説明

整復装置および衣類ならびにこれらを用いた整復方法

【課題】日常生活や運動時などに使用して理想的な姿勢に矯正してボディーバランスを作り上げる整復装置、それを利用した衣類および整復方法を提供する。
【解決手段】人体表面Aに当接する内部が中空の筐体2内に、転跳物3が設けられてなり、転跳物3は、人体の動きに応じて筐体2の中空部20内で転跳して筐体2を振動させるようになされ、筐体2は、当接した人体表面Aに相当する部位に、この振動による皮膚刺激を与えてこの部位の筋の神経伝達の促通を図ることができる大きさに形成されるとともに、粘着剤11を介して人体表面に直接当接するようになされた整復装置1。筐体2は、衣類Bの肌面側に設けるようになされ、衣類Bを着用した状態で人体表面に当接するようになされた整復装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日常生活や運動時などに使用することによって理想的な正しい姿勢に矯正することなどが可能な整復装置と、それを利用した衣類と身体の整復方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
そもそも人間の脳には、この世に誕生してから成長する過程で、まず、手足身体をどのように動かすかという基礎的な神経伝達回路が形成されていくが、その次の段階として、右利き左利きといった非対称的な不均等な動きに関する神経伝達回路も、すでに幼少期から形成され始める。これに加えて、人間は、地上にいる限り、重力を受けた状態で生活するため、上記したような左右不均等な利きの要素を持って重力を受けたまま成長することで、高いボディーバランスや左右前後・ねじれに対し均等な身体支持力を持った状態を保つということが難しくなっている。すなわち、人間は、普段あまり意識していない固有感覚というものによって身体各部位の相対位置を知覚しているが、この固有感覚自体は、上記したようなボディーバランスや身体支持力の不均等要素を持っているので、この固有感覚とともに発達する筋肉や骨格などは完全な均等ではなく、厳密には不均等である。
【0003】
これに相反し、日常生活においては、加齢とともに全身の筋力が低下するので、健康な生活を維持するためには、適度な運動を続けて筋力の低下を防止することと、高いボディーバランスを維持することが要求される。つまり、不均等な固有感覚に任せて生活し続けると、筋力が低下して来るにも関わらず、一部の筋肉や関節にかかる負担が大きくなるため、腰痛や関節痛などを生じることとなり、場合によっては寝たきり生活を余儀無くされる。
【0004】
また、筋力が低下していない若人においても、運動競技において優れたパフォーマンスを発揮するためには、より高いレベルに筋力を強化することと、高いボディーバランスや身体支持力を作り上げることが要求される。したがって、ある一定の強度や関節行動許容範囲を越えて運動を行ったり、固有感覚に任せて強度の高い運動をし続けると、一部の筋肉や関節に負担がかかり過ぎて怪我をしてしまうことがある。
【0005】
そこで、従来より、このようにボディーバランスを崩してしまった場合、有効に活動できていない筋肉に刺激を加えて筋の神経伝達の即通を図ることで、その有効に活動できていない筋肉の活動を活発化させ、これによってボディーバランスを整復するPNF(Proprioceptive Neuromuscular Facilitation)が行われている。この場合、筋肉への刺激は、整復を行う人間に対して、治療医またはトレーナーが、所望の筋肉の伸張性筋収縮運動(エキセントリック運動)を行わせたり、所望の筋肉の位置の皮膚表面を刷毛などで擦るといったことで行われていた。
【0006】
また、筋力の低下防止や、筋力向上を図る方法としては、歩いたり、走ったり、泳いだりといった各種の運動や、各競技種目毎に応じたトレーニングがあるが、それ以外にも電気的筋肉刺激(Electrical Muscle Stimulation)によるトレーニング装置が提案されている。このトレーニング装置は、人体の皮膚表面にパッドを当接し、このパッドに低周波電流を印加して人体に低周波電流を流し、これによって筋肉に短縮性運動を起こさせることで、筋力強化を図るようになされていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来のように、筋の神経伝達の即通を図ったとしても、整復後の正しい動きが、普段あまり意識していない固有感覚に任せた運動(錘体外路系)に定着するまでには、相当な時間(錘体路系の運動から反射活動である錘体外路系へと移行する時間)を要することとなる。したがって、この正しい動きが固有感覚に任せた運動に定着するまでの間は、長期に渡って筋の神経伝達の即通を図らなければならず、途中で整復を止めてしまうと、以前の不均等要素を持った固有感覚に任せた運動に戻ってしまい同じ怪我を繰り返すことになってしまう。
【0008】
また、不均等要素を持った固有感覚が強く定着しているような場合、整復当初は、筋の神経伝達の即通を図ったとしても、すぐに以前の不均等要素を持った固有感覚に任せた運動に戻り易くなり整復による持続時間が短くなるため、頻繁に筋の神経伝達の即通を図らなければならず、時間が空き過ぎると、以前の不均等要素を持った固有感覚に任せた運動に戻ってしまい同じ怪我を繰り返すことになってしまう。
