説明

放射線遮蔽用プレキャストブロック、放射線遮蔽構造体及びその構築方法

【課題】 比較的狭小なスペースにおいても、組立時及び解体時における施工が容易であり、かつ、解体後も廃棄物を発生させることなく再使用が可能であり、破損しにくい、放射線遮蔽用プレキャストブロック、及び該ブロックからなる放射線遮蔽構造体を提供する。
【解決手段】放射線遮蔽用プレキャストブロック1は、外枠となる金属枠2内に、ホウ素化合物と骨材と樹脂バインダーとを含むレジン層3と、コンクリート層4とを形成してなる。放射線遮蔽構造体は、中性子等の放射線を吸収または減速させるための構造体であって、複数の放射線遮蔽用プレキャストブロック1を積層し連結してなる側壁部と、この側壁部の上部に、複数の放射線遮蔽用プレキャストブロック1を水平方向に並列に連結してなる天井部とからなる。側壁部と天井部によって、放射線発生源を有する内部空間を囲んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性子線等の放射線を発生する放射線源の周囲に、放射線遮蔽構造体を構築するための放射線遮蔽用プレキャストブロック、放射線遮蔽構造体及びその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子力関連施設等においては、放射線源の周囲に、鉄筋コンクリート製の放射線遮蔽構造体を構築している。また、近年、高エネルギー・高密度の中性子を発生する加速器等を取り扱う医療施設、研究施設等の数が増加しつつある。
このような原子力関連施設、医療施設、研究施設等において、従来の鉄筋コンクリート製の放射線遮蔽構造体を用いると、鉄筋コンクリート中に含まれる鉄、マンガン、コバルト等が、放射線源から発生した中性子によって核破壊され、放射性同位元素となって、放射線遮蔽構造体が放射化する。
原子力関連施設において放射線遮蔽構造体が高レベルに放射化されると、施設で作業する際に、放射線遮蔽構造体を構成する鉄筋コンクリートからも放射線が照射されて、作業員が被爆するおそれがある。また、施設を解体した場合に、多量の鉄筋及びコンクリートが放射性廃棄物となり、廃棄物処理のコストも高額となる。
また、加速器等を取り扱う医療施設や研究施設は、原子力関連施設と比べて狭小なスペースである場合が多く、このような施設においては、放射線源(例えば、加速器)の周囲に、コンクリートの打設等の作業を必要とせずに簡易かつ迅速に構築することができる放射線遮蔽構造体の設置の要望が高まっている。
【0003】
近年、加速器等の放射線源から中性子が照射されても放射化されず、中性子やγ線等に対して、吸収及び遮蔽効果の高い、遮蔽材の開発が進められている。
中性子に対して吸収及び遮蔽効果の高い遮蔽材として、原子量の小さい原子(例えば、水素、ホウ素等)を特定の濃度で含有した樹脂等からなる遮蔽材が好適であることが知られている。
例えば、特許文献1には、特定の水素原子密度を有する硬化性樹脂原料、原子番号が22以上の重金属、及びホウ素を含む化合物からなる熱中性子吸収材よりなる放射線遮蔽材組成物が提案されている。この放射線遮蔽材組成物を硬化させて得られた硬化物又は注型材は、中性子やγ線等の放射線を吸収及び遮蔽する遮蔽材として使用することができる。
【0004】
しかし、特許文献1の放射線遮蔽材組成物を硬化させて得られた硬化物からなる遮蔽材(例えば、パネル等)は、その厚さが6〜10cm程度と比較的薄いものであり、この遮蔽材単独では、強度的に弱いことから、補強のために、遮蔽材を支持体となる各種金属、各種合金、各種コンクリート等に固定させて使用している。
例えば、特許文献2には、放射線遮蔽構造体を構成する部材として、低放射化合金と中性子吸収材(成形パネル)が積層された2層構造体が記載されている。特許文献2には、放射線遮蔽構造体を構築する現場において、放射線源の周囲に鉄筋を配筋し、この鉄筋の一方の側に、低放射化合金と中性子吸収材(成形パネル)が積層された2層構造体を、型枠として配設し、次いで、鉄筋の他方の側に鉄板を型枠として配設し、その後、2層構造体と鉄板との間にコンクリートを打設して構築した放射線遮蔽構造体が記載されている。
【特許文献1】特開2003−255081号公報
【特許文献2】特公平6−77067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2の放射線遮蔽構造体は、現場で型枠を組み立て、コンクリートを打設して、低放射化合金と中性子吸収材からなる2層構造体と、支持体となるコンクリートを接合しているため、施工に時間がかかる。また、現場で打設したコンクリートからなる構造体の壁面に、例えば、特許文献1の放射線遮蔽材組成物を硬化させて得られた板状の硬化物(パネル)を接続して、放射線遮蔽構造体を構築する場合は、コンクリートに1枚ずつ板状の硬化物(パネル)をアンカー等で接続しなければならず、やはり施工に時間がかかる。
また、医療施設や研究施設等においては、一般にスペースが狭小であるため、加速器等の放射線源が設置された屋内に、コンクリート製の放射線遮蔽構造体を構築しようとしても、コンクリートの打設等の作業が困難なことがある。
一方、放射線源を使用する施設等の解体時には、放射線遮蔽構造体として放射線源の周囲に打設したコンクリートを破壊しなければならず、解体が困難であり、破壊したコンクリートを廃棄物として処理しなければならない。
また、特許文献1の放射線遮蔽材組成物を硬化させて得られた板状等の硬化物(パネル)は、該硬化物(パネル)を収容するための外枠等を有しない場合、運搬時や作業時に割れや欠け等の破損や変形を生じやすい。
