説明

放電灯点灯装置

【課題】 放電灯の構成を変えずに所望の色温度で点灯させることができるようにした放電灯点灯装置を提供する。
【解決手段】
直流を降圧チョッパ回路3で任意の電流・電圧に変換した後、フルブリッジ形インバータ4で矩形波出力を行って放電灯7を点灯するようにした放電灯点灯装置において、降圧チョッパ回路を制御する制御部5を設け、インバータを駆動する矩形波駆動信号のタイミングに同期させて、その駆動信号の半サイクルに対応する期間において出力電流値の時間的な比率を変化させ、その時間的な比率を変化させた電流値を半サイクルに対応する期間毎に繰り返し降圧チョッパ回路から出力させると共に、時間的な比率が変化する電流値の平均値を放電灯の定格電流値とし、電流値の時間的な比率を変えて色温度を変化させるように、降圧チョッパ回路を駆動する駆動制御信号を制御部から送出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放電灯点灯装置に関し、特に放電灯の構成を変えずに所望の色温度で点灯させることができるようにした放電灯点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年メタルハライドランプ等の高輝度放電灯(HIDと略称されている)は、従来の漏洩変圧器と主コンデンサとからなる進相型安定器などを用いた点灯方式に代わって、インバータを用いた矩形波点灯方式の小型軽量化が図られた点灯装置で点灯されるようになっている。
【0003】
このようなインバータを用いた矩形波点灯装置は、例えば、特開平5−36484号公報に開示されており、図8に示すように、整流素子102 と、平滑コンデンサからなる平滑回路103 と、電流制御を行うための降圧形チョッパ回路104 と、フルブリッジ形インバータ105 と、該インバータ105 への入力電圧と入力電流を検出して降圧形チョッパ回路104 を駆動制御する駆動制御回路106 とで構成され、インバータ105 の出力端に、図示しない始動回路を介して放電灯107 を接続して点灯されるようになっている。なお、図8において、101 は商用電源であり、108 はフルブリッジ形インバータ105 の駆動回路である。
【0004】
このように構成された放電灯点灯装置において、ランプ電力を変化させて調光を行う場合は、一般に降圧形チョッパ回路104 に入力する駆動制御回路106 から出力される高周波パルス駆動信号のデューティ比を調整し、図9に示すように、フルブリッジ形インバータ105 からのランプ電流の振幅を増減させて、ランプ電力を変化させて行っている。なお、図9はインバータの駆動周波数が 100Hz で、ランプ定格電流i1 の場合の態様を示している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る放電灯点灯装置の実施例を示す回路構成図である。
【図2】図1に示した実施例において、電流値の時間的な比率を変えて調光を行う場合におけるランプ印加電流波形の一例を示す図である。
【図3】図2に示したランプ電流を印加した場合のランプ電流の実測値を示す図である。
【図4】図2に示した手法で調光を行った場合の色温度の変化を、従来の振幅変化方式で調光を行った場合の色温度の変化を対比して示す図である。
【図5】調光時におけるランプ印加電流波形の他の例を示す図である。
【図6】調光時におけるランプ印加電流波形の更に他の例を示す図である。
【図7】本発明に係る放電灯点灯装置の図1に示した実施例において、ランプ印加電流の時間的な比率を変えて色温度特性を変える態様を示す図である。
【図8】従来の放電灯点灯装置の構成例を示すブロック構成図である。
【図9】従来の振幅を変化させて調光を行う態様を示すランプ電流波形図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明に係る放電灯点灯装置の実施例を示す概略ブロック構成図である。図1において、1は商用電源電圧(AC, 100V)を直流電圧にするための整流回路、2は力率改善用のアクティブフィルタ回路、3は電流制御を行って任意の電圧、電流に変換するための降圧チョッパ回路、4はフルブリッジ形インバータ、5はCPUやデジタルシグナルプロセッサ(DSP)などからなる制御部で、インバータ4の入力電圧と入力電流を検出したり、あるいは操作部6からの設定により、降圧チョッパ回路3を駆動制御するための駆動制御信号を送出したり、フルブリッジ形インバータの矩形波駆動信号を送出したりするものである。6は前述の操作部で、色温度調整等を行う際の各種ファクタを入力するためのものであり、7はインバータ4の出力端に図示しない始動回路を介して接続されるメタルハライドランプ等の放電灯である。
【0013】
このように構成された放電灯点灯装置における概略的な点灯動作について説明すると、電源電圧が整流回路1で直流に変換され、アクティブフィルタ回路2で昇圧された直流電圧を、降圧チョッパ回路3で任意の電流、電圧に変換した後、インバータ4で矩形波出力を行い、この出力で放電灯7が点灯されるようになっている。
【0014】
この際、本実施例において、まず本発明に関連する調光動作を行う場合について説明する。調光動作を行う場合は、制御部5により降圧チョッパ回路3を次のように制御する。すなわち、インバータ4を駆動する矩形波駆動信号のタイミングに同期させて、その駆動信号の半サイクルに対応する期間において、出力電流値の時間的な比率を変化させ、且つその時間的に変化させた比率の電流値を半サイクルに対応する期間毎に繰り返し降圧チョッパ回路3から出力させるように、降圧チョッパ回路3を駆動する駆動制御信号を、制御部5より出力させる。
【0015】
例えば、インバータ4の半サイクルに対応する期間T(インバータ動作周波数を 100Hz とすると、T=5ms)において、その期間内の最大電流値をランプの定格電流に対応するi1 とし、最低電流値をi2 =i1 /4とし、50%の調光率とする場合には、これらの数値を操作部6から入力することにより、図2に示すように、インバータ4の半サイクル期間に対応する期間の最初の0〜2/3Tの期間はi2 の電流値、2/3T〜Tの期間はi1 の電流値となるように、制御部5からの駆動制御信号により、降圧チョッパ回路3が制御される。なお、図2においては、わかりやすくするため、降圧チョッパ回路3の出力電流ではなく、インバータ4を通した出力電流波形を示している。
