放射線硬化性ゲルインクを接触平坦化するための前処理方法、装置、およびシステム
【課題】放射線硬化性ゲルインクを薄く広げる方法を提供する。
【解決手段】放射線硬化性ゲルインク印刷システムが、短波長成分を有するUV光を放射するように構成された放射線源120を含んでいる。システムは、その上に付着した放射線硬化性ゲルインクを有する基板103を放射線源まで搬送して、そのインクを放射線源に曝露するように構成されており、曝露は必要に応じて連続的であってもよく、またはパルス状であってもよい。放射線源は、基板上のインクから所定の距離だけ離れるように構成してもよい。接触部材が基板に向かってインクに圧力をかける接触平坦化ニップ105において、インクを薄く広げる前に、放射線源はインクを前処理するように構成されており、接触部材によりインクを薄く広げることを可能にしながら、接触部材上へのインクの裏移りを抑えることを可能にするために、インクを選択的に硬化させる。
【解決手段】放射線硬化性ゲルインク印刷システムが、短波長成分を有するUV光を放射するように構成された放射線源120を含んでいる。システムは、その上に付着した放射線硬化性ゲルインクを有する基板103を放射線源まで搬送して、そのインクを放射線源に曝露するように構成されており、曝露は必要に応じて連続的であってもよく、またはパルス状であってもよい。放射線源は、基板上のインクから所定の距離だけ離れるように構成してもよい。接触部材が基板に向かってインクに圧力をかける接触平坦化ニップ105において、インクを薄く広げる前に、放射線源はインクを前処理するように構成されており、接触部材によりインクを薄く広げることを可能にしながら、接触部材上へのインクの裏移りを抑えることを可能にするために、インクを選択的に硬化させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接触平坦化ニップにおいて放射線硬化性ゲルインクを薄く広げることに関する。特に、本開示は、接触平坦化ニップにおいてインクを処理する前に基板上に付着した放射線硬化性ゲルインクに対して放射線前処理を適用するため方法、装置、およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷において基板上に画像を形成するために、放射線硬化性相変化ゲルインクを使用してもよい。インクを硬化させるためにインクを放射線に曝露してもよい。例示的な放射線硬化技術としては、例えば、200〜400nmの波長を有する紫外線(UV)光を用いて、またはさらにほとんど目に見えない光を用いて、任意に光開始剤および/もしくは増感剤が存在する状態で硬化すること、高温熱開始剤(噴射温度では大部分が不活性であってもよい)が存在する状態または存在しない状態で熱硬化を用いて硬化すること、ならびにこれらの適切な組み合わせなどが挙げられる。
【0003】
この曝露の間に、インク内に含まれる光開始剤物質をUV放射で照射してもよく、入射放射束はインク内のモノマーを架橋ポリマーマトリクスに変換して、結果的に基板上に硬くて長持ちする記号をもたらすことになる。いくつかの用途では、硬化する前に基板上のインクを薄く広げたり、または平らにしたりすることが望ましい可能性がある。平坦化は、より均一な画像光沢を生成できるとともに、印字ヘッドの欠落したジェットを隠すことができる。さらに、包装などの特定の印刷用途では、印刷物内で比較的一定の厚さの薄いインク層を有することで利益を得る可能性がある。
【0004】
UV硬化性相変化インクは、常温でゲル状の堅さを有していてもよい。UVゲルインクを常温付近から、高められた温度まで加熱すると、UVゲルインクは低粘性液体に相変化する。これらのインクは液体に変化するまで加熱してもよく、その後、基板に塗布してもよい。インクは基板に接触するとすぐに冷えて、液相から、もとの、より粘性のあるゲルの堅さに相を変化させる。
【0005】
放射線硬化性ゲルインク印刷用に構成されたインクジェットプリンタにより形成されるようなUV硬化性ゲルインク画像は、不均一な光沢を示す傾向がある。例えば、このような画像は「コーデュロイ効果」を示す可能性があり、および/または欠落したインクジェットに起因してよく起こる一般的なインクジェット画像品質ストリーキングを受ける可能性がある。このような欠陥を克服するために、硬化する前にインクを熱的にリフローしてもよい。この技術は欠落したジェットを隠す可能性があるが、結果として得られる画像は、滑らかな基板上での不安定性、および/または多孔性基板上でのブリードスルーまたはショースルーを受ける可能性がある。したがって、ゲルインク画像を平坦化ロールなどの接触部材と接触させることにより基板上のゲルインクを接触平坦化することが、最終的な硬化の前にインクを効果的に薄く広げて、欠落したジェットを隠したり、および/または光沢均一性を改善したりすることが分かっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
接触平坦化は、基板上に付着したUV硬化性ゲルインクなどの放射線硬化性ゲルインクの層を薄く広げたり、または平らにしたりするのに使用してもよい。しかしながら、常温では、未硬化のUV硬化性ゲルインクは非常に小さい凝集力を有しており、多くの種類の材料に対して良好な親和性を有している。その結果、静電写真法で使用してもよい従来の定着ロールなどの、他のインクタイプの層を平らにするのに使用する従来の方法および装置は、硬化する前にゲルインクを平らにするのには適さないが、その理由は、ゲルインクが割れて二つに分かれて、ゲルインクを平らにしようとするのに使用する装置上に裏移りする傾向があるためである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
接触平坦化ニップにおいてインクを薄く広げる前にインクを部分的に硬化させるために、基板上に付着したUV硬化性ゲルインクなどの放射線硬化性相変化インクを放射線に曝露してもよいということを見つけ出した。これにより、接触平坦化ニップを形成する接触平坦化装置の部品上へのインクの裏移りなしに、または実質的に裏移りなしにインクを平らにできるようになる。
【0008】
一実施形態では、方法が、基板上の放射線硬化性ゲルインクを第1の放射線源からの前処理放射線に曝露することと、前処理されたゲルインクを接触平坦化することにより薄く広げることと、を含んでいてもよい。放射線硬化性インクはUV硬化性であってもよく、放射線源はUV光を放射するように構成されていてもよい。
【0009】
例えば、方法が、水銀ランプから放射されるUV光を用いてゲルインクを照射することを含んでいてもよい。あるいは、キセノンランプを使用してもよい。他の実施形態では、フィルタ付きランプまたはLEDを放射線源として実現してもよい。
【0010】
方法が、インクを放射線に曝露する前に基板上にゲルインクを付着させることを含んでいてもよい。例えば、基板上にインク線を噴射するのにインクジェット印字ヘッドを使用してもよい。インク線はインク画像を形成するように構成してもよく、外表面層と内層とを有していてもよい。前処理期間の間に、インクを付着した後で、かつ接触平坦化したりまたは薄く広げたりする前に、インクを前処理放射線に曝露してもよい。
【0011】
前処理放射線は短波長UV光を含んでいてもよい。例えば、前処理放射線は約280ナノメートル(nm)〜約320(nm)の範囲のUVB成分を含んでいてもよい。インクの表面層の硬化は接触平坦化装置の部品上への裏移りを防止する程度であり、他方、インクの内層の硬化は接触平坦化により、なんとか薄く塗り広げることができる程度のインクの軟らかさであるように、インクを選択的に硬化させるのに必要な望ましい量の短波長成分を有する放射線を当てるために、例えば、ドープされた、ドープされていない、水銀、キセノン、またはLEDなどの光源タイプを使用してもよい。放射装置が出力するエネルギー量は、ギャップ距離、すなわち、基板上のインクと、前処理放射線源との間の距離を調節することにより制御してもよい。さらに、実施形態では、前処理期間の間の放射線量の制御を提供するために放射線源をパルス化してもよい。後続の接触平坦化のための前処理の間の効果的な選択的硬化を提供する必要性に応じてパルス周波数を調節してもよい。
【0012】
一実施形態では、方法が、前処理後、および接触平坦化後に、放射線硬化性ゲルインクを放射線に曝露することを含んでいる。例えば、インクの最終的な硬化のために薄く広げた後にインクを照射してもよい。広周波数範囲の放射線をインクの要件に応じてインクに当てるように第2の放射線源を構成してもよい。第2の放射線源が放出する放射線が、最終的な硬化を引き起こすためにインクの中により深く貫通するようになっていてもよい。前処理の間に与えられたエネルギーが、薄く広げた後にインク画像を硬化させるのに必要なエネルギーを低減してもよい
