説明

放射線画像変換パネル及び放射線画像変換パネルの製造方法、並びに放射線画像検出装置

【課題】画質及び耐久性に優れる放射線画像変換パネル及び放射線画像検出装置を提供する。
【解決手段】放射線画像変換パネル10は、放射線露光によって蛍光を発する蛍光物質の結晶が柱状に成長してなる柱状結晶32の群を有し、これらの柱状結晶の先端の集合によって蛍光出射面が構成されている蛍光体13と、前記蛍光体の前記蛍光出射面を覆う光透過性の保護材33と、を備え、前記保護材は、前記柱状結晶の群の先端部間に入り込んでおり、前記各柱状結晶の先端部の側面の少なくとも一部と前記保護材との間には隙間が設けられている。放射線画像検出装置1は、放射線画像変換パネル10と、前記蛍光体の前記蛍光出射面に密接して設けられ、前記蛍光体から出射された蛍光を検出するセンサパネル11と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像変換パネル、及び放射線画像変換パネルの製造方法、並びに該放射線画像変換パネルを備えた放射線画像検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、放射線像を検出してデジタル画像データを生成するFPD(Flat Panel Detector)を用いた放射線画像検出装置が実用化されており、従来のイメージングプレートに比べて即時に画像を確認できるといった理由から急速に普及が進んでいる。この放射線画像検出装置には種々の方式のものがあり、その一つとして、間接変換方式のものが知られている。
【0003】
間接変換方式の放射線画像検出装置は、放射線露光によって蛍光を発するCsI(ヨウ化セシウム)などの蛍光物質によって形成されたシンチレータ(蛍光体)と、薄膜型の複数の光電変換素子が基板上に2次元状に配設されたセンサパネルとを備えている。被写体を透過した放射線は、放射線画像変換パネルのシンチレータによって光に変換され、シンチレータの蛍光は、センサパネルの光電変換素子によって電気信号に変換され、それにより画像データが生成される。
【0004】
また、気相堆積法によってCsIなどの蛍光物質の結晶を柱状に成長させてなる柱状結晶の群によってシンチレータを形成する技術も知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。気相堆積法によって形成される柱状結晶は、結合剤等の不純物を含まず、また、そこに発生した蛍光を結晶の成長方向に導光する光ガイド効果を有しており、蛍光の拡散を抑制する。それにより、放射線画像検出装置の感度の向上が図られると共に、画像の鮮鋭度の向上が図られる。
【0005】
そして、特許文献1に記載された放射線画像変換パネルにおいては、蛍光の集光効率を高めるため、各柱状結晶の先端部は、その先端角度が40度〜80度の凸形状とされている。
【0006】
ここで、CsIの結晶は、潮解性を有しており、吸湿することによって柱状結晶構造が崩れ、上記の光ガイド効果が低下する。そのため、CsIの柱状結晶によって形成されるシンチレータは、典型的には、ポリパラキシリレンの保護膜によって被覆されて防湿される。このポリパラキシリレンの保護膜は、一般に、気相堆積法によって形成される。
【0007】
気相堆積法によって形成されるポリパラキシリレンの保護膜は、柱状結晶間の深部まで入り込む場合がある。柱状結晶の光ガイド効果は、柱状結晶と周囲の媒質との屈折率差による全反射に起因するものであり、通常、周囲の媒質は空気であるが、柱状結晶間の深部まで保護膜が入り込み、柱状結晶の周囲が保護膜で覆われると、保護膜を形成するポリパラキシリレンの屈折率は、空気よりも大きいため、柱状結晶と周囲の媒質との屈折率差が小さくなって全反射が抑制され、上記の光ガイド効果が低下する。
【0008】
そこで、特許文献2に記載された放射線画像変換パネルにおいては、保護膜が柱状結晶の群の先端部間のみを埋め、柱状結晶間の深部まで達しないように、ゲル状の硬化型樹脂を塗布するなどして保護膜が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第08/029610号
【特許文献2】国際公開第10/029779号
【特許文献3】特開2011−017683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
放射線画像変換パネルは、典型的には、光電変換素子が2次元状に配列されてなるセンサパネルの受光面にシンチレータを密接させて、センサパネルと貼り合わされる。このセンサパネルとの貼り合わせの際に、柱状結晶の先端部に負荷が作用する。また、放射線画像変換パネルとセンサパネルとを貼り合わせてなる放射線画像検出装置の使用時において、患者等の荷重が放射線画像検出装置に作用し、柱状結晶の先端部に負荷が作用する場合がある。柱状結晶の先端部に負荷が作用した場合に、先端部の損傷あるいは変形が生じることがあり、それによって、蛍光の集光効率の低下や、さらには蛍光の拡散による画像鮮鋭度の低下などが生じる虞がある。
【0011】
特許文献2に記載された放射線画像変換パネルのように、柱状結晶の群の先端部間を樹脂で埋めることによって、柱状結晶の先端部の変形を防止することができるが、樹脂の屈折率は空気の屈折率よりも大きく、屈折率差に起因する全反射を利用した上記の光ガイド効果の低下は免れず、やはり画像の鮮鋭度が低下する虞がある。
【0012】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたものであり、画質及び耐久性に優れる放射線画像変換パネル及び放射線画像検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1) 放射線露光によって蛍光を発する蛍光物質の結晶が柱状に成長してなる柱状結晶の群を有し、これらの柱状結晶の先端の集合によって蛍光出射面が構成されている蛍光体と、前記蛍光体の前記蛍光出射面を覆う光透過性の保護材と、を備え、前記保護材は、前記柱状結晶の群の先端部間に入り込んでおり、前記各柱状結晶の先端部の側面の少なくとも一部と前記保護材との間には隙間が設けられている放射線画像変換パネル。
