説明

放射線画像検出装置

【課題】長期にわたり画質を維持することのできる放射線画像検出装置を提供する。
【解決手段】放射線画像検出装置1は、放射線露光によって蛍光を発する蛍光体からなるシンチレータ11、及び前記シンチレータを支持する支持基板10を有する放射線画像変換パネル2と、接着層4を介して前記シンチレータと貼り合わされて前記シンチレータに生じる前記蛍光を検出する画素アレイ21、及び前記画素アレイを支持するセンサ基板20を有するセンサパネル3と、前記シンチレータ及び前記画素アレイを囲み、前記支持基板と前記センサ基板との隙間を封止して、前記支持基板と前記センサ基板との間に内部空間Sを形成する封止部材5と、前記内部空間と、その外側の外部空間との気圧差に応じて開閉し、前記内部空間と前記外部空間とを連通し、また隔絶するベント部6と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、放射線像を検出してデジタル画像データを生成するFPD(Flat Panel Detector)を用いた放射線画像検出装置が実用化されており、輝尽性蛍光体(蓄積性蛍光体)からなるイメージングプレートに比べて即時に画像を確認できるといった理由から急速に普及が進んでいる。この放射線画像検出装置には種々の方式のものがあり、その一つとして、間接変換方式のものが知られている。
【0003】
間接変換方式の放射線画像検出装置は、放射線に露光されることによって蛍光を発する蛍光体からなるシンチレータを有する放射線画像変換パネルと、シンチレータの蛍光を検出する画素のアレイを有するセンサパネルとを備え、シンチレータと画素アレイとが貼り合わされて構成されている。被写体を透過した放射線はシンチレータによって光に変換され、シンチレータの蛍光は画素アレイによって電気信号に変換され、それによりデジタル画像データが生成される。
【0004】
シンチレータは、典型的にはCsI(ヨウ化セシウム)やNaI(ヨウ化ナトリウム)などのアルカリハライド蛍光体を用いて気相堆積法により形成され、蛍光体の結晶が柱状に成長してなる柱状結晶の群によって構成されている。気相堆積法によって形成される蛍光体の柱状結晶は、結合剤等の不純物を含まず、また、そこに発生した蛍光を結晶の成長方向に導光する光ガイド効果によって蛍光の拡散を抑制する。それにより、放射線画像検出装置の感度の向上が図られると共に、画像の鮮鋭度の向上が図られる(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
CsIやNaIなどのアルカリハライド蛍光体の結晶は潮解性を有しており、それらの柱状結晶の結晶構造は、湿気に晒されることによって容易に崩れてしまう。柱状結晶構造が崩れると、上記の光ガイド効果が減弱し、画像の鮮鋭度が低下する。そのため、特許文献1に記載された放射線画像検出装置において、シンチレータは、有機材料からなる保護膜によって被覆されており、さらに、シンチレータを支持する変換パネルの支持基板と画素アレイを支持するセンサパネルのセンサ基板との隙間が封止部材によって封止され、シンチレータは、支持基板及びセンサ基板並びに封止部材によって密閉される内部空間に収容されており、シンチレータの防湿がなされている。
【0006】
ここで、シンチレータを収容する内部空間には空気が封入される。また、柱状結晶の群からなるシンチレータを被覆する保護膜の内側にも、シンチレータと共にその柱状結晶の群の間にある空気が封入される。これらの空気は、環境の温度変化や使用に伴う装置の温度変化などに起因して膨張・収縮し、この膨張・収縮に伴って保護膜の内側と外側また内部空間と外部空間との間に気圧差が生じる。そして、この気圧差に起因して、シンチレータと画素アレイとを貼り合わせる接着層には応力が作用する。応力が繰り返し作用すると、シンチレータと接着層との接合界面や画素アレイと接着層との接合界面の一部において剥離が生じ、そこに空気層が生じる場合がある。空気層は、光の反射や散乱を生じさせ、画像の鮮鋭度の低下や画像欠陥の要因となる。そこで、特許文献3に記載された放射線画像検出装置においては、シンチレータを収容する内部空間と外部空間とを連通させる開口部が両空間の隔壁に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003‐066147号公報
【特許文献2】特開2011‐017683号公報
【特許文献3】国際公開第01/051951号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3に記載された放射線画像検出装置によれば、開口部を通じてシンチレータを収容する内部空間と外部空間との間の空気の出入りが自由となり、温度変化に伴う両空間の気圧差の発生が防止され、シンチレータと接着層との接合界面や画素アレイと接着層との接合界面における剥離が抑制される。しかしながら、外部空間の湿気が開口部を通じて内部空間に容易に浸入してしまい、シンチレータに潮解が生じて画像の鮮鋭度が低下する虞がある。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたものであり、長期にわたり画質を維持することのできる放射線画像検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
放射線露光によって蛍光を発する蛍光体からなるシンチレータ、及び前記シンチレータを支持する支持基板を有する放射線画像変換パネルと、接着層を介して前記シンチレータと貼り合わされて前記シンチレータに生じる前記蛍光を検出する画素アレイ、及び前記画素アレイを支持するセンサ基板を有するセンサパネルと、前記シンチレータ及び前記画素アレイを囲み、前記支持基板と前記センサ基板との隙間を封止して、前記支持基板と前記センサ基板との間に内部空間を形成する封止部材と、前記内部空間と、その外側の外部空間との気圧差に応じて開閉し、前記内部空間と前記外部空間とを連通し、また隔絶するベント部と、を備える放射線画像検出装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シンチレータを収容する内部空間と外部空間との気圧差に応じて開閉し、両空間を連通、隔絶するベント部を設けることによって、気圧差に起因して生じるシンチレータと接着層との接合界面や画素アレイと接着層との接合界面における剥離を防止し、また、内部空間への湿気の浸入を抑制することができる。それにより、剥離による画質の低下、及びシンチレータの潮解による画質の低下をいずれも抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態を説明するための、放射線画像検出装置の一例の構成を模式的に示す図である。
【図2】図1の放射線画像検出装置のセンサパネルの構成を模式的に示す図である。
【図3】図1の放射線画像検出装置のセンサパネルの構成を模式的に示す図である。
【図4】図1の放射線画像検出装置の放射線画像変換パネルの構成を模式的に示す図である。
【図5】図4の放射線画像変換パネルの蛍光体のV‐V断面を示す図である。
【図6】図4の放射線画像変換パネルの蛍光体のVI‐VI断面を示す図である。
【図7】図1の放射線画像検出装置のベント部の動作を模式的に示す図である。
【図8】図1の放射線画像検出装置の変形例に関し、シンチレータを形成する蛍光体に含有される賦活剤の濃度の面内分布を示す図である。
【図9】本発明の実施形態を説明するための、放射線画像検出装置の他の例の構成を模式的に示す図である。
【図10】図9の放射線画像検出装置の変形例の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の実施形態を説明するための、放射線画像検出装置の一例の構成を示す。
【0014】
図1に示す放射線画像検出装置1は、放射線画像変換パネル2と、センサパネル3と、を備えている。
【0015】
放射線画像変換パネル2は、支持基板10と、放射線露光によって蛍光を発するシンチレータ11とを有しており、シンチレータ11は、支持基板10上に形成されている。
【0016】
センサパネル3は、絶縁性基板20と、絶縁性基板20上に設けられた画素アレイ21とを有している。画素アレイ21を構成する画素の各々は、放射線露光によってシンチレータ11に生じた蛍光を検出する。
【0017】
