説明

放電管の電極形成方法

【課題】放電電極部の表面に形成した各穴部内面に形成される被膜の厚さや量を略均一化でき、また、短時間に多数の放電電極部を形成できる放電管の電極形成方法を実現。
【解決手段】多数の凹部が形成されたパレット41、放電電極部18表面の穴部と同数の針状部を備え、針状部が、上記穴部と1対1で対応する位置関係で配置された電極形成用冶具と、電子放出特性が良好な物質より成る粉末を添加した液状のバインダーを準備し、また、蓋部材14の外面に、パレット41の凹部と嵌合して蓋部材14を固定する凸部21を形成し、パレット41の各凹部に、蓋部材14の凸部21を嵌合することにより、多数の蓋部材14をパレット上41に整列配置しバインダー中に電極形成用冶具の針状部を浸漬して針状部表面にバインダーを付着させ、バインダーが付着した針状部と、穴部とを1対1で対応させた上で、バインダーを穴部内に滴下させて、バインダーを乾燥させて穴部内面に被膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放電電極部の表面に、電子放出特性が良好な物質を含有した被膜を形成して成る放電管の電極形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放電電極部の表面に、電子放出特性が良好な物質を含有した被膜を形成して成る放電管として、本出願人は、先に実用新案登録第3125263号を提案した。
この放電管60は、図14乃至図17に示すように、両端が開口した絶縁材よりなる円筒状のケース部材62の両端開口部を、放電電極を兼ねた一対の蓋部材64,64で気密に封止することによって気密外囲器66を形成し、該気密外囲器66内に、所定の放電ガスを封入してなる。
【0003】
上記蓋部材64は、気密外囲器66の中心に向けて大きく突き出た平面状の放電電極部68と、ケース部材62の端面に接する接合部70を備えており、両蓋部材64,64の放電電極部68,68間には、所定の放電間隙72が形成されている。
また、上記ケース部材62の内壁面74の円周方向に、微小放電間隙76を隔てて対向配置された一対のトリガ放電膜78,78が、複数組形成されている。一対のトリガ放電膜78,78の内、一方のトリガ放電膜78は、一方の放電電極部68と電気的に接続され、他方のトリガ放電膜78は、他方の放電電極部68と電気的に接続されている。
【0004】
図15に示すように、上記放電電極部68の表面には、有底の穴部79が多数形成されており、穴部79内面及び放電電極部68の表面に、臭化セシウム(CsBr)等の電子放出特性が良好な物質を含有した被膜80が形成されている。この被膜80は、臭化セシウム等の電子放出特性が良好な物質の粉末を、珪酸ナトリウム溶液と純水よりなるバインダーに添加したものを、放電電極部18表面に塗布することによって形成することができる。
尚、放電電極部68の表面の周縁に沿って、上記被膜80が形成されないマージン部81が設けられている。
【0005】
上記気密外囲器66内に封入する放電ガスとしては、例えば、ネオン(Ne)とアルゴン(Ar)の混合ガス中に、水素(H)を混合して構成した放電ガスが該当する。
【0006】
従来の上記放電管60にあっては、放電電極を兼ねた上記一対の蓋部材64,64間に、当該放電管60の放電開始電圧以上の電圧が印加されると、トリガ放電膜78の両端と蓋部材64,64間の微小放電間隙76に電界が集中し、これにより微小放電間隙76に電子が放出されてトリガ放電としての沿面コロナ放電が発生する。次いで、この沿面コロナ放電は、電子のプライミング効果によってグロー放電へと移行する。そして、このグロー放電が放電電極部68,68間の放電間隙72へと転移し、主放電としてのアーク放電に移行するのである。
【0007】
而して、上記放電管60にあっては、放電電極部68の表面に多数の穴部79を形成し、穴部79内面及び放電電極部68の表面に、電子放出特性が良好な物質を含有した被膜80を形成したことにより、被膜80と放電電極部68との密着力が向上し、放電時の衝撃による被膜80のスパッタを抑制することができ、放電開始電圧の変動を生じることのない長寿命な放電管を実現するができるのである。