【0009】
このように、一度ボディーバランスが崩れて怪我などをすると、治療当初は頻繁に整復を行い、完治するためには長期に渡って整復する必要があるが、その都度の通院が煩わしく、かつ、治療費も嵩むこととなる。
【0010】
一方、上記従来のトレーニング装置によって筋力強化を図る場合、電気刺激を基にしているため、人体内にペースメーカー等の治療器を埋め込んでいる人が使用すると、治療器が共鳴を起こして障害を発生することが懸念される。また、骨折時の骨へのプレート固定などで金属が挿入されている人が使用すると、発熱や電気火傷を起こす可能性がある。
【0011】
また、上記従来のトレーニング装置の場合、低周波電流を人体に流すため、ジェルを介して人体表面にパッドを貼り付ける必要があり、このパッドの貼り付けが不十分であると、皮膚表面に電気が流れて痛みを感じることとなる。また、ジェルを使用してパッドを貼り付けるので、この貼り付け作業が煩わしく、不快感があり、皮膚が弱い人の場合は、ジェルやパッド素材にかぶれてしまうこととなる。
【0012】
さらに、上記従来のトレーニング装置の場合、電気入力に対して筋肉が収縮するので、使用強度を誤ると、運動時における筋の収縮時に筋に対する引きつり感が大きく、筋断絶や軽い肉離れを起こす可能性がある。また、日常生活時や運動時に使用している場合、等尺性収縮運動(アイソメトリック運動)時では、筋に対する負荷が少なく障害を起こし難いが、短縮性筋収縮運動(コンセントリック運動)時においては、筋の収縮を伴うことに対してより過負荷となって筋の断絶や肉場馴れを生じ易い。また、伸張性筋収縮運動(エキセントリック運動)時においては、EMSの作用形態として現れる筋肉の短縮性運動を必ず伴うため、筋に対する負荷は最大値となり、より高い障害を起こす可能性がある。さらに、筋に対する拘束感が増大して可動性が減少し、運動のスムース性や効率性が失われることとなるため、日常生活時や運動時に使用していると、活動に支障を生じることとなる。
【0013】
さらに、上記従来のトレーニング装置の場合、パッドからの低周波電流が放散状に流れるため、所望の筋肉に対してのみピンポイント的に刺激を加えることができない。
【0014】
さらにまた、上記従来のトレーニング装置の場合、電気刺激による筋肉の短縮性運動は、筋力強化を図ることができるとされているが、走ったり泳いだりといったように、全身の多くの筋肉を動員し、それらの筋肉が重力の影響下で互いに関係して行われる能動的な運動では無く、パッドからの低周波電流が放散される極一部の範囲の筋肉によって行われる受動的な運動となる。したがって、ボディーバランスを維持する上で重要な重力の影響に関係無く、極一部の筋肉だけを強化してしまうこととなるので、より一層ボディーバランスを崩してしまうことが懸念される。
【0015】
本発明は、係る実情に鑑みてなされたものであって、日常生活や運動時などに使用することによって理想的な正しい姿勢に矯正して高いボディーバランスを作り上げることができる整復装置と、それを利用した衣類と、それらを利用した整復方法とを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するための本発明の整復装置は、人体表面に当接するようになされた内部が中空の筐体内に、転跳物が設けられてなり、転跳物は、人体の動きに応じて筐体の中空部内で転跳して筐体を振動させるように、筐体内に転跳空間を存して設けられ、筐体は、この振動を発生させるための転跳空間を中空部内に確保しつつ、当接した人体表面に相当する部位に、この振動による皮膚刺激を与えてこの部位の筋の神経伝達の促通を図ることができる大きさに形成されたものである。
【0017】
また、上記課題を解決するための本発明の衣類は、人体に直接着用して皮膚表面に当接するようになされた衣類であって、衣類の肌面側に、請求項2記載の整復装置が設けられたものである。また、着用状態で、着用者の各筋肉のモーターポイントに相当する位置に印が設けられ、これら印を目安にして、上記整復装置が設けられたものである。
【0018】
さらに、上記課題を解決するための本発明の整復方法は、身体の筋群の中から選択される少なくとも1つの筋の起始停止範囲内の皮膚表面に相当する位置に、上記の整復装置を設け、この整復装置を設けた筋の神経伝達を促通して所望の筋の筋意識を高めて身体を整えるものである。この整復方法には、人体表面に当接するようになされた筐体内に、3ヘルツ〜5メガヘルツの振動を与えるようになされた振動発生装置と、この振動発生装置に供給する電源と、この振動発生装置による振動発生を制御する制御装置とが具備され、筐体は、当接した人体表面に相当する部位に、振動発生装置からの振動による皮膚刺激を与えてこの部位の筋の神経伝達の促通を図ることができる大きさに形成された整復装置を用いることができる。
【0019】
[筋の神経伝達の促通]