シンチレータ11と画素アレイ21とは、それらの間に介在して両者を光学的に結合させる接着層4によって貼り合わされている。接着層4は、シンチレータ11の蛍光を減衰させることなく画素アレイ21に到達させ得るものであれば特に制限はなく、固化して濡れ性を失う接着によってシンチレータ11と画素アレイ21とを接合するものに限らず、濡れ性を保つ粘着によって両者を接合するものも含む。そのような接着層4は、例えば、UV硬化接着剤や加熱硬化型接着剤や室温硬化型接着剤やホットメルト型接着剤などの接着剤、若しくはゴム系粘着剤やシリコーン系粘着剤やアクリル系粘着剤などの粘着剤、又はこれらの接着剤や粘着剤が両面に設けられた両面接着/粘着シート、等によって形成することができる。なお、接着剤としては、画像の鮮鋭度を低下させないという観点から、画素サイズに対して十分に薄い接着層を形成し得る低粘度エポキシ樹脂製の接着剤が好ましい。また、粘着剤としては、光や酸化による劣化が少ないアクリル系粘着剤が好ましい。
【0018】
放射線画像検出装置1は、放射線画像変換パネル2の支持基板10とセンサパネル3の絶縁性基板20との隙間を封止する封止部材5をさらに備えている。
【0019】
封止部材5は、枠状に形成され、互いに貼り合わされたシンチレータ11及び画素アレイ21を囲むように支持基板10と絶縁性基板20との間に配置されており、両基板10,20の間にシンチレータ11及び画素アレイ21を収容する内部空間Sを形成する。
【0020】
この封止部材5は、一方の端面において支持基板10に全周にわたって密接し、他方の端面において絶縁性基板20に全周にわたって密接する。そして、支持基板10及び絶縁性基板20と封止部材5との接触部の一部分は非接着とされ、他の部分は接着されている。図示の例においては、封止部材5と絶縁性基板20との接触部の一部分に非接着部分が設けられている。この非接着部分は、内部空間Sと外部空間とを連通し、また隔絶するベント部6として機能する。なお、封止部材5と支持基板10との接触部に非接着部分を設けてもよいし、封止部材5と支持基板10との接触部及び封止部材5と絶縁性基板20との接触部の双方に非接着部分を設けてもよい。また、封止部材5と支持基板10との接触部及び/又は封止部材5と絶縁性基板20との接触部において、複数の非接着部分を設けてもよい。
【0021】
非接着部分において封止部材5と絶縁性基板20とを確実に密接させるために、非接着部分に対応する封止部材5の接触面は、その両側の接着部分に対応する接触面に比べて若干膨出するように形成されていることが好ましい。両側の接着部分に対応する接触面が絶縁性基板20に接着されることにより、非接着部分に対応する封止部材5の接触面は絶縁性基板20に押し当てられ、非接着部分に対応する封止部材5の接触面は絶縁性基板20に確実に密接する。ベント部6は、封止部材5と絶縁性基板20とが密接することによって閉じられ、ベント部6が閉じることにより、内部空間Sは、気密に保たれ、外部空間から隔絶される。
【0022】
封止部材5としては、非接着部分における絶縁性基板20との密接の観点から、柔軟性を有する弾性材料が好適に用いられ、そのような材料としては、アクリル樹脂やシリコン樹脂などを例示できる。
【0023】
放射線画像検出装置1は、いわゆる表面読取型(ISS:Irradiation Side Sampling)の放射線画像検出装置であり、放射線は、センサパネル3を透過して放射線画像変換パネル2のシンチレータ11に入射する。放射線が入射したシンチレータ11において蛍光が発生し、ここで発生した蛍光がセンサパネル3の画素アレイ21によって検出される。蛍光を多く発生させるシンチレータ11の放射線入射側が画素アレイ21に隣設されるため、感度が向上する。
【0024】
図2及び図3は、センサパネル3の構成を示す。
【0025】
画素アレイ21は、絶縁性基板20上に複数の画素22が2次元状に配列されてなり、画素22の各々は、光電変換素子23、及びスイッチ素子24によって構成されている。
【0026】
光電変換素子23は、シンチレータ11の蛍光を受光して電荷を生成する光導電層25と、この光導電層25の表裏面に設けられた一対の電極26,27を有している。光導電層25のシンチレータ11側の面に設けられた電極26は、光導電層25にバイアス電圧を印加するためのバイアス電極であり、反対側の面に設けられた電極27は、光導電層25で生成された電荷を収集する電荷収集電極である。電荷収集電極27は、スイッチ素子24に接続されており、電荷収集電極27に収集された電荷は、スイッチ素子24を介して読み出される。
【0027】
絶縁性基板20上には、2次元状に配列された画素22の配列方向のうちの一方向(行方向)に延設され各画素22のスイッチ素子24をオン/オフさせるための複数本のゲート線28と、ゲート線28と直交する方向(列方向)に延設されオン状態のスイッチ素子24を介して電荷を読み出すための複数の信号線(データ線)29とが設けられている。ゲート線28及び信号線29の各々は、絶縁性基板20の縁部に設けられた接続端子部30において接続回路31に接続され、この接続回路31を介してゲートドライバ及び信号処理部を有する回路基板(図示せず)に接続される。
【0028】
スイッチ素子24は、ゲートドライバからゲート線28を介して供給される信号により行単位で順にオン状態とされる。そして、オン状態とされたスイッチ素子24によって読み出された電荷は、電荷信号として信号線29を伝送されて信号処理部に入力される。これにより、電荷が行単位で順に読み出され、上記の信号処理部において電気信号に変換され、デジタル画像データが生成される。
【0029】
絶縁性基板20としては、典型的にはガラス基板が用いられるが、プラスチックやアラミドやバイオナノファイバーなどを用いて形成されたフレキシブル基板を用いることもできる。
【0030】
光電変換素子23は、例えばアモルファスシリコンのPN接合又はPIN接合を光導電層25に用いたアモルファスシリコンフォトダイオードとして構成することができる。また、光導電層25としては、アモルファスシリコンの他に有機光電変換膜も用いることができる。なお、有機光電変換膜については後述する。
【0031】
スイッチ素子24は、例えば活性層にアモルファスシリコンを用いた薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)として構成することができる。また、TFTの活性層としては、アモルファスシリコンの他に非晶質酸化物半導体材料や有機半導体材料なども用いることができる。なお、非晶質酸化物半導体材料や有機半導体材料については後述する。
【0032】
なお、光電変換素子23のアレイとスイッチ素子24のアレイとが一つの同じ層に形成されていてもよいし、シンチレータ11側から、スイッチ素子24のアレイ、光電変換素子23のアレイの順に互いに異なる層に形成されていてもよいが、図示の例のように、シンチレータ11側から、光電変換素子23のアレイ、スイッチ素子24の順に互いに異なる層に形成されていることが好ましい。光電変換素子23のアレイとスイッチ素子24のアレイとが互いに異なる層に形成されていることによって、光電変換素子23のサイズを大きくすることができる。そして、シンチレータ11側から、光電変換素子23のアレイ、スイッチ素子24のアレイの順に形成されていることによって、光電変換素子23のアレイをシンチレータ11に近接して配置することができ、感度が向上する。
【0033】
図4は、放射線画像変換パネル2の構成を示す。
【0034】
シンチレータ11は、柱状部40と非柱状部41とで構成されており、柱状部40及び非柱状部41は、支持基板10上に非柱状部41、柱状部40の順に重なって形成されている。
【0035】
柱状部40は、上記の蛍光物質の結晶が柱状に成長してなる柱状結晶43の群によって形成されている。なお、近隣の複数の柱状結晶が結合して一つの柱状結晶を形成する場合もある。隣り合う柱状結晶43の間には空隙が置かれ、柱状結晶43は互いに独立して存在する。
【0036】
非柱状部41は、蛍光物質の比較的小さい粒状結晶42の群によって形成されている。なお、非柱状部41には、上記の蛍光物質の非晶質体が含まれる場合もある。非柱状部41において、粒状結晶は、不規則に結合し、あるいは重なり合って存在する。
【0037】
支持基板10としては、その上にシンチレータ11を形成することができる限りにおいて特に限定されないが、例えば、カーボン板、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)、ガラス板、石英基板、サファイア基板、鉄やスズやクロムやアルミニウムなどから選択される金属シート、等を用いることができる。
【0038】