そこで、本発明は、比較的狭小なスペースにおいても、組立時及び解体時における施工が容易であり、かつ、解体後も廃棄物を発生させることなく再使用が可能であり、破損しにくい、放射線遮蔽用プレキャストブロック、放射線遮蔽構造体及びその構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、外枠となる金属枠内に、特定の材料からなるレジン層とコンクリート層とを形成してなる放射線遮蔽用プレキャストブロックを用いることにより、中性子及びγ線等の放射線に対して優れた吸収及び遮蔽効果を発揮するとともに、破損しにくく、比較的狭小なスペースにおいても放射線遮蔽構造体を構築することができ、該放射線遮蔽構造体の施工が容易であり、かつ、解体後も再使用が可能となることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[11]を提供するものである。
【0007】
[1] 放射線遮蔽構造体を構築するための放射線遮蔽用プレキャストブロックであって、外枠となる金属枠内に、ホウ素化合物と骨材と樹脂バインダーとを含むレジン層と、コンクリート層とを形成してなることを特徴とする放射線遮蔽用プレキャストブロック。
[2] 上記骨材がポリオレフィン系樹脂ビーズである上記[1]記載の放射線遮蔽用プレキャストブロック。
[3] 上記ポリオレフィン系樹脂ビーズを構成するポリオレフィン系樹脂は、密度が0.9〜1.0g/cmであり、水素原子の含有率が10〜15質量%である上記[2]記載の放射線遮蔽用プレキャストブロック。
[4] 上記骨材の粒径が1〜5mmであることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載の放射線遮蔽用プレキャストブロック。
[5] 上記レジン層の密度が0.9g/cm以上である上記[1]〜[4]のいずれかに記載の放射線遮蔽用プレキャストブロック。
[6] 上記レジン層中のホウ素原子の含有率が5〜30質量%である上記[1]〜[5]のいずれかに記載の放射線遮蔽用プレキャストブロック。
[7] 上記レジン層の層厚が5cm以上である上記[1]〜[6]のいずれかに記載の放射線遮蔽用プレキャストブロック。
[8] 上記放射線遮蔽用プレキャストブロック同士を迷宮構造で連結させるための、上記放射線遮蔽用プレキャストブロック同士が嵌合することのできる凹凸部を設けた上記[1]〜[7]のいずれかに記載の放射線遮蔽用プレキャストブロック。
[9] 放射線遮蔽構造体を構築するための放射線遮蔽用プレキャストブロックの製造方法であって、
(a)ホウ素化合物10〜50質量%と、ポリオレフィン系樹脂ビーズ40〜70質量%と、樹脂バインダー5〜30質量%とを混練した混練物を、外枠となる金属枠内に流し込み硬化させて、上記金属枠に一体化するレジン層を形成する工程と、
(b)上記金属枠内にコンクリートを打設し硬化させて、上記金属枠に一体化するコンクリート層を形成する工程を含むことを特徴とする放射線遮蔽用プレキャストブロックの製造方法。
[10] 前記[1]〜[8]のいずれかに記載の放射線遮蔽用プレキャストブロックを用いて構築した、放射線を吸収及び遮蔽するための放射線遮蔽構造体であって、
複数の上記放射線遮蔽用プレキャストブロックを積層し連結してなる側壁部、及び/又は、複数の上記放射線遮蔽用プレキャストブロックを並列に連結してなる側壁部と、
上記側壁部の上部に、複数の上記放射線遮蔽用プレキャストブロックを水平方向に並列に連結してなる天井部とからなり、
上記側壁部と上記天井部により、内部空間を形成してなることを特徴とする放射線遮蔽構造体。
[11] 前記[1]〜[8]のいずれかに記載の放射線遮蔽用プレキャストブロックを用いた放射線遮蔽構造体の構築方法であって、
(A)複数の上記放射線遮蔽用プレキャストブロックを積層し連結して又は並列に配置し連結して、側壁部を形成する側壁部形成工程と、
(B)上記側壁部を構成する放射線遮蔽用プレキャストブロックの上部に、複数の上記放射線遮蔽用プレキャストブロックを水平方向に並列に配置し連結して、天井部を形成する天井部形成工程を含むことを特徴とする放射線遮蔽構造体の構築方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、現場でコンクリートを打設したり、コンクリート体に中性子吸収材等からなるパネルを積層させるといった作業を行なう必要がなく、原子力関連施設ばかりか、加速器等を取り扱う医療施設や研究施設等の比較的狭小なスペースにおいても、本発明の放射線遮蔽用プレキャストブロック同士を連結させることによって、容易に、放射線源の周囲に、中性子、γ線等の放射線を遮蔽するための放射線遮蔽構造体を構築することができる。また、放射線源を使用する施設等の解体時においても、打設したコンクリート等を破壊することなく、放射線遮蔽用プレキャストブロック同士の連結を外すことにより、容易に放射線遮蔽構造体を解体することができ、この際に廃棄物が発生することもない。また、解体後の放射線遮蔽用プレキャストブロックは、他の施設等で再使用することも可能である。
本発明の放射線遮蔽用プレキャストブロックは、外枠となる金属枠によって、レジン層とコンクリート層が保護されるため、破損しにくい。また、外枠となる金属枠内で、レジン層とコンクリート層を形成することができるため、製造も容易である。
【0009】
本発明の放射線遮蔽構造体は、レジン層及びコンクリート層を含む放射線遮蔽用プレキャストブロックを用いて構築しているため、中性子やγ線等の放射線に対して、レジン層が優れた吸収及び遮蔽効果を発揮し、コンクリート層が中性子やγ線等の放射線に対して、優れた減速及び遮蔽効果を発揮する。
