説明

放射線遮蔽体および放射線測定装置および放射線検出器の遮蔽方法

【課題】放射線検出器のバックグラウンド計数を適正に低減する際の費用の増大を抑制する。
【解決手段】放射線測定装置1は放射線検出器5と放射線検出器5を放射線から遮蔽する放射線遮蔽体10とを備える。放射線遮蔽体10は第1遮蔽体31と第1遮蔽体31内部に取り出し可能に収容される第2遮蔽体32とを備える。第1遮蔽体31は鉛遮蔽筐体41aおよび鉛遮蔽蓋体41bと、銅遮蔽筐体42aおよび銅遮蔽蓋体42bと、樹脂遮蔽筐体43aおよび樹脂遮蔽蓋体43bとを備える。第2遮蔽体32はタングステン遮蔽筐体51aおよびタングステン遮蔽蓋体51bと、銅遮蔽筐体52aおよび銅遮蔽蓋体52bと、樹脂遮蔽筐体53aおよび樹脂遮蔽蓋体53bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射線遮蔽体および放射線測定装置および放射線検出器の遮蔽方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば放射線検出器をバックグラウンド放射線から遮蔽する場合に、鉛からなる鉛遮蔽材と放射線検出器との間で、銅、錫、銀あるいはカドミウム板による内部遮蔽を行ない、ミュオンやγ線などで励起された鉛のKαX線などの寄与が大きい低エネルギー領域(例えば、500keV以下の領域など)において、放射線検出器のバックグラウンド計数を低減する遮蔽方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】小村和久、「低レベル・超低レベル放射能測定の基礎」、RADIOISOTOPES,Vol.55,No.4,2006,p53−63
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る遮蔽方法においては、放射線検出器のバックグラウンド計数を低減するために、鉛遮蔽材を構成する鉛として、放射性同位元素である210Pbの含有濃度が所望の許容濃度以下の鉛を用いることが望まれている。しかしながら、210Pbの含有濃度が低い鉛は入手が困難であり、また、210Pbの半減期(約22年)に対して鉛を長期間に亘って保管して210Pbの含有濃度を低減する場合には、保管に要する手間と費用が嵩んでしまうという問題が生じる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、放射線検出器のバックグラウンド計数を適正に低減する際の費用の増大を抑制することが可能な放射線遮蔽体および放射線測定装置および放射線検出器の遮蔽方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の第1態様に係る放射線遮蔽体は、遮蔽対象物(例えば、実施の形態での放射線検出器5)を放射線から遮蔽する放射線遮蔽体(例えば、実施の形態での放射線遮蔽体10)であって、鉛からなる鉛遮蔽体(例えば、実施の形態での鉛遮蔽筐体(SH(Pb))41a,71aおよび鉛遮蔽蓋体(SH(Pb))41b,71b)と、該鉛遮蔽体と前記遮蔽対象物との間に配置され、かつ銅と錫と銀とカドミウムとのうち少なくとも何れか1つを含有する遮蔽体(例えば、実施の形態での銅遮蔽筐体(SH(Cu))42a,52a,73aおよび銅遮蔽蓋体(SH(Cu))42b,52b,73b)と、前記鉛遮蔽体と前記遮蔽対象物との間に配置され、かつタングステンとタングステン合金とタングステン含有物とのうち何れか1つからなるタングステン遮蔽体(例えば、実施の形態でのタングステン遮蔽筐体(SH(W))51a,72aおよびタングステン遮蔽蓋体(SH(W))51b,72b)とを備える。
【0007】
また、本発明の第2態様に係る放射線測定装置は、放射線検出器(例えば、実施の形態での放射線検出器5)と、該放射線検出器を放射線から遮蔽する遮蔽体(例えば、実施の形態での放射線遮蔽体10)とを備える放射線測定装置(例えば、実施の形態での放射線測定装置1)であって、前記遮蔽体は、鉛からなる鉛遮蔽体(例えば、実施の形態での鉛遮蔽筐体(SH(Pb))41a,71aおよび鉛遮蔽蓋体(SH(Pb))41b,71b)と、該鉛遮蔽体と前記放射線検出器との間に配置され、かつタングステンとタングステン合金とタングステン含有物とのうち何れか1つからなるタングステン遮蔽体(例えば、実施の形態でのタングステン遮蔽筐体(SH(W))51a,72aおよびタングステン遮蔽蓋体(SH(W))51b,72b)とを備える。