ある筋肉の皮膚表面に相当する一部分を部分的に擦過すると、皮膚の浅部の神経刺激を起こすことになり、その内側の筋肉が刺激を受容し、緊張を起こし、かつ、ある筋肉の皮膚表面に相当する全体を面的に擦過すると、皮膚の浅部の神経刺激を起こすことになり、その内側の筋肉が刺激を受容し、筋緊張の緩和を起こすことは、ルード(Margaret Rood)によって証明されている。また、マーガレットルード等が提唱している(Stockmeyer SA:An Interpretation of the Approach of Rood to the Treatment of Neuromuscular Dysfunction,In Bouman HD(ed):An Exploratory and Analytical Survey of Therapeutic Exercise:Northwestern University Special Therapeutic Exercise Project.Baltimore,The Williams & Wilkins Co,1966,pp900−956)皮膚分節や筋分節に相当した機能的皮膚領域(functional skin area)や機能的皮膚領域が欠如している場合では促通したい筋肉の皮膚・筋腹上等に、軽擦や圧迫、バイブレーションや温寒熱刺激等を直接適用すると起こる”痛みの軽減”や”筋紡錘の感受性の増大”、”発汗の減少”等などの事象(Stockmeyer SA:Procedures for improvement of motor control,Unpublished notes from Boston University,PT710,1978)が起こる。また、これらを踏まえた上で、皮膚刺激を通して得られる効果である”筋肉の緊張や緊張緩和”、”血行の促進”や”反射の習得・強化”等を利用し、また、この皮膚刺激を使ったアプローチと組み合わせによって、所望の筋肉を刺激することで、身体の各部位の相対位置を知覚している固有感覚を変え、理想の運動姿勢へ導くことは理論上可能である。
【0020】
この場合の刺激は、皮膚の受容器が認識できる程度の刺激であれば良い。このような刺激の種類としては、温熱的刺激、機械的刺激、電気的刺激、化学的刺激などが挙げられる。知覚受容器としては、マイスネル小体、マーケル触盤、パチニ小体、ルフィニ終末、クラウゼ終棍、自由神経終末、などが挙げられる。
【0021】
所望の筋肉の神経伝達の促通を図る場合、この刺激の範囲としては、約4cm程度の面積の点刺激的な範囲であればよいが、神経伝達の促通を図ろうとする筋肉によって異なるため、それに応じて適宜決定される。刺激を加える位置としては、神経伝達の促通を図ろうとする筋肉の起始停止範囲内の皮膚表面の位置であれば、特に限定されるものではないが、その筋肉のモーターポイント近傍に相当する皮膚表面が最も好ましい。この刺激は、一箇所であってもよいし、二箇所以上の複数箇所であってもよい。
【0022】
皮膚表面に点状の刺激を加えると、最も簡単な反射弓である受容器、求心性ニューロン、遠心性ニューロン、効果器(この場合、筋肉)という興奮伝達が起こり、脊髄反射を利用した筋活動が起きる。この場合の反射活動は、伸張反射と、屈筋反射との二つに分類されるが、全身性の運動を見た場合、この反射活動だけでは、運動表現するには足りず、脳幹が加わる姿勢反射、小脳が関与する平衡反射などをも利用した反射活動が必要となる。多方向からの皮膚受容器の刺激とその多岐にわたる刺激方法とにより、身体の所望の部位に反射を形成して理想の運動姿勢を作り上げることができる。この運動姿勢で運動を繰り返し行わせることにより、錘体外路系の運動活動を強調化させ、無意識のうちに理想の姿勢反射、平衡反射を覚醒させ、無意識的に少ない努力で、正確に速い運動ができるような性質の活動(たくみな運動)を引き出すことができる。
【0023】
浅部の筋肉を緊張させたり緊張緩和させたりする場合、その筋肉と皮膚表面との間には、他の筋肉が介在していないので、所望の筋肉だけに刺激を加えることができる。しかし、深部の筋肉を緊張させたり緊張緩和させたりする場合、その筋肉と皮膚表面との間には、他の筋肉が介在する。が、例えば、皮膚の表面上に任意の刺激を与えた場合、受け得る刺激は、浅部の筋肉にのみ影響を与えるとされるが、浅層部の筋肉のみによって運動が表現されていることは無く、その深層部の筋肉との連動によって運動コントロールされている以上、皮膚表面からによる浅部の筋肉への刺激でも深部の筋肉を協調的に刺激することは可能である。
【0024】
ボディーバランスを崩す元凶となっている筋緊張の弱い多関節筋および単関節筋に点状の刺激を加えた場合、大半は、この点状の刺激による促通的コントロールが行われ、これら多関節筋および単関節筋の筋活動力が向上してボディーバランスが整復されることとなる。
【0025】
[整復装置]
