説明

放電用シートおよびその製造方法

【課題】 取扱いの容易な放電用シートを提供する。
【解決手段】 帯状の導電性シートと、導電性シートの幅よりも小さい幅を有する帯状の離型シートと、導電性シートと離型シートの間に配置され、導電性シートの一方の面と、離型シートの一方の面とを互いに接着する粘着層と、を有し、離型シートは、その長手方向が導電性シートの長手方向に対して平行となるように、かつ導電性シートの幅方向に対して中央部に配置されており、導電性シート、粘着層、および離型シートが重なる領域において、導電性シートおよび粘着層が、導電性シートの長手方向に平行な切込みによって分割されている、放電用シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電用シートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コピー機やプリンターなどの印刷機、織機、編機などにおいて、フイルム、紙、不織布、糸などが通過することで発生する埃や静電気の除去には、導電性繊維を使用したブラシ状の放電具が用いられている。
【0003】
ブラシ状の放電具は、たとえば、導電性繊維からなる複数の繊維束のそれぞれの一端を、保持具によって平行に狭持したものである。保持具としては、たとえば、繊維束と接する面に粘着性を有する粘着テープや、粘着層を有する金属板などがある。この放電具は、各繊維束の他端が保持具から飛び出しており、これがフィルムなどの対象物の表面に触れることによって、フィルムの表面に帯電している静電気を除去することができる。
【0004】
しかしながら、上記ブラシ状の除電具は、保持具に対して繊維束を等間隔に平行に配置する必要があるため、製造工程が複雑であり、生産効率が低く、また歩留まりも低い。さらに、梱包途中、運送途中などに毛並みが乱れたり、使用を繰り替えすことにより、繊維が脱落するという問題があった。
【0005】
これに対し、本発明者は、ブラシ形状を必要としない放電用シートを開発している。この放電用シートは、導電性繊維を含有する不織布または織布であって、ブラシ状の繊維束を有していない。このため、毛並みの乱れ、繊維の脱落といった問題を解消することができる。また、ブラシ状の放電具と違い、幅が均一な帯状の形状を有しているため、コピー機などの所望の位置に、歪みを抑制した状態で、容易に直線的に設置することができる。
【0006】
図9に、放電用シートの構成の斜視図を示す。図9において、放電用シート90は、導電性シート91、粘着層92、および離型シート93がこの順に積層された構成を有する。また、導電性シート91の長手方向の端面91a、粘着層92の長手方向の端面92a、および離型シート93の長手方向の端面93aの位置が互いに一致している。
【0007】
この導電性シート91によれば、離型シート93を粘着層92から剥離し、露出した粘着層92をコピー機などの装置の所望の位置に貼着することによって、装置に簡便に設置することができる。この場合、端面91b側が紙などの対象物の表面に接触または近接することによって、対象物の表面に帯電している静電気を除去することができる。
【0008】
上記放電用シート90は、たとえば、以下の方法によって製造することができる。すなわち、一方の面上に粘着層92を形成した離型シート93を、導電性シート91と離型シート93との間に粘着層92が介在するように、導電性シート91の一方の面上に配置する。また、このとき、導電性シート91の端面91aの位置と離型シート93の端面93aの位置とが一致するように、離型シート93を配置する。生産効率を向上させる観点からは、帯状の導電性シート91を巻回したロールと、粘着層92を形成した帯状の離型シート93を巻回したロールとを用いて、各ロールから連続的に各シートを供給しながら、長手方向に連続的に放電用シート90を作製し、これを長手方向に関して所望の長さに切断するのが一般的である。
【0009】
なお、本件に関連する先行技術文献について調査したが、本件に関する先行技術文献は発見されなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述の放電用シート90において、離型シート93の剥離の際に、離型シート93の下の粘着層92に損傷を与える場合がある。すなわち、離型シート93の端面93aまたは端面93bを狭持して図9中の矢印方向に引上げる際に、粘着層92の端面92aまたは端面92bまでも狭持してしまう場合がある。また、同時に、端面92bに近傍の導電性シート91の表面を誤って引っ掛けてしまうことにより、導電性シート91までも損傷してしまう場合がある。このように、従来の放電用シートには、離型シートの剥離が困難という問題がある。
【0011】
また、上述の製造方法では、離型シート93の端面93aが導電性シート91の端面91aと一致するように配置する際に、位置ずれが発生し、歩留まりが低下する問題がある。すなわち、たとえば、図10に示すように、粘着層92と離型シート93との各端部92a,93aが導電性シート91の端部91aからずれてしまう。この場合、粘着層92の一方の面の一部が露出してしまい、製品として不良なものとなる。