【特許文献1】実用新案登録第3125263号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来の上記放電管60において、穴部79内面及び放電電極部68の表面への被膜80の形成方法は、次の通りである。すなわち、臭化セシウム(CsBr)等の電子放出特性が良好な物質より成る粉末を添加した液状のバインダーを、マイクロディスペンサー(微量分注器)を使用して、穴部79内面及び放電電極部68表面へ塗布した後、乾燥させて被膜80を形成していた。
【0009】
しかしながら、上記マイクロディスペンサー(微量分注器)を使用したバインダーの塗布方法にあっては、各穴部79内面に塗布されるバインダーの厚さや量にバラツキが生じ易く、その結果、乾燥後の被膜80の厚さが不均一となり、放電特性の不安定化を生じる原因となっていた。
【0010】
また、従来より、短時間で多数の放電電極部を形成できる方法の実現が望まれていた。
【0011】
この発明は、従来の上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、放電電極部の表面に形成した各穴部内面に形成される被膜の厚さや量を略均一化でき、また、短時間に多数の放電電極部を形成できる放電管の電極形成方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る放電管の電極形成方法は、
両端が開口した絶縁材よりなるケース部材の両端開口部を、放電電極を兼ねた一対の蓋部材で気密に封止することによって気密外囲器を形成すると共に、該気密外囲器内に放電ガスを封入し、また、気密外囲器内に配置される上記蓋部材の放電電極部の表面間に放電間隙を形成し、さらに、上記放電電極部の表面に多数の穴部を形成すると共に、該穴部内面に電子放出特性が良好な物質を含有した被膜を形成して成る放電管の電極形成方法であって、
多数の凹部が形成されたパレットと、上記放電電極部の表面に形成された穴部と同数の針状部を備え、これら針状部が、上記穴部と1対1で対応する位置関係となるよう配置されている電極形成用冶具と、電子放出特性が良好な物質より成る粉末を添加した液状のバインダーを準備し、
また、上記蓋部材の外面に、上記パレットの凹部と嵌合して蓋部材を固定する位置決め部を形成しておき、
先ず、上記パレットの各凹部に、それぞれ、上記蓋部材外面の位置決め部を嵌合させて固定することにより、放電電極部表面の穴部が上側に配置された状態で多数の蓋部材をパレット上に整列配置し、
次に、上記バインダー中に、電極形成用冶具の針状部を浸漬して、針状部の表面にバインダーを付着させ、
次に、上記電極形成用冶具を、各蓋部材の放電電極部の穴部の上方に配置し、バインダーが付着した針状部と、穴部とを1対1で対応させた上で、バインダーを針状部の先端から穴部内に滴下させて、穴部内面に電子放出特性が良好な物質より成る粉末を添加したバインダーを塗布し、
その後、上記バインダーを乾燥させて、穴部内面に電子放出特性が良好な物質を含有した被膜を形成することを特徴とする。
【0013】
上記蓋部材の外面に形成した位置決め部は、上記パレットの凹部と嵌合する凸部で構成することができる。
尚、上記穴部を略半球状と成し、また、上記針状部の先端部の直径が、上記穴部の直径以下の寸法と成すようにするのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る放電管の電極形成方法にあっては、蓋部材の放電電極部の表面に形成された穴部と1対1で対応する位置関係となる針状部を備えた電極形成用冶具を用い、電子放出特性が良好な物質より成る粉末を添加した液状のバインダーが付着した針状部と、放電電極部の穴部とを1対1で対応させた上で、上記バインダーを針状部の先端から穴部内に滴下させるので、各穴部内面に塗布されるバインダーの厚さや量が略均一化され、その結果、乾燥後に形成される各穴部内面の被膜の厚さや量も略均一化することができる。