筋肉に点状の刺激を与えて促通を図る場合、これらの刺激による作用力には、30秒間の潜伏期間があること、最も効果が大きくなるのは、刺激後30〜40分位まで行った場合であり、また、この刺激後30〜40分位は、最大効果を得るために必要とされる時間でもある(Rood M:The use of sensory receptors to active,facilitate,and inhibit motor response,autonomic and somatic,in developmental sequence.In Sattely C(ed):Approaches to the Treatment of Patients with Neuromuscular Dysfunction.DuBuque,IA ,WM C Brown,1962)としている為、持続的な刺激入力が必要となる。しかも、人間の反射的活動は、継続して起きる運動状態を16秒間以上継続して行わせなければ、習得には至らない(伊藤正男:ニューロンの生理学、岩波書店、東京、1976)。また、人間の皮膚等の感覚受容力は、これらの刺激にすぐに対応・適応してしまう。(Spicer SD,Matyas TA:Facilitation of the TVR by cutaneous stimulation.AMJ Phys Med 59:223−231,1980 Spicer SD,Matyas TA:Facilitation of the TVR by cutaneous stimulation in hemiplegics AMJ Phys Med 59:280−287,1981)したがって、整復装置は、目的とする筋肉の機能的皮膚領域、或は、筋腹上に適用すること(Rood M:The use of sensory receptors to activate,facilitate,and inhibitmotor response,autonomic and somatic,in developmental sequence.In Sattely C(ed):Approaches to the Treatment of Patients with Neuromuscular Dysfunction.DuBuque,IA,WMC Brown,1962)が必要であり、その上で、
1.刺激入力点が、目的とする筋肉の中で絶えず位置変化すること。
2.刺激入力方法が、絶えず変化すること。
3.刺激入力情報(刺激強度の変化等)が、絶えず変化すること。
4.刺激入力時間が、絶えず断続的に変化し続けること。
等の上記4項目のうち、最低1項目の刺激入力方法を満たしているものが好ましい。
【0026】
また、整復装置は、目的とする筋肉の機能的皮膚領域、或は、筋腹上に適用して、その筋肉に対して点状の刺激入力を行い、かつ、その状態で運動や日常生活を行うので、人体のあらゆる筋肉に対しての適用を考えると、できる限り小型軽量であることが好ましい。
【0027】
−無電力タイプの整復装置−
このような条件を満たすものとしては、まず、図1に示すような整復装置1が挙げられる。この整復装置1は、人体の皮膚表面Aに当接するようになされた筐体2の中空部20内に、転跳物3が設けられて構成されている。
【0028】
筐体2としては、中空部20内に転跳物3が衝突して発生する振動を、この筐体2を当接した人体の皮膚表面Aへと伝達することができるように、金属、鉱物、各種セラミックス材料、硬質プラスチック材料などの振動伝達性に優れた硬質材料で形成されたものであることが好ましい。また、筐体2の大きさとしては、当接した人体の皮膚表面Aに相当する部位の筋の促通を図ることができる大きさでなければならず、大き過ぎると筋緊張の緩和を促す面的な刺激となってしまうとともに、着用していても邪魔になってしまう。したがって、人体の皮膚表面Aのあらゆる部位に当接することを想定すれば、制作可能な範囲で、できる限り小さいことが好ましい。また、筐体2の外形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、球状、多面体状、半球状、半多面体状、円柱状、多角柱状、多角錘状、円錐状などの各種形状であってもよい。また、中空部20の形状としては、人体の動きに応じてその内部で転跳物3が転跳しやすい形状であれば特に限定されるものではなく、例えば、球状、多面体状、半球状、半多面体状、円柱状、多角柱状、多角錘状、円錐状など、中空部20内で転跳物3が引っかかって転跳できないようにならない各種形状であればよい。
【0029】
転跳物3としては、中空部20内に衝突して筐体2を振動させることができるように、金属、鉱物、各種セラミックス材料、硬質プラスチック材料などの振動伝達性に優れた硬質材料で形成されたものであることが好ましい。また、大きさとしては、中空部20内に転跳することができる空間を形成することがてきる大きさであればよく、例えば、中空部20内に一個の転跳物3を設ける場合であれば、ある程度大きいものであってもよいが、中空部20内に複数個の転跳物3を設ける場合であれば、ある程度小さいものにしなければ十分な転跳空間を形成することができなくなる。また、複数個の転跳物3を設ける場合は、あまり多くの転跳物3を設け過ぎると、せっかく発生した振動が転跳物3同士の衝突で相殺されてしまうことが懸念される。したがって、転跳物3を設ける数としては、特に限定しないが、五個程度以下が好ましいといえる。また、転跳物3の形状としては、球体、各種多面体、任意に破砕した粒体などであってもよい。また、転跳物3は、中空部20内に衝突して筐体2を振動させるといった意味からは、上記したものになるが、単に中空部20内を転跳して筐体2の重心位置を絶えず変化させるといったものであってもよい。このように筐体2の重心位置が変化しても、この筐体2を当接した人体の皮膚表面Aの受容器は、その変化を認識することとなる。したがって、このような筐体2の重心変化を起こすための転跳物3としては、中空部20内全体に充満しないように設けた各種の粉体や流体などを用いることができる。
