説明

放熱性の優れたプリント配線板用銅張積層板

【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本発明は放熱性の優れたプリント配線板用銅張積層板に関する。
(従来の技術)
プリント配線板用銅張積層板には従来有機系リジッド銅張積層板が最も多く使用されてきた。これに対し、重量物を搭載する場合、磁気回路の形成が必要とされる場合、高い寸法精度が要求される場合、高い放熱性が要求される場合などに金属ベース銅張積層板が普及し始めた。
特に最近は表面実装技術の進歩に伴う部品の小型化、集積回路の高集積度化が進み、基板単位面積当りの発熱量が飛躍的に増大している。このため基板の放熱対策は極めて重要な問題となっている。特にパワートランジスターを搭載するハイブリッドIC基板ではその要求が強い。そしてそのための放熱性の優れた基板材料がたとえば「最新プリント配線板技術」(1983年6月10日工調査会刊行)第48頁や「最新ハイブリッドIC技術」(1984年6月1日工調査会刊行)第257頁に記載されている。これらの基板用材料はアルミベース銅張積層板であり、以下に述べるような問題がある。
(発明が解決しようとする問題点)
金属ベース銅張積層板は有機系銅張積層板に比較すれば放熱性は極めて大きく、また金属の種類によってその放熱性に差がある。そして特に放熱性を問題にする場合はコストが高く、重量が大きい銅を避けてアルミニウムが多く使われるが、価格が高く強度が十分でないなどの問題がある。鉄の場合は熱伝導率が小さいほかに錆びやすいという欠点がある。したがって、より低価格で強度が高く、しかも耐食性が優れ熱伝導性が良好な材料が望まれている。
(問題点を解決するための手段)
本発明は、表面の銅箔、中心の樹脂絶縁層およびベースの3層から構成されるプリント配線板用銅張積層板において、Cuを20重量%以上90重量%以下含み、残部が主としてFeからなる組成の鉄銅合金薄板をベースとしたことを特徴とする放熱性の優れたプリント配線板用銅張積層板、および、表面の銅箔、中心の樹脂絶縁層およびベースの3層から構成されるプリント配線板用銅張積層板において、Cuを20重量%以上90重量%以下、Crを2.5重量%以上12重量%以下含み、残部が主としてFeからなる組成の鉄銅クロム合金薄板をベースとしたことを特徴とする放熱性の優れたプリント配線板用銅張積層板である。
(作用)
本発明は放熱性の優れたプリント配線板用銅張積層板としてベースの金属板が具備すべき条件を種々の組合せの合金を用いて検討し、従来使用されることのなかった鉄銅合金および鉄銅クロム合金を用いれば前記各問題点が解決されることを明らかにした。
合金の化学組成の限定理由は以下の通りである。
銅は熱伝導性を向上させ放熱性を高めるためには含有量が高いほど好ましいが、用途上強度の要求が強い場合には鉄の含有量を高めることが望ましい。銅含有量が20重量%未満では良好な放熱性が得られないのでこれを下限とする。また上限を90重量%とするのは、鉄単独または鉄およびクロムの含有量が10重量%未満では組織の微細化に有効にはたらく鉄または鉄クロム富化相の量および分布が不十分になり、本合金特有の強度と放熱性の組合せが得られなくなるからである。
また、端面の錆発生を防止し、材料の耐食性を改善するためクロムを添加することができる。その下限は2.5重量%であり、これ未満ではその効果が充分でない。また、上限を12%とするのは耐食性改善効果が飽和するからである。鉄の耐食性を改善するのに必要なクロム量は通常この下限よりかなり多いと考えられているが、本発明においては全合金中の鉄分が相対的に低いこと、凝固時にクロムの鉄中への配分がより多くなることより、少ない添加量で大きな効果が得られるためである。
さらに、Si、Al、Ti、Ni、Zn、Sn、Nb、Zr、Pの一種または二種以上をAl、Ti、Nb、Zr、Pは0.5%以下、Zn、Siは1%以下、Ni、Snは4%以下の範囲で添加することは強度上昇、加工性、耐食性などの改善に有用な場合が多いので行ってよい。それ以外は原料、溶製およびその後の工程で不可避的に混入される不純物元素とする。
本ベースを製造する方法として造魂−熱延−冷延−焼鈍という工程をとることもできるが、この合金は熱間加工性に乏しいので、双ロール法などの急冷凝固法により直接薄板に鋳造して熱延工程を省略することは、疵の発生を防止し歩留を向上させて製造コストを低下できるという利点を有している。そしてこの方法は組織の微細化・材料の均一化にも有効であるので推奨される。その理由は、一般に凝固時の冷却速度が大きいほど凝固組織のサイズは微細化し、その後に熱処理または冷間圧延−焼鈍を行ってもその効果は保存されるからである。
このように、直接鋳造で薄鋳片を製造する場合でも、鋳片の酸洗、所要の最終板厚にあわせて冷延を行うこと、冷延時の割れ発生防止に必要な熱処理および冷延後の焼鈍・時効処理を必要に応じて行うこと、さらに形状矯正・強度調整のための最終冷延を行うことは通常通りで良い。
また、本ベースにおいては酸洗、冷延、熱処理の適当な組合せにより材料の表面に安定な銅層が形成されるので、鉄系材料に共通な耐食性が低い欠点を補い、錆の発生を防止する上から有利になる。また接着性を高めるためにクロメート処理などの表面処理を必要に応じて行ってよい。
つぎに、本ベースと組合せて使用する材料の中、銅箔は電解法によるものでも圧延法によるものでも差し支えない。
樹脂は通常使用されているエポキシ樹脂をはじめ、BT樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリブタディエン樹脂などの耐熱熱硬化性樹脂のいずれでもよい。また、電気的特性が良好なポリサルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ四弗化エチレンなどの耐熱性熱可塑性樹脂を用いて銅張積層板を製造することもできる。そして放熱性をさらに高めるために樹脂層のなかに良熱伝導性の無機質フィラーを添加すると効果が大きい。
(実施例)
第1表に本発明の成分要件を満たす合金B〜Dと、比較材Aの化学成分を示す。
第2表にガラス布エポキシ基銅張積層板(FR−4グレードア、鉄およびアルミベース銅張積層板と合金A〜Dをベースとした銅張積層板の特性値を示す。この中で、放熱性は基板の上に発熱素子をはんだづけして通電したときの単位入熱当りの温度上昇量によって評価した。これから、本発明の銅張積層板I、J、Kはいずれもアルミベース積層板に匹敵する放熱性を有していることが明らかである。また、その他の銅張積層板の特性においても既存のものに遜色のない結果を示している。




