説明

教材処理装置、教材処理方法および教材処理プログラム

【課題】教育機関で用いられる教育用教材について、正誤判定の記入内容を精度良く抽出判定し、その正誤判定の記入内容についての自動採点集計を行うことを可能とする。
【解決手段】解答欄を有した教育用教材から画像データを得る画像入力手段41と、前記画像入力手段41が得た画像データに対し色種類を限定する限定色化を行う限定色化手段44と、限定色化後の画像データから所定色成分の抽出により前記正誤判定の記入内容を認識する正誤判定手段47と、正誤判定の認識結果を基に前記教育用教材に記入された正誤判定を採点集計する得点算出手段48と、を備えて教材処理装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、教育機関で用いられる教育用教材を取り扱う教材処理装置、教材処理方法および教材処理プログラムに関し、特にその教育用教材についての採点処理を行う教材処理装置、教材処理方法および教材処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、学校や塾等の教育機関では、例えばテストの答案用紙や練習問題シートのような教育用教材を用いることが多い。すなわち、問題およびその解答欄を有した教育用教材を用いて、その教育用教材上に生徒に解答を記入させ、その記入された解答に対して教師が採点を行う、といったことが広く行われている。
【0003】
ところで、教育用教材については、その採点処理の省力化が強く求められている。これに応えるべく、採点処理の省力化を実現するものとしては、例えば、パーソナルコンピュータ(以下、単に「PC」という)に採点台および採点ペンを接続し、採点台の所定位置に教育用教材を載置した状態で採点ペンによって○×付けを実施することで、PCに対して教育用教材上に記入された解答の位置情報およびその正否情報を入力し得るようにし、これによりPCにて教育用教材上の解答についての自動採点を実施するように構成されたシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平6−266278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ただし、教育用教材についての採点処理にあたり、採点台や採点ペン等といった専用の構成機器を必要とすることは、必ずしも好適とはいえない。専用の構成機器は、システム全体の構成の複雑化や高コスト化等を招く要因となり得るからである。また、専用の構成機器を必要とすると、対応可能な教育用教材が限定されてしまい、その教育用教材についての汎用性が制限されてしまうおそれもある。
【0006】
その一方で、近年、教育機関には、PCや複写機、あるいはスキャン機能、プリント機能およびネットワーク通信機能等を統合した、いわゆる複合機が設置されて用いられていることが一般的である。
このことから、教育用教材の採点処理については、例えば「○」または「×」といった正誤判定の記入がされた教育用教材について、これを複写機等のスキャン機能を用いて読み取り、その読み取り結果である画像データに対してPC等の画像処理機能を用いて画像処理を行うことで、特別な構成機器を必要とすることなく、教育用教材上の解答についての自動採点を可能にすることも考えられる。具体的には、教育用教材から画像データを得ると、その画像データから正誤判定の記入内容を抽出することで、教育用教材に記入された正誤判定の採点集計を行い、さらにはその画像データから教育用教材への解答記入者による記名内容を抽出して、OCR(Optical Character Reader)技術等によりその解答記入者の特定を行い、これらの採点集計結果と解答者特定結果とを互いに関連付けて出力することで、上述した特許文献1に開示されたものと同様の自動採点結果が得られるようになる。
【0007】
しかしながら、上述したような教育用教材の採点処理にあたっては、教育用教材上の「○」または「×」といった図形形状をできる限り忠実に抽出して、その図形形状が「○」または「×」のどちらであるかを精度良く判定することが必要となる。その「○」または「×」といった正誤判定の記入内容の判定結果に基づいて、採点集計を行うことになるからである。
【0008】
そこで、本発明は、教育機関で用いられる教育用教材について、正誤判定の記入内容についての自動採点集計を行い、これによりその採点処理の省力化を実現するとともに、自動採点集計の信頼性向上を図るべく、正誤判定の記入内容を精度良く抽出判定することのできる、教材処理装置、教材処理方法および教材処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために案出された教材処理装置で、解答欄への解答の記入および当該解答に対する正誤判定の記入がされた教育用教材についての画像読み取りを行って当該教育用教材から画像データを得る画像入力手段と、前記画像入力手段で得た画像データに対し当該画像データにおける色種類を限定する限定色化を行う限定色化手段と、前記限定色化手段が限定色化を行った後の画像データから所定色成分についてのものを抽出し前記正誤判定の記入内容として認識する正誤判定認識手段と、前記正誤判定認識手段による認識結果に基づき前記読み取り手段が画像読み取りを行った教育用教材について当該教育用教材に記入された正誤判定の採点集計を行う採点集計手段とを備えることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明は、上記目的を達成するために案出された教材処理方法で、解答欄への解答の記入および当該解答に対する正誤判定の記入がされた教育用教材についての画像読み取りを行って当該教育用教材から画像データを得る画像入力ステップと、前記画像入力ステップで得た画像データに対し当該画像データにおける色種類を限定する限定色化を行う限定色化ステップと、前記限定色化ステップにて限定色化を行った後の画像データから所定色成分についてのものを抽出し前記正誤判定の記入内容として認識する正誤判定認識ステップと、前記正誤判定認識ステップでの認識結果に基づき前記読み取りステップにて画像読み取りを行った教育用教材について当該教育用教材に記入された正誤判定の採点集計を行う採点集計ステップとを含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記目的を達成するために案出された教材処理プログラムで、解答欄への解答の記入および当該解答に対する正誤判定の記入がされた教育用教材についての画像読み取りを行って当該教育用教材から画像データを得る画像読取装置と接続するコンピュータを、前記画像読取装置で得た画像データに対し当該画像データにおける色種類を限定する限定色化を行う限定色化手段と、前記限定色化手段が限定色化を行った後の画像データから所定色成分についてのものを抽出し前記正誤判定の記入内容として認識する正誤判定認識手段と、前記正誤判定認識手段による認識結果に基づき前記画像読取装置が画像読み取りを行った教育用教材について当該教育用教材に記入された正誤判定の採点集計を行う採点集計手段として機能させることを特徴とするものである。
【0012】
