放電ランプ
【課題】本発明では、電極の消耗が有意に抑制され、寿命を向上することが可能な放電ランプを提供することを目的とする。
【解決手段】内部に希ガスが封入されたガラスバルブと、該ガラスバルブの内部に相互に平行に配置された第1および第2の電極とを有する放電ランプであって、前記第1の電極は、導電性マイエナイト化合物の層が設置された第1の本体部を有し、前記導電性マイエナイト化合物の層において、放電が生じるように構成、配置されることを特徴とする放電ランプ。
【解決手段】内部に希ガスが封入されたガラスバルブと、該ガラスバルブの内部に相互に平行に配置された第1および第2の電極とを有する放電ランプであって、前記第1の電極は、導電性マイエナイト化合物の層が設置された第1の本体部を有し、前記導電性マイエナイト化合物の層において、放電が生じるように構成、配置されることを特徴とする放電ランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
ネオンランプのような放電ランプは、電気機器および電子機器の表示装置(例えばパイロットランプなど)として、広く使用されている。
【0003】
通常、ネオンランプは、ネオンを含む希ガスが充填された内部空間を有するガラスバルブと、このガラスバルブの内部空間に対向して配置された一対の電極とで構成される。
【0004】
ネオンランプの作動の際には、両電極間に直流電圧または交流電圧が印加される。これにより、電極間でグロー放電が生じ、ランプを発光させることができる。
【0005】
このようなネオンランプにおいて、電極の一部に仕事関数の低いセシウム化合物の層を形成し、この層を起点として放電を生じさせることにより、放電開始電圧のバラツキを抑制することが開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−222637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の特許文献1では、放電開始電圧のバラツキを抑制するため、電極にセシウム化合物の層が設置される。しかしながら、セシウム化合物の層は、スパッタに対する耐性があまり良好ではないという問題がある。すなわち、従来のネオンランプでは、スパッタリングにより、電極は、比較的短時間で消耗してしまう。このため、特許文献1のネオンランプは、寿命が比較的短いという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、本発明では、電極の消耗が有意に抑制され、寿命を向上することが可能な放電ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、内部に希ガスが封入されたガラスバルブと、該ガラスバルブの内部に配置された第1および第2の電極とを有する放電ランプであって、
前記第1の電極は、導電性マイエナイト化合物の層が設置された第1の本体部を有し、前記導電性マイエナイト化合物の層において、放電が生じるように構成、配置されることを特徴とする放電ランプが提供される。
【0010】
ここで、本発明による放電ランプにおいて、前記第2の電極は、導電性マイエナイト化合物の層が設置された第2の本体部を有し、
前記両本体部の導電性マイエナイト化合物の層は、相互に対面するように配置されても良い。
【0011】
また、本発明による放電ランプにおいて、
前記第1の本体部は、中心軸に沿って延伸する細長い形状を有し、
前記第1の本体部に形成された導電性マイエナイト化合物の層は、前記中心軸に対して垂直な断面において、0.2mm〜2mmの範囲の最大幅を有しても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、電極の消耗が有意に抑制され、寿命を向上することが可能な放電ランプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】特許文献1に記載のネオンランプの概略的な構成図である。
【図2】本発明による放電ランプの電極部分を模式的に示した拡大図である。
【図3】図2におけるA−A'線での断面を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の構成を説明する。
【0015】
まず、本発明による放電ランプの特徴をより良く理解するため、特許文献1に記載のネオンランプの構成について、簡単に説明する。
【0016】
図1には、特許文献1に記載のネオンランプの概略的な構成を示す。
【0017】
図1に示すように、特許文献1に記載のネオンランプ10は、ガラスバルブ20と、このガラスバルブ20の底面22に固定された一組の電極40a、40bとを有する。
【0018】
