説明

放射線防護設備

【課題】放射性薬剤の投与作業時に被検査者から放射される放射線を遮蔽することができ、施術者の被爆を防ぐことができる放射線防護設備を提供する。
【解決手段】放射線防護設備10Aは、屏障具11と注射台12とから形成されている。屏障具11は、キャスター21を備えた台座13と、上下方向へ高さを調節可能なシャフト33と、シャフト33の上方へ延びる所定面積の放射線遮蔽衝立15とから形成されている。注射台12は、前後方向へ延びる所定面積の放射線遮蔽天板49と、屏障具11の支持部材と並行して放射線遮蔽天板49の前端部から下方へ延びる所定面積の放射線遮蔽側板50とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の検査に使用される放射性薬剤の被検査者への注射時や注射針の抜針に施術者の被爆を防ぐ放射線防護設備に関する。
【背景技術】
【0002】
注射台と、その一端部に設置されて注射台から上方へ延びる放射線遮蔽板とから形成され、その放射線遮蔽板に被検査者の腕を挿通可能なシャッター付き開口を備えた放射線防護用具がある(特許文献1参照)。放射線防護用具は、注射台の上に被検査者の腕を乗せ、被検査者の拳をシャッター付き開口へ通した後、施術者が注射器によって放射性薬剤を被検査者に投与する。この放射線防護用具は、被検査者への注射時に注射器から放射される放射線が放射線遮蔽板によって遮蔽されるから、施術者が放射線に曝露されることはなく、施術者の放射線被曝を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実登3025589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示の放射線防護用具を利用した検査では、施術者が被検査者の腕の静脈に放射性薬剤を注射した後、被検査者の腕から注射針を抜針する。放射性薬剤の投与後の注射針の抜針時に被検査者の全身から放射線が放射されるが、この放射線を遮蔽しなければ、施術者が被爆する恐れがある。前記特許文献1に開示の放射線防護用具は、注射器から放射させる放射線を遮蔽することはできるが、シャッター付き開口へ被検査者の拳を通した状態で放射性薬剤を被検査者に注射するから、被検査者の拳から放射される放射線を遮蔽することができず、施術者が拳から放射される放射線によって被爆する場合がある。また、この放射線防護用具は、放射性薬剤の投与作業時に被検査者の全身から放射される放射線を遮蔽することができず、施術者が被検査者の全身から放射される放射線によって被爆する場合がある。
【0005】
本発明の目的は、放射性薬剤の投与作業時に被検査者から放射される放射線を遮蔽することができ、施術者の被爆を防ぐことができる放射線防護設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明の前提は、所定の検査に使用される放射性薬剤を被検査者に投与する施術者の被爆を防ぐ放射線防護設備である。
【0007】
前記前提における本発明の第1の特徴は、放射線防護設備が被検査者と施術者との間に配置されて被検査者から放射される放射線を遮蔽する屏障具であり、屏障具が、それを移動させるキャスターを備えた台座と、台座から上方へ延びていて昇降機構を介して上下方向へ高さを調節可能な支持部材と、支持部材の上端部に設置されて支持部材の上方へ延びる所定面積の放射線遮蔽衝立とから形成されていることにある。
【0008】
前記第1の特徴を有する本発明の一例としては、屏障具が支持部材の上端部に旋回手段を介して設置されて放射線遮蔽衝立の前後方向前方と前後方向後方との少なくとも一方へ延びる所定面積の物置台を備え、物置台が旋回手段を中心に支持部材の上端部から下端部に向かって旋回可能である。
【0009】
前記第1の特徴を有する本発明の他の一例として、台座には、屏障具のキャスターによる移動を停止させるストッパーが設置されている。
【0010】
前記第1の特徴を有する本発明の他の一例としては、放射線遮蔽衝立の高さ寸法が40〜80cmの範囲、放射線遮蔽衝立の幅寸法が30〜50cmの範囲にある。
【0011】
前記第1の特徴を有する本発明の他の一例としては、放射線防護設備が被検査者と屏障具との間に配置されて被検査者から放射される放射線を遮蔽する注射台を含み、注射台が、放射性薬剤の投与時に被検査者の腕を乗せる所定面積の放射線遮蔽天板と、被検査者の前方に設置されて放射線遮蔽天板から下方へ延びる所定面積の放射線遮蔽側板と、放射線遮蔽天板の上面に交換可能に載置されて天板にこぼれた放射性薬剤を吸い取るシートと、放射線遮蔽天板の一側縁部に旋回手段を介して設置されたフレームとを有し、注射台では、旋回手段を中心にフレームを放射線遮蔽天板の上面から上方へ旋回させることが可能であり、フレームを放射線遮蔽天板の上面に旋回させたときにフレームが天板の周縁部に当接しつつシートを押さえ、シートが放射線遮蔽天板の上面に固定される。
【0012】
前記第1の特徴を有する本発明の他の一例としては、注射台がそれを移動させることが可能なキャスターを備えた台座を有し、放射線遮蔽天板と放射線遮蔽側板とが台座に設置されている。
【0013】
前記第1の特徴を有する本発明の他の一例として、台座には、注射台のキャスターによる移動を停止させるストッパーが設置されている。
【0014】
前記第1の特徴を有する本発明の他の一例としては、放射線遮蔽天板と放射線遮蔽側板との幅寸法が30〜70cmの範囲、放射線遮蔽天板の長さ寸法が30〜50cmの範囲、放射線遮蔽側板の高さ寸法が50〜80cmの範囲にある。
【0015】
前記第1の特徴を有する本発明の他の一例としては、放射線遮蔽衝立と放射線遮蔽天板と放射線遮蔽側板とが鉛板または放射線遮蔽ガラスから作られている。
【0016】
前記前提における本発明の第2の特徴は、放射線防護設備が注射台と注射台を挟んで被検査者の反対側に位置する屏障具とから形成され、注射台が、前後方向へ延びていて放射性薬剤の投与時に被検査者の腕を乗せる所定面積の放射線遮蔽天板と、被検査者の前方に設置され、放射線遮蔽天板から下方へ延びる所定面積の放射線遮蔽側板とを有し、屏障具が、放射線遮蔽側板を挟んで被検査者の反対側に位置し、昇降機構を介して上下方向へ高さを調節可能な支持部材と、支持部材の上端部に設置されて支持部材の上方へ延びる所定面積の放射線遮蔽衝立と、支持部材の上端部に旋回手段を介して設置されて放射線遮蔽衝立の前後方向後方へ延びる所定面積の物置台とを有し、物置台が旋回手段を中心に支持部材の上端部から下端部に向かって旋回可能であることにある。
【0017】
前記第2の特徴を有する本発明の一例としては、注射台と屏障具とがそれらを移動させるキャスターを備えた台座に設置されている。
【0018】
前記第2の特徴を有する本発明の他の一例として、台座には、注射台と屏障具とのキャスターによる移動を停止させるストッパーが設置されている。
【0019】
前記第2の特徴を有する本発明の他の一例としては、放射線遮蔽衝立の高さ寸法が40〜80cmの範囲、放射線遮蔽衝立の幅寸法が30〜50cmの範囲にあり、放射線遮蔽天板と放射線遮蔽側板との幅寸法が30〜70cmの範囲であって放射線遮蔽衝立の幅寸法と同一またはそれよりも大きく、放射線遮蔽天板の長さ寸法が30〜50cmの範囲、放射線遮蔽側板の高さ寸法が50〜80cmの範囲にある。
【0020】
前記第2の特徴を有する本発明の他の一例としては、放射線遮蔽衝立と放射線遮蔽天板と放射線遮蔽側板とが鉛板または放射線遮蔽ガラスから作られている。
【0021】
前記第1および第2の特徴を有する本発明の他の一例としては、放射性薬剤が18F−2−フルオロ−2−デオキシグルコース注射液である。
【発明の効果】
【0022】
第1の特徴を有する放射線防護設備によれば、屏障具を注射台の近傍に移動させ、注射台を利用して施術者が被検査者に放射性薬剤を投与する場合において、放射性薬剤の注射時や投与後の注射針の抜針時に被検査者から放射される放射線が屏障具の放射線遮蔽衝立によって遮蔽されるから、被検査者から放射される放射線に施術者が曝露されることはなく、施術者の被爆を防ぐことができる。放射線防護設備は、施術者が注射針の抜針のために被検査者に近づくときに、被検査者から放射される放射線を防御しつつ被検査者に近づくことができ、抜針の後に被検査者から放射される放射線を防御しつつ被検査者から離れることができる。放射線防護設備は、支持部材が昇降機構を介して上下方向へ高さを調節可能であり、施術者の身長に合わせて放射線遮蔽衝立の高さを調節することができるから、放射線遮蔽衝立を利用して施術者を隠すことができ、被検査者から放射される放射線による施術者の被爆を確実に防ぐことができる。放射線防護設備は、屏障具がキャスターを備えた台座を有し、キャスターを利用して屏障具を自由に移動させることができるから、屏障具を被検査者から最適な距離に移動させることができる。
