説明

放熱電車線装置

【課題】 カテナリ吊架式電車線路のエアセクション箇所におけるアークの熱によるトロリ線の破断を防止するための電車線装置を提供する。
【解決手段】 カテナリ吊架式電車線路のエアセクション箇所Sにおけるトロリ線Tの上部の所定長さの部分に沿って接触するように高熱伝導性の放熱剛体2を設け、この放熱剛体2のトロリ線Tの軸線方向両端部を固定手段3にてトロリ線Tに固定し、それによって、当該トロリ線Tにかかる張力を放熱剛体2に負担させる。放熱剛体2は、ハンガ5によって、上方の吊架線Mに吊支する。ハンガ5には、放熱剛体2の外周を把持する一対のイヤ片と、下端部において当該一対のイヤ片に結合され、上端部において吊架線Mに掛け止められるハンガバーとを具備させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気鉄道のカテナリ吊架式電車線路設備において、異電源に接続される2つの送電区間を空気絶縁するためのエアセクション箇所に適用される放熱電車線装置に関し、さらに詳しくは、エアセクション箇所のトロリ線に沿うように設けられ、パンタグラフとの間に生じるアークによりトロリ線に生じる熱を効率的に放熱してトロリ線の溶断を防止するための電車線装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
電気鉄道の電車線路設備においては、異電源に接続される送電区間を電気的に絶縁して区分する装置が設けられる。カテナリ式電車線路における区分装置の一つとして、図14に示すように、異電源区間を空気絶縁する構造のエアセクションと称される装置Sがある。エアセクション箇所には、1つの軌道R上に異なる電源につながる2つのトロリ線T1,T2が絶縁間隔をおいてオーバラップするように架設される。エアセクション箇所は、パンタグラフが高速で通過可能であり、通過時に連続して集電できる利点があることから、直流、交流を問わず電気鉄道で広く採用されている。
ところが、エアセクション箇所は、異電源を区分する箇所であるゆえに、2つのトロリ線T1,T2間に電位差が生じることがある。トロリ線T1,T2間に電位差のあるエアセクション箇所に列車Cが停車し、図15に示すように、パンタグラフPCが一方のトロリ線T1に接触し、他方のトロリ線T2に対しては離線状態にあると、離線しているパンタグラフPCとトロリ線T2との間にアークが発生し、このアークの熱によりトロリ線T2が軟化する。カテナリ吊架式電車線路においては、トロリ線に張力をもたせてあるため、軟化によりトロリ線T2の引張強度が低下し、張力に耐えられずに断線に至る事象が発生している。
これまでに、エアセクション箇所におけるトロリ線の断線防止のために、エアセクション箇所に列車を停止させない対策が講じられてきた。しかし、既存のカテナリ式電車線の構造を活用しつつ、エアセクション箇所に列車を停止させた場合にも断線を回避する根本的な対策は講じられていない。
一方、カテナリ式剛体電車線と呼ばれる架線構造が公知である(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたカテナリ式剛体電車線は、下部にトロリ線を挟持する軸線方向の切目を備えた筒状の剛体電車線を、ハンガバーを介し、上方の吊架線から懸垂してなるものである。
地下鉄等で採用される通常の剛体電車線方式は、トロリ線に剛体電車線を沿わせ、これを比較的短い間隔で上方から支持し、トロリ線にも、剛体電車線にも張力をかけない。一方、カテナリ式剛体電車線では、トロリ線に張力をもたせる。これにより、剛体電車線の自重を支持するための支持点の間隔を比較的大きくとれるようにしたものである。いずれの剛体電車線方式も、トロリ線の加熱や破断の防止を考慮したものではない。
