説明

放射線画像撮影装置

【課題】耐湿性に優れ、潮解による輝度低下及び保護膜のはがれ等の問題が改善され、シンチレータパネル交換が容易で、かつ解像度の高い放射線画像を形成できる放射線画像形成装置を提供すること。
【解決手段】本発明の放射線画像撮影装置は、基板上に蛍光体層を有し、基板と蛍光体層が耐湿性の保護層により覆われているシンチレータプレートを、光電変換パネルに対向接触させた構造を有する放射線画像撮影装置であって、前記シンチレータプレートの外周部が、蛍光体層を有しない基板と保護膜のみ、または保護膜のみから形成されている領域を有し、この領域が光電変換パネルにおいて、光電変換素子アレイ部の外側の信号読み出し回路または光電変換素子アレイ選択回路の上にあることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を受けて蛍光を発する放射線用シンチレータプレートを有する放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、X線画像のような放射線画像撮影装置は医療現場において病状の診断に広く用いられている。特に、増感紙−X線フィルムによる放射線画像撮影装置は、長い歴史の中で高感度化と高画質化が図られた結果、世界中の医療現場で用いられている。
【0003】
近年では、フラットパネル型放射線ディテクタ(FPD)等に代表されるデジタル方式の放射線画像検出手段も登場しており、放射線画像をデジタル情報として取得して自由に画像処理を行い、画像情報を直ちに電送することが可能となっている。
【0004】
放射線画像撮影装置は放射線を蛍光に変換する所謂「シンチレータプレート」を有している。シンチレータプレートは、被写体を通過した放射線を受けて、その放射線量に対応した強度で蛍光体層による蛍光を瞬時に発光するものであり、基板上に蛍光体層を形成した構成を有する。放射線画像撮影装置は、前記シンチレータプレートを光電変換パネルに図7に示すように密着して形成される。
【0005】
光電変換パネルは図3のようになっており、一般にはガラス上に、フォトダイオードを並べた光電変換素子アレイ304とその周辺部に形成されるゲートシフトレジスタ回路301等の光電変換素子アレイ選択回路、とデータ出力回路302等の信号読み出し回路とが形成されている。また、フォトダイオードに電界をかけるためのバイアスライン303という回路もある。この光電変換パネル401上にシンチレータプレート1aが置かれ、ウレタン等のスポンジからなる緩衝材402を介して、電磁シールド等の役目を果たす前面板(0.数mmのアルミニウムがよく用いられる。)を通して、ハウジング404で光電変換パネル側に押されることになる。患者の体を通って放射線画像撮影装置に入射したX線により発光したシンチレータプレートの光が光電変換パネル401で電気信号に変換され、画像となり、診断が行われる。
【0006】
特許文献1及び2に記載の放射線画像撮影装置は、同様の構造を有するものであるが、光電変換パネルとシンチレータパネルが対向しているが、光電変換パネルの光電変換素子アレイ部(光電変換素子と配線部が組み合わさりアレイとなっている部分)より小さくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−236181号公報
【特許文献2】特開2003−75542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の放射線画像撮影装置においては、光電変換パネルとシンチレータプレートのシンチレータ存在領域の位置関係には何の制限も設けられていない。また、実際には光電変換パネル上には、図3に示すように、ゲートシフトレジスタ回路等の光電変換素子を選択する回路、データ出力回路等の信号読み出し回路が光電変換素子アレイの周辺5mm程度の外周部に設けられている。通常、シンチレータプレートは光電変換素子とほぼ同じ大きさに製作されるので、シンチレータプレートとゲートシフトレジスタ回路、シンチレータプレートとデータ出力回路がそれぞれ接してしまう場所がでてくる。
【0009】
一方、シンチレータは図2に示すように基板101上に例えば0.03mol%Tlを含むCsI:Tlの柱状結晶(蛍光体層101b)を蒸着法にて成長させたものがよく用いられる。このままではCsIは潮解性があるため、例えば、第1保護フィルム102a、第2保護フィルム102b、それぞれ合計50um(μm)の厚さのPET20um/アルミナ蒸着0.2um/ポリプロピレン30um積層膜を用いて端部を真空雰囲気中で、100数十度で圧着する(封止部103a〜d)。このときのシンチレータプレートの上面図を図1、断面図を図2に示す。図1(b)の一辺側は封止部がないが、これは封止フィルムをここで折り曲げたためである。
【0010】