シンチレータ11を形成する蛍光体は、例えば、CsI:Tl(タリウム賦活ヨウ化セシウム)、NaI:Tl(タリウム賦活ヨウ化ナトリウム)、CsI:Na(ナトリウム賦活ヨウ化セシウム)、等を用いることができ、なかでも、発光スペクトルがアモルファスシリコンフォトダイオードの分光感度の極大値(550nm付近)に適合する点で、CsI:Tlが好ましい。
【0039】
シンチレータ11は、柱状結晶43の先端部の集合によって構成される面(蛍光出射面)において接着層4に直に接触し、画素アレイ21に貼り合わされる。即ち、シンチレータ11は、保護膜によって被覆されておらず、内部空間S内に露出している。放射線露光によってシンチレータ11に生じた蛍光は、柱状結晶43の先端部の集合によって構成された蛍光出射面から画素アレイ21に向けて出射される。
【0040】
柱状結晶43の各々に発生した蛍光は、その柱状結晶43と周囲の空隙との屈折率差に起因して柱状結晶43内で全反射を繰り返すことで拡散を抑制され、画素アレイ21に導光される。それにより、画像の鮮鋭度が向上する。
【0041】
また、柱状結晶43の先端部は、先鋭なテーパ状に形成されている。柱状結晶43の先端部が、このような凸形状に形成されていることにより、平坦若しくは凹形状に比べて光の取り出し効率が高められる。それにより、画像の鮮鋭度が向上する。先端部の角度θは40°〜80°が好ましい。
【0042】
また、柱状結晶43の各々に発生した蛍光のうち、画素アレイ21とは反対側、即ち支持基板10側に向かう蛍光については、非柱状部41において画素アレイ21側に向けて反射される。それにより、蛍光の利用効率が高まり、感度が向上する。
【0043】
また、非柱状部41は、柱状部40に比べて緻密であり、その空隙率は小さい。支持基板10と柱状部40との間に非柱状部41が介在することによって、支持基板10とシンチレータ11との密着性が向上し、シンチレータ11が支持基板10から剥離することが防止される。
【0044】
図5は、シンチレータ11の図4におけるV‐V断面を示す電子顕微鏡写真である。
【0045】
図5に明らかなように、柱状部40においては、柱状結晶43が結晶の成長方向に対しほぼ均一な断面径を示し、且つ、柱状結晶43の周囲に空隙を有し、柱状結晶43が互いに独立して存在することがわかる。柱状結晶43の結晶径(柱径)は、光ガイド効果、機械的強度、そして画素欠陥防止の観点から、2μm以上8μm以下であることが好ましい。柱径が小さすぎると、柱状結晶43の機械的強度が不足し、衝撃等により損傷する懸念があり、柱径が大きすぎると、画素毎の柱状結晶43の数が少なくなり、結晶にクラックが生じた際にその画素が欠陥となる確率が高くなる懸念がある。
【0046】
ここで、柱径は、柱状結晶43の成長方向上面から観察した結晶の最大径を示す。具体的な測定方法としては、柱状結晶43の成長方向上面からSEM(走査型電子顕微鏡)で観察することで柱径を測定する。柱状結晶43が100本から200本観察できる倍率(約2000倍程度)で観察し、1撮影に含まれる結晶全てに対し、柱径の最大値を測定して平均した値を採用している。柱径(μm)は小数点以下2桁まで読み、平均値をJIS Z 8401に従い小数点以下2桁目を丸めた値とする。
【0047】
図6は、シンチレータ11の図4におけるVI‐VI断面を示す電子顕微鏡写真である。
【0048】
図6に明らかなように、非柱状部41においては、粒状結晶42が不規則に結合したり重なり合ったりしており、結晶間の明確な空隙は柱状部40程は認めらない。非柱状部41を形成する粒状結晶42の径は、密着性及び光反射の観点から、0.5μm以上7.0μm以下であることが好ましい。結晶径が小さすぎると、空隙が0に近づき、光反射の機能が低下する懸念があり、結晶径が大きすぎると、平坦性が低下し、支持基板10との密着性が低下する懸念がある。また、非柱状部41を形成する粒状結晶42の形状は、光反射の観点から、略球状であることが好ましい。
【0049】
ここで、結晶同士が結合している場合の結晶径の測定は、隣接する結晶間に生じる窪み(凹)同士を結んだ線を結晶間の境界と見なし、結合した結晶同士を最小多角形となるように分離して結晶径を測定し、柱状部40における結晶径と同様にして平均値をとり、その値を採用する。
【0050】
柱状部40の厚みは、放射線のエネルギーにもよるが、柱状部40における放射線吸収及び画像の鮮鋭度の観点から、200μm以上700μm以下であることが好ましい。柱状部40の厚みが小さすぎると、放射線を十分に吸収することができず、感度が低下する虞があり、厚みが大きすぎると光拡散が生じ、柱状結晶43の光ガイド効果によっても画像の鮮鋭度が低下する懸念がある。
【0051】
非柱状部41の厚みは、支持基板10との密着性及び光反射の観点から、5μm以上125μm以下であることが好ましい。非柱状部41の厚みが小さすぎると、支持基板10との十分な密着性が得られない虞があり、また厚みが大きすぎると、非柱状部41における蛍光の寄与、及び非柱状部41での光反射による拡散が増大し、画像の鮮鋭度が低下する懸念がある。
【0052】
非柱状部41及び柱状部40は、例えば気相堆積法によって、支持基板10上にこの順に連続して一体に形成される。具体的には、真空度0.01〜10Paの環境下で、CsI:Tlを抵抗加熱式のるつぼに通電するなどの手段で加熱して気化させ、支持基板10の温度を室温(20℃)〜300℃としてCsI:Tlを支持基板10上に堆積させる。
【0053】
支持基板10上にCsI:Tlの結晶相を形成する際、当初は直径の比較的小さい粒状結晶42を堆積させて非柱状部41を形成する。そして、真空度及び支持基板10の温度の少なくとも一方の条件を変更し、非柱状部41を形成した後に連続して柱状部40を形成する。具体的には、真空度を上げる、及び/又は支持基板10の温度を高くすることによって、柱状結晶43の群を成長させる。
【0054】
そして、柱状結晶43の成長終期における支持基板10の温度を制御することによって、柱状結晶43の先端部の形状(先端角度θ)を制御することができる。概ね、110℃で170度、140℃で60度、200℃で70度、260℃で120度となる。
【0055】
以上によりシンチレータ11を効率よく、容易に製造することができる。また、この製造方法によれば、真空度や支持基板の温度を制御することで、容易に種々の仕様のシンチレータ11を設計通りに製造することができるという利点をも有する。
【0056】
以上のように構成された放射線画像検出装置1におけるベント部6(図1参照)の動作を、図7を参照して説明する。
【0057】
図7は、ベント部6の動作を示す。
【0058】
内部空間Sと外部空間との気圧差がないか、若しくは気圧差が僅かであると、ベント部6は閉じられており、シンチレータ11を収容した内部空間Sは、気密に保たれ外部空間と隔絶されている。それにより、シンチレータ11の防湿がなされている(FIG.7A)。
【0059】
環境の温度が上昇し、また使用に伴って装置の温度が上昇すると、シンチレータ11の柱状結晶34の群の間にある空気を含み内部空間Sに封入されている空気の温度もまた上昇し、封入されている空気が膨張する。それにより、内部空間Sの気圧が外部空間の気圧に比べて高まり、この気圧差によってベント部6が開かれる。ベント部6が開かれると、内部空間Sから外部空間に排気されて内部空間Sの気圧が低くなり、内部空間Sの気圧と外部空間の気圧とが平衡する。それにより、気圧差に起因して生じるシンチレータ11と接着層4との接合界面や画素アレイ21と接着層4との接合界面における剥離を防止することができる(FIG.7B)。
【0060】
なお、ベント部6が開かれる気圧差は、ベント部6が設けられる封止部材5と絶縁性基板20との接触部の非接着部分において、封止部材5と絶縁性基板20との密接具合い、即ち、絶縁性基板20に対する封止部材5の押し当て具合によって適宜調整することができ、封止部材5の押し当て具合の調整は、例えば非接着部分に対応する封止部材5の接触面の膨出量によって適宜調整することができる。
【0061】
また、環境の温度や使用に伴って装置の温度が上昇すると、支持基板10及び絶縁性基板20の温度もまた上昇する。本例の放射線画像検出装置1においては、放射線画像変換パネル2の支持基板10及びセンサパネル3の絶縁性基板20は、互いに線膨張係数が異なる材料によって形成されており、線膨張係数の差に起因して支持基板10及び絶縁性基板20に反りが生じる。例えば、支持基板10としてアルミニウム板(線膨張係数:30PPM)を、また絶縁性基板20としてガラス板(線膨張係数:3PPM)を用い、それらのサイズが15インチ程度の場合において、温度が50℃上昇すると10mm程度の反りが生じ得る。
