説明

放電灯点灯装置およぴ照明器具

【課題】大型化することなく、十分に絶縁空間距離を得ることのできる放電灯点灯装置を提供すること。
【解決手段】両端部に夫々差込み形の電線コネクタ37、38が実装され、この外側にスリット40を設けるとともに、これらコネクタ37、38間に放電灯点灯回路をなす各種の電気部品33〜36が実装されたプリント配線基板32と、端部に向かってきり起こされスリット40と嵌合する爪部14が形成されたベースケース12を具備し、この爪部14によってプリント配線基板32が支持され、プリント配線基板32を覆ってベースケース12にカバーケース21が被される放電灯点灯装置5を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯点灯装置及びこの装置を備えた照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外や照明器具に組込まれる放電灯点灯装置は、プリント配線板の下部を覆うベースケースおよびプリント配線板の状部を覆うカバーケースからなる金属ケースに収納されている。しかしながら、ケース内に収納したプリント配線板に実装されている電気部品とケース間の絶縁空間距離を保持するために、ケースが大きくなり、小型化薄型化の要望が達成できない問題点があった。
【0003】
このため例えば、特許文献1には、ケース本体とケース蓋からなるケース内に、絶縁シートで包み込むようにして回路基板を収納して、回路基板に実装される部品とケースが近接配置されても絶縁シートによって十分な絶縁距離を確保することが開示されている。その結果、部品とケースとのクリアランスを小さくしてケース、ひいては放電灯点灯装置全体の小型化及び薄型化が可能となる。また特許文献1の回路基板の支持は、ケース本体の主部における長手方向両端部近傍に切り起こし形成された略L字形の支持片に載置されて支持される。すなわち、支持片は回路基板に裏面側から当接して支持する部位と回路基板の側端縁に当接して支持することで行われている
【特許文献1】特開2001−357986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の回路基板の支持の方法では回路基板の両端に配置されている端子台と回路基板の長手方向を支持する支持片とは十分に絶縁空間距離を取ることが困難であった。特許文献の回路基板の支持では、回路基板の底面を支持片の支持部位にて支持しているので、この部位と端子台の絶縁距離をとることが特に困難であり、十分に絶縁距離を取るためには、回路基板を大きくするか、ケースを大きくするなどの必要があり、点灯装置の小型化の障害となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明に係る放電灯点灯装置は、両端部にコネクタが実装されるとともに、これらコネクタ間に放電灯点灯回路をなす各種の電気部品が実装され、コネクタの外側にスリット形成された長尺なプリント配線基板と;プリント配線基板を収容する底面および側壁を有し、プリント配線基板の長手方向に対して直交する平坦面が形成されるように底面の一部を切り起こしてプリント配線板のスリットと嵌合する爪部が形成されているベースケースと;プリント配線基板を覆ってベースケースと組合わされてケース体を形成するカバーケースと;を具備したことを特徴とする。
【0006】
本発明および以下の各発明において、特に指定しない限り、用語の定義および技術的な意味は次による。
【0007】
コネクタとは、配線の電気導体が挿入されることにより、電気導体を鎖錠する鎖錠部を有して、この鎖錠部により電気導体を電気的かつ機械的に接続する機能を有している。
【0008】
配線基板のコネクタの外側に設けられるスリットは少なくとも基板の両端に2つ好ましくは、長方形状の配線基板のそれぞれ角に4つ設けることで配線基板の支持が安定するので好ましい。また、配線基板が長い場合であっては、基板の中央部分に設けることも許容する。
【0009】
ベースケースに設けられる爪部は、配線基板のスリットと嵌合する凸部と基板を支持する肩部を設けてなることが好ましい。また、爪部は、コネクタとの絶縁距離を確保するために、プリント配線基板の長手方向に対して直交する平坦面によって形成されており、この平坦面は底面の一部を切り起こして形成される。例えば、ベースケースの底面の中心方向から端部に向かって底面の一部を切り起こすことで、ケースの強度を損なわずに配線基板を支持する爪部を形成することができる。この爪部は、平坦面よりもコネクタ側に位置する部分がないので、コネクタとの絶縁距離を長くとることができる。