また、シンチレータプレートの保護フィルムをCVD,蒸着重合法で形成できるパリレン等の有機膜または無機膜とする技術も採用されている。このときのシンチレータ断面図は図7に示す。従来の技術では、シンチレータプレートと光電変換パネルの位置関係に特に制限はなかったため、図6,7に示すように、CsIの柱状結晶が、周辺回路の上でも、光電変換パネルと接した構造になる可能性があった。この場合、光電変換パネルの周辺回路は最も発熱しやすいところであり、放射線画像撮影装置の連続動作を行うと60℃近くまで発熱が生じる。このとき保護フィルムにPETを用いていると、PETのガラス転移点は67℃であり、PETが軟化し、この部分で水が進入し、蛍光体層102の先端部が融解し、放射線画像の解像度が低下するという問題が発生する。
【0011】
また、図7の形状でも、保護膜としてよく用いられるパリレンでは基板のアモルファスカーボンとの密着が端部で悪く、また、耐湿性も24時間で0.06%の質量増加による水分吸収があるというように、あまりよくないため、発熱の大きい周辺回路部で保護膜と周辺回路が接していると、シンチレータ端部の温度が60℃に上がり、シンチレータプレート端部での水分の浸入による蛍光体のダメージ(潮解による輝度低下)、保護膜のはがれという問題が発生する恐れがある。また、図6,7の状態では、保護膜と光電変換パネルの端部が密着しやすく、シンチレータパネル交換時、そこからはがしにくいという問題も生じる。
【0012】
従って、本発明は上記問題に鑑みなされたものであり、その解決課題は、耐湿性に優れ、潮解による輝度低下及び保護膜のはがれ等の問題が改善され、シンチレータパネル交換が容易で、かつ解像度の高い放射線画像を形成できる放射線画像撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る上記課題は、下記手段により解決される。
1.基板上に蛍光体層を有し、基板と蛍光体層が耐湿性の保護膜により覆われているシンチレータプレートを、光電変換パネルに対向接触させた構造を有する放射線画像撮影装置であって、前記シンチレータプレートの外周部が、蛍光体層を有しない基板と保護膜のみ、または保護膜のみから形成されている領域を有し、この領域が光電変換パネルにおいて、光電変換素子アレイ部の外側の信号読み出し回路または光電変換素子アレイ選択回路の上にあることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【0014】
2.前記1に記載の放射線画像撮影装置であって、前記保護膜が、前記蛍光体層の側に配置した第1保護フィルムと前記基板の外側に配置した第2保護フィルムとをシンチレータプレート外周部で接着することにより形成されていることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【0015】
3.前記1または前記2に記載の放射線画像撮影装置であって、前記シンチレータプレートの外周部において、蛍光体層を有しない基板と保護膜のみ、または保護膜のみから形成されている領域の幅が3mm以上であることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【0016】
4.前記1から前記3までのいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置であって、前記シンチレータプレートの外周部において、蛍光体層を有しない基板と保護膜のみ、または保護膜のみから形成されている領域が、光電変換素子アレイ部の外側の信号読み出し回路または光電変換素子アレイ選択回路の上全体を覆っていることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【0017】
5.前記1から前記4までのいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置であって、前記シンチレータプレート外周部において、蛍光体層を有しない基板と保護膜のみ、または保護膜のみから形成されている領域が、光電変換素子アレイ部の外側の信号読み出し回路または光電変換素子アレイ選択回路の上部にあるが、これら回路と接していないことを特徴とする放射線画像撮影装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明の上記手段により、耐湿性に優れ、潮解による輝度低下及び保護膜のはがれ等の問題が改善され、シンチレータパネル交換が容易で、かつ解像度の高い放射線画像を形成できる放射線画像撮影装置を提供することができる。
【0019】
より詳しくは、本発明の放射線画像撮影装置により以下の効果が得られる。
1.シンチレータプレートの保護膜、保護フィルムが、過熱しやすい周辺回路の上で、光電変換パネルに接していないので、過熱による保護フィルム、保護膜の機能低下による水分の滲入で、蛍光体層CsIが潮解し、柱形状がくずれることにより、光ガイド効果が低下することで鮮鋭性が低下し画像の解像度が低下するというような問題のない放射線画像撮影装置を提供することができる。