ガラスバルブ20は、内部空間30を有し、この内部空間30には、ネオンを主成分とする混合ガスが充填される。
【0019】
第1の電極40aは、本体部50aと、リード線60aとを有する。リード線60aの一端は、本体部50aと電気的に接続され、リード線60aの他端は、ガラスバルブ20の底面22を気密貫通して、ネオンランプ10の外部に導出されている。
【0020】
同様に、第2の電極40bは、本体部50bと、リード線60bとを有する。リード線60bの一端は、本体部50bと電気的に接続され、リード線60bの他端は、ガラスバルブ20の底面22を気密貫通して、ネオンランプ10の外部に導出される。
【0021】
第1の電極40aの本体部50aおよび第2の電極40bの本体部50bは、それぞれ、相互に対向するように形成されたセシウム化合物層45a、45bを有する。セシウム化合物層45a、45bは、例えば、厚さが0.5μm〜1μm程度である。
【0022】
セシウム化合物には、仕事関数が低いという特徴があり、このため、本構成では、電極間の放電は、常に相互に対向するセシウム化合物層45a、45b部分を起点として生じるようになる。従って、本体部50aおよび50bに、このようなセシウム化合物層45a、45bを形成することにより、ネオンランプ10の作動の際の放電開始電圧のバラツキが抑制される。
【0023】
なお、図1には示されていないが、第1の電極40aの本体部50aの表面には、セシウム化合物層45aを覆うようにして、アルミナ等の絶縁層が形成される。同様に、第2の電極40bの本体部50bの表面には、セシウム化合物層45bを覆うようにして、アルミナ等の絶縁層が形成される。これらの絶縁層は、セシウム化合物層45a、45bの部分以外の箇所で、意図しない放電が生じることを防止するために設置される。
【0024】
ただし、このように構成されたネオンランプ10において、セシウム化合物層45a、45bは、放電時のスパッタリングに対する耐性があまり良好ではないという問題がある。このため、図1に示したネオンランプ10では、電極間の放電の際のスパッタリングにより、本体部50a、50bに形成されたセシウム化合物層45a、45bは、比較的短時間で消耗してしまう。このため、図1に示したネオンランプ10は、寿命が比較的短いという問題がある。
【0025】
これに対して、本発明では、電極の本体部が導電性マイエナイト化合物を含むという特徴を有する。
【0026】
ここで、「マイエナイト化合物」とは、ケージ(籠)構造を有する12CaO・7Al2O3(以下「C12A7」ともいう)およびC12A7と同等の結晶構造を有する化合物(同型化合物)の総称である。
【0027】
また、本願において、「導電性マイエナイト化合物」とは、ケージ中に含まれる「フリー酸素イオン」の一部もしくは全てが電子で置換された、電子密度が1.0×1018cm−3以上のマイエナイト化合物を表す。全てのフリー酸素イオンが電子で置換されたときの電子密度は、2.3×1021cm−3である。
【0028】
なお、一般に、導電性マイエナイト化合物の電子密度は、マイエナイト化合物の電子密度により、2つの方法で測定される。電子密度は、1.0×1018〜3.0×1020cm−3未満の場合、導電性マイエナイト化合物粉末の拡散反射を測定し、クベルカムンク変換させた吸収スペクトルの2.8eV(波長443nm)の吸光度(クベルカムンク変換値)から算出される。この方法は、電子密度とクベルカムンク変換値が比例関係になることを利用している。以下、検量線の作成方法について説明する。
【0029】
電子密度の異なる試料を4点作成しておき、それぞれの試料の電子密度を、電子スピン共鳴(ESR)のシグナル強度から求めておく。ESRで測定できる電子密度は、1.0×1014〜1.0×1019cm−3程度である。クベルカムンク値とESRで求めた電子密度をそれぞれ対数でプロットすると比例関係となり、これを検量線とした。すなわち、この方法では、電子密度が1.0×1019〜3.0×1020cm−3では検量線を外挿した値である。
【0030】
電子密度は、3.0×1020〜2.3×1021cm−3の場合、導電性マイエナイト化合物粉末の拡散反射を測定し、クベルカムンク変換させた吸収スペクトルのピークの波長(エネルギー)から換算される。関係式は下記の式を用いた:
n=(−(Esp−2.83)/0.199)0.782
ここで、nは電子密度(cm−3)、Espはクベルカムンク変換した吸収スペクトルのピークのエネルギー(eV)を示す。
【0031】