【0013】
一実施形態では、装置が放射線源を含んでいてもよい。放射線源は、接触平坦化装置により基板上でゲルインクを薄く広げる前に基板上に付着した放射線硬化性ゲルインクを前処理するために、例えば、UV光などを放射するように構成されていてもよい。放射線源は、短波長UV光を放射してインクの選択的硬化を提供するように構成してもよい。薄く広げる間にベルトまたはドラムなどの接触平坦化部材の表面上にインクが裏移りしないように、例えば、インクの外表面層などへ硬化させてもよい。接触平坦化部材が加える圧力によりインクが薄く広がることができる粘性を依然として保ったままであるようにインクの内層を硬化させてもよい。
【0014】
一実施形態では、基板上のゲルインクを前処理するためにUV光を放射するように前処理放射線源を構成してもよく、UV光は約280nm〜約320nmの範囲の波長を有するUVB成分を含んでいる。UV光は、約280nm以下のUVC成分を有していてもよい。基板上のインクを選択的に硬化させるには、このような短波長特性を有するUV光放射の方が、より長い波長の放射線を有するUV光放射よりも効果的である。例えば、コーティングとインクとの深部硬化には約320nm〜約390nmのUVA成分と、約395nm〜約445nmのUVV成分と、を有する、より長い波長のUV光が、より効果的である。実施形態では、装置が、短波長前処理されたゲルインク画像を接触平坦化したりまたは薄く広げたりした後に、そのゲルインク画像を、より長い波長の放射線に曝露するように構成された放射線源を含んでいてもよい。
【0015】
一実施形態では、短波UV光を放射するのに適した放射線源が、ドープされていない水銀ランプを含んでいてもよい。例えば、透明な溶融石英を含むエンベロープを有するドープされていない水銀ランプが、鉄ドープの水銀ランプにより通常放射される約320nm〜約390nmの範囲のより高いUVA成分とは対照的に、増強された短波長UV成分を提供してもよい。他の実施形態では、前処理放射線源が、高い短波長成分を有するUV光を放射するように構成されたLEDまたはフィルタ付き放射線源を含んでいてもよい。
【0016】
一実施形態では、放射線源がキセノンランプを含んでいてもよい。装置が、増強された短波長UV光を提供する石英溶解ガラスを有するキセノンランプを有していてもよい。germacilを含むキセノンランプが、少し低い周波数成分を有するUV光を放射してもよい。前処理のためにゲルインクに望ましいレベルのエネルギーを与えるために、基板上のインクから所定の距離、すなわち、ギャップ距離にキセノンランプを設置してもよい。実施形態では、UV光をパルス化するようにキセノンランプを構成して、それによりインクに当てる照射量を制御してもよい。パルス周波数は必要に応じて調節してもよい。
【0017】
一実施形態では、システムが、インクを選択的に硬化させるために、基板上に付着された放射線硬化性ゲルインクを放射線に曝露するように構成された放射線源を有する前処理装置または前処理システムを含んでいてもよい。前処理装置は、短波長UV光を放射するように構成された放射線源を含んでいてもよい。接触平坦化装置の接触平坦化ニップの前に位置する平坦化前領域においてゲルインクをUV光に曝露してもよい。接触平坦化装置は、平坦化ロール、平坦化ドラム、または平坦化ベルトなどの加圧部材または接触部材を含んでいてもよい。接触平坦化装置は、平坦化部材といっしょになって接触平坦化ニップを形成するロールなどの支持部材を含んでいてもよい。インクは基板上に付着させてもよく、基板は前処理装置の放射線源により前処理を行うために平坦化前領域まで搬送してもよい。インクは短波長放射線により照射してインクを選択的に硬化させてもよく、それにより、接触平坦化ニップにおいてインクを薄く広げることと、接触平坦化装置の部品上への裏移りがごくわずかな状態で、または裏移りがまったくない状態でインクを薄く広げることと、の両方を可能にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、例示的実施形態の放射線前処理および接触平坦化システムの概略図を示す図である。
【図2A】図2Aは、増強された短波長成分を示す放射線源放射スペクトルを示す図である。
【図2B】図2Bは、図2Aに示すよりも高い長波長成分を示す放射線源放射スペクトルを示す図である。
【図3】図3は、例示的実施形態のUV前処理を含むUVゲルインク接触平坦化プロセスを示す図である。
【図4】図4は、第2のキセノン電球のスペクトルよりも高い短波成分を示す第1のキセノン電球のスペクトルを示す図である。
【図5】図5は、UV出力の合成したUVBおよびUVC成分を示すキセノンパルス線源の放射照度を示す図である。
【図6A】図6Aは、パルス化したUV光源を用いたUV前処理後、かつ薄く広げる前の放射線硬化性ゲルインク線画像を示す図である。
【図6B】図6Bは、UV前処理後、かつ薄く広げた後の放射線硬化性ゲルインク線画像を示す図である。
【図7A】図7Aは、放射線源前処理前、かつ接触平坦化前の、基板上に付着した放射線硬化性ゲルインク線を示す図である。
【図7B】図7Bは、基板上に付着され、放射線を用いて前処理されて、接触平坦化ニップにおいて薄く広げられた放射線硬化性ゲルインク線を示す図である。
【図8】図8は、UV前処理および接触平坦化を受けた後の、基板上に付着した効果UVゲルインク線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
UVゲルインク印刷用の短波長UV前処理のための方法、装置、およびシステムの理解を提供するために図面を参照する。図面では、類似の参照番号は、全体を通じて類似のまたは同じ要素を示すために使用されている。図面は、基板上のインクを接触平坦化する前に基板上に付着したUVゲルインクに短波長UV処理を適用することを含む、放射線硬化性ゲルインク印刷用の、説明に役立つ方法、装置、およびシステムの実施形態に関連しているさまざまな実施形態およびデータを示している。
【0020】
平坦化ニップにおいて放射線硬化性ゲルインクを接触平坦化することにより、インクジェット線画像印刷を行うように構成された印字ヘッド内の欠落したジェットを隠してもよく、および/または光沢均一性および光沢制御を改善してもよい。特に、UVゲルインクなどの放射線硬化性ゲルインクを基板上に付着させた後に、ゲルインクを平坦化装置により薄く広げたり、または平らにしたりしてもよい。平坦化装置は、平坦化ロール、平坦化ベルト、または平坦化ドラムなどの接触平坦化部材を含んでいてもよい。平坦化ロールは、支持部材、例えば、支持ロールなどと一体になって接触平坦化ニップを形成してもよい。放射線硬化性ゲルインクを接触平坦化することは、インクが平坦化ロール上に裏移りする可能性がある場合には厄介な問題となり、画像品質の低下、印刷システムの保守頻度の増加、および接触平坦化装置の部品寿命の短縮につながる可能性があることが分かっている。
【0021】
したがって、放射線硬化性ゲルインクを基板上に付着させた後に、インクを平坦化装置により基板上に薄く広げる前にインクを前処理してもよい。例えば、線画像を形成するためにUV硬化性ゲルインクを基板上に付着させてもよい。インクを平坦化部材と接触させることにより線画像のインクを薄く広げる前に、インクを前処理してもよい。例えば、光沢制御および/もしくは光沢均一性を提供できるくらい薄く広げたり、または平らにしたりすることを可能にしながら、ならびに/または欠落したインクジェットを隠しながら、システム部品上への裏移りを回避するために、UVを用いてUV硬化性ゲルインクを処理してインクを部分的に重合させてもよい。UV光を放射するように構成された放射線源を、前処理領域、すなわち、薄く広げる処理の前、または平坦化装置による処理の前にインクを放射線に曝露する領域に隣接して構成してもよい。
【0022】
付着したUV硬化性ゲルインクを約395nmの波長を有する狭帯域UV用LEDを用いて前処理する場合、適切に薄く広げることを提供しながら裏移りを回避するように前処理を制御するのは困難であることが分かっている。例えば、放射線源の、より長い波長のUV放射が、似たような全出力の広帯域スペクトルUVを放射するように構成された放射線源のUV放射よりもさらに深くまでインク層を貫通する可能性がある。言い換えれば、このようなLED放射線源を使用することの影響は、裏移りを回避するのに十分な硬化をインクの表面に提供するのに適した線量を与えるときに、インク層の内部を過度に硬化させてしまい、結果として前処理および薄く広げるプロセスに対する許容度がほとんどなくなる可能性がある。
