びに
前記更新した補償器モデルをユーザが承認すると、前記更新した補償器モデルをメモリに記憶するステップ
をさらに有する請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−502965(P2013−502965A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526144(P2012−526144)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【国際出願番号】PCT/IB2010/053156
【国際公開番号】WO2011/024085
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】