【0020】
2.シンチレータプレートの保護膜、保護フィルムが、過熱しやすい周辺回路の上で、光電変換パネルに接していないので、過熱により、熱がCsIとの結晶まで伝わり基板との密着性の低下が起こり、保護フィルム、保護膜が基板からはがれやすくなる、あるいは、保護フィルム同士、保護膜同士の接着面がはがれやすくなり、そこから水分が滲入して蛍光体層CsIが潮解し、柱形状がくずれることにより、光ガイド効果が低下することで鮮鋭性が低下し画像の解像度が低下するというような問題のない放射線画像撮影装置を提供することができる。
【0021】
3.蛍光体層を有しない基板と保護膜のみ、または保護膜のみから形成されている領域の幅を3mm以上とることにより、また、加熱しやすい周辺部で保護膜または保護フィルムが光電変換パネルと接触していないことにより、放射線画像撮影装置が連続動作時、保護膜または保護フィルムと光電変換パネルが密着し、シンチレータプレートがはがれにくくなることを防止し、シンチレータプレート交換が必要になった場合、シンチレータプレートをはがしやすくする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係るシンチレータプレートの概略図
【図2】図1のA−A'断面の部分拡大断面図
【図3】受光素子の回路レイアウト図
【図4】本発明の第1の実施の形態の放射線画像撮影装置の模式断面図
【図5】本発明の第2の実施の形態の放射線画像撮影装置の模式断面図
【図6】フィルム封止のシンチレータプレートを用いた従来例による放射線画像撮影装置の模式断面図
【図7】他の方法で保護膜を形成した従来例による放射線画像撮影装置の模式断面図
【図8】蒸着装置の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の放射線画像撮影装置は、基板上に蛍光体層を有し、基板と蛍光体層が耐湿性の保護膜により覆われているシンチレータプレートを、光電変換パネルに対向接触させた構造を有する放射線画像撮影装置である。この特徴は、請求の範囲第1項乃至第5項に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0024】
以下、図を参照して本発明の実施の形態について詳細な説明をするが、本発明は当該実施の形態に限定されるものではない。
なお、図1は本発明の実施の形態に係るシンチレータプレートの概略図である。図2は図1のA−A'断面の部分拡大断面図である。図3は受光素子の回路レイアウト図である。図4は本発明の第1の実施の形態の放射線画像撮影装置の模式断面図である。図5は本発明の第2の実施の形態の放射線画像撮影装置の模式断面図である。図6はフィルム封止のシンチレータプレートを用いた従来例による放射線画像撮影装置の模式断面図である。図7は他の方法で保護膜を形成した従来例による放射線画像撮影装置の模式断面図である。図8は蒸着装置の概略構成図である。
【0025】
(放射線画像撮影装置)
本発明の放射線画像撮影装置(図4及び図5参照)は、基板上に蛍光体層を有し、基板と蛍光体層が耐湿性の保護膜により覆われているシンチレータプレートを、光電変換パネルに対向接触させた構造を有する放射線画像撮影装置である。
【0026】
本発明においては、前記シンチレータプレートの外周部が、蛍光体層を有しない基板と保護膜のみ、または保護膜のみから形成されている領域を有し、この領域が光電変換パネルにおいて、光電変換素子アレイ部の外側の信号読み出し回路または光電変換素子アレイ選択回路の上にあることが好ましい。更に、前記保護膜が、前記蛍光体層の側に配置した第1保護フィルムと前記基板の外側に配置した第2保護フィルムとをシンチレータプレート外周部で接着することにより形成されていることが好ましい。
【0027】
また、前記シンチレータプレート外周部において、蛍光体層を有しない基板と保護膜のみ、または保護膜のみから形成されている領域の幅が3mm以上であることが好ましい。
更に、シンチレータプレート外周部において、蛍光体層を有しない基板と保護膜のみ、または保護膜のみから形成されている領域が、光電変換素子アレイ部の外側の信号読み出し回路または光電変換素子アレイ選択回路の上全体を覆っていることが好ましい。
【0028】
また、シンチレータプレート外周部において、蛍光体層を有しない基板と保護膜のみ、または保護膜のみから形成されている領域が、光電変換素子アレイ部の外側の信号読み出し回路または光電変換素子アレイ選択回路の上部にあるが、これら回路と接していないことが好ましい。
【0029】
以下、本発明の構成要素等について詳細な説明をする。
(基板)
本発明に係る基板は、各種金属、カーボンやα−カーボン、耐熱性樹脂基板などが使用可能であるが、画像特性・コストなどを鑑みると耐熱性樹脂基板が特に好適である。