また、本発明方法にあっては、多数の凹部が形成されたパレットを用い、多数の蓋部材をパレット上に整列配置させた状態で、各放電電極部の穴部内面に被膜を形成するので、短時間に多数の放電電極部の被膜形成を行うことができる。
しかも、蓋部材の外面に形成した位置決め部とパレットの凹部とが嵌合することにより蓋部材が固定される結果、パレット上に配置された多数の蓋部材の穴部の向きを一定にすることができるので、上記電極形成用冶具を用いたバインダーの塗布作業を容易に行うことができる。
【0015】
放電電極部の表面に形成された穴部を略半球状と成し、電極形成用冶具の針状部の先端部の直径を、上記穴部の直径以下の寸法と成せば、穴部内面にのみバインダーを塗布することができ、乾燥後に形成される被膜も、穴部内面にのみ形成することができる。この結果、従来の放電管60に比べ、放電時の衝撃による被膜のスパッタを抑制することができる。
すなわち、従来の放電管60の如く、マイクロディスペンサー(微量分注器)を用いてバインダーを塗布する方法では、穴部79内面以外の放電電極部68表面にもバインダーが塗布されてしまい、その結果、乾燥後の被膜80は、穴部79内面だけでなく、放電電極部68表面にも形成されていた(図14〜図17)。而して、放電電極部68表面に形成された被膜80は、厚さが薄く、且つ、放電電極部68との密着力が、穴部79内面の被膜80に比べて脆弱であるため、放電時の衝撃によりスパッタを生じ易かった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る放電管10は、図1及び図2に示すように、両端が開口した絶縁材としてのセラミックよりなる円筒状のケース部材12の両端開口部を、放電電極を兼ねた一対の蓋部材14,14で気密に封止することによって気密外囲器16を形成してなる。
【0017】
上記蓋部材14は、その内面に、気密外囲器16の中心に向けて大きく突き出た表面が平面状の放電電極部18と、その外面側に、ケース部材12の端面に接する接合部20を備えており、両蓋部材14,14の放電電極部18,18の表面間には、所定の放電間隙22が形成されている。上記放電電極部18は、断面円柱状と成されている(図2)。尚、詳細は後述するが、蓋部材14,14の外面には、矩形状の凸部21が形成されている。
放電電極部18と接合部20を備えた上記蓋部材14は、無酸素銅や、無酸素銅にジルコニウム(Zr)を含有させたジルコニウム銅で構成されている。尚、ケース部材12の端面と蓋部材14の接合部20とは、銀ろう等のシール材(図示せず)を介して気密封止されている。
【0018】
また、気密外囲器16を構成する上記ケース部材12の内壁面24には、その両端が、放電電極を兼ねた上記蓋部材14,14と微小放電間隙26を隔てて配置された線状のトリガ放電膜28が複数形成されている。図1及び図2においては、トリガ放電膜28を、ケース部材12の内壁面24の円周方向に、45度間隔で8本形成した場合が例示されている。
上記トリガ放電膜28は、カーボン系材料等の導電性材料で構成されている。このトリガ放電膜28は、例えば、カーボン系材料より成る芯材を擦り付けることにより形成することができる。
【0019】
図3乃至図5に示すように、上記放電電極部18の表面には、略半球状の穴部29が多数形成されており、各穴部29内面に、電子放出特性が良好な物質を含有した被膜30が形成されている。本実施の形態においては、略半球状の穴部29は、4×4の合計16個が、マトリクス状に配置形成されているが、これに限定されるものではない。
【0020】
電子放出特性が良好な物質を含有した上記被膜30は、例えば、臭化セシウム(CsBr)が含有された被膜30で形成することができる。この被膜30は、臭化セシウムの粉末を、珪酸ナトリウム溶液と純水よりなるバインダーに添加したものを、放電電極部18表面に塗布することによって形成することができる。
この場合、臭化セシウムが0.01〜70重量%、バインダーが99.99〜30重量%の配合割合で混合される。