さらに、本発明の放射線遮蔽構造体の構築方法は、現場で、既製の放射線遮蔽用プレキャストブロックを積層し連結して、及び/又は、並列に配置して連結することによって、放射線遮蔽構造体を構築できるため、施工が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の放射線遮蔽用プレキャストブロックを図面に基づき詳細に説明する。
図1及び図2は、本発明の放射線遮蔽用プレキャストブロックの実施形態の一例を示す断面図である。図1に示すように、本発明の放射線遮蔽用プレキャストブロック1は、外枠となる金属枠2内に、ホウ素化合物と骨材と樹脂バインダーとを含むレジン層3と、コンクリート層4とを形成してなるものである。図2に示すように、レジン層3とコンクリート層4の間には、レジン層3とコンクリート層4が互いに接触しないように、必要に応じて金属板6又は合成樹脂製等のフィルムやシート等のシート状物を介在させてもよい。なお、コンクリート層4中には、鉄筋7を配筋することが好ましい。
【0011】
放射線遮蔽用プレキャストブロックのレジン層は、ホウ素化合物と骨材と樹脂バインダーとを含む。
レジン層を構成するホウ素化合物としては、ホウ酸、酸化ホウ素、炭化ホウ素、窒化ホウ素等が挙げられる。これらのホウ素化合物は、好ましくは粉末状のものを用いる。
ホウ素化合物の平均粒径は、好ましくは1.0mm以下であり、より好ましくは0.05〜1.0mmである。該平均粒径が1.0mmを超えると、骨材との混合効率が悪くなり、レジン層を所定の密度に形成することが困難となる場合がある。また、該平均粒径が0.05mm未満では、樹脂バインダーとの混合効率が悪くなり、レジン層を所定の密度に形成することが困難となる場合がある。
レジン層中のホウ素原子の含有率は、好ましくは5〜30質量%である。ホウ素原子の含有率は大きい方が好ましいが、レジン層の水素原子の含有率を考慮すれば、レジン層中のホウ素原子の含有率は、より好ましくは5〜15質量%である。放射線源から放出される中性子を減速又は吸収させるには、水素及びホウ素が効果的な原子であるため、レジン層中のホウ素原子の含有率が5〜30質量%であると、レジン層に十分に水素原子を含有させることができ、中性子を効果的に吸収及び遮蔽できるため好ましい。
【0012】
レジン層を構成する骨材としては、ポリオレフィン系樹脂ビーズ(顆粒状のポリオレフィン系樹脂)を用いることが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂ビーズを構成するポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂の密度は、高い方が、水素原子の濃度が大きくなるので、中性子の減速及び遮蔽効果を高めることができるため好ましい。ポリオレフィン系樹脂の密度は、好ましくは0.90〜1.00g/cmであり、より好ましくは0.95〜1.00g/cmである。
また、ポリオレフィン系樹脂の水素原子の含有率は、大きい方が、中性子の減速及び遮蔽効果が高めることができるため好ましい。ポリオレフィン系樹脂の水素原子の含有率は、好ましくは10.0〜15.0質量%、より好ましくは13.0〜15.0質量%である。
ポリオレフィン系樹脂ビーズを構成するポリオレフィン系樹脂としては、密度が高く、水素原子の含有率の大きい高密度ポリエチレンを好適に使用することができる。
骨材の平均粒径は、好ましくは1〜5mmであり、より好ましくは2〜4mmである。
骨材の平均粒径が1〜5mmであると、該骨材と粉末のホウ素化合物との混合効率もよく、密度の高いレジン層を得ることができる。
【0013】
レジン層を構成する樹脂バインダーとしては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーンゴム、合成ゴム等からなる液状の樹脂バインダーが挙げられる。中でも、エポキシ樹脂は、結合力が強く、レジン層の機械的強度を高めることができるので、好適に使用することができる。
液状の樹脂バインダーの粘度は、好ましくは5000mPa・s以下であり、より好ましくは2000mPa・s以下である。
樹脂バインダーの粘度が5000mPa・s以下のものであると、レジン層を構成するホウ素化合物と骨材と樹脂バインダーとを十分に混練することができ、金属枠に流し込みやすく、レジン層の形成時の作業性が向上する。
【0014】
レジン層の密度は、中性子等の吸収及び遮蔽効果を高める観点から、0.9g/cm以上であることが好ましい。
また、レジン層の層厚も、中性子等の吸収及び遮蔽効果を高める観点から、5cm以上であることが好ましい。
【0015】
コンクリート層を構成するコンクリートとしては、普通コンクリート、重量コンクリート等が挙げられる。
また、コンクリート層は、機械的強度や耐久性等を向上する観点から、コンクリートに鉄筋を配筋してなるものや、繊維補強コンクリートを用いることが好ましい。
コンクリート層の層厚は、特に限定されないが、レジン層の層厚と同一又はレジン層の層厚よりも大きいことが好ましい。
【0016】
レジン層とコンクリート層の間には、必要に応じて、レジン層の表面とコンクリート層の表面が互いに非接触となるように、鉄製、ステンレス製等の金属板や、合成樹脂製のフィルムまたはシート(例えば、ビニールシート)や、シール材(例えば、室温で硬化可能な合成樹脂組成物からなるもの)を塗布して形成されるシール層等(以下、これらを中間層と総称することがある。)を介在させることができる。なお、金属板等の中間層形成部材と、レジン層及びコンクリート層の間には、接着剤層を介在させることができる。
レジン層とコンクリート層の間に、金属板等からなる中間層を介在させることによって、レジン層中の水分がコンクリート層に移行することがなく、コンクリート層のアルカリ骨材反応やホウ素化合物による劣化が生じにくくなる。また、コンクリート層中のアルカリイオン等がレジン層に移行することがなく、レジン層の劣化も生じにくくなる。