【特許文献1】特開平9−277855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は、カテナリ吊架式電車線路のエアセクション箇所におけるアークの熱によるトロリ線の破断を防止するための電車線装置を提供することを目的とする。本発明は、既存のカテナリ吊架式電車線のエアセクション箇所に、放熱電車線装置を適用することで、エアセクション箇所に列車が停止した際にアークが発生した場合、アークによる熱を効率的に放散し、トロリ線の加熱軟化を低減すると共に、トロリ線が軟化した際には、トロリ線に加わる張力を剛体に移行させることで、張力によるトロリ線の引張破壊を回避する。さらに、この発明は、放熱電車線装置を既存架線のエアセクション箇所に、周辺設備の小改修のみにより適用可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、この出願に係る発明においては、カテナリ吊架式電車線路のエアセクション箇所Sにおけるトロリ線Tの上部の所定長さの部分に沿って接触するように高熱伝導性の放熱剛体2を設け、この放熱剛体2の少なくともトロリ線Tの軸線方向両端部を固定手段3にてトロリ線Tに固定し、それによって、当該トロリ線Tにかかる張力を放熱剛体2が負担できるように放熱電車線装置1を構成する。放熱剛体は、トロリ線Tを把持する軸線方向の切目7を下部に備えると共に、トロリ線Tの上部との間に内側空間8を形成する筒状体で構成する。放熱剛体2の延長途上は、ハンガ5によって、上方に架設された吊架線Mに吊支する。ハンガ5は、放熱剛体2の外周を把持する一対のイヤ片32と、下端部において当該一対のイヤ片32に結合され、上端部において吊架線Mに掛け止められるハンガバー33とを具備する。
【発明の効果】
【0005】
この出願に係る発明の放熱電車線装置1によれば、エアセクション箇所Sに列車が停止した際に、トロリ線Tとパンタグラフとの間にアークが発生した場合、これに伴う熱を放熱剛体2に伝導させて効率的に放散し、トロリ線Tの熱による軟化を低減すると共に、トロリ線Tが軟化した際には、トロリ線Tに加わる張力を放熱剛体2に移行させることで、張力によるトロリ線Tの引張破壊を回避することができ、さらに既存架線のエアセクション箇所Sに、周辺設備の小改修のみにより適用可能であるという効果を有する。ハンガ5は、一対のイヤ片32で放熱剛体2の外周を把持することにより、所望の位置で放熱剛体2に結合できる。
以上添付図面の符号を参照して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。図1(a)は放熱電車線装置を設備したエアセクション箇所の模式的正面図、図1(b)はエアセクション箇所における2本のトロリ線を上下にずらして配置した状態の放熱電車線装置の模式的正面図、図2は放熱電車線装置の一部を省略した正面図、図3は放熱剛体の相互接続部分の一部を切断した斜視図、図4は図3におけるIV−IV断面図、図5は放熱剛体と応力緩和部材との接続部の斜視図、図6は放熱剛体と応力緩和部材との接続部の分解斜視図、図7は引留金具の正面図、図8は引留金具の側面図、図9は引留金具の平面図、図10は放熱電車線装置の懸垂状態を示す側面図、図11は同正面図、図12は振れ止め金具の側面図、図13は振れ止め金具の断面図である。
【0007】
図1,図2において、放熱電車線装置1は、カテナリ吊架式電車線路のエアセクション箇所Sにおけるトロリ線T1,T2上に設けられる放熱剛体2と、この放熱剛体2をトロリ線T1,T2に固定する固定手段3とを具備し、その全長は例えば30〜40mである。放熱剛体2は、高熱伝導性で所要の引張強さを有するアルミニウム合金のような金属製で、トロリ線T1,T2の上部の所定長さ部分に沿って接触するように設けられる。固定手段3は、放熱剛体2におけるトロリ線T1,T2の軸線方向両端部をトロリ線T1,T2に固定することにより、当該固定箇所間におけるトロリ線T1,T2にかかる張力を放熱剛体2が負担できるようにする。
【0008】