(2) 放射線露光によって蛍光を発する蛍光物質の結晶が柱状に成長してなる柱状結晶の群を有し、これらの柱状結晶の先端の集合によって蛍光出射面が構成されている蛍光体を備えた放射線画像変換パネルの製造方法であって、前記蛍光体を加熱し、加熱された前記蛍光体の前記蛍光出射面を、前記蛍光物質の線膨張係数よりも小さい保護材によって覆い、前記柱状結晶の先端部が前記保護材に食い込んだ状態で該保護材を硬化させ、前記保護材が硬化した後に前記蛍光体及び保護材を冷却する放射線画像変換パネルの製造方法。
(3) 上記(1)の放射線画像変換パネルと、前記蛍光体の前記蛍光出射面に密接して設けられ、前記蛍光体から出射された蛍光を検出するセンサパネルと、を備える放射線画像検出装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、保護材が、柱状結晶の群の先端部間に入り込んでおり、先端部間の隙間が埋められているので、柱状結晶の先端部は変形を抑制され、耐久性が向上する。そして、保護材と柱状結晶の先端部の側面との間に空隙があることによって、屈折率差による全反射に起因した光ガイド効果が先端部においても維持される。それにより、画像鮮鋭度の低下が防止され、画質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態を説明するための、放射線画像検出装置の一例の構成を模式的に示す図である。
【図2】図1の放射線画像検出装置の検出部の構成を模式的に示す図である。
【図3】図2の検出部のセンサパネルの構成を模式的に示す図である。
【図4】図2の検出部の放射線画像変換パネル及び蛍光体の構成を模式的に示す図である。
【図5】図4の蛍光体のV‐V断面を示す図である。
【図6】図4の蛍光体のVI‐VI断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の実施形態を説明するための、放射線画像検出装置の一例の構成を示す。
【0017】
図1に示す放射線画像検出装置1は、可搬型の放射線画像検出装置(以下、カセッテという)である。このカセッテ1は、放射線像を検出する検出部2と、検出部2の動作を制御すると共に検出部2によって検出された放射線像に基づく画像を生成する制御部3と、検出部2及び制御部3を収納する筐体4とを備えている。
【0018】
筐体4において、検出部2の上に重なる天板5には、被検体(例えば患者の撮影対象部位)が載置され、被検体に向けて照射された放射線は、天板5を透過して検出部2に入射する。天板5には、放射線吸収能の低い材料が用いられ、典型的には炭素繊維強化プラスチックやアルミニウムが用いられている。
【0019】
図示の例において、検出部2は、筐体4の底壁6に立設された複数のリブ7によって支持されている。なお、検出部2を天板5に接着し、天板5によって検出部2を支持するように構成することもできる。
【0020】
検出部2は、放射線画像変換パネル10と、センサパネル11とを備えている。放射線画像変換パネル10は、支持体12と、放射線露光によって蛍光を発するシンチレータ(蛍光体)13とを有しており、シンチレータ13は、支持体12上に形成されている。
【0021】
放射線画像変換パネル10は、シンチレータ13の支持体12側とは反対側の蛍光出射面がセンサパネル11に密接した状態に、柔軟性のある粘着材14によって支持体12の周縁部とセンサパネル11の周縁部とを接着して、センサパネル11と貼り合わされている。センサパネル11は、シンチレータ13より出射される蛍光を検出する。なお、シンチレータ13の蛍光出射面とセンサパネル11との間に、両者を光学的に結合させる粘着層を介在させ、放射線画像変換パネル10とセンサパネル11との貼り合わせを補強することもできる。
【0022】
粘着材14は、支持体12の周縁部とセンサパネル11の周縁部との間を全周に亘って封止しており、支持体12及びセンサパネル11並びに粘着材14によって、シンチレータ13の防湿がなされている。なお、例えばパリパラキシリレンの保護膜によって放射線画像変換パネル10の全体が被覆され、シンチレータ13の防湿が別途なさる場合には、粘着材14は、支持体12の周縁部とセンサパネル11の周縁部とを部分的に接着するように構成することもできる。
【0023】
カセッテ1は、いわゆる表面読取型(ISS:Irradiation Side Sampling)の放射線画像検出装置であり、検出部2に入射した放射線は、センサパネル11を透過して放射線画像変換パネル10のシンチレータ13に入射する。放射線が入射したシンチレータ13において蛍光が発生し、ここで発生した蛍光がセンサパネル11によって検出される。蛍光を多く発生させるシンチレータ13の放射線入射側がセンサパネル11に隣設されるため、感度が向上する。
【0024】
図2は、カセッテ1の検出部2の構成を示し、図3は、センサパネル11の構成を示す。
【0025】
センサパネル11は、複数の光電変換素子20、及び光電変換素子20の各々に生じた電荷を読み出すための薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)からなる複数のスイッチ素子21と、絶縁性基板22とを有している。これらの光電変換素子20及びスイッチ素子21は、2次元状に配列されて、絶縁性基板22上に形成されている。
【0026】
図示の例において、光電変換素子20のアレイと、スイッチ素子21のアレイとは互いに異なる層に形成されており、シンチレータ13側に光電変換素子20のアレイが配置されている。なお、光電変換素子20のアレイとスイッチ素子21のアレイとが一つの同じ層に形成されていてもよいし、シンチレータ13側から、スイッチ素子21のアレイ、光電変換素子20のアレイの順に形成されていてもよいが、図示の例のように、光電変換素子20のアレイとスイッチ素子21のアレイとが、互いに異なる層に形成されていることによって、各光電変換素子20のサイズを大きくすることができる。そして、シンチレータ13側から、光電変換素子20のアレイ、スイッチ素子21のアレイの順に形成されていることによって、光電変換素子20を、シンチレータ13により近接して配置することができ、感度が向上する。
【0027】