【0023】
接触平坦化部材上に裏移りせず、他方、平らにしたりまたは薄く広げたりするのに合わせてインク層の大部分が変形可能で形状順応性が高いままであることが可能な付着したインク層上の表皮を形成するために、短波長、例えば、UV放射などを提供する放射線源を使用してもよい。特に、短波長の放射線はインク層の中への限定的な貫通を有するとともに、表面硬化を選択的に生じさせる。
【0024】
前処理期間の間、放射線曝露による前処理が継続してもよいが、付着したインク層のインクを加熱するのを回避して、インク表面の中への酸素の拡散を最小限に抑えるために、短波長パルス放射線源を使用してもよい。放射線源が放出する短波長放射線をパルス化することは、放射線前処理の有効性を向上させる可能性がある。さらに、短波長放射線をパルス化することは、インクが受け取るエネルギーの制御を向上できるようにする可能性がある。パルスの周波数および継続時間は必要に応じて調節してもよい。したがって、インク層のレオロジー特性および表面特性を部分的重合を通じてin situで変化させてもよく、それによって効果的な接触平坦化を可能にしてもよい。
【0025】
好適な短波長放射線は、約280nm〜約320nmの範囲のUVB成分と、約280nmおよびそれよりも短い波長範囲のUVC成分と、を有するUV放射を含んでいる。付着した放射線硬化性ゲルインクの表面を選択的に硬化させるには、このようなUV放射の方が、例えば、より長い波長を有するUV放射よりも効果的である。このようなより長い波長のUV放射は、約320nm〜約390nmの範囲のUVA成分と、約395nm〜約445nmの範囲のUVV成分と、を含んでいてもよい。UVゲルインクの深部硬化には、より長い波長の放射線が適している。
【0026】
一実施形態では、放射線硬化性ゲルインクを基板上に付着させてもよい。例えば、インク画像を形成するインク線としてゲルインクを付着させてもよい。その後、前処理ステップにおいてゲルインクを放射線に曝露してもよい。前処理放射線は、放射線源から放射される短波長放射線である。例示的放射線源が、ドープされていない水銀電球を含む放射線源を含み、増強された短波成分を有するUV放射を放射するように構成されていてもよい。水銀電球は、透明な溶融石英でできたエンベロープを含んでいてもよい。あるいは、放射線源が、約300nmより短いスペクトル成分を有するUV放射を放出するLED光源またはフィルタ付き光源を含んでいてもよい。
【0027】
放射線源は、放射線硬化性ゲルインク印刷システム内の、例えば、平坦化前領域の近くに設置してもよい。平坦化前領域は、印刷プロセス方向に沿った順番で見て、紙または他の好適な媒体などの基板上に付着したUVゲルインクを薄く広げるように構成された接触平坦化装置よりも前に位置してもよい。接触平坦化装置は、ロール、ドラム、またはベルトなどの加圧部材または平坦化部材を含んでいてもよい。平坦化ロールは、支持部材と一体になって平坦化ニップを形成してもよい。支持部材は、ロール、ドラム、または他の好適な支持構造体であってもよい。放射線硬化性ゲルインクを基板上に付着させた後に、接触平坦化装置においてインクを薄く広げてもよい。平坦化ロールはインクに接触して、支持ロールに対して圧力をかけることによりインクを薄く広げるように構成されていてもよい。
【0028】
所定量のインクが平坦化部材に裏移りするのを防止するために、実施形態の方法、装置、およびシステムに基づいて前処理ステップにおいて、選択された波長のUVへの限定的な曝露および/または制御した曝露を行うことによりインクのレオロジーおよび表面を制御する。例えば、インクを短波長UV放射に曝露してインクの部分的な重合を可能にして、インクの分子量をin situで変化させる。さらに、インクに照射するエネルギー量を制御してもよい。例えば、前処理時にインクに照射する光子数を、高出力のUV光の短パルスを使用することにより制御してもよい。好適な放射線源がキセノンランプを含んでいてもよく、このキセノンランプは所定のパルス数に対して高出力および所定の周波数のUV光の短パルス化に対応してもよい。これは、動作時に放射線を連続的に放射する水銀UVアークランプと比較してわずかな曝露を可能にする。
【0029】
図1は、一実施形態の放射線硬化性ゲルインク印刷システムを示している。特に、図1は、接触平坦化装置と、基板上に付着したインクを接触平坦化装置において薄く広げる前にインクを放射線に曝露してインクを選択的に硬化させるための前処理放射線源と、を有する放射線硬化性ゲルインク印刷システムを示している。媒体搬送101が、その上に付着した放射線硬化性ゲルインクを有する基板103を搬送するように構成されていてもよい。例えば、基板103上にインクを噴射して、インク線を形成するようにゲルインクインクジェット印字ヘッドを構成してもよい。インク線はインク画像を形成してもよい。
【0030】
基板103は、インクを平らにしたり、または薄く広げたりするために接触平坦化ニップ105に搬送してもよい。例えば、インクにより形成される画像の光沢度を制御するため、および/またはインク線間のギャップの原因となる可能性がある欠落したジェットを隠すためにインクを薄く広げてもよい。平坦化ニップ105は、加圧ロールまたは平坦化ロール110と、支持ロール112と、により形成してもよい。平坦化ロール110は、例えば、アルミニウムドラムなどを含んでいてもよい。平坦化ロール110は基板103上に付着したインクに接触して、インクを薄く広げるように構成されていてもよい。他の実施形態では、平坦化部材がエンドレスベルトのようなベルト状であってもよい。
【0031】
図1に示すような装置およびシステムの一実施形態では、第1の放射線源120を媒体搬送101に隣接して配置してもよい。放射線源120は、UV放射のような放射線を放射するように構成してもよい。放射線源120は、例えば、平坦化ニップ105の前に位置する平坦化前領域を通って基板103を搬送しているときに基板103上のインクを照射するようにUV光を放射してもよい。
【0032】
接触平坦化ニップ105においてインクを効果的に薄く広げるために平坦化前領域において基板103上のインクを前処理するように放射線源120を構成して制御してもよい。特に、短波長を有するUV放射を放射するように放射線源120を構成してもよい。例えば、約280nm〜約320nmの範囲のUVBと、約280nmおよびそれよりも短い波長範囲のUVCと、を有するUV放射を放射するように放射線源120を構成してもよい。基板103上のインクを、放射線源120が放出するUV放射に曝露して、インクの表面を選択的に硬化させながら、インクの下層を、より少ない程度に硬化させ、それにより展延ローラ(spreading roller)に裏移りせずに画像を薄く広げることができるようにしてもよい。実施形態では、インクを連続したUV放射に曝露してもよい。曝露はしばらく持続してもよく、その期間の間、放射は連続的であってもよい。他の実施形態では、放射線源120をパルス化することにより、インクに照射する光子量を制御してもよい。また、放射される、例えば、UV光などの放射照度を制御するために、インクと放射線源120との間のギャップ距離を調節してもよい。
【0033】
多層画像が、適切なエネルギーレベルのUV放射の第1の線量を必要とする可能性がある。多層画像は、基板に応じて、スプレッダまたは接触平坦化装置に移動する前に、インク層を安定させるために何らかの放射を必要とする可能性がある。厚い画像では、薄く広げることに備えて短波長UV放射線源120からの前処理放射線に曝露する前に、画像を基板に固定する(このプロセスは当業者に「ピン止め」として一般に知られている)ために低出力の何らかの長波長UV放射を必要とする可能性があることが分かるかもしれない。ピン止め用の低出力の長波長放射線を放射するように構成されたUV光源(図示せず)を平坦化ニップ105の上流に配置してもよい。ピン止めに使用するUV光源(図示せず)を、例えば、短波長UV放射線源120の上流に配置してもよい。
【0034】
画像を選択的硬化用の短波長放射線に曝露することにより基板103上のインクを前処理するために放射線源120がUV放射を放射した後に、基板103を処理用の平坦化ニップ105に搬送してもよい。前処理されたインクに接触するように平坦化ロール110を構成して、平坦化ロール110の表面上上へのインクの裏移りがごくわずかな状態で、または裏移りがまったくない状態でインクを薄く広げてもよい。基板103上のインクを平坦化装置により薄く広げた後に、第2の放射線源125においてインクを放射線に曝露してもよい。第2の放射線源は、例えば、インクに入り込んでインクを硬化させる、より長い波長を有するUV放射を放射するように構成してもよい。