【0023】
第1の特徴を有する放射線防護設備において、屏障具が支持部材の上端部に設置されて放射線遮蔽衝立の前後方向前方と前後方向後方との少なくとも一方へ延びる所定面積の物置台を備え、物置台が支持部材の上端部から下端部に向かって旋回可能な防護設備は、屏障具に物置台を設置することで、検査に必要な医療用具を物置台に置くことができるから、放射性薬剤の注射時や投与後の注射針の抜針時等の薬剤投与作業にそれら医療用具を利用することができ、物置台に置かれた医療用具を使用して注射や抜針を円滑に行うことができる。放射線防護設備は、物置台を支持部材の下端部へ旋回させることができるから、物置台の非利用時に物置台を畳むことができ、注射時や抜針時に物置台が邪魔をすることはなく、注射や抜針を円滑に行うことができる。
【0024】
第1の特徴を有する放射線防護設備において、屏障具のキャスターによる移動を停止させるストッパーが台座に設置された防護設備は、ストッパーを利用して屏障具を被検査者の近傍において停止させることができ、放射性薬剤の注射時や投与後の注射針の抜針時等の薬剤投与作業における屏障具の不用意な移動を防止することができる。放射線防護設備は、ストッパーによって屏障具の動きを止めた状態で、放射性薬剤の注射や注射針の抜針を行うことができるから、被検査者の安全を保持しつつ放射性薬剤の投与作業を行うことができる。
【0025】
第1の特徴を有する放射線防護設備において、放射線遮蔽衝立の高さ寸法が40〜80cmの範囲、放射線遮蔽衝立の幅寸法が30〜50cmの範囲にある放射線防護設備は、施術者が被検査者に放射性薬剤を投与する場合において、前記高さ寸法および幅寸法を有する放射線遮蔽衝立が被検査者の上半身から放射される放射線の施術者の上半身への被爆を防ぐから、放射性薬剤の注射時や投与後の注射針の抜針時等の薬剤投与作業において被検査者から放射される放射線に施術者が曝露されることはなく、施術者の被爆を確実に防ぐことができる。
【0026】
第1の特徴を有する放射線防護設備において、放射線防護設備が被検査者と屏障具との間に配置されて被検査者から放射される放射線を遮蔽する注射台を含む放射線防護設備は、施術者が被検査者に放射性薬剤を投与する場合のその投与作業時において、被検査者から放射線が放射されたとしても、屏障具の放射線遮蔽衝立が被検査者の上半身から放射される放射線の施術者の上半身への被爆を防ぎ、注射台に設置された放射線遮蔽天板が被検査者の下半身から放射される放射線の施術者の上半身への被爆を防ぐとともに、注射台に設置された放射線遮蔽側板が被検査者の下半身から放射される放射線の施術者の下半身への被爆を防ぐから、放射性薬剤の注射時や投与後の注射針の抜針時に被検査者から放射される放射線に施術者が曝露されることはなく、施術者の被爆を防ぐことができる。放射線防護設備は、注射台が放射線遮蔽天板にこぼれた放射性薬剤を吸い取るシートと放射線遮蔽天板の一側縁部に旋回手段を介して設置されたフレームとを有し、フレームを放射線遮蔽天板の上面に旋回させたときにフレームがシートを押さえるから、シートが放射線遮蔽天板の上面に固定され、放射性薬剤の投与作業時に薬剤が誤って天板にこぼれたとしても、その薬剤をシートに吸収させることができる。放射線防護設備は、フレームを放射線遮蔽天板の上面から上方へ旋回させ、フレームによるシートの固定を解除した後、放射性薬剤を吸収したシートを新しいそれに交換することができ、放射線遮蔽天板を薬剤によって汚染されていない清潔な状態で使用することができる。放射線防護設備は、注射台の放射線遮蔽天板に誤って放射性薬剤をこぼしたとしても、薬剤を吸収したシートを交換することで、天板を清潔に保持することができるから、天板にこぼれた薬剤による被検査者や施術者の放射線の被曝を防ぐことができる。
【0027】
第1の特徴を有する放射線防護設備において、注射台がそれを移動させることが可能なキャスターを備えた台座を有し、放射線遮蔽天板と放射線遮蔽側板とが台座に設置されている放射線防護設備は、キャスターを利用して注射台を移動させることができるから、1台の注射台を別々の被検査者の近傍に移動させつつ、それら被検査者に対して放射性薬剤の投与作業を行うことができる。放射線防護設備は、施術者が注射針の抜針のために被検査者に近寄るときに、注射台を利用して被検査者から放射される放射線を防御しつつ被検査者に近づくことができ、抜針の後に注射台を利用して被検査者から放射される放射線を防御しつつ被検査者から離れることができる。
【0028】
第1の特徴を有する放射線防護設備において、注射台のキャスターによる移動を停止させるストッパーが台座に設置されている放射線防護設備は、ストッパーを利用して注射台を被検査者の近傍において停止させることができ、放射性薬剤の注射時や投与後の注射針の抜針時等の薬剤投与作業における注射台の不用意な移動を防止することができる。放射線防護設備は、ストッパーによって注射台の動きを止めた状態で、放射性薬剤の注射や注射針の抜針を行うことができるから、被検査者の安全を保持しつつ放射性薬剤の投与作業を行うことができる。
【0029】
第1の特徴を有する放射線防護設備において、放射線遮蔽天板と放射線遮蔽側板との幅寸法が30〜70cmの範囲、放射線遮蔽天板の長さ寸法が30〜50cmの範囲、放射線遮蔽側板の高さ寸法が50〜80cmの範囲にある放射線防護設備は、施術者が被検査者に放射性薬剤を投与する場合において、前記幅寸法と前記長さ寸法とを有する放射線遮蔽天板が被検査者の下半身から放射される放射線の施術者の上半身への被爆を防ぐとともに、前記幅寸法と前記高さ寸法とを有する放射線遮蔽側板が被検査者の下半身から放射される放射線の施術者の下半身への被爆を防ぐから、放射性薬剤の注射時や投与後の注射針の抜針時等の薬剤投与作業において被検査者の全身から放射される放射線に施術者が曝露されることはなく、施術者の被爆を確実に防ぐことができる。
【0030】
第1の特徴を有する放射線防護設備において、放射線遮蔽衝立が鉛板または放射線遮蔽ガラスから作られている放射線防護設備は、被検査者から放射される放射線が鉛板や放射線遮蔽ガラスから作られた衝立や天板、側板によって確実に遮蔽され、被検査者から放射される放射線に施術者が曝露されることはなく、施術者の被爆を防ぐことができる。なお、放射線遮蔽衝立が放射線遮蔽ガラスから作られている場合は、放射線遮蔽ガラスによって施術者の上半身全体が隠れたとしても、施術者がガラス越しに被検査者や注射台を見ることができ、放射性薬剤の投与作業を支障なく行うことができる。放射線防護設備は、施術者の頭部を含む上半身全体および下半身を放射線から遮蔽することができ、放射性薬剤の注射時や投与後の注射針の抜針時に被検査者の全身から放射される放射線に施術者の上半身全体や下半身が曝露されることはなく、施術者の被爆を確実に防ぐことができる。
【0031】
第2の特徴を有する放射線防護設備によれば、施術者が被検査者に放射性薬剤を投与する場合の薬剤投与作業時において、被検査者の全身から放射線が放射されたとしても、屏障具の放射線遮蔽衝立が被検査者の上半身から放射される放射線の施術者の上半身への被爆を防ぎ、注射台に設置された放射線遮蔽天板が被検査者の下半身から放射される放射線の施術者の上半身への被爆を防ぐとともに、注射台に設置された放射線遮蔽側板が被検査者の下半身から放射される放射線の施術者の下半身への被爆を防ぐから、放射性薬剤の注射時や投与後の注射針の抜針時に被検査者の全身から放射される放射線に施術者が曝露されることはなく、施術者の被爆を確実に防ぐことができる。放射線防護設備は、支持部材が昇降機構を介して上下方向へ高さを調節可能であり、施術者の身長に合わせて放射線遮蔽衝立の高さを調節することができるから、放射線遮蔽衝立を利用して施術者を隠すことができ、被検査者から放射される放射線による施術者の被爆を確実に防ぐことができる。
【0032】