トロリ線T1に装着された放熱電車線装置1において、図の右側を列車の進入側、トロリ線T2に装着された放熱電車線装置1においは、図の左側を列車の進入側とする。例えば、図1(b)に示すトロリ線T1において、列車が矢印に示すように左方向へ走行するとき、パンタグラフが、右端側から放熱電車線装置1に進入してエアセクション箇所Sを通過し、上方へ引き上げられたトロリ線T1から離れることになる。トロリ線T2についてはその逆である。なお、図ではトロリ線の引き上げ角度が誇張して表現されている。また、図1は各部材の実際の形状を表していない。図2に示すように、放熱剛体2は、常態においてはほぼ直線状であるが、設置状態では、一端側においてトロリ線T1と共に撓むことになる。
【0009】
放熱剛体2の列車進入側端には、固定手段3を介して応力緩和部材4が接続される。トロリ線T1,T2における放熱剛体2の取り付け箇所と非取り付け箇所とでは単位長さあたりの重量が大幅に異なる結果、パンタグラフが両箇所の境界付近を通過するとき過大な機械的衝撃を受けることになる。応力緩和部材4は、両箇所の境界付近における単位長さあたりのトロリ線T1,T2の重量を緩やかに変化させることにより、パンタグラフへの衝撃を緩和し、トロリ線T1,T2との摺動を滑らかにする。応力緩和部材4の全長は、例えば約2mである。
【0010】
放熱剛体2は、所要箇所において、トロリ線T1,T2もろともハンガ5により、吊架線M1,M2から懸垂される。これにより、放熱剛体2の高さが調整される。また、放熱剛体2は、図1に示すように、所要箇所において、振れ止め金具6で支柱Pに支持され、所要の水平方向偏位が付与される。
【0011】
図4において、放熱剛体2は、ほぼ円筒状の筒状体からなり、この形状により風圧特性が均一で風圧変位を抑制できる。放熱剛体2は、下部にトロリ線Tを把持する軸線方向の切目7を備え、切目7付近で肉厚となる構造である。この肉厚部により、トロリ線Tからのアーク熱を可及的に大きく吸収できるようになっている。放熱剛体2の内側には、トロリ線Tの上部との間に内側空間8が形成される。この構造により、軽量化を図ると共に、放熱剛体2の表面積を大きくし、放熱効率を高める。
【0012】
放熱剛体2は、トロリ線の軸線方向に分割された複数の分割体9(例えば全長2.5m)からなり、隣接する分割体同士が一対の外付け接続金具10で相互に連結される。各分割体9は、ハンガ5で吊架線Mに懸垂される(図2,10)。外付け接続金具10は、分割体9の端部の外側面に密着する断面円弧状の当接面11を有し、これにより放熱剛体2の垂直方向の剛性が確保される。接続金具10は、当該接続金具10と分割体9とをトロリ線Tの軸線直交方向に貫通するボルト12により分割体9に固定される。
【0013】
放熱剛体2を構成する各分割体9は、さらに軸線直交方向に2分割された一対の半割体13からなり、一対を軸線直交方向に貫通するボルト30により締め付けられ、相互の下縁間に形成される切目7にトロリ線Tを把持する。
【0014】
図6において、放熱剛体2をトロリ線Tに固定するための固定手段3は、引留金具14と接続金具15とを具備する。
【0015】
図5,6において、引留金具14は、放熱剛体2側の一端とその反対側の他端とを有し、一端側の接続部16において接続金具15を介して放熱剛体2に接続され、他端側の接続部17において応力緩和部材4に接続される。また中間の固定部18において上下方向に貫通する固定ボルト19によりトロリ線Tに固定される。図6ないし8において、引留金具14は、左右一対の構成片20からなる。構成片20の中間の下縁には、相互間にトロリ線Tを把持する把持部21が設けられる。構成片20は、軸線直交方向に貫通するボルト31により締め付けられ、把持部21でトロリ線Tを締め付ける。また、構成片20にはそれぞれ固定ボルト19を螺合するボルト挿通部22が設けられる。固定ボルト19は、ボルト挿通部22を上下方向に貫通して先端がトロリ線Tの上面に圧接される。
【0016】
接続金具15は、四角柱状で、一端側に嵌合部23を、他端側に接続部24を有し、トロリ線T上に配置される。嵌合部23は、放熱剛体2の端部において、当該放熱剛体2とトロリ線Tとの間に形成される内側空間8に嵌合され、ボルト25により放熱剛体2に接続される。接続部24は、当該接続部24と引留金具14の接続部16とを貫通するボルト26により引留金具14に接続される。