なお、金属板等からなる中間層の厚さは、特に限定されない。
【0017】
本発明の放射線遮蔽用プレキャストブロックの外枠となる、金属枠としては、鉄製、ステンレス製等のものが挙げられる。
レジン層及びコンクリート層の保護や、価格等の観点から、鉄製の金属枠を使用することが好ましい。
金属枠の厚さは、レジン層及びコンクリート層を保護する観点から、少なくとも4mm以上であることが好ましい。
図1に示すように、金属枠2は、平板状の底部2aと、該底部の周囲に立設した側壁部2bとからなる、有底の容器状のものである。金属枠2の開口部2cには、金属枠2内にレジン層3とコンクリート層4を形成した後、蓋体を設けてもよく、蓋体を設けることなく、開口したまま用いてもよい。なお、側壁部2bの開口部2c側の縁には、凸部2d及び凹部2eが形成されている。また、図1中の符号2cは開口部を示す。
【0018】
図3に示すように、金属枠2としては、底部2aの厚さが、例えば、レジン層2の層厚と同一のものや、レジン層2の層厚よりも大きいもの(例えば、金属枠2の底部2aの厚さが30cmのもの)を用いることもできる。鉄等の金属枠自体にも、中性子やγ線等の放射線に対して、遮蔽効果があるため、金属枠2の底部2aの厚さが、レジン層の層厚と同一又はそれよりも大きいものであると、放射線遮蔽用プレキャストブロック1は、金属枠2の底部2a、レジン層3及びコンクリート層4からなる三層構造によって、中性子やγ線等の放射線に対して、優れた吸収、減速及び遮蔽効果を発揮する。また、図4に示すように、放射線遮蔽用プレキャストブロック1は、金属枠2の底部2a、コンクリート層4及びレジン層3の順序で積層された三層構造であってもよい。
金属枠2は、その内側にレジン層やコンクリート層を形成させる際には、打設用の型枠として機能し、また、レジン層やコンクリート層を硬化させて、金属枠と一体化させた後には、レジン層とコンクリート層を保護するための外枠として機能する。
【0019】
次に、本発明の放射線遮蔽用プレキャストブロックの製造方法について説明する。
本発明の放射線遮蔽用プレキャストブロックの製造方法は、(a)ホウ素化合物10〜50質量%と、ポリオレフィン系樹脂ビーズ40〜70質量%と、樹脂バインダー5〜30質量%とを混練した混練物を、外枠となる金属枠内に流し込み硬化させて、金属枠に一体化するレジン層を形成する工程と、(b)金属枠内にコンクリートを打設し硬化させて、金属枠に一体化するコンクリート層を形成する工程を含む。
なお、本発明において、(a)レジン層を形成する工程と(b)コンクリート層を形成する工程は、先に、(a)レジン層を形成する工程を行い、その後に、(b)コンクリート層を形成する工程を行ってもよく、その逆であってもよい。また、(a)レジン層を形成する工程と、(b)コンクリート層を形成する工程を交互に複数回行い、金属枠の中に、レジン層とコンクリート層を交互に複数層形成してもよい。この場合は、レジン層とコンクリート層を同一数積層するのではなく、レジン層とコンクリート層とレジン層、または、コンクリート層とレジン層とコンクリート層のように、必要に応じて、一方の層の数を増やしてもよい。
【0020】
[(a)レジン層形成工程]
本工程は、(a)ホウ素化合物10〜50質量%と、ポリオレフィン系樹脂ビーズ40〜70質量%と、樹脂バインダー5〜30質量%とを混練した混練物を、外枠となる金属枠内に流し込み硬化させて、金属枠に一体化するレジン層を形成する工程である。
レジン層を形成するホウ素化合物の配合量が10質量%未満であると、中性子の吸収及び遮蔽効果が低下する場合があり、該配合量が50質量%を超えると、レジン層の水素原子の含有率が減少し、中性子の減速及び遮蔽効果が低下する場合がある。
レジン層を形成するポリオレフィン系樹脂ビーズの配合量が40質量%未満であるとレジン層の水素原子の含有率が減少し、中性子の減速及び遮蔽効果が低下する場合があり、該配合量が70質量%を超えると、レジン層のホウ素原子の含有率が減少し、中性子の吸収効果が低下する場合がある。
レジン層を形成する樹脂バインダーの配合量が5質量%未満であると、ホウ素化合物及び骨材を混合する際、混合効率が悪く、レジン層を所定の密度に形成することが困難になる場合がある。該配合量が30質量%を超えると、レジン層の水素原子及びホウ素原子の含有率が減少し、中性子の遮蔽効果が低下する場合がある。
本発明において、ホウ素化合物とオレフィン系樹脂ビーズと樹脂バインダーの混練方法は、特に限定されるものではない。また、混練に用いる装置も特に限定されるものではなく、オムニミキサ、パン型ミキサ、二軸練りミキサ、傾胴ミキサ等の慣用のミキサを使用することができる。
なお、樹脂バインダーは、一液タイプのもの、二液タイプのものの、いずれも使用できる。
【0021】
[(b)コンクリート層形成工程]
本工程は、(b)金属枠内にコンクリートを打設し硬化させて、金属枠に一体化するコンクリート層を形成する工程である。
先に(a)レジン層形成工程を行った場合は、レジン層の上(必要に応じて金属板等からなる中間層を設けた場合は、該中間層の上)にコンクリートを打設し硬化させて、金属枠と一体化させる。また、先に(b)コンクリート層形成工程を行った場合は、コンクリート層の上(必要に応じて金属板等からなる中間層を設けた場合は、該中間層の上)にレジン層を形成し硬化させて、金属枠と一体化させる。
コンクリートの材料としては、例えば、普通ポルトランドセメントと、細骨材と、粗骨材と、必要に応じて減水剤と、水等を使用することができる。