【0030】
このようにして構成される整復装置1を人体の皮膚表面Aに当接して使用する場合、所望の筋肉の起死停止範囲内の皮膚表面に当接して使用する。この場合、起死停止範囲内であれば、いずれの位置でも良いが、その筋肉のモーターポイント近傍の位置に当接することが最も好ましい。当接方法としては、図1(a)に示すように、整復装置1に粘着剤11などを介して人体の皮膚表面Aに貼設するものであってもよい。この場合、整復装置1をはがれないようにするために、少なくとも整復装置1の人体の皮膚表面Aに当接する面は、平滑に形成されていることが好ましい。また、他の当接方法としては、図1(b)に示すように、整復装置1を人体の皮膚表面Aに当接した状態で、その上から絆創膏12で貼り付けるといったものであってもよい。この場合、人体の皮膚表面Aに貼設される絆創膏12によって、皮膚の受容器が刺激を受けるので、絆創膏12を貼る面積が大きくなり過ぎると、筋緊張の緩和を促す面的な刺激となってしまう。もちろんこの絆創膏12の場合は、上記4項目のうちの一項目も満たしていないので、経時的に効果は薄れてしまうこととなるが、貼設当初しばらくは筋緊張の緩和を促す面的な刺激となってしまうので、このような絆創膏12を介して人体の皮膚表面Aに貼設する場合は、貼設に必要な最低限の大きさの絆創膏12を使用して貼設することが好ましい。さらに、他の当接方法としては、図1(c)に示すように、整復装置1を衣類Bの肌面側に固着しておき、この衣類Bを介して人体の皮膚表面Aに当接するものであってもよい。この場合、衣類Bへの整復装置1の固着は、ピン(図示省略)を突設させた整復装置1と、ピン受け1aとによって、ピンバッチと同様の着脱構造で衣類Bに固着することができる。また、その他にも、衣類Bの肌面側に直接整復装置1を接着、融着、縫合などによって固着するものであってもよし、筐体2を磁性材料で構成しておき、衣類の表面側にマグネット(図示省略)を設け、肌面側に設けた整復装置1を固着するものであってもよい。
【0031】
−振動発生タイプの整復装置−
上記の条件を満たす他のものとしては、図2に示す整復装置1が挙げられる。この整復装置1は、筐体2内に、振動発生装置4と、電源5と、制御装置6とを具備して構成されている。
【0032】
筐体2は、ナイロン樹脂製からなる一対の有底円筒体21、22を組み合わせて厚さ約10mm、直径約25mmの円柱状に形成されている。有底円筒体21、22同士は、シールリング23を介して圧入または螺合することによって一体化される。なお、筐体2としては、人体の肌に対してかぶれやアレルギーなどの害を発症しないものであれば、その材質を特に限定されるものではなく、上記ナイロン樹脂製のものの他に、金属、鉱物、各種セラミックス材料、プラスチック材料、具体的にはABS樹脂、ポリプロピレン樹脂などで構成されたものであってもよい。
【0033】
振動発生装置4としては、圧電素子を用いることができる。この振動発生装置4は、上記筐体2を構成する一方の有底円筒体21に穿孔された開口部24に一体化するように組み込まれ、直接人体の肌に接するように構成される。
【0034】
電源5としては、ボタン電池を用いることができる。この電源5は、上記筐体2を構成する他方の有底円筒体22に設けられた電源ボックス25に設けられる。この電源ボックス25からは、所定間隔を存して平行する一対の電極片26が延設されている。この電極片26は、他方の有底円筒体22の外面に設けられた凹部27に磁石28をはめ込むことで、この磁石28の磁力によって引き寄せられて互いに接触して電源5がオンになるように構成されている。したがって、他方の有底円筒体22の凹部27から磁石28を外せば、電源5をオフにすることができることとなる。
【0035】
制御装置6は、CPU,IC,R・L・C,Trなどの電子部品によって回路を構成することができる。図3は、制御基板61に、発振および速度調整部62、レベル調整部63、出力制御部64、CPU(タイミング制御)65を組み込んで構成された制御装置6のブロックを示している。この制御装置6による振動発生装置4の制御としては、上記したように、刺激による作用力には、30秒間の潜伏期間があることを考慮すれば、少なくとも30秒以上の連続した振動刺激が必要である。また、筋肉に刺激を与えて促通を図る場合、3〜5メガヘルツの範囲内の振動を発生させる必要がある。最も効果的には100〜200ヘルツの振動を発生させることが好ましい。ただし、10秒間振動刺激を与えた後、5秒間停止させ、その後、また10秒間振動刺激を与え、それを反復させたとしても、人体は、5秒間の停止自体を振動刺激の停止とは捕らえず、このような振動が反復している間、常に振動刺激が加わっていると判断する場合もあれば、文字通りに10秒間の振動刺激と5秒間の停止の反復と捕らえる場合もある。前者の場合は問題無いが、後者の場合は30秒以上の潜伏期間を満たすことができなくなってしまうので、振動刺激を加える場合は、30秒以上の連続した振動刺激を加えた後、所望の時間振動刺激を停止させ、それを反復させることが好ましい。さらに、最も好ましくは、上記のように30秒以上の振動刺激を加えた後、所望の時間振動刺激を停止させ、それを反復させる際、振動刺激の入力時間と、振動刺激の強度の少なくとも何れか一方をファジー制御して人体の受容器の反応が刺激入力に対して緩慢にならないようにすることが良い。