【0017】
図2,5,6に示すように、応力緩和部材4は、放熱電車線装置1における列車の進入側に設けられた一方の固定手段3に連続してトロリ線T上に固定される。応力緩和部材4は、一端側の接続部27において引留金具14の接続部17にボルト28で接続され、トロリ線Tの上面に沿って軸線方向に所定長さ延びる。応力緩和部材4は、トロリ線Tの単位長さあたりの重量を列車の進入側から放熱剛体2側に向かって段階的に大きく緩やかに変化させるように設定され、所要箇所で把持部材29によりトロリ線Tに固定される。
【0018】
図10,11に示すように、ハンガ5は、放熱剛体2の外周を把持する一対のイヤ片32と、下端部において当該一対のイヤ片32に結合され、上端部において吊架線Mに掛け止められるハンガバー33とを具備する。
【0019】
ハンガ5の一対のイヤ片32は、放熱剛体2の外周に沿うように湾曲した把持部34と、放熱剛体2の上方において互いに接合する締め付け部35とをそれぞれ具備する。締め付け部35をトロリ線Tの軸線直交方向に貫通するボルト36により互いに締め付けることにより、把持部34間に放熱剛体2を把持する。したがって、ハンガ5は、放熱剛体2の延長途上の任意位置へ取り付けることができる。取り付け位置を延線方向にずらすことで、吊架線Mとの距離が変化するので、ハンガバー33の長さとの微調整を容易に行うことができる。
【0020】
ハンガ5のハンガバー33は、金属帯板材からなり、吊架線Mに掛け回されるループ部27と、このループ部37の下端に連続して互いに接合する一対の接合部38と、この接合部38の下端部に連続して互いに離れる方向に屈折する一対の係合部39とを具備する。ハンガバー33は、接合部38において一対のイヤ片32の締め付け部35間に挟まれ、係合部39において一対のイヤ片32の締め付け部35に係合して抜け止めされる。
【0021】
図12,13に示すように、放熱剛体2をその延長途上において側方の支持物(例えば図1における支柱P)に引き留める振れ止め金具6は、放熱剛体2の外周を把持する一対の把持片40と、先端部において当該一対のイヤ片40に結合され、基端部において側方の支持物に引き留められるアームパイプ41とを具備する。
【0022】
振れ止め金具6の一対の把持片40は、ハンガのイヤ片32とほぼ同形状であり、放熱剛体2の外周に沿うように湾曲した把持部42と、放熱剛体2の上方において互いに接合する締め付け部43とをそれぞれ具備し、当該締め付け部43をトロリ線Tの軸線直交方向に貫通するボルト44で互いに締め付けることにより、把持部42間に放熱剛体2を把持する。一対の把持片40の一方は、側方へ突出した接続部45を具備する。接続部45は、一方の把持片40にボルト46で固着される。
【0023】
振れ止め金具6のアームパイプ41は、先端部に一方の把持片40の接続部45を受け入れるクレビス47を具備し、このクレビス47と接続部45とを上下方向に貫通するピン48により、一方の把持片40に対して水平回転自在に結合される。振れ止め金具6は、一対の把持片40で放熱剛体2の外周を把持することにより固定する。したがって、振れ止め金具6も、放熱剛体2の延長途上の任意位置へ取り付けることができる。
【0024】
トロリ線T1,T2間に電位差のあるエアセクション箇所Sに列車が停車し、離線しているパンタグラフとトロリ線T1,T2との間にアークが発生してトロリ線T1,T2が加熱された場合、この熱を放熱剛体2が吸収し、効率的に放散することにより、トロリ線T1,T2の熱による軟化を低減する。トロリ線T1,T2が軟化した際には、トロリ線T1,T2に加わる張力を放熱剛体2に負担させることで、張力によるトロリ線T1,T2の引張破壊を回避することができる。この放熱電車線装置1は、既存架線のエアセクション箇所に、周辺設備の小改修のみにより、比較的容易に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)は放熱電車線装置を設備したエアセクション箇所の模式的正面図、(b)はエアセクション箇所における2本のトロリ線を上下にずらして配置した状態の放熱電車線装置の模式的正面図である。
