説明

放送システムおよび放送信号送受信装置および放送信号送信方法

【課題】複数の撮像装置によって撮影された各映像データに対し、視聴者の選択が多い映像データへ、より多くの帯域幅を割り当てて符号化し、重要度の高いデータを伝送エラーから回復しやすくなる方式を提供する。
【解決手段】放送信号送信装置は、視聴者が視聴を選択した映像データの選択結果を集計する手段と、複数の映像データへ重み付けを与える手段と、該重み付けに基づいて帯域幅を割り当てる手段と、該映像データを符号化し、多重化する手段と、映像データを伝送路へ送信する手段と、前記重み付け手段と前記帯域幅割り当て手段と前記符号化手段と前記伝送路送信手段とを前記集計手段による集計結果に基づいて制御する制御手段とを備え、受信装置は、該送信信号を受信し、復号化し、多重化された映像データを分離し、映像データを表示し、映像データの選択結果を前記放送信号送信装置へ送信する手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放送システムおよび放送信号の送受信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
将来のテレビ放送へ提案されているアイディアにマルチカメラアングルというものがある。これは複数のカメラで撮影した映像を放送し、視聴者側で観たいアングルを選択するというもので、スポーツ中継などでの利用が期待されている。このようなマルチカメラアングル放送の実例はほとんどないが、衛星放送のサッカー中継の一部で採用されたことがあり、チーム双方の視点、俯瞰視点、など複数の視点の映像をそれぞれ別々のチャネルで提供していた。このように複数のカメラによって撮影された映像データを送受信する放送システムの先行技術文献として特許文献1がある。特許文献1は、複数のカメラにより撮影した映像データを中継局やテレビ局が圧縮と混合を行い、各家庭の放送受信装置が復調と分離を行って、各カメラの動画像を視聴者が選択できるように復元してテレビモニターへ出力するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開10−13755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された発明では、各カメラの映像データに同じ割合で帯域幅(伝送路容量)を割り当てるため、映像データの圧縮処理や符号化処理を行う際に帯域幅(伝送路容量)の割り当てを工夫することができない。そのため、電波の受信状況が悪く伝送エラーが発生した場合、瞬間的にノイズが発生したり映像が汚くなったりするなどの映像トラブルが発生することがあるが、上記特許文献1においては、これらの映像トラブルは全てのカメラ映像に一様に発生してしまうという課題があった。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、複数のカメラによって撮影された映像データの中で視聴者の選択が多い映像データへ、より多くの帯域幅を割り当てて符号化し、視聴者の選択の少ない映像データへは割り当てる帯域幅を少なくすることによって、伝送路のトータルの帯域幅を増やさずに、視聴者の選択が多い映像データを伝送エラーから回復しやすくなるようにして、帯域幅(伝送路容量)の使用を工夫し、効率的に使用しつつ安定度の高い映像配信を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の放送システムは、複数の撮像装置によって撮影された映像データを送信する放送信号送信装置と、該放送信号を受信し表示装置へ映像データを表示する受信装置と、前記放送信号送信装置と前記受信装置を接続する通信ネットワークを備え、前記放送信号送信装置は、視聴者が視聴を選択した映像データの選択結果を集計する集計手段と、複数の映像データへ重み付けをあたえる重み付け手段と、重み付けに基づいて帯域幅を割り当てる帯域幅割り当て手段と、少なくとも映像データを符号化する情報源符号化手段と、符号化された映像データを多重化する多重化手段と、映像データを伝送路へ送信するための符号化を行う伝送路符号化手段と、前記重み付け手段と前記帯域幅割り当て手段と前記情報源符号化手段と前記伝送路符号化手段とを前記集計手段による集計結果に基づいて制御する制御手段とを備え、前記伝送路符号化手段によって符号化された映像データを復号化する伝送路復号化手段と、前記多重化手段によって多重化された映像データを分離する多重分離手段と、多重分離された映像データの誤りを訂正する誤り訂正手段と、前記情報源符号化手段によって符号化された映像データを復号化する復号化手段と、映像データを表示する表示手段と、映像データの選択結果を前記放送信号送信装置へ送信する手段を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の放送信号送信装置は、上述した放送システム中で使用されるもので、受信装置にて複数の撮像装置によって撮影された複数の映像データを放送信号として送信する放送信号送信装置において、視聴者が視聴を選択した映像データの選択結果を集計する集計手段と、複数の映像データへ重み付けをあたえる重み付け手段と、重み付けに基づいて帯域幅を割り当てる帯域幅割り当て手段と、少なくとも映像データを符号化する情報源符号化手段と、符号化された映像データを多重化する多重化手段と、映像データを伝送路へ送信するための符号化を行う伝送路符号化手段と、前記重み付け手段と前記帯域幅割り当て手段と前記情報源符号化手段と前記伝送路符号化手段とを前記集計手段による集計結果に基づいて制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の放送信号送信装置は、前記制御手段が、視聴者が選択した選択結果が多い映像データに前記重み付け手段が重い重み付けをし、視聴者が選択した選択結果が少ない映像データには前記重み付け手段が軽い重み付けするように制御することを特徴としている。
【0009】
また、本発明の放送信号送信装置は、前記制御手段が、前記重み付け手段が重い重み付けをした映像データに前記帯域幅割り当て手段が多くの帯域幅を割り当て、前記重み付け手段が軽い重み付けをした映像データに前記帯域幅割り当て手段が少ない帯域幅を割り当てるように制御することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の放送信号送信装置は、前記制御手段が、前記帯域幅割り当て手段が割り当てた帯域幅に応じて前記信号源符号化手段が符号化するように制御することを特徴とする。
【0011】
本発明の受信装置は、上述した放送システム中で使用されるもので、前記放送信号を受信する受信装置において、前記伝送路符号化手段によって符号化された映像データを復号化する伝送路復号化手段と、前記多重化手段によって多重化された映像データを分離する多重分離手段と、多重分離された映像データの誤りを訂正する誤り訂正手段と、前記情報源符号化手段によって符号化された映像データを復号化する復号化手段と、視聴者が選択した映像データの選択結果を前記通信ネットワークを介して前記放送信号送信装置へ送信する手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数のカメラによって撮影された映像データを符号化する際に、視聴者の選択結果に応じた帯域幅(伝送路容量)を割り当て符号化することができる。これにより、視聴者の選択の多い映像データに多くの帯域幅(伝送路容量)を割り振ることができるようになるので、視聴者の選択の多い映像データの誤りを復号化する際に、より正確に訂正することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の放送システムの要部構成を示す図
【図2】本発明の符号化多重化装置と受信装置の多重分離復号化装置の構成を示す図
【図3】本発明における放送システムの処理フロー図
【図4】ディジタル放送用データの生成過程の概要図
【図5】本発明における放送システムの処理フロー図
【図6】本発明における放送システムの処理フロー図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための形態について説明する。なお、本発明はこれら実施の形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施可能である。
【0015】
[実施形態1]
図1は実施形態1における放送システムの概要構成を示す模式図であり、撮影現場100、放送信号送信装置101、受信装置102、通信ネットワーク103から構成される。ここで図1には受信装置102を1つだけ記載しているが、実際は各家庭やレストランなどに設置される受信装置の全てを意味している。
【0016】
撮影現場100は、野球場やサッカー場のようなスポーツ競技場やコンサート会場、ドラマの撮影所など主にテレビで放送される番組の撮影現場を示しており、被写体104とこの被写体104を撮影する撮像装置の一種であるカメラ105、106、107がある。ただし、カメラの台数は3台に限られることなく、被写体も1つとは限らない。これらのカメラはそれぞれ別々の場所から被写体を撮影して放送信号送信装置へ映像を送信する。例えば、被写体104が野球の試合である場合、カメラ105は球場のライト側からバッターボックスの打者を撮影し、カメラ106はセンター側から、カメラ107はバックネット側からなどそれぞれが別々の任意の場所から1つまたは複数の被写体を撮影して放送信号送信装置101へ送信する。
