説明

放電ランプ用電極構造体及び放電ランプ

【課題】封着ピンとリード線との接続部分の強度を強くした放電ランプ用電極構造体及び放電ランプを提供する。
【解決手段】本発明は、ガラスランプ管3の少なくとも一端部の内部に設置される電極4と、電極におけるランプ管端側の端部にその一端が接続され、ランプ管端部を内外に貫通させ、かつ、当該ランプ管端部に気密に封着させる封着ピン5と、封着ピンの他端に溶接されたリード線6とで成る放電ランプ用電極構造体2において、リード線は、封着ピンと熱膨張率が近い材料の芯線6Aと封着ピンと熱膨張率が近くない材料の被覆層6Bとの二重構造を持ち、当該芯線の端部を主に封着ピンの端部に溶接したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電ランプ用電極構造体及びそれをガラスランプ管の端部に封着した放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の冷陰極放電ランプ100は、図6に示す構造であり、また、それに封着される電極構造体110は図7に示す構造であった。すなわち、ガラスランプ管101の両端それぞれの内部に電極102を設置し、各電極102におけるランプ管端部に封着ピン103の一端を溶接して接続し、この封着ピン103をランプ管端部を内外に貫通させ、かつ、当該ランプ管端部に気密に封着し、封着ピン103の外部端にリード線104を溶接して接続していた。そして、ガラスランプ管1の内部の放電空間には希ガスと水銀との放電媒体105を封入し、またガラスランプ管101の内周面に蛍光体層106を形成している。
【0003】
このような構造の従来の冷陰極放電ランプ100に封着される電極構造体110では、封着ピン103にはガラスランプ管101の熱膨張率に近い熱膨張率を持つMo,Wの合金を用いているが、この合金材料は高価であるために、リード線104にも同じ材料を使用することはできず、リード線104にはFe、Niの合金の芯線104AをCu製の被覆層104Bで被覆した二重構造のものを用いていた。そして、二重構造のリード線104の端部を封着ピン103の外部露出端部に溶接することで接続していた。104Cは溶接部を示している。
【0004】
このような構造の電極構造体を封着した冷陰極放電ランプにあっては、リード線104の芯線104Aの部分だけではなくて被覆層104Bの部分も区別なく封着線103の端部に溶接していたため、リード線104の芯線104Aの部分と被覆層104Bの部分とが互いに拡散された状態で封着ピン103の端部に溶接された状態となっていた。
【0005】
ところが、被覆層104Bの材料であるCuの熱膨張率が芯線104Aの材料のものと大きく異なるため、当該冷陰極放電ランプ100を点灯させて使用すると、熱膨張率の大きな違いに起因して、封着ピン103と被覆層104Bとの接触部から溶接部104Cの全体に亀裂が発生し、十分な溶接強度を得られない問題点があった。
【特許文献1】特開2005−327559号公報
【特許文献2】特開2006−140128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みてなされたもので、封着ピンとリード線との接続部分の強度を強くした放電ランプ用電極構造体及び放電ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ガラスランプ管の少なくとも一端部の内部に設置される電極と、前記電極におけるランプ管端側の端部にその一端が接続され、前記ランプ管端部を内外に貫通させ、かつ、当該ランプ管端部に気密に封着させる封着ピンと、前記封着ピンの他端に溶接されたリード線とで成る放電ランプ用電極構造体において、前記リード線は、前記封着ピンと熱膨張率が近い材料の芯線と前記封着ピンと熱膨張率が近くない材料の被覆層との二重構造を持ち、当該芯線の端部を主に前記封着ピンの端部に溶接した放電ランプ用電極構造体を特徴とする。
【0008】
また本発明は、ガラスランプ管の少なくとも一端の内部に電極を設置し、前記電極におけるランプ管端側の端部に一端が接続された封着ピンを、前記ランプ管端部を内外に貫通させ、かつ、当該ランプ管端部に気密に封着し、前記封着ピンの外部に露出した他端にリード線を接続した構造の放電ランプにおいて、前記リード線は、前記封着ピンと熱膨張率が近い材料の芯線と前記封着ピンと熱膨張率が近くない材料の被覆層との二重構造であり、前記封着ピンとリード線との接続部においては、前記リード線の芯線部分を主に前記封着ピンの端部に溶接した放電ランプを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の放電ランプ用電極構造体及び放電ランプによれば、リード線を封着ピンと熱膨張率が近い材料の芯線と封着ピンと熱膨張率が近くない材料の被覆層との二重構造にして、封着ピンとリード線との接続部においてリード線の芯線部分を主に封着ピンの端部に溶接しているので、放電ランプ点灯により電極構造体が温度上昇しても、熱膨張率の差によって封着ピントとリード線との間に接続部分に亀裂が入る恐れがほとんどなくなり、封着ピンとリード線との接続部分の強度を強くでき、放電ランプの長寿命化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。図1は本発明の1つの実施の形態の冷陰極放電ランプ1を示し、図2はその両端部に封着した放電ランプ用電極構造体2を示している。
【0011】
本実施の形態の冷陰極放電ランプ1は、ガラスランプ管3の両端それぞれの内部に電極4を設置し、各電極4におけるランプ管端部に封着ピン5の一端を溶接して接続し、この封着ピン5をランプ管端部を内外に貫通させ、かつ、当該ランプ管端部に気密に封着し、さらに、封着ピン5の外部端にリード線6の一端を溶接して接続している。そして、ガラスランプ管3の内部の放電空間には希ガスと水銀との放電媒体7を封入し、またガラスランプ管3の内周面に蛍光体層8を形成している。