第2の特徴を有する放射線防護設備において、注射台と屏障具とがそれらを移動させるキャスターを備えた台座に設置されている放射線防護設備は、キャスターを利用して注射台および屏障具を同時に移動させることができるから、注射台と屏障具とを別々に被検査者の近傍に移動させる手間を省くことができ、放射性薬剤の投与作業を円滑に行うことができる。放射線防護設備は、施術者が注射針の抜針のために被検査者に近寄るときに、被検査者から放射される放射線を防御しつつ被検査者に近づくことができ、抜針の後に被検査者から放射される放射線を防御しつつ被検査者から離れることができる。
【0033】
第2の特徴を有する放射線防護設備において、注射台と屏障具とのキャスターによる移動を停止させるストッパーが台座に設置されている放射線防護設備は、ストッパーを利用して注射台および屏障具を被検査者の近傍において停止させることができ、放射性薬剤の注射時や投与後の注射針の抜針時における注射台および屏障具の不用意な移動を防止することができる。放射線防護設備は、ストッパーによって注射台および屏障具の動きを止めた状態で、放射性薬剤の注射や注射針の抜針等の薬剤投与作業を行うことができるから、被検査者の安全を保持しつつ放射性薬剤の投与作業を行うことができる。
【0034】
第2の特徴を有する放射線防護設備において、放射線遮蔽衝立の高さ寸法が40〜80cmの範囲、放射線遮蔽衝立の幅寸法が30〜50cmの範囲にあり、放射線遮蔽天板と放射線遮蔽側板との幅寸法が30〜70cmの範囲であって放射線遮蔽衝立の幅寸法と同一またはそれよりも大きく、放射線遮蔽天板の長さ寸法が30〜50cmの範囲、放射線遮蔽側板の高さ寸法が50〜80cmの範囲にある放射線防護設備は、施術者が被検査者に放射性薬剤を投与する場合において、前記高さ寸法および幅寸法を有する放射線遮蔽衝立が被検査者の上半身から放射される放射線の施術者の上半身への被爆を防ぎ、前記幅寸法および前記長さ寸法を有する放射線遮蔽天板が被検査者の下半身から放射される放射線の施術者の上半身への被爆を防ぐとともに、前記幅寸法および前記高さ寸法を有する放射線遮蔽側板が被検査者の下半身から放射される放射線の施術者の下半身への被爆を防ぐから、放射性薬剤の注射時や投与後の注射針の抜針時等の薬剤投与作業において被検査者の全身から放射される放射線に施術者が曝露されることはなく、施術者の被爆を確実に防ぐことができる。
【0035】
第2の特徴を有する放射線防護設備において、放射線遮蔽衝立と放射線遮蔽天板と放射線遮蔽側板とが鉛板または放射線遮蔽ガラスから作られている放射線防護設備は、被検査者から放射される放射線が鉛板や放射線遮蔽ガラスから作られた衝立や天板、側板によって確実に遮蔽され、被検査者から放射される放射線に施術者が曝露されることはなく、施術者の被爆を防ぐことができる。なお、放射線遮蔽衝立が放射線遮蔽ガラスから作られている場合は、放射線遮蔽ガラスによって施術者の上半身全体が隠れたとしても、施術者がガラス越しに被検査者や注射台を見ることができ、放射性薬剤の投与作業を支障なく行うことができる。放射線防護設備は、施術者の頭部を含む上半身全体を放射線から遮蔽することができ、放射性薬剤の注射時や投与後の注射針の抜針時に被検査者の全身から放射される放射線に施術者の上半身全体が曝露されることはなく、施術者の被爆を確実に防ぐことができる。
【0036】
第1および第2の特徴を有する放射線防護設備において、放射性薬剤が18F−2−フルオロ−2−デオキシグルコース注射液である放射線防護設備は、18F−2−フルオロ−2−デオキシグルコース注射液を被検査者に投与すると、被検査者の全身から放射線が放射されるが、放射性薬剤の注射時や投与後の注射針の抜針時等の薬剤投与作業に被検査者から放射される放射線が放射線遮蔽衝立や放射線遮蔽天板、放射線遮蔽側板によって遮蔽されるから、被検査者から放射される放射線に施術者が曝露されることはなく、施術者の被爆を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】一例として示す屏障具の斜視図。
【図2】屏障具の正面図。
【図3】屏障具の側面図。
【図4】屏障具の側面図。
【図5】フロアストッパーの拡大図。
【図6】フロアストッパーの拡大図。
【図7】一例として示す注射台の斜視図。
【図8】注射台の背面図。
【図9】注射台の側面図。
【図10】注射台の使用例を説明する図。
【図11】注射台の使用例を説明する図。
【図12】放射性薬剤の投与作業の準備の説明図。
【図13】放射性薬剤の投与作業の一例を説明する図。
【図14】他の一例として示す放射線防護設備の斜視図。
【図15】図14の放射線防護設備の側面図。
【図16】放射性薬剤の投与作業の一例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
一例として示す屏障具11の斜視図である図1等の添付の図面を参照し、本発明にかかる放射線防護設備の詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、図2は、屏障具11の正面図であり、図3,4は、屏障具11の側面図である。図5,6は、フロアストッパー22の拡大図である。図1では、上下方向を矢印L、前後方向を矢印Mで示し、幅方向を矢印Nで示す。図4では、図3と比較し、シャフト33(支持部材14)を上下方向上方へ伸ばし、放射線遮蔽衝立15の高さを高くした状態を二点鎖線で示す。図6は、ストッパー22によって屏障具11の動きが停止している状態を示す。
【0039】
放射線防護設備10Aは、放射性薬剤を使用した検査において、被検査者17から放射される放射線を遮蔽し、施術者18被爆を防ぐために利用される。放射性薬剤としては18F−2−フルオロ−2−デオキシグルコース注射液(以下、FDG注射液)を例示することができるが、放射性薬剤に特に限定はなく、全てのインビボ診断薬が含まれる。放射性薬剤を使用した検査には、インビボ診断薬を使用する全ての検査が含まれ、悪性腫瘍の診断、虚血性心疾患の診断、難治性部分てんかんの診断等がある。この放射線防護設備10Aは、屏障具11と注射台12とから構成されている(図12参照)。なお、放射線防護設備10Aが屏障具11のみから構成される場合もある。
【0040】
屏障具11は、台座13および支持部材14と、放射線遮蔽衝立15および物置台16とから形成され、注射台12を挟んで被検査者17と施術者18との間に配置される(図13参照)。台座13は、ステンレスから作られ、台中央部19と、台中央部19から径方向外方へ延びる4本の脚部20とを備えている。それら脚部20の先端部分には、屏障具11を移動可能に支持するキャスター21が設置されている。
【0041】
台中央部19には、屏障具11の動きを停止させるストッパー22が設置されている。キャスター21は、取付ボルトを介して脚部20の先端部分に回転可能に取り付けられている。屏障具11は、キャスター21を介して自由に移動させることができる。なお、図示はしていないが、キャスター21には、車輪の回転を停止させるストッパーが設置されている。
【0042】
ストッパー22は、図5に示すように、台座13の台中央部19の下方に取り付けられている。ストッパー22には、既存のフロアストッパー22が利用されている。フロアストッパー22は、上下方向へ延びる軸脚23、軸脚23の上端に位置する取付金具24、軸脚23の下端に位置する設置金具25、ロック用レバー26、解除用レバー27を備えている。フロアストッパー22は、その取付金具24が固定手段(溶接やボルト締め等)を介して台座13の台中央部19に固定されている。軸脚23には、スプリング28が内蔵され、設置金具25の下面には、ラバー29が貼り付けられている。
【0043】
フロアストッパー22では、図6に示すように、ロック用レバー26を足で踏み込んでレバー26を下方へ下げると、解除用レバー27が上方へ移動するとともに、軸脚23がスプリング28の弾性力に抗して下方へ伸び、設置金具25(ラバー29)が路面30に接地して路面30をグリップし、キャスター21による屏障具11の移動を停止させる。設置金具25による路面30のグリップを解除するには、解除用レバー27を足で踏み込んでレバー27を下方へ下げる。解除用レバー27を下方へ下げると、ロックレバー26が上方へ移動するとともに、軸脚23がスプリング28の弾性力によって上方へ引っ込み、設置金具25が路面30の上方へ移動し、設置金具25による路面30のグリップが解除される。
【0044】