【0017】
放送信号送信装置101は少なくとも符号化多重化装置108、放送電波送信装置109、通信IF(Inter Face)114を有しており、撮影現場100からの映像データを受信する。放送信号送信装置101は、初期の映像データはそのまま受信装置102へ送信する。尚、本発明において、初期の映像データは信号処理を行わないため、以下、初期の映像データ以外を処理するフローについて説明する。
【0018】
受信装置102においては視聴者が複数のカメラによって撮影された映像データから所望の映像を選択することができる。例えば、サムネイルのように複数カメラのそれぞれの映像の縮小画像を表示装置へ表示して視聴者が所望の映像を選択してもよいし、複数カメラのそれぞれの映像をテレビチャンネルのように個別に設定し、視聴者がテレビチャンネルを選択するようにカメラ映像を選択するようにしてもよい。視聴者の映像データの選択結果は通信ネットワーク103を通して放送信号送信装置101へ送られる。符号化多重化装置108は受信した視聴者の選択結果に基づいて映像データを信号処理する。このように撮影現場100において撮影された初期の映像データ以外の映像データは、視聴者の映像データの選択結果に基づいて放送信号送信装置101において信号処理される。
【0019】
図2は図1記載の符号化多重化装置108と多重分離復号化装置111のそれぞれの構成ブロック図である。図2に示すように符号化多重化装置108は、集計装置201、制御装置202、重み付け装置203、帯域幅割り当て装置204、情報源符号化装置205、多重化装置206、伝送路符号化装置207を備えている。ここで集計装置201は通信IF(Inter Face)114と接続されており、各受信装置から映像データの選択結果を受信して集計する。制御装置202は集計装置から集計結果を読み込み、集計結果に基づいて重み付け装置203、帯域幅割り当て装置204、情報源符号化装置205、伝送路符号化装置207の各装置の動作を制御する。制御の詳細については後述する。なお、多重化装置206は情報源符号化装置205から出力されたディジタルデータの多重化を行う装置であるが、ここでは制御装置202は視聴者の映像データの選択結果に基づいた特別な制御は行わない。ただし、情報源符号化装置205や伝送路符号化装置207との入出力の接続を取る上で必要な同期を取るなどの制御は行っている。
【0020】
図2に示すように多重分離復号化装置111は、伝送路復号化装置208、多重分離装置209、符号判別装置210、誤り訂正装置211、復号化装置212、映像データ選択装置213を備えている。ここで映像データ選択装置213は、視聴者のリモコンなどの装置による映像データの選択に応じて表示装置112へ映像を表示すると同時に視聴者の映像データの選択結果を通信IFへ送信する。映像データの選択結果は通信IFから通信ネットワークを通じて放送信号送信装置へ送られる。なお通信IFは映像データ選択装置213へ接続されると共に伝送路復号化装置208へも接続されているが、これは映像データが放送電波受信装置110の他に公衆電話網やインターネットなどの通信ネットワークからも配信されることがあり、本発明においても通信IFから映像データを受信可能であることを意図し図示しているものである。ただし、図2においては放送電波受信装置と映像データ選択装置と通信IFとの信号の方向を切り替えるスイッチが必要であるが図示を省略している。
【0021】
図3は実施形態1における放送システムの処理フローであり、先頭にSの付いているものはステップを示している。例えばS12はステップ12である。図3において、S10は撮影現場100の処理であり、S11からS16とS25は放送信号送信装置101の、S17からS24までは受信装置102の処理である。以下に図1および図2図3を参照して説明する。
【0022】
図1の撮影現場100において複数のカメラによって撮影された映像データは、放送信号送信装置へ送信される(図3のS10)。図2の301、302、303は、それぞれ図1のカメラ105、106、107の映像データを示している。制御装置202は集計装置201が集計した各受信装置における視聴者の映像データの選択結果に応じて重み付けを行うように重み付け装置203を制御し(図3のS11)、重み付けに基づいた帯域幅を各映像データに割り当てるように帯域幅割り当て装置204を制御し(図3のS12)、割り当てられた帯域幅に応じて符号化するように情報源符号化装置205を制御する(図3のS13)。なお、ここでいう帯域幅とはディジタル通信で使われる用語であり、本発明においてはビットレートや伝送路容量を意味している。続いて、符号化された映像データは多重化装置206で多重化され(図3のS14)、多重化されたデータを電波として送信するために、制御装置202が伝送路符号化装置207を制御して符号化する(図3のS15)。伝送路符号化装置207の出力は放送電波送信装置109と接続されており、符号化されたデータは放送電波送信装置109から送信される(図3のS16)。
