説明

放電ランプ用ホルダー、および放電ランプ保持機構

【課題】大型化したランプであっても、容易に取りつけることができるランプ用ホルダーを提供すること。
【解決手段】放電ランプの口金が挿入される挿入孔と、この挿入孔の内部に設けられ、口金が当接することで可動するロック機構(32,33)と、このロック機構の可動により、自動的に口金の一部と係止するように動くフック機構(31)を有する。また、フック機構(31)をより強固に働かせる固定機構(35)を有する。また、ロック機構(32,33)は、放電ランプ(10)の口金が装着された状態において、口金を挿入方向に押し付けた場合に、再度、可動するとともに、フック機構(31)は、当該ロック機構(32,3)の再可動により、口金との係止を解除するよう働くことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は放電ランプ用ホルダーおよび放電ランプ保持機構に関する。特に、大型化しホルダーへの取り付け作業が困難な放電ランプに対するホルダーおよび放電ランプ保持機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体や液晶の露光、その他の微細加工の分野でフォトリソグラフィの光源としてショートアーク型水銀ランプを用いた露光技術が利用されている。
フォトリソグラフィにおける光源は、フォトレジストが感度を有する波長365nm(i線)の光を効率良く放射する水銀ランプが適用され、また、液晶やプリント基板の露光では、波長350nm〜450nmの光を放射する水銀ランプが適用される。水銀ランプは発光物質として水銀が封入されるとともに、始動用ガスとしてアルゴン、キセノンなどの希ガスが封入される。
このような水銀ランプは、例えば、特開平9−213129号に示されるように凹面反射鏡と組み合わせて光学系を構成する。
【0003】
露光装置は、露光すべき面積が大きくなる一方で、処理時間(スループット)は短くなる傾向にあり、光源である水銀ランプも、入力を増加させることで露光量を増加させる傾向にある。
しかし、ランプ入力の増大はランプを物理的に大型化させることとなり、反射ミラーへの組み付ける作業が一段と煩雑化してしまう。
特に、ランプが大型化すると、寸法的にも重量的にも作業者がランプを保持することが困難になり、前記特開平9−213129号に示すように吊り下げてランプを保持する構造の場合、ランプを吊り下げた状態で保持しつつ、同時に、ネジ止めなどの固定作業をする必要があって困難を極める。さらに、ランプが大型化すると反射ミラーも大型化する。上記作業は反射ミラーの内部空間から反射ミラーの頂部開口にランプの口金を通し、反射ミラーの内側空間でランプの一端を保持しつつ、反射ミラーの頂部開口の外側でネジ止めなどの固定作業をする必要がある。この場合、反射ミラーの内側空間において片手でランプを保持するとともに、もう一方の片手でネジ止め作業をしなければならない。この作業は、ランプが大型化すると、片手で保持することが困難となり、時として、ランプを落下させたり、反射ミラーを傷つけるという問題を生じた。
【特許文献1】特開平9−213129号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明が解決しようとする課題は、大型化したランプであっても、容易に取り付けることができるランプ用ホルダーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、この発明に係る放電ランプ用ホルダーは、放電ランプの一方の口金を着脱させて、当該放電ランプを吊り下げるように保持する放電ランプ用ホルダーであって、前記放電ランプの口金が挿入し当接することで可動するロック機構と、このロック機構の可動により、放電ランプを落下しない程度に仮固定するフック機構よりなることを特徴とする。
【0006】
また、前記放電ランプホルダーは、前記仮固定後に、前記フック機構をより強固に働かせる固定機構を有することを特徴とする。
【0007】
また、この発明に係る放電ランプ保持機構は、一端に口金が装着された放電ランプと、この放電ランプを吊り下げるように着脱させる放電ランプホルダーからなり、前記放電ランプホルダーは、放電ランプの口金が挿入し当接することで可動するロック機構と、このロック機構の可動により、放電ランプを落下しない程度に仮固定するフック機構よりなることを特徴とする。
【0008】
また、前記放電ランプホルダーは、前記仮固定後に、フック機構をより強固に働かせる固定機構を有することを特徴とする。