【0010】
請求項2は、請求項1の放電灯点灯装置において、プリント配線基板の長手方向に平行な平坦面が形成されるように側壁または底面の一部を切り起こしてプリント配線板の端部を支持する支持片が形成されていることを特徴とする。
【0011】
支持片は、爪部の支持強度を補強するために設けられる。配線基板の長手方向に振動による応力が加わった場合、爪部の平坦面はこの応力方向に直交しているため、切り起しの曲げ部分を変形するように作用する。しかし、配線基板の長手方向に平行な平坦面を有する支持片を付加的に設けることで、この応力に対する強度が飛躍的に向上する。なお、支持片のコネクタ部との最小距離は、爪部のそれと同等とするのが望ましいが、5mm以上の距離が確保されていれば問題はない。
【0012】
請求項3の発明の照明器具は、請求項1に記載の放電灯点灯装置と;放電灯点灯装置で点灯される放電灯を収納した器具本体と;を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、カバーケースを大形化することなく、ベースケースとの絶縁空間距離を十分に確保した放電灯点灯装置およびこの装置を備えた照明器具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1から図3を参照して本発明の一実施形態を説明する。
【0015】
図1に示す照明器具1は、下面が開放した細長い箱状のシャーシ2を備え、このシャーシ2の下面は反射板3で塞がれている。シャーシ2の長手方向両端部には放電灯ソケットとして例えば蛍光ランプソケット4が夫々取付けられ、これらソケット4は反射板3の長手方向両端部を下方に貫通している。シャーシ2内にはいわゆる電子安定器と称される放電灯点灯装置(以下、点灯装置と略称する。)5が収容されている。この点灯装置5により点灯される放電灯例えば直管形蛍光ランプ6が、その長手方向両端を夫々蛍光ランプソケット4に取外し可能に接続して支持されて、反射板3の下側に配置されている。
【0016】
次に、点灯装置5を図2および図3を参照して説明する。この点灯装置5は、図2に示すようにベースケース12とカバーケース21とを連結して、細長い箱形状に形成され、これに収容された長尺なプリント配線基板32とを具備している。ケース体11はシャーシ2への取付けとプリント配線基板32の保護を担っている。プリント配線基板32は、インバータ制御により電力変換を行って蛍光ランプ6の点灯制御を担っている。ベースケース12とカバーケース21とは、金属、例えば熱伝導性に優れる軽金属、具体的にはアルミニウム製である。
【0017】
図2に示すようにベースケース12は、平板状の底面であるベース底面としての主壁12a、及びこのベース主壁12aの幅方向両側から折り曲げられてベース主壁12aの片面に突出するベース側壁12bを有して、断面コの字状をなしている。ベース主壁12aの長手方向両端部には夫々取付け孔13が開けられているとともに、4個の爪部14がベース主壁の中心から先端方向に向かって夫々切起こされている。爪部14は、プリント配線基板の長手方向に対して直交する平坦面を有している。この平坦面はベース主壁12aの一部を切り起こして形成されたものである。このベースケース12は、その内側から取付け孔13に通されてシャーシ2に図示しないねじを介してシャーシ2に取付けられる。この取付け状態で、点灯装置5の熱をシャーシ2に放出できるようにベース主壁12aはシャーシ2に密接される。又、ベース側壁12bの夫々には、その長手方向両端部に位置してカバーケース21との連結を担う係止孔15が設けられているとともに、これら係止孔15間に位置してカバーケース21の長手方向へのずれ止めを担う係止溝16が切り欠かれている。
【0018】
カバーケース21は、例えばベースケース12より短く、このベースケース12に被さって設けられる。カバーケース21は、そのカバー主壁21aの幅方向両側にベース側壁12bの外側に重なるカバー側壁21bを有している。これらカバー側壁21bの夫々には、その長手方向両端には係止爪22が夫々設けられているとともに、これら係止孔15間に位置して位置決め突片23が設けられている。カバー主壁21aの長手方向両端部には押え部24が夫々設けられている。押え部24は例えばカバー主壁21aの長手方向両端を裏側に折り曲げた縁で形成されている。なお、この折り曲げ縁に代えて、カバー主壁21aの長手方向両端部の一部を裏側に変形させて設けた凸部を押え部24とすることもでき、或いはカバー主壁21aの長手方向両端裏面にピースを取付けて、これを押え部24とすることもできる。