【0035】
放射線源120などの放射線源が、例えば、水銀ランプを含んでいてもよい。効果的な増強された短波長放射を実現するために、放射線源120は透明な溶融石英のエンベロープを有するドープされていない水銀電球を含んでいてもよい。図2Aに示すように、ドープされていない水銀ランプは、その放射内に、増強された短波UV成分を提供する。特に、図2Aは、増強された短波UV成分を有する典型的なドープされていない水銀放射スペクトルを示している。
【0036】
図2Bは、鉄ドープの水銀ランプの典型的な放射スペクトルを示している。特に、図2Bは、ドープされていない水銀ランプよりもはるかに高いUVA成分を示している。図2Bは、ドープされた水銀ランプの放射が、例えば、約320nm〜約390nmの範囲の、はるかに高いUVA成分を発現することを示している。
【0037】
図3は、一実施形態の、インクを薄く広げる前にUV前処理を有する放射線硬化性ゲルインク印刷方法300を示している。特に、図3に示す実施形態は、ステップS305で、基板上に放射線硬化性ゲルインク画像を生成することを含んでいる。例えば、画像を形成するために基板上にインク線を付着させるようにインクジェット印字ヘッドを構成してもよい。
【0038】
S315では、インク画像をUV光などの放射線に曝露してもよい。接触平坦化装置の加圧部材上へのインクの裏移りを防止するとともに、インクを薄く広げることを可能にするのに効果的な前処理を実現するために、継続時間、出力、およびスペクトルを制御してもよい。S325では、インクを薄く広げて平らにするために、前処理されたインクを平坦化ロールなどの加圧部材と接触させてもよい。これは、光沢制御と、欠落したジェットのマスキングとを可能にする。インクの一部分を選択的に硬化させてインクのレオロジー特性を変化させることによりS315においてインクを前処理することが、接触平坦化装置の部品上へのインクの裏移りがごくわずかな状態で、または裏移りがまったくない状態でインクを薄く広げることを可能にする。
【0039】
S335では、基板が接触平坦化ニップを出た後に、薄く広げられたり、または平らにされたりしたインクに対して第2の放射線処理を適用してもよい。例えば、広帯域UV放射を用いてインク画像を最終的に硬化させるためにインクに放射線を当ててもよい。S315で加えられた前処理放射線は、S335での最終的硬化に要するエネルギーを低減する可能性がある。S345では、最終的に硬化した画像を後処理してもよい。これは、例えば、平らにされた硬化済み画像を含む印刷物を積み重ねて見当を合わせることを含んでいてもよい。
【0040】
一実施形態では、前処理用に構成された放射線が水銀ランプを含んでいてもよい。他の実施形態では、基板上の放射線硬化性ゲルインクを接触平坦化装置の接触平坦化ニップにおいて薄く広げる前に、そのインクを前処理するように構成された放射線源がキセノンランプを含んでいてもよい。放射線放出の波長を制御することに加えて、UV光を短パルス化することにより放射線放出のエネルギーを制御してもよい。キセノンランプは、パルス化した高出力放射線出力に適した放射線源の例である。図4は、典型的なキセノン電球の2つのスペクトルを示している。図示のデータを生成するのに使用した電球は、キセノン4.2インチランプである。高めの短波長成分を有するスペクトルは、透明な溶融石英ガラスのエンベロープを使用するキセノンランプに対応している。少し低い周波数成分を有するもう一方のスペクトルは、Germacilを含むキセノンランプを用いて生成した。
【0041】
図5は、放出されたUV放射の合成したUVBおよびUVC成分に関連するキセノンパルス線源の放射照度を示している。図5に示す結果を生成するのに使用した放射線源が、基板上のインクから10mm離れたキセノンランプを含んでいた。ギャップ距離が縮小するとき、放射照度の波高、すなわち、放射照度量は減少する。ゲルインクを接触平坦化するために効果的に前処理を行う際に変化させてもよいパラメータが、上述のように、放出される放射線パルスの周波数と、放射線源ギャップ距離と、放射線放出持続時間またはパルス幅と、波長と、を含んでいる。
【0042】
図6Aは、画像を形成する陽画および陰画のゲルインク線に関するUV前処理の効果を示している。図6Aは、薄く広げる前の放射線硬化性ゲルインク画像を示している。中央に位置する陰画垂直線が、印字ヘッド内の欠落したジェットの結果である。インクを薄く広げる前に、短波長のパルス化したUV光を用いてインクを前処理した。
【0043】
図6Bに示すように、接触平坦化装置の加圧部材または平坦化部材上へのゲルインクの裏移りがごくわずかな状態で、または裏移りがまったくない状態で接触平坦化を行うことにより、前処理がインクを薄く広げることを可能にした。欠落したジェットが放射線硬化性ゲルインク画像に及ぼす影響が、薄く広げるプロセスにより隠されている。
【0044】
図7Aは、紙の基板上に付着された放射線硬化性ゲルインクの線を示している。図7Aに示すインクは、UV光などの硬化放射線に曝露していない。さらに、図7Aに示すインクは、接触平坦化装置を用いて薄く広げることは行っていない。高い短波長成分を有するUV光をパルス化することにより、制御された低レベルのエネルギーをインクに加えて、インクの外表面層を選択的に硬化させて、他方、インクの内層が依然としてやわらかいままであり、薄く広げることを許すことができるようにしてもよい。その結果、インクの外表面層は加圧ロールまたは平坦化ロールなどの接触平坦化部材上に裏移りせず、他方、下にあるインク層は薄く広がることができるようになっている。図7Bは、UV光による前処理後、かつ接触平坦化により薄く広げた後のインク線を示している。インクは、薄く広げる間に接触平坦化装置の平坦化部材に裏移りすることはなかった。
【0045】
上述のように、放射線がインクに供給するエネルギー量を制御して、要望通りにインクに作用するようにしてもよい。放射線源から加えられる放射線のエネルギーレベルを制御するための1つの方法が、放射線源と、基板上に付着したインクとの間の距離を調節することである。この距離、例えば、ギャップ距離などを、インクをUV光に曝露するときにインクに供給されるエネルギー量を増減させるために調節してもよい。例えば、ギャップ距離が縮小すると、インクに加えられるエネルギー量は増加する。図8は、紙の基板上のゲルインク線幅対放射線源の基板に対する高さまたはギャップ距離のグラフを示している。特に、使用した放射線源はキセノンランプであった。図8は、UV前処理に対するキセノン放射線源と基板の間のギャップ距離を縮小させると、線幅または薄く広がる度合いが増加したことを示している。
【技術分野】
【0001】
本開示は、接触平坦化ニップにおいて放射線硬化性ゲルインクを薄く広げることに関する。特に、本開示は、接触平坦化ニップにおいてインクを処理する前に基板上に付着した放射線硬化性ゲルインクに対して放射線前処理を適用するため方法、装置、およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷において基板上に画像を形成するために、放射線硬化性相変化ゲルインクを使用してもよい。インクを硬化させるためにインクを放射線に曝露してもよい。例示的な放射線硬化技術としては、例えば、200〜400nmの波長を有する紫外線(UV)光を用いて、またはさらにほとんど目に見えない光を用いて、任意に光開始剤および/もしくは増感剤が存在する状態で硬化すること、高温熱開始剤(噴射温度では大部分が不活性であってもよい)が存在する状態または存在しない状態で熱硬化を用いて硬化すること、ならびにこれらの適切な組み合わせなどが挙げられる。
【0003】
この曝露の間に、インク内に含まれる光開始剤物質をUV放射で照射してもよく、入射放射束はインク内のモノマーを架橋ポリマーマトリクスに変換して、結果的に基板上に硬くて長持ちする記号をもたらすことになる。いくつかの用途では、硬化する前に基板上のインクを薄く広げたり、または平らにしたりすることが望ましい可能性がある。平坦化は、より均一な画像光沢を生成できるとともに、印字ヘッドの欠落したジェットを隠すことができる。さらに、包装などの特定の印刷用途では、印刷物内で比較的一定の厚さの薄いインク層を有することで利益を得る可能性がある。
【0004】