【0009】
また、この発明に係る放電ランプと放電ランプホルダーの装着方法は、まず、放電ランプの一方の口金を、放電ランプホルダーの挿入孔に押し込み、放電ランプホルダーの内部に設けられたロック機構が当該口金の当接により可動するとともに、このロック機構の可動により自動的にフック機構が作動して当該口金と係合して両者が仮固定することを特徴とする。
【0010】
また、前記放電ランプと前記ランプホルダーの仮固定の後、前記ランプホルダーの固定機構を働かせて、前記フック機構をより強固に働かせることで、前記放電ランプと前記ランプホルダーを本固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る放電ランプ用ホルダーは、上記構成を有することで、放電ランプの口金を放電ランプ用ホルダー(以下、単に「ホルダー」ともいう)の挿入孔に差し込むだけで、この挿入孔内部に設けられたロック機構が可動して、このロック機構の可動により、放電ランプの口金の一部と自動的に係止するフック機構が作動して、両者の仮固定を達成する。
つまり、従来のように、片手でランプを保持しつつ、他方の片手でランプを固定させるという困難を必要とせず、ランプの口金をホルダーの挿入孔に差し込むだけでランプとホルダーを固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、この発明に係る放電ランプ用ホルダーと放電ランプ保持機構を示す。
放電ランプ10(以下、単に「ランプ」ともいう)は、反射ミラー20の頂部開口を通過して、放電ランプ用ホルダー30(以下、単に「ホルダー」ともいう)に取り付けられる。ここで、ランプ10とホルダー30を放電ランプ保持機構とし、ランプ10、反射ミラー20、ホルダー30を光源装置と称する。なお、反射ミラー20とホルダー30は、図示略の機構により露光装置などの装置に固定される。
【0013】
図2は、ランプ10のみを示す図面であり、例えば、石英ガラスからなる発光管部11を略中央に有し、その両端にロッド状の封止部12a、12bが伸びるように一体的に形成される。発光管部11は球形、あるいは管軸方向(図面の上下方向)に細長く伸びる紡錘形になっており、その内部は気密空間が形成されて、発光物質である水銀や始動用ガスであるキセノンやアルゴンが封入される。また、発光管部11の内部には陽極13と陰極14が対向配置しており、その先端同士の間隔が放電ギャップとして形成される。放電ギャップは電極間距離でもあり、例えば、5mm程度となる。封止部12a、12bの先端には、キャップ状の口金15a、15bが装着しており、外部リード16a、16bが突出している。
このランプ10は、何れかの電極を上方に、他方の電極を下方に位置させる垂直配置をしており、この実施例では陰極を下方に、陽極を上方に配置している。
【0014】
図1に戻り、反射ミラー20は、例えばガラス基材の反射面に多層膜をコーティングしたもので、全体が凹面形状でランプ10からの放射光を良好に反射する。反射ミラー20は楕円集光鏡が用いられることが多く、その場合は、放電ランプ10のアークと、反射ミラー20の第一焦点を一致させる必要がある。このアークは、一般に、放電ギャップ間に形成されるので、反射ミラー20の第一焦点に放電ギャップ間の適当な箇所が来るようにランプを設置する。
【0015】
ランプ10や反射ミラー20は、近年、大型化している。前述のとおり、この発明のランプ用保持ホルダーやランプ保持機構は、ランプや反射ミラーが大型化した場合に、特に有用となる。
ランプ10について、数値例を示すと、ランプ電力は定格値5KW〜40KW、発光管部11の最大外径(電極の伸びる方向に垂直な方向の径)は50mm〜250mmである。また、ランプの重量は1kg〜5kgである。
また、反射ミラー20について、数値例を示すと、前面開口はφ300mm〜1000mmであり、ランプが伸びる方向の奥行きは200mm〜800mmである。
【0016】
図3は、図1に示す光源装置を、図1とは異なる方向から眺めた状態を示し、反射ミラー20の一部を切り欠いて反射ミラー20の内部構造を表現している。
反射ミラー20の頂部開口21は、ランプ10の封止部12aが通過できるだけの大きさを少なくとも必要とするが、図に示すように、発光管部11が通過できる大きさであってもかまわない。しかし、頂部開口21があまりに大きいと、ランプ10の放射光が、頂部開口21から漏れてしまい光の利用効率が低下する。
【0017】
