説明

放電灯用電極及びそれを用いた蛍光ランプ

【課題】放電ランプの点灯中におけるエミッタの消耗を抑制できるとともに、エミッタと電極との結着力を向上させることができる放電灯用電極を提供する。
【解決手段】本発明の放電灯用電極は、エミッタ5が被着され、エミッタ5は、第1のエミッタ成分5aとして、組成式AOで示される酸化物を少なくとも1種類含み、前記組成式中のAは、Ca、Sr及びBaから選ばれるいずれかの元素であり、第2のエミッタ成分5bとして、金属M及び金属酸化物Mxyから選ばれる少なくとも1種類を含み、前記Mは、Ca、Sr、Ba、Al、Mg及び遷移金属元素から選ばれるいずれかの元素であり、前記x及び前記yは、整数であり、第1のエミッタ成分5aの平均粒径をa、第2のエミッタ成分5bの平均粒径をbとすると、a/b>3の関係を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯用電極及びそれを用いた蛍光ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
蛍光ランプなどの放電ランプの電極には、始動性及びランプ効率を向上させるために、バリウム、カルシウム、ストロンチウムなどのアルカリ土類金属の酸化物から成るエミッタ(電子放射性物質)を被着させている。これらのエミッタ成分は、原料段階ではアルカリ土類金属の炭酸塩として準備され、そのアルカリ土類金属の炭酸塩を有機溶媒中に分散させた縣濁液の状態で電極に塗布される。縣濁液中には、エミッタ成分であるアルカリ土類の炭酸塩が電極に付着しやすいように、有機バインダーが混合されている。その後、蛍光ランプの製造工程の一つである排気工程において、電極に通電することによりエミッタ成分を加熱し、アルカリ土類金属の炭酸塩から酸化物に加熱分解させ、アルカリ土類金属の酸化物から成るエミッタを形成している。上記加熱の際には、有機バインダーも一緒に酸化・分解されて除去される。
【0003】
蛍光ランプは、主にエミッタが消失することにより寿命に至る。そのため、蛍光ランプの長寿命化を図るには、エミッタの損失・消耗をいかに抑制するかが重要である。
【0004】
エミッタが損失・消耗する原因としては、大きく2つが考えられる。第1に、蛍光ランプが使用者の元で使用される時に発生するエミッタの蒸発による損失・消耗が挙げられる。蛍光ランプの始動時及び点灯時においてエミッタは蒸発により消耗する。特にランプが始動する際のエミッタの消耗量は多い。従来、このエミッタの蒸発を抑制する方法として、エミッタ成分にジルコニウム又は酸化ジルコニウムを混合する方法が提案され、広く実用化されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
エミッタが損失・消耗する第2の原因としては、蛍光ランプが使用者の元に届くまでの間に、蛍光ランプが振動・衝撃を受けてエミッタが脱落することが挙げられる。振動・衝撃によるエミッタの脱落は、蛍光ランプが作製される際のプロセス要因に大きく影響を受ける。即ち、蛍光ランプの排気工程においてエミッタ成分の炭酸塩が酸化物に加熱分解する際、適切な温度プロファイルで行わないと、分解後のエミッタと電極との結着力が低くなるため、振動・衝撃に弱くなる場合がある。しかし、いかに排気工程においてエミッタ成分の炭酸塩の加熱分解を適切な温度プロファイルで行っても、結着力の低下を抑制することはできても、向上させることはできない。
【0006】
なお、本発明に関連する先行技術文献としては、特許文献2がある。
【特許文献1】特公昭28−2118号公報
【特許文献2】特開平4−215241号公報(特許第3074651号公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、振動・衝撃によるエミッタの脱落を防ぐために、エミッタと電極との結着力を向上させる効果的な手法は提案されていない。また、前述のように、蛍光ランプ点灯中のエミッタの消耗を抑制する方法は知られているが、エミッタにジルコニウム又は酸化ジルコニウムを混合させる方法では、エミッタと電極との結着力を効果的に向上させることはできない。