UV硬化性相変化インクは、常温でゲル状の堅さを有していてもよい。UVゲルインクを常温付近から、高められた温度まで加熱すると、UVゲルインクは低粘性液体に相変化する。これらのインクは液体に変化するまで加熱してもよく、その後、基板に塗布してもよい。インクは基板に接触するとすぐに冷えて、液相から、もとの、より粘性のあるゲルの堅さに相を変化させる。
【0005】
放射線硬化性ゲルインク印刷用に構成されたインクジェットプリンタにより形成されるようなUV硬化性ゲルインク画像は、不均一な光沢を示す傾向がある。例えば、このような画像は「コーデュロイ効果」を示す可能性があり、および/または欠落したインクジェットに起因してよく起こる一般的なインクジェット画像品質ストリーキングを受ける可能性がある。このような欠陥を克服するために、硬化する前にインクを熱的にリフローしてもよい。この技術は欠落したジェットを隠す可能性があるが、結果として得られる画像は、滑らかな基板上での不安定性、および/または多孔性基板上でのブリードスルーまたはショースルーを受ける可能性がある。したがって、ゲルインク画像を平坦化ロールなどの接触部材と接触させることにより基板上のゲルインクを接触平坦化することが、最終的な硬化の前にインクを効果的に薄く広げて、欠落したジェットを隠したり、および/または光沢均一性を改善したりすることが分かっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
接触平坦化は、基板上に付着したUV硬化性ゲルインクなどの放射線硬化性ゲルインクの層を薄く広げたり、または平らにしたりするのに使用してもよい。しかしながら、常温では、未硬化のUV硬化性ゲルインクは非常に小さい凝集力を有しており、多くの種類の材料に対して良好な親和性を有している。その結果、静電写真法で使用してもよい従来の定着ロールなどの、他のインクタイプの層を平らにするのに使用する従来の方法および装置は、硬化する前にゲルインクを平らにするのには適さないが、その理由は、ゲルインクが割れて二つに分かれて、ゲルインクを平らにしようとするのに使用する装置上に裏移りする傾向があるためである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
接触平坦化ニップにおいてインクを薄く広げる前にインクを部分的に硬化させるために、基板上に付着したUV硬化性ゲルインクなどの放射線硬化性相変化インクを放射線に曝露してもよいということを見つけ出した。これにより、接触平坦化ニップを形成する接触平坦化装置の部品上へのインクの裏移りなしに、または実質的に裏移りなしにインクを平らにできるようになる。
【0008】
一実施形態では、方法が、基板上の放射線硬化性ゲルインクを第1の放射線源からの前処理放射線に曝露することと、前処理されたゲルインクを接触平坦化することにより薄く広げることと、を含んでいてもよい。放射線硬化性インクはUV硬化性であってもよく、放射線源はUV光を放射するように構成されていてもよい。
【0009】
例えば、方法が、水銀ランプから放射されるUV光を用いてゲルインクを照射することを含んでいてもよい。あるいは、キセノンランプを使用してもよい。他の実施形態では、フィルタ付きランプまたはLEDを放射線源として実現してもよい。
【0010】
方法が、インクを放射線に曝露する前に基板上にゲルインクを付着させることを含んでいてもよい。例えば、基板上にインク線を噴射するのにインクジェット印字ヘッドを使用してもよい。インク線はインク画像を形成するように構成してもよく、外表面層と内層とを有していてもよい。前処理期間の間に、インクを付着した後で、かつ接触平坦化したりまたは薄く広げたりする前に、インクを前処理放射線に曝露してもよい。
【0011】
前処理放射線は短波長UV光を含んでいてもよい。例えば、前処理放射線は約280ナノメートル(nm)〜約320(nm)の範囲のUVB成分を含んでいてもよい。インクの表面層の硬化は接触平坦化装置の部品上への裏移りを防止する程度であり、他方、インクの内層の硬化は接触平坦化により、なんとか薄く塗り広げることができる程度のインクの軟らかさであるように、インクを選択的に硬化させるのに必要な望ましい量の短波長成分を有する放射線を当てるために、例えば、ドープされた、ドープされていない、水銀、キセノン、またはLEDなどの光源タイプを使用してもよい。放射装置が出力するエネルギー量は、ギャップ距離、すなわち、基板上のインクと、前処理放射線源との間の距離を調節することにより制御してもよい。さらに、実施形態では、前処理期間の間の放射線量の制御を提供するために放射線源をパルス化してもよい。後続の接触平坦化のための前処理の間の効果的な選択的硬化を提供する必要性に応じてパルス周波数を調節してもよい。
【0012】
一実施形態では、方法が、前処理後、および接触平坦化後に、放射線硬化性ゲルインクを放射線に曝露することを含んでいる。例えば、インクの最終的な硬化のために薄く広げた後にインクを照射してもよい。広周波数範囲の放射線をインクの要件に応じてインクに当てるように第2の放射線源を構成してもよい。第2の放射線源が放出する放射線が、最終的な硬化を引き起こすためにインクの中により深く貫通するようになっていてもよい。前処理の間に与えられたエネルギーが、薄く広げた後にインク画像を硬化させるのに必要なエネルギーを低減してもよい
【0013】
一実施形態では、装置が放射線源を含んでいてもよい。放射線源は、接触平坦化装置により基板上でゲルインクを薄く広げる前に基板上に付着した放射線硬化性ゲルインクを前処理するために、例えば、UV光などを放射するように構成されていてもよい。放射線源は、短波長UV光を放射してインクの選択的硬化を提供するように構成してもよい。薄く広げる間にベルトまたはドラムなどの接触平坦化部材の表面上にインクが裏移りしないように、例えば、インクの外表面層などへ硬化させてもよい。接触平坦化部材が加える圧力によりインクが薄く広がることができる粘性を依然として保ったままであるようにインクの内層を硬化させてもよい。
【0014】
一実施形態では、基板上のゲルインクを前処理するためにUV光を放射するように前処理放射線源を構成してもよく、UV光は約280nm〜約320nmの範囲の波長を有するUVB成分を含んでいる。UV光は、約280nm以下のUVC成分を有していてもよい。基板上のインクを選択的に硬化させるには、このような短波長特性を有するUV光放射の方が、より長い波長の放射線を有するUV光放射よりも効果的である。例えば、コーティングとインクとの深部硬化には約320nm〜約390nmのUVA成分と、約395nm〜約445nmのUVV成分と、を有する、より長い波長のUV光が、より効果的である。実施形態では、装置が、短波長前処理されたゲルインク画像を接触平坦化したりまたは薄く広げたりした後に、そのゲルインク画像を、より長い波長の放射線に曝露するように構成された放射線源を含んでいてもよい。
【0015】
一実施形態では、短波UV光を放射するのに適した放射線源が、ドープされていない水銀ランプを含んでいてもよい。例えば、透明な溶融石英を含むエンベロープを有するドープされていない水銀ランプが、鉄ドープの水銀ランプにより通常放射される約320nm〜約390nmの範囲のより高いUVA成分とは対照的に、増強された短波長UV成分を提供してもよい。他の実施形態では、前処理放射線源が、高い短波長成分を有するUV光を放射するように構成されたLEDまたはフィルタ付き放射線源を含んでいてもよい。
【0016】
一実施形態では、放射線源がキセノンランプを含んでいてもよい。装置が、増強された短波長UV光を提供する石英溶解ガラスを有するキセノンランプを有していてもよい。germacilを含むキセノンランプが、少し低い周波数成分を有するUV光を放射してもよい。前処理のためにゲルインクに望ましいレベルのエネルギーを与えるために、基板上のインクから所定の距離、すなわち、ギャップ距離にキセノンランプを設置してもよい。実施形態では、UV光をパルス化するようにキセノンランプを構成して、それによりインクに当てる照射量を制御してもよい。パルス周波数は必要に応じて調節してもよい。
【0017】
