説明

放送信号再送信装置

【課題】放送信号の切り替えを最適なタイミングで行う。
【解決手段】アナログ放送信号を所定の外部装置へ送信する放送信号再送信装置において、送信側からのデジタル放送信号を受信して再送信用のアナログ放送信号に変調するアナログ変調部と、前記アナログ変調部から得られる第1の放送信号と、送信側から外部入力されるアナログ放送からなる第2の放送信号とを切り替えて出力するための切り替え信号の出力のタイミングを制御するための時刻計測部と、前記第1の放送信号と前記第2の放送信号とを切り替えるための許可条件を設定する切り替え許可設定部と、前記切り替え許可設定部により得られる切り替え可能期間内に、前記時刻計測部により得られる切り替え信号を受信した場合に、前記第1の放送信号と、前記第2の放送信号とを切り替えて出力する切り替え部とを有することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送信号再送信装置に係り、特に放送信号の切り替えを最適なタイミングで行うための放送信号再送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
日本では、2011年7月24日に、地上アナログ放送が終了し、地上デジタル放送に完全移行することが予定されている。この移行に際し、総務省情報通信審議会第4次中間答申では、アナログ放送において放送の電波によりカバーしている地域は、放送事業者の自助努力により100%カバーすることを基本として取り組んでいるが、これらの取り組みにもかかわらず、平成23(2011)年時点においてデジタル放送を送り届けることができない地域が存在することは避けられないと考えられている。
【0003】
また、このような地域で、難視聴を発生させることなく、アナログ放送を受信していた国民が引き続きデジタル放送を受信できる環境を整備することを目的として、衛星を使って全国をカバーするセーフティネットの措置を講ずることについて検討されている。
【0004】
ここで、上述した衛星によるセーフティネットの実施を仮定すると、セーフティネットの対象がテレビ共同受信施設エリアの場合、受信点で当該セーフティネット放送を受信して施設に再送信することが考えられるが、共同受信施設の接続世帯の中には地上アナログ放送用のテレビしか所有していない「セーフティネット放送対応テレビの未所有世帯(以下、未所有世帯という。)」の存在が想定される。
【0005】
そこで、このような未所有世帯の救済(テレビ視聴の継続)手段として、セーフティネット放送であるデジタル放送を地上アナログ放送の信号形式に変換して共同受信施設に再送信(デジアナ再送信)する所謂デジアナ変換型ヘッドエンド装置(放送信号再送信装置)の提供が技術的な選択肢として考えられる。
【0006】
この具体的な手法としては、例えばBS(Broadcasting Satellite)デジタル放送を他の受信信号と共に再送信する方法としては、ヘッドエンド装置(放送信号再送信装置)側で、BSデジタル放送が受信可能なBSデジタルチューナを用いて、所定放送チャンネルのBSデジタル放送を選局・復調し、更にアナログテレビ放送信号生成用の変調器を用いて、その復調した映像信号及び音声信号から所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号(日本国内の場合、NTSC(National Television Standards Committee)方式のテレビ放送信号)を生成し、その生成したアナログテレビ放送信号を端末側に伝送する手法がある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−247546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述したような従来のヘッドエンド装置(放送信号再送信装置)により放送信号を提供する場合には、放送信号の切り替えタイミングが問題となる。
【0008】
ここで、図1は、放送信号の切り替えにおけるタイムスケジュールの一例を説明するための図である。例えば、図1(a)に示すように、セーフティネット放送を受信してデジアナ再送信する場合には、地上アナログ放送の終了時点まで県域放送を再送信し、当該放送が終了する時点で、地上アナログ放送終了前に放送されているセーフティネット放送に切り替えて、デジアナ変換して再送信する必要がある(図1(a)に示す切り替えタイミング(A))。また、セーフティネット放送が終了までに、未所有世帯等に対して地上デジタル放送によるデジアナ再送信ができるように中継局整備等を行い、地上デジタル放送に切り替える必要がある(図1(a)に示す切り替えタイミング(B))。
