説明

放電灯点灯装置および、これを用いた照明器具

【課題】半波放電が発生した場合でも、正負両極性に適正な電力を供給することができる放電灯点灯装置および、これを用いた照明器具を提供する。
【解決手段】
直流電力を交流電力に電力変換して高圧放電灯DLに供給する降圧チョッパ回路4と、高圧放電灯に印加される正負両極性の負荷電圧+V,−Vを検出する負荷電圧検出部61と、負荷電圧検出部61によって検出された正負両極性の負荷電圧+V,−Vを比較し、半波放電状態であるか否かを判断する比較部62と、
降圧チョッパ回路4から高圧放電灯DLに供給される電力を制御する制御回路6とを備え、制御回路6は、比較部62が半波放電状態であると判断した後、前の周期における正極性の負荷電圧+Vに応じた正極性の負荷電流および、前の周期における負極性の負荷電圧−Vに応じた負極性の負荷電流が出力されるように、降圧チョッパ回路4を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯点灯装置および、これを用いた照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、共振回路の共振作用により発生させた交流電圧を放電灯に印加することで放電灯を点灯させる放電灯点灯装置がある。従来の放電灯点灯装置は、放電灯に所望の電力が供給されるように、放電灯に印加される正極性の負荷電圧と負極性の負荷電圧とのうち、いずれか一方を読み込み、読み込んだ負荷電圧に応じた負荷電流の目標値を設定する。そして、正負両極性の負荷電流が目標値と一致するように制御することで、放電灯に所望の電力を供給している。
【0003】
しかし、放電灯に印加される正極性の負荷電圧と負極性の負荷電圧とが大きく異なる状態(半端放電状態)のときには、所望の電力を供給するために必要な負荷電流の目標値が正負両極性で異なる。そのため、負荷電圧を読み込んだ極性では所望の電力が供給されるが、読み込んだ極性とは異なる極性では、所望の電力を供給するために必要な負荷電流値と目標値とが異なるため、所望の電力が供給されなくなる。
【0004】
例えば、正極性の負荷電圧が負極性の負荷電圧よりも低くなる半波放電が発生し、正極性の負荷電圧を読み込んで負荷電流の目標値を設定した場合、この目標値は負極性の負荷電流の適正値よりも大きくなってしまう。それによって、負極性の出力電力(負極性の負荷電圧×負荷電流(目標値))が所望の電力を超えることとなり、放電灯点灯装置の故障や放電灯の寿命短縮を招くおそれがあった。
【0005】
そこで、放電灯に印加される正負両極性の負荷電圧を比較し、負荷電圧が高い方の極性の負荷電圧から正負両極性の負荷電流の目標値を設定する放電灯点灯装置がある(例えば、特許文献1)。この放電灯点灯装置は、半波放電が発生した場合、正負両極性の負荷電圧を比較し、負荷電圧が高いほうの極性の負荷電圧から負荷電流の目標値を設定する。それによって、半波放電が発生した場合に、読み込んだ極性とは異なる極性においても出力電力が所望の電力を超えることがないので、放電灯点灯装置の故障や放電灯の寿命短縮を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−257659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の放電灯点灯装置は、半波放電が発生した場合に、負荷電圧が高い方の極性から負荷電流の目標値を設定し、正負両極性の負荷電流が目標値と一致するように制御する。そのため、負荷電圧が低い方の極性に適正な負荷電流を供給することができなくなる。つまり、負荷電圧が低い方の極性の負荷電流が適正値より少なくなることにより、調光状態となり、ランプの立ち消え等の不具合が発生する。
【0008】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、半波放電が発生した場合でも、正負両極性に適正な電力を供給することができる放電灯点灯装置および、これを用いた照明器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の放電灯点灯装置は、直流電力を交流電力に電力変換して放電灯に供給する電力供給回路と、前記放電灯に印加される正極性の負荷電圧および負極性の負荷電圧を検出する負荷電圧検出部と、前記負荷電圧検出部によって検出された前記正極性の負荷電圧と前記負極性の負荷電圧とを比較し、半波放電状態であるか否かを判断する比較部と、前記電力供給回路から前記放電灯に供給される電力を制御する制御回路とを備え、前記制御回路は、前記比較部が半波放電状態であると判断した後、前の周期における正極性の負荷電圧に応じた正極性の負荷電流および、前の周期における負極性の負荷電圧に応じた負極性の負荷電流が出力されるように、前記電力供給回路を制御することを特徴とする。