【0023】
上述したS11からS15の処理を、具体例を挙げて説明する。重み付け装置203は映像データ301、302、303を視聴者の選択結果の高い順に重み付けする。例えば、各映像データ301、302、303に対する視聴者の選択結果が352人:120人:10人だった場合、重み付けを選択人数のそのままに352:120:10としたり、30:10:1のように大まかにしたりして重み付けする。また、最も選択数の多いカメラの重みをN、それ以外を1としてN:1:1・・・1の比率に重み付けするなど様々な重み付けが可能である。
【0024】
次に、重み付けに基づいて、帯域幅割り当て装置204が帯域幅を割り当てる。帯域幅の割り当て方法は、基本的には重み付けと同じ比になるよう映像データと誤り訂正符号を割り当てるが、映像のフレームに必要な映像データ量は基本的に同じなので共通とし、誤り訂正符号のみを重み付けの比に割り当てることも可能である。例えば前者の例は、映像データ301、302、303に対して重み付けが5:3:1だった場合、映像データ301に映像データを10バイト、誤り訂正符号を5バイトの計15バイトを割り当て、映像データ302へ映像データを6バイト、誤り訂正符号を3バイトの計9バイトを割り当て、映像データ303へ映像データを2バイト、誤り訂正符号を1バイトの計3バイトを割り当てる。また、後者の例は、映像データ301、302、303に対して重み付けが5:3:1で場合、映像データ301に映像データを10バイト、誤り訂正符号を5バイトの計15バイトを割り当て、映像データ302へ映像データを10バイト、誤り訂正符号を3バイトの計13バイトを割り当て、映像データ303へ映像データを10バイト、誤り訂正符号を1バイトの計11バイトを割り当てる。
【0025】
続いて情報源符号化装置205が、割り当てられた帯域幅に応じて最適な符号化を行う。ここでいう最適とは基本的には帯域幅割り当て装置204で割り当てられた帯域幅を最大限使用する符号化を行うことと定義する。例えば、前述の例では、映像データと誤り訂正符号へ帯域幅割り当て装置204で割り当てられたデータ量のまま割り当てて符号化することである。また、別の方法として、帯域幅割り当て装置204で割り当てた帯域幅とは異なる帯域幅を割り当てて符号化することも可能である。すなわち、映像データに冗長性を付加する割り当てを行っていても、情報源符号化装置205で冗長性を削除して符号化することが可能であるし、映像データからは冗長性を削除せず誤り訂正符号のみを増減して符号化することも可能である。
【0026】
また映像データに応じて、符号化方式を変更することも可能である。本発明は、BCH(Bose-Chaudhuri−Hocquenghem)符号のようにデータの長さを可変にできる同一の符号化方式を各カメラの映像データに適用することが最も適するが、重み付けによって割り当てられた帯域幅に応じて適用する符号化方式を変更しても良い。すなわち、視聴者の選択が多い映像データにはBCH符号のようにデータの長さを可変にできる符号化方式を適用して誤り訂正能力の高くしやすくし、視聴者の選択が少ない映像データにはコンパクト符号のように誤り訂正能力を高くすることよりも冗長性が最小となることを優先して符号化する符号化方式を適用して帯域幅の使用効率を高くしやすくすることも可能である。
【0027】
1つの映像データを伝送するためには最低限必要な帯域幅があり、且つ全カメラの映像データの伝送に使用できる帯域幅の総量にも限界がある。本願では制御装置202が、伝送路へ流せるデータ量の制限や各映像データへ割り当てる帯域幅、使用する符号化方式など様々な条件を考慮して、図2記載の各装置を制御する。
【0028】
誤り訂正は誤り訂正符号の長さが長い方が冗長性を多くすることができ、訂正能力を上昇させるので、このように構成することにより視聴者の選択結果が多い映像データを伝送エラーに対して回復しやすくすることができる。
【0029】