【0009】
つまり、このような信号の切り替えを行う場合には、共同受信施設における再送信信号の切り替え工事が必要となり、地上アナログ放送の終了の時期(例えば、2011年7月等)に工事が集中した場合には、アナログ放送終了時までに工事が完了しないことも想定され、このときセーフティネット放送を受信できない期間が生じるという問題がある。このため、切り替え工事を伴うことなく、地上アナログ放送とセーフティネット放送のデジアナ再送信とが、自動的に切り替わるデジアナヘッドエンド装置を提供する必要がある。
【0010】
更に、図1(a)の場合には、セーフティネット放送によるデジアナ再送信と地上デジタル放送の再送信との切り替え工事が必要となり、その工事がセーフティネット放送終了の時点までに完了しない場合には、地上デジタル放送を視聴できない空白期間が生じるという問題が生じる。
【0011】
また、図1(b)に示すように、地上デジタル放送の中継局電波を受信してデジアナ再送信する場合には、例えば地上の中継局による地上デジタル放送電波が受信可能な集合住宅や宿泊施設等の事業所を想定して、その共同受信設備にデジアナヘッドエンド装置を設置する場合が考えられる。
【0012】
このような場合には、上述した共同受信設備では、遅くとも2011年7月24日までは、地上アナログ放送を受信して再送信しており、地上放送を再送信しない空白期間が生じることを避けるために、デジアナヘッドエンド装置の稼動(デジアナ再送信の開始)を地上アナログ放送の終了のタイミングとする必要がある(図1(b)に示す切り替えタイミング(C))。このとき、デジアナ再送信を行うための入力信号の切り替えを自動的に行うことが課題となる。
【0013】
また、地上放送が完全にデジタル化する時期以降(2011年7月24日以降)、周波数資源の有効利用を目的として、地上デジタル放送のチャンネル割り当てが変更されることになっている(通称、チャンネルリパッキングという。)。
【0014】
このとき、共同受信設備でデジアナ再送信を開始した後にチャンネルリパッキングが実施されるが、デジアナヘッドエンド装置の受信チャンネルをリパッキングされたチャンネルに変更する必要があり、この切り替えの時期に同時にデジアナ再送信用の信号を切り替えることが考えられる(図1(b)に示す切り替えタイミング(D))。このとき、デジアナ再送信を行うための入力信号の切り替えを自動的に行うことが課題となる。
【0015】
なお、上述の課題を解決する別の方法として、予め共同受信施設に県域放送とセーフティネット放送の両方(例えば、各々7波の計14波)を伝送することが考えられる。しかしながら、施設の伝送帯域が狭い場合(例えば、約222MHzでチャンネル数が22程度の場合)には、再送信信号の一部を隣接させて伝送(隣接伝送)する必要が生じる。
【0016】
また、上述の隣接伝送をする場合には、地上アナログ放送信号の形式に変調する際にチャンネル間の干渉が発生しないように専用のフィルタが必要となり、例えばVSB−AM(直交位相抑圧残留側波帯振幅変調)方式を採用する必要が生じるため、ヘッドエンド装置のコストが高価格化する問題がある。
【0017】
そこで、ヘッドエンド装置を低廉に製作するために、例えば2つの伝送チャンネルの間に、1つ空きチャンネルを設ける隣々接(隔チャンネル)による伝送を前提としたフィルタの不要なDSB−AM(両側側波帯振幅変調)方式を採用することができるが、上述したように、再送信信号の全てを隣接させずに伝送する場合には、DSB−AM方式が採用できない。したがって、県域放送とセーフティネット放送の両方を伝送することについては、コスト面での課題が別に存在することになる。
【0018】
更に、例えば地上デジタル放送の中継局整備等によりセーフティネット放送が終了した時点で、デジアナヘッドエンド装置が不要になり廃棄されることが想定されるが、そのような場合には、資源・環境保護の観点から問題がある。そのため、セーフティネット放送の終了後にも廃棄することなく装置が有効に活用できるように、上述のように整備された中継局等から受信した地上デジタル放送信号をデジアナ変換する機能を備えておくことが好ましい。
【0019】