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決したもので、放電ランプの点灯中におけるエミッタの消耗を抑制できるとともに、エミッタと電極との結着力を向上させた放電灯用電極及びそれを用いた蛍光ランプを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の放電灯用電極は、エミッタが被着された放電灯用電極であって、前記エミッタは、第1のエミッタ成分と第2のエミッタ成分とを含み、前記第1のエミッタ成分は、組成式AOで示される酸化物を少なくとも1種類含み、前記組成式中のAは、Ca、Sr及びBaから選ばれるいずれかの元素であり、前記第2のエミッタ成分は、金属M及び金属酸化物Mxyから選ばれる少なくとも1種類を含み、前記Mは、Ca、Sr、Ba、Al、Mg及び遷移金属元素から選ばれるいずれかの元素であり、前記x及び前記yは、整数であり、前記第1のエミッタ成分の平均粒径をa、前記第2のエミッタ成分の平均粒径をbとすると、a/b>3の関係を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の蛍光ランプは、上記本発明の放電灯用電極を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の放電灯用電極は、放電ランプの点灯中におけるエミッタの消耗を抑制できるとともに、エミッタと電極との結着力を向上させることができる。
【0012】
また、本発明の蛍光ランプは、本発明の放電灯用電極を用いることにより、長寿命化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の放電灯用電極は、第1のエミッタ成分と第2のエミッタ成分とを含むエミッタが被着された電極である。上記第1のエミッタ成分は、組成式AOで示される酸化物を少なくとも1種類含み、上記組成式中のAは、Ca、Sr及びBaから選ばれるいずれかの元素である。また、上記第2のエミッタ成分は、金属M及び金属酸化物Mxyから選ばれる少なくとも1種類を含み、上記Mは、Ca、Sr、Ba、Al、Mg及び遷移金属元素から選ばれるいずれかの元素であり、上記x及び上記yは、整数である。さらに、上記第1のエミッタ成分の平均粒径をa、上記第2のエミッタ成分の平均粒径をbとすると、a/b>3の関係を有している。
【0014】
a/b>3の関係を有すること、即ち、第1のエミッタ成分の平均粒径に比べて、第2のエミッタ成分の平均粒径を1/3未満の大きさにすることにより、エミッタと電極との結着力を向上することができる。これは、a/b>3の関係を有すると、第2のエミッタ成分の単位重量あたりの表面積が、第1のエミッタ成分の表面積に比べて9倍以上になるので、第1のエミッタ成分に対する第2のエミッタ成分の物理吸着量が増加し、エミッタと電極との結着力が向上するものと考えられる。これにより、放電ランプに衝撃や振動が加わってもエミッタの脱落を抑制できる。また、上記エミッタを用いることにより、放電ランプの点灯中におけるエミッタの消耗も抑制できる。
【0015】
また、上記第1のエミッタ成分の平均粒径aと、上記第2のエミッタ成分の平均粒径bとの関係は、a/b>5であることがより好ましい。これにより、エミッタと電極との結着力をより向上することができる。a/bの上限については特に制限されないが、エミッタ成分を合理的に製造するためには、a/b<17であることが好ましく、a/b<10であることがより好ましい。
【0016】
上記Aと上記Mとは、ともにCa、Sr及びBaから選ばれるいずれかの元素であることが好ましい。これにより、第1のエミッタ成分及び第2のエミッタ成分ともに従来のエミッタと同様の組成とすることができるので、従来のエミッタの電子放射性を維持しながら、エミッタと電極との結着力を向上することができる。
【0017】
一方、本発明の蛍光ランプは、上記本発明の放電灯用電極を備えている。これにより、エミッタと電極との結着力が向上するとともに、点灯中のエミッタの消耗も抑制できるので、蛍光ランプの長寿命化を図ることができる。
【0018】
また、上記放電灯用電極としては、タングステンコイルを備えたフィラメント電極を用いることができる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0020】
図1は、本発明の蛍光ランプの一例である直管形蛍光ランプの一部切欠断面図である。図1において、蛍光ランプ1は、ガラスなどから成るバルブ2と、バルブ2の両端部に設けられた一対のタングステンコイルなどから成るフィラメント電極3と、ガラスなどから成る細管4とを備えている。フィラメント電極3の表面にはエミッタ5が被着している。フィラメント電極3は、ニッケル線などから成る内部導入線6を用いてかしめることにより固定されている。