【0012】
そこで、上記事情に鑑み、本発明の目的は、取扱いの容易な放電用シートおよびその効率的な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、帯状の導電性シートと、導電性シートの幅よりも小さい幅を有する帯状の離型シートと、導電性シートと離型シートの間に配置され、導電性シートの一方の面と、離型シートの一方の面とを互いに接着する粘着層と、を有し、離型シートは、その長手方向が導電性シートの長手方向に対して平行となるように、かつ導電性シートの幅方向に対して中央部に配置されており、導電性シート、粘着層、および離型シートが重なる領域において、導電性シートおよび粘着層が、導電性シートの長手方向に平行な切込みによって分割されている、放電用シートである。
【0014】
上記放電用シートにおいて、粘着層の導電性シートに対する接着力は、粘着層の離型シートに対する接着力よりも大きいことが好ましい。
【0015】
上記放電用シートにおいて、導電性シートは、導電性繊維と非導電性繊維とからなることが好ましい。
【0016】
上記放電用シートにおいて、導電性シートにおける長手方向に平行であって幅方向を等分する等分軸と、離型シートにおける長手方向に平行であって幅方向を等分する等分軸と、切込みとのそれぞれの位置が一致することが好ましい。
【0017】
また、本発明は、帯状の導電性シートと、導電性シートの幅よりも小さい幅を有する帯状の離型シートとを、長手方向に連続的に供給しながら、導電性シートの一方の面と離型シートの一方の面との間に粘着層を配置した状態で圧着して、粘着層を介して導電性シートおよび離型シートが接着された放電用材料を形成する工程と、放電用材料を長手方向に連続的に移送しながら、導電性シート、粘着層、および離型シートが重なる領域に、切込みを入れる工程と、を有し、放電用材料を形成する工程において、離型シートは、その長手方向が導電性シートの長手方向に対して平行となるように、かつ導電性シートの幅方向に対して中央部に配置されるように配置され、切込みを入れる工程において、切込みによって導電性シートおよび粘着層が長手方向に平行に分割されるように、切込みの深さが調整される、放電用シートの製造方法である。
【0018】
上記製造方法では、放電用材料を形成する工程において、一方の面上に粘着層が形成された離型シートが供給されることが好ましい。
【0019】
上記製造方法において、粘着層の導電性シートに対する接着力は、粘着層の離型シートに対する接着力よりも大きいことが好ましい。
【0020】
上記製造方法において、導電性シートは、導電性繊維と非導電性繊維とからなることが好ましい。
【0021】
上記製造方法では、切込みを入れる工程において、導電性シートにおける長手方向に平行であって幅方向を等分する等分軸と、離型シートにおける長手方向に平行であって幅方向を等分する等分軸と、が一致する部分に切込みが入れられることが好ましい。
【0022】
上記製造方法では、切込みを入れる工程において、導電性シート、粘着層および離型シートが分割されるように、切込みの深さが調整されることが好ましい。
【0023】
上記製造方法では、切込みを入れる工程において、さらに離型シートが分割されるように、切込みの深さが調整されることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、取扱いの容易な放電用シートを提供することができる。また、該放電用シートを、歩留まり良く、効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施形態に係る放電用シートの側面図である。
【図2】第1の実施形態に係る放電用シートの平面図である。
【図3】第1の実施形態に係る放電用シートの底面図である。
【図4】図1の放電用シートの斜視図である。
【図5】図1の放電用シートであって、形状を変化させた場合の斜視図である。
【図6】第2の実施形態に係る放電用シートの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【図7】図6の製造方法を説明するための模式図である。
【図8】2本の導電性シートがV字状に並んだ平面図である。
【図9】放電用シートの構成を示す斜視図である。
【図10】図9の放電用シートの不良の場合を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には、同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0027】
<第1の実施形態>
第1の実施形態として、本発明に係る放電用シートの一例について、図1〜5を用いて説明する。まず、図1〜図3を用いて、各部を具体的に説明した後、放電用シートの全体の構成を説明し、さらに、図4および5を用いて、放電用シートの形状の変化を説明する。
【0028】