本発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであり、放送信号の切り替えを最適なタイミングで行うための放送信号再送信装置(ヘッドエンド装置)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するために、本件発明は、以下の特徴を有する課題を解決するための手段を採用している。
【0021】
請求項1に記載された発明は、アナログ放送信号を所定の外部装置へ送信する放送信号再送信装置において、送信側からのデジタル放送信号を受信して再送信用のアナログ放送信号に変調するアナログ変調部と、前記アナログ変調部から得られる第1の放送信号と、送信側から外部入力されるアナログ放送からなる第2の放送信号とを切り替えて出力するための切り替え信号の出力のタイミングを制御するための時刻計測部と、前記第1の放送信号と前記第2の放送信号とを切り替えるための許可条件を設定する切り替え許可設定部と、前記切り替え許可設定部により得られる切り替え可能期間内に、前記時刻計測部により得られる切り替え信号を受信した場合に、前記第1の放送信号と、前記第2の放送信号とを切り替えて出力する切り替え部とを有することを特徴とする。
【0022】
請求項1記載の発明によれば、放送信号の切り替えを最適なタイミングで行うことができる。これにより、例えば地上デジタル放送によるデジアナ再送信が確実且つシームレスに行うことができる。したがって、視聴者の利便性を格段に向上させることができる。
【0023】
請求項2に記載された発明は、前記第2の放送信号の内容を監視し、前記第2の放送信号の放送終了後に表示される所定の告知放送の開始を検出する信号監視部を有することを特徴とする。
【0024】
請求項2記載の発明によれば、放送信号の切り替えを促す告知放送の開始を検出することで、ユーザに切り替えさせるのではなく、装置側で自動的に切り替えを行うことができる。これにより、より確実に放送信号の切り替えを行うことができる。
【0025】
請求項3に記載された発明は、前記切り替え部は、前記信号監視部により得られる検出信号を受信したタイミングで、前記第2の放送信号から前記第1の放送信号に切り替えて出力することを特徴とする。
【0026】
請求項3記載の発明によれば、より確実に放送信号の切り替えを行うことができる。
【0027】
請求項4に記載された発明は、前記時刻計測部の時刻を調整するための基準時刻信号(JJY)を受信する基準時刻受信部を有することを特徴とする。
【0028】
請求項4記載の発明によれば、正確な時刻での放送信号の切り替えを行うことができる。これにより、例えば地上デジタル放送によるデジアナ再送信が確実且つシームレスに行うことができる。
【0029】
請求項5に記載された発明は、前記信号監視部による前記告知放送の開始を検出したタイミングに合わせて、電源の起動を行う電源起動制御部を有することを特徴とする。
【0030】
請求項5記載の発明によれば、切り替え時のみ使用する構成部分等については、切り替えを行うときまで停止させておくことができる。これにより、省電力化を実現することができる。
【0031】
請求項6に記載された発明は、予め複数の電源を設けておき、前記複数の電源のうち1つを用いて前記アナログ変調部を起動させ、前記送信側からのデジタル放送信号を受信によりアナログ変調部が動作したときに流れる電流を検知する電流検知部と、前記電流検知部により検知された値により前記複数の電源のうちの他の電源を起動するよう制御する電源起動制御部とを有することを特徴とする。
【0032】
請求項6記載の発明によれば、電流を検知することで、他の特別な構成を付加することなく、電源の起動のタイミング又は放送信号の切り替えのタイミングを容易且つ確実に取得することができる。
【0033】
請求項7に記載された発明は、前記電源起動制御部における前記複数の電源の起動タイミングを分散させるための乱数発生部を有し、前記電源起動制御部は、前記乱数発生部により得られる乱数値に応じて起動する時刻をそれぞれ異ならせることを特徴とする。
【0034】
請求項7記載の発明によれば、複数の装置が同時に起動することによる電気供給装置側の負荷を軽減することができる。
【0035】
請求項8に記載された発明は、電流検知部は、各装置内部に予め設けられた受信側の識別情報で識別される装置毎に外部から送信される要求信号を受信するときに発生する電流を検知することを特徴とする。
【0036】