【0008】
また、本発明の第3態様に係る放射線検出器の遮蔽方法は、放射線検出器(例えば、実施の形態での放射線検出器5)を放射線から遮蔽する鉛からなる鉛遮蔽体(例えば、実施の形態での鉛遮蔽筐体(SH(Pb))41a,71aおよび鉛遮蔽蓋体(SH(Pb))41b,71b)と前記放射線検出器との間に、タングステンとタングステン合金とタングステン含有物とのうち何れか1つからなるタングステン遮蔽体(例えば、実施の形態でのタングステン遮蔽筐体(SH(W))51a,72aおよびタングステン遮蔽蓋体(SH(W))51b,72b)を配置する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1態様に係る放射線遮蔽体によれば、銅と錫と銀とカドミウムとのうち少なくとも何れか1つを含有する遮蔽体を、鉛遮蔽体に対する内部遮蔽体とすることにより、ミュオンやγ線などで励起された鉛のKαX線などの寄与が大きい低エネルギー領域(例えば、500keV以下の領域など)において、例えば放射線検出器などの遮蔽対象物に対するバックグラウンド放射線を低減することができる。
さらに、鉛遮蔽体と遮蔽対象物との間にタングステン遮蔽体を備えることにより、例えば放射線検出器などの遮蔽対象物に対するバックグラウンド放射線を低減する際の費用の増大を抑制することができる。つまり、自然界から得られるタングステンには放射性同位元素が少なく、放射線の遮蔽に有用なタングステンの入手が容易であり、タングステンは原子番号が大きくかつ密度が高いことで放射線に対する遮蔽効果が高く、鉛遮蔽体の内部遮蔽としてタングステン遮蔽体を用いることで、鉛遮蔽体に必要とされる鉛の量を低減することができ、放射線遮蔽体の構成に要する費用を削減することができる。
【0010】
また、本発明の第2態様に係る放射線測定装置によれば、鉛遮蔽体と放射線検出器との間にタングステン遮蔽体を備えることにより、放射線検出器に対するバックグラウンド計数を低減する際の費用の増大を抑制することができる。つまり、自然界から得られるタングステンには放射性同位元素が少なく、放射線の遮蔽に有用なタングステンの入手が容易であり、タングステンは原子番号が大きくかつ密度が高いことで放射線に対する遮蔽効果が高く、鉛遮蔽体の内部遮蔽としてタングステン遮蔽体を用いることで、鉛遮蔽体に必要とされる鉛の量を低減することができ、遮蔽体の構成に要する費用を削減することができる。これにより、低レベル放射能の測定を費用の増大を抑制しつつ的確に行なうことができる。
【0011】
また、本発明の第3態様に係る放射線検出器の遮蔽方法によれば、鉛遮蔽体と放射線検出器との間にタングステン遮蔽体を備えることにより、放射線検出器に対するバックグラウンド計数を低減する際の費用の増大を抑制することができる。つまり、自然界から得られるタングステンには放射性同位元素が少なく、放射線の遮蔽に有用なタングステンの入手が容易であり、タングステンは原子番号が大きくかつ密度が高いことで放射線に対する遮蔽効果が高く、鉛遮蔽体の内部遮蔽としてタングステン遮蔽体を用いることで、鉛遮蔽体に必要とされる鉛の量を低減することができ、放射線検出器の遮蔽に要する費用を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る放射線測定装置の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る放射線遮蔽体と放射線検出器との配置を示す断面模式図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る放射線測定装置により得られるエネルギースペクトルの例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態の第1〜第5変形例に係る放射線遮蔽体と放射線検出器との配置を示す断面模式図である。