上記構成の教材処理装置、上記手順の教材処理方法、および、上記構成の教材処理プログラムでは、正誤判定の記入がされた教育用教材から得た画像データに対して限定色化を行うようになっている。「限定色化」とは、画像データにおける色種類を限定することをいい、具体的には画像データを構成する各画素の色成分が白、黒または赤といった限定色のいずれかになるようなデータ処理を行ったり、あるいは限定色以外の画素を取り除いたりすることが考えられる。なお、限定色化によって限定される色種類は、N色(Nは二以上の自然数)であれば、白、黒または赤といった三色に限られることはない。
そして、限定色化を行った後は、その限定色化後の画像データから所定色成分(例えば、赤色成分)についてのものを抽出して、これを正誤判定の記入内容として認識し、その認識結果に基づき教育用教材に記入された正誤判定の採点集計を行う。
したがって、正誤判定が記入された教育用教材から画像データを得れば、その記入された正誤判定について、採点結果の自動集計が行われ、結果として教育用教材についての採点処理が省力化されることとなる。しかも、教育用教材から得た画像データを基にするため、例えば、複写機または複合機等によって実現されるスキャン機能と、通常のコンピュータとしての機能が有する情報記憶処理機能、画像処理機能および演算処理機能とがあれば、装置構成を実現することができ、専用の構成機器を必要とすることもない。
さらには、教育用教材から得た画像データに対して限定色化を行うため、例えば教育用教材上に多く色種類が存在する場合であっても、その教育用教材上に所定色で記入された正誤判定の記入内容を、忠実に抽出して精度良く判定することができ、その抽出判定のための処理負荷も軽減できる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の教材処理装置、教材処理方法および教材処理プログラムでは、教育機関で用いられる教育用教材について、正誤判定の記入内容に基づいて自動採点集計を行うので、専用の構成機器を必要とすることがなく、その採点処理の省力化の実現することができる。しかも、正誤判定の記入内容に基づいて自動採点集計を行う場合であっても、教育用教材から得た画像データの限定色化を経ることで、その正誤判定の記入内容を精度良く抽出判定することができ、自動採点集計の信頼性向上が図れるようになる。
したがって、本発明の教材処理装置、教材処理方法および教材処理プログラムは、教育機関で用いるのにあたり非常に利便性の高いものとなり、信頼性の高い採点処理を円滑に行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づき本発明に係る教材処理装置、教材処理方法および教材処理プログラムについて説明する。
【0015】
〔システム全体の概略構成の説明〕
先ず、教材処理装置を実現するシステム構成について説明する。図1は、本発明に係る教材処理装置の具体的なシステム構成例を示すブロック図である。
【0016】
図例のように、ここで説明する教材処理装置は、画像読み取り部1と、データベース部2と、画像データ解析部3と、教材判別部4と、歪み補正部5と、限定色化部6と、差分抽出部7と、解答者抽出部8と、正誤判定抽出部9と、途切れ補正部10と、図形形状認識部11と、記入位置認識部12と、採点集計部13と、集計結果出力部14と、を備えて構成されている。
【0017】
画像読み取り部1は、処理対象となる教育用教材に対して、公知の光学的画像読み取り技術を用いた画像読み取りを行って、その教育用教材から画像データを得るものである。ただし、画像読み取り部1では、ADF(Automatic Document Feeder)を有しており、複数の教育用教材から連続的に画像データを読み取り得るようになっている。
【0018】
ここで、教育用教材について簡単に説明する。図2は、教育用教材の一具体例を示す説明図である。図例のように、教育用教材20は、問題およびその解答欄21を有したもので、具体的には教育機関で用いられるテストの答案用紙や練習問題シート等がこれに相当する。ただし、教育用教材20は、少なくとも解答欄21を有していればよく、問題文については必ずしも記載されていなくともよい。
また、教育用教材20には、その教育用教材を識別特定するための識別情報欄22と、解答欄21への解答記入者に関する解答者情報欄23と、を有している。識別情報欄22には、例えば教育用教材の科目、タイトル、適用学年等が予め記載されるものとする。ただし、これらの記載に加えて、またはこれらの記載とは別に、教育用教材20を識別するためのコード情報が埋め込まれていてもよい。コード情報の埋め込みは、公知技術を利用して実現すればよいが、その一つの具体例として、例えば「iTone(登録商標)」と呼ばれるもののように、階調表現としての万線スクリーンまたはドットスクリーンを構成する画素の形態(位置、形状等)を変化させることで、ハーフトーン画像の中にデジタル情報を埋め込むようにする、といった技術を用いることが考えられる。一方、解答者情報欄23には、解答記入者の学級、出席番号、氏名等が記入され得るようになっている。
【0019】
画像読み取り部1での画像読み取りに対象となる教育用教材20は、生徒等の解答記入者によって解答者情報欄23への氏名等の記入および解答欄21への解答記入がされ、さらに教師等によって各解答欄21に記入された解答に対する「○」や「×」等の正誤判定の図形記入がされたもの、すなわち後述する採点集計処理の対象となるものである。
【0020】
また図1において、データベース部2は、教育用教材20についての電子データを保持蓄積するものである。特に、データベース部2では、解答欄21等が未記入であるもの、すなわち教育用教材20の原本についての電子データを保持蓄積するようになっている。
このような教育用教材20についての電子データは、データベース部2にて保持蓄積可能なものであれば、そのデータ形式を問わない。例えば、ビットマップ形式の画像データであっても、文書作成ソフトウェアで作成したアプリケーション文書データであっても良い。
ただし、教育用教材20の電子データは、その教育用教材20における解答欄21や識別情報欄23等のレイアウトを特定し得る画像データの他に、その教育用教材20の属性(科目、タイトル、適用学年等)に関する情報を含むものとする。
【0021】
画像データ解析部3は、画像読み取り部1で得られた画像データについて、その解析処理を行うものである。解析処理としては、レイアウト解析、文字図形分離、文字認識、コード情報認識、図形処理、色成分認識等が挙げられるが、いずれも公知の画像処理技術を利用して実現すればよいため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0022】
教材判別部4は、タイトル解析部とコード情報解析部との少なくとも一方からなるもので、画像データ解析部3での解析処理の結果、特に識別情報欄22についてのタイトル解析部によるタイトル解析またはコード情報解析部によるコード解析の少なくとも一方の結果を基にして、画像読み取り部1で得られた画像データの元となった教育用教材20を識別特定するものである。このとき、教材判別部4では、データベース部2が電子データを保持蓄積している教育用教材の原本と照らし合わせ、該当する電子データがデータベース部2に保持蓄積されていなければ、教育用教材20の識別特定エラーと判定するようになっている。すなわち、教材判別部4は、画像データ解析部3での解析結果から、画像読み取り部1で得られた画像データとの比較対象となる電子データを特定するものである。