図4は、本発明に係るホルダーを示し、特に、ランプが装着していない状態の内部構造を示す。
ホルダー30は、ホルダー筐体300を基体として、口金保持片31、ロック機構部32、口金当接部33、口金固定部34を主構成とする。本実施例では、請求項で表現する「フック機構」が口金保持片31を意味し、「ロック機構」がロック機構部32と口金当接部33を意味し、「固定機構」が口金固定部34を意味する。
【0018】
口金保持片31は、ランプ10の口金15を保持するための機能を有し、口金15の外表面に当接するホールド部311と、このホールド部311が矢印の方向に動くために軸となるヒンジ部312と、同じくヒンジ部312を軸として動くロック受け部313と、口金受け部314および口金保持片31の後端部に設けられた固定部315から構成される。
ホールド部311、ロック受け部313、口金受け部314、固定部315は、例えば真鍮の一体物で構成しており、ヒンジ部312は別部材として差し込まれる。
口金保持片31は、ホルダー30の中に均等間隔で3つ形成しており、ランプ10の口金15が挿入することで、ホールド部311が矢印方向に動いて口金15を保持する。ホールド部311による口金15の当接は、仮固定と本固定を有するが、この点は後述する。なお、3つの口金保持片31の各ホールド部311により挿入孔が形成される。
【0019】
ロック機構部32は、口金保持片31を仮固定する機能を有し、ノコギリ刃状のリングであるロック駆動部321、その外周を覆うように枠として配置するロック機構外枠部322から構成される。
【0020】
図5は、ロック機構部32を、ロック駆動部321とロック機構外枠部322に分解したものであり、図4の説明とともに参照となる。
ロック駆動部321は、駆動ガイド3211と駆動ガイド3212を有し、全体として、略ノコギリ刃状である。
ロック機構外枠部322は、ロック駆動部321の回転を制御するフランジ状の回転ガイド3221と、保持片の動きを仮止めする爪部3222から構成される。
ロック駆動部321は、例えばステンレス鋼からなる一体物であり、ロック機構外枠部322も、例えばステンレス鋼からなる一体物である。
【0021】
口金当接部33は、全体が概略円筒形状であって、駆動ガイド3211と組になって働くピン331と、駆動ガイド3212と組になって働くピン332と、口金当接部33が上下方向にガイドするためのピン333と、ランプの口金が接触する下面部334と、外壁に設けられた切欠溝335から構成される。
口金当接部33は、下面部334に放電ランプの口金が当接することで押し上げられ、例えばステンレス鋼から構成される。
【0022】
口金固定部34は、ホルダー筐体300の外周に形成され、口金とホルダーが仮固定をした後で、口金固定部34を周方向に回すことで口金の保持を強固にする。この固定が本固定である。
具体的な構造は、図では省略しているが、ホルダー筐体300の外周面と口金固定部34の内周面にねじ構造が形成され、口金固定部34を回すことで、口金固定部34の内面が口金保持片31の固定部315を締め付け、結果として、口金保持片31(ホールド部311)をより強く放電ランプの口金に当接させる。口金固定部34の外表面は、例えばローレット加工が施されて手動により回転しやすい構造をなしている。なお、本固定の様子は、後述する図7(e)も参照される。
【0023】
図6は、ホルダー30であって、ランプが装着した状態の内部構造を示す。
封止部12の先端には概略キャップ状の口金15が装着される。口金15は、ホルダーの口金保持片31と当接する小径部151、ホールド部311の周縁と係合することで位置決めを行う段部152、ホルダーの口金当接部33と接触して口金当接部33を押し上げる大径部153からなる。大径部153の先端は、若干、球面形状になっており、ホルダーの口金当接部31に端部開口を押し当てる。
【0024】
口金15は、例えば真鍮により構成され、小径部151はランプをホルダー30に固定するための場所として働く。また、小径部151と口金保持片31の当接を利用して電気的接点として給電経路を形成させてもよい。なお、図2に示したように外部リード16を有する場合は口金当接部33の内部空間を介して給電線を導いて経路を形成してもよい。
【0025】
段部152は、ランプ10がホルダー30に挿入された後、ランプ10がホルダー30に本固定されるまでの間、ランプがホルダー30から抜けないよう仮固定のための位置として機能する。また、この場所はミラーの第一焦点とアークの位置を合わすための基準線にできる。特に、この部分の角度を45°±5とすれば、ランプ10をホルダー30から取り出すときに、ランプ10が口金保持片31に引っ掛かることを防止できる。