支持部材14は、台座13の台中央部19の直上に設置された筒状の金属製筐体31と、筐体31の直上に設置された上下方向へ長い金属製筒体32と、筐体31および筒体32に挿通された金属製シャフト33とから形成されている。筐体31には、既存のスクリュージャッキ(昇降機構)(図示せず)が内蔵され、スクリュージャッキを作動させるスポークハンドル34が取り付けられている。スクリュージャッキは、シャフト33(支持部材14)を上下方向上方と上下方向下方とへ移動させ、シャフト33の上下方向の高さを調節し、放射線遮蔽衝立15の路面30からの高さを調整する。
【0045】
たとえば、スポークハンドル34を時計回り方向へ回転させると、シャフト33が上下方向上方へ次第に移動し、図4に二点鎖線で示すように、放射線遮蔽衝立15の路面30からの高さを高くすることができ、逆に、ハンドル34を反時計回り方向へ回転させると、シャフト33が上下方向下方へ次第に移動し、衝立15の路面30からの高さを低くすることができる。
【0046】
筒体32は、シャフト33の折れ曲がりを防ぐ保護筒として機能するほか、スクリュージャッキによるシャフト33の移動を停止させ、放射線遮蔽衝立15の路面30からの高さを一定に保持する。筒体32は、その下端部が固定手段(溶接やボルト締め等)を介して筐体31の上端部に固定されている。筒体32の上端部には、シャフト33の上下動を停止させるセットカラー35(ストッパー)が設置されている。セットカラー35のボルト36を締め、セットカラー35でシャフト33を締め付けることで、シャフト33とセットカラー35(筒体32)とが固定され、シャフト33の上下動が阻止される。逆に、セットカラー35のボルト36を緩め、シャフト33とセットカラー35(筒体32)との固定を解除することで、スクリュージャッキを利用してシャフト33を上下方向上方と上下方向下方とへ移動させることができる。
【0047】
放射線遮蔽衝立15は、シャフト33の上端部に設置され、シャフト33の上端部から上方へ延びている。放射線遮蔽衝立15は、シャフト33の上端部に設置された取付台37の中央に固定手段(溶接やボルト締め等)を介して固定され、取付台37の幅方向両側から上方へ延びる三角形の2枚の支持板38に支持されている。放射線遮蔽衝立15は、所定の面積を有する上下方向へ長い矩形に成型され、幅方向へ延びる上下端部39,40と、上下方向へ延びる両側縁部41,42とを有する。
【0048】
放射線遮蔽衝立15は、上下方向へ長い矩形の鉛板(図示せず)と、鉛板の全体を包被するステンレス製のカバー板43とから作られている。または、放射線遮蔽ガラス43(鉛ガラス)から作られている。放射線遮蔽衝立15は、両側縁部41,42の寸法(高さ寸法)が40〜80cmの範囲にある。放射線遮蔽衝立15が鉛板とカバー板43とから作られている場合、両側縁部41,42の寸法は50cmが好ましい。放射線遮蔽衝立15が放射線遮蔽ガラス43から作られている場合、両側縁部41,42の寸法は70〜80cmが好ましく、両側縁部41,42の寸法を70〜80cmにすることで、施術者18の頭部を含む上半身全体を放射線遮蔽衝立15によって隠すことができる。放射線遮蔽衝立15は、上下端部39,40の寸法(幅寸法)が30〜50cmの範囲、好ましくは、40cmである。鉛板は、その厚みが3〜5mmの範囲、好ましくは、3mmである。放射線遮蔽ガラス43は、その厚みが4〜6mmの範囲にある。
【0049】
放射線遮蔽衝立15の両側縁部41,42の寸法(高さ寸法)が40cm未満であって、上下端部39,40の寸法(幅寸法)が30cm未満では、衝立15の面積が小さくなり、衝立15によって施術者18の上半身を隠すことができず、施術者18の放射線による被曝を防ぐことが難しい。放射線遮蔽衝立15の両側縁部41,42の寸法が80cmを超過し、上下端部39,40の寸法が50cmを超過すると、衝立15の面積が必要以上に大きくなり、施術者18の作業が衝立15によって邪魔され、衝立15が放射性薬剤の投与作業の障害となる場合がある。鉛板の厚みが3mm未満または放射線遮蔽ガラス43の厚みが4mm未満では、放射線遮蔽衝立15によって放射線を確実に遮蔽することができない場合がある。鉛板の厚みが5mmを超過すると、屏障具11の重量が増し、屏障具11を円滑に移動させることができない場合がある。
【0050】
屏障具11は、放射線遮蔽衝立15の高さ寸法と幅寸法とが前記範囲にあるから、衝立15によって施術者18を十分に隠すことができ、衝立15を利用して施術者18の被爆を防ぐことができる。特に放射線遮蔽衝立15が放射線遮蔽ガラス43から作られている場合であって、両側縁部41,42の寸法(高さ寸法)が70〜80cmの場合は、施術者18の頭部を含む上半身全体を衝立15によって隠すことができるから、施術者18の頭部を含む上半身全体を放射線から遮蔽することができ、放射線に施術者18の上半身全体が曝露されることはなく、施術者18の被爆を確実に防ぐことができる。屏障具11は、鉛板や放射線遮蔽ガラス43の厚みが前記範囲にあるから、放射線を十分に遮蔽することができるとともに、屏障具11の重量が必要以上に増加することはなく、屏障具11を自由に動かすことができる。
【0051】
物置台16(可倒テーブル)は、シャフト33(支持部材14)の上端部に設置されている。物置台16は、放射線遮蔽衝立15の前後方向前方へ延びる第1物置台16Aと、衝立15の前後方向後方へ延びる第2物置台16Bとから形成されている。それら物置台16A,16Bは、その幅寸法が放射線遮蔽衝立15の上下端部39,40の寸法(幅寸法)と略同一であり、図3に矢印で示すように、テーブル金具44(旋回手段)を利用して支持部材14の上端部から下端部に向かって旋回させることができる。テーブル金具44は、その固定部45が取付台37にビス(図示せず)によって固定されている。それら物置台16A,16Bは、テーブル金具44の旋回部46にビス(図示せず)によって固定されている。
【0052】
図3に二点鎖線で示すように、物置台16A,16Bが支持部材14の下端部へ旋回した状態から、図3に実線で示すように、物置台16A,16Bを支持部材14の上端部へ向かって旋回させ、物置台16A,16Bが略水平になると、テーブル金具44のロック機構(図示せず)が作動し、テーブル金具44の旋回部46の下方への旋回が阻止され、旋回部46が固定されてそれら物置台16A,16Bの水平状態が保持される。テーブル金具44のロック解除ボタン(図示せず)を押すと、ロック機構が解除され、旋回部46が下方へ旋回し、それにともなって物置台16A,16Bが支持部材14の上端部から下端部に向かって旋回し、それら物置台16A,16Bを畳むことができる。
【0053】
図7は、一例として示す注射台12の斜視図であり、図8は、注射台12の背面図である。図9は、注射台12の側面図であり、図10,11は、注射台12の使用例を説明する図である。図7では、上下方向を矢印L、前後方向を矢印Mで示し、幅方向を矢印Nで示す。図7では、フレーム52を放射線遮蔽天板49の上面から上方へ旋回させた状態で示す。図8は、ストッパーによって注射台12の動きが停止している状態を示す。
【0054】
注射台12は、台座47および天板48と、放射線遮蔽天板49および放射線遮蔽側板50と、シート51およびフレーム52とから形成されている。注射台12は、屏障台11を挟んで被検査者17と施術者18との間に配置される。注射台12では、放射線遮蔽天板49と放射線遮蔽側板50とが椅子53に腰掛けた被検査者17の腹部を含む下半身から放射される放射線を遮蔽する略L字形の放射線バリアを形成している(図13参照)。
【0055】
台座47は、上下方向へ延びるステンレス製の4本の垂直脚54と、前後方向および幅方向へ延びるステンレス製の補強脚55と、前後方向へ延びるステンレス製の2本の水平脚56と、幅方向へ延びるステンレス製の1本の取付脚57と、水平脚56に取り付けられた4個のキャスター58とから作られている。それら脚54〜57は、それらの交差部において固定手段(溶接やボルト締め等)を介して連結されている。キャスター58は、取付ボルト(図示せず)を介してそれら水平脚56に回転可能に取り付けられている。
【0056】
注射台12は、キャスター58を介して自由に移動させることができる。なお、図示はしていないが、キャスター58には、車輪の回転を停止させるストッパーが設置されている。台座47の取付脚57の幅方向中央には、注射台12の動きを停止させるフロアストッパー22が設置されている。フロアストッパー22は、図5,6に示すそれと同一であるから、図5,6の説明を援用することで、その説明は省略する。
【0057】