【0030】
耐熱性樹脂としては、従来公知の樹脂を使用することができるが、いわゆるエンジニアリングプラスチックを用いることが好ましい。ここで、「エンジニアリングプラスチックス」とは、産業用途(工業用途)に使用される高機能のプラスチックスのことであり、一般的に強度や耐熱温度が高く、耐薬品性に優れている等の利点を有する。
【0031】
本発明においては、シンチレータプレートの基板101としてはスポンジで押圧することでシンチレータプレートが平面光電変換パネルに合った形状に変形し、放射線画像撮影装置の受光面全体で均一な鮮鋭性が得られるように、ある程度の剛性を有する高分子フィルム、例えば125um厚さのポリイミドフィルムやポリエチレンナフタレートフィルムを用いるのがよい。
【0032】
基板101と蛍光体層102bの間には、蛍光体からの基板側に出た光を反射させる反射層、反射層と蛍光体の反応による腐食を防ぐための透明絶縁膜を設ける場合がある。
反射層には100nm程度の厚さのAlのスパッタ膜が用いられる。透明絶縁膜は溶剤に溶解した樹脂を塗布、乾燥して形成することが望ましい、ガラス転移点が30℃〜100℃のポリマーであることが望ましく、具体的には、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル共重合体、ポリエステル樹脂等が上げられるが、特に1um前後の厚さのポリエステル樹脂が用いられる。
【0033】
(蛍光体層)
本発明に係る「蛍光体層」(「シンチレータ層」ともいう。)(101b)とは、X線等の入射放射線のエネルギーを吸収して、波長が300〜800nmの可視光線を含む光を発光する蛍光体層をいう。蛍光体層を形成する材料としては、種々の公知の蛍光体材料を使用することができるが、X線から可視光への変換率が高く、蒸着によって容易に蛍光体を柱状結晶構造に形成できるため、外部雰囲気(空気)との屈折率差により光が閉じ込められる光ガイド効果を有するため、解像度を維持しつつ蛍光体層の厚さを厚くできるヨウ化セシウム(CsI)が好ましい、またCsIのみでは発光効率が低いため各種の賦活剤が添加されることが更に好ましい。
【0034】
例えば特公昭54−35060号公報のように、CsIとNaIを任意のモル比で混合したものが挙げられる。また、CsIにIn,Ta,Li,K,Rb,Naなどの賦活剤を含有することが望ましい(特開2001−59899)特にタリウム化合物からなる賦活財とヨウ化セシウムとを原材料とし、タリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Tl)を蛍光体材料とするとよい。CsI:Tlは400〜750nmの発光波長を持ち、蛍光体として本応用に適している。
【0035】
本発明において、賦活剤として用いられるTl化合物としてはTlBr,TlI等が存在する。またTlの濃度は、目的性能等に応じて最適量にできるが、CsIの含有量に対して、0.001〜10mol%程度がよいと考えられる。10mol%を超えると発光量が飽和し、0.001未満ではCsI単独の場合に比べて輝度でメリットがない。
【0036】
図8にCsI:Tlを形成するための模式的蒸着装置の断面図を示す。CsIをTa製抵抗加熱ボート(ルツボ)202に充填した。次にポリイミド樹脂の基板101を基板ホルダ203に機械的に固定し、回転する。基板101とボート202の距離を400mmに調節した。蒸着装置内を真空ポンプ205で排気した後、Arガスを導入して0.5Pa程度に真空度を調整した。ついで、10rpmの速度で回転機構204をまわして、基板101を回転させながら、基板101の温度を200℃に保持し、その後、ボートを加熱して蛍光体を蒸着し、蛍光体の膜厚が600umとなったところで蒸着を終了させた。
【0037】
その後、基板101を蒸着装置から出し、保護膜作製装置まで移動する。本例ではCsIの膜厚を600umとしたが、医用のX線は20〜125keVのX線が用いられることを考えると、CsIの膜厚は100〜1000umを考えればよい。
【0038】
(保護膜)
本発明に係る保護膜(102a、102b)は蛍光体層を防湿し、蛍光体層の水分のよる潮解劣化を抑制するためのものであり、透湿の低いフィルムから構成される。例えばポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)を用いることが出来る。PETのほかには、ポリエステルフィルム、ポリメタクリレートフィルム、ニトロセルロースフィルム、セルロースアセテートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等を用いることができる。また、必要とされる防湿性に合わせて、これらフィルムに金属酸化物などを蒸着した蒸着フィルムを複数枚積層した構成とすることもできる。
【0039】