【0010】
この放電灯点灯装置において、前記制御回路は、前記比較部が半波放電状態でないと判断した後、前の周期における正極性の負荷電圧と負極性の負荷電圧とのうち、いずれか一方の負荷電圧に応じた正極性の負荷電流および負極性の負荷電流が出力されるように、前記電力供給回路を制御することが好ましい。
【0011】
この放電灯点灯装置において、前記比較部は、前記負荷電圧検出部が検出した前記正極性の負荷電圧と前記負極性の負荷電圧との差が所定値以上となった場合に、半波放電状態であると判断することが好ましい。
【0012】
この放電灯点灯装置において、前記制御回路は、前記比較部が半波放電状態であると判断した後、正極性の負荷電圧と負極性の負荷電圧とのうち、負荷電圧が高い一方の極性の負荷電圧が出力される期間を短くすることが好ましい。
【0013】
本発明の照明器具において、直流電力を交流電力に電力変換して放電灯に供給する電力供給回路と、前記放電灯に印加される正極性の負荷電圧および負極性の負荷電圧を検出する負荷電圧検出部と、前記負荷電圧検出部によって検出された前記正極性の負荷電圧と前記負極性の負荷電圧とを比較し、半波放電状態であるか否かを判断する比較部と、前記電力供給回路から前記放電灯に供給される電力を制御する制御回路とを備え、前記制御回路は、前記比較部が半波放電状態であると判断した後、前の周期における正極性の負荷電圧に応じた正極性の負荷電流および、前の周期における負極性の負荷電圧に応じた負極性の負荷電流が出力されるように、前記電力供給回路を制御する放電灯点灯装置と、前記放電灯点灯装置によって点灯される放電灯と、前記放電灯点灯装置と前記放電灯とが設けられた器具本体とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明では、半波放電が発生した場合でも、正負両極性に適正な電力を供給することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態1の放電灯点灯装置の回路構成図である。
【図2】(a)負荷電圧のタイミングチャートである。(b)負荷電流のタイミングチャートである。(c)出力電力のタイミングチャートである。
【図3】V−I特性テーブルを示すグラフである。
【図4】(a)負荷電圧のタイミングチャートである。(b)負荷電流のタイミングチャートである。(c)出力電力のタイミングチャートである。
【図5】実施形態2の照明器具2の外観図である。
【図6】実施形態2の照明器具2の外観図である。
【図7】実施形態2の照明器具2の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
(実施形態1)
本実施形態の高圧放電灯点灯装置1の回路構成図を図1に示す。本実施形態の高圧放電灯点灯装置1(放電灯点灯装置)は、全波整流回路2と、昇圧チョッパ回路3と、極性反転型降圧チョッパ回路4(電力供給回路)と、始動電圧発生回路5と、制御回路6とで構成されている。
【0018】
全波整流回路2は、商用交流電源Vsに接続され、商用交流電源Vsが出力する交流電圧を整流した脈流電圧を生成し、昇圧チョッパ回路3に出力するダイオードブリッジ回路である。昇圧チョッパ回路3は、全波整流回路2が生成する脈流電圧を入力とし、これを昇圧した直流電圧Vdcを生成し、極性反転型降圧チョッパ回路4に出力する。極性反転型降圧チョッパ回路4(以降、降圧チョッパ回路4と略称する)は、直流電圧Vdcを降圧して高圧放電灯DL(放電灯)に適正な電力を供給するように制御され、高圧放電灯DLに矩形波交流電圧を印加する。また、高圧放電灯DLの始動時には、共振型の始動電圧発生回路5を駆動するための高周波電圧を発生させる。
【0019】
次に、昇圧チョッパ回路3,降圧チョッパ回路4,始動電圧発生回路5,制御回路6の構成について説明する。
【0020】
昇圧チョッパ回路3は、入力コンデンサC1とインダクタL1とスイッチング素子Q1とダイオードD1と平滑コンデンサC2と制御部31とで構成されている。
【0021】
全波整流回路2の出力端間に入力コンデンサC1が接続され、入力コンデンサC1と並列にインダクタL1とスイッチング素子Q1との直列回路が接続されている。また、スイッチング素子Q1と並列に、ダイオードD1と平滑コンデンサC2とからなる直列回路が接続されている。そして、制御部31は、スイッチング素子Q1のスイッチング制御を行っている。