天板48は、ステンレスから作られ、垂直脚54に固定手段(溶接やボルト締め等)を介して連結されている。放射線遮蔽天板49は、天板48の上部に固定手段(溶接やボルト締め等)を介して固定されている。放射線遮蔽天板49は、所定の面積を有する幅方向へ長い矩形に成型され、幅方向へ延びる前後端部59,60と、前後方向へ延びる両側縁部61,62とを有する。
【0058】
放射線遮蔽天板49は、上下方向へ長い矩形の鉛板(図示せず)と、鉛板の全体を包被するステンレス製のカバー板63とから作られている。または、放射線遮蔽ガラス63(鉛ガラス)から作られている。放射線遮蔽天板49は、前後端部59,60の寸法(幅寸法)が30〜70cmの範囲にあり、両側縁部61,62の寸法(長さ寸法)が30〜50cmの範囲にある。鉛板は、その厚みが3〜5mmの範囲、好ましくは、3mmである。放射線遮蔽ガラス63は、その厚みが4〜6mmの範囲にある。
【0059】
放射線遮蔽天板49の前後端部59,60の寸法(幅寸法)が30cm未満であって、両側縁部61,62の寸法(長さ寸法)が30cm未満では、天板49の面積が小さくなり、天板49が被検査者17の腹部を含む下半身を隠すことができず、被検査者17から放射される放射線を遮蔽することが難しい。放射線遮蔽天板49の前後端部59,60の寸法が70cmを超過し、両側縁部61,62の寸法が50cmを超過すると、天板49の面積が必要以上に大きくなり、天板49が放射性薬剤の投与作業の障害となる場合がある。鉛板の厚みが3mm未満または放射線遮蔽ガラス63の厚みが4mm未満では、放射線遮蔽天板49によって放射線を確実に遮蔽することができない場合がある。鉛板の厚みが5mmを超過すると、注射台12の重量が増し、注射台12を円滑に移動させることができない場合がある。
【0060】
放射線遮蔽側板50は、被検査者17の前方に設置される(図12参照)。放射線遮蔽側板50は、垂直柱54および補強脚55と天板48の中間部分とに固定手段(溶接やボルト締め等)を介して固定され、天板48の中間部分から下方へ延びている。放射線遮蔽側板50は、所定の面積を有する上下方向へ長い矩形に成型され、幅方向へ延びる上下端部64,65と、上下方向へ延びる両側縁部66,67とを有する。
【0061】
放射線遮蔽側板50は、幅方向へ長い矩形の鉛板(図示せず)と、鉛板の全体を包被するステンレス製のカバー板68とから作られている。または、放射線遮蔽ガラス68(鉛ガラス)から作られている。放射線遮蔽側板50は、上下端部64,65の寸法(幅寸法)が放射線遮蔽天板49のそれらと同一であり、30〜70cmの範囲にあり、両側縁部66,67の寸法(高さ寸法)が50〜80cmの範囲にある。鉛板は、その厚みが3〜5mmの範囲、好ましくは、3mmである。放射線遮蔽ガラス68は、その厚みが4〜6mmの範囲にある。
【0062】
放射線遮蔽側板50の上下端部64,65の寸法(幅寸法)が30cm未満であって、両側縁部66,67の寸法(高さ寸法)が50cm未満では、側板50の面積が小さくなり、側板50が被検査者17の腹部を含む下半身を隠すことができず、被検査者17から放射される放射線を遮蔽することが難しい。鉛板の厚みが3mm未満または放射線遮蔽ガラス68の厚みが4mm未満では、側板50によって放射線を確実に遮蔽することができない場合がある。鉛板の厚みが5mmを超過すると、注射台12の重量が増し、注射台12を円滑に移動させることができない場合がある。
【0063】
シート51は、放射線遮蔽天板49の上面に交換可能に載置される。シート51には、親水性繊維不織布、織物、編み物、親水性の紙が使用される。シート51は、放射線遮蔽天板49に誤って放射性薬剤がこぼれた場合、その放射性薬剤を吸い取り、天板49を清潔に保持する。繊維不織布としては、親水処理が施されたケミカルボンド不織布、サーマルボンド不織布、エアレイド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、ステッチボンド不織布を例示することができる。
【0064】
フレーム52は、ステンレスから作られ、その平面形状が幅方向へ長い矩形に成型されている。フレーム52は、放射線遮蔽天板49の側縁部61(一側縁部)に蝶番69(旋回手段)を介して設置されている。フレーム52は、図10に矢印で示すように、蝶番69(側縁部61)を中心に放射線遮蔽天板49の上面から上方へ旋回させることが可能である。
【0065】
注射台12では、フレーム52を放射線遮蔽天板49の上面から上方へ旋回させ、天板49の上面にシート51を載せた後、フレーム52を天板49の上面に向かって下方へ旋回させる。フレーム52を放射線遮蔽天板49の上面に向かって旋回させると、図11に示すように、フレーム52が天板49の前後端部59,60および両側縁部61,62(周縁部)に当接し、フレーム52によってシート51が押さえられる。シート51は、放射線遮蔽天板49の前後端部59,60および両側縁部61,62とフレーム52とに挟まれた状態で天板49の上面に固定される。シート51を放射線遮蔽天板49の上面から取り外すには、フレーム52を天板49の上方へ旋回させ、フレーム52によるシート51の押さえを解除する。
【0066】
図12は、放射性薬剤の投与作業の準備の説明図であり、図13は、放射性薬剤の投与作業の一例を説明する図である。なお、放射性薬剤としてFDG注射液を被検査者に投与する場合を例として投与作業を説明する。FDG注射液を被検査者17に投与する場合、施術者18は、注射台12のフレーム52を放射線遮蔽天板49の上面から上方へ旋回させ、天板49の上面に新しいシート51を載せる。放射線遮蔽天板49の上面にシート51を載せた後、フレーム52を天板49の上面に向かって下方へ旋回させ、フレーム52によってシート51を天板49の上面に固定する。
【0067】
施術者18は、キャスター58を利用して注射台12を被検査者17が座る椅子53に近づける。施術者18は、フロアストッパー22のロック用レバー26を足で踏み込んでレバー26を下方へ下げ、設置金具25(ラバー29)を路面30に接地させてキャスター58による注射台12の移動を停止させる。なお、キャスター58に設置されたストッパーを利用してキャスター58の車輪の回転を止める。
【0068】
被検査者17は、図12に示すように、注射台12の放射線遮蔽側板50の反対側に配置された椅子53に腰掛ける。被検査者17が椅子53に腰掛けた場合、注射台12をその正面(放射線遮蔽側板50の前方)から見ると、被検査者17の腹部を含む下半身が注射台12の放射線遮蔽天板49と放射線遮蔽側板50とに隠れる。次に、施術者18は、屏障台11の放射線遮蔽衝立15によって自分の上半身が隠れるように、スポークハンドル34を回転させてシャフト33の上下方向の高さを調節し、それによって衝立15の高さを調節する。
【0069】
なお、放射線遮蔽衝立15が鉛板とカバー板43とから作られている場合、衝立15によって施術者18の頭部を除く上半身が隠れ、衝立15が放射線遮蔽ガラス43から作られている場合、衝立15によって施術者18の頭部を含む上半身全体が隠れる。放射線遮蔽衝立15の高さを調整した後、セットカラー35のボルト36を締め、シャフト33の位置を固定し、衝立15の高さを固定する。施術者18は、放射線遮蔽衝立15の高さを調節した後、キャスター21を利用して屏障具11を注射台12に近づける。なお、屏障具11の物置台16A,16Bには、チューブや注射針、消毒剤等の投与作業に必要な医療用具が置かれる。
【0070】
施術者18は、テーブル金具44のロック解除ボタンを押してロック機構を解除し、第1物置台16Aを下方へ向かって旋回させ、物置台16Aを畳む。屏障具11の脚部20の一部を注射台12の下に進入させ、屏障具11の支持部材14(放射線遮蔽衝立15)を注射台12の放射線遮蔽測板50の近傍に位置させた後、フロアストッパー22のロック用レバー26を足で踏み込んでレバー26を下方へ下げ、設置金具25(ラバー29)を路面30に接地させてキャスター21による屏障具11の移動を停止させる。なお、キャスター21に設置されたストッパーを利用してキャスター21の車輪の回転を止める。
【0071】
被検査者17と施術者18とは、図13に示すように、注射台12と屏障具11とを挟んで対向する。したがって、施術者18から被検査者17を見ると、被検査者17の胸部と頭部とが屏障具11の放射線遮蔽衝立15に隠れ、被検査者17の腹部を含む下半身が注射台12の放射線遮蔽天板49と放射線遮蔽側板50とに隠れる。逆に、被検査者17から施術者18を見ると、施術者18の下半身が注射台12の放射線遮蔽側板50に隠れ、施術者18の頭部を除く上半身または頭部を含む上半身が屏障具11の放射線遮蔽衝立15に隠れる。