上記混練物の混練方法は、特に限定されるものではない。また、混練に用いる装置も特に限定されるものではなく、オムニミキサ、パン型ミキサ、二軸練りミキサ、傾胴ミキサ等の慣用のミキサを使用することができる。
コンクリート層には、必要に応じて、ブロック同士を連結する連結用鋼材を貫通させるための貫通孔が設けられる。コンクリート層に貫通孔を設ける方法の一例としては、金属枠の両側の側壁部に孔部(貫通孔)を設け、この孔部に合致させて、金属枠の内に金属製の管体を溶接し、その後、金属枠内にコンクリート層を形成して、貫通孔を形成する方法が挙げられる。
【0022】
本発明の放射線遮蔽用プレキャストブロックの大きさは、特に限定されないが、運搬時や施工時の作業性を考慮して、長さ10m×幅2m×高さ1mの寸法の範囲内であることが好ましい。
【0023】
本発明の放射線遮蔽用プレキャストブロックは、該ブロック同士を迷宮構造で連結させるための、該ブロック同士が嵌合するための凹凸部を設けることが好ましい。
本明細書において、迷宮(ラビリンス)構造とは、放射線遮蔽用プレキャストブロック同士の連結部分(放射線遮蔽用プレキャストブロック同士の連結部分の隙間)が、レジン層とコンクリート層との積層方向において、一直線とならず、非直線性となる、該ブロック同士が互いに嵌合する凹凸部が形成されている構造をいう。なお、迷宮構造で放射線遮蔽用プレキャストブロック同士を連結した場合は、該ブロック同士の連結部分における気密性は、要求されない。
放射線遮蔽用プレキャストブロック同士を迷宮構造で連結した場合は、中性子等の放射線が該ブロック同士の隙間を通過すると、必ず、該ブロック同士が互いに嵌合している凹凸部に突き当たることになる。このため、放射線遮蔽用プレキャストブロックを迷宮構造で連結すると、放射線が該ブロック同士の隙間を貫通することがなく、放射線の漏洩を効果的に防止できる。
【0024】
放射線遮蔽用プレキャストブロック同士を迷宮構造で連結させるための、凹凸部の実施形態の一例を図面に基づき説明する。
図5は、放射線遮蔽用プレキャストブロック同士を迷宮構造で連結した場合の一例を示す断面図である。
図5に示すように、放射線遮蔽用プレキャストブロック1は、金属枠2の一方の側壁2bに、段差状に突出する凸部2dを設け、この凸部2dに相対する他方の側壁2bに、段差状に凹んだ凹部2eを設けている。放射線遮蔽用プレキャストブロック1の凸部2dを、他の放射線遮蔽用プレキャストブロック1の凹部2eに嵌合させることによって、放射線遮蔽用プレキャストブロック1,1同士を、迷宮構造Lで連結することができる。
放射線遮蔽用プレキャストブロック同士を迷宮構造で連結する凹凸部の形態としては、図5及び図6に示した段差状の凹凸部に限らない。
【0025】
本発明の放射線遮蔽用プレキャストブロックは、放射線源の周囲に、側壁部又は天井部を構築するために用いられるものであり、側壁部又は天井部の構築に適する形態に形成されていることが好ましい。
まず、図5及び図6に示す放射線遮蔽用プレキャストブロックの実施形態の一例に基づき、天井部を構築するための放射線遮蔽用プレキャストブロックについて説明する。
図5に示すように、複数の放射線遮蔽用プレキャストブロック1,1を水平方向に並列に配置し、これらブロック1,1の各々の凹凸部2d,2eを互いに嵌合させて、迷宮構造Lで連結することによって、天井部を構築することができる。また、図6に示すように、放射線遮蔽用プレキャストブロック1Bのコンクリート層4には、連結用鋼材を挿通させるための貫通孔5を設けてもよい。
【0026】
次に、図7〜図9に示す放射線遮蔽用プレキャストブロックの実施形態の一例に基づき、側壁部を構築するための放射線遮蔽用プレキャストブロックについて説明する。
図7に示すように、側壁部を構築するための放射線遮蔽用プレキャストブロック10Aは、金属枠11内にレジン層12とコンクリート層13とを形成し、放射線遮蔽用プレキャストブロック10同士を連結する連結用鋼材を貫通させる貫通孔15を、コンクリート層13に設けている。
また、金属枠11の一方の側壁部11bには、段差状に突出する凸部11dを設け、この凸部11dに相対する他方の側壁部11bには、段差状に凹む凹部11eを設けている。
放射線遮蔽構造体の側壁部を構築するための放射線遮蔽用プレキャストブロック10Aは、複数の該ブロック10Aを積層し、積層された該ブロック10A,10A同士のそれぞれの凹凸部11d,11eを互いに嵌合させて、該ブロック10A,10A同士を迷宮構造で連結することによって、側壁部を構築することができる。
【0027】
また、図8に示すように、側壁部を構築する際に、最下段となる放射線遮蔽用プレキャストブロック10Bは、金属枠11内に形成したコンクリート層13に、貫通孔を形成することなく、直接、放射線遮蔽用プレキャストブロック10Bから突出する連結用鋼材16を配筋している。この場合、金属枠11内のレジン層12の上に打設したコンクリート層13が未硬化のうちに、連結用鋼材16を挿通することによって、連結用鋼材16とコンクリート層を一体化させることができる。また、最下段となる放射線遮蔽用プレキャストブロック10Bは、金属枠11の一方の側壁部11bに、段差状に突出する凸部11dを設け、この凸部11dに相対する他方の側壁部11bには、凹凸部を設けることなく、床部に水平に設置可能となるように、平板状に形成している。
側壁部を構築する際、最下段となる放射線遮蔽用プレキャストブロック10Bと、その上に積層される放射線遮蔽用プレキャストブロック10Aは、それぞれの凹凸部11d,11eを互いに嵌合させて、該ブロック10A,10B同士を、迷宮構造で連結することによって、側壁部を構築することができる。