大径部153は、ランプ10をホルダー30に挿入するときに、ホルダーの口金受け部314と接触する。また、口金当接部33を押し上げることで、ホルダー30のロック駆動の原動力となる。
【0026】
次に、ホルダー30の動作を説明する。
ランプ10が、ホルダー30内に挿入されると、ランプ10の口金15がホルダー30の口金当接部33を押し上げ、さらに、口金受け部314に接触して口金保持片31を閉まる方向に動かす。これは、口金保持片31がヒンジ部312を支点として回転するもので、この回転により、ロック受け部313では、図のように、爪部3222がロック受け部313に入りやすくなるように後方に開く。口金保持片31のホールド部311は口金の小径部151と当接し、口金とホルダーの仮固定を達成する。
その後、口金固定部34を回すと、その内面あるいは下面が口金保持片31の固定部315に当接し、口金保持片31を内方に押し付ける力が働き、口金保持片31と口金の保持が強固になり、本固定が達成される。
【0027】
ヒンジ部312は、口金保持片31の重心より、ホルダー軸(ランプの挿入方向に伸びる、ホルダーの仮想中心軸)から離れた方向に取り付けられる。これにより、口金保持片31は、口金が挿入される前においては、自重により先端のホールド部311がホルダー軸から離れるよう、すなわち、挿入孔を広げるように働く。
従って、ランプを挿入する前に、口金保持片31が開いた状態になることで、口金は障害なくホルダー30の中に挿入できる。
このような構造は、口金保持片の自重によるのではなく、バネなどの弾性部材を使うことでもできる。しかし、口金15およびホルダー30は、ランプ点灯中に極めて高温(例えば300℃以上)になるため、弾性部材に対する熱的影響を考慮すると、上記のようにヒンジ部312の取り付け位置により、口金保持片31の自重で挿入孔を広げる構成は簡易で信頼性が高い。
【0028】
口金保持片31は、図では2つしか示していないが、円周方向に均等に3ヶ所配置しており、全ての口金保持片が、前記した口金の保持構造を有している。
しかしながら、一部の口金保持片について図4〜図6に示す構造を採用するとともに、他の口金保持片は固定、すなわち、口金の挿入により可動しない構造を採用できる。
口金保持片31の数は3個に限定されるものではないが、円周方向に3個設けることは、口金の過不足なく接触することができ、その時の口金の位置を1つに決めるので好ましい。
【0029】
ロック機構部32と口金当接部33は、口金がホルダー内に挿入された場合のロック状態のオンーオフ動作の駆動源となる。
口金当接部33は、ホルダー内を上下に移動するが、口金当接部33に固定されたガイドピン333と、ホルダー筐体300に固定されたガイド溝310によって、移動方向が規制される。
【0030】
ホルダー内の各機構の動きを具体的に説明する。まず、口金がホルダーに装着される場合について説明する。
図4において、口金がホルダー内に挿入されて、口金当接部33が上方に移動すると、口金当接部33に固定されたピン331が駆動ガイド3211に当たる。ピン331が駆動ガイド3211の下面に沿って動くことで、ロック機構部32を回転させる。具体的には、ピン331は駆動ガイドのガイド位置3211aで当接し、ロック機構部32を左周りに回転させ、ガイド位置3211bに到達すると、ロック機構部32の回転を停止させる。
このとき、ロック機構部32と一体に形成される爪部3222も同様に左周りに回転し、ロック受け部313と当接する。ロック受け部313は、前記したように、後方に開いているので爪部3222はロック受け部313に当接しやすい。
なお、ロック機構部32は、ロック駆動部321とロック機構外枠部322からなるが、両者は、例えばピン323によって一体に固定される(図5参照)。
【0031】
口金15は、ピン331がガイド位置3211bまで到達すると、それ以上は上昇しない。この状態において、口金(放電ランプ)から手を放すと、口金は口金の段部152が口金保持片31のホールド部311に係止する位置まで自重で落下して、それに伴い、口金当接部33も下方に落下する。
ここで、口金当接部33の落下に伴い、ピン332はガイド3212と当接し、ガイド3212の傾斜構造に従ってロック機構部32を左周りに回転させる。具体的には、ガイドのガイド位置3212aでピン332と当接して、ガイド位置3212bまでロック機構部32を回転させるとともに、ピン332がガイド位置3212bまで到達するとロック機構部32の回転は停止する。