また、本発明において、導電性マイエナイト化合物は、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)および酸素(O)からなるC12A7結晶構造を有している限り、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)および酸素(O)の中から選ばれた少なくとも1種の原子の一部が、他の原子や原子団に置換されていても良い。例えば、カルシウム(Ca)の一部は、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、セリウム(Ce)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)および銅(Cu)からなる群から選択される1以上の原子で置換されていても良い。また、アルミニウム(Al)の一部は、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、スカンジウム(Sc)、ランタン(La)、イットリウム(Y)、ヨーロピウム(Eu)、イットリビウム(Yb)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)およびテリビウム(Tb)からなる群から選択される1以上の原子で置換されても良い。また、ケージの骨格の酸素は、窒素(N)などで置換されていても良い。
【0032】
導電性マイエナイト化合物は、仕事関数が低いという特徴を有する。また、導電性マイエナイト化合物は、セシウム化合物に比べて、スパッタに対する耐性が高いという特徴を有する。
【0033】
このため、本発明による放電ランプでは、放電開始電圧のバラツキを抑制することができる上、電極の本体部がスパッタによって消耗するという問題を有意に軽減することが可能になる。また、これにより、両電極、さらには放電ランプ自身の寿命を延伸化することが可能になる。
【0034】
(本発明による放電ランプの構成)
次に、図面を参照して、本発明による放電ランプの一例として、本発明によるネオンランプの具体的構成例について説明する。
【0035】
ただし、本発明によるネオンランプにおいて、電極部分を除く他の部分は、実質的に、図1に示した特許文献1のネオンランプ10の構成とほほ同様であるため、ここでは、電極部分の構成について説明する。また、特許文献1のネオンランプ10と同じ構成部材については、図1に示した参照符号を引用する。
【0036】
図2には、本発明によるネオンランプの電極部分の模式的な拡大図を示す。また、図3には、図2におけるA−A'線での断面を模式的に示す。
【0037】
図2および図3に示すように、本発明によるネオンランプは、第1の電極140aおよび第2の電極140bを有する。
【0038】
第1の電極140aは、本体部150aと、リード線160aとを有する。リード線160aの一端は、本体部150aと電気的に接続され、リード線160aの他端は、図示しないガラスバルブ20の底面22を気密貫通して、ネオンランプの外部に導出されている。
【0039】
同様に、第2の電極140bは、本体部150bと、リード線160bとを有する。リード線160bの一端は、本体部150bと電気的に接続され、リード線160bの他端は、ガラスバルブ20の底面22を気密貫通して、ネオンランプの外部に導出される。
【0040】
第1の電極140aの本体部150aおよび第2の電極140bの本体部150bは、それぞれ、相互に対向するように形成された導電性マイエナイト化合物の層145a、145bを有する。
【0041】
前述のように、導電性マイエナイト化合物には、仕事関数が低い上、セシウム化合物に比べて、スパッタに対する耐性が高いという特徴がある。このため、本発明の構成では、電極140a、140b間の放電は、常に相互に対向する導電性マイエナイト化合物層145a、145b部分を起点として生じるようになる。
【0042】
従って、本体部150aおよび150bに、このような導電性マイエナイト化合物の層145a、145bを形成することにより、ネオンランプの作動の際の放電開始電圧のバラツキが抑制されるとともに、放電の際のスパッタリングによる本体部145a、145bの消耗を、有意に軽減することが可能になる。また、これにより、両電極140a、140b、さらにはネオンランプ自身の寿命を延伸化することが可能になる。
【0043】
なお、以上の記載では、本発明による放電ランプの一例として、ネオンランプを選定し、その特徴について説明した。しかしながら、本発明は、ネオンランプに限られるものではなく、例えば、グローランプのような、他の放電ランプに対しても同様に適用することができることに留意する必要がある。
【0044】
(本発明による放電ランプの構成部材について)
次に、本発明による放電ランプを構成する主要な部材の仕様について、簡単に説明する。なお、各部材の参照符号には、図1および図3に示した部材の参照符号を援用する。
【0045】