次に、多重化装置206が符号化された映像データを1つの伝送路で伝送を行えるように多重化する。多重化装置206は一般的な多重化処理を行う装置であり、特殊な機能を有していない。ただし、図2における映像データは301、302、303の3つであるが、3つ以上の場合も多重化可能である。多重化されたデータは、伝送路符合化装置207によって伝送可能なデータに符合化され、放送電波送信装置109へ送られる。本実施形態1においては、伝送路符合化装置207による符合化は情報源符号化装置205で行われる符合化とは異なる処理であり、実施形態1においては視聴者の映像データの選択結果に基づいた符号化は行っていない。
【0030】
図3のS17以降の処理を説明する。放送電波送信装置109から送信されたデータを放送電波受信装置110が受信する(図3のS17)。受信データは図2記載の伝送路復号化装置208において復号化される(図3のS18)。これは伝送路符号化装置207で行われた符号化に対して復号する処理である。次に、多重分離装置209がデータを分離する(図3のS19)。この処理は多重化装置206で行われた多重化に対応するものである。続いて符号判別装置210が分離された各データがどのような符号で符号化されているか判別し(図3のS20)、誤り訂正装置211が伝送路において発生したエラー(誤り)の訂正を行い、データを回復し(図3のS21)、復号化装置212が再生可能な映像データに復号する(図3のS22)。これらの処理は情報符号化装置205による符号化に対応するものである。このようにして復号された映像データ301、302、303は、映像データ選択装置213に送られる。視聴者が所望の映像データを選択すると(図3のS23)、選択された映像データが表示装置112に表示されるとともに、選択結果は通信IF113から通信ネットワーク103を通じて放送信号送信装置の通信IF114へ送られる(図3のS24)。放送信号送信装置の集計装置201が各受信装置から送信された視聴者の選択結果を受信し集計する(図3のS25)。制御装置202は集計結果に基づいて、再度重み付け処理(図3のS11)や符号化処理(図3のS12)の制御を行う。
【0031】
以上、説明したように本発明は複数の映像データをそれぞれ符号化する際に、視聴者の選択結果に応じて各映像データへの帯域幅の割り当て量を変更し、視聴者が多く選択している映像データに対しては多くの帯域幅を割り当てて符号化し伝送するものである。
【0032】
なお、以上の説明では、カメラによる撮影データも放送信号送信装置101や受信装置102によって処理されるデータも映像データと呼び、映像データの処理として説明したが、本発明は映像データに限定されない。例えば図2の301、302、303は、それぞれ図1のカメラ105、106、107の映像データとしたが、それぞれのカメラにマイクを備え映像データと共に音声データも符号化多重化装置108へ送り、映像データと同様に音声データにも本願発明を適用することが可能である。また、それぞれのマイクの音声データには本願を適用せずに同じ帯域幅を割り当てることも可能であるし、マイクの音声データを使用しないで映像データへの帯域幅割り当てを増やすことも可能である。また、撮影現場のカメラによる映像データや音声データ以外に、文字スーパーや副音声などの音声データや番組情報などが放送信号送信装置101によって追加されることがあるが、これらについても本願発明を適用することが可能であるし、従来手法を適用することも可能である。
【0033】
また、本来の放送システムでは、図1に図示していない符号化装置や変調装置、屋内配線やルータなどが存在するが、ここでは発明に必要な構成部のみ図示している。また、図1では放送電波送信装置109と放送電波受信装置110は電波塔115とアンテナ116とで電波を送受信しているが、実際は、放送衛星(BS)や通信衛星(CS)、基幹放送所(東京タワーなど)、中継放送所やアクセスポイントなどによっても電波の送信が行われるし、受信アンテナも様々なものが適用可能である。また表示装置112も家庭のテレビに限定せず、ディジタル携帯電話、自動車のカーナビゲーションやパーソナルコンピュータなど、地上波ディジタル放送やワンセグ、フルセグなど映像データを受信し表示できるものであれば適用可能なことはいうまでもない。また、通信ネットワーク103は、公衆電話網やインターネットなどであり、受信装置102はこれら公衆電話網やインターネットなどの通信ネットワークを介して放送局やサーバ、アクセスポイントなどと双方向サービスを確立している。よって受信装置102は基幹放送所や衛星からだけではなく、通信ネットワークを介して映像信号を受信することもある。
【0034】
このように映像データの送受信は様々な方式と伝送路において行われるが、データ送信源からの距離が遠かったり、山や建物などの反射により電波の干渉が発生したりするなどして受信状態が悪くなる場合があり、フレームの欠損、フレーム内のデータ破壊などの伝送エラーを瞬間的に発生することがある。