【0023】
歪み補正部5は、画像読み取り部1で得られた画像データに対して、その画像データにおける画像歪みの補正を行うものである。画像歪みの補正としては、傾き補正や主走査方向または副走査方向の拡縮補正等が挙げられるが、いずれも公知の画像処理技術を利用して実現すればよいため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0024】
限定色化部6は、画像データに対する限定色化を行うものである。「限定色化」とは、画像データにおける色種類を限定することをいう。具体的には、似た色を同一の色とするデータ処理を行って、画像データを構成する各画素の色成分が白、黒または赤といった限定色のいずれかになるようにしたり、あるいは限定色以外の画素を取り除いたりすることが考えられる。なお、限定色化によって限定される色種類は、N色(Nは二以上の自然数)であれば、白、黒または赤といった三色に限られることはない。
また、限定色化部6では、画像読み取り部1で得られた画像データと、データベース部2が保持蓄積している電子データ中における画像データとのそれぞれについて、限定色化を行い得るようになっている。
なお、画像読み取り部1で得られた画像データと、データベース部2が保持蓄積している電子データ中における画像データとのそれぞれについて、限定色化を行う場合には、画像読み取り部1で得られた画像データを限定色化する際に使用あるいは/かつ算出される情報に基づいて、データベース部2が保持蓄積している電子データ中における画像データの限定色化を行うことが考えられる。ここで、「限定色化する際に使用あるいは/かつ算出される情報」とは、例えば、限定色化の色数や色種類等が挙げられる。
逆に、データベース部2が保持蓄積している電子データ中における画像データを限定色化する際に使用あるいは/かつ算出される情報に基づいて、画像読み取り部1で得られた画像データの限定色化を行ってもよい。
また、データベース部2が保持蓄積している電子データ中における画像データは、予め限定色化されているものであってもよい。
【0025】
差分抽出部7は、画像読み取り部1で得られた画像データと、その比較対象となるデータベース部2内の電子データ中における画像データとを比較して、それぞれの間の差分を抽出するものである。比較対象となるデータベース部2内の電子データは、教材判別部4での教育用教材の識別特定の結果に基づいて特定されるものとする。また、比較処理される画像データは、限定色化部6による限定色化を経た後のものである。なお、差分抽出処理の手法自体については、公知の画像処理技術を利用して実現すればよいため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0026】
解答者抽出部8は、出席番号情報切り出し部と手書きOCR(Optical Character Reader)部との少なくとも一方、好ましくは両方からなるもので、画像データ解析部3での解析処理の結果を基にしつつ、差分抽出部7に抽出された差分のうち、解答者情報欄23についての差分に対し、その差分からの出席番号情報切り出し部による文字情報抽出や手書きOCR部による文字認識処理等を通じて、画像読み取り部1で読み取り対象となった教育用教材20における解答者情報を抽出するものである。解答者情報としては、解答記入者の学級、出席番号、氏名等といった、解答記入者を識別するための情報が挙げられる。
【0027】
正誤判定抽出部9は、画像データ解析部3での解析処理の結果を基にしつつ、差分抽出部7に抽出された差分から、さらに正誤判定(具体的には、例えば「○」または「×」の図形)の記入内容を抽出するものである。正誤判定の記入内容の抽出は、例えば差分抽出部7での抽出結果に対する色成分認識処理を通じて、所定色成分についてのものを抽出することによって行えばよい。一般に、正誤判定の記入は、赤色で行われるからである。
【0028】
途切れ補正部10は、正誤判定抽出部9での抽出結果に対して途切れ補正処理を行うものである。途切れ補正処理とは、抽出された線分同士を接続して、その抽出線分間の途切れを解消するための処理である。すなわち、途切れ補正部10は、本発明における途切れ補正手段として機能するものである。
【0029】
図形形状認識部11は、正誤判定抽出部9で抽出され、途切れ補正部10で途切れ補正がされた正誤判定の記入内容に対して、その形状認識を行って、その正誤判定の記入内容を認識するものである。形状認識は、例えば「○」または「×」の図形形状とのパターンマッチングによって行えばよい。すなわち、図形形状認識部11は、正誤判定の記入内容が「正解(○)」または「不正解(×)」であるかを認識するものである。
【0030】
記入位置認識部12は、図形形状認識部11に形状が認識された正誤判定の記入内容について、その教育用教材上における記入位置を認識するものである。記入位置の認識は、例えば教育用教材上における座標解析によって行えばよい。
【0031】
採点集計部13は、図形形状認識部11による正誤判定の記入内容の認識結果と、記入位置認識部12による正誤判定の記入位置の認識結果と、データベース部2が保持蓄積している教育用教材20の電子データに含まれる当該教育用教材20の各解答欄21についての配点情報とを基にして、これらを互いに対応付けながら、画像読み取り部1が画像読み取りを行った教育用教材20について、その教育用教材20に記入された正誤判定を採点集計して、当該教育用教材20における得点を算出するものである。
【0032】
集計結果出力部14は、採点集計部13による採点集計の結果を、解答者抽出部8が抽出した解答者情報と関連付けて出力するものである。なお、集計結果出力部14による出力先としては、教材処理装置と接続するデータベース装置31またはファイルサーバ装置32で、教育用教材についての採点集計結果を管理するものが挙げられる。
【0033】
なお、以上に説明した各部1〜14のうち、画像読み取り部1については、画像読取装置としての機能を有した複写機、複合機またはスキャナ装置を利用して実現することが考えられる。その場合に、ADFが付設されていると、複数の教育用教材に対する画像読み取りを連続的に行うことができる。
また、画像読み取り部1を除く他の各部2〜14については、例えばPCのように、所定プログラムを実行することによって情報記憶処理機能、画像処理機能、演算処理機能等を実現するコンピュータ機器を利用して実現することが考えられる。その場合に、各部2〜14の実現に必要となる所定プログラムは、予めPC内にインストールしておくことが考えられるが、予めインストールされているのではなく、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納されて提供されるものであっても、または有線若しくは無線による通信手段を介して配信されるものであってもよい。つまり、上述した構成の教材処理装置は、画像読取装置と接続するコンピュータを教材処理装置として機能させる教材処理プログラムによっても実現可能である。
【0034】
〔教材処理装置の特徴的な機能構成例の説明〕