図1〜3は、それぞれ、第1の実施形態に係る放電用シートの側面図、平面図および底面図である。図1〜3において、放電用シート10は、導電性シート11と、離型シート12と、導電性シート11と離型シート12との間に介在する粘着層13と、切込み14とを有する。導電性シート11と離型シート12のそれぞれの長手方向は平行しており、切込み14も、導電性シート11の長手方向に平行している。
【0029】
≪導電性シート≫
導電性シート11の形状は、その平面が長方形であって、厚さの薄い帯状である。なお、図2中の上下方向が導電性シート11の長手方向となる。導電性シート11の長手方向の長さは、特に制限されず、放電用シート10を設置する装置の種類、該装置における設置箇所によって適宜変更される。導電性シート11の幅(図1中のX1とX2を足した長さ)も特に制限されず、上述の長さと同様に、装置の種類、該装置における設置箇所によって適宜変更される。取扱いの容易性の観点、および製造容易性の観点からは、4mm以上100mm以下であることが好ましい。また、導電性シート11の厚さ(図1中の上下方向の長さ)は、設置対象の装置への設置の容易性の観点からは、3mm以下であることが好ましく、導電性シート11の強度を維持する観点からは、0.05mm以上であることが好ましい。特に、製造容易性の観点からは、0.09〜0.5mmの厚さが好ましい。
【0030】
上記導電性シート11は、導電性繊維と非導電性繊維とからなり、不織布または織布であることが好ましい。この場合、繊維の飛び出し、脱落などが顕著に低減される。特に、不織布の場合には、繊維の飛び出し、脱落などをより効果的に低減することができる。導電性シート11において、導電性繊維の含有率は99%以下であることが好ましい。導電性繊維の含有率を99%以下とすることにより、導電性シート11は、静電気の放電に適した導電性を有することができる。特に、導電性繊維の含有率が60%以下の場合、表面電気抵抗値は10〜10Ω/cm2となり、導電性能がさらに向上するとともに、効率的な自己放電が可能となる。導電性繊維が20%程度、非導電性繊維が80%程度の含有率の導電性シート11がより好ましく、この場合、より高い自己放電性能を有する。
【0031】
導電性繊維としては、導電性を有する繊維であれば特に限定されず、金属繊維、金属メッキ繊維、カーボン繊維、硫化銅が結合した繊維、導電性ポリマーを固着させた繊維などを用いることができる。金属繊維としては、ステンレスなどがあり、金属メッキ繊維としては、銀メッキ、ニッケルメッキ、銅メッキなどがある。特に、加工の容易性、および高い除電性能の観点からは、硫化銅が結合したポリマー繊維を用いることが好ましい。ポリマー繊維としては、種々の天然、半合成および合成繊維を用いることができる。特に、アクリル繊維、ポリアミド繊維を用いることが好ましい。
【0032】
非導電性繊維としては、非導電性の繊維であれば特に限定されず、たとえば、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリアミド繊維などを用いることができる。耐熱性、耐候性の観点から、ポリエステル繊維を用いることが好ましい。
【0033】
≪離型シート≫
離型シート12の形状は、その平面が長方形であって、厚さの薄い帯状であり、その幅は導電性シート11の幅よりも小さい。なお、図2中の上下方向が離型シート12の長手方向となる。離型シート12の長さは、特に制限されず、導電性シート11の長さ以下であればよく、製造容易性の観点から、また取扱い容易性の観点から、導電性シート11の長さと一致するのが好ましい。離型シート12の幅(図1中のY1とY2を足した長さ)も特に制限されず、導電性シート11の幅未満であればよい。たとえば、離型シート12の幅は、導電性シート11の幅の0.1倍〜0.98倍であることが好ましい。また、離型シート12の厚さ(図1中の上下方向の長さ)は、設置対象の装置への設置の容易性の観点からは、2mm以下であることが好ましく、離型シート12の強度を維持する観点からは、0.08mm以上であることが好ましい。
【0034】
上記離型シート12の材料は、特に限定されず、後述する粘着層13に接着されるとともに、粘着層13から剥離されることによって、粘着層13と容易に分離されるものであればよい。たとえば、各種の材料で形成された帯状のシートの表面をシリコン処理したものを用いることができる。また、いわゆる特殊脂肪酸エステルを用いてもよい。
【0035】
≪粘着層≫
粘着層13は、導電性シート11と、離型シート12の間に配置され、粘着層13の一方の面が導電性シート11の一方の面と接着し、粘着層13の他方の面が離型シート12の導電性シート11に対向する一方の面と接着する。この構成により、粘着層13は、導電性シート11と離型シート12とを相互に接着する。粘着層13の長さ、幅および厚さは特に制限されず、図1に示すように、離型シート12からはみ出ないような大きさであればよい。
【0036】
