説明

放射線遮断用の軽量ガラス質発泡体とその製造方法

【課題】頻繁に移動したり、変形する場合も容易に適用できる、放射線遮断用の軽量ガラス質発泡体を実現する。
【解決手段】テレビのブラウン管のように鉛を混ぜてあるファンネルガラスを微粉砕し、発泡添加材を加えて炉で加熱焼成して製造すると、扱い易い大きさに容易に製造でき、テレビのブラウン管を原料とするので、環境破壊の防止もできる。また、このようにして製造して成る軽量ガラス質発泡体を、放射線遮断資材として用いるので、誰でも容易に扱える。本発明の軽量ガラス質発泡体を袋などの容器に収納して用いると、容器単位に扱うことができ、容易に放射線を遮断できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
原子力発電所の事故に伴い、多くの人々が放射線を被曝し、国民を震撼させている。原子力発電所で修理などに携わっている作業員達も放射線被曝を恐れて作業に取りかかれない状態である。このような問題を解消するには、容易に放射線を遮断できる防護手段が必要となる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のように、放射線の外部漏洩を防止する構法又は防音構法を簡単化すべく、流動性を有すると共に経時固化する主材と鉛粉粒体を混合した遮断材を、コンプレッサー及びスプレーガンにより必要厚さに吹き付ける手法が知られている。
また、特許文献2によると、放射線の漏洩を防止すべく、ペーパーハニカムの一側面に鉛板を装着し、更に、該鉛板の表面並びに前記ペーパーハニカムの他側面にベニヤ板を装着して扉を構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−319182
【特許文献2】実開平7−26579
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2のように、鉛板を用いる手法は、重くて作業性が悪い。特許文献1の手法は、作業面の形状に拘らず、鉛を含んだ遮断層が形成される利点は認めるものの、主材が経時固化するので、1度しか使用できず、経済的でない。また、頻繁に移動したり、変形する場合は適用できない。
本発明の技術的課題は、このような問題に着目し、頻繁に移動したり、変形する場合も容易に適用できる、放射線遮断用の軽量ガラス質発泡体を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1は、テレビのブラウン管のように鉛を混ぜてあるファンネルガラスを微粉砕し、発泡添加材を加えて加熱焼成することを特徴とする軽量ガラス質発泡体の製造方法である。実際には、炉を通過させることにより、加熱焼成する。
【0006】
請求項2は、鉛を混ぜてあるファンネルガラスを微粉砕し、発泡添加材を加えて加熱焼成して、放射線の遮断に用いることを特徴とする軽量ガラス質発泡体から成る放射線遮断資材である。加熱焼成後に炉から出る際に温度差で自然に割れて軽石状になる。
【0007】
請求項3は、鉛を混ぜてあるファンネルガラスを微粉砕し、発泡添加材を加えて加熱焼成して成る軽量ガラス質発泡体を用いて放射線を遮断することを特徴とする放射線の遮断方法である。
【0008】
請求項4は、鉛を混ぜてあるファンネルガラスを微粉砕し、発泡添加材を加えて加熱焼成して成る軽量ガラス質発泡体を袋などの容器に収納して用いることを特徴とする放射線の遮断方法である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1のように、テレビのブラウン管のように鉛を混ぜてあるファンネルガラスを微粉砕し、発泡添加材を加えて炉で加熱焼成して製造するので、扱い易い大きさに容易に製造でき、テレビのブラウン管を原料とするので、環境破壊の防止もできる。
【0010】
請求項2によると、鉛を混ぜてあるファンネルガラスを微粉砕し、発泡添加材を加えて加熱焼成して成る軽量ガラス質発泡体を、放射線遮断資材として用いるので、誰でも容易に扱える。
【0011】
請求項3によると、鉛を混ぜてあるファンネルガラスを微粉砕し、発泡添加材を加えて加熱焼成して成る軽量ガラス質発泡体を用いて放射線を遮断するので、放射線を遮断したいか所に配置するだけで容易に実現できる。
【0012】
請求項4によると、鉛を混ぜてあるファンネルガラスを微粉砕し、発泡添加材を加えて加熱焼成して成る軽量ガラス質発泡体を袋などの容器に収納して用いるので、容器単位に扱うことができ、容易に放射線を遮断できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(1) 〜(4) は本発明による放射線遮断用の軽量ガラス質発泡体の製造工程を示す図である。
【図2】ガラス発泡体を製造する装置の模式側面図である。
【図3】鉛を含んでいるファンネルガラスの詳細を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明による放射線遮断用の軽量ガラス質発泡体が実際上どのように具体化されるか実施形態を詳述する。図1(1) 〜(4) は本発明による放射線遮断用の軽量ガラス質発泡体の製造工程を示す図である。