また、蛍光体付基板の基板側と蛍光体層側の互いに対向する面には、互いを熱融着して封止するための熱融着性の樹脂が用いられることが望ましい。熱融着層としては、一般に使用するインパルスシーラーで融着可能な樹脂フィルムを使用できる。例えば、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)やポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム等が挙げられるが、これに限られたものではない。
【0040】
蛍光体付基板を上下の保護膜で挟み、減圧雰囲気中で上下の保護膜が接触する端部を融着することにより封止することができる。封止部を103b、103dに示す。
また、本発明において、保護膜としてフィルムを用いたが耐湿性を有する、ポリパラキシリレンなどの有機膜、無機膜を堆積してもよい。また、上下の保護膜を別々に分けずに、1回の成膜で堆積してもよい。この場合は図5の保護膜102のようになる。
【0041】
本発明において、保護膜の厚さは10〜100umであることが好ましい。保護膜は防湿性が付与されているが、具体的には前記保護層の透湿度(水蒸気透過率ともいう)が50g/m2・24h(40℃・90%RH)以下であることが好ましく、更に好ましくは10g/m2・24h以下であり、特に好ましくは1g/m2・24h以下である。ここで保護膜の透湿度はJIS Z 0208により規定された方法を参照して測定することができる。
【0042】
(シンチレータプレートの形成)
基板上に蛍光体層を設けたシンチレータ基板は、上下の保護膜で挟み、減圧雰囲気中で上下の保護膜が接触する端部を融着することにより封止し、シンチレータプレートとする。図1(a)、(b)に封止場所の異なる、シンチレータプレートの断面図を示す。
【0043】
(放射線画像撮影装置の組み立て)
本発明の放射線画像撮影装置は、ハウジング404の内部に、前面板403、緩衝材402、シンチレータプレート1a、フォトダイオードを形成したTFT基板からなる光電変換パネル401を備えている。ハウジング404は、その内部に搭載した各種機器を保護できるように剛性の高い材料、例えばABSや炭素繊維樹脂で作製される。前面板403は、放射線透過率が高い材料で作製される。なお、この前面板403の厚さは、0.3〜0.5mmで、放射線透過性を確保しつつ、強度を維持する。放射線透過率が高く、且つ剛性の高い材料としては、アルミニウム合金、炭素繊維強化樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、これらの樹脂とアルミニウム合金との複合材などがある。前面板403は、緩衝材402を介してシンチレータプレート1aを押圧して、シンチレータプレート1aを光電変換パネル401に密接させる。
【0044】
シンチレータプレート1aと光電変換パネル401の位置の合わせ方については従来、とくにルールは設けられていなかった。本発明では、シンチレータプレート1aの蛍光体層の領域と光電変換パネルの光電変換素子アレイ部の領域とを一致させている。また、周辺回路302の上ではシンチレータプレートの端部103b、103dが光電変換パネルと接触しないような形状になっている。これにより、放射線画像撮影装置の連続動作時に、光電変換パネルが過熱し、ゲートシフトレジスタ回路301やデータ出力回路302等が60℃程度まで上昇する。この熱が、CsIの結晶を通して、シンチレータプレート端部103b、103dに達することがない。
【0045】
(従来例)
もし、従来例(図6)のようにCsI結晶がゲートシフトレジスタ回路301やデータ出力回路302等の上で保護フィルムを介して保護フィルム102aと接触していると、CsIの結晶を通して熱が103b、103dに伝わる。103b、103dは保護フィルム構造で耐湿性がもっとも弱い部分であり、100数十度で圧着してはいるが、PETフィルムのガラス転移点は67℃であり、60℃まで温度が上昇すると保護フィルムは軟化し103b、103dの張り合わせ部で水分が進入し、蛍光体層CsIが潮解し、柱形状がくずれることにより、光ガイド効果が低下することで鮮鋭性が低下する。従って画像の解像度が低下する。
【0046】
本発明によれば、前述のように、上記のようなことがないので、高温、高湿環境で連続動作した際に、画像の鮮鋭性の劣化の少ない放射線画像撮影装置が得られる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
[実施例1]