【図5】本発明の実施の形態の第6変形例に係る放射線測定装置の構成図である。
【図6】本発明の実施の形態の第6変形例に係る放射線遮蔽体と放射線検出器との配置を示す断面模式図である。
【図7】本発明の実施の形態の第7〜第9変形例に係る放射線遮蔽体と放射線検出器との配置を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る放射線遮蔽体および放射線測定装置および放射線検出器の遮蔽方法について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による放射線遮蔽体10を具備する放射線測定装置1は、例えば図1に示すように、入力装置2と、出力装置3と、波高分析装置4と、放射線検出器5と、放射線遮蔽体10とを備えて構成されている。
【0014】
入力装置2は、例えば操作者の入力操作に応じた信号を出力する各種のスイッチおよびキーボードなどを備えて構成され、操作者の入力操作に応じた各種の指令信号を波高分析装置4へ出力する。
出力装置3は、例えばスピーカおよび表示装置などを備えて構成され、波高分析装置4から出力される各種の情報を出力する。
【0015】
波高分析装置4は、例えばマルチチャンネルアナライザであって、放射線検出器5から出力される出力信号パルスの波高分布、つまり波高値に応じて設定された複数のチャンネル毎の計数値を算出する。例えば放射線のエネルギーに応じた波高値を有する出力信号パルスが放射線検出器5から出力されると、波高分析装置4は放射線検出器5の出力信号パルスの波高分布として、エネルギースペクトルを作成する。
【0016】
放射線検出器5は、例えばゲルマニウム半導体検出器やシリコン半導体検出器などの半導体検出器であって、内部が真空とされた垂直型などのクライオスタット21において、放射線の入射窓(図示略)を有するエンドキャップハウジング21a内部に、放射線に対して有感なゲルマニウム結晶やシリコン結晶などの半導結晶が保持されている。そして、測定対象の試料Sは、例えば図2に示すように、エンドキャップハウジング21aの入射窓に臨んで対向するようにして配置される。
【0017】
なお、クライオスタット21の内部は、デュワー22内部に貯溜された液体窒素に浸漬された銅からなる冷却棒(図示略)との熱的な接触により冷却されている。そして、デュワー22内部に連通する液体窒素供給用および排圧用の連通口22aから排出される窒素(つまり、デュワー22内部の液体窒素が蒸発して得られる気体の窒素)が、樹脂製などのホース23などによって放射線遮蔽体10内部に供給され、放射線遮蔽体10内部の気体を窒素で置換するようになっている。
【0018】
放射線遮蔽体10は、例えば箱型の第1遮蔽体31と、第1遮蔽体31内部に取り出し可能に収容される箱型の第2遮蔽体32とを備えて構成されている。そして、第1遮蔽体31内部に収容された第2遮蔽体32内部には、放射線検出器5のクライオスタット21(例えば、エンドキャップハウジング21a)が収容可能とされている。
【0019】
第1遮蔽体31は、開口した箱型の筐体31aと、筐体31aの開口部31cを閉塞可能な蓋体31bとを備えて構成されている。
筐体31aは、鉛からなる鉛遮蔽筐体(SH(Pb))41aと、この鉛遮蔽筐体41aに対して着脱可能であって、装着時に鉛遮蔽筐体41aの内面を被覆する銅からなる銅遮蔽筐体(SH(Cu))42aと、この銅遮蔽筐体42aに対して着脱可能であって、装着時に銅遮蔽筐体42aの内面を被覆するアクリルなどの樹脂材からなる樹脂遮蔽筐体(SH(R))43aとを備えて構成されている。
【0020】
また、蓋体31bは、鉛からなる鉛遮蔽蓋体(SH(Pb))41bと、この鉛遮蔽蓋体41bに対して着脱可能であって、装着時に鉛遮蔽蓋体41bの内面上に積層された銅からなる銅遮蔽蓋体(SH(Cu))42bと、この銅遮蔽蓋体42bに対して着脱可能であって、装着時に銅遮蔽蓋体42bの内面上に積層されたアクリルなどの樹脂材からなる樹脂遮蔽蓋体(SH(R))43bとを備えて構成されている。
【0021】