【0022】
上記構成で、スイッチング素子Q1が商用交流電源Vsの商用周波数よりも十分に高い周波数でスイッチング制御されることにより、全波整流回路2から出力される脈流電圧は、所定の直流電圧Vdcに昇圧されて平滑コンデンサC2に充電される。また、制御部31は、商用交流電源Vsによる入力電流と入力電圧の位相がずれないように、回路に抵抗性を持たせる力率改善制御を行っている。なお、全波整流回路2の交流入力端に、高周波漏洩阻止用のフィルタ回路を設けてもよい。
【0023】
降圧チョッパ回路4は、MOSFETからなるスイッチング素子Q2〜Q5を有するフルブリッジ回路で構成されている。昇圧チョッパ回路3の出力端間に、スイッチング素子Q2,Q3からなる直列回路と、スイッチング素子Q4,Q5とからなる直列回路とが並列接続されている。そして、スイッチング素子Q2,Q3の接続点と、スイッチング素子Q4,Q5の接続点との間に、出力フィルタとなるインダクタL2とコンデンサC3とからなる直列回路が接続されている。
【0024】
始動電圧発生回路5は、パルストランスPTと、コンデンサC4とからなる共振回路で構成されており、降圧チョッパ回路4に印加された直流電圧Vdcを電源としている。そして、始動電圧発生回路5は、降圧チョッパ回路4のスイッチング素子Q2〜Q5が高周波でスイッチング制御されることにより、高圧放電灯DLに印加される始動・再始動のための共振昇圧電圧を発生する。
【0025】
制御回路6は、負荷電圧検出部61と比較部62と記憶部63とスイッチング制御部64とで構成され、スイッチング素子Q2〜Q5のスイッチング制御を行っている。負荷電圧検出部61は、高圧放電灯DLに印加される正負両極性の負荷電圧を検出する。比較部62は、負荷電圧検出部61が検出した正負両極性の負荷電圧を比較し、半波放電状態であるか否かを判断する。記憶部63は、負荷電圧に応じた負荷電流を示すV−I特性テーブル(図3参照)を記憶している。V−I特性テーブルは図3に示すように、適正な電力を供給するための負荷電圧と負荷電流との関係を示すものであり、負荷電圧が大きくなるにつれて負荷電流が減少するように構成されている。スイッチング制御部64は、負荷電圧検出部61が検出した負荷電圧に基づいて高圧放電灯DLの点灯・不点灯を判別し、スイッチング素子Q2〜Q5のスイッチング制御を行うことで、降圧チョッパ回路4の動作モードを始動モードと点灯モードとに切り替える。
【0026】
始動モードを行う第1の動作期間では、高圧放電灯DLの始動用の高電圧を発生させる。また、点灯モードを行う第2の動作期間では、記憶部63に記憶されているV−I特性テーブルを参照し、負荷電圧検出部61が検出した高圧放電灯DLの負荷電圧に対応した負荷電流が高圧放電灯DLに供給されるように、スイッチング素子Q4,Q5の動作周波数およびオン期間を制御する。
【0027】
次に、本実施形態の高圧放電灯点灯装置1の動作について説明する。
【0028】
商用交流電源Vsが投入されると、制御部31がスイッチング素子Q1を数10kHz程度でオン・オフさせ、直流電圧Vdcに応じてパルス幅を適正に制御する。それによって、高圧放電灯DLが点灯していない非点灯時および、高圧放電灯DLが点灯している点灯時に、直流電圧Vdcが所定値となるように制御している。また、昇圧チョッパ回路3は、商用交流電源Vsからの入力力率を高め、入力電流歪を抑制する機能を有している。
【0029】
直流電圧Vdcが所定値に達すると、降圧チョッパ回路4が動作を開始する。この時点で、高圧放電灯DLは点灯していない非点灯状態であり、高圧放電灯DLは開放状態と同一で、等価インピーダンスは無限大に近い高インピーダンス状態である。このとき、降圧チョッパ回路4は、高圧放電灯DLを始動するための始動モードで動作を開始する。始動モードでは、スイッチング素子Q2,Q5がオン状態と、スイッチング素子Q3,Q4がオン状態とを所定の周波数f0(数100kHz程度)で交互に繰り返す。この周波数f0は、パルストランスPTの1次巻線n1とコンデンサC4からなる直列共振回路の共振周波数の共振周波数frに近い周波数であり、正弦波状の高電圧が1次巻線n1に発生する。1次巻線n1に発生した正弦波状の高電圧は、パルストランスPTの1次巻線n1と2次巻線n2との巻数比によって昇圧(始動用高電圧)され、コンデンサC3を介して高圧放電灯DLに印加される。これによって、高圧放電灯DLの両端間が絶縁破壊し、高圧放電灯DLが始動する。