【0016】
400Wのメタルハライドランプを用いて上記のような調光制御を行った場合の、ランプ電流波形の実測値を図3に示す。
【0017】
このように、調光時に定格電流値(i1 )の成分を一部残すことにより、調光時においても動作中の放電灯において定格点灯時のプラズマ成分を一部保持させることができる。一般にランプ電流を一率に低減させて、つまり振幅を低減して調光を行うと、メタルハライドランプでは赤味成分が低減し、色温度が上昇する傾向があるが、上記本実施例のように、調光時に一部の期間に定格電流を流して定格電流に対応するプラズマ成分を一部継続して保持させることにより、色温度の上昇を抑制することができる。
【0018】
従来のように、インバータ4の半サイクル期間に対応する全期間に亘り一様に電流値(振幅)を変える代わりに、上記実施例のように、半サイクルに対応する期間Tにおける電流の時間的な比率、つまりi2 の値及びその期間を変えて、調光率を変えた点灯をさせたときの色温度の測定結果を、従来の振幅を変化させて調光を行った場合の測定結果と比較して図4に示す。図4において、実線で本実施例における関連する調光動作時の測定結果を、点線で従来例の調光動作時の測定結果を示している。
【0019】
図4からわかるように、本実施例の関連する調光動作の場合、調光に伴う色温度の変化が抑えられていることがわかる。なお、図4において、本実施例に関連する調光動作と、従来例の調光動作とにおける色温度の差異は、25%調光で数%程度の差しかないけれども、数値上の色温度の差異がこの程度であっても、実際に目で観察した場合には、その感じ方では、かなりの差異となって現れるものであり、したがって、本実施例に関連する調光動作と従来例の調光動作とでは十分な効果上の差異が得られるものである。
【0020】
また、上記実施例に関連する調光動作では、インバータの半サイクル期間に対応する期間Tにおいて、最大電流値i1 (定格電流)となる期間が、期間Tの終期である2/3T〜Tの期間で印加するようにしているのは、インバータ4による放電灯への印加電流が反転する際、放電灯の再点弧が安定して行われるようにするためである。期間Tの終期における電流値が大きい場合には、インバータによる印加電流の反転時における再点弧が安定に行われ、安定した点灯が得られる。
【0021】
なお、上記実施例に関連する調光動作では、期間Tにおける最大値を定格電流値i1 としたものを示したが、図5に示すように、最小値をi2 より小さくして最大値を定格電流値i1 より大にして、調光点灯させることも可能であり、この場合は、電流値が大きいほど、メタルハライドランプにおいては、赤味成分が増加する傾向があるので、調光を行った場合の色温度の上昇を一層抑制することが可能となる。
【0022】
また、上記実施例に関連する調光動作では、期間Tにおける最大値を期間Tの終期にのみ印加するようにしたものを示したが、図6の(A)に示すように、最大値となる電流値を期間Tの始期と終期に印加し、中間の期間の電流値及び又はその期間を調整して調光動作をさせることもできる。この場合もインバータによる印加電流の反転時に最大値から最大値へ移行するため再点弧が安定して行われ、安定した点灯が得られる。
【0023】
また、図6の(B)に示すように、期間Tにおける最大値を期間Tの中間部において印加し、期間Tの始期及び終期の電流値及び/又はその期間を調整して調光動作を行わせることもできる。この場合も、インバータ反転時に少ない電流値から少ない電流値に移行するため再点弧が安定して行われる。
【0024】
また、図6の(B)の変形例として図6の(C)に示すように、期間Tにおける最大値を期間Tの中央部に設定すると共に、始期と終期の電流値を傾斜状に変化させて調光を行うことも可能である。この場合は、反転時に電流値が徐々に増減するために、反転時のショックが少なく安定した点灯が得られる。
【0025】
次に、本発明に係る放電灯点灯装置の制御部5の制御動作について説明する。本発明においては、図7に示すように、期間Tにおける平均電流を定格電流値i1 となるようにして、つまり調光せずに、期間Tにおける電流値の時間的な比率を変化させるように制御するものである。この場合、当然のことながら、期間Tにおける最大値は定格電流値以上となり、定格電流以上の電流値の大きさにより、メタルハライドランプにおいては赤味成分が増加する。したがって、期間Tにおける電流値の時間的な比率を変えながら、つまり最大電流値を変えながら定格点灯させることにより、定格点灯時において、ランプ構造を変えずに、色温度を変えることが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流を降圧チョッパ回路に入力して電流制御を行い該降圧チョッパ回路の出力をフルブリッジ形インバータに入力し、該インバータの出力端に放電灯を接続して点灯するようにした放電灯点灯装置において、前記降圧チョッパ回路の出力電流を、前記インバータの出力の半サイクル動作期間に対応する期間の出力電流値の時間的な比率を変化させ、且つその時間的な比率を前記半サイクル動作に同期させて繰り返すように出力させる制御手段を備え、該制御手段は、前記半サイクル動作期間に対応する期間における時間的な比率が変化する電流値の平均値は前記放電灯の定格電流値とし、前記電流値の時間的な比率を変えて色温度を変化させる調整を行うように構成したことを特徴とする放電灯点灯装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−158495(P2009−158495A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97611(P2009−97611)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【分割の表示】特願2003−282242(P2003−282242)の分割
【原出願日】平成15年7月30日(2003.7.30)
【出願人】(000126274)株式会社アイ・ライティング・システム (56)
【Fターム(参考)】