上記粘着層13の材料は、特に制限されず、粘着性を維持できる材料であればよく、たとえば、アクリル系の粘着剤などを用いることができる。また、安全性の観点からは、難燃性の粘着剤であることが好ましい。特に、除電される静電気量が多い場合に、導電性シート11から粘着層13を介して粘着層13が貼着される装置へ静電気を放電するために、あるいは、導電性シート11から粘着層13を介して粘着層13が貼着されるアースへ静電気を放電するために、粘着層13は導電性であることが好ましい。これを実現する態様としては、たとえば、アルミニウム箔の両面に、ニッケル粉または銅粉を混入させたアクリル系の粘着剤層が形成された粘着層13がある。この場合、粘着層13は、適度な固さを有するため、放電シート10の装置への設置が容易となるという利点も有する。
【0037】
≪切込み≫
切込み14は、図1および図3に示すように、導電性シート11および粘着層13それぞれを、長手方向に平行に分割するように、導電性シート11、粘着層13および離型シート12が重なる領域Z内に形成される。すなわち、領域Z内において、放電用シート10の長手方向に平行に形成された切込み14の深さ(図1中の上下方向)が、導電性シート11の厚さおよび粘着層13の厚さを足した長さと一致する。この構成により、導電性シート11および粘着層13が、それぞれ導電性シート11a,11bおよび粘着層13a,13bに分割される。一方、離型シート12には切込み14が到達しておらず、したがって、離型シート12は、切込み14によって分割されない。切込み14は、カッターなどを用いて形成することができる。
【0038】
≪放電用シート≫
図1〜3に示す放電用シート10において、離型シート12は、上述したように、その長手方向が導電性シート11の長手方向に平行となるように、粘着層13によって導電性シート11に対して接着されている。また、離型シート12は、導電性シート11の幅方向に対して中央部に配置されている(図1参照。)。
【0039】
ここで、中央部とは、導電性シート11のうち、離型シート12の長手方向に平行な向かい合う2つの端部が、導電性シート11の長手方向に平行な向かいあう2つの端部と一致しないように配置できる部分である。すなわち、図2に示すように、導電性シート11上に離型シート12を配置した場合に、少なくとも3つの部分(導電性シート11aの一部、離型シート12および導電性シート11bの一部)から構成されるストライプ模様が構成されればよい。
【0040】
また、切込み14は、上述のように、導電性シート11と粘着層13を、長手方向に平行に分割するように形成される。切込み14が形成される位置は、導電性シート11、粘着層13および離型シート12が重なる領域Z内であればよい。
【0041】
特に、図1中のX1とX2が等しく、Y1とY2が等しい、すなわち、離型シート12の長手方向の等分軸W(図2参照。)が、導電性シート11の長手方向の等分軸と一致するように両シートが配置され、切込み14が等分軸Wと一致することが好ましい。この場合、放電用シート10から、同じ幅を有し、かつ等しい大きさの粘着層13a,13bを有する導電性シート11a,11bを得ることができる。なお、本明細書において、等分軸とは、長手方向に平行であって、幅方向を2等分する軸をいい、たとえば、等分軸Wは離型シート12を幅方向に2等分していることになる。
【0042】
≪放電用シートの形状の変化≫
次に、図4および図5を用いて、放電用シート10の形状の変化について説明する。図4は、図1の放電用シートの斜視図であり、図5は、図1の放電用シートであって、形状を変化させた場合の斜視図である。
【0043】
図4において、離型シート12は、その長手方向が導電性シート11の長手方向と平行しており、導電性シート11の幅方向の中央部に配置されている。また、離型シート12の等分軸、導電性シートの等分軸および切込み14は一致している。図4において、矢印近傍にある導電性シート11bの部分を図中矢印方向に引上げると、粘着層13bに接着している離型シート12は、粘着層13bとともに上方に引上げられて、粘着層13aから剥離される。特に、粘着層13の導電性シート11に対する接着力が、粘着層13の離型シート12に対する接着よりも大きい場合、離型シート12の粘着層13aからの剥離が容易となる。
【0044】
引上げ後、放電用シート10の形状は、図5に示すように、分割された導電性シート11aおよび11bのうち、導電性シート11bのみが上方に引上げられ、離型シート12は、粘着層13bに接着したままで、粘着層13aから剥離された形状となる。図5の状態から、さらに、導電性シート11bを図中上方に引上げることによって、離型シート12を粘着層13aから完全に剥離することができる。これにより、粘着層13aの長手方向が導電性シート11aの長手方向に平行であり、かつ粘着層13aの端面と導電性シート11aの端面とが一致した、放電用シートを得ることができる。
【0045】