【0036】
このような振動刺激を制御する制御装置6の制御基板61内の構成は、汎用ロジックで構成、CPUのみで構成、プログラマブルロジックで構成、受動部品で構成など様々な方法で実現することができる。具体的には、一般向けと特殊用途向けとに分けることができる。一般向けは、設計、製造段階で動作周期を決定して製作したもので、文字通り一般的に使用する場合に用いられる。特殊用途向けは、使用目的、用途などに応じて動作周期をプログラムで変更して書き込みたい場合に用いられる。図4は、特殊用途向けの整復装置1で、書き込みケーブル71を介して書き込み装置7で所望の刺激入力強度および時間を、その都度プログラムで変更して書き込むことができるようになされている。なお、図4では、書き込みケーブル71を介して書き込み装置7に接続するようになされているが、書き込み装置7に整復装置1を直接セットしてプログラムの変更をできるようになされたものであってもよい。この特殊用途向けの整復装置1は、骨折などの重度な怪我後の高度なリハビリ等を必要とする様な症状を呈する場合、筋の損傷(挫傷や肉離れ等に代表される)による一時的な筋肉の低下や筋力の偏り等からの復帰を促す必要のある症状を呈する場合、重度な障害に至らないまでも、軽度な障害や今後障害を発生しそうな筋肉やそのバランスの偏りのある症状を呈する場合、その他、腰痛、肩凝り、Qアングル異常などの病状の場合や、老齢によって促通が低下し、一般よりも刺激入力の強度を高めないとだめな場合などに有効に用いることができる。特に、お年寄りの場合、皮膚への刺激等に対して感受性が低く鈍くなっているため、温熱によるものや、電気刺激等によって思わぬ損傷に到る場合も少なくないが、この整復装置1の場合、振動によるため、このような損傷を避けることができる。
【0037】
このうようにして構成される整復装置1を使用する場合は、タイツやシャツなどの人体に密着する衣類を利用して使用する。まず、整復装置1を所望の筋肉の起死停止範囲内の皮膚表面に当接した状態で、衣類を着用し、衣類の外側から、他方の有底円筒体22の外面に設けられた凹部27に磁石28をはめ込む。すると、この磁石28の磁力によって電極片26が引き寄せられて互いに接触して電源5がオンになり、整復装置1が作動し始める。また、整復装置1自体は、凹部27と磁石28との間で衣類を挟持することとなり、この衣類に固定される。このように、衣類を着用して所望の筋肉に対して整復装置1を作動させると、その筋肉が促通されるので、その状態のままスポーツを行った場合には、普段意識し難い筋肉を意識して理想のフォームでトレーニングすることができる。また、日常生活においても、ボディーバランスを崩す原因となっている意識の弱い筋肉を促通させて理想のボディーバランスを形成することができ、腰痛などのボディーバランスの崩れから来る症状を改善することができる。また、このような症状が無い場合であっても、理想のボディーバランスを作り上げることに利用して、理想の体型を形成することができる。
【0038】
なお、この整復装置1の振動発生装置4としては、図5に示すようなものであってもよい。図5(a)および(b)に示す振動発生装置4は、有底円筒体21の振動伝達面21aに設けられた円錐体41aを介して圧電素子41からの振動を有底円筒体21の全体に伝達させて筐体2全体を振動させるように構成されている。図5(c)に示す振動発生装置4は、有底円筒体21の振動伝達面21aの中央部に、ゴム41bを介して振動伝達部材41cが設けられており、この振動伝達部材41cは、振動伝達面21aの中央部から外側に突出するようになされている。この振動伝達部材41cを圧電素子41からの振動で振動させることで、振動伝達面21aの中央部を振動させることができるようになされている。
【0039】
図5(d)に示す振動発生装置4は、有底円筒体21の振動伝達面21aの中央部が薄肉に形成されており、この薄肉部分に当接するように、圧電素子41の形状が凸状に加工されている。そして、圧電素子41の振動を直接、この薄肉部分に伝達させて振動させるようになされている。図5(e)に示す振動発生装置4は、有底円筒体21の振動伝達面21aと圧電素子41との間にビーズなどの粒体41dを設けることができるようになされており、圧電素子41の振動で粒体41dを転跳させるようになされている。図5(f)に示す振動発生装置4は、有底円筒体21の振動伝達面21aに開口部24が穿孔されてその内部に空気室21bが形成されており、圧電素子41が振動することにより、空気室21bの空気が開口部24から吸入、排気されることにより、この空気振動を人体の皮膚表面Aに伝えるようになされている。図5(g)に示す振動発生装置4は、有底円筒体21の振動伝達面21aに開口部24が穿孔されてその内部に空気室21bが形成されるとともに、開口部24に被膜41eが設けられており、圧電素子41が振動することにより、その振動が空気室21bの空気を介して被膜41eに伝播されることにより、この被膜41eの振動を人体の皮膚表面Aに伝えるようになされている。図5(h)に示す振動発生装置4は、有底円筒体21の振動伝達面21aから突起物41fが突出するようになされており、この突起部41fは、その基端部が有底円筒体21内で圧電素子41に接着されており、圧電素子41が振動することにより、その振動が突起物41fを介して人体の皮膚表面Aに伝えられるようになされている。