一実施形態では、システムが、インクを選択的に硬化させるために、基板上に付着された放射線硬化性ゲルインクを放射線に曝露するように構成された放射線源を有する前処理装置または前処理システムを含んでいてもよい。前処理装置は、短波長UV光を放射するように構成された放射線源を含んでいてもよい。接触平坦化装置の接触平坦化ニップの前に位置する平坦化前領域においてゲルインクをUV光に曝露してもよい。接触平坦化装置は、平坦化ロール、平坦化ドラム、または平坦化ベルトなどの加圧部材または接触部材を含んでいてもよい。接触平坦化装置は、平坦化部材といっしょになって接触平坦化ニップを形成するロールなどの支持部材を含んでいてもよい。インクは基板上に付着させてもよく、基板は前処理装置の放射線源により前処理を行うために平坦化前領域まで搬送してもよい。インクは短波長放射線により照射してインクを選択的に硬化させてもよく、それにより、接触平坦化ニップにおいてインクを薄く広げることと、接触平坦化装置の部品上への裏移りがごくわずかな状態で、または裏移りがまったくない状態でインクを薄く広げることと、の両方を可能にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、例示的実施形態の放射線前処理および接触平坦化システムの概略図を示す図である。
【図2A】図2Aは、増強された短波長成分を示す放射線源放射スペクトルを示す図である。
【図2B】図2Bは、図2Aに示すよりも高い長波長成分を示す放射線源放射スペクトルを示す図である。
【図3】図3は、例示的実施形態のUV前処理を含むUVゲルインク接触平坦化プロセスを示す図である。
【図4】図4は、第2のキセノン電球のスペクトルよりも高い短波成分を示す第1のキセノン電球のスペクトルを示す図である。
【図5】図5は、UV出力の合成したUVBおよびUVC成分を示すキセノンパルス線源の放射照度を示す図である。
【図6A】図6Aは、パルス化したUV光源を用いたUV前処理後、かつ薄く広げる前の放射線硬化性ゲルインク線画像を示す図である。
【図6B】図6Bは、UV前処理後、かつ薄く広げた後の放射線硬化性ゲルインク線画像を示す図である。
【図7A】図7Aは、放射線源前処理前、かつ接触平坦化前の、基板上に付着した放射線硬化性ゲルインク線を示す図である。
【図7B】図7Bは、基板上に付着され、放射線を用いて前処理されて、接触平坦化ニップにおいて薄く広げられた放射線硬化性ゲルインク線を示す図である。
【図8】図8は、UV前処理および接触平坦化を受けた後の、基板上に付着した効果UVゲルインク線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
UVゲルインク印刷用の短波長UV前処理のための方法、装置、およびシステムの理解を提供するために図面を参照する。図面では、類似の参照番号は、全体を通じて類似のまたは同じ要素を示すために使用されている。図面は、基板上のインクを接触平坦化する前に基板上に付着したUVゲルインクに短波長UV処理を適用することを含む、放射線硬化性ゲルインク印刷用の、説明に役立つ方法、装置、およびシステムの実施形態に関連しているさまざまな実施形態およびデータを示している。
【0020】
平坦化ニップにおいて放射線硬化性ゲルインクを接触平坦化することにより、インクジェット線画像印刷を行うように構成された印字ヘッド内の欠落したジェットを隠してもよく、および/または光沢均一性および光沢制御を改善してもよい。特に、UVゲルインクなどの放射線硬化性ゲルインクを基板上に付着させた後に、ゲルインクを平坦化装置により薄く広げたり、または平らにしたりしてもよい。平坦化装置は、平坦化ロール、平坦化ベルト、または平坦化ドラムなどの接触平坦化部材を含んでいてもよい。平坦化ロールは、支持部材、例えば、支持ロールなどと一体になって接触平坦化ニップを形成してもよい。放射線硬化性ゲルインクを接触平坦化することは、インクが平坦化ロール上に裏移りする可能性がある場合には厄介な問題となり、画像品質の低下、印刷システムの保守頻度の増加、および接触平坦化装置の部品寿命の短縮につながる可能性があることが分かっている。
【0021】
したがって、放射線硬化性ゲルインクを基板上に付着させた後に、インクを平坦化装置により基板上に薄く広げる前にインクを前処理してもよい。例えば、線画像を形成するためにUV硬化性ゲルインクを基板上に付着させてもよい。インクを平坦化部材と接触させることにより線画像のインクを薄く広げる前に、インクを前処理してもよい。例えば、光沢制御および/もしくは光沢均一性を提供できるくらい薄く広げたり、または平らにしたりすることを可能にしながら、ならびに/または欠落したインクジェットを隠しながら、システム部品上への裏移りを回避するために、UVを用いてUV硬化性ゲルインクを処理してインクを部分的に重合させてもよい。UV光を放射するように構成された放射線源を、前処理領域、すなわち、薄く広げる処理の前、または平坦化装置による処理の前にインクを放射線に曝露する領域に隣接して構成してもよい。
【0022】
付着したUV硬化性ゲルインクを約395nmの波長を有する狭帯域UV用LEDを用いて前処理する場合、適切に薄く広げることを提供しながら裏移りを回避するように前処理を制御するのは困難であることが分かっている。例えば、放射線源の、より長い波長のUV放射が、似たような全出力の広帯域スペクトルUVを放射するように構成された放射線源のUV放射よりもさらに深くまでインク層を貫通する可能性がある。言い換えれば、このようなLED放射線源を使用することの影響は、裏移りを回避するのに十分な硬化をインクの表面に提供するのに適した線量を与えるときに、インク層の内部を過度に硬化させてしまい、結果として前処理および薄く広げるプロセスに対する許容度がほとんどなくなる可能性がある。
【0023】
接触平坦化部材上に裏移りせず、他方、平らにしたりまたは薄く広げたりするのに合わせてインク層の大部分が変形可能で形状順応性が高いままであることが可能な付着したインク層上の表皮を形成するために、短波長、例えば、UV放射などを提供する放射線源を使用してもよい。特に、短波長の放射線はインク層の中への限定的な貫通を有するとともに、表面硬化を選択的に生じさせる。
【0024】
前処理期間の間、放射線曝露による前処理が継続してもよいが、付着したインク層のインクを加熱するのを回避して、インク表面の中への酸素の拡散を最小限に抑えるために、短波長パルス放射線源を使用してもよい。放射線源が放出する短波長放射線をパルス化することは、放射線前処理の有効性を向上させる可能性がある。さらに、短波長放射線をパルス化することは、インクが受け取るエネルギーの制御を向上できるようにする可能性がある。パルスの周波数および継続時間は必要に応じて調節してもよい。したがって、インク層のレオロジー特性および表面特性を部分的重合を通じてin situで変化させてもよく、それによって効果的な接触平坦化を可能にしてもよい。
【0025】
好適な短波長放射線は、約280nm〜約320nmの範囲のUVB成分と、約280nmおよびそれよりも短い波長範囲のUVC成分と、を有するUV放射を含んでいる。付着した放射線硬化性ゲルインクの表面を選択的に硬化させるには、このようなUV放射の方が、例えば、より長い波長を有するUV放射よりも効果的である。このようなより長い波長のUV放射は、約320nm〜約390nmの範囲のUVA成分と、約395nm〜約445nmの範囲のUVV成分と、を含んでいてもよい。UVゲルインクの深部硬化には、より長い波長の放射線が適している。
【0026】
一実施形態では、放射線硬化性ゲルインクを基板上に付着させてもよい。例えば、インク画像を形成するインク線としてゲルインクを付着させてもよい。その後、前処理ステップにおいてゲルインクを放射線に曝露してもよい。前処理放射線は、放射線源から放射される短波長放射線である。例示的放射線源が、ドープされていない水銀電球を含む放射線源を含み、増強された短波成分を有するUV放射を放射するように構成されていてもよい。水銀電球は、透明な溶融石英でできたエンベロープを含んでいてもよい。あるいは、放射線源が、約300nmより短いスペクトル成分を有するUV放射を放出するLED光源またはフィルタ付き光源を含んでいてもよい。
【0027】
放射線源は、放射線硬化性ゲルインク印刷システム内の、例えば、平坦化前領域の近くに設置してもよい。平坦化前領域は、印刷プロセス方向に沿った順番で見て、紙または他の好適な媒体などの基板上に付着したUVゲルインクを薄く広げるように構成された接触平坦化装置よりも前に位置してもよい。接触平坦化装置は、ロール、ドラム、またはベルトなどの加圧部材または平坦化部材を含んでいてもよい。平坦化ロールは、支持部材と一体になって平坦化ニップを形成してもよい。支持部材は、ロール、ドラム、または他の好適な支持構造体であってもよい。放射線硬化性ゲルインクを基板上に付着させた後に、接触平坦化装置においてインクを薄く広げてもよい。平坦化ロールはインクに接触して、支持ロールに対して圧力をかけることによりインクを薄く広げるように構成されていてもよい。
【0028】