一方、離型シート12が粘着層13bに接着している導電性シート11bにおいて、導電性シート11aが剥離されることによって、導電性シート11bから飛び出すように露出することになる。したがって、この離型シート12の露出部分を狭持して引上げることによって、導電性シート11bと離型シート12を容易に分離することができる。離型シート12が剥離された、粘着層13aおよび13bを有する導電性シート11aおよび11bは、対象となる装置の所望の位置に貼着されることによって、それぞれ放電用シートとして機能する。
【0046】
以上詳述した本実施形態に係る放電用シート10によれば、容易に粘着層13から離型シート12を剥離することができるため、放電用シート10の取扱いが容易となる。また、1つの離型シート12を剥離することによって、従来の放電用シートと比較して、2倍量の放電用シートを得ることができる。また、本実施の形態に係る放電用シート10の構成によれば、粘着層13a,13bのそれぞれが、導電性シート11a,11bからはみ出ることがない。さらに、幅の小さい、細い放電用シートの管理、梱包などには注意が必要であったが、本実施の形態によれば、従来の放電用シートの2倍の幅を有することができるため、その管理、梱包が容易となる。また、数量管理も容易である。
【0047】
<第2の実施形態>
第2の実施形態として、本発明に係る放電用シートの製造方法の一例について、図6および図7を用いて説明する。図6は、第2の実施形態に係る放電用シートの製造方法の一例を示すフローチャートであり、図7は、図6の製造方法を説明するための模式図である。本実施形態では、図7に模式的に示す構成を用いて、図6に示す製造方法を行うことによって、図1〜3に示す放電用シート10を製造する場合について説明する。
【0048】
まず、図6および図7に示すように、帯状の導電性シート21が巻回された第1ロールAと、一方の面に粘着層23が形成された、帯状の離型シート22が巻回された第2ロールBとを準備する(ステップS1)。なお、ここでの導電性シート21、離型シート22、粘着層23は、第1の実施形態で説明した導電性シート11、離型シート12、粘着層13がそれぞれ長手方向に連続するものである。
【0049】
第1ロールAは、たとえば、導電性シート11の所望の幅の数倍、たとえば20倍の幅を有する導電性シートを、芯材を中心として長手方向に巻回し、その後、カッターなどを用いて幅方向に20等分に分割することによって作製することができる。この方法は、第1ロールAの生産効率が高いため、大量の放電用シート10の製造にするのに適している。
【0050】
また、第2ロールBも、上記の第1ロールAの作製方法と同様の方法によって、高い生産効率で作製することができる。第2ロールBから供給される離型シート22の導電性シートに対向する面、すなわち、図7中の離型シート22の上面側には、粘着層23が形成されている。また、離型シート22の幅は、導電性シート11の幅よりも小さい。
【0051】
次に、図6および図7に示すように、導電性シート21と、離型シート22とを、長手方向に連続的に供給しながら、導電性シート21の一方の面と離型シート22の一方の面との間に粘着層23を配置した状態で相互に圧着する(ステップS2)。本工程は、たとえば、以下のように行うことができる。
【0052】
すなわち、まず、導電性シート21は、供給ローラ24,25によって、長手方向(図中矢印方向)に連続的に供給される。一方、離型シート22は、供給ローラ26,27によって、長手方向に連続的に供給される。連続的に供給された導電性シート21および離型シート22は、1対の圧着ローラ28a,28bの間を通過することによって、相互に圧着される。上述したように、離型シート22の図中上面には、粘着層23が形成されているため、圧着ローラ28a,28bによる圧着後、導電性シート21、粘着層23、離型シート22の順に積層された放電用材料20が作製される。なお、図7において、各ローラは、それぞれ記載された円弧状の矢印方向に回転する。
【0053】
このステップS2において、離型シート22は、その長手方向が、導電性シート21の長手方向と平行となるように供給される。また、同調整機構によって、導電性シート21の幅方向に対して中央部に配置されるように、その位置が調整される。本実施形態では、離型シート22の幅方向を2等分する等分軸が、導電性シート21の幅方向を2等分する等分軸と一致するように調整される。
【0054】
次に、図6および図7に示すように、放電用材料20を長手方向に連続的に移送しながら、導電性シート21、粘着層23、および離型シート22が重なる領域に、切込みを入れる(ステップS3)。本工程は、たとえば、以下のように行うができる。
【0055】
すなわち、放電用材料20は、図中の矢印方向に回転する案内ローラ29によって、1対の切込みローラ30a,30bの間を通過するようにガイドされる。切込みローラ30aには、円板状の切断カッターが装着されており、切込みローラ30a,30bの間を通過する放電用材料20に切込みを入れることができる。切込みローラ30aと切込みローラ30bとの間の距離は調製することができ、これにより、間を通過する放電用材料20への切込み深さを調整することができる。本実施形態では、離型シート22の長手方向を2等分する等分軸と切込みが一致するように、かつ切込みの深さが、導電性シート21の厚さおよび粘着層23の厚さを足した長さと一致するように調整される。したがって、ステップS3を経ることにより、放電用材料20は、切込みによって、導電性シート21および粘着層23がその長手方向に平行に2等分されることになる。