【0072】
施術者18は、鉛ケース(図示せず)に収容されたFDG注射液をケースからオートインジェクター(自動注入器)(図示せず)に移し、オートインジェクターにチューブをつなげるとともに、チューブに注射針を取り付け、FDG注射の準備をする。FDG注射の準備が完了した後、施術者18は、テーブル金具44のロック解除ボタンを押してロック機構を解除し、第2物置台16Bを下方へ向かって旋回させ、物置台16Bを畳む。FDG注射の準備ができると、被検査者17は自分の腕を注射台12の放射線遮蔽天板49(シート51)の上に乗せる。施術者18は、屏障具11の放射線遮蔽衝立15に隠れた状態で被検査者17の腕の静脈に注射針を刺し、オートインジェクターのスイッチをONにした後、屏障具11を残した状態で被検査者17から離れるか、または、屏障具11を残した状態でその場で所定時間待機する。
【0073】
オートインジェクターのスイッチをONにすると、FDG注射液がオートインジェクターから注射針を介して被検査者17の静脈に注入される。なお、FDGの注射時や注射後では、被検査者17の全身から放射線が放射される。施術者18は、オートインジェクターのスイッチをONにしてから30〜40秒が経過した後、屏障具11の放射線遮蔽衝立15に隠れた状態でオートインジェクターのスイッチをOFFにし、注射針を被検査者17の腕から抜き取る。次に、施術者18は、チューブをオートインジェクターから取り外し、注射針とともにチューブをビニール袋に収納する。施術者18は、第2物置台16Bを上方に旋回させて物置台16Bを水平にし、その物置台16Bにオートインジェクターやビニール袋を置く。
【0074】
施術者18は、フロアストッパー22の解除用レバー27を足で踏み込んでレバー27を下方へ下げ、設置金具25(ラバー29)による路面30のグリップを解除するとともに、キャスター21のストッパーを解除し、屏障台11を移動可能にし、フロアストッパー22の解除用レバー27を足で踏み込んでレバー27を下方へ下げ、設置金具25(ラバー29)による路面30のグリップを解除するとともに、キャスター58のストッパーを解除し、注射台12を移動可能にする。施術者18は、キャスター21,58を利用して屏障具11および注射台12を移動させ、屏障具11や注射台12とともに被検査者17から離れる。
【0075】
施術者18は、被検査者17から離れた後、注射台12のフレーム52を放射線遮蔽天板49の上方へ旋回させ、フレーム52によるシート51の押さえを解除し、古いシート51を天板49から取り外し、新しいシート51を天板47の上面に載せ、フレーム52を天板49の上面に向かって下方へ旋回させ、フレーム52によってシート51を天板49の上面に固定する。施術者18は、再び屏障台11と注射台12とを次の被検査者17の近くに移動させ、FDG注射液を被検査者17に投与する。
【0076】
放射線防護設備10Aは、屏障台11と注射代12とを利用し、屏障台11および注射代12を被検査者17の近傍に移動させ、注射台12を利用して施術者18が被検査者17に放射性薬剤(たとえば、FDG)を投与する場合、放射性薬剤の注射時や投与後の注射針の抜針時等の薬剤投与作業において被検査者17から放射される放射線が屏障台11の放射線遮蔽衝立15によって遮蔽されるとともに、注射台12の放射線遮蔽天板49や放射線遮蔽側板50によって遮蔽されるから、被検査者17から放射される放射線に施術者18が曝露されることはなく、施術者18の被爆を防ぐことができる。放射線防護設備10Aは、施術者18が注射針の抜針のために被検査者17に近づくときに、被検査者17から放射される放射線を防御しつつ被検査者17に近づくことができ、抜針の後に被検査者17から放射される放射線を防御しつつ被検査者17から離れることができる。
【0077】
放射線防護設備10Aは、こぼれた放射性薬剤を吸い取るシート51が注射台12の放射線遮蔽天板49の上面に交換可能に設置され、そのシート51がフレーム52によって天板49の上面に固定されるから、放射性薬剤の投与作業時に薬剤が誤って天板49にこぼれたとしても、その薬剤をシート51に吸収させることができる。放射線防護設備10Aは、フレーム52を放射線遮蔽天板49の上面から上方へ旋回させ、フレーム52によるシート51の固定を解除した後、放射性薬剤を吸収したシート51を新しいそれに交換することができ、天板49を薬剤によって汚染されていない清潔な状態で使用することができる。放射線防護設備10Aは、注射台12の放射線遮蔽天板49に誤って放射性薬剤をこぼしたとしても、薬剤を吸収したシート51を交換することで、天板49を清潔に保持することができるから、天板49にこぼれた薬剤による被検査者17や施術者18の放射線の被曝を防ぐことができる。
【0078】
放射線防護設備10Aは、シャフト33(支持部材14)がスクリュージャッキ(昇降機構)を介して上下方向へ移動し、施術者18の身長に合わせて放射線遮蔽衝立15の高さを調節することができるから、衝立15を利用して施術者18を隠すことができ、被検査者17から放射される放射線による施術者18の被爆を確実に防ぐことができる。放射線遮蔽衝立15が放射線遮蔽ガラス43から作られている場合、放射線遮蔽ガラス43によって施術者18の頭部を含む上半身全体が隠れたとしても、施術者18がガラス43越しに被検査者17や注射台12を見ることができ、放射性薬剤の投与作業を支障なく行うことができる。また、施術者17の頭部を含む上半身全体を放射線から遮蔽することができ、放射性薬剤の注射時や投与後の注射針の抜針時等の薬剤投与作業に被検査者17の全身から放射される放射線に施術者18の上半身全体が曝露されることはなく、施術者18の被爆を確実に防ぐことができる。
【0079】
放射線防護設備10Aは、注射台12がキャスター58を備えた台座47を有し、キャスター58を利用して注射台12を自由に移動させることができるから、1台の注射台12を別々の被検査者17の近傍に移動させつつ、それら被検査者17に対して放射性薬剤の投与作業を行うことができる。放射線防護設備10Aは、施術者18が注射針の抜針のために被検査者17に近寄るときに、注射台12を利用して被検査者17から放射される放射線を防御しつつ被検査者17に近づくことができ、抜針の後に注射台12を利用して被検査者17から放射される放射線を防御しつつ被検査者17から離れることができる。
【0080】
放射線防護設備10Aは、屏障具11がキャスター21を備えた台座13を有し、キャスター21を利用して屏障具11を自由に移動させることができるから、屏障具11を被検査者17から最適な距離に移動させることができる。放射線防護設備10Aは、検査に必要な医療用具を物置台16A,16Bに置くことができるから、放射性薬剤の注射時や投与後の注射針の抜針時等の薬剤投与作業にそれら医療用具を利用することができ、物置台16A,16Bに置かれた医療用具を使用して注射や抜針を円滑に行うことができる。放射線防護設備10Aは、物置台16A,16Bを支持部材14の下端部へ旋回させることができるから、物置台16A,16Bの非利用時に物置台16A,16Bを畳むことができ、注射時や抜針時に物置台16A,16Bが邪魔をすることはなく、注射や抜針を円滑に行うことができる。
【0081】
放射線防護設備10Aは、フロアストッパー22を利用して屏障具11や注射台12を被検査者17の近傍において停止させることができ、放射性薬剤の注射時や投与後の注射針の抜針時等の薬剤投与作業における屏障具11や注射台12の不用意な移動を防止することができる。放射線防護設備10Aは、フロアストッパー22によって屏障具11や注射台12の動きを止めた状態で、放射性薬剤の注射や注射針の抜針を行うことができるから、被検査者17の安全を保持しつつ放射性薬剤の投与作業を行うことができる。
【0082】
図14は、他の一例として示す放射線防護設備10Bの斜視図であり、図15は、図14の放射線防護設備10Bの側面図である。図14では、上下方向を矢印L、前後方向を矢印Mで示し、幅方向を矢印Nで示す。この放射線防護設備10Bは、注射台12と、注射台12を挟んで被検査者17の反対側に位置する屏障具11とから構成されている。放射線防護設備10Bでは、屏障具11と注射台12とが台座70に設置され、屏障具11と注射台12とが一体になっている。
【0083】