光電変換素子20は、シンチレータ13の蛍光を受光することによって電荷を生成する光導電層22と、この光導電層22の表裏面に設けられた一対の電極とで構成されている。光導電層22のシンチレータ13側の面に設けられた電極23は、光導電層22にバイアス電圧を印加するためのバイアス電極であり、反対側の面に設けられた電極24は、光導電層22で生成された電荷を収集する電荷収集電極である。光電変換素子20の電荷収集電極24は、対応するスイッチ素子21に接続されており、電荷収集電極24に収集された電荷は、スイッチ素子21を介して読み出される。
【0028】
スイッチ素子21のアレイが形成されている層には、一方向(行方向)に延設され各スイッチ素子21をオン/オフさせるための複数本のゲート線25と、ゲート線25と直交する方向(列方向)に延設されオン状態のスイッチ素子21を介して電荷を読み出すための複数の信号線(データ線)26とが設けられている。そして、センサパネル11の周縁部には、個々のゲート線25及び個々の信号線26が接続された接続端子部27が配置されている。この接続端子部27は、図2に示すように、接続回路28を介して制御部3(図1参照)に設けられた回路基板(図示せず)に接続される。この回路基板は、ゲートドライバ、及び信号処理部を有する。
【0029】
スイッチ素子21は、ゲートドライバからゲート線25を介して供給される信号により行単位で順にオン状態とされる。そして、オン状態とされたスイッチ素子21によって読み出された電荷は、電荷信号として信号線26を伝送されて信号処理部に入力される。これにより、電荷が行単位で順に読み出され、上記の信号処理部において電気信号に変換され、デジタル画像データが生成される。
【0030】
図4は、放射線画像変換パネル10及びシンチレータ13の構成を示す。
【0031】
支持体12としては、その上にシンチレータ13を形成することができる限りにおいて特に限定されないが、例えば、カーボン板、CFRP(carbon fiber reinforced plastic)、ガラス板、石英基板、サファイア基板、鉄、スズ、クロム、アルミニウムなどから選択される金属シート、等を用いることができる。
【0032】
シンチレータ13を形成する蛍光物質には、例えば、CsI:Tl(タリウム賦活ヨウ化セシウム)、NaI:Tl(タリウム賦活ヨウ化ナトリウム)、CsI:Na(ナトリウム賦活ヨウ化セシウム)、等を用いることができ、なかでも、発光スペクトルがa−Siフォトダイオードの分光感度の極大値(550nm付近)と適合する点で、CsI:Tlが好ましい。
【0033】
シンチレータ13は、柱状部30と非柱状部31とで構成されており、柱状部30及び非柱状部31は、支持体12上に非柱状部31、柱状部30の順に重なって形成されている。図示の例において、放射線入射側にあたるセンサパネル11側には、柱状部30が配置されている。
【0034】
非柱状部31は、蛍光物質の比較的小さい結晶の群によって形成されている。なお、非柱状部31には、上記の蛍光物質の非晶質体が含まれる場合もある。非柱状部31において、結晶は、不規則に結合し、あるいは重なり合って存在する。
【0035】
柱状部30は、上記の蛍光物質の結晶が柱状に成長してなる柱状結晶32の群によって形成されている。なお、近隣の複数の柱状結晶が結合して一つの柱状結晶を形成する場合もある。隣り合う柱状結晶32の間には空隙が置かれ、柱状結晶32は互いに独立して存在する。
【0036】
放射線露光によってシンチレータ13に生じた蛍光は、センサパネル11側に配置された柱状部30の、柱状結晶32の先端部の集合によって形成された面(蛍光出射面)から、センサパネル11に向けて出射される。
【0037】
柱状結晶32に発生した蛍光は、柱状結晶32とその周囲の空隙との屈折率差に起因して柱状結晶32内で全反射を繰り返すことで拡散を抑制され、センサパネル11に導光される。それにより、画像の鮮鋭度が向上する。
【0038】
そして、柱状結晶32の先端部は、凸形状に形成されており、平坦形状や凹形状に比べて集光効率が高められている。それにより、画像の鮮鋭度が向上する。先端部の、先端角度は40度〜80度が好ましい。
【0039】
さらに、柱状結晶32に発生した蛍光のうち、センサパネル11とは反対側、即ち支持体12側に向かう蛍光については、非柱状部31においてセンサパネル11側に向けて反射される。それにより、蛍光の利用効率が高まり、感度が向上する。
【0040】
また、非柱状部31は、柱状部30に比べて緻密であり、空隙率は小さい。支持体12と柱状部30との間に非柱状部31が介在することにより、支持体12とシンチレータ13との密着性が向上し、シンチレータ13が支持体12から剥離することが防止される。
【0041】
図5は、シンチレータ13の図4におけるV‐V断面を示す電子顕微鏡写真である。
【0042】
図5に明らかなように、柱状部30においては、柱状結晶32が結晶の成長方向に対しほぼ均一な断面径を示し、且つ、柱状結晶32の周囲に空隙を有し、柱状結晶32が互いに独立して存在することがわかる。柱状結晶32の結晶径(柱径)は、光ガイド効果、機械的強度、そして画素欠陥防止の観点から、2μm以上8μm以下であることが好ましい。柱径が小さすぎると、柱状結晶32の機械的強度が不足し、衝撃等により損傷する懸念があり、柱径が大きすぎると、画素毎の柱状結晶32の数が少なくなり、結晶にクラックが生じた際にその画素が欠陥となる確率が高くなる懸念がある。
【0043】
ここで、柱径は、柱状結晶32の成長方向上面から観察した結晶の最大径を示す。具体的な測定方法としては、柱状結晶32の成長方向上面からSEM(走査型電子顕微鏡)で観察することで柱径を測定する。柱状結晶32が100本から200本観察できる倍率(約2000倍程度)で観察し、1撮影に含まれる結晶全てに対し、柱径の最大値を測定して平均した値を採用している。柱径(μm)は小数点以下2桁まで読み、平均値をJIS Z 8401に従い小数点以下2桁目を丸めた値とする。
【0044】
図6は、シンチレータ13の図4におけるVI‐VI断面を示す電子顕微鏡写真である。
【0045】
図6に明らかなように、非柱状部31においては、結晶同士が不規則に結合したり重なり合ったりして結晶間の明確な空隙は、柱状部30ほどは認めらない。非柱状部31を形成する結晶の径は、密着性及び光反射の観点から、0.5μm以上7.0μm以下であることが好ましい。結晶径が小さすぎると、空隙が0に近づき、光反射の機能が低下する懸念があり、結晶径が大きすぎると、平坦性が低下し、支持体12との密着性が低下する懸念がある。また、非柱状部31を形成する結晶の形状は、光反射の観点から、略球状であることが好ましい。