次に、以上のようなシステム構成によって実現される教材処理装置(教材処理プログラムによって実現される場合を含む)の特徴的な機能構成について、さらに詳しく説明する。
【0035】
図3は、本発明に係る教材処理装置の機能構成例を示すブロック図である。図例のように、教材処理装置は、入力手段41と、原本画像・配点情報記憶手段42と、原本画像探索手段43と、限定色化手段44と、N色化手段45と、追記抽出手段46と、正誤判定手段47と、得点算出手段48と、得点記憶手段49としての機能を備えて構成されている。
【0036】
入力手段41は、画像読み取り部1によって実現される機能で、解答欄21への解答の記入および当該解答に対する正誤判定の記入がされた教育用教材20に対する画像読み取りを行って、その教育用教材20から画像データを得るためのものである。
【0037】
原本画像・配点情報記憶手段42は、データベース部2によって実現される機能で、教育用教材20の原本についての電子データを保持蓄積するためのものである。
【0038】
原本画像探索手段43は、画像データ解析部3および教材判別部4によって実現される機能で、画像読み取り部1で得られた画像データとの比較対象となる電子データを特定し、その特定した電子データを原本画像・配点情報記憶手段42内から探索するものである。
【0039】
限定色化手段44は、限定色化部6によって実現される機能で、画像読み取り部1で得られた画像データに対する限定色化を行うためのものである。具体的には、似た色を同一の色とするデータ処理を行って、画像データを構成する各画素の色成分が、例えば白、黒または赤といった限定色のいずれかになるようにする。このような限定色化を行えば、入力手段41での各教育用教材20に対する画像読み取りにバラツキが生じていても、そのバラツキの解消を図ることができる。ただし、限定色化は、例えば限定色以外の色成分の画素を取り除くといったように、他の手法により行うものであってもよい。
【0040】
N色化手段45は、限定色化部6によって実現される機能で、原本画像探索手段43によって探索された電子データ中における画像データに対して限定色化を行うためのものである。このN色化手段45では、限定色化手段44とは異なり、例えば限定色化手段44が白、黒または赤といった色への限定色化を行うものであれば、その限定色の数より一つ少ない白または黒といった色への限定色化(二値化)を行うようになっている。すなわち、N色化のNは二以上の自然数である。このように、N色化手段45での限定色化の色数が限定色化手段44での限定色化の色数よりも少ないのは、限定色化手段44が教育用教材20からの画像読み取りで得られた画像データを処理対象とする一方で、N色化手段45は原本画像・配点情報記憶手段42内に保持蓄積されている画像データ、すなわち教育用教材20の原本の画像データを処理対象とすることによる。つまり、正誤判定の記入色が考慮不要であることから、N色化手段45のほうが限定色化手段44よりも限定色化の色数が一つ少ないのである。なお、限定色化の手法は、限定色化手段44と同一でよい。
【0041】
追記抽出手段46は、差分抽出部7、解答者抽出部8、正誤判定抽出部9および途切れ補正部10によって実現される機能で、限定色化手段44による限定色化後の画像データと、N色化手段45による限定色化後の画像データとを比較し、その比較結果から教育用教材20上における追記内容、具体的には正誤判定の記入内容および解答者情報を抽出するためのものである。
【0042】
正誤判定手段47は、図形形状認識部11および記入位置認識部12によって実現される機能で、教育用教材20上における正誤判定の記入内容が「正解(○)」または「不正解(×)」であるかを認識するとともに、その正誤判定の教育用教材上における記入位置を認識するためのものである。
【0043】
得点算出手段48は、採点集計部13によって実現される機能で、正誤判定手段47による正誤判定の認識結果と、原本画像・配点情報記憶手段42に記憶されている配点情報とを互いに対応付けて、教育用教材20上に記入された正誤判定を採点集計して、当該教育用教材20における得点を算出するためのものである。
【0044】
得点記憶手段49は、集計結果出力部14によって実現される機能で、教育用教材20上における得点の算出結果を、その教育用教材20から抽出した解答者情報と関連付けて出力して、データベース装置31またはファイルサーバ装置32に記憶管理させるためのものである。
【0045】
〔処理動作例の概要の説明〕
次に、以上のように構成された教材処理装置(教材処理プログラムによっても実現される場合を含む)における処理動作例、すなわち本発明に係る教材処理方法の手順について説明する。図4は、本発明に係る教材処理装置における基本的な処理動作例の概要を示す説明図である。
【0046】
教材処理装置を利用する場合には、先ず、生徒等によって解答者情報欄23への氏名等の記入および解答欄21への解答記入がされ、さらに教師等によって各解答欄21に記入された解答に対する「○」や「×」等の正誤判定の図形記入がされた教育用教材20とについて、画像読み取り部1が画像読み取りを行って、それぞれから画像データを得る(ステップ101、以下ステップを「S」と略す)。
【0047】
このとき、ADFを用いることで、例えば同一学級のような一つのグループに纏めて処理すべき複数の教育用教材20について、一括して画像読み取りを行って、それぞれから連続的に画像データを得ることができる。すなわち、複数の教育用教材20に対して、連続的に画像読み取りを行うことができる。
なお、画像読み取りによって得られた画像データについては、一旦ワークエリアとして用いられるメモリ等に保持しておく。
【0048】
その後は、各教育用教材20から得られたそれぞれの画像データに対して、順次、詳細を後述する自動採点処理が行われる(S102)。
【0049】
そして、自動採点処理を経て、各教育用教材20についての得点が算出されると、その算出結果が解答者情報と関連付けられて、教材処理装置と接続するデータベース装置31またはファイルサーバ装置32に出力され、そのデータベース装置31またはファイルサーバ装置32にて記憶保持される(S103)。これにより、データベース装置31またはファイルサーバ装置32では、教育用教材20についての採点集計結果を、例えば一覧形式で、管理または利用することが可能となるのである。
【0050】
続いて、以上のような処理動作例における自動採点処理について、さらに詳細に説明する。
【0051】
〔自動採点処理の説明〕
自動採点処理は、以下のような手順で行われる。すなわち、自動採点処理にあたっては、ある一つの教育用教材20から得られた画像データについて、画像データ解析部3がその解析処理を行い、その解析処理の結果に基づいて教材判別部4が教育用教材20の識別特定を行う。この識別特定は、例えば「理科」「5年」「1.天気と気温の変化」といったタイトル解析または識別情報欄22に埋め込まれたコード情報についてのコード解析を通じて行えばよい。この識別特定を経ることで、教材判別部4では、画像読み取り部1で得られた画像データとの比較対象となる原本についての電子データを特定し、その電子データをデータベース部2に保持蓄積されている中から探索することが可能となる。