【0062】
支持基板10及び絶縁性基板20に反りが生じることによって、封止部材5と絶縁性基板20との接触部の非接着部分における両者の密接が弱まり、あるいは両者が乖離し、ベント部6が開かれる。内部空間Sと外部空間との気圧差、支持基板10及び絶縁性基板20の反りは、いずれも温度の変化に関連する。そこで、両基板10,20の反りをベント部6の開閉に利用することによって、気圧差にのみ依存する場合に比べてベント部6の開閉を確実に行うことができる。それによって、ベント部6が設けられる非接着部分において、封止部材5と絶縁性基板20との密接を強化し、即ち、封止部材5を絶縁性基板20により強く押し当てて、シンチレータ11を収容する内部空間Sの気密性を高めることができる。
【0063】
以上、説明したように、放射線画像検出装置1によれば、シンチレータ11を収容する内部空間Sと外部空間との気圧差に応じて開閉し、両空間を連通し、また隔絶するベント部6を設けることによって、気圧差がない、あるいは気圧差が僅かである場合には、内部空間Sを気密に保ち、内部空間Sへの湿気の浸入を抑制することができる。そして、気圧差が生じ、あるいは気圧差が過大となった場合には、ベント部6を通じて両空間の気圧を平衡させ、気圧差に起因して生じるシンチレータ11と接着層4との接合界面や画素アレイ21と接着層4との接合界面における剥離を防止することができる。それにより、シンチレータ11の潮解による画質の低下、及びシンチレータ11と画素アレイ21との剥離による画質の低下をいずれも抑制することができる。
【0064】
なお、上述した放射線画像検出装置1において、シンチレータ11は蛍光体の柱状結晶43の群を含み、その空隙率が比較的高い。よって、シンチレータ11を保護膜で被覆した場合に、環境の温度変化や使用に伴う装置の温度変化などに起因して保護膜の内側と外側とで気圧差を生じ得る。そこで、放射線画像検出装置1においては、シンチレータ11は内部空間S内において露出されている。しかし、例えばGOS(酸硫化ガドリニウム)などの柱状結晶構造をとらない蛍光体からなるシンチレータは、その空隙率が比較的低く、これを保護膜で被覆したとしても保護膜の内側と外側とで気圧差は殆ど生じない。そこで、そのようなシンチレータについては保護膜で被覆してもよく、それによれば、シンチレータの防湿をより確実に行うことができる。
【0065】
また、上述した放射線画像検出装置1においては、センサパネル3側から放射線が入射されるものとして説明したが、放射線画像変換パネル2側から放射線が入射される構成を採ることもできる。
【0066】
図8は、放射線画像検出装置1の変形例に関し、シンチレータ11を形成する蛍光体に含有される賦活剤の濃度の面内分布を示す図である。
【0067】
本変形例においては、シンチレータ11を形成する蛍光体に含有されるTlやNaなどの賦活剤の濃度が面内で変化しており、画素アレイ21の有効撮像領域の外側に重なるシンチレータ11の四方の縁部における賦活剤濃度は、画素アレイ21の有効撮像領域に重なるシンチレータ11の中央部における賦活剤濃度に比べて高くなっている。図8において、原点はシンチレータ11の中央に相当する。
【0068】
一般に、賦活剤濃度が高くなるほど、蛍光体の発光強度は高まるが、結晶性が低下して均質な柱状結晶が得られ難くなり、柱状結晶の光ガイド効果が減弱して画像の鮮鋭度が低下する虞がある。また、賦活剤濃度が高くなるほど蛍光体の吸湿性が高まり、潮解によって柱状結晶構造が崩れ易くなり、柱状結晶の光ガイド効果が減弱して画像の鮮鋭度が低下する虞がある。
【0069】
しかし、シンチレータ11の四方の縁部は、画素アレイ21の有効撮像領域の外側に重なり、よって、画像に影響を与えないか、その影響は小さい。四方の縁部における賦活剤濃度が相対的に高かめられたシンチレータ11においては、縁部における吸湿性が高く、よって、ベント部6が開かれた際に内部空間Sに浸入する湿気は縁部において速やかに吸収される。それにより、シンチレータ11の中央部への湿気の浸潤を抑制し、中央部にある柱状結晶43の潮解を抑制することができ、画質をより長期にわたって維持することができる。
【0070】
なお、上記の賦活剤濃度の面内分布は、例えば、上述した気相体積法によって均一な賦活剤濃度分布を有するシンチレータを製造し、その後にシンチレータの縁部にのみ賦活剤をドーピングすることによって容易に形成することができる。賦活剤のドーピングは、例えば熱拡散やイオン注入法によって行うことができる。
【0071】
図9は、本発明の実施形態を説明するための放射線画像検出装置の他の例の構成を示す。なお、上述した放射線画像検出装置1と共通する要素には、共通の符号を付することにより説明を省略、あるいは簡略する。
【0072】
図9に示す放射線画像検出装置101は、放射線画像変換パネル102と、センサパネル3とを備えている。
【0073】
放射線画像変換パネル102は、支持基板10と、シンチレータ11とを有しており、シンチレータ11は、支持基板10上に形成されている。シンチレータ11は、接着層4を介してセンサパネル3の画素アレイ21に貼り合わされている。
【0074】
そして、放射線画像検出装置101は、放射線画像変換パネル102の支持基板10とセンサパネル3の絶縁性基板20との隙間を封止する封止部材5をさらに備えている。支持基板10及び絶縁性基板20と封止部材5との接触部の一部分は非接着とされ、他の部分は接着されている。図示の例においては、封止部材5と絶縁性基板20との接触部の一部分に非接着部分が設けられている。この非接着部分は、内部空間Sと外部空間とを連通し、また隔絶するベント部6として機能する。
【0075】
シンチレータ11は、柱状部40と非柱状部41とで構成されており、柱状部40及び非柱状部41は、支持基板10上に非柱状部41、柱状部40の順に重なって形成されている。
【0076】
以上のように構成されたシンチレータ11において、四辺の縁部にある柱状結晶43の群の間には、それらの先端側から充填材50が充填されている。縁部にある柱状結晶43の群の間に充填材50が充填されていることによって、画素アレイ21と貼り合わされるシンチレータ11の蛍光出射面における縁部が平坦化される。
【0077】
シンチレータ11の蛍光出射面は、柱状結晶43の集合によって構成されており、多数の空所が存在する。特に、本例においては、柱状結晶43の各々の先端部が、光の取り出し効率の観点から先鋭なテーパ状に形成されている。そのため、充填材50がないとすると、シンチレータ11と画素アレイ21とが貼り合わされる際に、シンチレータ11の蛍光出射面において接着層4に荷重を作用させて密接する領域は、柱状結晶34の先端の僅かな領域に限られる。これに対して、シンチレータ11の蛍光出射面における縁部が充填材50によって平坦化されていることにより、蛍光出射面における縁部は、その全体にわたって接着層4に荷重を作用させて密接する。
【0078】
さらに、シンチレータ11の縁部にある柱状結晶43の群の先端部間に充填材50が充填されていることによって、それらの柱状結晶43の先端部が一体化される。シンチレータ11と画素アレイ21とが貼り合わされる際にシンチレータ11には荷重が負荷されるが、充填材50によって柱状結晶43の先端部が一体化されていることによって、その荷重は多数の柱状結晶43に分散され、柱状結晶43の各々の損傷が防止される。
【0079】
以上により、シンチレータ11の蛍光出射面における縁部を、その全体にわたって接着層4に対して十分な荷重を作用させて密接させることができ、蛍光出射面における縁部と接着層4との間に十分な接着強度を得ることができる。それにより、蛍光出射面における縁部を基点とするシンチレータ11と画素アレイ21との剥離を防止することができる。
【0080】
ここで、柱状結晶43の上記の光ガイド効果は、周囲の媒質との屈折率差に起因する全反射を利用したものであり、柱状結晶43の群の間に充填材50が充填されると、その部分における柱状結晶43と周囲の媒質との屈折率差が小さくなって光ガイド効果が減弱する。しかしながら、放射線画像検出装置1を用いた放射線撮影において、被写体の関心領域は、通常は、画素アレイ21の中央部に重なるように配置される。シンチレータ11の縁部は、画素アレイ21の有効撮像領域の外側に重なるため、シンチレータ11の縁部にある柱状結晶43の光ガイド効果の減弱は、放射線画像の関心領域の画質に殆ど影響を及ぼさない。よって、シンチレータ11の縁部において、柱状結晶43の群の間への充填材50の充填深さDは、柱状結晶43に対する充填材50の固着力を考慮して設定することができる。