所定量のインクが平坦化部材に裏移りするのを防止するために、実施形態の方法、装置、およびシステムに基づいて前処理ステップにおいて、選択された波長のUVへの限定的な曝露および/または制御した曝露を行うことによりインクのレオロジーおよび表面を制御する。例えば、インクを短波長UV放射に曝露してインクの部分的な重合を可能にして、インクの分子量をin situで変化させる。さらに、インクに照射するエネルギー量を制御してもよい。例えば、前処理時にインクに照射する光子数を、高出力のUV光の短パルスを使用することにより制御してもよい。好適な放射線源がキセノンランプを含んでいてもよく、このキセノンランプは所定のパルス数に対して高出力および所定の周波数のUV光の短パルス化に対応してもよい。これは、動作時に放射線を連続的に放射する水銀UVアークランプと比較してわずかな曝露を可能にする。
【0029】
図1は、一実施形態の放射線硬化性ゲルインク印刷システムを示している。特に、図1は、接触平坦化装置と、基板上に付着したインクを接触平坦化装置において薄く広げる前にインクを放射線に曝露してインクを選択的に硬化させるための前処理放射線源と、を有する放射線硬化性ゲルインク印刷システムを示している。媒体搬送101が、その上に付着した放射線硬化性ゲルインクを有する基板103を搬送するように構成されていてもよい。例えば、基板103上にインクを噴射して、インク線を形成するようにゲルインクインクジェット印字ヘッドを構成してもよい。インク線はインク画像を形成してもよい。
【0030】
基板103は、インクを平らにしたり、または薄く広げたりするために接触平坦化ニップ105に搬送してもよい。例えば、インクにより形成される画像の光沢度を制御するため、および/またはインク線間のギャップの原因となる可能性がある欠落したジェットを隠すためにインクを薄く広げてもよい。平坦化ニップ105は、加圧ロールまたは平坦化ロール110と、支持ロール112と、により形成してもよい。平坦化ロール110は、例えば、アルミニウムドラムなどを含んでいてもよい。平坦化ロール110は基板103上に付着したインクに接触して、インクを薄く広げるように構成されていてもよい。他の実施形態では、平坦化部材がエンドレスベルトのようなベルト状であってもよい。
【0031】
図1に示すような装置およびシステムの一実施形態では、第1の放射線源120を媒体搬送101に隣接して配置してもよい。放射線源120は、UV放射のような放射線を放射するように構成してもよい。放射線源120は、例えば、平坦化ニップ105の前に位置する平坦化前領域を通って基板103を搬送しているときに基板103上のインクを照射するようにUV光を放射してもよい。
【0032】
接触平坦化ニップ105においてインクを効果的に薄く広げるために平坦化前領域において基板103上のインクを前処理するように放射線源120を構成して制御してもよい。特に、短波長を有するUV放射を放射するように放射線源120を構成してもよい。例えば、約280nm〜約320nmの範囲のUVBと、約280nmおよびそれよりも短い波長範囲のUVCと、を有するUV放射を放射するように放射線源120を構成してもよい。基板103上のインクを、放射線源120が放出するUV放射に曝露して、インクの表面を選択的に硬化させながら、インクの下層を、より少ない程度に硬化させ、それにより展延ローラ(spreading roller)に裏移りせずに画像を薄く広げることができるようにしてもよい。実施形態では、インクを連続したUV放射に曝露してもよい。曝露はしばらく持続してもよく、その期間の間、放射は連続的であってもよい。他の実施形態では、放射線源120をパルス化することにより、インクに照射する光子量を制御してもよい。また、放射される、例えば、UV光などの放射照度を制御するために、インクと放射線源120との間のギャップ距離を調節してもよい。
【0033】
多層画像が、適切なエネルギーレベルのUV放射の第1の線量を必要とする可能性がある。多層画像は、基板に応じて、スプレッダまたは接触平坦化装置に移動する前に、インク層を安定させるために何らかの放射を必要とする可能性がある。厚い画像では、薄く広げることに備えて短波長UV放射線源120からの前処理放射線に曝露する前に、画像を基板に固定する(このプロセスは当業者に「ピン止め」として一般に知られている)ために低出力の何らかの長波長UV放射を必要とする可能性があることが分かるかもしれない。ピン止め用の低出力の長波長放射線を放射するように構成されたUV光源(図示せず)を平坦化ニップ105の上流に配置してもよい。ピン止めに使用するUV光源(図示せず)を、例えば、短波長UV放射線源120の上流に配置してもよい。
【0034】
画像を選択的硬化用の短波長放射線に曝露することにより基板103上のインクを前処理するために放射線源120がUV放射を放射した後に、基板103を処理用の平坦化ニップ105に搬送してもよい。前処理されたインクに接触するように平坦化ロール110を構成して、平坦化ロール110の表面上上へのインクの裏移りがごくわずかな状態で、または裏移りがまったくない状態でインクを薄く広げてもよい。基板103上のインクを平坦化装置により薄く広げた後に、第2の放射線源125においてインクを放射線に曝露してもよい。第2の放射線源は、例えば、インクに入り込んでインクを硬化させる、より長い波長を有するUV放射を放射するように構成してもよい。
【0035】
放射線源120などの放射線源が、例えば、水銀ランプを含んでいてもよい。効果的な増強された短波長放射を実現するために、放射線源120は透明な溶融石英のエンベロープを有するドープされていない水銀電球を含んでいてもよい。図2Aに示すように、ドープされていない水銀ランプは、その放射内に、増強された短波UV成分を提供する。特に、図2Aは、増強された短波UV成分を有する典型的なドープされていない水銀放射スペクトルを示している。
【0036】
図2Bは、鉄ドープの水銀ランプの典型的な放射スペクトルを示している。特に、図2Bは、ドープされていない水銀ランプよりもはるかに高いUVA成分を示している。図2Bは、ドープされた水銀ランプの放射が、例えば、約320nm〜約390nmの範囲の、はるかに高いUVA成分を発現することを示している。
【0037】
図3は、一実施形態の、インクを薄く広げる前にUV前処理を有する放射線硬化性ゲルインク印刷方法300を示している。特に、図3に示す実施形態は、ステップS305で、基板上に放射線硬化性ゲルインク画像を生成することを含んでいる。例えば、画像を形成するために基板上にインク線を付着させるようにインクジェット印字ヘッドを構成してもよい。
【0038】
S315では、インク画像をUV光などの放射線に曝露してもよい。接触平坦化装置の加圧部材上へのインクの裏移りを防止するとともに、インクを薄く広げることを可能にするのに効果的な前処理を実現するために、継続時間、出力、およびスペクトルを制御してもよい。S325では、インクを薄く広げて平らにするために、前処理されたインクを平坦化ロールなどの加圧部材と接触させてもよい。これは、光沢制御と、欠落したジェットのマスキングとを可能にする。インクの一部分を選択的に硬化させてインクのレオロジー特性を変化させることによりS315においてインクを前処理することが、接触平坦化装置の部品上へのインクの裏移りがごくわずかな状態で、または裏移りがまったくない状態でインクを薄く広げることを可能にする。
【0039】
S335では、基板が接触平坦化ニップを出た後に、薄く広げられたり、または平らにされたりしたインクに対して第2の放射線処理を適用してもよい。例えば、広帯域UV放射を用いてインク画像を最終的に硬化させるためにインクに放射線を当ててもよい。S315で加えられた前処理放射線は、S335での最終的硬化に要するエネルギーを低減する可能性がある。S345では、最終的に硬化した画像を後処理してもよい。これは、例えば、平らにされた硬化済み画像を含む印刷物を積み重ねて見当を合わせることを含んでいてもよい。
【0040】
一実施形態では、前処理用に構成された放射線が水銀ランプを含んでいてもよい。他の実施形態では、基板上の放射線硬化性ゲルインクを接触平坦化装置の接触平坦化ニップにおいて薄く広げる前に、そのインクを前処理するように構成された放射線源がキセノンランプを含んでいてもよい。放射線放出の波長を制御することに加えて、UV光を短パルス化することにより放射線放出のエネルギーを制御してもよい。キセノンランプは、パルス化した高出力放射線出力に適した放射線源の例である。図4は、典型的なキセノン電球の2つのスペクトルを示している。図示のデータを生成するのに使用した電球は、キセノン4.2インチランプである。高めの短波長成分を有するスペクトルは、透明な溶融石英ガラスのエンベロープを使用するキセノンランプに対応している。少し低い周波数成分を有するもう一方のスペクトルは、Germacilを含むキセノンランプを用いて生成した。