(ガラスバルブ20)
ガラスバルブ20は、所望の光の波長に対して透明な、いかなるガラスで構成されても良い。ガラスバルブ20は、例えば、ソーダライムガラスまたは鉛ガラス等で構成されても良い。
【0046】
ガラスバルブ20の内部空間30には、希ガスが充填される。希ガスの種類は、特に限られず、放電ランプの種類に応じて、アルゴン、キセノン、およびヘリウム等、各種希ガスを使用することができる。例えば、ネオンランプの場合、内部空間30には、ネオンと他の希ガスとを含む混合ガスが充填される。他の希ガスは、アルゴンガスであっても良い。
【0047】
充填される希ガスの圧力は、必要とする放電特性によって自由に変更される。
【0048】
(第1の電極140a)
第1の電極140aのリード線160aは、導電性の材料であれば、いかなる材料で構成されても良い。通常、リード線160aは、ジュメット線またはニッケル線等で構成される。リード線160aの太さは、例えば、0.1mm〜1mmの範囲であっても良い。
【0049】
第1の電極140aの本体部150aは、ニッケル金属またはニッケル合金等の導電性部材で構成されても良い。なお、図2および図3の例では、本体部150aは、略ロッド状の形状を有する。しかしながら、これは一例に過ぎず、本体部150aは、略カップ状、略線状、または略板状など、各種形状を有しても良い。
【0050】
本体部150aに形成される導電性マイエナイト化合物の層145aの寸法は、特に限られない。層145aは、約5μm〜約20μm(例えば10μm)の厚さを有しても良い。層145aの全長(図2の「h」参照)は、約0.5mm〜約2mmの範囲であっても良い。層145aの最大幅(図3の「w」参照)は、約0.2mm〜約2mmの範囲であっても良い。なお、導電性マイエナイト化合物の層145aは、本体部150aの全周にわたって設置しても良い。
【0051】
導電性マイエナイト化合物の層145aは、例えば、本体部150aの一部に、マイエナイト化合物の粒子を含むペーストを塗布し、乾燥した後、これを焼成することにより、形成することができる。焼成は、還元性の雰囲気で実施されても良い。焼成温度は、例えば、約1200℃〜約1350℃の範囲である。
【0052】
また、本体部150aの表面には、アルミナおよび/またはチタニアのような絶縁層が設置されても良く、この絶縁層は、導電性マイエナイト化合物の層145aを覆っても良い。これにより、定格よりも低い電圧を印加した際に、意図しない放電が生じることが回避される。
【0053】
なお、第2の電極140bにおいても、以上の記載が参照される。
【0054】
ただし、一方の電極(例えば第2の電極140b)の本体部(例えば本体部150b)は、導電性マイエナイト化合物の層145bを有さなくても良い。
【0055】
また、図2の例では、両リード線160a、160bは、ガラスバルブ20の同一の面(底面22)から導出され、同一の方向に延伸している。しかしながら、各リード線160a、160bは、それぞれ、ガラスバルブ20の別の面から導出されても良い。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、表示用の計器および電気機器等の光源として使用されるネオンランプ等に利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
10 特許文献1に記載のネオンランプ
20 ガラスバルブ
22 底面
30 内部空間
40a 第1の電極
40b 第2の電極
45a、45b セシウム化合物層
50a、50b 本体部
60a、60b リード線
140a 第1の電極
140b 第2の電極
145a、145b 導電性マイエナイト化合物の層
150a、150b 本体部
160a、160b リード線
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
ネオンランプのような放電ランプは、電気機器および電子機器の表示装置(例えばパイロットランプなど)として、広く使用されている。
【0003】
通常、ネオンランプは、ネオンを含む希ガスが充填された内部空間を有するガラスバルブと、このガラスバルブの内部空間に対向して配置された一対の電極とで構成される。
【0004】
ネオンランプの作動の際には、両電極間に直流電圧または交流電圧が印加される。これにより、電極間でグロー放電が生じ、ランプを発光させることができる。
【0005】