【0081】
本例において、柱状結晶43の先端部は先鋭なテーパ状に形成されており、柱状結晶43に対する充填材50の固着力を考慮すれば、充填材50は、柱状結晶43の先端部(テーパ部)を越えて柱状結晶43の間の深部まで充填されていることが好ましい。
【0082】
充填材50としては、シンチレータ11に生じる蛍光に対して透明であり、適度な流動性を有するエネルギー硬化性の樹脂材料が好適に用いられ、具体的には、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂などを例示することができる。
【0083】
充填材50は、例えば、シンチレータ11の蛍光出射面における縁部上に所定量盛っておき、加圧することによってシンチレータ11の縁部にある柱状結晶43の群の間に充填される。
【0084】
以上、説明したように、放射線画像検出装置101によれば、シンチレータ11の縁部にある柱状結晶43の群の間に充填材50を充填することによって、シンチレータ11の蛍光出射面における縁部を平坦化することができ、また縁部にある柱状結晶43の強度を高めることができる。それにより、シンチレータ11の蛍光出射面における縁部を接着層4に対して十分な荷重を作用させて密接させることができ、蛍光出射面と接着層4との間に十分な接着強度を得ることができる。よって、シンチレータ11と画素アレイ21との剥離を防止することができる。
【0085】
また、シンチレータ11の中央部は、被写体の関心領域の画質に大きな影響を及ぼすところ、この中央部にある柱状結晶43の群の間には充填材50を充填せず(充填深さ0とし)、それらの柱状結晶43の光ガイド効果の減弱を抑制することができる。よって、被写体の関心領域の画質が低下することを抑制することができる。
【0086】
図10は、上述した放射線画像検出装置101変形例の構成を示す。
【0087】
図10に示す放射線画像検出装置においては、シンチレータ11の全体にわたって柱状結晶43の群の間に、それらの先端側から充填材50が充填されている。ただし、中央部における充填材50の充填深さD1は、縁部における充填材50の充填深さD2に比べて小さくされている。
【0088】
シンチレータ11の全体にわたって柱状結晶43の群の間に充填材50が充填されていることにより、シンチレータ11の蛍光出射面の全体が平坦化され、それらの柱状結晶43の先端部が一体化される。それにより、シンチレータ11の蛍光出射面の全体を、接着層4に対して十分な荷重を作用させて密接させることができ、蛍光出射面の全体にわたって接着層4との間に十分な接着強度を得ることができる。それにより、シンチレータ11と画素アレイ21との剥離をより確実に防止することができる。
【0089】
そして、シンチレータ11の中央部における充填材50の充填深さD1が、縁部における充填材50の充填深さD2に比べて小さくされていることによって、画質の低下を抑制することができる。即ち、被写体の関心領域は、通常は画素アレイ21の有効撮像領域の中央部に重なるように配置され、シンチレータ11の中央部は、画素アレイ21の有効撮像領域の中央部に重なる。そのため、シンチレータ11の中央部にある柱状結晶43の光ガイド効果の減弱は、縁部にある柱状結晶43の光ガイド効果の減弱に比べて、放射線画像の関心領域の画質により大きな影響を及ぼす。そこで、中央部における充填材50の充填深さD1を相対的に小さくすることによって、中央部にある柱状結晶43の光ガイド効果の減弱を抑制し、放射線画像の関心領域の画質の低下を抑制することができる。
【0090】
充填材50による柱状結晶43の光ガイド効果の減弱を抑制する観点からは、充填材50としては、その屈折率が柱状結晶43の屈折率よりも小さいことが好ましい。例えば、柱状結晶43を形成する蛍光体として用いられるCsIの屈折率が1.79であることを考慮して、充填材50の屈折率は1.7以下であることが好ましい。充填材50として例示した上記の材料の屈折率について、グレード等によって上下するが、フェノール樹脂は1.58〜1.66、ユリア樹脂は1.54〜1.56、メラミン樹脂は1.6〜1.7、不飽和ポリエステル樹脂は1.52〜1.57、エポキシ樹脂は1.55〜1.61、ジアリルフタレート樹脂は1.51〜1.52である。
【0091】
充填材50は、例えば、シンチレータ11の蛍光出射面上に所定量盛っておき、加圧することによってシンチレータ11の縁部にある柱状結晶43の群の間に充填されるが、ここで、蛍光出射面における縁部上に盛られる充填材50の量に対して中央部上に盛られる充填材50の量を少なくしておくことにより、柱状結晶43の群の間への充填材50の充填深さを上記のように分布させることができる。
【0092】
上述した放射線画像検出装置は、放射線画像を高感度、高精細に検出しうるため、低放射線照射量で鮮鋭な画像を検出することを要求される、マンモグラフィなどの医療診断用のX線撮影装置をはじめ、様々な装置に組み込んで使用することができる。例えば、工業用のX線撮影装置として非破壊検査に用いたり、或いは、電磁波以外の粒子線(α線、β線、γ線)の検出装置として用いたりすることができ、その応用範囲は広い。
【0093】
以下、センサパネル3を構成する各要素に用いることのできる材料について説明する。
【0094】
[光電変換素子]
上述した光電変換素子23の光導電層25(図2参照)としては、例えば特開2009−32854号公報に記載された有機光電変換(OPC;Organic photoelectric conversion)材料により形成された膜(以下、OPC膜という)を使用することができる。OPC膜は、有機光電変換材料を含み、蛍光体から発せられた光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する。このように有機光電変換材料を含むOPC膜であれば、可視域にシャープな吸収スペクトルを持ち、蛍光体による発光以外の電磁波がOPC膜に吸収されることがほとんどなく、X線等の放射線がOPC膜で吸収されることによって発生するノイズを効果的に抑制することができる。
【0095】
OPC膜を構成する有機光電変換材料は、蛍光体で発光した光を最も効率良く吸収するために、その吸収ピーク波長が、蛍光体の発光ピーク波長と近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長と蛍光体の発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければ蛍光体から発された光を十分に吸収することが可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、蛍光体の放射線に対する発光ピーク波長との差が、10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
【0096】
このような条件を満たすことが可能な有機光電変換材料としては、例えば、アリーリデン系有機化合物、キナクリドン系有機化合物、及びフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えばキナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、蛍光体の材料としてCsI(Tl)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、OPC膜で発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。
【0097】
バイアス電極26および電荷収集電極27の間に設けられる有機層の少なくとも一部をOPC膜によって構成することができる。この有機層は、より具体的には、電磁波を吸収する部位、光電変換部位、電子輸送部位、正孔輸送部位、電子ブロッキング部位、正孔ブロッキング部位、結晶化防止部位、電極、及び層間接触改良部位等の積み重ねもしくは混合により形成することができる。
【0098】