【0046】
ここで、結晶同士が結合している場合の結晶径の測定は、隣接する結晶間に生じる窪み(凹)同士を結んだ線を結晶間の境界と見なし、結合した結晶同士を最小多角形となるように分離して柱径および柱径に対応する結晶径を測定し、柱状部30における結晶径と同様にして平均値をとり、その値を採用する。
【0047】
また、柱状部30の厚みは、放射線のエネルギーにもよるが、柱状部30における十分な放射線吸収及び画像の鮮鋭度の観点から、200μm以上700μm以下であることが好ましい。柱状部30の厚みが小さすぎると、放射線を十分に吸収することができず、感度が低下する虞があり、厚みが大きすぎると光拡散が生じ、柱状結晶32の光ガイド効果によっても画像の鮮鋭度が低下する懸念がある。
【0048】
非柱状部31の厚みは、支持体12との密着性及び光反射の観点から、5μm以上125μm以下であることが好ましい。非柱状部31の厚みが小さすぎると、支持体12との十分な密着性が得られない虞があり、また厚みが大きすぎると、非柱状部31における蛍光の寄与、及び非柱状部31での光反射による拡散が増大し、画像の鮮鋭度が低下する懸念がある。
【0049】
シンチレータ13の非柱状部36及び柱状部34は、例えば気相堆積法によって、支持体12上にこの順に連続して一体に形成される。具体的には、真空度0.01〜10Paの環境下で、CsI:Tlを抵抗加熱式のるつぼに通電するなどの手段で加熱して気化させ、支持体12の温度を室温(20℃)〜300℃としてCsI:Tlを支持体12上に堆積させる。
【0050】
支持体12上にCsI:Tlの結晶相を形成する際、当初は直径の比較的小さい結晶を堆積させて非柱状部31を形成する。そして、真空度及び支持体12の温度の少なくとも一方の条件を変更し、非柱状部31を形成した後に連続して柱状部30を形成する。具体的には、真空度を上げる、及び/又は支持体12の温度を高くすることによって、柱状結晶32の群を成長させる。
【0051】
そして、CsI:Tlの気相堆積終期における支持体12の温度を制御することによって、柱状結晶32の先端部の形状(先端角度)を制御することができ、概ね、110℃で170度、140℃で60度、200℃で70度、260℃で120度となる。
【0052】
以上によりシンチレータ13を効率よく、容易に製造することができる。また、この製造方法によれば、真空度や支持体温度を制御することで、簡易に種々の仕様のシンチレータ13を設計通りに製造することができるという利点をも有する。
【0053】
放射線画像変換パネル10は、以上のように構成されたシンチレータ13の蛍光出射面、即ち柱状結晶32の先端部の集合によって形成された面を被覆する光透過性のある保護材33をさらに有している。
【0054】
保護材33は柱状部30の柱状結晶32の群の先端部間に入り込んでおり、先端部間の隙間が埋められている。ただし、保護材33と、柱状結晶32の先端部の側面との間には僅かな空隙が設けられており、保護材33と、柱状結晶32の先端部の側面とは非接触である。保護材33は、柱状結晶32の群の先端部間に入り込むことによって形成され、柱状結晶32の先端部を各々収容する凹部34の底において柱状結晶32の先端面と接触し、これらの柱状結晶32によって支持されている。
【0055】
保護材33が柱状部30の柱状結晶32の群の先端部間に入り込んでいることによって、柱状結晶32の先端部は変形を抑制される。そのため、隣り合う柱状結晶32同士の接触が防止され、光ガイド効果が維持される。さらに、先端部が凸形状に形成されることによって高められた集光効率が維持される。それにより、画像鮮鋭度の低下が防止される。
【0056】
そして、保護材33と柱状結晶32の先端部の側面との間に空隙があることによって、屈折率差による全反射に起因した光ガイド効果が維持される。それにより、画像鮮鋭度の低下が防止される。
【0057】
さらに、保護材33によって柱状結晶32の群の先端部が一体化される。放射線画像変換パネル10とセンサパネル11とが貼り合わされる際や、カセッテ1の使用時において、患者等の荷重がカセッテ1に作用した際などに、シンチレータ13に負荷が作用するが、保護材33によって柱状結晶32の群の先端部が一体化されていることによって、その負荷は、複数の柱状結晶32に分散され、柱状結晶32の損傷が防止される。
【0058】
柱状結晶32の先端部を収容する保護材33の凹部34の深さ、つまりは、柱状結晶32の群の先端部間に入り込む保護材33の厚みは、柱状結晶32の凸形状となる先端部の長さが通常10〜30μmであることを考慮して、柱状結晶32の先端部の変形を抑制する観点から、5〜30μm程度が好ましい。
【0059】
保護材33を形成する材料としては、シンチレータ13を形成するCsIなどの材料よりも線膨張係数が小さいエネルギー硬化性の樹脂材料を用いることができる。そのような樹脂材料の液又はゲルを、シンチレータ13の蛍光出射面に塗布し、あるいはシート状に成形してシンチレータ13の蛍光出射面に重ね、シンチレータ13に対して圧接することによって、柱状結晶32の群の先端部間を樹脂材料によって埋め、その後に樹脂材料にエネルギーを付与して硬化させることにより、上述の保護材33が形成される。そして、樹脂材料を硬化させる際に、シンチレータ13及び樹脂材料の温度を高めておくことにより、硬化後の冷却に伴う熱収縮において、線膨張係数差に起因して保護材33と柱状結晶32の先端部の側面との間に僅かな空隙を形成することができる。
【0060】
エネルギー硬化性の樹脂材料としては、紫外線硬化性のもの、及び熱硬化性のものが例示されるが、シンチレータ13及び樹脂材料の昇温と、樹脂材料の硬化とを同時に行える点で、熱硬化性の樹脂材料が好ましく、具体的には、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂などを例示することができる。これらの熱硬化性樹脂の線膨張係数は、充填材の有無や充填材の種別などによって異なり、フェノール樹脂:8〜80ppm、ユリア樹脂:22〜36ppm、メラミン樹脂:11〜45ppm、エポキシ樹脂:11〜65ppm、不飽和ポリエステル樹脂:20〜100ppm、ジアリルフタレート10〜36ppmである。例えば、シンチレータ13をCsIで形成する場合に、CsIの線膨張係数が約50ppmであることから、上記の樹脂の中から、その線膨張係数が50ppmよりも小さいものを用いればよい。