請求項8記載の発明によれば、既存の構成からの変更を少なくして装置全体の電源を所望するタイミングで起動させることができるため、省電力化を実現させることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、放送信号の切り替えを最適なタイミングで行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下に、上記のような特徴を有する本発明における放送信号再送信装置(ヘッドエンド装置)を好適に実施した形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0039】
<第1の実施形態>
図2は、第1の実施形態におけるヘッドエンド装置の一構成例を示す図である。図2に示す放送信号再送信装置としてのヘッドエンド装置10は、地上・衛星共用チューナ(放送受信部)11と、アナログ変調部12と、スイッチ(切り替え部)13と、カットオーバー用タイマ(時刻計測部)14と、JJY受信部(標準時刻受信部)15と、切り替え許可設定部16と、信号監視部17と、入出力部18とを有するよう構成されている。
【0040】
図2に示すヘッドエンド装置10において、地上・衛星共用チューナ11は、セーフティネット放送波、セーフティネット終了時の地上デジタル放送波(例えば、ISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting−Terrestrial)等)、地上アナログ放送(例えば、県域放送等)を入力する端子を備える。
【0041】
ここで、地上・衛星共用チューナ11は、民生用チューナであり、普及部品を使用することでヘッドエンド装置の製作のコストの低廉化が期待できる。また、地上・衛星共用チューナ11は、入力される2種類の信号(セーフネット終了時の地上デジタル放送波(地上)、セーフティネット放送波(衛星))をアナログ変調部12に出力する。
【0042】
また、地上・衛星共用チューナ11は、後述するカットオーバー用タイマ14又は切り替え許可設定部16からの各信号により所定のタイミングで、入力される2種類の信号(セーフネット終了時の地上デジタル放送波(地上)、セーフティネット放送波(衛星))を切り替える。
【0043】
アナログ変調部12は、地上・衛星共用チューナ11からの出力信号を地上アナログ放送信号の形式に変調する。なお、アナログ変調部12は、入力された信号が地上アナログ放送である場合には、そのまま出力する。また、アナログ変調部12は、変調されたアナログ信号をスイッチ13に出力する。
【0044】
スイッチ13は、アナログ変調部12の出力信号と、既存のヘッドエンド装置(HE:Head End)21の出力信号とを、カットオーバー用タイマ14からの切り替え信号により切り替える切り替え手段である。なお、図2に示す第1の実施形態では、アナログ変調部12から得られるある1つの出力波からなるアナログ変調出力信号をスイッチ13に入力させる場合を示しているが、本発明においてはこれに限定されるものではなく、例えば複数波、すなわち複数のアナログ変調出力を周波数配列した信号をスイッチ13に入力させてもよい。
【0045】
また、スイッチ13は、切り替え許可設定部16からのenable制御による切り替え可能期間により所定のタイミングで信号の切り替えを行う。
【0046】
カットオーバー用タイマ14は、アナログ変調部12から得られる第1の放送波(配列)信号(セーフティネット放送又は地上デジタル放送)と、外部入力される第2の放送波(配列)信号(地上アナログ放送)とをスイッチ13により切り替えるための切り替えタイミングを制御する基準となる時刻を計測する。
【0047】
なお、図2では、標準時刻としてJJY(長波標準周波数)による時刻を受信するJJY受信部15を設けている。つまり、JJY受信部15は、受信した標準時刻情報に基づいて、カットオーバー用タイマ14が計測している時間情報が標準時刻に合わせて正確な時間になるよう調整を行う。
【0048】
また、カットオーバー用タイマ14は、入出力手段18により予め第1の切り替え時刻(例えば、年月日時分秒等)を設定することができ、その時刻のタイミングでスイッチ13に対して、地上アナログ放送信号を、セーフティネット放送波又は地上デジタル放送に切り替えるための切り替え信号(第1切替信号)を送信する。
【0049】
また、カットオーバー用タイマ14は、上述したチャンネルリパッキング等に対応するため、入出力手段18により予め第2の切り替え時刻(例えば、年月日時分秒等)を設定することができ、その時刻のタイミングで地上・衛星共用チューナ11に対してセーフティネット放送から地上デジタル放送のチャンネルに、「番組」及び「チャンネル」番号を切り替えるための切り替え信号(第2切替信号)を送信する。