このようなネオンランプにおいて、電極の一部に仕事関数の低いセシウム化合物の層を形成し、この層を起点として放電を生じさせることにより、放電開始電圧のバラツキを抑制することが開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−222637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の特許文献1では、放電開始電圧のバラツキを抑制するため、電極にセシウム化合物の層が設置される。しかしながら、セシウム化合物の層は、スパッタに対する耐性があまり良好ではないという問題がある。すなわち、従来のネオンランプでは、スパッタリングにより、電極は、比較的短時間で消耗してしまう。このため、特許文献1のネオンランプは、寿命が比較的短いという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、本発明では、電極の消耗が有意に抑制され、寿命を向上することが可能な放電ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、内部に希ガスが封入されたガラスバルブと、該ガラスバルブの内部に配置された第1および第2の電極とを有する放電ランプであって、
前記第1の電極は、導電性マイエナイト化合物の層が設置された第1の本体部を有し、前記導電性マイエナイト化合物の層において、放電が生じるように構成、配置されることを特徴とする放電ランプが提供される。
【0010】
ここで、本発明による放電ランプにおいて、前記第2の電極は、導電性マイエナイト化合物の層が設置された第2の本体部を有し、
前記両本体部の導電性マイエナイト化合物の層は、相互に対面するように配置されても良い。
【0011】
また、本発明による放電ランプにおいて、
前記第1の本体部は、中心軸に沿って延伸する細長い形状を有し、
前記第1の本体部に形成された導電性マイエナイト化合物の層は、前記中心軸に対して垂直な断面において、0.2mm〜2mmの範囲の最大幅を有しても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、電極の消耗が有意に抑制され、寿命を向上することが可能な放電ランプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】特許文献1に記載のネオンランプの概略的な構成図である。
【図2】本発明による放電ランプの電極部分を模式的に示した拡大図である。
【図3】図2におけるA−A'線での断面を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の構成を説明する。
【0015】
まず、本発明による放電ランプの特徴をより良く理解するため、特許文献1に記載のネオンランプの構成について、簡単に説明する。
【0016】
図1には、特許文献1に記載のネオンランプの概略的な構成を示す。
【0017】
図1に示すように、特許文献1に記載のネオンランプ10は、ガラスバルブ20と、このガラスバルブ20の底面22に固定された一組の電極40a、40bとを有する。
【0018】
ガラスバルブ20は、内部空間30を有し、この内部空間30には、ネオンを主成分とする混合ガスが充填される。
【0019】
第1の電極40aは、本体部50aと、リード線60aとを有する。リード線60aの一端は、本体部50aと電気的に接続され、リード線60aの他端は、ガラスバルブ20の底面22を気密貫通して、ネオンランプ10の外部に導出されている。
【0020】
同様に、第2の電極40bは、本体部50bと、リード線60bとを有する。リード線60bの一端は、本体部50bと電気的に接続され、リード線60bの他端は、ガラスバルブ20の底面22を気密貫通して、ネオンランプ10の外部に導出される。
【0021】
第1の電極40aの本体部50aおよび第2の電極40bの本体部50bは、それぞれ、相互に対向するように形成されたセシウム化合物層45a、45bを有する。セシウム化合物層45a、45bは、例えば、厚さが0.5μm〜1μm程度である。
【0022】
セシウム化合物には、仕事関数が低いという特徴があり、このため、本構成では、電極間の放電は、常に相互に対向するセシウム化合物層45a、45b部分を起点として生じるようになる。従って、本体部50aおよび50bに、このようなセシウム化合物層45a、45bを形成することにより、ネオンランプ10の作動の際の放電開始電圧のバラツキが抑制される。
【0023】
なお、図1には示されていないが、第1の電極40aの本体部50aの表面には、セシウム化合物層45aを覆うようにして、アルミナ等の絶縁層が形成される。同様に、第2の電極40bの本体部50bの表面には、セシウム化合物層45bを覆うようにして、アルミナ等の絶縁層が形成される。これらの絶縁層は、セシウム化合物層45a、45bの部分以外の箇所で、意図しない放電が生じることを防止するために設置される。
【0024】