上記有機層は、有機p型化合物または有機n型化合物を含有することが好ましい。有機p型半導体(化合物)は、主に正孔輸送性有機化合物に代表されるドナー性有機半導体(化合物)であり、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。したがって、ドナー性有機化合物としては、電子供与性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物、ピラゾリン化合物、スチリルアミン化合物、ヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン化合物、カルバゾール化合物、ポリシラン化合物、チオフェン化合物、フタロシアニン化合物、シアニン化合物、メロシアニン化合物、オキソノール化合物、ポリアミン化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピラゾール化合物、ポリアリーレン化合物、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体等を用いることができる。なお、これらに限らず、n型(アクセプター性)化合物として用いた有機化合物よりもイオン化ポテンシャルの小さい有機化合物であればドナー性有機半導体として用いることができる。
【0099】
有機n型半導体(化合物)は、主に電子輸送性有機化合物に代表されるアクセプター性有機半導体(化合物)であり、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。したがって、アクセプター性有機化合物は、電子受容性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有する5ないし7員のヘテロ環化合物(例えばピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、イソキノリン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、トリアゾロピリダジン、トリアゾロピリミジン、テトラザインデン、オキサジアゾール、イミダゾピリジン、ピラリジン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、ジベンズアゼピン、トリベンズアゼピン等)、ポリアリーレン化合物、フルオレン化合物、シクロペンタジエン化合物、シリル化合物、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体などが挙げられる。なお、これらに限らず、ドナー性有機化合物として用いた有機化合物よりも電子親和力の大きな有機化合物であればアクセプター性有機半導体として用いることができる。
【0100】
p型有機色素又はn型有機色素としては、公知のものを用いることができるが、好ましくは、シアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素(ゼロメチンメロシアニン(シンプルメロシアニン)を含む)、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、スピロ化合物、メタロセン色素、フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、フェナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、インジゴ色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キナクリドン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、金属錯体色素、縮合芳香族炭素環系色素(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)等が挙げられる。
【0101】
一対の電極間に、p型半導体層とn型半導体層とを有し、該p型半導体とn型半導体の少なくともいずれかが有機半導体であり、かつ、それらの半導体層の間に、該p型半導体およびn型半導体を含むバルクヘテロ接合構造層を中間層として有する光電変換膜(感光層)を好適に用いることができる。このように、光電変換膜において、バルクへテロ接合構造層を含ませることにより有機層のキャリア拡散長が短いという欠点を補い、光電変換効率を向上させることができる。なお、上記バルクへテロ接合構造については、特開2005−303266号公報において詳細に説明されている。
【0102】
光電変換膜の厚みは、蛍光体からの光を吸収する点では膜厚は大きいほど好ましいが、電荷分離に寄与しない割合を考慮すると、30nm以上300nm以下が好ましく、より好ましくは、50nm以上250nm以下、特に好ましくは80nm以上200nm以下である。上述したOPC膜に関するその他の構成は、例えば、特開2009−32854号公報の記載が参考となる。
【0103】
[スイッチ素子]
スイッチ素子24の活性層としては、例えば特開2009−212389号公報に記載されたように、有機材料を使用することができる。有機TFTはいかなるタイプの構造でもよいが、最も好ましいのは電界効果型トランジスタ(FET)構造である。このFET構造は、絶縁性基板上面の一部にゲート電極を設け、さらに該電極を覆い、かつ電極以外の部分で基板と接するように絶縁体層を設けている。さらに絶縁体層の上面に半導体活性層を設け、その上面の一部に透明ソース電極と透明ドレイン電極とを隔離して配置している。なお、この構成はトップコンタクト型素子と呼ばれるが、ソース電極とドレイン電極とが半導体活性層の下部にあるボトムコンタクト型素子も好ましく用いることができる。また、キャリアが有機半導体膜の膜厚方向に流れる縦型トランジスタ構造であってもよい。
【0104】
(活性層)
ここでいう有機半導体材料とは、半導体の特性を示す有機材料のことであり、無機材料からなる半導体と同様に、正孔(ホール)をキャリアとして伝導するp型有機半導体材料(あるいは単にp型材料、正孔輸送材料とも言う。)と、電子をキャリアとして伝導するn型有機半導体材料(あるいは単にn型材料、電子輸送材料とも言う。)がある。有機半導体材料は一般にp型材料の方が良好な特性を示すものが多く、また、一般に大気下でのトランジスタ動作安定性もp型トランジスタの方が優れているため、ここでは、p型有機半導体材料について説明する。
【0105】
有機薄膜トランジスタの特性の一つに、有機半導体層中のキャリアの動きやすさを示すキャリア移動度(単に移動度とも言う)μがある。用途によっても異なるが、一般に移動度は高い方がよく、1.0×10-7cm2/Vs以上であることが好ましく、1.0×10-6cm2/Vs以上であることがより好ましく、1.0×10-5cm2/Vs以上であることがさらに好ましい。移動度は電界効果トランジスタ(FET)素子を作製したときの特性や飛行時間計測(TOF)法により求めることができる。
【0106】
前記p型有機半導体材料は、低分子材料でも高分子材料でも良いが、好ましくは低分子材料である。低分子材料は、昇華精製や再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの様々な精製法が適用できるため高純度化が容易であること、分子構造が定まっているため秩序の高い結晶構造を取りやすいこと、などの理由から高い特性を示すものが多い。低分子材料の分子量は、好ましくは100以上5000以下、より好ましくは150以上3000以下、さらに好ましくは200以上2000以下である。
【0107】
このようなp型有機半導体材料としては、フタロシアニン化合物又はナフタロシアニン化合物を例示することができ、具体例を以下に示す。なお、Mは金属原子、Buはブチル基、Prはプロピル基、Etはエチル基、Phはフェニル基をそれぞれ表す。
【0108】
【化1】

【0109】
(活性層以外のスイッチ素子の構成要素)
ゲート電極、ソース電極、又はドレイン電極を構成する材料としては、必要な導電性を有するものであれば特に制限はないが、例えば、ITO(インジウムドープ酸化スズ)、IZO(インジウムドープ酸化亜鉛)、SnO2、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)、ZnO、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)、TiO2、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)などの透明導電性酸化物、PEDOT/PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸)などの透明導電性ポリマー、カーボンナノチューブなどの炭素材料が挙げられる。これらの電極材料は、例えば真空蒸着法、スパッタリング、溶液塗布法等の方法で成膜することができる。
【0110】