なお、筐体31aは、放射線検出器5のクライオスタット21が配置される第1貫通孔44を備え、この第1貫通孔44の一部(開口部31c側の部分)および開口部31cの一部を成す部分が筐体31aの本体に対して着脱可能な第1プラグ部45となっている。
さらに、筐体31aには、ホース23が接続されてデュワー22から気体の窒素が筐体31a内部に供給される置換用貫通孔46が形成されている。
【0022】
第2遮蔽体32は、開口した箱型の筐体32aと、筐体32aの開口部32cを閉塞可能な蓋体32bとを備えて構成されている。
筐体32aは、タングステンとタングステン合金とタングステン含有物とのうち何れか1つからなるタングステン遮蔽筐体(SH(W))51aと、このタングステン遮蔽筐体51aに対して着脱可能であって、装着時にタングステン遮蔽筐体51aの内面を被覆する銅からなる銅遮蔽筐体(SH(Cu))52aと、この銅遮蔽筐体52aに対して着脱可能であって、装着時に銅遮蔽筐体52aの内面を被覆するアクリルなどの樹脂材からなる樹脂遮蔽筐体(SH(R))53aとを備えて構成されている。
【0023】
また、蓋体32bは、タングステンとタングステン合金とタングステン含有物とのうち何れか1つからなるタングステン遮蔽蓋体(SH(W))51bと、このタングステン遮蔽蓋体51bに対して着脱可能であって、装着時にタングステン遮蔽蓋体51bの内面上に積層された銅からなる銅遮蔽蓋体(SH(Cu))52bと、この銅遮蔽蓋体52bに対して着脱可能であって、装着時に銅遮蔽蓋体52bの内面上に積層されたアクリルなどの樹脂材からなる樹脂遮蔽蓋体(SH(R))53bとを備えて構成されている。
【0024】
なお、筐体32aは、放射線検出器5のクライオスタット21が配置される第2貫通孔54を備え、この第2貫通孔54の一部(開口部32c側の部分)および開口部32cの一部を成す部分が筐体32aの本体に対して着脱可能な第2プラグ部55となっている。
さらに、筐体32aには、第1遮蔽体31の内部に連通して、デュワー22から気体の窒素が筐体32a内部に供給される置換用貫通孔56が形成されている。
【0025】
そして、第1遮蔽体31の第1貫通孔44と第2遮蔽体32の第2貫通孔54とは、内径が同一であり、第1遮蔽体31内部に第2遮蔽体32が収容された状態で第1および第2貫通孔44,54同士が同軸に連通可能となっている。
これにより、第1および第2貫通孔44,54に放射線検出器5のクライオスタット21が配置される際には、先ず、第1遮蔽体31内部に第2遮蔽体32が収容され、第1および第2貫通孔44,54同士が同軸に連通するように配置される。そして、各蓋体31b,32bによる各筐体31a,32aの各開口部31c,32cの閉塞が解除され、各プラグ部45,55が各筐体31a,32aの本体から取り外される。そして、各プラグ部45,55が取り外されたことによって生成された各筐体31a,32aの欠損部分に放射線検出器5のクライオスタット21が挿入される。そして、各プラグ部45,55が各筐体31a,32aの本体に装着されることにより、各プラグ部45,55および各筐体31a,32aの本体により形成される各貫通孔44,54に放射線検出器5のクライオスタット21(例えば、エンドキャップハウジング21a)が配置される。
これにより、放射線検出器5を放射線から遮蔽する鉛からなる鉛遮蔽体(つまり、鉛遮蔽筐体(SH(Pb))41a、鉛遮蔽蓋体(SH(Pb))41b)と放射線検出器5との間に、タングステンとタングステン合金とタングステン含有物とのうち何れか1つからなるタングステン遮蔽体(つまり、タングステン遮蔽筐体(SH(W))51a、タングステン遮蔽蓋体(SH(W))51b)が配置される。
【0026】
なお、銅からなる各遮蔽体(例えば、銅遮蔽筐体(SH(Cu))42a,52aおよび銅遮蔽蓋体(SH(Cu))42b,52b)は、銅と錫と銀とカドミウムとのうち少なくとも何れか1つを含有する遮蔽体であってもよい。
【0027】