図4は本発明の第1の実施形態による放射線画像撮影装置の模式断面図である。例えば、基板101としては125um厚のポリイミドフィルム、蛍光体層101bとしては600um厚のTlを0.03mol%ドープしたCsI結晶を蒸着法にて成膜した。保護フィルム102a,102bは合計50umの厚さのPET20um/アルミナ蒸着0.2um/ポリプロピレン30um積層膜を用いる。103b、103dは3mm幅で140℃の熱圧着を行い形成した。また、前面板としては0.3mm厚さのAl板を用い、緩衝材402には1cm程度の厚さのスポンジを用いた。ハウジング404にはABS樹脂またはカーボン板を用い、蛍光体層が周辺回路302の上まで延びて、102aが接した構造(図6)と接していない本発明の構造(図4)を作製した。この二つの構造で35℃、75%湿度の環境下で一定時間連続動作を行った。その後、MTF(モジュレーショントランスファーファンクション)をエッジ法で測定したところ、本発明(図4)の構造では1ラインのMTFの低下はほぼ0であったが、従来例(図6)の構造では1ラインのMTFの低下は0.05程度存在した。ここから本発明の優位性は明らかである。
【0048】
[実施例2]
図4の構造の放射線画像装置において、103b、103dの幅を0mm、3mm、6mmとし、シンチレータプレートの交換試験を行った。シンチレータプレートを放射線画像撮影装置にセットし、2時間動作させ、またシンチレータプレートを着脱するという試験を10回繰り返した。シンチレータのとりはずしは103b,103dの部分を粘着テープで持ち上げ、その後、指でシンチレータプレートを持ち上げた。その際幅0mmでは、封止部分の接着不足のためか、10試料中2試料で103b,103d部で封止が破損するという問題が発生した。これに対し、3mm,6mmの場合は10個のサンプル中1個も封止が破損したり、シンチレータプレートが光電変換パネルからはがれにくいといった問題はなかった。
【0049】
[実施例3]
図5は本発明の第2の実施形態による放射線画像撮影装置の模式断面図である。例えば、基板101としては125um厚のポリイミドフィルム、蛍光体層101bとしては600um厚のTlを0.03mol%ドープしたCsI結晶を蒸着法にて成膜した。保護膜102はポリパラキシリレンを15um、重合蒸着法により堆積した。また、前面板としては0.3mm厚さのAl板を用い、緩衝材402には1cm程度の厚さのスポンジを用いた。ハウジング404にはABS樹脂またはカーボン板を用い、蛍光体層が周辺回路302の上まで延びて、102が接した構造(図7)と接していない本発明の構造(図5)を作製した。この二つの構造で35℃、75%湿度の環境下で一定時間連続動作を行った。その後、MTF(モジュレーショントランスファーファンクション)をエッジ法で測定したところ、本発明(図5)の構造では1ラインのMTFの低下はほぼ0であったが、従来例(図7)の構造では1ラインのMTFの低下は0.03程度存在した。ここからも本発明の優位性は明らかである。
【符号の説明】
【0050】
101 シンチレータ基板
1a シンチレータプレート
1b シンチレータプレート
101b 蛍光体層
102a 第1保護フィルム
102b 第2保護フィルム
102 保護膜
103a 封止部
103b 封止部
103c 封止部
103d 封止部
301 ゲートシフタレジスタ回路
302 データ出力回路
303 バイアスライン
304 光電変換素子アレイ
401 光電変換パネル
402 緩衝材
403 前面板
404 ハウジング
201 真空容器
202 ボート
203 基板ホルダ
204 回転機構
205 真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に蛍光体層を有し、基板と蛍光体層が耐湿性の保護膜により覆われているシンチレータプレートを、光電変換パネルに対向接触させた構造を有する放射線画像撮影装置であって、前記シンチレータプレートの外周部が、蛍光体層を有しない基板と保護膜のみ、または保護膜のみから形成されている領域を有し、この領域が光電変換パネルにおいて、光電変換素子アレイ部の外側の信号読み出し回路または光電変換素子アレイ選択回路の上にあることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線画像撮影装置であって、前記シンチレータプレート外周部において、蛍光体層を有しない基板と保護膜のみ、または保護膜のみから形成されている領域が、光電変換素子アレイ部の外側の信号読み出し回路または光電変換素子アレイ選択回路の上部にあるが、これら回路と接していないことを特徴とする放射線画像撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−40953(P2013−40953A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−222919(P2012−222919)
【出願日】平成24年10月5日(2012.10.5)
【分割の表示】特願2009−502514(P2009−502514)の分割
【原出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】