絶縁層に用いられる材料としては、必要な絶縁効果を有するものであれば特に制限はないが、例えば、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナなどの無機材料、ポリエステル(PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)など)、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリアクリレート、エポキシ樹脂、ポリパラキシリレン樹脂、ノボラック樹脂、PVA(ポリビニルアルコール)、PS(ポリスチレン)、などの有機材料が挙げられる。これらの絶縁膜材料は、例えば真空蒸着法、スパッタリング、溶液塗布法等の方法で成膜することができる。上述した有機TFTに関するその他の構成は、例えば、特開2009−212389号公報の記載が参考となる。
【0111】
また、スイッチ素子24の活性層には、例えば特開2010−186860号公報に記載された非晶質酸化物も使用することができる。ここで、特開2010−186860号に記載された電界効果型トランジスタが有する非晶質酸化物含有の活性層について示す。この活性層は、電子またはホールの移動する電界効果型トランジスタのチャネル層として機能する。
【0112】
活性層は、非晶質酸化物半導体を含んだ構成とされている。この非晶質酸化物半導体は、低温で成膜可能であるために、可撓性のある基板上に好適に形成される。活性層に用いられる非晶質酸化物半導体としては、好ましくはIn、Sn、Zn、又はCdよりなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む非晶質酸化物であり、より好ましくは、In、Sn、Znよりなる群より選ばれる少なくとも1種を含む非晶質酸化物、さらに好ましくは、In、Znよりなる群より選ばれる少なくとも1種を含む非晶質酸化物である。
【0113】
活性層に用いられる非晶質酸化物としては、具体的には、In、ZnO,SnO、CdO,Indium−Zinc−Oxide(IZO)、Indium−Tin−Oxide(ITO)、Gallium−Zinc−Oxide(GZO)、Indium−Gallium−Oxide(IGO)、Indium−Gallium−Zinc−Oxide(IGZO)が挙げられる。
【0114】
活性層の成膜方法としては、酸化物半導体の多結晶焼結体をターゲットとして、気相成膜法を用いるのが好ましい。気相成膜法の中でも、スパッタリング法、パルスレーザー蒸着法(PLD法)が適している。さらに、量産性の観点から、スパッタリング法が好ましい。例えば、RFマグネトロンスパッタリング蒸着法により、真空度及び酸素流量を制御して成膜される。
【0115】
成膜された活性層は、周知のX線回折法によりアモルファス膜であることが確認される。活性層の組成比は、RBS(ラザフォード後方散乱)分析法により求められる。
【0116】
また、この活性層の電気伝導度は、好ましくは10−4Scm−1以上10Scm−1未満であり、より好ましくは10−1Scm−1以上10Scm−1未満である。この活性層の電気伝導度の調整方法としては、公知の酸素欠陥による調整方法や、組成比による調整方法、不純物による調整方法、酸化物半導体材料による調整方法が挙げられる。上述した非晶質酸化物に関するその他の構成は、例えば、特開2010−186860号公報の記載が参考となる。
【0117】
[絶縁性基板]
絶縁性基板20としては、例えば光透過率に優れるプラスチックフィルムを使用することができる。プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、ポリイミド、ポリアリレート、二軸延伸ポリスチレン(OPS)等からなるフィルムが挙げられる。また、これらのプラスチックフィルムに、有機あるいは無機のフィラーを含有させてもよい。また、フレキシブルでかつ低熱膨張、高強度といった、既存のガラスやプラスチックでは得られない特性を有するアラミド、バイオナノファイバーなどを用いて形成されたフレキシブル基板も好適に使用しうる。これらのなかでも、耐熱性を有するポリアリレート(ガラス転移温度:約193℃)、二軸延伸ポリスチレン(分解温度:250℃)、ポリイミド(ガラス転移温度:約300℃)、アラミド(ガラス転移温度:約315℃)等が好適に使用でき、それによれば、放射線画像検出装置101におけるシンチレータ118のように、シンチレータを絶縁性基板に直接形成することができる。
【0118】
(アラミド)
アラミド材料は、ガラス転移温度315℃という高い耐熱性、ヤング率が10GPaという高い剛性、熱膨張率が−3〜5ppm/℃という高い寸法安定性を有する。このため、アラミド製のフィルムを用いると、一般的な樹脂フィルムを用いる場合と比べて、半導体層の高品質の成膜が容易に行える。また、アラミド材料の高耐熱性により、電極材料を高温硬化させて低抵抗化できる。さらに、ハンダのリフロー工程を含むICの自動実装にも対応できる。またさらに、ITO(indium tin oxide)やガス・バリア膜、ガラス基板と熱膨張係数が近いために、製造後の反りが少ない。そして、割れにくい。ここで、ハロゲンを含まないハロゲンフリー(JPCA−ES01−2003の規定に適合)なアラミド材料を用いることが環境負荷低減の点で好ましい。アラミドフィルムは、ガラス基板やPET基板と積層されてもよいし、デバイスの筐体に貼り付けられてもよい。
【0119】
アラミドの分子間の凝集力(水素結合力)の高さによる溶媒への低溶解性を分子設計によって解決することにより、無色透明で薄いフィルムへの成形が容易とされたアラミド材料についても、好適に用いることができる。モノマーユニットの秩序性、および芳香環上の置換基種・位置を制御する分子設計により、アラミド材料の高剛性や寸法安定性に繋がる直線性の高い棒状の分子構造を維持しつつ、溶解性が良い成形の容易さが得られる。この分子設計により、ハロゲンフリーをも実現できる。
【0120】
また、フィルムの面内方向の特性が最適化されたアラミド材料についても、好適に用いることができる。成型中に逐次変化するアラミドフィルムの強度に応じて、溶液キャスト、縦延伸、横延伸の工程ごとに張力条件を制御することにより、直線性の高い棒状分子構造であって物性に異方性が生じやすいアラミドフィルムの面内方向の特性をバランスできる。
【0121】
具体的に、溶液キャスト工程では、溶媒の乾燥速度の制御による面内厚み方向の物性の等方化、溶媒を含んだ状態のフィルムの強度とキャスト・ドラムからの剥離強度の最適化、を図る。縦延伸工程では、延伸中に逐次変化するフィルムの強度、溶媒の残留量に応じた延伸条件を精密に制御する。横延伸工程では、加熱によって変化するフィルム強度の変化に応じた横延伸の条件の制御、フィルムの残留応力を緩和するための横延伸の条件の制御を図る。このようなアラミド材料の使用により、成型後のアラミドフィルムがカールしてしまう問題を解決できる。
【0122】
上記の成形容易さに対する工夫、およびフィルム面内方向の特性のバランスに対する工夫のいずれにおいても、アラミドならではの直線性の高い棒状の分子構造が維持されているので、熱膨張係数を低く維持できる。製膜時の延伸条件の変更などにより、熱膨張係数をさらに低減することも可能である。
【0123】
(バイオナノファイバー)
ナノファイバーは、光の波長に対して十分に小さなコンポーネントは光散乱を生じないことから、透明でフレキシブルな樹脂材料の補強として用いることができる。そして、ナノファイバーの中でも、バクテリア(酢酸菌、Acetobacter Xylinum)が産出するセルロースミクロフィブリル束は、幅50nmと、可視光波長に対して約1/10のサイズでかつ、高強度、高弾性、低熱膨である特徴を有しており、このバクテリアセルロースと透明樹脂との複合材料(バイオナノファイバーということがある)を好適に用いることができる。
【0124】
バクテリアセルロースシートにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸・硬化させることで、繊維を約60〜70%と高い比率で含有しながら、波長500nmで約90%の光透過率を示す透明バイオナノファイバーが得られる。このバイオナノファイバーにより、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(約3〜7ppm)、鋼鉄並の強度(約460MPa)、および高弾性(約30GPa)が得られる。上述したバイオナノファイバーに関する構成は、例えば、特開2008−34556号公報の記載が参考となる。
【0125】