(発明の効果)
本発明は放熱性に優れたプリント配線板用銅張積層板であって、従来の金属ベース銅張積層板に比べ高強度で放熱性が優れたものを経済的に提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】表面の銅箔、中心の樹脂絶縁層およびベースの3層から構成されるプリント配線板用銅張積層板において、Cuを20重量%以上90重量%以下含み、残部が主としてFeからなる組成の鉄銅合金薄板をベースとしたことを特徴とする放熱性の優れたプリント配線板用銅張積層板。
【請求項2】表面の銅箔、中心の樹脂絶縁層およびベースの3層から構成されるプリント配線板用銅張積層板において、Cuを20重量%以上90重量%以下、Crを2.5重量%以上12重量%以下含み、残部が主としてFeからなる組成の鉄銅クロム合金薄板をベースとしたことを特徴とする放熱性の優れたプリント配線板用銅張積層板。

【公告番号】特公平8−4190
【公告日】平成8年(1996)1月17日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭62−285189
【出願日】昭和62年(1987)11月13日
【公開番号】特開平1−128486
【公開日】平成1年(1989)5月22日
【出願人】(999999999)新日本製鐵株式会社
【参考文献】
【文献】特開昭59−168689(JP,A)
【文献】特開昭62−198138(JP,A)
【文献】特開昭53−32372(JP,A)
【文献】特開昭53−44867(JP,A)
【文献】特公昭59−17878(JP,B2)
【文献】特公昭59−17879(JP,B2)