【0035】
本願発明によれば、視聴者の選択が多い映像データへより多くの帯域幅を割り当てることにより、視聴者の選択が多い映像データを伝送エラーから回復しやすくなるように符号化することができるので、電波の受信状態の悪い場合でも視聴者の選択が多い映像データを回復させることができるようになり、安定度の高い映像配信を実現することが可能になる。
【0036】
[実施形態2]
実施形態2はディジタル放送に本発明を適用する実施例である。図4はディジタル放送におけるディジタル放送用データの生成過程の概略図である。図4について説明する。情報源符号化の過程において、映像信号、音声信号は、それぞれMPEG2 Video、MPEG2 AACと呼ばれる符号化方式で圧縮される。次に、多重化の過程において、PES(ペス、Packetized Elementary Stream)と呼ばれる形式に変換される。一方、その他のデータやチャンネル情報、番組情報はSection(セクション)と呼ばれる形式に変換される。これらPES形式のデータとSection形式のデータは、図示していない字幕文字やスーパーがPES化されたデータやSI(Service Information、番組配列情報)と呼ばれるSection形式データなどとともに、1つのまとまったTS(トランスポートストリーム:Transport Stream)と呼ばれる信号へ多重化する多重化処理が行われる。この多重化処理によってTSパケットと呼ばれる188バイト固定長のパケットに分割される。TSパケットは一般的にMPEG2−TSとかMPEG−TSなどと呼ばれている。次に、TSパケットは図4における伝送路符号化の過程において、伝送路の特性にあわせた伝送符号化が行われる。伝送路符号化処理においては、誤り訂正符号付加や伝送フレーム化、ディジタル変調などの他にエネルギー拡散やインタリーブなども行われる。
【0037】
実施形態2を図1、図2、図4、図5を参照して説明する。図5は実施形態2における放送システムの処理フローである。実施形態2の処理フローは実施形態1の処理フローである図3とかなりのステップが重複するので、図5には実施形態2の特徴を説明するためのステップのみ記載している。図5のS26、S27、S28、S29の処理が図3とは異なっている。
【0038】
ディジタル放送におけるTSパケットは通常188バイトの固定長だが、放送などの現場では先頭に4バイトのタイムスタンプを付加したり、20バイトのFEC(Forward Error Correction:順方向誤り訂正)を付加したりすることがある。実施形態2においては、このような拡張領域を誤り訂正符号として使用することに特徴がある。例として20バイトのFECを使用することを説明する。図2記載の制御装置202は、S11で行われた重み付けに基づいて、誤り訂正符号の帯域幅を各映像データに割り当てるように帯域幅割り当て装置204を制御する(図5のS26)。例えば、S11における映像データ301、302、303に対する重み付けが5:3:2だった場合、上記20バイトのFECを映像データ301、302、303にそれぞれ10バイト、6バイト、4バイトに分けて付加するように設定する。ただし実際の訂正符号の付加はここでは行わない。次に、制御装置202は情報源符号化装置205を制御してカメラの映像データを符号化し(図5のS27)、多重化装置206が多重化を行う(図5のS28)。S27とS28はそれぞれ図4に示した情報源符号化と多重化に相当する。次に、伝送路符号化装置207がS26における設定に従い、誤り訂正符号を付加し電波として送信するための符号化を行うように制御装置202が制御する(図5のS29)。本実施形態2においては上述したS26による設定に基づいて、伝送路符号化装置207がS29の処理により、映像データ301、302、303にそれぞれ10バイト、6バイト、4バイトの誤り訂正符号を付加する。実施形態1においては割り当てられた帯域幅に応じて符号化を行ったが、実施形態2においては割り当てに応じて誤り訂正符号の付加する量を変更することに特徴がある。
【0039】
以上、説明したように実施形態2は、複数の映像データをそれぞれ符号化する際に、必ずしも使用が必須とされていない拡張のデータ領域を使用して、視聴者の選択結果に応じて各映像データへ誤り訂正符号を付加するものである。
【0040】
なお、上記説明にて20バイトのFECを使用する例を示したが、4バイトのタイムスタンプを使用しても良いし、MPEG2−TSパケットを構成するヘッダ領域やPESデータやSectionデータなどもデータ長は可変長なので、これら各データ量を調整して使用することも可能である。この場合、全体のデータ量が帯域幅に収まるようにする。例えば、ビットレートを16.85Mbpsの帯域幅に収まるようにする。