【0012】
上記構造の冷陰極放電ランプ1に封着される電極構造体2では、電極4の材料にはNbを用い、封着ピン5の材料にはガラスランプ管3の熱膨張率に近い熱膨張率を持つMo,Wの合金を用い、両者の接続部を溶接している。また、封着ピン5とリード線6との間も溶接している。リード線6は、従来と同様にFe,Niの合金の芯線6AをCu製の被覆層6Bで被覆した二重構造である。そして、二重構造のリード線6の端部を封着ピン5の外部露出端部に溶接している。60はその溶接部を示している。
【0013】
このリード線6と封着ピン5との溶接には、リード線6の端部において被覆層6Bを除去し、芯線6Aだけを剥き出し、剥き出された芯線6Aの端部を封着ピン5の端部に溶接する方法をとっている。これにより、図2に詳しく示したように、溶接部60では、主に芯線6Aの材料であるFe,Niの合金を含む芯線材料部60Aが封着ピン5の端部に溶着し、リード線6の被覆層6Bの材料であるCuを含む被覆材料部60Bはその溶接部60の表面に薄く存在する構造となり、芯線材料中に拡散する比率は低い。
【0014】
このような構造の電極構造体2では、リード線6の芯線6Aの部分が主に封着ピン5の端部に溶着し強度を受け持つことになる。したがって、本実施の形態の電極構造体2及びそれを封着した冷陰極放電ランプ1では、封着ピン5の材料であるW,Moの合金の熱膨張率に近い材料の芯線6Aの材料であるFe,Ni合金製の芯線材料部60Aが主に封着ピン5の端部に溶着していて被覆層材料がほとんど拡散していないので、当該冷陰極放電ランプ1を長時間点灯させることで電極構造体2の部分が高温度に上昇しても、熱膨張率の違いに起因して封着ピン5とリード線6との溶接部60に亀裂が発生しにくく、十分な溶接強度が得られ、冷陰極放電ランプ1が長寿命化する。
【0015】
尚、溶接部60における被覆材料部60Bから芯線材料部60Aの拡散許容度は、溶融していない部分に対して50%以下であることが好ましい。また、リード線6における芯線金属材料の線膨張率は10.0(×10−6/K)以下、被覆層金属材料の線膨張率は12.0(×10−6/K)であることが好ましい。
【実施例】
【0016】
本発明の実施例の放電ランプ用電極構造体として、リード線6に図3の表1の特性の芯線6Aと被覆層6Bで成る二重構造のものを使用して、上記実施の形態のようにリード線6の端部において被覆層6Bを除去し、芯線6Aだけを剥き出し、剥き出された芯線6Aの端部を封着ピン5の端部に溶接したものを作製した。そして、この実施例の放電ランプ用電極構造体と、図7に従来例として示した比較例の放電ランプ用電極構造体について、引張り荷重試験を行った。
【0017】
引張り荷重試験の結果は図4のグラフに示し、同じ引張り強度による溶接外れの発生数の計数結果は図5の表2に示してある。これらの試験結果により、本発明の実施例の電極構造体では溶接部60の引張り強度が向上し、また溶着の安定性も向上していることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の1つの実施の形態の冷陰極放電ランプの断面図。
【図2】上記実施の形態の冷陰極放電ランプにおいてガラス管の端部に封着した放電ランプ用電極構造体の拡大断面図。
【図3】本発明の実施例のリード線の組成と線膨張率の表1。
【図4】本発明の放電ランプ用電極構造体の実施例と比較例との引張り荷重試験の結果を示すグラフ。
【図5】本発明放電ランプ用電極構造体の実施例と比較例との引張り強度試験の結果を示す表2。
【図6】従来例の冷陰極放電ランプの断面図。
【図7】従来例の放電ランプ用電極構造体の拡大断面図。
【符号の説明】
【0019】
1 冷陰極放電ランプ
2 放電ランプ用電極構造体
3 ガラスランプ管
4 電極
5 封着ピン
6 リード線
6A 芯線
6B 被覆層
60 溶接部
60A 芯線材料部
60B 被覆材料部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスランプ管(本請求項の構成要素ではない)の少なくとも一端部の内部に設置される電極と、前記電極におけるランプ管端側の端部にその一端が接続され、前記ランプ管端部を内外に貫通させ、かつ、当該ランプ管端部に気密に封着させる封着ピンと、前記封着ピンの他端に溶接されたリード線とで成る放電ランプ用電極構造体において、
前記リード線は、前記封着ピンと熱膨張率が近い材料の芯線と前記封着ピンと熱膨張率が近くない材料の被覆層との二重構造を持ち、当該芯線の端部を主に前記封着ピンの端部に溶接したことを特徴とする放電ランプ用電極構造体。
【請求項2】
ガラスランプ管の少なくとも一端の内部に電極を設置し、前記電極におけるランプ管端側の端部に一端が接続された封着ピンを、前記ランプ管端部を内外に貫通させ、かつ、当該ランプ管端部に気密に封着し、前記封着ピンの外部に露出した他端にリード線を接続した構造の放電ランプにおいて、
前記リード線は、前記封着ピンと熱膨張率が近い材料の芯線と前記封着ピンと熱膨張率が近くない材料の被覆層との二重構造であり、
前記封着ピンとリード線との接続部においては、前記リード線の芯線部分を主に前記封着ピンの端部に溶接したことを特徴とする放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−135349(P2008−135349A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−322291(P2006−322291)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】