また、バインダー中の珪酸ナトリウム溶液と純水との配合割合は、珪酸ナトリウム溶液が0.01〜70重量%、純水が99.99〜30重量%の配合割合で混合される。
【0021】
上記気密外囲器16内には、所定の放電ガスが封入されている。この放電ガスとしては、例えば、ネオン(Ne)とアルゴン(Ar)の混合ガス中に、水素(H)を混合して構成した放電ガスが該当する。
【0022】
本発明の上記放電管10にあっては、放電電極を兼ねた上記一対の蓋部材14,14間に、当該放電管10の放電開始電圧以上の電圧が印加されると、トリガ放電膜28の両端と蓋部材14,14間の微小放電間隙26に電界が集中し、これにより微小放電間隙26に電子が放出されてトリガ放電としての沿面コロナ放電が発生する。次いで、この沿面コロナ放電は、電子のプライミング効果によってグロー放電へと移行する。そして、このグロー放電が放電電極部18,18間の放電間隙22へと転移し、主放電としてのアーク放電に移行するのである。
【0023】
而して、本発明の放電管10にあっては、放電電極部18の表面に多数の穴部29を形成し、穴部29内面に、電子放出特性が良好な物質を含有した被膜30を形成したことにより、被膜30と放電電極部18との密着力が向上し、放電時の衝撃による被膜30のスパッタを抑制することができ、その結果、放電開始電圧の変動を生じることのない長寿命な放電管を実現するができる。
【0024】
尚、本発明の放電管10においては、放電電極部18の表面に形成した穴部29を「略半球状」と成したことにより、従来の上記放電管60の如く、穴部79を「略直方体状」と成した場合に比べ、被膜30の状態が安定化し、放電特性のバラツキを低減することができる。
すなわち、従来の放電管60の如く、穴部79を「略直方体状」と成した場合には、穴部79の四方向から表面張力が掛かり、その結果、何れかの方向に被膜80が偏って形成され易いため、被膜80の状態が安定しなかった。
これに対し、本発明の放電管10の如く、穴部29を「略半球状」と成した場合には、穴部29の全方向から表面張力が均等に掛かり、その結果、被膜30が全方向に均等に形成されるため、被膜30の状態が安定化し、放電特性のバラツキを低減することができる。
【0025】
以下において、図6乃至図8に基づき、放電電極部18表面の穴部29内面に、上記被膜30を形成する方法について説明する。
図6及び図7において、31は、本発明に係る電極形成用冶具であり、該電極形成用冶具31は、平板状の基台部33と、該基台部33の上面から立設する突起部35と、上記基台部33の下面から垂設された針状部37を備えている。
上記針状部37は、図9に示すように、放電電極部18の穴部29の数と同数の16本が設けられ、また、図6及び図7に示すように、電極形成用冶具31を放電電極部18の穴部29の上方に配置した際に、針状部37は、放電電極部18の穴部29と1対1で対応する位置関係となるようマトリクス状に配置されている。尚、針状部37の少なくとも先端部の直径は、上記穴部29の直径以下の寸法と成される。
因みに、上記穴部29の直径は0.2mm程度、針状部37の直径は0.18mm程度と成されている。
【0026】
穴部29内面に被膜30を形成するには、先ず、臭化セシウム(CsBr)等の電子放出特性が良好な物質より成る粉末を添加した珪酸ナトリウム溶液と純水よりなる液状のバインダーを準備する。
また、上記蓋部材14を、放電電極部18表面の穴部29が上側となるように配置しておく。
次に、上記バインダー中に、電極形成用冶具31の針状部37を浸漬して、針状部37の表面にバインダー39を付着させる。
次に、電極形成用冶具31を放電電極部18の穴部29の上方に配置し、バインダー39が付着した針状部37と、放電電極部18の穴部29とを1対1で対応させた上で、バインダー39を針状部37の先端から穴部29内に滴下させる(図7)。この結果、穴部29内面に電子放出特性が良好な物質より成る粉末を添加したバインダー39が塗布され、このバインダー39を乾燥させれば、図8に示すように、穴部29内面に被膜30が形成される。