つまり、入力手段41としての機能が一つの教育用教材20から得た画像データについて、原本探索手段43としての機能がその比較対象となる電子データを識別特定し、その識別特定した電子データを原本画像・配点情報記憶手段42内から探索するのである。
なお、この識別特定は、画像読み取り部1が画像読み取りを行った複数の教育用教材20のそれぞれについて順次行うことも考えられるが、一般に一つのグループに纏めて処理される教育用教材20は全て同一のものであるため、その纏めて処理される中で最初に処理される教育用教材20についてのみ行えばよい。また、原本についての電子データの探索については、公知技術を利用して実現すればよいため、ここではその詳細な説明を省略する。
そして、教材判別部4が電子データを特定すると、データベース部2は、その特定結果に従いつつ、保持蓄積している中から該当する電子データを取り出して、これを限定色化部6へ受け渡す。
【0052】
その一方で、ある一つの教育用教材20から得られた画像データについては、歪み補正部5がその画像データにおける画像歪みの補正を行う。この画像歪みの補正は、スキャナ部20での画像読み取りの際に生じ得る画像歪みを補正するために行うものであり、その後に行う電子データとの比較や差分抽出等の精度向上を図るためのものである。
【0053】
そして、限定色化部6は、データベース部2から受け渡された電子データと、画像読み取り部1で得られ、歪み補正部5で画像歪みが補正された後の画像データとについて、それぞれに対する限定色化を行う。
つまり、限定色化手段44としての機能が教育用教材20からの画像読み取りで得られた画像データについて限定色化を行う一方、N色化手段45としての機能が教育用教材20の原本についての画像データに対する限定色化を行うのである。
【0054】
限定色化部6での限定色化の後は、続いて、差分抽出部7が、教育用教材20から得られた画像データと当該教育用教材20の原本についての画像データで、それぞれ限定色化後のものを、互いに比較して、その差分を抽出する。具体的には、教育用教材20から得られた画像データについて限定色化の結果、すなわち限定色化手段44による限定色化の結果から、教育用教材20の原本についての画像データに対する限定色化限定色化の結果、すなわちN色化手段45による限定色化の結果を減算することで、差分抽出を行うことが考えられる。この差分抽出によって、解答者情報欄23および各解答欄21への記入内容並びに各解答欄21に対する正誤判定の記入内容が抽出されることになる。
【0055】
差分抽出部7が差分を抽出すると、その後は、解答者抽出部8が、その差分に対する文字認識処理等を通じて、画像読み取り部1で読み取り対象となった教育用教材の解答記入者についての解答者情報を特定する。これにより、画像読み取り部1で画像読み取りが行われた各教育用教材20について、解答を記入した解答記入者の学級、出席番号、氏名等を特定することが可能となる。
【0056】
また、差分抽出部7による差分抽出結果に対しては、各解答欄21への正誤判定の記入内容を抽出するために、その差分抽出結果から正誤判定抽出部9がさらに所定色成分についてのもの、具体的には例えば赤色成分のものを抽出する。所定色成分の抽出は、例えば差分抽出結果が画素データからなる場合であれば、その画素データを構成する色成分データに着目することで行うことができる。
【0057】
ただし、一般に、教育用教材20上での「○」や「×」等の正誤判定の図形記入は、問題文、各解答欄21を特定する枠、各解答欄21への解答記入内容等に重ねて行われることが多い。そのため、正誤判定抽出部9による所定色成分の抽出結果は、その重なり部分が除かれたもの、すなわち「○」や「×」等の図形に途切れ部分が生じたものとなるおそれがある。このことから、正誤判定抽出部9による所定色成分の抽出結果に対しては、途切れ補正部10が途切れ補正処理を行う。
【0058】
ここで、途切れ補正部10による途切れ補正処理について詳しく説明する。
【0059】
図5は、途切れ補正処理の一例を示す説明図である。
途切れ補正処理にあたっては、図5(a)に示すように、正誤判定抽出部9による所定色成分の抽出結果、すなわち「○」や「×」等の図形であるはずの抽出結果に対して、細線化処理を実行し(S201)、さらに端点抽出処理を実行する(S202)。これにより、「○」や「×」等の図形に途切れ部分が生じている場合に、その途切れ部分における端点が抽出されることになる。なお、このときに行う細線化処理および端点抽出処理は、公知技術を利用して行えばよいため、ここではその詳細な説明を省略する。
そして、端点を抽出したら、その抽出した全ての端点に対して、以下のような処理を実行する(S203)。すなわち、先ず、未処理の端点を一つ選択し(S204)、その選択した端点(以下「第一端点」という)から、予め設定されている所定距離内にあって、かつ、最も近傍にある未処理の端点(以下「第二端点」という)をさらに選択する(S205)。そして、第二端点があれば(S206)、第一端点と第二端点とを互いに接続するとともに(S207)、第一端点および第二端点をいずれも処理済みにする(S208)。一方、第二端点が存在しない場合には(S206)、端点間の接続は行わずに、第一端点を処理済みにする(S209)。このような処理を、未処理の端点がなくなるまで、全ての端点に対して行う(S203〜S209)。
これにより、例えば図5(b)に示す図形が抽出された場合には、端点Aに対して、所定距離内に端点B,Cが存在していても、その中で最も近傍の端点Bが端点Aと接続されることとなり、「○」の図形における途切れ部分が補正されることになる。
【0060】
図6は、途切れ補正処理の他の例を示す説明図である。
途切れ補正処理の他の例では、正誤判定抽出部9による所定色成分の抽出結果の他に、歪み補正部5による画像歪み補正後の画像データをも用いて、途切れ補正処理の精度向上を図っている。すなわち、途切れ補正処理の他の例では、図6(a)に示すように、歪み補正部5による画像歪み補正後の画像データに対して二値化処理を行う(S301)。ただし、差分抽出部7による差分抽出または正誤判定抽出部9による所定色成分の抽出の際に二値化処理をしていれば、その二値化処理後の画像データを使用しても構わない。
また、正誤判定抽出部9による所定色成分の抽出結果に対しては、細線化処理を実行し(S302)、さらに端点抽出処理を実行する(S303)。そして、端点を抽出したら、その抽出した全ての端点に対して、以下のような処理を実行する(S304)。
先ず、未処理の端点を一つ選択し(S305)、その選択した第一端点から、予め設定されている所定距離内にあって、かつ、最も近傍にある未処理の端点を第二端点として選択する(S306)。そして、第二端点があれば(S307)、第一端点と第二端点とを連結するような画素群が、二値化処理後の画像データ中にあるか否かを判断する(S308)。つまり、途切れの発生要因となった画像の重なり部分があるか否かを判断するのである。その結果、重なり部分があれば、第一端点と第二端点とを互いに接続するとともに(S309)、第一端点および第二端点をいずれも処理済みにする(S310)。一方、重なり部分がなければ、上述したステップ(S306)に戻り、第一端点から所定距離内にあって、かつ、最も近傍の端点の次に近距離にある端点を第二端点として選択する。このとき、選択すべき端点がなければ、端点間の接続は行わずに、第一端点を処理済みにする(S311)。このような処理を、未処理の端点がなくなるまで、全ての端点に対して行う(S304〜S311)。