【0040】
また、圧電素子以外にも、図6に示すように、モータ、振動モータ、ソレノイド、バイブレーションモジュール(電磁石)、圧電バイモルフなどを利用した振動発生装置4であってもよい。図6(a)に示す振動発生装置4は、モータ42が回転することによりギア42aが弾き板42bに接触して振動を発生させるようになされている。図6(b)に示す振動発生装置4は、モータ42が回転することにより分銅42cが弾き板42bに接触して振動を発生させるようになされている。図6(c)および(d)に示す振動発生装置4は、モータ42が回転することにより、このモータ42のシャフト42dに取り付けられた弾き板42bが有底円筒体21の内部に設けられたギア42aに接触して振動を発生させるようになされている。図6(e)に示す振動発生装置4は、モータ42のシャフト42dに分銅42cが取り付けられており、モータ42が回転すると重量不釣り合いが発生して振動が発生するようになされている。図6(f)に示す振動発生装置4は、有底円筒体21の振動伝達面21aの内面側にボタン型振動モータ43を設け、振動伝達面21aを直接振動させるようになされている。図6(g)に示す振動発生装置4は、ソレノイド44からのプランジャ44aのプッシュまたはプル動作により、プランジャ44aが障害物44bに接触して振動が発生するようになされている。図6(h)に示す振動発生装置4は、ソレノイド44からのプランジャ44aのプッシュまたはプル動作により、プランジャ44aの先端に取り付けられた分銅44cが有底円筒体21の内面に直接接触して振動が発生するようになされている。図6(i)に示す振動発生装置4は、板バネ45の先端側に取り付けた磁石45aを磁界の変化により動かし、板バネ45と磁石45aを共振点で振動させ、分銅45bにより振動を増幅させるようになされている。図6(j)に示す振動発生装置4は、圧電セラミックス46の伸縮作用により、振動を発生させるようになされている。
【0041】
また、このような振動発生装置4によって作り出される振動の種類としては、図7に示すように、屈曲振動4a、長さ振動4b、面積振動4c、縦方向振動4d、厚み滑り振動4e、厚み綴じ込め振動4f、表面波4gなど、特に限定されるものではなく、受容器に刺激を加えることができる各種の振動を利用することができる。
【0042】
なお、本実施の形態において、整復装置1は、他方の有底円筒体22の外面に設けられた凹部27に磁石28をはめ込むことによって電極片26同士を接触させて電源5をオンにするように構成されているが、このような磁石28によって電極片26同士を接触させるものに限定されるものではなく、この筐体2に、押しボタンスイッチやスライドスイッチ(図示省略)を設けたものであってもよい。
【0043】
また、本実施の形態において、整復装置1は、筐体2と磁石28との間で衣類Bを挟持することで衣類Bに固定され、この衣類Bを介して人体の皮膚表面Aに当接するようになされているが、このような磁石28によって衣類Bを挟持する固定方法に限定されるものではなく、図1(c)に示す整復装置1で述べたように、筐体2から突設されたピン(図示省略)を衣類Bに突き刺してピン受け1aで受けるように構成されたピンバッチのような構造のものであってもよし、衣類Bの肌面側に直接固着するものであってもよい。また、このような衣類Bを介して人体の皮膚表面Aに当接することなく、図1(a)および(b)に示す整復装置1で述べたように、直接人体の皮膚表面Aに両面テープ11や絆創膏12で貼設するものであってもよい。
【0044】
また、整復装置1は、図8に示すように、ボタン電池による駆動以外であってもよい。この整復装置1は、振動発生装置4が設けられた筐体2と、電源5および制御装置6が設けられた装置本体60とが別に構成され、装置本体60の送信アンテナ61から発信される無線信号を、筐体2側に設けた検波アンテナ40で検波し、電力に変換して振動発生装置4の振動発生に使用するようになされている。この場合、装置本体60の電源は、電池であってもよいし、AC100Vの家庭用電源であってもよい。
【0045】
さらに、整復装置1は、図9(a)に示すように、筐体2に電極接点部7を設け、これを専用充電器70の電極接点部71に結合させて充電するようになされた接触充電式のものであってもよいし、図9(b)に示すように、筐体2内に受電コイル8を設け、これを専用充電器80の送電コイル81と対置させて充電するようになされた非接触充電式のものであってもよい。
【0046】
さらに、本実施の形態において、整復装置1の筐体2は、一対の有底円筒体21、22を組み合わせて構成するようになされているが、有底円筒体21、22同士を組み合わせるものに限定されるものではなく、一つの有底円筒体21の開口部分に、円形状の蓋体をして一体化するようになされたものであってもよい。
この種の筐体2の構造は、腕時計などで利用されている各種筐体の構造と同様に構成することができる。