【0019】
プリント配線基板32は、一方の板面を部品実装面とし、他方の面に配線層(図示しない)を有している。このプリント配線基板32の幅は一対のベース側壁12bの対向面間の離間距離に略等しい。プリント配線基板32の少なくとも部品実装面には、配線層とともに点灯回路をなすための部品である、スイッチングトランジスタ33、トランス34,35、及びその他各種の電気部品36とともに、入力用電線コネクタ37、及び出力用電線コネクタ38が実装されている。そうしてこれらコネクタ37,38よりも外側に突出した基板上に4つのスリット40が形成される。
【0020】
図2に示すようにプリント配線基板32の長手方向一端側に配置された各種の電気部品により、入力用電線コネクタ37を経て商用交流電源が印加される入力回路部31aが形成されている。プリント配線基板32の長手方向他端側に配置された各種の電気部品により、出力用電線コネクタ38を経て蛍光ランプ6に器具内配線を介して接続される出力回路部31bが形成されている。入力回路部31aで作られた直流を高周波に変換する電力変換用回路部品としてのスイッチングトランジスタ33は、入力回路部31aと出力回路部31bとの間に配置されている。
【0021】
このスイッチングトランジスタ33は、アルミニウム製の放熱板39を部品実装面との間に挟んでプリント配線基板32に取付けられている。放熱板39は部品実装面に対し直角となる板部39aを有し、この板部39aはプリント配線基板32の一側からはみ出している。これにより、プリント配線基板32がベースケース12に収容された状態で、熱伝導的に配置される。したがって、スイッチングトランジスタ33の熱はケース体11に熱伝導して放出されるようになっている。
【0022】
カバーケース21は、プリント配線基板32を覆うようにベースケース12に被される。まず、図3に示すようにベースケース12のベース主壁12a上に絶縁シート41を載せる。ベースケース12の主壁12aの両端部には4箇所の爪部14が主壁12aの一部を切り起こして形成されているが、絶縁シート41には爪部14が挿通する挿通孔が形成されているので、爪部14は挿通孔を介して突出する。この絶縁シート41上にプリント配線基板32を取り付ける。爪部14は肩部14aと肩部14aの上部に一体に形成した凸部14bによって形成される。そうしてプリント配線板32に形成されているスリット40と爪部14を嵌合させる。スリット40に爪部14の凸部14bを貫通させて、肩部14aにプリント配線基板32をのせるように嵌合させている。爪部14は、プリント配線基板の長手方向に対して直交する平坦面から形成されているので、プリント配線基板32とベースカバー12との間の絶縁空間距離dを十分に確保することができる。また、基板32の両端に2ヶ所ずつスリット40と爪部14を嵌合させているので、振動などによる基板32とベースカバー12との位置ズレなどが抑制できる。
【0023】
また、コネクタ37、38よりも外側で、今までデットスペースで活用されなかった部分にスリット40を設けて爪部14と嵌合させているので、ベースカバーを大きくする事無くコネクタ37,38の配線端子38aと切り起こされた爪部14との絶縁空間距離dを十分に得ることができる。
【0024】
このカバーケース21とベースケース12とは以下の手順で連結される。まず、ベースケース12に対して位置合わせしてカバーケース21を被せる。次に、各係止爪22を変形させて対向している係止孔15に入り込ませて引掛ける。この引掛りでカバーケース21がベースケース12に対して上下方向に動かないように連結される。この後、各位置決め突片23を折り曲げて係止溝16の縁に引掛ける。この引掛りでカバーケース21がベースケース12の長手方向に動かないように連結される。
【0025】
このとき、プリント配線基板32とベースケース12にカバーケース21の間に、少なくとも一方に絶縁紙や絶縁樹脂などを配置することもできる。そうすることでベースケース12にカバーケース21とプリント配線基板32の間の絶縁距離を小さくすることができ、点灯装置5が薄型化することができる。またこの状態で、係止爪22及び位置決め突片23が曲げ加工されることにより、ケース体11が組立てられる。こうして点灯装置5の組立てがねじなどの固定部品を用いることなく完了する。
【0026】