これにより、例えば図6(b)に示す図形が抽出された場合に、端点Aに対して、所定距離内に端点B,Cが存在していると、その中で最も近傍の端点Cが選択されるが、二値化処理後の画像データ中に端点A,C間を連結する画素群がないので、端点A,C間は接続しない。そして、端点Cの次に距離の近い端点Bを選択されるが、その端点Bと端点Aとの間には二値化処理後の画像データ中に画素群が存在するので、端点Bが端点Aと接続されることになる。つまり、「○」と「×」とが誤って接続されてしまうことなく、「○」の図形における途切れ部分が補正されるのである。
【0061】
以上のような解答者情報の抽出、並びに、所定色成分抽出および途切れ補正を経ることで、教育用教材20上における追記内容が抽出されることになる。
つまり、追記抽出手段46としての機能が、各教育用教材20について得られた画像データを基に、その教育用教材20上における追記内容、具体的には正誤判定の記入内容および解答者情報を抽出するのである。
【0062】
その後は、教育用教材20上における追記内容の抽出結果のうち、特に正誤判定の記入内容の抽出結果に対して、図形形状認識部11がその記入内容に対する形状認識、すなわち「○」または「×」の図形形状とのパターンマッチングを行って、その正誤判定の記入内容が「正解」であるか、あるいは「不正解」であるかを認識する。このときに行うパターンマッチングは、公知技術を利用して実現すればよいため、ここではその説明を省略する。
あるいは、認識対象図形の特徴量を算出し、その特徴量から形状を認識してもよい。特徴量としては、例えば、穴の個数、外接矩形に占める対象図形の面積率、など公知のものを使用すればよく、ここではその説明を省略する。
【0063】
そして、図形形状認識部11が正誤判定の記入内容に対する形状認識を行うと、続いて、記入位置認識部12は、正誤判定の記入内容について、その教育用教材20上における記入位置を認識する。なお、図形形状認識部11による形状認識の際には、「○」または「×」の図形を構成する連続画素群を一つに纏めて取り扱うために、その連続画素群に対して識別子を付与すべく、一般的な画像処理技術であるラベリング処理が行われている。このことから、記入位置認識部12による位置認識の際にも、そのラベリング処理の結果を利用して、「○」または「×」の図形を構成する連続画素群を一つの纏まりとして取り扱う。
【0064】
ここで、記入位置認識部12による正誤判定記入位置の認識処理について詳しく説明する。図7は、正誤判定記入位置の認識処理手順の一例を示すフローチャートである。
正誤判定記入位置の認識処理にあたっては、教育用教材20上に複数の正誤判定が記入されていることから、先ず、その正誤判定についてのカウント数Kを「1」に設定する(S401)。これにより、カウント数Kが教育用教材20上に存在し得る正誤判定の数、すなわち解答欄21の数を超えるまでは(S402)、予め定められた走査順で検出される正誤判定(「○」または「×」の図形)について、一つ目から順にその位置が認識されることとなる。
位置認識は、例えば「○」または「×」の図形の外接矩形情報を算出し(S403)、さらにその外接矩形の中心座標を算出することによって行うことが考えられる(S404)。具体的には、認識対象となる図形(連続画素群)に対して外接矩形を抽出するとともに、その外接矩形の所定点(例えば左上頂点)のxy座標、並びに、その外接矩形の幅(w)および高さ(h)を算出する。そして、これらの算出結果から、中心x座標=x+w/2、中心y座標=y+h/2を算出し、その算出結果を連続画素群の位置、すなわち正誤判定記入位置の認識結果とする。
このような処理を、カウント数Kの値をインクリメントしつつ(S405)、教育用教材20上に存在する全ての正誤判定について認識するまで繰り返して行う(S402〜S405)。
【0065】
このようにして、図形形状認識部11および記入位置認識部12は、教育用教材20上における正誤判定の記入内容が「正解(○)」または「不正解(×)」であるかを認識するとともに、その正誤判定の教育用教材20上における記入位置を認識する。
つまり、正誤判定手段47としての機能が、教育用教材20上における正誤判定の追記内容の抽出および認識を行うのである。
【0066】
正誤判定の追記内容の認識後は、データベース部2に記憶されている配点情報を利用しつつ、採点集計部13が正誤判定の採点集計を行う。
正誤判定の採点集計にあたっては、教育用教材20上に複数の正誤判定が記入されていることから、先ず、その正誤判定についてのカウント数Kを「1」に設定する。これにより、カウント数Kが教育用教材20上に存在し得る正誤判定の数、すなわち解答欄21の数を超えるまでは、予め定められた走査順で検出される正誤判定(「○」または「×」の図形)について、一つ目から順に採点集計のための処理が行われることになる。
すなわち、K番目の正誤判定図形について、その図形が「○」であるか、あるいは「×」であるかを判定する。その結果、「○」であれば、後述する「問題別採点結果」において、K番目の正誤判定に対する配点を加算する。また、「×」であれば、K番目の正誤判定に対する配点加算を行わずに、「0点」とする。
そして、このような処理を、カウント数Kの値をインクリメントしつつ、教育用教材20上における全ての正誤判定について終了するまで繰り返して行う。
【0067】
ただし、以上のような採点集計を行うためには、正誤判定と配点との対応付けが必要である。教育用教材20上には複数の解答欄21が存在し、また各解答欄21の配点24も一律であるとは限らないからである。つまり、データベース部2に記憶されている解答欄21の教育用教材20上における位置と、自動採点処理で認識した正誤判定記入位置とを、互いに対応付ける必要がある。
【0068】
このことから、採点集計部13では、以下に述べるような手順で、正誤判定の採点集計を行う。すなわち、採点集計部13は、「○」または「×」といった正誤判定図形の外接矩形と、配点情報に基づき教育用教材20上で解答欄21であるとされた領域との重なり面積を求め、その面積(外接矩形に対する面積比でも同様)が最も大きくなる正誤判定図形と解答欄21とを互いに対応付け、その正誤判定図形を当該解答欄21対して記入された正誤判定結果とする。ただし、重なり面積の外接矩形に対する比が所定閾値未満の場合には、重なる部分が小さいことから、対応付けについての判定が不能であると判断する。そして、対応付けを行った後は、正誤判定図形が「○」であれば、これに対応する解答欄21についての配点情報から特定される配点を加算し、また正誤判定図形が「×」であれば、これに対応する解答欄21についての配点加算を行わない。このような処理を、教育用教材20上の全ての正誤判定および解答欄21について行えば、得点算出手段48は、採点集計部13によって実現される機能で、正誤判定手段47による正誤判定記入位置の認識結果と配点情報による解答欄21の位置の認識結果とを互いに対応付けつつ、教育用教材20上に記入された正誤判定を採点集計して、当該教育用教材20における得点を算出することができる。
つまり、得点算出手段48としての機能が、教育用教材20上に記入された正誤判定を採点集計して、当該教育用教材20における得点を算出するのである。