(1)の1はファンネルガラスであり、このファンネルガラス1を破砕機によって破砕すると、(2)のように数mm大の粒2になる。このガラスカレット2を、粉砕機によってパウダー状に粉砕すると、(3)のように、ガラス粉末3になる。このようなガラス粉末3に発泡剤として0.4 〜3.0W%の炭酸塩やドロマイト、炭化ケイ素などを単体又は複合して混ぜ、炉の中で焼成すると、厚板状になって連続的に出て来るが、外気との温度差で自然と割れて(4)のような軽石状の発泡体4が沢山できる。
【0015】
図2は、(3)のようなガラス粉末3から(4)のような発泡体を製造する装置の模式側面図である。5は焼成炉であり、熱源は重油バーナーであるが、ガスバーナーでも、電気炉でもよい。炉内温度は、例えば650〜950℃の範囲で温度制御でき、また領域ごとの温度制御もできる。
この焼成炉5の中をエンドレスのコンベア6が走行する。このコンベア6は耐熱性の材質、すなわち金属製を用いる。また、上下から熱を効果的に受けられ、かつ湾曲しやすいように、メッシュベルトを用いる。
【0016】
コンベア6は、入口側の駆動ローラ7で駆動され、間隔をおいて配設した支持ローラ8…の上を走行する。出口側のローラ9は、コンベア6にテンションを与えるためのものである。10はガイドローラである。
焼成炉5の内部において、コンベア6の上下両側にバーナー11を配置してある。なお、実線のバーナー11は焼成炉5の手前側の側壁に取り付けてあり、破線のバーナー11は焼成炉5の後方の側壁に取り付けてある。
そして、焼成炉5の入口側には、コンベア6上に原料を供給するためのホッパー12を設けてあり、焼成炉5の出口に続いて、徐冷室13を配置してあるが、焼成された発泡体は徐冷室13で徐冷後に大気との温度差で割れて、軽石大となる。
【0017】
図3は10〜25W%の鉛を含んでいるファンネルガラスの詳細を示す側面図であり、テレビのブラウン管ガラスの例である。15がファンネルガラスであり、16は画像が写るパネルガラスである。従って、電子銃や制御素子、パネルガラス16などを取り外して、鉛を含んでいるファンネルガラス15のみを使用する。
以上のような方法で、放射線を通さない鉛を含んでいるファンネルガラスを原料として、図1(4) のような発泡体を製造し、軽量化すると扱い易く、また軽石状であるために、袋などの容器に収納することで容易に移動したり、任意の形状に形成できる。例えば、軽石が入る形状の容器機能であれば足り、建物の壁部を二重構造とし、間の空間に本発明の発泡体を収納したりもできる。
放射線の遮断能力は、発泡体を置くときの厚さを調整することで容易に選択可能である。
【0018】
軽量化の度合は、微粉体化の粒度、添加材の質及び量、加熱温度の調整によってコントロールする。軽量で取扱いを容易にするために比重としては0.5 〜1.0 程度にするが、1.0 〜1.5 にすることも出来る。
【0019】
次に、本発明の発泡体の使用例を説明する。
1.本発明の発泡体を袋に入れて、人や家畜や飲食物を囲むことで、放射線が人や家畜や飲食物に到達するのを防ぐ。
2.放射線の発生量の多い放射線源を、本発明の発泡体を入れた袋で囲むことにより、放射線を被曝する危険を回避できる。
3.線量が多い校庭などの表土を集めて埋める際に、最後に本発明の発泡体を敷きつめて被せると、放射線が外部に漏れるのを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
以上のように、旧式のテレビのブラウン管ガラスを原料にして発泡ガラス体を製造し、軽石状の扱い易い放射線遮断資材として使用できるので、人や家畜や飲食物を放射線から容易に防護できる。すなわち、放射線を忌避したい物体や場所と放射線源との間に本発明のガラス発泡体を袋などに入れて置くことで、容易に放射線事故を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0021】
1 ファンネルガラス
4 軽石状の発泡体
15 ファンネルガラス
16 パネルガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛を混ぜてあるファンネルガラスを微粉砕し、少なくとも発泡添加材を加えて加熱焼成することを特徴とする軽量ガラス質発泡体の製造方法。
【請求項2】
鉛を混ぜてあるファンネルガラスを微粉砕し、少なくとも発泡添加材を加えて加熱焼成して、放射線の遮断に用いることを特徴とする軽量ガラス質発泡体から成る放射線遮断資材。
【請求項3】
鉛を混ぜてあるファンネルガラスを微粉砕し、少なくとも発泡添加材を加えて加熱焼成して成る軽量ガラス質発泡体を用いて放射線を遮断することを特徴とする放射線の遮断方法。
【請求項4】
鉛を混ぜてあるファンネルガラスを微粉砕し、少なくとも発泡添加材を加えて加熱焼成して成る軽量ガラス質発泡体を袋などの容器に収納して用いることを特徴とする放射線の遮断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−36755(P2013−36755A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170398(P2011−170398)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(596172440)株式会社トリム (6)
【Fターム(参考)】