【0027】
本発明の上記した被膜30の形成方法にあっては、放電電極部18の穴部29と1対1で対応する位置関係となる針状部37を備えた電極形成用冶具31を用い、電子放出特性が良好な物質より成る粉末を添加した液状のバインダーが付着した針状部37と、放電電極部18の穴部29とを1対1で対応させた上で、上記バインダー39を針状部37の先端から穴部29内に滴下させるので、各穴部29内面に塗布されるバインダーの厚さや量が略均一化され、その結果、乾燥後に形成される各穴部29内面の被膜30の厚さや量も略均一化することができる。
【0028】
尚、従来の放電管60の如く、マイクロディスペンサー(微量分注器)を用いてバインダーを塗布する方法では、穴部79内面以外の放電電極部68表面にもバインダーが塗布されてしまい、その結果、乾燥後の被膜80は、穴部79内面だけでなく、放電電極部68表面にも形成されていた(図14〜図17)。而して、放電電極部68表面に形成された被膜80は、厚さが薄く、且つ、放電電極部68との密着力が、穴部79内面の被膜80に比べて脆弱であるため、放電時の衝撃によりスパッタを生じ易かった。
これに対し、本発明の上記した被膜30の形成方法にあっては、放電電極部18の穴部29と1対1で対応する位置関係で配置され、且つ、先端部の直径が、上記穴部29の直径以下の寸法と成された針状部37を備えた電極形成用冶具31を用い、電子放出特性が良好な物質より成る粉末を添加した液状のバインダーが付着した針状部37と、放電電極部18の穴部29とを1対1で対応させた上で、上記バインダー39を針状部37の先端から穴部29内に滴下させるので、穴部29内面にのみバインダー39を塗布することができる。従って、乾燥後に形成される被膜30も、穴部29内面にのみ形成することができる。
【0029】
次に、パレットを用いて、多数の蓋部材14の放電電極部18表面の穴部29内面に、上記被膜30を形成する方法について説明する。
図10に示すように、蓋部材14の外面には、矩形状の位置決め部としての凸部21が形成されている。
また、図11に示すように、パレット41には、上記蓋部材14の凸部21を収納する凹部43が多数形成されている。上記凹部43は、蓋部材14の凸部21の外形と略同形の矩形状と成されており、蓋部材14の凸部21とパレット41の凹部43とが嵌合することにより、蓋部材14が固定されるようになっている。
【0030】
先ず、上記パレット41の各凹部43に、それぞれ、蓋部材14の凸部21を嵌合させて固定する。この結果、放電電極部18表面の穴部29が上側に配置された状態で多数の蓋部材14が、パレット41上に整列配置されることとなる(図12)。
その後、上記と同様に、各蓋部材14の放電電極部18の穴部29の上方に上記電極形成用冶具31を配置し、バインダー39が付着した針状部37と、放電電極部18の穴部29とを1対1で対応させた上で、バインダー39を針状部37の先端から穴部29内に滴下させる(図13参照)。この結果、穴部29内面に電子放出特性が良好な物質より成る粉末を添加したバインダー39が塗布され、このバインダー39を乾燥させることにより、穴部29内面に被膜30が形成される。
【0031】
本発明方法にあっては、多数の凹部43が形成されたパレット41を用い、該パレット41の各凹部43に蓋部材14の凸部21を収納・固定し、多数の蓋部材14がパレット41上に整列配置された状態で、各放電電極部18の穴部29内面に被膜30を形成するので、短時間に多数の放電電極部18の被膜形成を行うことができる。
しかも、蓋部材14の凸部21とパレット41の凹部43とが嵌合することにより蓋部材14が固定される結果、パレット41に配置された多数の蓋部材14の穴部29の向きを一定にすることができるので、上記電極形成用冶具31を用いたバインダー39の塗布作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る放電管を示す概略断面図である。
【図2】図1のB−B概略断面図である。