ただし、このように構成されたネオンランプ10において、セシウム化合物層45a、45bは、放電時のスパッタリングに対する耐性があまり良好ではないという問題がある。このため、図1に示したネオンランプ10では、電極間の放電の際のスパッタリングにより、本体部50a、50bに形成されたセシウム化合物層45a、45bは、比較的短時間で消耗してしまう。このため、図1に示したネオンランプ10は、寿命が比較的短いという問題がある。
【0025】
これに対して、本発明では、電極の本体部が導電性マイエナイト化合物を含むという特徴を有する。
【0026】
ここで、「マイエナイト化合物」とは、ケージ(籠)構造を有する12CaO・7Al2O3(以下「C12A7」ともいう)およびC12A7と同等の結晶構造を有する化合物(同型化合物)の総称である。
【0027】
また、本願において、「導電性マイエナイト化合物」とは、ケージ中に含まれる「フリー酸素イオン」の一部もしくは全てが電子で置換された、電子密度が1.0×1018cm−3以上のマイエナイト化合物を表す。全てのフリー酸素イオンが電子で置換されたときの電子密度は、2.3×1021cm−3である。
【0028】
なお、一般に、導電性マイエナイト化合物の電子密度は、マイエナイト化合物の電子密度により、2つの方法で測定される。電子密度は、1.0×1018〜3.0×1020cm−3未満の場合、導電性マイエナイト化合物粉末の拡散反射を測定し、クベルカムンク変換させた吸収スペクトルの2.8eV(波長443nm)の吸光度(クベルカムンク変換値)から算出される。この方法は、電子密度とクベルカムンク変換値が比例関係になることを利用している。以下、検量線の作成方法について説明する。
【0029】
電子密度の異なる試料を4点作成しておき、それぞれの試料の電子密度を、電子スピン共鳴(ESR)のシグナル強度から求めておく。ESRで測定できる電子密度は、1.0×1014〜1.0×1019cm−3程度である。クベルカムンク値とESRで求めた電子密度をそれぞれ対数でプロットすると比例関係となり、これを検量線とした。すなわち、この方法では、電子密度が1.0×1019〜3.0×1020cm−3では検量線を外挿した値である。
【0030】
電子密度は、3.0×1020〜2.3×1021cm−3の場合、導電性マイエナイト化合物粉末の拡散反射を測定し、クベルカムンク変換させた吸収スペクトルのピークの波長(エネルギー)から換算される。関係式は下記の式を用いた:
n=(−(Esp−2.83)/0.199)0.782
ここで、nは電子密度(cm−3)、Espはクベルカムンク変換した吸収スペクトルのピークのエネルギー(eV)を示す。
【0031】
また、本発明において、導電性マイエナイト化合物は、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)および酸素(O)からなるC12A7結晶構造を有している限り、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)および酸素(O)の中から選ばれた少なくとも1種の原子の一部が、他の原子や原子団に置換されていても良い。例えば、カルシウム(Ca)の一部は、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、セリウム(Ce)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)および銅(Cu)からなる群から選択される1以上の原子で置換されていても良い。また、アルミニウム(Al)の一部は、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、スカンジウム(Sc)、ランタン(La)、イットリウム(Y)、ヨーロピウム(Eu)、イットリビウム(Yb)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)およびテリビウム(Tb)からなる群から選択される1以上の原子で置換されても良い。また、ケージの骨格の酸素は、窒素(N)などで置換されていても良い。
【0032】
導電性マイエナイト化合物は、仕事関数が低いという特徴を有する。また、導電性マイエナイト化合物は、セシウム化合物に比べて、スパッタに対する耐性が高いという特徴を有する。
【0033】
このため、本発明による放電ランプでは、放電開始電圧のバラツキを抑制することができる上、電極の本体部がスパッタによって消耗するという問題を有意に軽減することが可能になる。また、これにより、両電極、さらには放電ランプ自身の寿命を延伸化することが可能になる。
【0034】
(本発明による放電ランプの構成)
次に、図面を参照して、本発明による放電ランプの一例として、本発明によるネオンランプの具体的構成例について説明する。