【0041】
このように構成することにより、従来からあるディジタル放送の帯域幅を圧迫することなく全映像データに誤り訂正符号を付加できるようになるので、効率的に帯域幅を使用しつつ全ての映像データの伝送品質を向上させることが可能になる。
【0042】
[実施形態3]
実施形態3は実施形態1と実施形態2に示した符号化処理の両方を行う例である。実施形態3を説明する構成図は図1、図2であり、処理フロー図は図6である。
【0043】
実施形態1では、視聴者の映像データの選択結果に応じて重み付け装置203と帯域幅割り当て装置204によって映像データごとに割り当てられた帯域幅量を満たすように、情報源符号化装置205が映像データを符号化処理するもので、後段の多重化装置206や伝送路符号化装置207の処理には視聴者の映像データの選択結果は影響していない。一方、実施形態2では、視聴者の映像データの選択結果に応じて重み付け装置203と帯域幅割り当て装置204によって映像データごとに割り当てられた帯域幅量を満たすように誤り訂正符号を伝送路符号化装置207が付加しているもので、情報源符号化装置205や多重化装置206の処理には視聴者の映像データの選択結果は影響していない。
【0044】
実施形態3においては、図6に示すように実施形態1のS10からS14と実施形態2のS29の処理を行うものである。なお図6には実施形態3の特徴を説明するためのステップのみ記載している。図6に示すように、視聴者の映像データの選択結果に応じて映像データの重み付けを行い(図6のS11)、重み付けに基づいた帯域幅を割り当て(図6のS12)、映像データを符号化し(図6のS13)、符号化された映像データを多重化(図6のS14)したのち、誤り訂正符号を付加して伝送用の符号化を行う(図6のS29)。このように制御装置202が信号源の符号化と誤り訂正符号の付加の両方の制御を行うように構成することで、例えば将来的に映像データの仕様が変更され、映像データの形式によって信号源の符号化と伝送路の符号化の両方もしくはどちらか一方が固定符号長になるなどの制限が設けられたとしても本発明を実施することが可能になる。
【0045】
また、例えば、情報源符号化装置205と伝送路符号化装置207を実現するハードウエアの電気的特性に応じて制御装置202が処理を振り分けることも可能になる。情報源符号化装置205の方が、回路動作が複雑で消費電力が多い場合は、伝送路符号化装置207で優先的に処理されるように制御装置202が制御することで消費電力を削減することができる。
【0046】
以上、説明したように視聴者の映像データの選択結果に応じて、情報源符号化装置における符号化と伝送路符号化装置における符号付加との両方を制御することによって柔軟な信号処理を実現することが可能になる。また本実施形態3においても実施形態1と実施形態2と同様の効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る放送システムおよび放送信号送受信装置は、複数の複数のカメラによって撮影された映像データから視聴者が所望とする映像データを選択できる放送システムに適用することが出来る。
【符号の説明】
【0048】
100 撮影現場
101 放送信号送信装置
102 受信装置
103 通信ネットワーク
104 被写体
105、106、107 カメラ
108 符号化多重化装置
109 放送電波送信装置
110 放送電波受信装置
111 多重分離復号化装置
112 表示装置
113、114 通信IF
115 電波塔
116 アンテナ
201 集計装置
202 制御装置
203 重み付け装置
204 帯域幅割り当て装置
205 情報源符号化装置
206 多重化装置
207 伝送路符号化装置
208 伝送路復号化装置
209 多重分離装置
210 符号判別装置
211 誤り訂正装置
212 復号化装置
213 映像データ選択装置
301、302、303 映像データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の撮像装置によって撮影された映像データを送信する放送信号送信装置と、該放送信号を受信し表示装置へ映像データを表示する受信装置と、前記放送信号送信装置と前記受信装置を接続する通信ネットワークを備える放送システムにおいて、
前記放送信号送信装置は、
視聴者が視聴を選択した映像データの選択結果を集計する集計手段と、
複数の映像データへ重み付けをあたえる重み付け手段と、
重み付けに基づいて帯域幅を割り当てる帯域幅割り当て手段と、