【0021】
バルブ2の内面には蛍光体7が被着されている。バルブ2の内部の放電空間8は、適当量のアルゴンなどの希ガスで満たされているとともに、水銀滴9が充填されている。放電空間8は、細管4と空間的につながっている。
【0022】
上記蛍光体7としては、例えば、ユーロピウム付活酸化イットリウム蛍光体、セリウムテルビウム付活燐酸ランタン蛍光体、ユーロピウム付活ハロ燐酸ストロンチウム蛍光体、ユーロピウム付活バリウムマグネシウムアルミネート蛍光体、ユーロピウムマンガン付活バリウムマグネシウムアルミネート蛍光体、テルビウム付活セリウムアルミネート蛍光体、テルビウム付活セリウムマグネシウムアルミネート蛍光体、アンチモン付活ハロ燐酸カルシウム蛍光体などを単独又は混合して使用できる。
【0023】
本実施形態の蛍光ランプは、その形状、サイズ、ワット数、及び蛍光ランプが放つ光色、演色性などについては特に限定されるものではない。形状については、本実施形態の直管に限らず、例えば、丸形、二重環形、ツイン形、コンパクト形、U字形、電球形などがあり、熱陰極形蛍光ランプすべてに適用可能である。サイズについては、例えば4形〜110形などがある。ワット数については、例えば数ワット〜百数十ワットなどがある。光色については、例えば、昼光色、昼白色、白色、温白色、電球色などがある。
【0024】
図2は、図1の蛍光ランプに用いたフィラメント電極(本発明の放電灯用電極の一例)の表面の模式図である。図2において、フィラメント電極3の表面にはエミッタ5が被着されている。上記エミッタ5は、第1のエミッタ成分5aと第2のエミッタ成分5bとを含んでいる。第1のエミッタ成分5aは、CaO、SrO及びBaOから選ばれる少なくとも1種類の酸化物から成る。第1のエミッタ成分の平均粒径は特に限定されないが、例えば1μm〜10μmとすることができる。また、上記第2のエミッタ成分5bは、金属M及び金属酸化物Mxyから選ばれる少なくとも1種類から成り、上記Mは、Ca、Sr、Ba、Al、Mg及び遷移金属元素から選ばれるいずれかの元素であり、上記x及び上記yは、整数である。第2のエミッタ成分5bの平均粒径は、第1のエミッタ成分5aの平均粒径の1/3未満とし、より好ましくは1/5以下である。これにより、第2のエミッタ成分5bの表面積が第1のエミッタ成分5aの表面積に対して増加するので、第1のエミッタ成分5aに対する第2のエミッタ成分5bの物理吸着量が増加し、エミッタ5とフィラメント電極3との結着力が向上する。
【0025】
フィラメント電極3は、例えばタングステンコイルから形成され、そのコイルは、二重コイル、三重コイル、四重コイルのいずれのタイプでも使用できる。
【0026】
次に、上記フィラメント電極3の製造方法の一例を説明する。先ず、第1のエミッタ原料として平均粒径1μm〜10μmのCaCO3、SrCO3及びBaCO3を準備する。また、第1のエミッタ原料を粉砕機で粉砕することにより、第1のエミッタ原料の平均粒径の1/3未満、好ましく1/5以下の平均粒径を有する第2のエミッタ原料を作製する。第2のエミッタ原料としては、上記以外の成分としてCa、Sr、Ba、Al、Mg及び遷移金属元素から選ばれる金属、又はそれらの炭酸塩を用いることができる。
【0027】
本明細書において、上記第1のエミッタ原料と上記第2のエミッタ原料の平均粒径は、超音波減衰分光法により測定することができる。
【0028】
次に、上記第1のエミッタ原料及び上記第2のエミッタ原料に、バインダーと溶媒とを加え、攪拌機で攪拌してエミッタ塗布液を作製する。上記バインダーとしては、例えば、ニトロセルロース、エチルセルロース、ポリエチレンオキシドなどが使用できる。また、上記溶媒としては、酢酸ブチル、化学式Cn2n+1OH(n=1〜4)で表されるアルコールなどが使用できる。
【0029】
次に、上記エミッタ塗布液をフィラメント電極3の表面に塗布する。塗布量は、エミッタ塗布液の種類及びフィラメント電極3のタイプ、長さなどによって異なるが、1mg〜10mgが塗布される。エミッタ塗布液が塗布されたフィラメント電極3は、通常の方法でバルブ2に装着され、排気工程においてフィラメント電極3に0.2A〜1.5Aの電流を流すことにより加熱される。この加熱により、第1のエミッタ原料及び第2のエミッタ原料は、炭酸塩から酸化物に分解され、それぞれ第1のエミッタ成分5aと第2のエミッタ成分5bとになる。なお、第2のエミッタ原料としてCa、Sr、Ba、Al、Mg及び遷移金属元素から選ばれた金属を用いた場合には、第2のエミッタ原料が主として第2のエミッタ成分5bとなる。