【0050】
なお、本実施形態では、低廉化のために地上・衛星共用チューナ11として民生品を使うことを想定しているため、カットオーバー用タイマ14から地上・衛星共用チューナ11にデータを送信する低廉な通信手段として、例えば赤外線信号等を使用することができる。
【0051】
切り替え許可設定部16は、入出力手段18により地上・衛星共用チューナ11及びスイッチ13に対して、切り替え信号(第1切替信号、第2切替信号)による放送信号の切り替えを許可するタイミング(切り替え可能期間)を設定する。具体的には、切り替え許可設定部16は、例えば信号の切り替えタイミングにenable制御を用いて、enable期間のみ切り替え信号による切り替えを許可する構成とする。これにより、例えば各信号等の送受信時におけるノイズにより、間違えて切り替え信号と認識してしまった場合にも実際に放送を切り替えることがないため、誤動作を防止することができる。また、enable制御により、制御されたスイッチ13等を稼動させることにより、稼動コストを低減させることができる。
【0052】
なお、切り替え許可設定部16は、上述したJJY受信部15より標準時刻情報を取得することができ、これにより切り替え可能期間を正確に制御することができる。また、切り替え許可設定部16は、予め設定された条件を地上・衛星共用チューナ11及びスイッチ13に出力する。なお、切り替え許可設定部16における切り替え許可設定の詳細については後述する。
【0053】
信号監視部17は、ヘッドエンド装置10おいて、既存ヘッドエンド装置21から得られる地上アナログ放送信号(第2の放送波(配列)信号)を監視し、地上アナログ放送が終了する後に表示される予め設定された静止画や動画等からなる告知放送の開始を検出する。また、信号監視部17は、地上アナログ放送が終了した後の告知放送の開始を検出し、検出後にスイッチ13により地上デジタル放送(第1の放送波(配列)信号)への信号の切り替えを行う。なお、信号監視部17における切り替えの詳細については後述する。
【0054】
入出力手段18は、カットオーバー用タイマ14に対して上述した切り替え信号(第1切替信号、第2切替信号)の送信時間を設定し、また切り替え許可設定部16に対して放送信号の切り替えを許可するタイミング(切り替え可能期間)を設定する。なお、入出力手段18は、設定内容を表示することもでき、例えばタッチパネル等で構成されていてもよく、入力装置やモニタ等の出力装置で構成されていてもよく、更にはPC(Personal Computer)等の汎用のコンピュータにより構成されていてもよい。なお、入出力手段18は、上述の設定以外にも稼動時やエラー時の状態表示等にも用いることができる。
【0055】
<切り替え許可設定部16、及び信号監視部17による切り替えについて>
次に、切り替え許可設定部16における切り替え設定の詳細、及び、信号監視部17における切り替えの詳細について説明する。
【0056】
図3は、本実施形態における放送信号の切り替えの一例を説明するための図である。なお、図3には、(a)地上アナログ放送のタイムスケジュール、(b)地上デジタル放送(セーフネット(衛星波)、中継局電波(地上波)等を含む)のタイムスケジュール、(c)enable制御(disable,enable)のタイムスケジュール、及び、(d)切り替えのタイミングが示されている。
【0057】
<切り替え許可設定部16における切り替え設定の一例>
切り替え許可設定部16における切り替え設定では、放送信号の切り替えの許可の期間に相当するenable期間について、開始時刻と終了時刻を例えば入出力手段18等により設定し、enable制御を実行する。
【0058】
図3のタイムチャートに示すように、enable制御の開始時刻を例えば地上デジタル放送(セーフティネット放送、中継局による放送の何れにも該当)のプログラム(本放送番組)の放送開始時刻T1以降とし、終了時刻を例えば地上アナログ放送のプログラムの放送終了時刻T2以前に設定し(図3に示すタイミング(1))、この期間に限り、地上・衛星共用チューナ11又はスイッチ13における切り替え信号による放送信号の切り替えを可能にする。これにより、その他の期間で、ノイズ等のご認識により放送信号の誤って切り替わることはなく誤作動の課題を解決することができる。
【0059】