【0041】
図5は、放出されたUV放射の合成したUVBおよびUVC成分に関連するキセノンパルス線源の放射照度を示している。図5に示す結果を生成するのに使用した放射線源が、基板上のインクから10mm離れたキセノンランプを含んでいた。ギャップ距離が縮小するとき、放射照度の波高、すなわち、放射照度量は減少する。ゲルインクを接触平坦化するために効果的に前処理を行う際に変化させてもよいパラメータが、上述のように、放出される放射線パルスの周波数と、放射線源ギャップ距離と、放射線放出持続時間またはパルス幅と、波長と、を含んでいる。
【0042】
図6Aは、画像を形成する陽画および陰画のゲルインク線に関するUV前処理の効果を示している。図6Aは、薄く広げる前の放射線硬化性ゲルインク画像を示している。中央に位置する陰画垂直線が、印字ヘッド内の欠落したジェットの結果である。インクを薄く広げる前に、短波長のパルス化したUV光を用いてインクを前処理した。
【0043】
図6Bに示すように、接触平坦化装置の加圧部材または平坦化部材上へのゲルインクの裏移りがごくわずかな状態で、または裏移りがまったくない状態で接触平坦化を行うことにより、前処理がインクを薄く広げることを可能にした。欠落したジェットが放射線硬化性ゲルインク画像に及ぼす影響が、薄く広げるプロセスにより隠されている。
【0044】
図7Aは、紙の基板上に付着された放射線硬化性ゲルインクの線を示している。図7Aに示すインクは、UV光などの硬化放射線に曝露していない。さらに、図7Aに示すインクは、接触平坦化装置を用いて薄く広げることは行っていない。高い短波長成分を有するUV光をパルス化することにより、制御された低レベルのエネルギーをインクに加えて、インクの外表面層を選択的に硬化させて、他方、インクの内層が依然としてやわらかいままであり、薄く広げることを許すことができるようにしてもよい。その結果、インクの外表面層は加圧ロールまたは平坦化ロールなどの接触平坦化部材上に裏移りせず、他方、下にあるインク層は薄く広がることができるようになっている。図7Bは、UV光による前処理後、かつ接触平坦化により薄く広げた後のインク線を示している。インクは、薄く広げる間に接触平坦化装置の平坦化部材に裏移りすることはなかった。
【0045】
上述のように、放射線がインクに供給するエネルギー量を制御して、要望通りにインクに作用するようにしてもよい。放射線源から加えられる放射線のエネルギーレベルを制御するための1つの方法が、放射線源と、基板上に付着したインクとの間の距離を調節することである。この距離、例えば、ギャップ距離などを、インクをUV光に曝露するときにインクに供給されるエネルギー量を増減させるために調節してもよい。例えば、ギャップ距離が縮小すると、インクに加えられるエネルギー量は増加する。図8は、紙の基板上のゲルインク線幅対放射線源の基板に対する高さまたはギャップ距離のグラフを示している。特に、使用した放射線源はキセノンランプであった。図8は、UV前処理に対するキセノン放射線源と基板の間のギャップ距離を縮小させると、線幅または薄く広がる度合いが増加したことを示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の放射線硬化性ゲルインクを第1の放射線源からの前処理放射線に曝露することと、
前記照射されたゲルインクを薄く広げることと、を含む、
放射線硬化性ゲルインク印刷方法。
【請求項2】
インクジェット印字ヘッドを用いて前記基板上に前記ゲルインクを付着させることを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ゲルインクを硬化させるために、前記薄く広げることの後に前記ゲルインクを放射線に曝露することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ゲルインクを前処理放射線に前記曝露することが、
前記第1の放射線源が放射するUV光を用いて前記ゲルインクを照射することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の放射線源が、水銀ランプ、LED、またはキセノンランプのいずれかを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第1の放射線源と、
接触平坦化装置であって、前記第1の放射線源は、前記接触平坦化装置が基板上のゲルインクを処理する前に、前記インクを照射するように構成されている、接触平坦化装置と、を含む、
放射線硬化性ゲルインク印刷装置。
【請求項7】
前記接触平坦化装置が、前記基板上の前記ゲルインクを処理した後に、前記インクを照射するように構成された第2の放射線源を含む、
請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の放射線源が、水銀ランプまたはキセノンランプのどちらかを含む、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記キセノンランプが、透明な溶融石英ガラスのエンベロープを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記第1の放射線源が、ゲルインク照射の間、UV光を連続的に放射するように構成されているか、または前記ゲルインク照射の間、パルス化したUV光を放射するように構成されているか、のどちらかである、請求項8に記載の装置。
【請求項1】
基板上の放射線硬化性ゲルインクを第1の放射線源からの前処理放射線に曝露することと、
前記照射されたゲルインクを薄く広げることと、を含む、
放射線硬化性ゲルインク印刷方法。
【請求項2】
インクジェット印字ヘッドを用いて前記基板上に前記ゲルインクを付着させることを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ゲルインクを硬化させるために、前記薄く広げることの後に前記ゲルインクを放射線に曝露することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ゲルインクを前処理放射線に前記曝露することが、
前記第1の放射線源が放射するUV光を用いて前記ゲルインクを照射することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の放射線源が、水銀ランプ、LED、またはキセノンランプのいずれかを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第1の放射線源と、
接触平坦化装置であって、前記第1の放射線源は、前記接触平坦化装置が基板上のゲルインクを処理する前に、前記インクを照射するように構成されている、接触平坦化装置と、を含む、
放射線硬化性ゲルインク印刷装置。
【請求項7】
前記接触平坦化装置が、前記基板上の前記ゲルインクを処理した後に、前記インクを照射するように構成された第2の放射線源を含む、
請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の放射線源が、水銀ランプまたはキセノンランプのどちらかを含む、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記キセノンランプが、透明な溶融石英ガラスのエンベロープを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記第1の放射線源が、ゲルインク照射の間、UV光を連続的に放射するように構成されているか、または前記ゲルインク照射の間、パルス化したUV光を放射するように構成されているか、のどちらかである、請求項8に記載の装置。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【公開番号】特開2013−75521(P2013−75521A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−207182(P2012−207182)
【出願日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】
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