【0030】
始動モード中に発生する始動用高電圧により、高圧放電灯DLが始動すると、高圧放電灯DLは短絡に近い低インピーダンス状態になり、高圧放電灯DLの負荷電圧は略0Vに低下する。負荷電圧検出回路21により検出される高圧放電灯DLの負荷電圧が所定の点灯判別電圧閾値を下回ると、スイッチング制御手段24は、高圧放電灯DLが点灯したと判別する。そして、降圧チョッパ回路4の動作を、高圧放電灯DLの点灯状態を安定させるための点灯モードに切り替える。
【0031】
点灯モードでは、スイッチング素子Q2,Q3が所定の低い周波数fa(数100Hz程度)で交互にオン・オフする。その際、スイッチング素子Q2のオン期間は、スイッチング素子Q5が所定の高い周波数fb(数10kHz程度)でオン・オフし、スイッチング素子Q3のオン期間は、スイッチング素子Q4が所定の高い周波数fbでオン・オフする動作を繰り返す。この極性反転型降圧チョッパ動作により、高圧放電灯DLには、周波数faの矩形波交流電圧が印加される。このとき、コンデンサC3とインダクタL2とは、降圧チョッパ回路4のフィルタ回路として機能し、スイッチング素子Q4,Q5に内蔵された逆並列ダイオードは、降圧チョッパ回路4の回生電流通電用ダイオードとして機能する。
【0032】
高圧放電灯DLは、始動直後はランプ電圧が低く、発光管内部が高温・高圧になるにつれてランプ両端電圧が上昇して定格値に至り、安定点灯状態になる。そして、制御回路6は、高圧放電灯DLの負荷電圧を1周期毎に検出し、検出した負荷電圧から記憶部63に記憶されたV−I特性テーブルを参照して次回1周期分の負荷電流の目標値を決定する。そして、スイッチング素子Q4,Q5のチョッピング周波数やオン期間を制御することで負荷電流を目標値に一致させる。この制御を1周期毎に繰り返すことで、高圧放電灯DLに適正な電力が供給され、高圧放電灯DLを安定点灯させることができる。
【0033】
次に、制御回路6の具体的な制御について図2(a)〜(c)を用いて説明する。図2(a)は負荷電圧を示すタイミングチャート、図2(b)は負荷電流を示すタイミングチャート、図2(c)は出力電力を示すタイミングチャートである。
【0034】
なお、正極性の負荷電圧が出力されている期間を正極性のオン期間+Ton、負極性の負荷電圧が出力されている期間を負極性のオン期間−Tonとし、正極性のオン期間+Tonと負極性のオン期間−Tonとは同一の長さである。そして、正負両極性の負荷電圧の絶対値が90Vであり、半波放電が発生していない1周期を周期T1とし、周期T1は正極性のオン期間+Ton1と負極性のオン期間−Ton1とからなる。また、周期T1の次の1周期を周期T2とし、周期T2は正極性のオン期間+Ton2と負極性のオン期間−Ton2とからなり、半波放電が発生して負極性の負荷電圧が90Vから150Vに変動している。また、周期T2の次の1周期を周期T3とし、周期T3は正極性のオン期間+Ton3と負極性のオン期間−Ton3とからなり、半波放電状態が継続している。なお、正極性のオン期間+Ton1,+Ton2,+Ton3は互いに同一の長さであり、負極性のオン期間−Ton1,−Ton2,−Ton3は互いに同一の長さである。
【0035】
まず、負荷電圧検出部61は、高圧放電灯DLの正負両極性の負荷電圧を検出し、その検出結果を比較部62に出力している。比較部62は、1周期分の正極性の負荷電圧および負極性の負荷電圧の検出結果を保持する。そして、比較部62は、保持している正極性の負荷電圧の絶対値と負極性の絶対値とを比較することで、半波放電状態であるか否かを判断する。以降、正極性の負荷電圧の絶対値を負荷電圧+V,負極性の負荷電圧の絶対値を負荷電圧−Vと称す。比較部62は、正負両極性の負荷電圧差(+V,−Vの差)が所定値以上(例えば、負荷電圧差20V以上)である場合、高圧放電灯DLが半波放電状態であると判断する。
【0036】
周期T1は、正極性の負荷電圧+V=90V,負極性の負荷電圧−V=90Vであるので、比較部62は半波放電状態ではないと判断する。この場合、スイッチング制御部64は、記憶部63を参照して、正極性の負荷電圧+V(=90V)に応じた負荷電流の目標値(1.67A)を取得する。そして、周期T2において、スイッチング制御部64は、正極性の負荷電流および負極性の負荷電流の各々が、取得した目標値(1.67A)となるように制御する。なお、本実施形態では、半波放電状態ではないと判断した場合、正極性の負荷電圧+Vに応じた負荷電流の目標値を設定しているが、負極性の負荷電圧−Vに応じた負荷電流の目標値を設定してもよい。