【0035】
ただし、本発明によるネオンランプにおいて、電極部分を除く他の部分は、実質的に、図1に示した特許文献1のネオンランプ10の構成とほほ同様であるため、ここでは、電極部分の構成について説明する。また、特許文献1のネオンランプ10と同じ構成部材については、図1に示した参照符号を引用する。
【0036】
図2には、本発明によるネオンランプの電極部分の模式的な拡大図を示す。また、図3には、図2におけるA−A'線での断面を模式的に示す。
【0037】
図2および図3に示すように、本発明によるネオンランプは、第1の電極140aおよび第2の電極140bを有する。
【0038】
第1の電極140aは、本体部150aと、リード線160aとを有する。リード線160aの一端は、本体部150aと電気的に接続され、リード線160aの他端は、図示しないガラスバルブ20の底面22を気密貫通して、ネオンランプの外部に導出されている。
【0039】
同様に、第2の電極140bは、本体部150bと、リード線160bとを有する。リード線160bの一端は、本体部150bと電気的に接続され、リード線160bの他端は、ガラスバルブ20の底面22を気密貫通して、ネオンランプの外部に導出される。
【0040】
第1の電極140aの本体部150aおよび第2の電極140bの本体部150bは、それぞれ、相互に対向するように形成された導電性マイエナイト化合物の層145a、145bを有する。
【0041】
前述のように、導電性マイエナイト化合物には、仕事関数が低い上、セシウム化合物に比べて、スパッタに対する耐性が高いという特徴がある。このため、本発明の構成では、電極140a、140b間の放電は、常に相互に対向する導電性マイエナイト化合物層145a、145b部分を起点として生じるようになる。
【0042】
従って、本体部150aおよび150bに、このような導電性マイエナイト化合物の層145a、145bを形成することにより、ネオンランプの作動の際の放電開始電圧のバラツキが抑制されるとともに、放電の際のスパッタリングによる本体部145a、145bの消耗を、有意に軽減することが可能になる。また、これにより、両電極140a、140b、さらにはネオンランプ自身の寿命を延伸化することが可能になる。
【0043】
なお、以上の記載では、本発明による放電ランプの一例として、ネオンランプを選定し、その特徴について説明した。しかしながら、本発明は、ネオンランプに限られるものではなく、例えば、グローランプのような、他の放電ランプに対しても同様に適用することができることに留意する必要がある。
【0044】
(本発明による放電ランプの構成部材について)
次に、本発明による放電ランプを構成する主要な部材の仕様について、簡単に説明する。なお、各部材の参照符号には、図1および図3に示した部材の参照符号を援用する。
【0045】
(ガラスバルブ20)
ガラスバルブ20は、所望の光の波長に対して透明な、いかなるガラスで構成されても良い。ガラスバルブ20は、例えば、ソーダライムガラスまたは鉛ガラス等で構成されても良い。
【0046】
ガラスバルブ20の内部空間30には、希ガスが充填される。希ガスの種類は、特に限られず、放電ランプの種類に応じて、アルゴン、キセノン、およびヘリウム等、各種希ガスを使用することができる。例えば、ネオンランプの場合、内部空間30には、ネオンと他の希ガスとを含む混合ガスが充填される。他の希ガスは、アルゴンガスであっても良い。
【0047】
充填される希ガスの圧力は、必要とする放電特性によって自由に変更される。
【0048】
(第1の電極140a)
第1の電極140aのリード線160aは、導電性の材料であれば、いかなる材料で構成されても良い。通常、リード線160aは、ジュメット線またはニッケル線等で構成される。リード線160aの太さは、例えば、0.1mm〜1mmの範囲であっても良い。
【0049】
第1の電極140aの本体部150aは、ニッケル金属またはニッケル合金等の導電性部材で構成されても良い。なお、図2および図3の例では、本体部150aは、略ロッド状の形状を有する。しかしながら、これは一例に過ぎず、本体部150aは、略カップ状、略線状、または略板状など、各種形状を有しても良い。
【0050】
本体部150aに形成される導電性マイエナイト化合物の層145aの寸法は、特に限られない。層145aは、約5μm〜約20μm(例えば10μm)の厚さを有しても良い。層145aの全長(図2の「h」参照)は、約0.5mm〜約2mmの範囲であっても良い。層145aの最大幅(図3の「w」参照)は、約0.2mm〜約2mmの範囲であっても良い。なお、導電性マイエナイト化合物の層145aは、本体部150aの全周にわたって設置しても良い。