上述したように、本実施の形態による放射線遮蔽体10および放射線測定装置1および放射線検出器5の遮蔽方法によれば、鉛遮蔽体(つまり、鉛遮蔽筐体(SH(Pb))41a、鉛遮蔽蓋体(SH(Pb))41b)と放射線検出器5との間に、タングステン遮蔽体(つまり、タングステン遮蔽筐体(SH(W))51a、タングステン遮蔽蓋体(SH(W))51b)を配置することにより、放射線検出器5のバックグラウンド計数を適正に低減する際の費用の増大を抑制することができる。例えば図3に示すように、鉛遮蔽体に放射性同位元素である210Pbが含まれる場合であっても、この鉛遮蔽体のみで放射線検出器5を遮蔽する比較例に比べて、この鉛遮蔽体の内部遮蔽としてタングステン遮蔽体を用いて放射線検出器5を遮蔽する実施例では、210Pbおよび鉛のKαX線などの寄与が大きい低エネルギー領域(例えば、500keV以下の領域など)において、放射線検出器5のバックグラウンド計数を適正に低減することができる。つまり、自然界から得られるタングステンには放射性同位元素が少なく、放射線の遮蔽に有用なタングステンの入手が容易であり、タングステンは原子番号が大きくかつ密度が高いことで放射線に対する遮蔽効果が高く、鉛遮蔽体の内部遮蔽としてタングステン遮蔽体を用いることで、鉛遮蔽体に必要とされる鉛の量を低減することができ、放射線遮蔽体10の構成に要する費用を削減することができる。
【0028】
さらに、銅と錫と銀とカドミウムとのうち少なくとも何れか1つを含有する遮蔽体(例えば、銅遮蔽筐体(SH(Cu))42a,52aおよび銅遮蔽蓋体(SH(Cu))42b,52b)を、鉛遮蔽体あるいはタングステン遮蔽体に対する内部遮蔽体とすることにより、ミュオンやγ線などで励起された鉛あるいはタングステンのKαX線などの寄与が大きい低エネルギー領域(例えば、500keV以下の領域など)において、放射線検出器5のバックグラウンド計数を低減することができる。
しかも、第1遮蔽体31と第2遮蔽体32とのそれぞれにおいて、放射線検出器5に近接するほど各遮蔽筐体41a〜43a,51a〜53aおよび各遮蔽蓋体41b〜43b,51b〜53bを構成する材質の原子番号が小さくなるようにして、各遮蔽筐体41a〜43a,51a〜53aおよび各遮蔽蓋体41b〜43b,51b〜53bが配置されることから、放射線検出器5のバックグラウンド計数を低減する際の遮蔽効果を最大限に高めることができる。
【0029】
また、第1遮蔽体31と第2遮蔽体32とのそれぞれにおいて、最も内部側に配置される各樹脂遮蔽筐体43a,53aおよび各樹脂遮蔽蓋体43b,53bは、着脱可能であることから、第1遮蔽体31の内部あるいは第2遮蔽体32の内部が汚染した場合であっても、各樹脂遮蔽筐体43a,53aおよび各樹脂遮蔽蓋体43b,53bを交換するだけで済み、鉛や銅やタングステンからなる遮蔽体を交換する必要無しに、除染に要する費用が増大することを防止することができる。
【0030】
さらに、鉛遮蔽体(つまり、鉛遮蔽筐体(SH(Pb))41a、鉛遮蔽蓋体(SH(Pb))41b)を有する第1遮蔽体31に対して、タングステン遮蔽体(つまり、タングステン遮蔽筐体(SH(W))51a、タングステン遮蔽蓋体(SH(W))51b)を有する第2遮蔽体32を、第1遮蔽体31内部に取り出し可能に収容される構成としたことから、第1遮蔽体31が既存である場合においては、第2遮蔽体32のみを追加すればよく、放射線遮蔽体10の構成に要する費用を削減することができる。
【0031】
なお、上述した実施の形態において、放射線測定装置1は波高分析装置4を備えるとしたが、これに限定されず、例えば放射線検出器5で検出された放射線に起因する電気信号が入力され、この電気信号を変換して、電圧信号、パルス信号、電圧値、計数値、計数率などの値を出力する装置を備えてもよい。
【0032】
なお、上述した実施の形態においては、例えば図4(A)に示す第1変形例のように、第2遮蔽体32の樹脂遮蔽筐体(SH(R))53aおよび樹脂遮蔽蓋体(SH(R))53bが省略されてもよい。
また、上述した実施の形態においては、例えば図4(B)に示す第2変形例のように、第2遮蔽体32の銅遮蔽筐体(SH(Cu))52aおよび銅遮蔽蓋体(SH(Cu))52bおよび樹脂遮蔽筐体(SH(R))53aおよび樹脂遮蔽蓋体(SH(R))53bが省略されてもよい。
【0033】
また、上述した実施の形態においては、例えば図4(C)に示す第3変形例のように、第1遮蔽体31の銅遮蔽筐体(SH(Cu))42aおよび銅遮蔽蓋体(SH(Cu))42bおよび樹脂遮蔽筐体(SH(R))43aおよび樹脂遮蔽蓋体(SH(R))43bが省略されてもよい。