【0037】
周期T2において、比較部62は、正極性のオン期間+Ton2における負荷電圧+V=90Vと、負極性のオン期間−Ton2における負荷電圧−V=150Vとを比較し、負荷電圧差が60Vであるので半波放電状態であると判断する。
【0038】
スイッチング制御部64は、比較部62が半波放電状態であると判断した場合、正負両極性の負荷電圧+V,−Vの各々に応じた負荷電流の目標値を、記憶部63に記憶されたV−I特性テーブル(図3参照)に基づいて取得する。この場合、正極性のオン期間+Ton2における正極性の負荷電圧+V=90Vであるので、正極性の負荷電流の目標値は1.67Aとなる。また、負極性のオン期間−Ton2における負極性の負荷電圧−V--=150Vであるので、負極性の負荷電流の目標値は1.0Aとなる。
【0039】
そして、スイッチング制御部64は、周期T3において、正極性の負荷電流が目標値(1.67A)と一致し、負極性の負荷電流が目標値(1.0A)と一致するように制御する。また、周期T3は半波放電状態が継続しており、正極性のオン期間+Ton3における負荷電圧+V=90V,負極性のオン期間−Ton3における負荷電圧−V=150Vとなっている。したがって、周期T3における正極性の出力電力が150W(=90V×1.67A)、負極性の出力電力が150W(=150V×1.0A)となり、半波放電状態であっても正極性および負極性に適正な電力が供給されることとなる。
【0040】
また、周期T3においても半波放電状態が継続しているので、比較部62は周期T3における正負両極性の負荷電圧+V,−Vを比較して半波放電状態であると判断する。そして、スイッチング制御部64は、周期T3における正負両極性の負荷電圧+V,−Vに応じた正極性の負荷電流の目標値および負極性の負荷電流の目標値を設定し、次の周期において正負両極性の負荷電流の各々が目標値と一致するように制御する。
【0041】
すなわち、本実施形態では、1周期毎に正負両極性の負荷電圧+V,−Vを比較して、半波放電状態であるか否かを判断する。そして、半波放電状態であると判断した後、前の周期における正極性の負荷電圧+Vに応じた正極性の負荷電流および、前の周期における負極性の負荷電圧−Vに応じた負極性の負荷電流が出力されるように、制御回路6は降圧チョッパ回路4を制御する。それによって、半波放電時であっても、正負両極性の負荷電圧+V,−Vの各々に応じた正負両極性の負荷電流が出力されるので、正極性および負極性の各々に適正な電力が供給されることとなる。
【0042】
このように、本実施形態では半波放電が発生した場合であっても、正負両極性に適正な電力が供給されるので、過電力によるランプ寿命の悪化,回路ストレスの増加,調光状態による高圧放電灯DLの立ち消え等を防止することができる。
【0043】
また、比較部62が負荷電圧検出部61によって検出された正負両極性の負荷電圧+V,−Vから半波放電状態であると判断した場合、上記制御に加えて、以下の制御を行ってもよい。
【0044】
図4(a)〜(c)に示すように、比較部62は、周期T2において負荷電圧検出部61によって検出された正極性の負荷電圧+V(=90V)と、負極性の負荷電圧−V(=150V)とを比較し、半波放電状態であると判断する。
【0045】
すると、スイッチング制御部64は、負荷電圧が高い方の極性(負極性)のオン期間が短くなるように制御する。すなわち、スイッチング制御部64は、負極性のオン期間が−Ton2a(<−Ton2)となるように降圧チョッパ回路4を制御する。また、周期T3においても、半波放電状態が継続しているので、上記同様の制御を行い、スイッチング制御部64は、負極性のオン期間が−Ton3a(<−Ton3)となるように制御する。
【0046】
半波放電が発生した周期T2における負荷電流は、直前の周期T1における負荷電圧に基づいて決定される。そのため、周期T2における負極性の負荷電流は、周期T1における正極性の負荷電圧+V=90Vに応じて設定されるので、1.67Aとなる。したがって、周期T2における負極性のオン期間−Ton2において過電力が供給されることとなる。これを防止するためには、事前に半波放電が発生することを知っておく必要があるが、それは技術的に困難である。
【0047】
そこで、本実施形態では、上記制御を行い、半波放電状態であると判断した時点で、負荷電圧が高い方の極性のオン期間を短くする。それによって、半波放電が発生した直後における過電力が供給される時間が短くなり、ランプ寿命の悪化や部品ストレスを低減させることができる。