【0061】
また、上記の樹脂材料のシートをシンチレータ13の蛍光出射面に圧接する場合において、シートの蛍光出射面との接触面に剥離層を形成しておくようにしてもよい。それによれば、硬化後の冷却に伴う熱収縮において、保護材33が柱状結晶32の先端部の側面から剥離し易くなる。それにより、保護材33が剥離する際に柱状結晶32の先端部に作用する負荷が軽減される。また、シンチレータ13を形成する材料と保護材33を形成する材料との線膨張係数の差が比較的小さくとも、保護材33と柱状結晶32の先端部の側面との間の空隙が確実に形成される。
【0062】
剥離層を形成する材料としては、例えばフッ素系樹脂やシリコーン系樹脂などを用いることができるが、耐熱性及び易変形性の観点からシリコーン系樹脂を好適に用いることができる。
【0063】
シンチレータ13の蛍光出射面から出射される蛍光は、保護材33を経てセンサパネル11に入射するが、保護材33と、これに接する柱状結晶32の先端との界面における反射を抑制するため、保護材33を形成する材料の屈折率は、柱状結晶32を形成する材料の屈折率以下でその屈折率に近いことが好ましい。例えば、CsIの屈折率は約1.8であり、その場合に、保護材33を形成する樹脂の屈折率は1.5〜1.8が好ましい。
【0064】
以上、説明したように、保護材33が、柱状結晶32の群の先端部間に入り込んでおり、先端部間の隙間が埋められているので、柱状結晶32の先端部は変形を抑制され、耐久性が向上する。そして、保護材33と柱状結晶32の先端部の側面との間に空隙があることによって、屈折率差による全反射に起因した光ガイド効果が先端部においても維持される。それにより、画像鮮鋭度の低下が防止され、画質が向上する。
【0065】
なお、上述したカセッテ1においては、センサパネル11側から放射線が入射されるものとして説明したが、放射線変換パネル10側から放射線が入射される構成を採ることもできる。
【0066】
上述した放射線画像検出装置は、放射線画像を高感度、高精細に検出しうるため、低放射線照射量で鮮鋭な画像を検出することを要求される、マンモグラフィなどの医療診断用のX線撮影装置をはじめ、様々な装置に組み込んで使用することができる。例えば、工業用のX線撮影装置として非破壊検査に用いたり、或いは、電磁波以外の粒子線(α線、β線、γ線)の検出装置として用いたりすることができ、その応用範囲は広い。
【0067】
以下、センサパネル11を構成する各要素に用いることのできる材料について説明する。
【0068】
[光電変換素子]
上述した光電変換素子20の光導電層22(図2参照)としては、例えばアモルファスシリコン等の無機半導体材料が用いられることが多いが、例えば特開2009−32854号公報に記載された有機光電変換(OPC;Organic photoelectric conversion)材料も用いることができる。このOPC材料により形成された膜(以下、OPC膜という)を光導電層22として使用できる。OPC膜は、有機光電変換材料を含み、蛍光体から発せられた光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する。このように有機光電変換材料を含むOPC膜であれば、可視域にシャープな吸収スペクトルを持ち、蛍光体による発光以外の電磁波がOPC膜に吸収されることがほとんどなく、X線等の放射線がOPC膜で吸収されることによって発生するノイズを効果的に抑制することができる。
【0069】
OPC膜を構成する有機光電変換材料は、蛍光体で発光した光を最も効率良く吸収するために、その吸収ピーク波長が、蛍光体の発光ピーク波長と近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長と蛍光体の発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければ蛍光体から発された光を十分に吸収することが可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、蛍光体の放射線に対する発光ピーク波長との差が、10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
【0070】
このような条件を満たすことが可能な有機光電変換材料としては、例えば、アリーリデン系有機化合物、キナクリドン系有機化合物、及びフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えばキナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、蛍光体の材料としてCsI(Tl)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、OPC膜で発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。
【0071】
バイアス電極23および電荷収集電極24の間に設けられる有機層の少なくとも一部をOPC膜によって構成することができる。この有機層は、より具体的には、電磁波を吸収する部位、光電変換部位、電子輸送部位、正孔輸送部位、電子ブロッキング部位、正孔ブロッキング部位、結晶化防止部位、電極、及び層間接触改良部位等の積み重ねもしくは混合により形成することができる。
【0072】
上記有機層は、有機p型化合物または有機n型化合物を含有することが好ましい。有機p型半導体(化合物)は、主に正孔輸送性有機化合物に代表されるドナー性有機半導体(化合物)であり、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。したがって、ドナー性有機化合物としては、電子供与性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物、ピラゾリン化合物、スチリルアミン化合物、ヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン化合物、カルバゾール化合物、ポリシラン化合物、チオフェン化合物、フタロシアニン化合物、シアニン化合物、メロシアニン化合物、オキソノール化合物、ポリアミン化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピラゾール化合物、ポリアリーレン化合物、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体等を用いることができる。なお、これらに限らず、n型(アクセプター性)化合物として用いた有機化合物よりもイオン化ポテンシャルの小さい有機化合物であればドナー性有機半導体として用いることができる。