【0030】
以上のようにして本発明の放電灯用電極であるフィラメント電極が製造できるが、その製造方法は上記のものに限定はされない。
【実施例】
【0031】
次に、実施例に基づき本発明を説明する。
【0032】
(実施例1)
<エミッタ塗布液の作製>
第1のエミッタ原料として、平均粒径が3μmの炭酸カルシウム3重量部と、平均粒径が3μmの炭酸ストロンチウム5重量部と、平均粒径が3μmの炭酸バリウム6重量部とを準備した。また、上記第1のエミッタ原料を粉砕機で粉砕することにより、炭酸カルシウム3重量部、炭酸ストロンチウム5重量部及び炭酸バリウム6重量部から成る平均粒径0.5μmの第2のエミッタ原料を準備した。
【0033】
次に、上記第1のエミッタ原料35重量部と上記第2のエミッタ原料35重量部とに、バインダーとして1重量部のニトロセルロースと、溶媒として27重量部の酢酸ブチルと、添加剤として2重量部のジルコニウムとを加えて、攪拌機を用いて混合した。
【0034】
<フィラメント電極の作製>
フィラメントコイルとしてタングステン製の二重コイルを準備した。コイルの一重部のコイル巻き幅は250μm、二重部のコイル巻き幅は1500μm、コイル線径は70μm、全体の重量は25mgとした。このコイルに上記エミッタ塗布液を5mg塗布した。次に、このコイルに0.3A〜0.6Aの電流を徐々に電流値を上げながら1分間流して加熱することにより、フィラメントコイルの表面にエミッタを被着させ、本実施例のフィラメント電極を作製した。
【0035】
(比較例1)
平均粒径が3μmの第1のエミッタ原料のみを用いた以外は、実施例1と同様にしてフィラメント電極を作製した。
【0036】
<エミッタの観察及び分析>
実施例1のフィラメント電極の表面を電子顕微鏡で観察したところ、コイルの表面に粒径が約2μm〜4μmの大径粒子と、粒径が約0.2μm〜0.6μmの小径粒子とが観察され、小径粒子は大径粒子の隙間を埋めるようにして存在していた。一方、比較例1のフィラメント電極を上記と同様にして観察したところ、コイルの表面には粒径が約2μm〜4μmの大径粒子のみが観察された。なお、電極に被着された粒子の平均粒径は、電子顕微鏡画像に写った複数の粒子の直径を算術平均することにより求めることができる。
【0037】
次に、実施例1のフィラメント電極からエミッタを剥ぎ取り、その剥ぎ取ったエミッタをICP発光分析法により成分分析を行ったところ、剥ぎ取ったエミッタにはCa、Sr、Ba及びZrの各元素が含まれていることが確認された。また、比較例1のフィラメント電極のエミッタについても同様にして成分分析したところ、実施例1と同様の結果を得た。
【0038】
<耐震性の評価>
先ず、実施例1で作製したフィラメント電極の重量を測定した。次に、重量100gの金属製の密閉容器に実施例1のフィラメント電極を入れ、高さ1mから5回コンクリート製の床に落下させた。その後、フィラメント電極を密閉容器から取り出し、その重量を測定した。フィラメント電極の落下前の重量から落下後の重量を差し引いた重量をエミッタの損失量とした。比較例1のフィラメント電極についても上記と同様にしてエミッタの損失量を測定した。
【0039】
その結果、比較例1のフィラメント電極の損失量を100%とすると、実施例1のフィラメント電極の損失量は79%であった。この結果より、実施例1のフィラメント電極は、比較例1のフィラメント電極に比べてエミッタの脱落に対する耐震性が高いことが分かる。
【0040】
(実施例2)
実施例1で作製したエミッタ塗布液を塗布したフィラメント電極を用いて下記のようにして蛍光ランプを作製した。
【0041】
蛍光体としては、赤色蛍光体:ユーロピウム付活酸化イットリウム蛍光体(Y23:Eu3+)(通称:YOX)、緑色蛍光体:セリウムテルビウム付活燐酸ストロンチウム蛍光体(LaPO4:Ce3+,Tb3+)(通称:LAP)、青色蛍光体:ユーロピウム付活アルミン酸バリウムマグネシウム蛍光体((Sr,Ca,Ba)10(PO46Cl2:Eu2+)(通称:SCA)からなる三波長型蛍光体を用いた。各蛍光体の混合割合は、YOX:35重量%、LAP:35重量%、SCA:30重量%とした。
【0042】
<蛍光体塗布液の作製>
先ず、蛍光体塗布液の材料として以下のものを準備した。
(1) 溶媒:蒸留水
(2) 蛍光体:上記三波長型蛍光体
(3) 増粘剤:蛍光体1kgあたり15gのポリエチレンオキシド(重量平均分子量:約100万)