なお、図9に示すように、側壁部を構築するための放射線遮蔽用プレキャストブロック10Fとしては、底部11aが厚い金属枠11を用いて、金属枠11の底部11aと、コンクリート層13と、レジン層12とが、この順序で積層された三層構造のものを用いることもできる。また、側壁部を構築するための放射線遮蔽用プレキャストブロック10としては、コンクリート層13に、貫通孔を設けていないものを用いることもできる。
【0028】
次に、放射線遮蔽用プレキャストブロックを用いて構築した放射線遮蔽構造体について説明する。
本明細書において、放射線遮蔽構造体とは、側壁部と天井部とで囲まれた内部空間を有する構造体をいう。本発明において、放射線遮蔽構造体は、本発明の放射線遮蔽用プレキャストブロックを用いて側壁部と天井部を構築し、この側壁部と天井部によって形成された内部空間に、例えば、加速器等の放射線源を設置し、放射線源から放出される中性子及びγ線等の放射線を、側壁部及び天井部で吸収及び遮蔽するという使用形態で用いられるものである。
図10は、本発明の放射線遮蔽構造体の実施形態の一例を示し、放射線遮蔽構造体の概略構成の一部を説明するための図である。図11は、図10に示す放射線遮蔽構造体の一部を拡大して示す断面図である。
図10に示すように、放射線遮蔽構造体100は、例えば、レジン層12を内部空間側にして、複数の放射線遮蔽用プレキャストブロック10A,10Bを積層して、連結用鋼材16,18で連結した側壁部101と、この側壁部101の上部に、例えば、レジン層3を内部空間103側にして、複数の放射線遮蔽用プレキャストブロック1A,1Bを水平方向に並列に連結した天井部102とからなり、側壁部101と天井部102によって、放射線源を設置する内部空間103を形成している。
本発明の放射線遮蔽構造体100は、内部空間に設置された放射線源から放出する中性子をレジン層で吸収及び遮蔽し、さらに、中性子及びγ線をコンクリート層で減速及び遮蔽するので、中性子及びγ線等の放射線の吸収及び遮蔽効果に優れている。また、本発明の放射線遮蔽構造体は、金属枠とコンクリート層を含むので、強固かつ耐久性が高いものである。放射線遮蔽構造体は、内部空間側にレジン層を配置し、外部側にコンクリート層を配置してもよいし、あるいは、内部空間側にコンクリート層を配置し、外部側にレジン層を配置してもよい。
【0029】
側壁部を構築するための放射線遮蔽用プレキャストブロックを連結する方法の一例を図面に基づき説明する。
図11に示すように、まず、側壁部101を構築するための放射線遮蔽用プレキャストブロック10Aの連結用鋼材18の上端に、連結用ナット17を用いて、他の連結用鋼材18を連結し、次に、この連結用鋼材18を、放射線遮蔽用プレキャストブロック10Aの上に積層される他の放射線遮蔽用プレキャストブロック10Aの貫通孔15に挿通して、これらブロック10A,10A同士を連結する。連結用鋼材としては、鋼管又は鋼棒等を用いることができる。
図11に示すように、連結用鋼材18を挿通させて放射線遮蔽用プレキャストブロック10A同士を連結した場合は、放射線遮蔽構造体100の耐震性が向上する。
なお、図10に示すように、最下段となる放射線遮蔽用プレキャストブロック10Bは、予め2つの固定用ブラケット20を所定の間隔を空けてセットし、該ブラケット20をアンカー21で固定し、その間に放射線遮蔽用プレキャストブロック10Bを入れ、該ブロック10Bの内側(レジン層12側)と外側(コンクリート層13側)に予め埋め込んで置いたインサート22を固定用ブラケット20に挿通させた後、ボルトで固定する。あるいは、最下段となる放射線遮蔽用プレキャストブロック10Bを所定の位置にセットした後、固定用ブラケット20、アンカー21及びインサート22で該ブロック10Bを固定してもよい。
【0030】
次に、側壁部と天井部を構築するための放射線遮蔽プレキャストブロックを連結する方法の一例を図面に基づき説明する。
図10に示すように、側壁部の最上段に位置する放射線遮蔽用プレキャストブロック10Aの連結用鋼材18に、連結用ナット17を用いて、他の連結用鋼材18を連結し、この連結用鋼材18を、天井部102を構築するための放射線遮蔽用プレキャストブロック1Bのコンクリート層4の貫通孔5に挿通することによって、ブロック10A,1B同士が連結される。なお、放射線遮蔽用プレキャストブロック1Bから突出した連結用鋼材18の端部には、締結用ナット19を締結させる。
【0031】
図12は、本発明の放射線遮蔽構造体の実施形態の他の例を示し、放射線遮蔽用プレキャストブロックを用いて構築した放射線遮蔽構造体を模式的に示す平面図である。なお、図12中の矢印は、放射線源200から放射線が照射される方向を示す。
放射線遮蔽構造体の側壁部は、放射線源に対する位置によって、放射線源から照射される放射線量が異なる、このため、側壁部は、設置位置によって、それぞれ層厚の異なるコンクリート層を設けた放射線遮蔽用プレキャストブロックを用いて、構築することが好ましい。
図12に示すように、例えば、放射線源200の前方に位置する側壁部101Aは、放射線源200から放出される放射線量が多いので、大きな層厚のコンクリート層13Aを設けた放射線遮蔽用プレキャストブロック10Cを用いて構築する。
また、放射線源200の側方に位置する側壁部101Bは、放射線源200から放出される放射線量が比較的少ないので、比較的小さな層厚のコンクリート層13Bを設けた放射線遮蔽用プレキャストブロック10Dを用いて構築する。
また、放射線源200の後方に位置する側壁部101Cは、放射線源200から放出される放射線量がさらに少ないので、小さい層厚のコンクリート層13Cを設けた放射線遮蔽用プレキャストブロック10Eを用いて構築する。
なお、放射線遮蔽用プレキャストブロック10C〜10Eは、いずれも同じ層厚のレジン層12を内側に配置している。