【0032】
ここで、ガイド3212とピン332によって、ロック機構部32を回転させる理由は、ガイド3211とピン331の位置関係を初期状態に設定するためである。つまり、次に、口金を押し上げる時に、ピン331はガイド位置3211aにおいて当接できるよう位置設定するためである。
【0033】
口金保持片31のホールド部311は、口金の段部152で係止して位置決めする。このとき、爪部3222は、ロック受け部313で当接しており、この状態が仮固定である。なお、口金当接部の下方への移動は自重による具体例を説明したが、バネなどの弾性部材を用いてもよい。
【0034】
その後、前記したように口金固定部34を左周りに回すことで、口金固定部34の内面あるいは下面が、口金保持片31の固定部315に外面に当接し、口金保持片31を押し付けるような力が働き、口金保持片31と口金の保持が強固になって本固定が達成される。具体的には、図示略であるが、口金固定部34の内側表面と、ホルダー筐体300の外側表面は、ネジ構造のような係合構造になっている。口金固定部34を左回りに回すと、口金固定部35のホルダー筐体300における位置が変化して、口金固定部34はホルダー筐体300の下方に移動する。この移動によって、口金固定部34は口金保持片31の固定部315まで到達して本固定が行われる。
なお、本固定されたときは、口金がホルダー内で動いたり、口金当接部33が上下に動いたり、あるいは、ロック機構部32が回転したりすることはない。
【0035】
次に、口金(ランプ)をホルダーから外す場合について説明する。
まず、口金固定部34をホルダー筐体300に対して右周りに回転させることで、口金15とホルダー30の本固定は解除され仮固定の状態となる。
この状態で、装着時と同じように、口金を上方に押し上げと、ピン331とガイド3211の関係により、ロック機構部32は左周りに回転する。このロック機構部32の回転により、爪部3222も左周りに回転して、ロック受け部313と爪部3222の関係は当接しない状態となり、口金保持片もフリーの状態となって、ヒンジ部によって口金保持片先端のホールド部311が開くようになる。
ピン331が、ガイド位置3211bまで到達すると、ロック機構部32の回転は停止し、かつ、口金当接部33はランプを押し上げても、それ以上に上がらない状態となる。
この状態において、ランプを下方に引き抜くと、ランプはホルダーから外れ、また、口金当接部33は自重により下方に落下する。
この口金当接部33の落下は、ピン332がロック機構部32のガイド3212に当接して、ガイド3212の傾斜構造にしたがって動くことで、ロック機構部32を左周りに回転させる。この回転は取り付け時と同じであり、ピン331とガイド3211の位置関係を初期状態に設定するためである。
【0036】
ピン331とピン322は、口金当接部33の円周方向に1つずつ形成され、ガイド3211とガイド3212は、ロック機構部32の円周方向に形成される。一方、爪部3222は、ロック機構外枠部322の円周方向に3個形成され、ロック受け部313は爪部3222と当接する状態と、当接しない状態がそれぞれ3個ずつ交互に形成される。
つまり、口金をホルダー内で1回押し上げるたびに、ロック機構部32は円周方向に六分の一ずつ(60°ずつ)回転することになり、爪部3222とロック受け部313は、当接状態と非当接状態が、回転方向60°毎に繰り返すこととなる。
【0037】
以上のように、本発明に係る放電ランプ用ホルダーおよび放電ランプ保持機構は、ホルダー内に放電ランプの口金を挿入するだけで、まず、放電ランプが落下しない程度に仮固定し、当該状態で放電ランプを離して本固定することができる。このため、従来のように、片手で放電ランプを保持しつつ、もう一方の片手で装着作業、例えば、ネジ止めを行う必要がないので、きわめて安全に装着、脱着作業ができる。特に、放電ランプが大型化した場合に有用となる。
【0038】
なお、本発明に係る放電ランプ用ホルダーおよび放電ランプ保持機構は、放電ランプを吊り下げて保持する場合に有用である。なぜなら、仮固定において、ランプを手放しても、放電ランプの落下を防止できるからである。
【0039】
図7は、口金(放電ランプ)をホルダーに装着する時のホルダーの駆動原理を模式的に表したものである。図7は、便宜上、図4、図5、図6で説明したホルダー筺体300、口金保持片31、ロック機構部32、口金当接部33を使って簡略化させるとともに、一部の図ではより細かく部材を登場させている。また、理解の便宜上、口金保持片31を2個有する構造を示す。