あるいは、他の例として、記入位置認識部12によって算出された「○」または「×」といった正誤判定図形の中心座標と、その座標が含まれる解答欄21とを互いに対応付け、その正誤判定図形を当該解答欄21対して記入された正誤判定結果とする。
【0069】
以上のような処理を経ることで、採点集計部13からは、教育用教材20上に記入された正誤判定の採点集計の結果が、問題別採点結果として出力されるのである。図8は、問題別採点結果の一具体例を示す説明図である。問題別採点結果は、教育用教材20上に存在する問題の番号と、その問題の解答に対する正誤判定と、その正誤判定に基づく得点とからなる情報で、図例のように、これらを互いに関連付けるテーブル形式で、採点集計部13から出力されるものである。
【0070】
採点集計部13から問題別採点結果が出力されると、その後は、集計結果出力部14が、その問題別採点結果、すなわち採点集計部13による採点集計の結果を、解答者抽出部8が抽出した解答者情報と関連付けて、教材処理装置と接続するデータベース装置31またはファイルサーバ装置32に対して出力する。これにより、データベース装置31またはファイルサーバ装置32では、教育用教材20についての採点集計結果を、例えば一覧形式で、管理または利用することが可能となる。
【0071】
以上に説明したように、本実施形態における教材処理装置、教材処理方法および教材処理プログラムでは、教育用教材20から読み取った画像データを基にして、正誤判定の記入内容(例えば、「○」または「×」の図形形状)を認識し、その認識結果に基づき教育用教材20に記入された正誤判定の採点集計を行うようになっている。したがって、正誤判定が記入された教育用教材20に対する画像読み取りを行えば、その記入された正誤判定について、採点結果の自動集計が行われるので、結果として教育用教材20についての採点処理が省力化されることとなる。さらには、教育用教材20から読み取った画像データを基にするため、例えば、複写機、複合機またはスキャナ装置によって実現されるスキャン機能と、PC等のコンピュータ機器が有する情報記憶処理機能、画像処理機能および演算処理機能とがあれば、装置構成を実現することができ、専用の構成機器を必要とすることもない。
【0072】
しかも、本実施形態における教材処理装置、教材処理方法および教材処理プログラムでは、正誤判定の採点集計を行うのにあたり、画像データに対し当該画像データにおける色種類を限定する限定色化を経るようになっている。したがって、例えば教育用教材20上に多く色種類が存在する場合であっても、画像読み取り部1での各教育用教材20に対する画像読み取りのバラツキによる悪影響を解消でき、また色種類の削減を通じて原本との差分抽出の際の処理負荷軽減や処理精度向上等を実現でき、結果として教育用教材20上に所定色で記入された正誤判定の記入内容を、忠実に抽出して精度良く判定することができ、その抽出判定のための処理負荷も軽減することができる。
【0073】
つまり、本実施形態における教材処理装置、教材処理方法および教材処理プログラムによれば、教育機関で用いられる教育用教材20について、正誤判定の記入内容についての自動採点集計を行い、これにより採点処理の省力化を実現することができる。しかも、正誤判定の記入内容に基づいて自動採点集計を行う場合であっても、教育用教材から得た画像データの限定色化を経ることで、その正誤判定の記入内容を精度良く抽出判定することができ、自動採点集計の信頼性向上が図れるようになる。したがって、教育機関で用いるのにあたり非常に利便性の高いものとなり、信頼性の高い採点処理を円滑に行えるようになる。
【0074】
また、本実施形態で説明したように、正誤判定の記入内容の抽出を、原本の画像データとの差分抽出結果に基づいて行うようにすれば、原本の画像部分、すなわち各教育用教材20に共通の画像部分は除かれて、解答記入者(生徒)の手書き文字等や教師等による正誤判定の記入内容のように、各教育用教材20によって異なる画像部分について抽出されることになるので、結果として精度および信頼性の高い正誤判定の認識処理実現することが可能となる。さらには、データベース部1に各種教育用教材20の原本についての電子データを保持蓄積しておけばよいので、対応可能な教育用教材についての汎用性を十分に確保し得るようにもなる。
【0075】
なお、本実施形態では、本発明の好適な実施具体例を説明したが、本発明はその内容に限定されるものではない。
例えば、本実施形態では、自動採点処理における正誤判定の記入内容の抽出認識にあたり、教育用教材20から読み取った画像データを、データベース部2が保持する電子データ(原本についての画像データ)と比較する場合を例に挙げている。これは、原本についての画像データと比較すれば、その差分抽出の精度を高く維持できることが期待でき、さらにはデータベース部2に各種教育用教材20についての電子データを保持蓄積しておけば、対応可能な教育用教材20についての汎用性を十分に確保し得るからである。
しかしながら、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、以下に述べるような機能構成によっても、自動採点処理を行うことは可能である。
【0076】
〔他の特徴的な機能構成例の説明〕
図9は、本発明に係る教材処理装置の他の機能構成例を示すブロック図である。図例のように、ここで例に挙げる機能構成は、上述した原本画像・配点情報記憶手段42、原本画像探索手段43、N色化手段45および追記抽出手段46に代わり、所定色抽出手段50と、画素群分割手段51とを備えている点で、図3に示した機能構成例と相違する。
【0077】
所定色抽出手段50は、正誤判定の記入内容を抽出すべく、教育用教材20からの画像読み取りで得られた画像データで、限定色化手段44による限定色化後のものから、所定色成分の画素の抽出を行うものである。所定色成分としては、具体的には赤色成が挙げられる。一般に、正誤判定の記入は、赤色で行われるからである。
【0078】
画素群分割手段51は、所定色抽出手段50による抽出結果に対し、互いに関連する画素同士(例えば近接位置にあるもの同士)を一つの画素群として纏めて、当該抽出結果を複数の画素群に分割し、これにより一つの図形形状(「○」または「×」)を構成するであろう画素群を得るものである。
【0079】
以上のような機能構成では、原本画像・配点情報記憶手段42および原本画像探索手段43を備えていないことから、原本についての画像データとの差分ではなく、所定色成分(例えば赤色成分)について着目することで、正誤判定の抽出を行う。そして、その際に、教育用教材20から読み取った画像データに対する限定色化を行って、処理態様となる画像データの色種類を削減する。
したがって、かかる機能構成の場合においても、図3の機能構成の場合と同様に、教育用教材20上に所定色で記入された正誤判定の記入内容を、忠実に抽出して精度良く判定し、その結果を用いて自動採点処理を行うことが可能となり、またその抽出判定のための処理負荷を軽減することもできる。
【0080】
しかも、かかる機能構成では、図3の機能構成の場合とは異なり、原本についての画像データを必要としないので、当該画像データが記憶蓄積されていない教育用教材20についても、処理対象とすることができる。そのため、原本の電子データの記憶蓄積が不要となることから、装置構成の簡素化が期待できる。