【0032】
次に、本発明の放射線遮蔽構造体の構築方法の実施形態の一例を、図面に基づき説明する。図13〜15は、本発明の放射線遮蔽構造体の構築方法の各工程の一例を示す斜視図である。
本発明の放射線遮蔽用プレキャストブロックを用いた放射線遮蔽構造体の構築方法は、(A)複数の放射線遮蔽用プレキャストブロックを積層し連結して又は並列に配置し連結して、側壁部を形成する側壁部形成工程と、(B)側壁部を構成する放射線遮蔽用プレキャストブロックの上部に、複数の放射線遮蔽用プレキャストブロックを水平方向に並列に配置し連結して、天井部を形成する天井部形成工程を含む。
【0033】
[(A)側壁部形成工程]
本工程は、(A)複数の放射線遮蔽用プレキャストブロックを積層し連結して又は並列に配置し連結して、側壁部を形成する工程である。
本工程を、図13及び図14を参照して説明する。なお、図13及び図14は、説明のために、側壁部101(放射線遮蔽用プレキャストブロック10A,10B)の一部を切欠いた状態を示している。
まず、図13に示すように、最下段を構成する放射線遮蔽用プレキャストブロック10Bを、内部空間103を形成するように配置し、放射線遮蔽用プレキャストブロック10Bの内部空間103側と外側の両方に固定用ブラケット20を設け、固定用ブラケット20にアンカー(図示略)を打ち込んで、放射線遮蔽用プレキャストブロック10Bを固定する。
次に、放射線遮蔽用プレキャストブロック10B上に、放射線遮蔽用プレキャストブロック10Aを積層し、放射線遮蔽用プレキャストブロック10B,10A同士を、それぞれの凹凸部11d,11eを互いに嵌合させて、迷宮構造Lで連結し、側壁部101を構築する。なお、隣接する放射線遮蔽用プレキャストブロック10A,10A同士も迷宮構造Lで連結することが好ましい。
【0034】
次に、図14に示すように、所定の高さとなるまで、複数の放射線遮蔽用プレキャストブロック10A,10Aを積層し、該ブロック10A,10A同士を迷宮構造で連結して、側壁部101を完成させる。
側壁部101を完成させた後、側壁部101の最上段となる、隣接する放射線遮蔽用プレキャストブロック10A,10Aの連結部分には、転倒防止金具23を設けることが好ましい。
また、構築する側壁部101の高さが高い場合は、耐震性を向上させるために、放射線遮蔽用プレキャストブロック10A,10A同士、または、放射線遮蔽用プレキャストブロック10A,10B同士に、連結用鋼材18を貫通させて、連結することが好ましい。
【0035】
[(B)天井部形成工程]
本工程は、(B)側壁部を構成する放射線遮蔽用プレキャストブロックの上部に、複数の放射線遮蔽用プレキャストブロックを水平方向に並列に配置し連結して、天井部を形成する工程である。
本工程を、図15を参照にして説明する。
図15に示すように、側壁部101の上部に、複数の放射線遮蔽用プレキャストブロック1A,1Bを水平方向に並列に配置し、複数の放射線遮蔽用プレキャストブロック1A,1A同士、または、複数の放射線遮蔽用プレキャストブロック1A,1B同士を、互いに迷宮構造Lで連結し、天井部102を構築し、放射線遮蔽構造体100を完成させる。
側壁部101の最上段を構築する放射線遮蔽用プレキャストブロック10Aと、天井部102を構築する放射線遮蔽用プレキャストブロック1A,1Bは、放射線遮蔽用プレキャストブロック10Aから突出する連結用鋼材18を、放射線遮蔽用プレキャストブロック1A,1Bの貫通孔(図示略)に挿通して、連結用鋼材18を締結用ナット19で締結することによって、連結される。放射線遮蔽用構造体100の耐震性を向上させるために、側壁部101を構築する放射線遮蔽用プレキャストブロック10Aと、放射線遮蔽用プレキャストブロック1A,1Bは、連結用鋼材18を挿通して、連結することが好ましい。
図示を省略したが、側壁部101を構築する放射線遮蔽用プレキャストブロック10Aと、天井部102を構築する放射線遮蔽用プレキャストブロック1A(1B)は、迷宮構造で連結されている。なお、放射線遮蔽構造体100には、内部空間(図示略)に出入りするための扉部202等を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の放射線遮蔽用プレキャストブロックの一例を示す断面図である。
【図2】本発明の放射線遮蔽用プレキャストブロックの他の例を示す断面図である。
【図3】本発明の放射線遮蔽用プレキャストブロックの他の例を示す断面図である。
【図4】本発明の放射線遮蔽用プレキャストブロックの他の例を示す断面図である。
【図5】放射線遮蔽構造体の天井部を構築するための本発明の放射線遮蔽用プレキャストブロックの一例を示す断面図である。
【図6】放射線遮蔽構造体の天井部を構築するための本発明の放射線遮蔽用プレキャストブロックの他の例を示す断面図である。
【図7】放射線遮蔽構造体の側壁部を構築するための本発明の放射線遮蔽用プレキャストブロックの一例を示す断面図である。
【図8】放射線遮蔽構造体の側壁部の最下段を構築するための本発明の放射線遮蔽用プレキャストブロックの一例を示す断面図である。
【図9】放射線遮蔽構造体の側壁部を構築するための本発明の放射線遮蔽用プレキャストブロックの他の例を示す断面図である。
【図10】本発明の放射線遮蔽構造体の一例を説明するための図である。
【図11】図10に示す放射線遮蔽構造体の一部を拡大して示す断面図である。
【図12】本発明の放射線遮蔽構造体の一例における水平断面構造を示す平面図である。
【図13】本発明の放射線遮蔽構造体の構築方法の一例における初期の工程を示す斜視図である。
【図14】本発明の放射線遮蔽構造体の構築方法の一例における中期の工程を示す斜視図である。