口金保持片31は、先端のホールド部が広がった状態を「開く」、ホールド部が閉じた状態を「閉じる」とし、ロック機構部32は、爪部がロック受け部と当接した状態を「固定」、当接していない状態を「解除」とし、口金当接部33は下方に下がった状態と、上方に押し上げられた状態で表現される。
(a)は口金15をホルダーに装着する直前の状態である。口金保持片31は「開く」の状態、ロック機構部32は「解除」の状態、口金当接部33は「下がり」の状態にある。
(b)は口金15がホルダーの中に入り、口金15が口金保持片31と口金当接部33に当接し始めた状態である。口金保持片31は「開く」から「閉じる」へ移行中、ロック機構部32は「解除」から「固定」へ移行中、口金当接部33は上昇中の状態にある。
(c)は口金15がホルダー内に入り、口金当接部33が一番上まで押し上げられた状態である。口金保持片31は「閉じる」の状態、ロック機構部32は回転が止まり「固定」の状態、口金当接部33は「上がり」の状態にある。特に、ロック機構部32の爪部3222が口金保持片31のロック受け部313と当接していることがわかる。
(d)は口金15を手放した状態、すなわち、仮固定の状態である。口金保持片31は「閉じる」の状態、ロック機構部32は「固定」の状態、口金当接部33は「下がり」の状態にある。また、ロック機構部32は次の押し上げに備えた初期設定の位置にある。
(e)はホルダー筐体300の口金固定部を回転させて口金15とホルダーを本固定した状態である。口金は、(d)の状態から口金固定部34を回転させるまでの間に自重により落下して、口金の段部152において口金保持片31と係合している。口金保持片31は「閉じる」の状態、ロック機構部32は「固定」の状態、口金当接部33は「下がり」の状態にある。
【0040】
図8は、口金(放電ランプ)をホルダーから取り外すときの、ホルダーの駆動原理を模式的に表したものである。図7と同様に、図4、図5、図6で説明したホルダー筺体300、口金保持片31、ロック機構部32、口金当接部33を使って簡略化させるとともに、一部の図において、より細かく部材を登場させている。口金保持片31は、先端のホールド部が広がった状態を「開く」、ホールド部が閉じた状態を「閉じる」とし、ロック機構部32は、爪部がロック受け部と当接した状態を「固定」、当接していない状態を「解除」とし、口金当接部33は下方に下がった状態と、上方に押し上げられた状態で表現される便宜上、図4から図6で説明した口金当接部、ロック機構部、口金保持片、ホルダー筺体のみを使って簡略化させている。
【0041】
(a)は口金15がホルダーに本固定された状態であり、図7(e)と同じ状態にあり、口金保持片31は「閉じる」の状態、ロック機構部32は「固定」の状態、口金当接部33は「下がり」の状態にある。
(b)は口金固定具34を解除させた、いわゆる仮固定の状態であり、図7(d)と同じ状態である。口金保持片31は「閉じる」の状態、ロック機構部32は「固定」の状態、口金当接部33は「下がり」の状態にある。
(c)は口金15をホルダー内で上方に押し上げロックが回転した状態である。口金保持片31は「閉じる」、ロック機構部32は「固定」から「解除」になり、口金当接部は一番上がった状態にある。特に、ロック機構部32の解除は、爪部3222がロック受け部313から外れていることで理解できる。
(d)は口金15がホルダーから出る寸前の状態である。口金保持片31は「開き」、ロック機構部32は「解除」、口金当接部33は一番下がった状態にある。
【0042】
図9、図10は、本発明に係る放電ランプ用ホルダーおよび保持機構の他の実施例を示す。図9は斜め上方から見た状態の変化を示し、図10は真横から見た状態の変化を示す。図9と図10の図面のうち、(a−1)と(b−1)、(a−2)と(b−2)、(a−3)と(b−3)、(a−4)と(b−4)、(a−5)と(b−5)は、それぞれ同一の状態を異なる方向から見た関係となる。
【0043】
図4〜図8に示した構造が、口金の挿入当接により、ホルダーの口金当接部を押し上げて、ロック機構部を自動的に回転させることで仮固定を行っていたのに対し、この図9に示す構造は、ロック機構部42と口金当接部43が一つの部材(ロック機構)として機能する。口金当接部43の回転により、ロック機構部42も回転し、口金保持片41を仮固定することで口金も同様に仮固定する。