【0056】
次に、図6および図7に示すように、切込みが形成された放電用材料20を、長手方向(図中矢印方向)に連続的に移送しながら、長手方向に対して所定の長さに切断することによって、放電用シート10を形成する(ステップS4)。本工程は、たとえば、以下のように行うことができる。
【0057】
すなわち、切込みが形成された放電用材料20を、切込みローラ30a,30bによって長手方向に移送し、1対の案内ローラ31a,31bの間を通過させる。案内ローラ31a,31bは、案内ローラ31a,31bの回転数、回転角度などを測定することによって、ローラ間を通過した放電用材料20の長さを測定する機能を有している。そして、この測定された長さに基づいて、切断カッター32の上下方向の移動速度を制御することによって、放電用材料20を所望の長さに切断することができる。なお、切断カッター32の刃先は、放電用材料20の幅方向に平行となるように配置されており、切断カッター32の上下方向の移動によって、台座33と切断カッター32の間に配置された放電用材料20が容易に切断される。
【0058】
以上の工程(ステップS1〜S4)により、図1〜3に示す放電用シート10を連続的に製造することができる。
【0059】
以上詳述した本実施形態に係る製造方法によれば、容易に、放電用シート10を連続的に製造することができる。また、従来のような、離型シートの端面と導電性シートの端面を一致させる操作を必要としない。また、離型シート22を粘着層23を介して導電性シート21に接着させた後に、導電性シート21および粘着層23を切断するため、粘着層23が導電性シート21からはみ出て露出することがない。したがって、本実施形態に係る製造方法によれば、歩留まり良く、効率的に放電用シート10を製造することができる。
【0060】
特に、導電性シート21が不織布である場合、厚みにむらが生じる場合があり、この場合には、離型シートの端面と導電性シートの端面とを完全に一致させるのが難しい場合がある。すなわち、導電性シート21を長手方向に連続的に移送する際、導電性シート21の長手方向に対して引張力が加えられることになるが、厚みにむらがある導電性シート21はその伸度が一定とならず、このために導電性シート21の端部と離型シート22の端部とが一致させることが難しい場合がある。これに対し、本実施形態に係る製造方法によれば、たとえ導電性シート21の厚みにむらがあっても、粘着層23が導電性シート21からはみ出ることがない。なお、伸度とは、部材の伸び易さをいう。
【0061】
また、上述のように、第1ロールAおよび第2ロールBを用いて、放電用シートを製造する場合、従来の製造方法であれば、放電用シートの1本分の太さの導電性シートおよび離型シートを巻回したロールを作製する必要があった。すなわち、従来の製造方法であれば、細い放電用シート、たとえば5mmの放電用シートを製造する場合、5mm幅の第1ロールAと、5mmよりも幅の狭い第2ロールBとを作製する必要があった。このような幅の細いロールを、上述のような作製方法で作製するのは困難であり、幅の均等な第1ロールA、第2ロールBが作製できない場合があった。これに対し、本実施形態によれば、放電用シート2本分の第1ロールA、第2ロールBを作製すればよく、上記の場合、10mm幅の第1ロールAと、10mmよりも幅の狭い第2ロールBとを作製すればよい。したがって、このような第1ロールAおよび第2ロールBを用いることによって、幅方向が均一な放電用シートを、歩留まり良く製造することができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、離型シート22が分割されず、導電性シート21および粘着層23が分割された放電用材料20を長手方向に連続的に移送しながら、切断カッター32によって所望の長さに切断される。ここで、導電性シート21をも切込みによって分割した場合、切断カッター32には、2本の放電用材料が移送されることになる。この場合に、2本の放電用材料が平行に移送されずに、わずかにずれていく場合がある。これについて、図8を用いて説明する。
【0063】
図8は、2本の導電性シートがV字状に並んだ平面図である。切込みローラ30aで2本に分割された各放電用材料81a,81bは、切断カッター32に移送されるまでの間に、図8に示すように、V字状に開いていく。なお、各放電用材料81a,81b上には、粘着層を介して、各離型シート82a,82bが接着されている。切断カッター32に到達した放電用材料は、切断カッター32の刃先に対して垂直に送り込まれていかないため、たとえば、図中点線で示す位置毎に、切断されることになる。この場合、放電用シートの長手方向と幅方向は直行せず、長手方向の2つの端面の長さが一致しない。これは、歩留まりの低下に繋がる。