【図15】本発明の放射線遮蔽構造体の構築方法の一例における後期の工程を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
1 放射線遮蔽用プレキャストブロック
1A 放射線遮蔽用プレキャストブロック(天井部構築用)
1B 放射線遮蔽用プレキャストブロック(天井部構築用)
2 金属枠
2a 底部
2b 側壁部
2c 開口部
2d 凸部
2e 凹部
3 レジン層
4 コンクリート層
5 貫通孔
6 金属板
7 鉄筋
10 放射線遮蔽用プレキャストブロック
10A 放射線遮蔽用プレキャストブロック(側壁部構築用)
10B 放射線遮蔽用プレキャストブロック(最下段の側壁部構築用)
10C〜10F 放射線遮蔽用プレキャストブロック(側壁部構築用)
11 金属枠
11a 底部
11b 側壁部
11d 凸部
11e 凹部
12 レジン層
13 コンクリート層
13A〜13C コンクリート層
15 貫通孔
16 連結用鋼材
17 連結用ナット
18 連結用鋼材
19 締結用ナット
20 固定用ブラケット
21 アンカー
22 インサート
23 転倒防止金具
24 インサート
100 放射線遮蔽構造体
101 側壁部
101A〜101C 側壁部
102 天井部
200 放射線源
201 床部
202 扉部
L 迷宮構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線遮蔽構造体を構築するための放射線遮蔽用プレキャストブロックであって、外枠となる金属枠内に、ホウ素化合物と骨材と樹脂バインダーとを含むレジン層と、コンクリート層とを形成してなることを特徴とする放射線遮蔽用プレキャストブロック。
【請求項2】
上記骨材がポリオレフィン系樹脂ビーズである請求項1記載の放射線遮蔽用プレキャストブロック。
【請求項3】
上記ポリオレフィン系樹脂ビーズを構成するポリオレフィン系樹脂は、密度が0.9〜1.0g/cmであり、水素原子の含有率が10〜15質量%である請求項2記載の放射線遮蔽用プレキャストブロック。
【請求項4】
上記骨材の粒径が1〜5mmである請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線遮蔽用プレキャストブロック。
【請求項5】
上記レジン層の密度が0.9g/cm以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線遮蔽用プレキャストブロック。
【請求項6】
上記レジン層中のホウ素原子の含有率が5〜30質量%である請求項1〜5のいずれか1項に記載の放射線遮蔽用プレキャストブロック。
【請求項7】
上記レジン層の層厚が5cm以上である請求項1〜6のいずれか1項に記載の放射線遮蔽用プレキャストブロック。
【請求項8】
上記放射線遮蔽用プレキャストブロック同士を迷宮構造で連結させるための、上記放射線遮蔽用プレキャストブロック同士が嵌合することのできる凹凸部を設けた請求項1〜7のいずれか1項に記載の放射線遮蔽用プレキャストブロック。
【請求項9】
放射線遮蔽構造体を構築するための放射線遮蔽用プレキャストブロックの製造方法であって、
(a)ホウ素化合物10〜50質量%と、ポリオレフィン系樹脂ビーズ40〜70質量%と、樹脂バインダー5〜30質量%とを混練した混練物を、外枠となる金属枠内に流し込み硬化させて、上記金属枠に一体化するレジン層を形成する工程と、
(b)上記金属枠内にコンクリートを打設し硬化させて、上記金属枠に一体化するコンクリート層を形成する工程を含むことを特徴とする放射線遮蔽用プレキャストブロックの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の放射線遮蔽用プレキャストブロックを用いて構築した、放射線を吸収及び遮蔽するための放射線遮蔽構造体であって、
複数の上記放射線遮蔽用プレキャストブロックを積層し連結してなる側壁部、及び/又は、複数の上記放射線遮蔽用プレキャストブロックを並列に連結してなる側壁部と、
上記側壁部の上部に、複数の上記放射線遮蔽用プレキャストブロックを水平方向に並列に連結してなる天井部とからなり、
上記側壁部と上記天井部により、内部空間を形成してなることを特徴とする放射線遮蔽構造体。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の放射線遮蔽用プレキャストブロックを用いた放射線遮蔽構造体の構築方法であって、
(A)複数の上記放射線遮蔽用プレキャストブロックを積層し連結して又は並列に配置し連結して、側壁部を形成する側壁部形成工程と、
(B)上記側壁部を構成する放射線遮蔽用プレキャストブロックの上部に、複数の上記放射線遮蔽用プレキャストブロックを水平方向に並列に配置し連結して、天井部を形成する天井部形成工程を含むことを特徴とする放射線遮蔽構造体の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−232845(P2008−232845A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73237(P2007−73237)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(303004716)マテラス青梅工業株式会社 (15)
【出願人】(595015926)アスク・サンシンエンジニアリング株式会社 (10)
【出願人】(398043285)株式会社太平洋コンサルタント (20)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)