(4) 結着剤:蛍光体1kgあたり30gのアルミナ(平均粒径:30nm)
次に、攪拌装置を用いて蒸留水にポリエチレンオキシドを溶解させた。その後、上記蛍光体、アルミナをこの順に添加して攪拌した。
【0043】
<蛍光ランプの作製>
上記蛍光体塗布液を用いて蛍光ランプ(20W直管タイプ)を次のようにして作製した。先ず、鉛直方向が長手方向になるように設置したガラス管の中に、上記蛍光体塗布液を上部から流し込み、自然流下させてガラス管の内側に蛍光体塗布液を付着させた。その後、付着した蛍光体塗布液を約60℃程度の温風にて約10分乾燥した。乾燥後、ガラス管全体をガス炉に入れて、空気中において約550℃の温度にて約3分間加熱し、蛍光膜をガラス管に焼付けて固着させた。続いて、ガラス管の管端部に、実施例1で作製したエミッタ塗布液を塗布したフィラメント電極と、水銀を封入したカプセルとを備えた排気管付きガラスを融着し、排気管からガラス管内部の空気をロータリーポンプにて真空排気した。この際、フィラメント電極に0.3A〜0.6Aの電流を徐々に電流値を上げながら1分間流した。最後に、アルゴンガスを封入し、電極端子を取り付けて蛍光ランプを作製した。
【0044】
(比較例2)
比較例1で作製したエミッタ塗布液を用いた以外は、実施例2と同様にして蛍光ランプを作製した。
【0045】
<蛍光ランプの寿命試験>
実施例2と比較例2の蛍光ランプを用いて寿命試験を行った。その結果、実施例2の蛍光ランプは、比較例2の蛍光ランプと同程度の寿命時間(約8000時間)を有していた。上記寿命試験は、2時間45分間点灯/15分間消灯の3時間を1サイクルとして繰り返し、点灯開始からランプが点灯しなくなるまでのトータル時間を寿命時間とした。
【0046】
この結果より、実施例2の蛍光ランプは、点灯中におけるエミッタの消耗も従来の蛍光ランプと同程度に抑制できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の放電灯用電極は、熱陰極を使用する放電ランプのすべてに適用可能であり、その産業上の価値は大である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の蛍光ランプの一例である直管形蛍光ランプの一部切欠断面図である。
【図2】本発明の放電灯用電極の一例であるフィラメント電極の表面の模式図である。
【符号の説明】
【0049】
1 蛍光ランプ
2 バルブ
3 フィラメント電極
4 細管
5 エミッタ
5a 第1のエミッタ成分
5b 第2のエミッタ成分
6 内部導入線
7 蛍光体
8 放電空間
9 水銀滴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エミッタが被着された放電灯用電極であって、
前記エミッタは、第1のエミッタ成分と第2のエミッタ成分とを含み、
前記第1のエミッタ成分は、組成式AOで示される酸化物を少なくとも1種類含み、
前記組成式中のAは、Ca、Sr及びBaから選ばれるいずれかの元素であり、
前記第2のエミッタ成分は、金属M及び金属酸化物Mxyから選ばれる少なくとも1種類を含み、
前記Mは、Ca、Sr、Ba、Al、Mg及び遷移金属元素から選ばれるいずれかの元素であり、
前記x及び前記yは、整数であり、
前記第1のエミッタ成分の平均粒径をa、前記第2のエミッタ成分の平均粒径をbとすると、a/b>3の関係を有することを特徴とする放電灯用電極。
【請求項2】
a/b>5の関係を有する請求項1に記載の放電灯用電極。
【請求項3】
前記Aと前記Mとは、Ca、Sr及びBaから選ばれるいずれかの元素である請求項1に記載の放電灯用電極。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の放電灯用電極を含むことを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項5】
前記放電灯用電極は、タングステンコイルを含むフィラメント電極である請求項4に記載の蛍光ランプ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−305422(P2007−305422A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−132899(P2006−132899)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】