【図3】本発明に係る放電管の要部拡大断面図である。
【図4】図1のC−C概略断面図である。
【図5】本発明に係る放電管の放電電極部表面を示す拡大図である。
【図6】放電電極部表面の穴部内面に、被膜を形成する方法を示す説明図である。
【図7】放電電極部表面の穴部内面に、被膜を形成する方法を示す説明図である。
【図8】放電電極部表面の穴部内面に、被膜を形成する方法を示す説明図である。
【図9】本発明に係る電極形成用冶具を示す底面図である。
【図10】蓋部材の外面形状を示す説明図である。
【図11】多数の放電電極部の穴部内面に、被膜を形成する方法を示す説明図である。
【図12】多数の放電電極部の穴部内面に、被膜を形成する方法を示す説明図である。
【図13】多数の放電電極部の穴部内面に、被膜を形成する方法を示す説明図である。
【図14】従来の放電管を示す断面図である。
【図15】従来の放電管の要部拡大断面図である。
【図16】図1のA−A概略断面図である。
【図17】従来の放電管の放電電極部表面を示す拡大図である。
【符号の説明】
【0033】
10 放電管
12 ケース部材
14 蓋部材
16 気密外囲器
18 放電電極部
21 凸部
22 放電間隙
26 微小放電間隙
28 トリガ放電膜
29 穴部
30 被膜
31 電極形成用冶具
37 針状部
39 バインダー
41 パレット
43 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が開口した絶縁材よりなるケース部材の両端開口部を、放電電極を兼ねた一対の蓋部材で気密に封止することによって気密外囲器を形成すると共に、該気密外囲器内に放電ガスを封入し、また、気密外囲器内に配置される上記蓋部材の放電電極部の表面間に放電間隙を形成し、さらに、上記放電電極部の表面に多数の穴部を形成すると共に、該穴部内面に電子放出特性が良好な物質を含有した被膜を形成して成る放電管の電極形成方法であって、
多数の凹部が形成されたパレットと、上記放電電極部の表面に形成された穴部と同数の針状部を備え、これら針状部が、上記穴部と1対1で対応する位置関係となるよう配置されている電極形成用冶具と、電子放出特性が良好な物質より成る粉末を添加した液状のバインダーを準備し、
また、上記蓋部材の外面に、上記パレットの凹部と嵌合して蓋部材を固定する位置決め部を形成しておき、
先ず、上記パレットの各凹部に、それぞれ、上記蓋部材外面の位置決め部を嵌合させて固定することにより、放電電極部表面の穴部が上側に配置された状態で多数の蓋部材をパレット上に整列配置し、
次に、上記バインダー中に、電極形成用冶具の針状部を浸漬して、針状部の表面にバインダーを付着させ、
次に、上記電極形成用冶具を、各蓋部材の放電電極部の穴部の上方に配置し、バインダーが付着した針状部と、穴部とを1対1で対応させた上で、バインダーを針状部の先端から穴部内に滴下させて、穴部内面に電子放出特性が良好な物質より成る粉末を添加したバインダーを塗布し、
その後、上記バインダーを乾燥させて、穴部内面に電子放出特性が良好な物質を含有した被膜を形成することを特徴とする放電管の電極形成方法。
【請求項2】
上記蓋部材の外面に形成した位置決め部が、上記パレットの凹部と嵌合する凸部であることを特徴とする請求項1に記載の放電管の電極形成方法。
【請求項3】
上記穴部が略半球状と成されており、また、上記針状部の先端部の直径が、上記穴部の直径以下の寸法と成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の放電管の電極形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2008−251388(P2008−251388A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92558(P2007−92558)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000122690)岡谷電機産業株式会社 (135)