台座70は、上下方向へ延びるステンレス製の4本の支持脚71と、前後方向へ延びるステンレス製の2本の補強脚72と、幅方向へ延びるステンレス製の1本の取付脚73と、支持脚71や補強脚72に取り付けられたキャスター74とから作られている。キャスター74は、取付ボルトを介してそれら脚71,72に回転可能に取り付けられている。放射線防護設備10Bは、キャスター74を介して自由に移動させることができる。なお、図示はしていないが、キャスター74には、車輪の回転を停止させるストッパーが設置されている。台座70の取付脚73の中央には、放射線防護設備10Bの動きを停止させるストッパー22が設置されている。ストッパー22には、フロアストッパー22が利用されている(図5,6参照)。フロアストッパー22は図5,6に示すそれと同一であるから、図5,6の説明を援用することで、その説明は省略する。
【0084】
注射台12は、ステンレス製の天板48と、放射線遮蔽天板49および放射線遮蔽側板50とから形成されている。注射台12は、屏障具11を挟んで被検査者17と施術者18との間に位置している。注射台12では、放射線遮蔽天板49と放射線遮蔽側板50とが椅子53に腰掛けた被検査者17の腹部を含む下半身から放射される放射線を遮蔽するL字形の放射線バリアを形成している(図15参照)。
【0085】
天板48は、各脚注71に固定手段(溶接やボルト締め等)を介して固定されている。放射線遮蔽天板49は、天板48の上部に固定手段(溶接やボルト締め等)を介して固定され、前後方向へ延びている。放射線遮蔽天板49は、所定の面積を有する幅方向へ長い矩形に成型され、幅方向へ延びる前後端部59,60と、前後方向へ延びる両側縁部61,62とを有する。放射線遮蔽天板49は、幅方向へ長い矩形の鉛板(図示せず)と、鉛板の全体を包被するステンレス製のカバー板63とから作られている。または、放射線遮蔽ガラス63(鉛ガラス)から作られている。放射線遮蔽天板49は、前後端部59,60の寸法(幅寸法)が後記する放射線遮蔽衝立15の上下端部39,40の寸法(幅寸法)よりも大きい。放射線遮蔽天板49の前後端部59,60の寸法や両側縁部61,62の寸法(長さ寸法)、鉛板の厚みや放射線遮蔽ガラス63の厚みは、図2の注射台12のそれらと同一である。
【0086】
放射線遮蔽側板50は、放射線遮蔽天板49を挟んで被検査者17の反対側に設置される(図15参照)。放射線遮蔽側板50は、脚柱71および天板48と天板49の前端部59とに固定手段(溶接やボルト締め等)を介して固定され、天板49の前端部59から下方へ延びている。放射線遮蔽側板50は、所定の面積を有する上下方向へ長い矩形に成型され、幅方向へ延びる上下端部64,65と、上下方向へ延びる両側縁部66,67とを有する。放射線遮蔽側板50は、幅方向へ長い矩形の鉛板(図示せず)と、鉛板の全体を包被するステンレス製のカバー板68とから作られている。または、放射線遮蔽ガラス68(鉛ガラス)から作られている。放射線遮蔽側板50は、上下端部64,65の寸法(幅寸法)が放射線遮蔽衝立15の上下端部39,40の寸法(幅寸法)よりも大きい。放射線遮蔽側板50の上下端部64,65の寸法や両側縁部66,67の寸法(高さ寸法)、鉛板の厚み放射線遮蔽ガラス68の厚みは、図2の注射台12のそれらと同一である。
【0087】
屏障具11は、支持部材14と、放射線遮蔽衝立15および物置台16とから形成され、注射台12を挟んで被検査者17と施術者18との間に位置している(図15参照)。支持部材14は、固定手段(溶接やボルト締め等)を介して台座70の取付脚73の中央に固定されている。支持部材14は、取付脚73の直上に設置された筒状の金属製筐体31と、筐体31の直上に設置された上下方向へ長い金属製筒体32と、筐体31および筒体32に挿通された金属製シャフト33とから形成されている。筐体31には、既存のスクリュージャッキ(昇降機構)が内蔵され、スクリュージャッキを作動させるスポークハンドル34が取り付けられている。支持部材14を形成する筐体31や筒体32、シャフト33、スクリュージャッキは、図1の屏障具11のそれらと同一であるから、図1の屏障具11におけるそれらと同一の符号を付すとともに、図1の説明を援用することで、その詳細な説明は省略する。
【0088】
放射線遮蔽衝立15は、シャフト33の上端部に設置され、シャフト33の上端部から上方へ延びている。放射線遮蔽衝立15は、シャフト33の上端部に設置された取付台37の中央に固定手段(溶接やボルト締め等)を介して固定され、取付台37の幅方向両側から上方へ延びる三角形の2枚の支持板38に支持されている。放射線遮蔽衝立15は、所定の面積を有する上下方向へ長い矩形に成型され、幅方向へ延びる上下端部39,40と、上下方向へ延びる両側縁部41,42とを有する。放射線遮蔽衝立15は、上下方向へ長い矩形の鉛板(図示せず)と、鉛板の全体を包被するステンレス製のカバー板43とから作られている。または、放射線遮蔽ガラス43(鉛ガラス)から作られている。放射線遮蔽衝立15は、両側縁部41,42の寸法(高さ寸法)や上下端部39,40の寸法(幅寸法)、鉛板の厚みや放射線遮蔽ガラス43の厚みは、図1の衝立15のそれらと同一である。
【0089】
物置台16(可倒テーブル)は、シャフト33(支持部材14)の上端部に設置され、放射線遮蔽衝立15の前後方向後方へ延びている。物置台16は、その幅寸法が放射線遮蔽衝立15の上下端部39,40の寸法(幅寸法)と略同一であり、テーブル金具44(旋回手段)を利用して支持部材14の上端部から下端部に向かって旋回させることができる。物置台16は図1の屏障具11のそれと同一であるから、図1の屏障具11におけるそれと同一の符号を付すとともに、図1の説明を援用することで、その詳細な説明は省略する。また、テーブル金具44は図1の屏障具11のそれと同一であるから、図1の屏障具11におけるそれと同一の符号を付すとともに、図1の説明を援用することで、その詳細な説明は省略する。
【0090】
図16は、放射性薬剤の投与作業の一例を説明する図である。なお、放射性薬剤としてFDG注射液を被検査者に投与する場合を例として投与作業を説明する。最初に施術者18は、放射線遮蔽衝立15によって自分の上半身が隠れるように、スポークハンドル34を回転させてシャフト33の上下方向の高さを調節し、それによって衝立15の高さを調節した後、セットカラー35のボルト36を締め、シャフト33の位置を固定し、衝立15の高さを固定する。施術者18は、キャスター74を利用して放射線防護設備10Bを投与場所に移動させた後、フロアストッパー22のロック用レバー26を足で踏み込んでレバー26を下方へ下げ、設置金具25(ラバー29)を路面30に接地させてキャスター21による放射線防護設備10Bの移動を停止させる(図6参照)。なお、キャスター74に設置されたストッパーを利用してキャスター74の車輪の回転を止める。
【0091】
被検査者17は、図16に示すように、注射台12の放射線遮蔽側板50の反対側に配置された椅子53に腰掛ける。被検査者17が椅子53に腰掛けた場合、注射台12をその正面(放射線遮蔽側板50の前方)から見ると、被検査者17の腹部を含む下半身が注射台12の放射線遮蔽天板49と放射線遮蔽側板50とに隠れる。放射線遮蔽衝立15が鉛板とカバー板43とから作られている場合、衝立15によって施術者18の頭部を除く上半身が隠れ、衝立15が放射線遮蔽ガラス43から作られている場合、衝立15によって施術者18の頭部を含む上半身全体が隠れる。
【0092】
施術者18は、鉛ケース(図示せず)に収容されたFDG注射液をケースからオートインジェクター(自動注入器)(図示せず)に移し、オートインジェクターにチューブをつなげるとともに、チューブに注射針を取り付け、FDG注射の準備をする。FDG注射の準備が完了した後、施術者18は、テーブル金具44のロック解除ボタンを押してロック機構を解除し、物置台16を下方へ向かって旋回させ、物置台16を畳む。FDG注射の準備ができると、被検査者17は自分の腕を注射台の放射線遮蔽天板49の上に乗せる。施術者18は、屏障具11の放射線遮蔽衝立15に隠れた状態で被検査者17の腕の静脈に注射針を刺し、オートインジェクターのスイッチをONにした後、放射線防護設備10Bを残した状態で被検査者17から離れるか、または、放射線防護設備10Bを残した状態でその場で所定時間待機する。
【0093】