【0073】
有機n型半導体(化合物)は、主に電子輸送性有機化合物に代表されるアクセプター性有機半導体(化合物)であり、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。したがって、アクセプター性有機化合物は、電子受容性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有する5ないし7員のヘテロ環化合物(例えばピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、イソキノリン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、トリアゾロピリダジン、トリアゾロピリミジン、テトラザインデン、オキサジアゾール、イミダゾピリジン、ピラリジン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、ジベンズアゼピン、トリベンズアゼピン等)、ポリアリーレン化合物、フルオレン化合物、シクロペンタジエン化合物、シリル化合物、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体などが挙げられる。なお、これらに限らず、ドナー性有機化合物として用いた有機化合物よりも電子親和力の大きな有機化合物であればアクセプター性有機半導体として用いることができる。
【0074】
p型有機色素又はn型有機色素としては、公知のものを用いることができるが、好ましくは、シアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素(ゼロメチンメロシアニン(シンプルメロシアニン)を含む)、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、スピロ化合物、メタロセン色素、フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、フェナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、インジゴ色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キナクリドン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、金属錯体色素、縮合芳香族炭素環系色素(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)等が挙げられる。
【0075】
一対の電極間に、p型半導体層とn型半導体層とを有し、該p型半導体とn型半導体の少なくともいずれかが有機半導体であり、かつ、それらの半導体層の間に、該p型半導体およびn型半導体を含むバルクヘテロ接合構造層を中間層として有する光電変換膜(感光層)を好適に用いることができる。このように、光電変換膜において、バルクへテロ接合構造層を含ませることにより有機層のキャリア拡散長が短いという欠点を補い、光電変換効率を向上させることができる。なお、上記バルクへテロ接合構造については、特開2005−303266号公報において詳細に説明されている。
【0076】
光電変換膜の厚みは、蛍光体からの光を吸収する点では膜厚は大きいほど好ましいが、電荷分離に寄与しない割合を考慮すると、30nm以上300nm以下が好ましく、より好ましくは、50nm以上250nm以下、特に好ましくは80nm以上200nm以下である。
上述したOPC膜に関するその他の構成は、例えば、特開2009−32854号公報の記載が参考となる。
【0077】
[スイッチ素子]
スイッチ素子21の活性層としては、例えばアモルファスシリコン等の無機半導体材料が使われることが多いが、例えば特開2009−212389号公報に記載されたように、有機材料を使用することができる。有機TFTはいかなるタイプの構造でもよいが、最も好ましいのは電界効果型トランジスタ(FET)構造である。このFET構造は、絶縁性基板上面の一部にゲート電極を設け、さらに該電極を覆い、かつ電極以外の部分で基板と接するように絶縁体層を設けている。さらに絶縁体層の上面に半導体活性層を設け、その上面の一部に透明ソース電極と透明ドレイン電極とを隔離して配置している。なお、この構成はトップコンタクト型素子と呼ばれるが、ソース電極とドレイン電極とが半導体活性層の下部にあるボトムコンタクト型素子も好ましく用いることができる。また、キャリアが有機半導体膜の膜厚方向に流れる縦型トランジスタ構造であってもよい。
【0078】
(活性層)
ここでいう有機半導体材料とは、半導体の特性を示す有機材料のことであり、無機材料からなる半導体と同様に、正孔(ホール)をキャリアとして伝導するp型有機半導体材料(あるいは単にp型材料、正孔輸送材料とも言う。)と、電子をキャリアとして伝導するn型有機半導体材料(あるいは単にn型材料、電子輸送材料とも言う。)がある。有機半導体材料は一般にp型材料の方が良好な特性を示すものが多く、また、一般に大気下でのトランジスタ動作安定性もp型トランジスタの方が優れているため、ここでは、p型有機半導体材料について説明する。
【0079】
有機薄膜トランジスタの特性の一つに、有機半導体層中のキャリアの動きやすさを示すキャリア移動度(単に移動度とも言う)μがある。用途によっても異なるが、一般に移動度は高い方がよく、1.0×10-7cm2/Vs以上であることが好ましく、1.0×10-6cm2/Vs以上であることがより好ましく、1.0×10-5cm2/Vs以上であることがさらに好ましい。移動度は電界効果トランジスタ(FET)素子を作製したときの特性や飛行時間計測(TOF)法により求めることができる。