以上、説明したように、本明細書には、下記(1)から(12)の放射線画像検出装置が開示されている。
【0126】
(1)放射線露光によって蛍光を発する蛍光体からなるシンチレータ、及び前記シンチレータを支持する支持基板を有する放射線画像変換パネルと、接着層を介して前記シンチレータと貼り合わされて前記シンチレータに生じる前記蛍光を検出する画素アレイ、及び前記画素アレイを支持するセンサ基板を有するセンサパネルと、前記シンチレータ及び前記画素アレイを囲み、前記支持基板と前記センサ基板との隙間を封止して、前記支持基板と前記センサ基板との間に内部空間を形成する封止部材と、前記内部空間と、その外側の外部空間との気圧差に応じて開閉し、前記内部空間と前記外部空間とを連通し、また隔絶するベント部と、を備える放射線画像検出装置。
(2) 上記(1)の放射線画像検出装置であって、前記支持基板及び前記センサ基板と前記封止部材との接触部の一部分は非接着とされ、他の部分は接着されており、前記ベント部は、非接着部分の前記封止部材と前記支持基板又は前記センサ基板とによって形成されている放射線画像検出装置。
(3) 上記(2)の放射線画像検出装置であって、前記封止部材は、柔軟性を有する材料からなり、前記ベント部が閉状態にあるときに、前記非接着部分において、前記封止部材の接触面は前記支持基板又は前記センサ基板に押し当てられる放射線画像検出装置。
(4) 上記(3)の放射線画像検出装置であって、前記柔軟性を有する材料は、アクリル樹脂又はシリコン樹脂である放射線画像検出装置。
(5) 上記(1)から(4)のいずれか一つの放射線画像検出装置であって、前記支持基板及び前記センサ基板は、互いに線膨張係数が異なる放射線画像検出装置。
(6) 上記(1)から(5)のいずれか一つの放射線画像検出装置であって、前記シンチレータは、前記蛍光体の結晶が前記支持基板から前記画素アレイに向かって柱状に成長してなる柱状結晶の群からなる柱状部を有し、前記内部空間内において露出されている放射線画像検出装置。
(7) 上記(6)の放射線画像検出装置であって、前記蛍光体は、潮解性を有する母体材料と賦活剤とを含有してなり、前記賦活剤の濃度が、前記シンチレータの中央部に比べて、前記シンチレータの縁部において高い放射線画像検出装置。
(8) 上記(7)の放射線画像検出装置であって、前記シンチレータの縁部は、前記画素アレイの有効撮像領域の外側に重なる放射線画像検出装置。
(9) 上記(6)から(8)のいずれか一つの放射線画像検出装置であって、前記画素アレイと貼り合わされる前記シンチレータの蛍光出射面が、前記柱状結晶の先端部の集合によって形成されており、前記蛍光出射面の少なくとも縁部は、そこにある柱状結晶の群の間に充填材が充填されて平坦化されており、前記蛍光出射面の中央部における前記充填材の充填深さは、前記蛍光出射面の縁部における前記充填材の充填深さよりも小さい放射線画像検出装置。
(10) 上記(9)の放射線画像検出装置であって、前記柱状結晶の先端部は、先鋭なテーパ状に形成されている放射線画像検出装置。
(11) 上記(6)から(10)のいずれか一つの放射線画像検出装置であって、前記シンチレータは、前記支持基板と前記柱状部との間に、前記蛍光体の粒状結晶の群よりなる非柱状部を有する放射線画像検出装置。
(12) 上記(1)から(11)のいずれか一つに記載の放射線画像検出装置であって、前記センサパネルの前記センサ基板側から放射線が入射せしめられる放射線画像検出方法に用いられる放射線画像検出装置。
【符号の説明】
【0127】
1 放射線画像検出装置
2 放射線画像変換パネル
3 センサパネル
4 接着層
5 封止部材
6 ベント部
10 支持基板
11 シンチレータ
20 絶縁性基板
21 画素アレイ
22 画素
23 光電変換素子
24 スイッチ素子
25 光導電層
26 バイアス電極
27 電荷収集電極
28 ゲート線
29 信号線
30 接続端子部
31 接続回路
40 柱状部
41 非柱状部
42 粒状結晶
43 柱状結晶
50 充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線露光によって蛍光を発する蛍光体からなるシンチレータ、及び前記シンチレータを支持する支持基板を有する放射線画像変換パネルと、
接着層を介して前記シンチレータと貼り合わされて前記シンチレータに生じる前記蛍光を検出する画素アレイ、及び前記画素アレイを支持するセンサ基板を有するセンサパネルと、
前記シンチレータ及び前記画素アレイを囲み、前記支持基板と前記センサ基板との隙間を封止して、前記支持基板と前記センサ基板との間に内部空間を形成する封止部材と、
前記内部空間と、その外側の外部空間との気圧差に応じて開閉し、前記内部空間と前記外部空間とを連通し、また隔絶するベント部と、
を備える放射線画像検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線画像検出装置であって、
前記支持基板及び前記センサ基板と前記封止部材との接触部の一部分は非接着とされ、他の部分は接着されており、
前記ベント部は、非接着部分の前記封止部材と前記支持基板又は前記センサ基板とによって形成されている放射線画像検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の放射線画像検出装置であって、
前記封止部材は、柔軟性を有する材料からなり、
前記ベント部が閉状態にあるときに、前記非接着部分において、前記封止部材の接触面は前記支持基板又は前記センサ基板に押し当てられる放射線画像検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の放射線画像検出装置であって、
前記柔軟性を有する材料は、アクリル樹脂又はシリコン樹脂である放射線画像検出装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の放射線画像検出装置であって、
前記支持基板及び前記センサ基板は、互いに線膨張係数が異なる放射線画像検出装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の放射線画像検出装置であって、
前記シンチレータは、前記蛍光体の結晶が前記支持基板から前記画素アレイに向かって柱状に成長してなる柱状結晶の群からなる柱状部を有し、前記内部空間内において露出されている放射線画像検出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の放射線画像検出装置であって、
前記蛍光体は、潮解性を有する母体材料と賦活剤とを含有してなり、
前記賦活剤の濃度が、前記シンチレータの中央部に比べて、前記シンチレータの縁部において高い放射線画像検出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の放射線画像検出装置であって、
前記シンチレータの縁部は、前記画素アレイの有効撮像領域の外側に重なる放射線画像検出装置。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか一項に記載の放射線画像検出装置であって、
前記画素アレイと貼り合わされる前記シンチレータの蛍光出射面が、前記柱状結晶の先端部の集合によって形成されており、
前記蛍光出射面の少なくとも縁部は、そこにある柱状結晶の群の間に充填材が充填されて平坦化されており、前記蛍光出射面の中央部における前記充填材の充填深さは、前記蛍光出射面の縁部における前記充填材の充填深さよりも小さい放射線画像検出装置。
【請求項10】
請求項9に記載の放射線画像検出装置であって、
前記柱状結晶の先端部は、先鋭なテーパ状に形成されている放射線画像検出装置。
【請求項11】
請求項6から10のいずれか一項に記載の放射線画像検出装置であって、
前記シンチレータは、前記支持基板と前記柱状部との間に、前記蛍光体の粒状結晶の群よりなる非柱状部を有する放射線画像検出装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の放射線画像検出装置であって、
前記センサパネルの前記センサ基板側から放射線が入射せしめられる放射線画像検出方法に用いられる放射線画像検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図5】
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【図6】
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