【図2】放熱電車線装置の一部を省略した正面図である。
【図3】放熱剛体の相互接続部分の一部を切断した斜視図である。
【図4】図3におけるIV−IV断面図である。
【図5】放熱剛体と応力緩和部材との接続部の斜視図である。
【図6】放熱剛体と応力緩和部材との接続部の分解斜視図である。
【図7】引留金具の正面図である。
【図8】引留金具の側面図である。
【図9】引留金具の平面図である。
【図10】放熱電車線装置におけるハンガの側面図である。
【図11】放熱電車線装置におけるハンガの正面図である。
【図12】放熱電車線装置における振れ止め金具の側面図である。
【図13】図12におけるXIII−XIII断面図である。
【図14】従来のエアセクション箇所の説明図である。
【図15】従来のエアセクション箇所の説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1 放熱電車線装置
2 放熱剛体
3 固定手段
4 応力緩和部材
5 ハンガ
6 振れ止め金具
7 切目
8 内側空間
9 分割体
10 外付け接続金具
11 当接面
12 ボルト
13 半割体
14 引留金具
15 接続金具
16 接続部
17 接続部
18 固定部
19 固定ボルト
20 構成片
21 把持部
22 ボルト挿通部
23 嵌合部
24 接続部
25 ボルト
26 ボルト
27 接続部
28 ボルト
29 把持部材
30 ボルト
31 ボルト
32 イヤ片
33 ハンガバー
34 把持部
35 締め付け部
36 ボルト
37 ループ部
38 接合部
39 係合部
40 把持部
41 アームパイプ
42 把持部
43 締め付け部
44 ボルト
45 接続部
46 ボルト
47 クレビス
48 ピン
M,M1,M2 吊架線
S エアセクション箇所
T,T1,T2 トロリ線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテナリ吊架式電車線路のエアセクション箇所におけるトロリ線の所定長さ部分に沿って、当該トロリ線の上部に接触するように配置され、アーク発生時にトロリ線に加わる熱を拡散する高熱伝導性の放熱剛体と、
この放熱剛体の少なくともトロリ線の軸線方向両端部において、当該放熱剛体を前記トロリ線に固定し、それによって、当該トロリ線の前記固定部間にかかる張力を放熱剛体が負担可能とする固定手段と、
前記放熱剛体をその延長途上において上方に架設された吊架線に吊支するハンガとを具備し、
前記放熱剛体は、下部に前記トロリ線を把持する軸線方向の切目を備え、当該トロリ線の上部との間に内側空間を形成する筒状体からなり、
前記ハンガは、前記放熱剛体の外周を把持する一対のイヤ片と、下端部において当該一対のイヤ片に結合され、上端部において前記吊架線に掛け止められるハンガバーとを具備することを特徴とする放熱電車線装置。
【請求項2】
前記ハンガの一対のイヤ片は、前記放熱剛体の外周に沿うように湾曲した把持部と、前記放熱剛体の上方において互いに接合する締め付け部とをそれぞれ具備し、当該締め付け部をトロリ線の軸線直交方向に貫通するボルトにより互いに締め付け可能に構成され、
前記ハンガのハンガバーは、金属帯板材からなり、前記吊架線に掛け回されるループ部と、このループ部の下端に連続して互いに接合する一対の接合部と、この接合部の下端部に連続して互いに離れる方向に屈折する一対の係合部とを具備し、前記接合部において前記一対のイヤ片の締め付け部間に挟まれ、前記係合部において一対のイヤ片の締め付け部に係合することを特徴とする請求項1に記載の放熱電車線装置。
【請求項3】
カテナリ吊架式電車線路のエアセクション箇所におけるトロリ線の所定長さ部分に沿って、当該トロリ線の上部に接触するように配置され、アーク発生時にトロリ線に加わる熱を拡散する高熱伝導性の放熱剛体と、
この放熱剛体の少なくともトロリ線の軸線方向両端部において、当該放熱剛体を前記トロリ線に固定し、それによって、当該トロリ線の前記固定部間にかかる張力を放熱剛体が負担可能とする固定手段と、