【0080】
前記p型有機半導体材料は、低分子材料でも高分子材料でも良いが、好ましくは低分子材料である。低分子材料は、昇華精製や再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの様々な精製法が適用できるため高純度化が容易であること、分子構造が定まっているため秩序の高い結晶構造を取りやすいこと、などの理由から高い特性を示すものが多い。低分子材料の分子量は、好ましくは100以上5000以下、より好ましくは150以上3000以下、さらに好ましくは200以上2000以下である。
【0081】
このようなp型有機半導体材料としては、フタロシアニン化合物又はナフタロシアニン化合物を例示することができ、具体例を以下に示す。なお、Mは金属原子、Buはブチル基、Prはプロピル基、Etはエチル基、Phはフェニル基をそれぞれ表す。
【0082】
【化1】

【0083】
(活性層以外のスイッチ素子の構成要素)
ゲート電極、ソース電極、又はドレイン電極を構成する材料としては、必要な導電性を有するものであれば特に制限はないが、例えば、ITO(インジウムドープ酸化スズ)、IZO(インジウムドープ酸化亜鉛)、SnO2、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)、ZnO、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)、TiO2、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)などの透明導電性酸化物、PEDOT/PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸)などの透明導電性ポリマー、カーボンナノチューブなどの炭素材料が挙げられる。これらの電極材料は、例えば真空蒸着法、スパッタリング、溶液塗布法等の方法で成膜することができる。
【0084】
絶縁層に用いられる材料としては、必要な絶縁効果を有するものであれば特に制限はないが、例えば、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナなどの無機材料、ポリエステル(PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)など)、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリアクリレート、エポキシ樹脂、ポリパラキシリレン樹脂、ノボラック樹脂、PVA(ポリビニルアルコール)、PS(ポリスチレン)、などの有機材料が挙げられる。これらの絶縁膜材料は、例えば真空蒸着法、スパッタリング、溶液塗布法等の方法で成膜することができる。
上述した有機TFTに関するその他の構成は、例えば、特開2009−212389号公報の記載が参考となる。
【0085】
また、スイッチ素子21の活性層には、例えば特開2010−186860号公報に記載された非晶質酸化物も使用することができる。ここで、特開2010−186860号に記載された電界効果型トランジスタが有する非晶質酸化物含有の活性層について示す。この活性層は、電子またはホールの移動する電界効果型トランジスタのチャネル層として機能する。
【0086】
活性層は、非晶質酸化物半導体を含んだ構成とされている。この非晶質酸化物半導体は、低温で成膜可能であるために、可撓性のある基板上に好適に形成される。活性層に用いられる非晶質酸化物半導体としては、好ましくはIn、Sn、Zn、又はCdよりなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む非晶質酸化物であり、より好ましくは、In、Sn、Znよりなる群より選ばれる少なくとも1種を含む非晶質酸化物、さらに好ましくは、In、Znよりなる群より選ばれる少なくとも1種を含む非晶質酸化物である。
【0087】
活性層に用いられる非晶質酸化物としては、具体的には、In、ZnO,SnO、CdO,Indium−Zinc−Oxide(IZO)、Indium−Tin−Oxide(ITO)、Gallium−Zinc−Oxide(GZO)、Indium−Gallium−Oxide(IGO)、Indium−Gallium−Zinc−Oxide(IGZO)が挙げられる。
【0088】
活性層の成膜方法としては、酸化物半導体の多結晶焼結体をターゲットとして、気相成膜法を用いるのが好ましい。気相成膜法の中でも、スパッタリング法、パルスレーザー蒸着法(PLD法)が適している。さらに、量産性の観点から、スパッタリング法が好ましい。例えば、RFマグネトロンスパッタリング蒸着法により、真空度及び酸素流量を制御して成膜される。
【0089】
成膜された活性層は、周知のX線回折法によりアモルファス膜であることが確認される。活性層の組成比は、RBS(ラザフォード後方散乱)分析法により求められる。
【0090】
また、この活性層の電気伝導度は、好ましくは10−4Scm−1以上10Scm−1未満であり、より好ましくは10−1Scm−1以上10Scm−1未満である。この活性層の電気伝導度の調整方法としては、公知の酸素欠陥による調整方法や、組成比による調整方法、不純物による調整方法、酸化物半導体材料による調整方法が挙げられる。
上述した非晶質酸化物に関するその他の構成は、例えば、特開2010−186860号公報の記載が参考となる。
【0091】
以上、説明したように、本明細書には、下記(1)から(8)の放射線画像変換パネル、及び下記(9)の放射線画像変換パネルの製造方法、並びに下記(10)及び(11)の放射線画像検出装置が開示されている。
【0092】
(1) 放射線露光によって蛍光を発する蛍光物質の結晶が柱状に成長してなる柱状結晶の群を有し、これらの柱状結晶の先端の集合によって蛍光出射面が構成されている蛍光体と、前記蛍光体の前記蛍光出射面を覆う光透過性の保護材と、を備え、前記保護材は、前記柱状結晶の群の先端部間に入り込んでおり、前記各柱状結晶の先端部の側面の少なくとも一部と前記保護材との間には隙間が設けられている放射線画像変換パネル。
(2) 上記(1)の放射線画像変換パネルであって、前記保護材の線膨張係数は、前記蛍光物質の線膨張係数よりも小さい放射線画像変換パネル。