ただし、原本の電子データを用いない場合には、その電子データに含まれる配点情報も利用し得ないことから、各解答欄21で配点が異なる場合には対応が困難となるが、各解答欄21で配点が一律であれば、全く問題なく自動採点処理を行うことが可能である。
【0081】
なお、ここでは、所定色成分、具体的には例えば赤色成分の差分抽出結果を、正誤判定の記入内容として認識する場合を例に挙げている。これは、一般に、正誤判定の記入が赤色で行われることを考慮したものであり、所定色成分についての差分を正誤判定の記入内容とすることで、その認識処理の容易化を図るとともに、その認識精度に対する信頼性の向上を図るためである。ただし、正誤判定の記入内容抽出は、必ずしも所定色成分、特に赤色成分についてのものに限定されず、他の公知の手法を利用して行っても構わない。
【0082】
また、図3の機能構成または図9の機能構成の相違に関わりなく、本実施形態で説明した歪み補正処理や途切れ補正処理等は、認識精度向上のために行うものであるが、必ずしも必須ではない。
さらには、正誤判定の採点集計にあたって、各解答欄と正誤判定の記入位置とを対応付ける場合に、本実施形態で説明したような正誤判定図形の外接矩形と解答欄の領域との重なり面積を求めるのではなく、例えばそれぞれの中心座標の距離から対応付けを行ったり、あるいは単にそれぞれの間で重なる部分があるか否かによって対応付けを行うことも考えられる。
【0083】
このように、本発明は、本実施形態での説明に対し、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明に係る教材処理装置の具体的なシステム構成例を示すブロック図である。
【図2】教育用教材の一具体例を示す説明図である。
【図3】本発明に係る教材処理装置の機能構成例を示すブロック図である。
【図4】本発明に係る教材処理装置における基本的な処理動作例の概要を示す説明図である。
【図5】途切れ補正処理の一例を示す説明図である。
【図6】途切れ補正処理の他の例を示す説明図である。
【図7】正誤判定記入位置の認識処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図8】問題別採点結果の一具体例を示す説明図である。
【図9】本発明に係る教材処理装置の他の機能構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0085】
1…画像読み取り部、2…データベース部、3…画像データ解析部、4…教材判別部、5…歪み補正部、6…限定色化部、7…差分抽出部、8…解答者抽出部、9…正誤判定抽出部、10…途切れ補正部、11…図形形状認識部、12…記入位置認識部、13…採点集計部、14…集計結果出力部、20…教育用教材、21…解答欄、22…識別情報欄、23…解答者情報欄、31…データベース装置、32…ファイルサーバ装置、41…入力手段、42…原本画像・配点情報記憶手段、43…原本画像探索手段、44…限定色化手段、45…N色化手段、46…追記抽出手段、47…正誤判定手段、48…得点算出手段、49…得点記憶手段、50…所定色抽出手段、51…画素群分割手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
解答欄への解答の記入および当該解答に対する正誤判定の記入がされた教育用教材についての画像読み取りを行って当該教育用教材から画像データを得る画像入力手段と、
前記画像入力手段で得た画像データに対し当該画像データにおける色種類を限定する限定色化を行う限定色化手段と、
前記限定色化手段が限定色化を行った後の画像データから所定色成分についてのものを抽出し前記正誤判定の記入内容として認識する正誤判定認識手段と、
前記正誤判定認識手段による認識結果に基づき前記読み取り手段が画像読み取りを行った教育用教材について当該教育用教材に記入された正誤判定の採点集計を行う採点集計手段と
を備えることを特徴とする教材処理装置。
【請求項2】
前記教育用教材の原本についての電子データを記憶蓄積する原本画像記憶手段と、
前記限定色化手段が限定色化を行った後の画像データを前記原本画像記憶手段が記憶蓄積する電子データと比較して差分を抽出する差分抽出手段とを備えるとともに、
前記正誤判定認識手段は、前記差分抽出手段による差分抽出結果から前記所定色成分についてのものを抽出し前記正誤判定の記入内容として認識する
ことを特徴とする請求項1記載の教材処理装置。
【請求項3】
前記原本画像記憶手段が記憶蓄積する前記教育用教材の原本についての電子データは、当該電子データ中における画像データが予め限定色化されたものである
ことを特徴とする請求項2記載の教材処理装置。
【請求項4】
前記画像入力手段で得た画像データを限定色化する際に使用あるいは/かつ算出される情報に基づき、前記教育用教材の原本についての電子データ中における画像データの限定色化を行う
ことを特徴とする請求項2または3記載の教材処理装置。
【請求項5】
前記教育用教材の原本についての電子データ中における画像データを限定色化する際に使用あるいは/かつ算出される情報に基づき、前記画像入力手段で得た画像データの限定色化を行う ことを特徴とする請求項2または3記載の教材処理装置。
【請求項6】
解答欄への解答の記入および当該解答に対する正誤判定の記入がされた教育用教材についての画像読み取りを行って当該教育用教材から画像データを得る画像入力ステップと、
前記画像入力ステップで得た画像データに対し当該画像データにおける色種類を限定する限定色化を行う限定色化ステップと、
前記限定色化ステップにて限定色化を行った後の画像データから所定色成分についてのものを抽出し前記正誤判定の記入内容として認識する正誤判定認識ステップと、
前記正誤判定認識ステップでの認識結果に基づき前記読み取りステップにて画像読み取りを行った教育用教材について当該教育用教材に記入された正誤判定の採点集計を行う採点集計ステップと
を含むことを特徴とする教材処理方法。
【請求項7】
解答欄への解答の記入および当該解答に対する正誤判定の記入がされた教育用教材についての画像読み取りを行って当該教育用教材から画像データを得る画像読取装置と接続するコンピュータを、
前記画像読取装置で得た画像データに対し当該画像データにおける色種類を限定する限定色化を行う限定色化手段と、
前記限定色化手段が限定色化を行った後の画像データから所定色成分についてのものを抽出し前記正誤判定の記入内容として認識する正誤判定認識手段と、
前記正誤判定認識手段による認識結果に基づき前記画像読取装置が画像読み取りを行った教育用教材について当該教育用教材に記入された正誤判定の採点集計を行う採点集計手段
として機能させることを特徴とする教材処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−33727(P2007−33727A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−215244(P2005−215244)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】