前記放熱剛体をその延長途上において側方の支持物に引き留める振れ止め金具とを具備し、
前記放熱剛体は、下部に前記トロリ線を把持する軸線方向の切目を備え、当該トロリ線の上部との間に内側空間を形成する筒状体からなり、
前記振れ止め金具は、前記放熱剛体の外周を把持する一対の把持片と、先端部において当該一対のイヤ片に結合され、基端部において前記側方の支持物に引き留められるアームパイプとを具備することを特徴とする放熱電車線装置。
【請求項4】
前記振れ止め金具の一対の把持片は、前記放熱剛体の外周に沿うように湾曲した把持部と、前記放熱剛体の上方において互いに接合する締め付け部とをそれぞれ具備し、当該締め付け部をトロリ線の軸線直交方向に貫通するボルトにより互いに締め付け可能に構成され、
前記振れ止め金具の一対の把持片の一方は、側方へ突出した接続部を具備し、
前記振れ止め金具のアームパイプは、先端部に前記一方の把持片の接続部を受け入れるクレビスを具備し、このクレビスと前記接続部とを上下方向に貫通するピンにより、前記一方の把持片に対して相対回転可能に結合されることを特徴とする請求項3に記載の放熱電車線装置。
【請求項5】
前記固定手段は、前記トロリ線の上部に沿って配置される引留金具を具備し、
この引留金具は、前記放熱剛体側の一端と反対側の他端とを有し、一端側の接続部において前記放熱剛体に接続され、他端側の固定部において前記トロリ線に固定されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の放熱電車線装置。
【請求項6】
前記固定手段は、前記引留金具と前記放熱剛体との間に介設される接続金具をさらに具備し、
前記接続金具は、前記放熱剛体の端部において当該放熱剛体と前記トロリ線との間に形成される前記内側空間に嵌合する嵌合部を一端側に有し、トロリ線上に配置され、当該嵌合部と放熱剛体とを貫通するボルトにより放熱剛体に接続され、他端側に前記引留金具に接続される接続部を有し、当該接続部と引留金具とを貫通するボルトにより引留金具に接続されることを特徴とする請求項5に記載の放熱電車線装置。
【請求項7】
前記引留金具は、相互にボルトで締め付けられる一対の構成片からなり、下縁には、相互間に前記トロリ線を把持する把持部を具備し、一対の構成片を上下方向に貫通して先端がトロリ線の上面に圧接される固定ボルトによりトロリ線に固定されることを特徴とする請求項5又は6に記載の放熱電車線装置。
【請求項8】
前記放熱剛体は、トロリ線の軸線方向に分割された複数の分割体からなり、相隣接する当該分割体が、端部の対向両外側面に密着する外付け接続金具と、当該外付け接続金具と分割体とをトロリ線の軸線直交方向に貫通するボルトとにより相互に接続されることを特徴とする請求項1又は3に記載の放熱電車線装置。
【請求項9】
前記放熱剛体は、軸線直交方向に2分割された半割体からなり、軸線直交方向に貫通するボルトにより、相互の下縁間に前記トロリ線を把持するように締め付けられることを特徴とする請求項1又は3に記載の放熱電車線装置。
【請求項10】
前記放熱剛体における列車の進入側に設けられた一方の前記固定手段に連続して、前記トロリ線の軸線方向に所定長さ延びるようにトロリ線上に固定される応力緩和部材をさらに具備し、
この応力緩和部材は、前記トロリ線の単位長さあたりの重量を列車の進入側から前記放熱剛体側に向かって段階的に大きく緩やかに変化させるように重量が設定されることを特徴とする請求項1又は3に記載の放熱電車線装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2010−52682(P2010−52682A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222463(P2008−222463)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(000001890)三和テッキ株式会社 (134)