口金保持片43は、基本的な構造は図4の構造と同じであり、先端のホールド部が広がった状態を「開く」、ホールド部が閉じた状態を「閉じる」とする。ロック機構部42は、短冊形状の板部材からなり先端が爪部と同様の働きをする。ロック機構部42の先端がロック受け部413と当接した状態を「固定」、当接していない状態を「解除」とする。口金当接部43は、図4の構造と異なり上下動せず、中心軸に対して回転方向に動くのみである。口金当接部43のキー溝43aと口金のキー16aが係合した状態を「係合」、離れた状態を「非係合」とする。
【0044】
(a−1)と(b−1)は、口金15をホルダーに差し込む直前の状態を示す。ホルダーは、前記実施例と同様にヒンジ部の位置により、口金保持片41が開いた状態になっている。口金当接部43にはキー溝43aが形成され、口金15の外部リード16のキー16aと係合する関係にある。ロック機構部42と口金当接部43は一体に結合しており、口金当接部43を回転させると同様にロック機構部42も回転する構造になっている。
この状態は、口金保持片41は「開く」ロック機構部42は「解除」、口金当接部43は「非係合」の状態にある。
【0045】
(a−2)と(b−2)は、口金15がホルダーに差し込まれ、仮固定した状態を示す。口金15のキー16aが、口金当接部43のキー溝16aに係合して、口金を左周りに回転させる。この回転により、ロック機構部42も同様に左周りに回転して、先端が口金保持片43のロック受け部413に当接することで仮固定が完了する。なお、口金15の先端が口金当接部414(b−1参照)に接触することで口金保持片41は閉まる方向に動き、これによりロック受け部413も開くことで、ロック機構部42が当接しやすくなっている。また、ロック受け部413にはロック機構部42の回転を停止させる構造が形成される。
この状態は、口金保持片41は「閉まる」、ロック機構部42は「固定」、口金当接部43は「係合」の状態にある。
【0046】
(a−3)と(b−3)は、口金15がホルダーに本固定された状態を示す。
口金15は、前記仮固定の状態から自重により落下して、口金の段部152が口金保持片に引掛かって停止している。そして、口金固定部44を回転させることで口金保持片41との強固な固定が完了する。口金固定部44も短冊形状の板状部材からなり、ロック機構部42を同様の方向に回転するが、ロック機構部42より厚いため、口金固定部44と口金保持片41が当接すると口金とホルダーは全く可動できない状態となる。
この状態は、口金保持片41は「閉まる」、ロック機構部42は「固定」、口金当接部43は「係合」の状態にある。
【0047】
(a−4)と(b−4)は、口金15をホルダーから取り外す状態であり、本固定と仮固定が解除された状態を示す。
まず、口金固定部44を回転させて本固定を解除する。口金を少し持ち上げてキー16aとキー溝43aを係合させてから、口金ごと回転させることで、ロック機構部42が回転して仮固定が解除する。図において、口金固定部44とロック機構部42が口金保持片41と当接していないことがわかる。
この状態は、口金保持片41は「閉まる」、ロック機構部42は「解除」、口金当接部43は「非係合」の状態にある。
【0048】
(a−5)と(b−5)は、口金15をホルダーから外した状態を示す。
口金をそのまま引き下げることでホルダーから外すことができる。
この状態は、口金保持片41は「開く」、ロック機構部42は「解除」、口金当接部43は「非係合」の状態にある。
【0049】
図9、図10の構造について、一例を示すと、ロック機構部42はステンレス鋼(材料)からなり厚み約1〜3mm、口金固定部44はステンレス鋼(材料)からなり厚み約2〜5mmである。口金当接部43は真鍮(材料)からなり、口金の外部リード16は真鍮(材料)からなる。
【0050】
このように図9、図10に示す構造は、口金当接部の上下動を必要とするものではなく、口金が口金当接部に当接した状態で、口金を回転させるという極めて簡易な動作により、両者を仮固定することができる。さらに、その後、口金固定部を回転させるという簡易の動作により本固定も達成できる。
いずれにしても、ランプ(口金)をホルダーに挿着させる場合に、口金をホルダーに差し込むだけで、手を離してもランプを吊り下げた状態で保持できる(仮固定)を達成することができる。その後、両手により両者を本固定することで、ランプが大型化しても極めて安全に作業することができる。これはランプをホルダーから脱着する場合も同様である。
【0051】