【0051】
導電性マイエナイト化合物の層145aは、例えば、本体部150aの一部に、マイエナイト化合物の粒子を含むペーストを塗布し、乾燥した後、これを焼成することにより、形成することができる。焼成は、還元性の雰囲気で実施されても良い。焼成温度は、例えば、約1200℃〜約1350℃の範囲である。
【0052】
また、本体部150aの表面には、アルミナおよび/またはチタニアのような絶縁層が設置されても良く、この絶縁層は、導電性マイエナイト化合物の層145aを覆っても良い。これにより、定格よりも低い電圧を印加した際に、意図しない放電が生じることが回避される。
【0053】
なお、第2の電極140bにおいても、以上の記載が参照される。
【0054】
ただし、一方の電極(例えば第2の電極140b)の本体部(例えば本体部150b)は、導電性マイエナイト化合物の層145bを有さなくても良い。
【0055】
また、図2の例では、両リード線160a、160bは、ガラスバルブ20の同一の面(底面22)から導出され、同一の方向に延伸している。しかしながら、各リード線160a、160bは、それぞれ、ガラスバルブ20の別の面から導出されても良い。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、表示用の計器および電気機器等の光源として使用されるネオンランプ等に利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
10 特許文献1に記載のネオンランプ
20 ガラスバルブ
22 底面
30 内部空間
40a 第1の電極
40b 第2の電極
45a、45b セシウム化合物層
50a、50b 本体部
60a、60b リード線
140a 第1の電極
140b 第2の電極
145a、145b 導電性マイエナイト化合物の層
150a、150b 本体部
160a、160b リード線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に希ガスが封入されたガラスバルブと、該ガラスバルブの内部に配置された第1および第2の電極とを有する放電ランプであって、
前記第1の電極は、導電性マイエナイト化合物の層が設置された第1の本体部を有し、前記導電性マイエナイト化合物の層において、放電が生じるように構成、配置されることを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
前記第2の電極は、導電性マイエナイト化合物の層が設置された第2の本体部を有し、
前記両本体部の導電性マイエナイト化合物の層は、相互に対面するように配置されることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項3】
前記第1の本体部は、中心軸に沿って延伸する細長い形状を有し、
前記第1の本体部に形成された導電性マイエナイト化合物の層は、前記中心軸に対して垂直な断面において、0.2mm〜2mmの範囲の最大幅を有することを特徴とする請求項1または2に記載の放電ランプ。
【請求項1】
内部に希ガスが封入されたガラスバルブと、該ガラスバルブの内部に配置された第1および第2の電極とを有する放電ランプであって、
前記第1の電極は、導電性マイエナイト化合物の層が設置された第1の本体部を有し、前記導電性マイエナイト化合物の層において、放電が生じるように構成、配置されることを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
前記第2の電極は、導電性マイエナイト化合物の層が設置された第2の本体部を有し、
前記両本体部の導電性マイエナイト化合物の層は、相互に対面するように配置されることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項3】
前記第1の本体部は、中心軸に沿って延伸する細長い形状を有し、
前記第1の本体部に形成された導電性マイエナイト化合物の層は、前記中心軸に対して垂直な断面において、0.2mm〜2mmの範囲の最大幅を有することを特徴とする請求項1または2に記載の放電ランプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2013−105531(P2013−105531A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246618(P2011−246618)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】
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