施術者18は、オートインジェクターのスイッチをONにしてから30〜40秒が経過した後、屏障具11の放射線遮蔽衝立15に隠れた状態でオートインジェクターのスイッチをOFFにし、注射針を被検査者17の腕から抜き取る。次に、施術者18は、チューブをオートインジェクターから取り外し、注射針とともにチューブをビニール袋に収納する。施術者18は、物置台16を上方に旋回させて物置台16を水平にし、その物置台16にオートインジェクターやビニール袋を置く。施術者18は、フロアストッパー22の解除用レバー27を足で踏み込んでレバー27を下方へ下げ、設置金具25(ラバー29)による路面30のグリップを解除するとともに、キャスター21のストッパーを解除し、キャスター21を利用して放射線防護設備10Bを移動させ、放射線防護設備10Bとともに被検査者17から離れる。
【0094】
放射線防護設備10Bは、注射台12を利用して施術者18が被検査者17に放射性薬剤(たとえば、FDG)を投与する場合、放射性薬剤の注射時や投与後の注射針の抜針時に被検査者17から放射される放射線が放射線遮蔽衝立15によって遮蔽されるとともに、注射台12の放射線遮蔽天板49や放射線遮蔽側板50によって遮蔽されるから、被検査者17から放射される放射線に施術者18が曝露されることはなく、施術者18の被爆を防ぐことができる。放射線防護設備10Bは、施術者18が注射針の抜針のために被検査者17に近づくときに、被検査者17から放射される放射線を防御しつつ被検査者17に近づくことができ、抜針の後に被検査者17から放射される放射線を防御しつつ被検査者17から離れることができる。
【0095】
放射線防護設備10Bは、図1,2に示す放射線防護設備10Aが有するその他の効果に加え、以下の効果を有する。放射線防護設備10Bは、注射台12と屏障具11とが台座70を介して一体となり、キャスター74を利用して屏障具11および注射台12を同時に移動させることができるから、屏障具11と注射台12とを別々に被検査者17の近傍に移動させる手間を省くことができ、放射性薬剤の投与作業を容易かつ円滑に行うことができる。
【符号の説明】
【0096】
10A 放射線防護設備 10B 放射線防護設備
11 屏障具
12 注射台
13 台座
14 支持部材
15 放射線遮蔽衝立
16 物置台
16A 第1物置台
16B 第2物置台
17 被検査者
18 施術者
21 キャスター
22 フロアストッパー
33 シャフト
39 上端部
40 下端部
41 側縁部
42 側縁部
43 カバー板
43 放射線遮蔽ガラス
44 テーブル金具(旋回手段)
47 台座
49 放射線遮蔽天板
50 放射線遮蔽側板
51 シート
52 フレーム
58 キャスター
59 前端部
60 後端部
61 側縁部
62 側縁部
63 カバー板
63 放射線遮蔽ガラス
64 上端部
65 下端部
66 側縁部
67 側縁部
68 カバー板
68 放射線遮蔽ガラス
69 蝶番(旋回手段)
70 台座
74 キャスター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の検査に使用される放射性薬剤を被検査者に投与する施術者の被爆を防ぐ放射線防護設備において、
前記放射線防護設備が、前記被検査者と前記施術者との間に配置されて該被検査者から放射される放射線を遮蔽する屏障具であり、前記屏障具が、それを移動させるキャスターを備えた台座と、前記台座から上方へ延びていて昇降機構を介して上下方向へ高さを調節可能な支持部材と、前記支持部材の上端部に設置されて該支持部材の上方へ延びる所定面積の放射線遮蔽衝立とから形成されていることを特徴とする放射線防護設備。
【請求項2】
前記屏障具が、前記支持部材の上端部に旋回手段を介して設置されて前記放射線遮蔽衝立の前後方向前方と前後方向後方との少なくとも一方へ延びる所定面積の物置台を備え、前記物置台が、前記旋回手段を中心に前記支持部材の上端部から下端部に向かって旋回可能である請求項1に記載の放射線防護設備。
【請求項3】
前記台座には、前記屏障具のキャスターによる移動を停止させるストッパーが設置されている請求項1または請求項2に記載の放射線防護設備。
【請求項4】
前記放射線遮蔽衝立の高さ寸法が、40〜80cmの範囲、前記放射線遮蔽衝立の幅寸法が、30〜50cmの範囲にある請求項1ないし請求項3いずれかに記載の放射線防護設備。
【請求項5】
前記放射線防護設備が、前記被検査者と前記屏障具との間に配置されて該被検査者から放射される放射線を遮蔽する注射台を含み、前記注射台が、前記放射性薬剤の投与時に被検査者の腕を乗せる所定面積の放射線遮蔽天板と、前記被検査者の前方に設置されて前記放射線遮蔽天板から下方へ延びる所定面積の放射線遮蔽側板と、前記放射線遮蔽天板の上面に交換可能に載置されて該天板にこぼれた前記放射性薬剤を吸い取るシートと、前記放射線遮蔽天板の一側縁部に旋回手段を介して設置されたフレームとを有し、前記注射台では、前記旋回手段を中心に前記フレームを前記放射線遮蔽天板の上面から上方へ旋回させることが可能であり、前記フレームを前記放射線遮蔽天板の上面に旋回させたときに該フレームが該天板の周縁部に当接しつつ前記シートを押さえ、該シートが前記放射線遮蔽天板の上面に固定される請求項1ないし請求項4いずれかに記載の放射線防護設備。
【請求項6】
前記注射台が、それを移動させることが可能なキャスターを備えた台座を有し、前記放射線遮蔽天板と前記放射線遮蔽側板とが、前記台座に設置されている請求項5に記載の放射線防護設備。
【請求項7】
前記台座には、前記注射台のキャスターによる移動を停止させるストッパーが設置されている請求項6に記載の放射線防護設備。
【請求項8】
前記放射線遮蔽天板と前記放射線遮蔽側板との幅寸法が、30〜70cmの範囲、前記放射線遮蔽天板の長さ寸法が、30〜50cmの範囲、前記放射線遮蔽側板の高さ寸法が、50〜80cmの範囲にある請求項5ないし請求項7いずれかに記載の放射線防護設備。
【請求項9】
前記放射線遮蔽衝立と前記放射線遮蔽天板と前記放射線遮蔽側板とが、鉛板または放射線遮蔽ガラスから作られている請求項5ないし請求項8いずれかに記載の放射線防護設備。
【請求項10】
所定の検査に使用される放射性薬剤を被検査者に投与する施術者の被爆を防ぐ放射線防護設備において、
前記放射線防護設備が、注射台と、前記注射台を挟んで前記被検査者の反対側に位置する屏障具とから形成され、前記注射台が、前後方向へ延びていて前記放射性薬剤の投与時に被検査者の腕を乗せる所定面積の放射線遮蔽天板と、前記被検査者の前方に設置され、前記放射線遮蔽天板から下方へ延びる所定面積の放射線遮蔽側板とを有し、
前記屏障具が、前記放射線遮蔽側板を挟んで前記被検査者の反対側に位置し、昇降機構を介して上下方向へ高さを調節可能な支持部材と、前記支持部材の上端部に設置されて該支持部材の上方へ延びる所定面積の放射線遮蔽衝立と、前記支持部材の上端部に旋回手段を介して設置されて前記放射線遮蔽衝立の前後方向後方へ延びる所定面積の物置台とを有し、前記物置台が、前記旋回手段を中心に前記支持部材の上端部から下端部に向かって旋回可能であることを特徴とする放射線防護設備。
【請求項11】
前記注射台と前記屏障具とが、それらを移動させるキャスターを備えた台座に設置されている請求項10に記載の放射線防護設備。
【請求項12】
前記台座には、前記注射台と前記屏障具とのキャスターによる移動を停止させるストッパーが設置されている請求項11に記載の放射線防護設備。
【請求項13】
前記放射線遮蔽衝立の高さ寸法が、40〜80cmの範囲、前記放射線遮蔽衝立の幅寸法が、30〜50cmの範囲にあり、前記放射線遮蔽天板と前記放射線遮蔽側板との幅寸法が、30〜70cmの範囲であって、前記放射線遮蔽衝立の幅寸法と同一またはそれよりも大きく、前記放射線遮蔽天板の長さ寸法が、30〜50cmの範囲、前記放射線遮蔽側板の高さ寸法が、50〜80cmの範囲にある請求項10ないし請求項12いずれかに記載の放射線防護設備。
【請求項14】
前記放射線遮蔽衝立と前記放射線遮蔽天板と前記放射線遮蔽側板とが、鉛板または放射線遮蔽ガラスから作られている請求項10ないし請求項13いずれかに記載の放射線防護設備。
【請求項15】
前記放射性薬剤が、18F−2−フルオロ−2−デオキシグルコース注射液である請求項1ないし請求項14いずれかに記載の放射線防護設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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