<信号監視部17における切り替えの詳細について>
次に、信号監視部17における切り替えの詳細について説明する。信号監視部17では、上述したように地上アナログ放送の信号を監視し本放送終了後に停波を告知する告知放送(例えば、ブルーバック等の所定静止画像等)の放送開始を検出し、検出したことをトリガーとして時刻T2に放送信号の自動切り替えを行う(タイミング(2))。
【0060】
なお、告知放送31の放送開始を検出する検出例としては、例えば告知放送31として表示されるブルーバック等の静止画のAPL(平均ピクチャレベル)が一定になるという信号の特徴を利用し、APLの増減の有無の検出回路(微分値の監視回路)を用いることができる。
【0061】
これにより、本実施形態では、「地上アナログ放送の再送信」と「セーフティネット放送のデジアナ再送信」との切り替え、又は、「セーフティネット放送のデジアナ再送信」と「地上デジタル放送の再送信」との切り替えを、工事を伴うことなく、確実且つシームレスに切り替えることができる。したがって、視聴者の利便性を格段に向上させることができる。
【0062】
また、上述の切り替え許可設定部16により、希望していないタイミングで信号切り替えが行われることがなく、誤作動を防止し、適切なタイミングで信号切り替えを行うことができる。
【0063】
なお、上述した放送信号の切り替えタイミング(タイミング(1)、タイミング(2))は、時刻T1〜T2の間の任意の時刻を自動又は手動で設定することもできる。
【0064】
<第2の実施形態>
次に、本発明における放送信号再送信装置の第2の実施形態について説明する。まず、地上アナログ放送の再送信からデジアナヘッドエンド装置等の放送信号再送信装置によるデジアナ再送信への切り替え(すなわち、稼動開始)までの期間が数ヶ月といった長期にわたる場合、それまでは該当構成部分を稼動させる必要がないため、無駄な電力を消費しないよう節電することが好ましい。つまり、切り替えのタイミングで自動的に各チューナや変調部の電源を起動できるデジアナヘッドエンド装置を提供することが必要となる。
【0065】
また、デジアナヘッドエンド装置の電源の起動を自動的に行う場合、普及状況によっては多数の放送信号再送信装置が略同時に稼動するため、短時間に同一地区で電力消費が大きくなる問題がある。そこで、電力消費の問題を解消できる放送信号再送信装置が必要となる。
【0066】
また、タイミング制御による放送信号の切り替えや、電源の起動等については、上述したように、その時刻をデジアナヘッドエンド装置に予め設定する手法があるが、設定を必要とせずに、自動的に切り替えや起動のタイミングを自動的にセットできることが好ましい。
【0067】
そこで、上述の内容に対応させた第2の実施形態について図を用いて説明する。図4は、第2の実施形態におけるヘッドエンド装置の一構成例を示す図である。なお、図4に示す放送信号再送信装置としてのヘッドエンド装置40では、上述した第1の実施形態において説明した構成と略同様の構成については同一の番号を付するものとし、ここでの説明は省略する。
【0068】
図4に示す第2の実施形態では、地上デジタル放送信号やアナログ放送信号を受信する地上・衛星共用チューナ等の放送受信部41を、例えばNHK及び民放各社のチャンネル数分を設ける(例えば、図4では放送受信部41−1〜41−8(Rx1〜Rx8))。このうち、本実施形態では、初期状態において、複数の放送受信部41−1〜41−8のうち何れか1つの受信部(例えば、放送受信部41−1(Rx1))のみを起動しておく。また、ヘッドエンド装置40は、上述した第1の実施形態におけるヘッドエンド装置10と比較して、電流検知部42と、電源起動制御部43と、乱数発生部44とが設けられている。
【0069】
放送局からは、起動対象のヘッドエンド装置40のRx1を動作させるための放送信号が送信される。ここで、図4に示す電流検知部42では、Rx1の通信ポート部に通電する電流を監視する。また、電源起動制御部43は、電流検知部42にて、電流の発生が検知されると、信号切り替え又はRx2〜Rx8に対して電源起動を行う。なお、電源起動は、例えばリレー制御等を用いることができる。
【0070】
すなわち、第2の実施形態では、電源起動制御部43が切り替えのタイミングで、ヘッドエンド装置40の電源をONにする。なお、起動のトリガーは、カットオーバー用タイマ14から得られる。
【0071】