また、上述した実施の形態においては、例えば図4(D)に示す第4変形例のように、第1遮蔽体31の銅遮蔽筐体(SH(Cu))42aおよび銅遮蔽蓋体(SH(Cu))42bおよび樹脂遮蔽筐体(SH(R))43aおよび樹脂遮蔽蓋体(SH(R))43bと、第2遮蔽体32の樹脂遮蔽筐体(SH(R))53aおよび樹脂遮蔽蓋体(SH(R))53bとが省略されてもよい。
【0034】
また、上述した実施の形態においては、例えば図4(E)に示す第5変形例のように、第1遮蔽体31の銅遮蔽筐体(SH(Cu))42aおよび銅遮蔽蓋体(SH(Cu))42bおよび樹脂遮蔽筐体(SH(R))43aおよび樹脂遮蔽蓋体(SH(R))43bと、第2遮蔽体32の銅遮蔽筐体(SH(Cu))52aおよび銅遮蔽蓋体(SH(Cu))52bおよび樹脂遮蔽筐体(SH(R))53aおよび樹脂遮蔽蓋体(SH(R))53bとが省略されてもよい。
【0035】
また、上述した実施の形態および第1変形例および第2変形例において、樹脂遮蔽筐体(SH(R))43aおよび樹脂遮蔽蓋体(SH(R))43bは省略されてもよい。
【0036】
なお、上述した実施の形態においては、例えば図5,図6に示す第6変形例のように、放射線遮蔽体10は、例えば箱型の遮蔽体61のみを備えて構成されてもよい。
この遮蔽体61は、開口した箱型の筐体61aと、筐体61aの開口部61cを閉塞可能な蓋体61bとを備えて構成されている。
筐体61aは、鉛からなる鉛遮蔽筐体(SH(Pb))71aと、この鉛遮蔽筐体71aに対して着脱可能であって、装着時に鉛遮蔽筐体71aの内面を被覆するタングステンとタングステン合金とタングステン含有物とのうち何れか1つからなるタングステン遮蔽筐体(SH(W))72aと、このタングステン遮蔽筐体72aに対して着脱可能であって、装着時にタングステン遮蔽筐体72aの内面を被覆する銅からなる銅遮蔽筐体(SH(Cu))73aと、この銅遮蔽筐体73aに対して着脱可能であって、装着時に銅遮蔽筐体73aの内面を被覆するアクリルなどの樹脂材からなる樹脂遮蔽筐体(SH(R))74aとを備えて構成されている。
【0037】
また、蓋体61bは、鉛からなる鉛遮蔽蓋体(SH(Pb))71bと、この鉛遮蔽蓋体71bに対して着脱可能であって、装着時に鉛遮蔽蓋体71bの内面上に積層されたタングステンとタングステン合金とタングステン含有物とのうち何れか1つからなるタングステン遮蔽蓋体(SH(W))72bと、このタングステン遮蔽蓋体72bに対して着脱可能であって、装着時にタングステン遮蔽蓋体72bの内面上に積層された銅からなる銅遮蔽蓋体(SH(Cu))73bと、この銅遮蔽蓋体73bに対して着脱可能であって、装着時に銅遮蔽蓋体73bの内面上に積層されたアクリルなどの樹脂材からなる樹脂遮蔽蓋体(SH(R))74bとを備えて構成されている。
【0038】
なお、筐体61aは、放射線検出器5のクライオスタット21が配置される貫通孔75を備え、この貫通孔75の一部(開口部61c側の部分)および開口部61cの一部を成す部分が筐体61aの本体に対して着脱可能なプラグ部76となっている。
そして、貫通孔75に放射線検出器5のクライオスタット21が配置される際には、先ず、蓋体61bによる筐体61aの開口部61cの閉塞が解除され、プラグ部76が筐体61aの本体から取り外される。そして、プラグ部76が取り外されたことによって生成された筐体61aの欠損部分に放射線検出器5のクライオスタット21が挿入される。そして、プラグ部76が筐体61aの本体に装着されることにより、プラグ部76および筐体61aの本体により形成される貫通孔75に放射線検出器5のクライオスタット21が配置される。
これにより、放射線検出器5を放射線から遮蔽する鉛からなる鉛遮蔽体(つまり、鉛遮蔽筐体(SH(Pb))71a、鉛遮蔽蓋体(SH(Pb))71b)と放射線検出器5との間に、タングステンとタングステン合金とタングステン含有物とのうち何れか1つからなるタングステン遮蔽体(つまり、タングステン遮蔽筐体(SH(W))72a、タングステン遮蔽蓋体(SH(W))72b)が配置される。