少なくとも映像データを符号化する情報源符号化手段と、
符号化された映像データを多重化する多重化手段と、
映像データを伝送路へ送信するための符号化を行う伝送路符号化手段と、
前記重み付け手段と前記帯域幅割り当て手段と前記情報源符号化手段と前記伝送路符号化手段とを前記集計手段による集計結果に基づいて制御する制御手段とを備え、
前記受信装置は、
前記伝送路符号化手段によって符号化された映像データを復号化する伝送路復号化手段と、
前記多重化手段によって多重化された映像データを分離する多重分離手段と、
多重分離された映像データの誤りを訂正する誤り訂正手段と、
前記情報源符号化手段によって符号化された映像データを復号化する復号化手段と、
映像データを表示する表示手段と、
映像データの選択結果を前記放送信号送信装置へ送信する手段を備えることを特徴とする放送システム。
【請求項2】
複数の撮像装置によって撮影された複数の映像データを放送信号として送信する放送信号送信装置において、
視聴者が視聴を選択した映像データの選択結果を集計する集計手段と、
複数の映像データへ重み付けをあたえる重み付け手段と、
重み付けに基づいて帯域幅を割り当てる帯域幅割り当て手段と、
少なくとも映像データを符号化する情報源符号化手段と、
符号化された映像データを多重化する多重化手段と、
映像データを伝送路へ送信するための符号化を行う伝送路符号化手段と、
前記重み付け手段と前記帯域幅割り当て手段と前記情報源符号化手段と前記伝送路符号化手段とを前記集計手段による集計結果に基づいて制御する制御手段とを備えることを特徴とする放送信号送信装置。
【請求項3】
前記制御手段は、視聴者が選択した選択結果が多い映像データに前記重み付け手段が重い重み付けをし、視聴者が選択した選択結果が少ない映像データには前記重み付け手段が軽い重み付けするように制御することを特徴とする請求項2記載の放送信号送信装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記重み付け手段が重い重み付けをした映像データに前記帯域幅割り当て手段が多くの帯域幅を割り当て、前記重み付け手段が軽い重み付けをした映像データに前記帯域幅割り当て手段が少ない帯域幅を割り当てるように制御することを特徴とする請求項3記載の放送信号送信装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記帯域幅割り当て手段が割り当てた帯域幅に応じて前記情報源符号化手段が符号化するように制御することを特徴とする請求項4記載の放送信号送信装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記帯域幅割り当て手段が割り当てた帯域幅に応じて前記伝送路符号化手段が符号化するように制御することを特徴とする請求項4記載の放送信号送信装置。
【請求項7】
請求項2記載の放送信号送信装置から送信される放送信号を受信し表示装置へ映像データを表示する受信装置であって、
前記伝送路符号化手段によって符号化された映像データを復号化する伝送路復号化手段と、
前記多重化手段によって多重化された映像データを分離する多重分離手段と、
多重分離された映像データの誤りを訂正する誤り訂正手段と、
前記情報源符号化手段によって符号化された映像データを復号化する復号化手段と、
視聴者が選択した映像データの選択結果を通信ネットワークを介して前記放送信号送信装置へ送信する手段を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項8】
受信装置にて複数の撮像装置によって撮影された複数の映像データから視聴者が視聴するために選択した映像データの選択結果を集計する集計工程と、
複数の映像データへ重み付けをあたえる重み付け工程と、
重み付けに基づいて帯域幅を割り当てる帯域幅割り当て工程と、
映像データを符号化する情報源符号化工程と伝送路符号化工程と、
符号化された映像データを多重化する多重化工程と、
前記重み付け工程と前記帯域幅割り当て工程と前記情報源符号化工程と前記伝送路符号化工程とを前記集計工程による集計結果に基づいて制御する制御工程とを備えることを特徴とする放送信号送信方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−151566(P2011−151566A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10622(P2010−10622)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】