【0064】
特に、導電性シート21は繊維からなるが、導電性シート21と離型シート22との伸度が大きく異なる場合、たとえば離型シート22がシリコン処理された紙、ポリエステルからなる場合、各放電用材料81a,81bにおいて、長手方向の両端部の伸度が大きく異なることになるため、2本の導電性材料がずれていく現象がおこり易い。また、このずれは、放電用シートの長さが小さい場合には、全体の構成に及ぼす影響が大きくなる。したがって、導電性シートと離型シートとの伸度が大きく異なる場合や、製造する放電用シートの長さが小さい場合、具体的には30mm以下の場合には、本実施形態のように、離型シート22を切断せずに、放電用シートを形成するのが特に好ましい。
【0065】
換言すれば、放電用シートの長さが大きい場合には、導電性シート21、粘着層23とともに、離型シート22を切込みによって分割してもよい。特に、放電用シートの長さが十分に大きく、たとえば1000mm以上であり、放電用シートの幅も大きい、たとえば80mm以上の場合には、上記のずれは全体の構成に大きな影響を及ぼさない。したがって、放電用シートの長さが1000mm以上の場合には、上述の本実施形態の製造方法のほかに、離型シート22を切断する方法によっても、放電用シートを歩留まり良く製造することができる。ただし、この場合、製造される放電用シートの構成は、図9に示す放電用シートと同様の構成となる。
【実施例1】
【0066】
<実施例1>
本実施例1では、図7の構成を用いて、図1〜3に示す放電用シート10を作製した。
【0067】
具体的には、まず、幅40mm、長さ100mの導電性シート21を長手方向に巻回した第1ロールAを準備した。また、幅10mm、長さ20mの離型シート22を長手方向に巻回した第2ロールBを準備した。離型シート22の一方の面上には粘着層23が形成されており、粘着層23が形成されている面が、図7において、長手方向に供給される離型シート22の上面側となるように、各ロールを配置した。
【0068】
ここで、導電性シート21には、アクリル繊維に硫化銅を結合させた導電性繊維と、非導電性のポリエステル繊維とからなる不織布を用いた。また、離型シート22には、両面をシリコン処理した紙を用いた。また、離型シート22の一方の面には、粘着層23として、アルミニウム箔の両面に、ニッケル粉を混入させたアクリル系の粘着剤が一様に塗布されたものを用いた。
【0069】
上記第1ロールAから導電性シート21を、第2ロールBから離型シート22を、長手方向に連続的に供給しながら、圧着ローラ28a,28bによって、導電性シート21と離型シート22とを相互に圧着し、放電用材料20を連続的に作製した。また、不図示の調整機構により、離型シート22の長手方向が、導電性シート21の長手方向と平行になるように、また離型シート22の幅方向を2等分する等分軸が、導電性シート21の幅方向を2等分する等分軸と一致するように、調整した。なお、導電性シート21および離型シート22の供給スピードは、1650mm/秒であった。
【0070】
そして、切込みローラ30aと切込みローラ30bとの間に、放電用材料20を連続的に移送しながら、切込みローラ30aによって、導電性シート21の等分軸と一致するように、導電性シート21および粘着層23に切込みを入れた。これにより、導電性シート21と粘着層23が長手方向に平行に2等分に分割された。さらに、切込みが入れられた放電用材料20を、切断カッター32によって長さ30mmとなるように切断し、放電用シート10を連続的に製造した。
【0071】
本実施例1において作製された放電用シート10は、粘着層13および離型シート12が導電性シート11からはみ出ることがなかった。なお、導電性シート11、離型シート12、粘着層13は、導電性シート21、離型シート22、粘着層23が所定の長さに切断されたものである。また、放電用シート10の長手方向と、幅方向は直交しており、放電用シート10の長手方向の2つの端面の長さが一致していた。したがって、本実施例1において、放電用シート10を歩留まり良く、効率的に製造することができた。また、製造された放電用シート10は、その端部を狭持して引上げることにより、容易に離型シート12と導電性シート11とを分離することができ、取扱いも容易であった。
【0072】
<比較例1>
切込みローラ30aによって、導電性シート21の等分軸と一致するように、導電性シート21および粘着層23だけでなく、該粘着層23上に接着されている離型シート22にも切込みをいれて、それぞれを2等分に分割した以外は、実施例1と同様の方法によって、放電用テープを製造した。
【0073】
本比較例1において作製された放電用テープは、粘着層13および離型シート12が導電性シート11からはみ出ることがなかったが、放電用シートの長手方向と、幅方向が直交しておらず、放電用テープの長手方向の2つの端面の長さが一致していなかった。