次に、本発明の第2の実施形態を図4および図5を参照して説明する。図4は、第2の実施形態に係る放電灯点灯装置を分解して示す斜視図である。なお、図4ではベースカバーは図2に示す構成と同一であるため、図示は省略している。図5は、図4の放電灯点灯装置の一端部を示す断面図である。なお、第1の実施形態と同一構成については同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0027】
本実施形態では、ベースケース側壁12bから主壁12aにわたって連続してコの字状に切り起こしてプリント配線基板32の長手方向に平行な平坦面を有する略L字状の支持片18が配線基板32の長手方向端部近傍に一対形成されている。支持片18は爪部14に隣接するように配設されており、爪部14および支持片18のそれぞれが互いに対角線上に2個ずつ配設されている。支持片18は配線基板32に裏面側から当接して支持する低縁部と配線基板32の端縁に当接する側縁部を有しており、この両者で配線基板32を支持することが可能である。
【0028】
支持片18は、爪部14による配線基板32の支持強度を補強するために設けられている。例えば、配線基板32の長手方向に振動による応力が加わった場合、爪部14の平坦面は応力が加わる方向に直交しているため、応力が切り起しの曲げ部分を変形するように作用して変形するおそれがある。そこで、本実施形態のように配線基板32の長手方向に平行な平坦面を有する支持片18を付加的に設けることで、この応力に対する強度が飛躍的に向上する。なお、図5に示す支持片18とのコネクタの端子部38aとの最小距離dは、爪部14のそれと同等でとするのが好ましいが、3mm以上、好ましくは5mm以上の距離が確保されていれば爪部14との最小距離dより小さくても問題はない。
【0029】
本実施形態によれば、第1の実施形態の作用に加えて、配線基板32の支持強度を簡単な構造により向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る照明器具を一部断面して示す側面図。
【図2】図1の照明器具が備える本発明の一実施形態に係る放電灯点灯装置を分解して示す斜視図。
【図3】(a)図2の放電灯点灯装置の一端部を示す斜視図。(b)同断面図。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る放電灯点灯装置を分解して示す斜視図。
【図5】図4の放電灯点灯装置の一端部を示す断面図。
【符号の説明】
【0031】
1…照明器具、2…シャーシ、3…蛍光ランプソケット(放電灯ソケット)、6…蛍光ランプ(放電灯)、11…ケース体、12…ベースケース、12a…底面としてのベース主壁、14…爪部、18…支持片、21…カバーケース、32…プリント配線基板、36…電気部品、37…入力用電線コネクタ、38…出力用電線コネクタ、40…スリット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部にコネクタが実装されるとともに、これらコネクタ間に放電灯点灯回路をなす各種の電気部品が実装され、コネクタの外側にスリット形成された長尺なプリント配線基板と;
プリント配線基板を収容する底面および側壁を有し、プリント配線基板の長手方向に対して直交する平坦面が形成されるように底面の一部を切り起こしてプリント配線板のスリットと嵌合する爪部が形成されているベースケースと;
プリント配線基板を覆ってベースケースと組合わされてケース体を形成するカバーケースと;
を具備したことを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
プリント配線基板の長手方向に平行な平坦面が形成されるように側壁または底面の一部を切り起こしてプリント配線板の端部を支持する支持片が形成されていることを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の放電灯点灯装置と;
放電灯点灯装置で点灯される放電灯を収納した器具本体と;
を具備したことを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−294383(P2007−294383A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269007(P2006−269007)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】