なお、本発明に係る放電ランプ用ホルダーおよび保持機構は、図4に示した構造や図9に示した構造だけに限定するものではなく、ホルダーが口金当接部やロック機構部のような構成を持つロック機構、および口金保持片のような構成を持つフック機構を有するとともに、口金をホルダーに差し込むだけでロック機構やフック機構が作動して、手を離してもランプを吊り下げることができる仮固定の状態を達成することができるものであれば、他の構成も採用できる。
【0052】
以上、説明したように本発明に係る放電ランプ用ホルダーおよび放電ランプ保持機構は、ホルダーに口金が当接することで可動するロック機構と、このロック機構の可動により自動的に口金の一部と係止するように動くフック機構を設けることで、ランプとホルダーを仮固定させた後、ランプを手放しても保持できる状態において、ランプとホルダーを本固定することで、ランプが大型化しても、極めて簡易かつ安全にランプをホルダーに装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る放電ランプ用ホルダーおよび保持機構を有する光源装置を示す。
【図2】本発明に係る放電ランプを示す。
【図3】本発明に係る放電ランプ用ホルダーおよび保持機構を有する光源装置を示す。
【図4】本発明に係る放電ランプ用ホルダーを示す。
【図5】本発明に係る放電ランプ用ホルダーのロック機構部を示す。
【図6】本発明に係る放電ランプ用ホルダーを示す。
【図7】本発明に係る放電ランプ用ホルダーと口金の駆動原理を示す。
【図8】本発明に係る放電ランプ用ホルダーと口金の駆動原理を示す。
【図9】本発明に係る放電ランプ用ホルダーおよび保持機構の他の実施例を示す。
【図10】本発明に係る放電ランプ用ホルダーおよび保持機構の他の実施例を示す。
【符号の説明】
【0054】
10 放電ランプ
11 発光部
12 封止部
15 口金
20 反射ミラー
30 ホルダー
300 ホルダー筐体
31 口金保持片
311 ホールド部
312 ヒンジ部
313 ロック受け部
314 口金受け部
315 固定部
32 ロック機構部
321 ロック駆動部
3211 駆動ガイド
3212 駆動ガイド
322 ロック機構外枠部
3222 爪部
33 口金当接部
331 ピン
332 ピン
333 ピン
34 口金固定部
41 口金保持片
42 ロック機構部
43 口金当接部
44 口金固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電ランプの一方の口金を着脱させて、当該放電ランプを吊り下げるように保持する放電ランプ用ホルダーであって、
前記放電ランプの口金が挿入し当接することで可動するロック機構と、
このロック機構の可動により、放電ランプを落下しない程度に仮固定するフック機構よりなることを特徴とする放電ランプ用ホルダー。
【請求項2】
前記放電ランプホルダーは、前記仮固定後に、前記フック機構をより強固に働かせる固定機構を有することを特徴とする請求項1の放電ランプホルダー。
【請求項3】
一端に口金が装着された放電ランプと、この放電ランプを吊り下げるように着脱させる放電ランプホルダーからなる放電ランプ保持機構であって、
前記放電ランプホルダーは、
放電ランプの口金が挿入し当接することで可動するロック機構と、このロック機構の可動により、放電ランプを落下しない程度に仮固定するフック機構よりなることを特徴とする放電ランプ保持機構。
【請求項4】
前記放電ランプホルダーは、前記仮固定後に、フック機構をより強固に働かせる固定機構を有することを特徴とする請求項3の放電ランプ保持機構。
【請求項5】
放電ランプと放電ランプホルダーの装着方法であって、
まず、放電ランプの一方の口金を、放電ランプホルダーの挿入孔に押し込み、
放電ランプホルダーの内部に設けられたロック機構が当該口金の当接により可動するとともに、このロック機構の可動により自動的にフック機構が作動して当該口金と係合して両者が仮固定することを特徴とする放電ランプとランプホルダーの装着方法。
【請求項6】
前記放電ランプと前記ランプホルダーの仮固定の後、
前記ランプホルダーの固定機構を働かせて、前記フック機構をより強固に働かせることで、前記放電ランプと前記ランプホルダーを本固定することを特徴とする請求項5の放電ランプとランプホルダーの装着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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