【0074】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行ったが、各実施の形態および実施例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、静電気などの除電具として、広く用いることができる。
【符号の説明】
【0076】
10 放電用シート、11,11a,11b,21,81a,81b,91 導電性シート、12,22,83a,83b,93 離型シート、13,13a,13b,23,92 粘着層、14 切込み、20 放電用材料、24,25,26,27 供給ローラ、28a,28b 圧着ローラ、29,31a,31b 案内ローラ、30a,30b 切込みローラ、32 切断カッター、33 台座。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の導電性シートと、
前記導電性シートの幅よりも小さい幅を有する帯状の離型シートと、
前記導電性シートと前記離型シートの間に配置され、前記導電性シートの一方の面と、前記離型シートの一方の面とを互いに接着する粘着層と、を有し、
前記離型シートは、その長手方向が前記導電性シートの長手方向に対して平行となるように、かつ前記導電性シートの幅方向に対して中央部に配置されており、
前記導電性シート、前記粘着層、および前記離型シートが重なる領域において、前記導電性シートおよび前記粘着層が、前記導電性シートの長手方向に平行な切込みによって分割されている、放電用シート。
【請求項2】
前記粘着層の前記導電性シートに対する接着力は、前記粘着層の前記離型シートに対する接着力よりも大きい、請求項1に記載の放電用シート。
【請求項3】
前記導電性シートは、導電性繊維と非導電性繊維とからなる、請求項1または2に記載の放電用シート。
【請求項4】
前記導電性シートにおける長手方向に平行であって幅方向を等分する等分軸と、前記離型シートにおける長手方向に平行であって幅方向を等分する等分軸と、前記切込みとのそれぞれの位置が一致する、請求項1から3のいずれかに記載の放電用シート。
【請求項5】
帯状の導電性シートと、前記導電性シートの幅よりも小さい幅を有する帯状の離型シートとを、長手方向に連続的に供給しながら、前記導電性シートの一方の面と前記離型シートの一方の面との間に粘着層を配置した状態で圧着して、前記粘着層を介して前記導電性シートおよび前記離型シートが接着された放電用材料を形成する工程と、
前記放電用材料を長手方向に連続的に移送しながら、前記導電性シート、前記粘着層、および前記離型シートが重なる領域に、切込みを入れる工程と、を有し、
前記放電用材料を形成する工程において、前記離型シートは、その長手方向が前記導電性シートの長手方向に対して平行となるように、かつ前記導電性シートの幅方向に対して中央部に配置されるように配置され、
前記切込みを入れる工程において、前記切込みによって前記導電性シートおよび前記粘着層が長手方向に平行に分割されるように、前記切込みの深さが調整される、放電用シートの製造方法。
【請求項6】
前記放電用材料を形成する工程において、一方の面上に前記粘着層が形成された前記離型シートが供給される、請求項5に記載の放電用シートの製造方法。
【請求項7】
前記粘着層の前記導電性シートに対する接着力は、前記粘着層の前記離型シートに対する接着力よりも大きい、請求項5または6に記載の放電用シートの製造方法。
【請求項8】
前記導電性シートは、導電性繊維と非導電性繊維とからなる、請求項5から7のいずれかに記載の放電用シートの製造方法。
【請求項9】
前記切込みを入れる工程において、前記導電性シートにおける長手方向に平行であって幅方向を等分する等分軸と、前記離型シートにおける長手方向に平行であって幅方向を等分する等分軸と、が一致する部分に前記切込みが入れられる、請求項5から8のいずれかに記載の放電用シートの製造方法。
【請求項10】
前記切込みを入れる工程において、前記導電性シート、前記粘着層および前記離型シートが分割されるように、前記切込みの深さが調整される、請求項5から9のいずれかに記載の放電用シートの製造方法。
【請求項11】
前記切込みを入れる工程において、さらに前記離型シートが分割されるように、前記切り込みの深さが調整される、請求項10に記載の放電用シートの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−18837(P2012−18837A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156007(P2010−156007)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【特許番号】特許第4673930号(P4673930)
【特許公報発行日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000231224)日本蚕毛染色株式会社 (8)
【Fターム(参考)】