(3) 上記(1)又は(2)の放射線画像変換パネルであって、前記保護材は、熱硬化性樹脂によって形成されている放射線画像変換パネル。
(4) 上記(3)の放射線画像変換パネルであって、前記熱硬化性樹脂は、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シアルルフタレート樹脂、の群から選ばれるいずれか一つである放射線画像変換パネル。
(5) 上記(3)又は(4)の放射線画像変換パネルであって、前記保護材は、シート状に成形されており、前記蛍光体の前記蛍光出射面に圧接されている放射線画像変換パネル。
(6) 上記(5)の放射線画像変換パネルであって、前記保護材において、前記蛍光体の蛍光出射面との接触面に、剥離層が設けられている放射線画像変換パネル。
(7) 上記(6)の放射線画像変換パネルであって、前記剥離層は、フッ素系樹脂又はシリコーン系樹脂によって形成されている放射線画像変換パネル。
(8) 上記(1)から(7)のいずれか一つの放射線画像変換パネルであって、前記柱状結晶の先端部は、凸形状である放射線画像変換パネル。
(9) 放射線露光によって蛍光を発する蛍光物質の結晶が柱状に成長してなる柱状結晶の群を有し、これらの柱状結晶の先端の集合によって蛍光出射面が構成されている蛍光体を備えた放射線画像変換パネルの製造方法であって、前記蛍光体を加熱し、加熱された前記蛍光体の前記蛍光出射面を、前記蛍光物質の線膨張係数よりも小さい保護材によって覆い、前記柱状結晶の先端部が前記保護材に食い込んだ状態で該保護材を硬化させ、前記保護材が硬化した後に前記蛍光体及び保護材を冷却する放射線画像変換パネルの製造方法。
(10) 上記(1)から(8)のいずれか一つの放射線画像変換パネルと、前記蛍光体の前記蛍光出射面に密接して設けられ、前記蛍光体から出射された蛍光を検出するセンサパネルと、を備える放射線画像検出装置。
(11) 上記(10)の放射線画像検出装置であって、前記センサパネルを透過して前記放射線画像変換パネルに放射線が入射する放射線画像検出装置。
【符号の説明】
【0093】
1 カセッテ(放射線画像検出装置)
2 検出部
3 制御部
4 筐体
5 天板
6 底壁
7 リブ
10 放射線画像変換パネル
11 センサパネル
12 支持体
13 シンチレータ
14 粘着材
20 光電変換素子
21 スイッチ素子
22 光導電層
23 バイアス電極
24 電荷収集電極
25 ゲート線
26 信号線
27 接続端子部
28 接続回路
30 柱状部
31 非柱状部
32 柱状結晶
33 保護材
34 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線露光によって蛍光を発する蛍光物質の結晶が柱状に成長してなる柱状結晶の群を有し、これらの柱状結晶の先端の集合によって蛍光出射面が構成されている蛍光体と、
前記蛍光体の前記蛍光出射面を覆う光透過性の保護材と、
を備え、
前記保護材は、前記柱状結晶の群の先端部間に入り込んでおり、
前記各柱状結晶の先端部の側面の少なくとも一部と前記保護材との間には隙間が設けられている放射線画像変換パネル。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線画像変換パネルであって、
前記保護材の線膨張係数は、前記蛍光物質の線膨張係数よりも小さい放射線画像変換パネル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の放射線画像変換パネルであって、
前記保護材は、熱硬化性樹脂によって形成されている放射線画像変換パネル。
【請求項4】
請求項3に記載の放射線画像変換パネルであって、
前記熱硬化性樹脂は、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シアルルフタレート樹脂、の群から選ばれるいずれか一つである放射線画像変換パネル。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の放射線画像変換パネルであって、
前記保護材は、シート状に成形されており、
前記蛍光体の前記蛍光出射面に圧接されている放射線画像変換パネル。
【請求項6】
請求項5に記載の放射線画像変換パネルであって、
前記保護材において、前記蛍光体の蛍光出射面との接触面に、剥離層が設けられている放射線画像変換パネル。
【請求項7】
請求項6に記載の放射線画像変換パネルであって、
前記剥離層は、フッ素系樹脂又はシリコーン系樹脂によって形成されている放射線画像変換パネル。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の放射線画像変換パネルであって、
前記柱状結晶の先端部は、凸形状である放射線画像変換パネル。
【請求項9】
放射線露光によって蛍光を発する蛍光物質の結晶が柱状に成長してなる柱状結晶の群を有し、これらの柱状結晶の先端の集合によって蛍光出射面が構成されている蛍光体を備えた放射線画像変換パネルの製造方法であって、
前記蛍光体を加熱し、
加熱された前記蛍光体の前記蛍光出射面を、前記蛍光物質の線膨張係数よりも小さい保護材によって覆い、前記柱状結晶の先端部が前記保護材に食い込んだ状態で該保護材を硬化させ、
前記保護材が硬化した後に前記蛍光体及び保護材を冷却する放射線画像変換パネルの製造方法。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の放射線画像変換パネルと、
前記蛍光体の前記蛍光出射面に密接して設けられ、前記蛍光体から出射された蛍光を検出するセンサパネルと、
を備える放射線画像検出装置。
【請求項11】
請求項10に記載の放射線画像検出装置であって、
前記センサパネルを透過して前記放射線画像変換パネルに放射線が入射する放射線画像検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−230063(P2012−230063A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99738(P2011−99738)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】