【0048】
なお、上記では比較部62が半波放電状態であると判断した場合、負荷電圧が高い方の極性のオン期間が短くなるように制御しているが、高い方の負荷電圧が所定値以上である場合に、この極性のオン期間が短くなるように制御してもよい。
【0049】
(実施形態2)
図5〜図7に、本実施形態の照明器具11の外観図を示す。本実施形態の照明器具11は、実施形態1の高圧放電灯点灯装置1と、この高圧放電灯点灯装置1によって点灯される高圧放電灯DLと、高圧放電灯点灯装置1を収納し、高圧放電灯DLが取り付けられる器具本体7とで構成される。器具本体7は、高圧放電灯点灯装置1と安定器とを収納するハウジング8と、ソケット(図示なし)に高圧放電灯DLが装着される灯具9とで構成されている。ハウジング8と灯具9とは配線10で接続されており、高圧放電灯点灯装置1と高圧放電灯DLとが電気的に接続され、高圧放電灯DLが点灯する。
【0050】
なお、図5,図6はスポットライトに高圧放電灯DLを用いたトラックライト対応の照明器具11であり、図7はダウンライトに高圧放電灯DLを用いた照明器具11である。
【0051】
照明器具11は、実施形態1の高圧放電灯点灯装置1を備えているため、高圧放電灯DLに半波放電が発生して場合であっても、正負両極性に適正な電力が供給される。したがって、照明器具11は、半波放電が発生しても、過電力によるランプ寿命の悪化,回路ストレスの増加,調光状態による高圧放電灯DLの立ち消え等を防止することができる。
【0052】
また、複数台の照明器具11を組み合わせて照明システムを構築してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 高圧放電灯点灯装置(放電灯点灯装置)
2 全波整流回路
3 昇圧チョッパ回路
4 極性反転型降圧チョッパ回路(電力供給回路)
5 始動電圧発生回路
6 制御回路
61 負荷電圧検出部
62 比較部
63 記憶部
64 スイッチング制御部
DL 高圧放電灯(放電灯)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を交流電力に電力変換して放電灯に供給する電力供給回路と、
前記放電灯に印加される正極性の負荷電圧および負極性の負荷電圧を検出する負荷電圧検出部と、
前記負荷電圧検出部によって検出された前記正極性の負荷電圧と前記負極性の負荷電圧とを比較し、半波放電状態であるか否かを判断する比較部と、
前記電力供給回路から前記放電灯に供給される電力を制御する制御回路とを備え、
前記制御回路は、前記比較部が半波放電状態であると判断した後、前の周期における正極性の負荷電圧に応じた正極性の負荷電流および、前の周期における負極性の負荷電圧に応じた負極性の負荷電流が出力されるように、前記電力供給回路を制御することを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記比較部が半波放電状態でないと判断した後、前の周期における正極性の負荷電圧と負極性の負荷電圧とのうち、いずれか一方の負荷電圧に応じた正極性の負荷電流および負極性の負荷電流が出力されるように、前記電力供給回路を制御することを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記比較部は、前記負荷電圧検出部が検出した前記正極性の負荷電圧と前記負極性の負荷電圧との差が所定値以上となった場合に、半波放電状態であると判断することを特徴とする請求項1または2記載の高圧放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記比較部が半波放電状態であると判断した後、正極性の負荷電圧と負極性の負荷電圧とのうち、負荷電圧が高い一方の極性の負荷電圧が出力される期間を短くすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置と、
前記放電灯点灯装置によって点灯される放電灯と、
前記放電灯点灯装置と前記放電灯とが設けられた器具本体とを備えることを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−243706(P2012−243706A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115531(P2011−115531)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】