更に、本実施形態では、電源の起動タイミングを分散させるために乱数発生部44を有し、電源起動制御部43は予め設定される乱数値に応じて起動する時刻をそれぞれ異ならせるように遅延させることができる。なお、乱数発生部44は、その乱数に応じた遅延時間をセットするタイマ機能を設けて、遅延時間経過後に電源起動制御部43に電源起動のトリガー信号を送信する。
【0072】
ここで、乱数は、例えば0〜1の範囲とし、遅延時間をその乱数を10倍した値とすることで、普及しているヘッドエンド装置40の電源は10秒の範囲で順次、自動起動することになる。
【0073】
上述した第2の実施形態によれば、デジアナヘッドエンド装置40が稼動するまで電源をOFFにし、稼動時にONにする制御を備えることにより省電力化(節電)を図ることができる。更に、第2の実施形態によれば、デジアナヘッドエンドの電源起動のタイミングを乱数により遅延制御することにより、短時間に同一地区で電力消費が極めて大きくなることを避けることができる。
【0074】
<第3の実施形態>
次に、本発明における放送信号再送信装置の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、特にデジタル放送における各コンテンツデータを利用した切り替え手法について説明する。
【0075】
第3の実施形態では、チューナ部1つのみの電源を起動しておき、電源を起動させるタイミングで放送局から、次の内容のBML(Broadcast Markup Language)コンテンツを放送する。そこで、上述した電流検知部は、例えば各装置の内部に予め設けられた受信側の識別情報(例えば、B−CASカード等)で識別される装置毎に外部から送信される要求信号を受信するときに発生する電流を検知する。これにより、既存の構成からの変更を少なくして装置全体の電源を所望するタイミングで起動させることができるため、コストを低減させることができる。
【0076】
ここで、上述の内容を第3の実施形態として説明する。なお、ヘッドエンド装置の構成は、上述した第2の実施形態における図4の構成と略同様な装置構成を適用することができるため、ここでの説明は省略する。
【0077】
また、第3の実施形態では、放送受信部41において、B−CAS等を用いた受信側の識別情報の取得等の処理における電流検知が行われる例を示す。ここで、図5は、第3の実施形態における地上・衛星共用チューナの一構成例を示す図である。図5に示す放送受信部41は、B−CAS部51と、BMLブラウザ52と、通信ポート部53と、制御部54とを有するよう構成されている。
【0078】
第3の実施形態おいて、B−CAS部51は、B−CASカードを挿入して格納しておくための機構を有している。また、B−CAS部51は、B−CASカード番号のリストをルックアップテーブルとして制御部54に送信する。
【0079】
更に、B−CAS部51は、BMLブラウザ52によりBMLを閲覧する際に使用される一般的なgetIRDid()関数を受け取ると、B−CASカード番号を取得して制御部54に送信する。
【0080】
なお、制御部54は、取得した番号がルックアップテーブルに含まれている場合には、BASIC手順等の簡易なプロトコルを想定した通信機能として利用可能なconnect()関数によりダミーの電話番号に発呼する(例えば、参考資料としてARIB STD−B24等を参照。)。
【0081】
通信ポート部53は、上述した電流検知部42により電流の検知が常時行われている。したがって、放送受信部41は、上述したconnect()関数によりダイアルトーン検出動作が行われる際に通電する電流を検知することにより、制御部54が電源起動タイミングと判断してヘッドエンド装置全体の電源を起動することができる。
【0082】
上述したように、本発明によれば、放送信号の切り替えを最適なタイミングで行うことができる。これにより、例えば地上デジタル放送によるデジアナ再送信が確実且つシームレスに行うことができる。したがって、視聴者の利便性を格段に向上させることができる。
【0083】
また、デジタル放送信号を受信してアナログ放送信号に変換・再送信するデジアナヘッドエンド装置に関し、デジアナヘッドエンドが稼動するまで電源をOFFにし、稼動時にONにする制御を備えることにより省電力化(節電)を図ることができる。また、デジアナヘッドエンドの電源起動のタイミングを乱数により遅延制御することにより、短時間に同一地区で電力消費が極めて大きくなることを避けることができる。
【0084】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】放送信号の切り替えにおけるタイムスケジュールの一例を説明するための図である。