【0039】
なお、筐体61aには、ホース23が接続されてデュワー22から気体の窒素が筐体61a内部に供給される置換用貫通孔77が形成されている。
また、銅からなる各遮蔽体(例えば、銅遮蔽筐体(SH(Cu))73aおよび銅遮蔽蓋体(SH(Cu))73b)は、銅と錫と銀とカドミウムとのうち少なくとも何れか1つを含有する遮蔽体であってもよい。
【0040】
なお、上述した実施の形態の第6変形例においては、例えば図7(A)に示す第7変形例のように、遮蔽体61の樹脂遮蔽筐体(SH(R))74aおよび樹脂遮蔽蓋体(SH(R))74bが省略されてもよい。
また、上述した実施の形態の変形例においては、例えば図7(B)に示す第8変形例のように、遮蔽体61の銅遮蔽筐体(SH(Cu))73aおよび銅遮蔽蓋体(SH(Cu))73bおよび樹脂遮蔽筐体(SH(R))74aおよび樹脂遮蔽蓋体(SH(R))74bが省略されてもよい。
【0041】
また、上述した実施の形態においては、例えば図7(C)に示す第9変形例のように、遮蔽体61のタングステン遮蔽筐体(SH(W))72a、タングステン遮蔽蓋体(SH(W))72bが最も内部側に配置されてもよい。この場合には、例えば鉛遮蔽体(例えば、鉛遮蔽筐体(SH(Pb))71aおよび鉛遮蔽蓋体(SH(Pb))71b)の内部遮蔽として銅遮蔽体(銅遮蔽筐体(SH(Cu))73aおよび銅遮蔽蓋体(SH(Cu))73b)および樹脂遮蔽体(樹脂遮蔽筐体(SH(R))74aおよび樹脂遮蔽蓋体(SH(R))74b)を有する既存の放射線遮蔽体に対して、タングステン遮蔽体(タングステン遮蔽筐体(SH(W))72a、タングステン遮蔽蓋体(SH(W))72b)のみを追加すればよく、放射線遮蔽体10の構成に要する費用を削減することができる。
また、この第9変形例において、樹脂遮蔽筐体(SH(R))74aおよび樹脂遮蔽蓋体(SH(R))74bが省略されてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 放射線測定装置
5 放射線検出器
10 放射線検出装置
41a,71a 鉛遮蔽筐体(鉛遮蔽体)
41b,71b 鉛遮蔽蓋体(鉛遮蔽体)
42a,52a,73a 銅遮蔽筐体(銅遮蔽体)
42b,52b,73b 銅遮蔽蓋体(銅遮蔽体)
51a,72a タングステン遮蔽筐体(タングステン遮蔽体)
51b,72b タングステン遮蔽蓋体(タングステン遮蔽体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮蔽対象物を放射線から遮蔽する放射線遮蔽体であって、
鉛からなる鉛遮蔽体と、
該鉛遮蔽体と前記遮蔽対象物との間に配置され、かつ銅と錫と銀とカドミウムとのうち少なくとも何れか1つを含有する遮蔽体と、
前記鉛遮蔽体と前記遮蔽対象物との間に配置され、かつタングステンとタングステン合金とタングステン含有物とのうち何れか1つからなるタングステン遮蔽体と
を備えることを特徴とする放射線遮蔽体。
【請求項2】
放射線検出器と、該放射線検出器を放射線から遮蔽する遮蔽体とを備える放射線測定装置であって、
前記遮蔽体は、
鉛からなる鉛遮蔽体と、
該鉛遮蔽体と前記放射線検出器との間に配置され、かつタングステンとタングステン合金とタングステン含有物とのうち何れか1つからなるタングステン遮蔽体と
を備えることを特徴とする放射線測定装置。
【請求項3】
放射線検出器を放射線から遮蔽する鉛からなる鉛遮蔽体と前記放射線検出器との間に、タングステンとタングステン合金とタングステン含有物とのうち何れか1つからなるタングステン遮蔽体を配置することを特徴とする放射線検出器の遮蔽方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−75464(P2011−75464A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228968(P2009−228968)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(710002462)セイコー・イージーアンドジー株式会社 (7)
【Fターム(参考)】