【図2】第1の実施形態におけるヘッドエンド装置の一構成例を示す図である。
【図3】本実施形態における放送信号の切り替えの一例を説明するための図である。
【図4】第2の実施形態におけるヘッドエンド装置の一構成例を示す図である。
【図5】第3の実施形態における地上・衛星共用チューナの一構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0086】
10,40 ヘッドエンド装置
11 地上・衛星共用チューナ(放送受信部)
12 アナログ変調部
13 スイッチ(切り替え部)
14 カットオーバー用タイマ(時刻計測部)
15 JJY受信部(標準時刻受信部)
16 切り替え許可設定部
17 信号監視部
21 既存ヘッドエンド装置
31 静止画ステム
41 放送受信部
42 電流検知部
43 電源起動制御部
44 乱数発生部
51 B−CAS部
52 BMLブラウザ
53 通信ポート部
54 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ放送信号を所定の外部装置へ送信する放送信号再送信装置において、
送信側からのデジタル放送信号を受信して再送信用のアナログ放送信号に変調するアナログ変調部と、
前記アナログ変調部から得られる第1の放送信号と、送信側から外部入力されるアナログ放送からなる第2の放送信号とを切り替えて出力するための切り替え信号の出力のタイミングを制御するための時刻計測部と、
前記第1の放送信号と前記第2の放送信号とを切り替えるための許可条件を設定する切り替え許可設定部と、
前記切り替え許可設定部により得られる切り替え可能期間内に、前記時刻計測部により得られる切り替え信号を受信した場合に、前記第1の放送信号と、前記第2の放送信号とを切り替えて出力する切り替え部とを有することを特徴とする放送信号再送信装置。
【請求項2】
前記第2の放送信号の内容を監視し、前記第2の放送信号の放送終了後に表示される所定の告知放送の開始を検出する信号監視部を有することを特徴とする請求項1に記載の放送信号再送信装置。
【請求項3】
前記切り替え部は、
前記信号監視部により得られる検出信号を受信したタイミングで、前記第2の放送信号から前記第1の放送信号に切り替えて出力することを特徴とする請求項2に記載の放送信号再送信装置。
【請求項4】
前記時刻計測部の時刻を調整するための基準時刻信号(JJY)を受信する基準時刻受信部を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の放送信号再送信装置。
【請求項5】
前記信号監視部による前記告知放送の開始を検出したタイミングに合わせて、電源の起動を行う電源起動制御部を有することを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載の放送信号再送信装置。
【請求項6】
予め複数の電源を設けておき、前記複数の電源のうち1つを用いて前記アナログ変調部を起動させ、前記送信側からのデジタル放送信号を受信によりアナログ変調部が動作したときに流れる電流を検知する電流検知部と、
前記電流検知部により検知された値により前記複数の電源のうちの他の電源を起動するよう制御する電源起動制御部とを有することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の放送信号再送信装置。
【請求項7】
前記電源起動制御部における前記複数の電源の起動タイミングを分散させるための乱数発生部を有し、
前記電源起動制御部は、前記乱数発生部により得られる乱数値に応じて起動する時刻をそれぞれ異ならせることを特徴とする請求項6に記載の放送信号再送信装置。
【請求項8】
前記電流検知部は、
各装置内部に予め設けられた受信側の識別情報で識別される装置毎に外部から送信される要求信号を受信するときに発生する電流を検知することを特徴とする請求項6又は7に記載の放送信号再送信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−50741(P2010−50741A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213215(P2008−213215)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】