【0047】
[衣類]
整復装置1は、上記したように衣類Bに設けて使用することができる。この場合、整復装置1を取り付ける衣類Bとしては、特に限定されるものではなく、各種衣類Bに取り付けて使用することができるが、衣類Bの肌面側に取り付けてその衣類Bを着用した状態で、整復装置1からの振動で所望の筋肉の神経伝達の促通を図ることができるものでなければならない。したがって、衣類Bとしては、コートやジャケットのような一番外に着用するものよりも、人体に直接着用して皮膚表面Aに当接するようになされた、肌着、アンダーシャツ、タイツ、靴下、サポーター、スイムウェア、スポーツウェア、帽子、腹巻などの衣類Bの方が、整復装置1による効果をより発揮でき、好ましい。
【0048】
このような衣類は、既製の衣類Bであってもよいし、人体の皮膚表面Aのうち、主要な筋肉のモーターポイントに相当するそれぞれの位置に印が設けられたシャツ、タイツ、フルスーツなどの専用の衣類Bであってもよい。このような印が設けられた専用の衣類Bの場合、目的とする筋肉のモーターポイントの位置を知らなくても、常に同じ筋肉のモーターポイントの位置に整復装置1を設けることができる。したがって、例えば、腰痛で医者に行った際、腰痛の原因を解消する筋肉に整復装置1を貼ってもらって二週間程経過を見るように指示されたような場合、就寝時などに整復装置1を取り外しても、このような印の設けられた衣類Bを利用することで、毎日同じ位置に整復装置1を設けることができる。
【0049】
[整復方法]
この整復装置1を使用すると、この整復装置1を設けた位置の筋肉の神経伝達の促通を図り、筋意識を高めることができる。したがって、この整復装置1は、身体の筋群のうち、ボディーバランスの崩れに起因する筋肉に適用したり、機能が低下した筋肉に適用したり、発達・強化を臨む筋肉に適用したりすることで、身体を所望の状態に整えることができる。
【0050】
また、この整復装置1は、筋肉に短縮性運動を起こさせるものではなく、神経伝達の促通を図るだけなので、付けたまま長期間に渡って過ごす事ができるとともに、付けたまま運動を行うこともできる。したがって、この整復装置1を取り付けた筋肉の活動は、普段あまり意識しなくても活発化するので、固有感覚に任せた運動(錘体外路系)へと、容易に定着させることができる。
【0051】
−姿勢の矯正−
ボディーバランスの崩れに起因する筋肉に、この整復装置1を使用すると、スポーツなどにおいては、理想的な正しい姿勢へと矯正して運動を行うことが可能となるので、優れたパフォーマンスを発揮することができる。
【0052】
また、猫背、O脚、X脚、その他、姿勢に関しても、姿勢を崩す原因となっている筋肉に整復装置1を使用することで、正しい姿勢へと矯正することができる。
【0053】
−機能の改善強化−
機能が低下している筋肉に、この整復装置1を使用すると、その筋肉の機能を向上させることができる。したがって、日常生活において、このような一部の筋肉の機能の低下によって起こり得る腰痛、肩凝り、Qアングル異常、その他の機能低下に起因する病気であれば、整復装置1を使用してしばらく過ごすことで、症状の改善を図ることができる。
【0054】
また、スポーツなどにおいては、この整復装置1を使用してトレーニングを行えば、普段意識し難かったり、負荷を加え難かった部位の筋肉に効率的な負荷を加えることができ、有効なトレーニングを行うことができる。
【0055】
−スタイルの矯正−
特定の筋肉だけを発達させてプロポーションの改善を図ろうとするような場合も、この整復装置1を使用して過ごす、または積極的にトレーニングすることで、その筋肉の発達を促してプロポーションの改善を図ることができる。
【発明の効果】
【0056】
以上述べたように、本発明によると、単に装着して過ごすだけで、効率良く高いボディーバランスや身体支持力を作り上げることができ、怪我防止、姿勢の矯正、身体プロポーションおよび運動能力の向上、などを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】(a)は無電力タイプの整復装置の使用状態を示す断面図、(b)は無電力タイプの他の整復装置の使用状態を示す断面図、(c)は無電力タイプのさらに他の整復装置の使用状態を示す断面図である。
【図2】振動発生タイプの整復装置の全体構成の概略を示す断面図である。
【図3】図2に示す整復装置における制御装置の回路構成を示すブロック図である。
【図4】振動発生タイプの他の整復装置を示す概略図である。
【図5】(a)ないし(h)は、振動発生タイプの整復装置における各種振動発生装置の構成を示す概略図である。
【図6】(a)ないし(j)は、振動発生タイプの整復装置における各種振動発生装置のさらに他の構成を示す概略図である。
【図7】(a)ないし(g)は、振動発生タイプの整復装置によって発生する振動の種類を説明するイメージ図である。
【図8】振動発生タイプのさらに他の整復装置を示す概略図である。
【図9】(a)および(b)は、振動発生タイプのさらに他の整復装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
−整復装置−
図2に示す振動タイプの整復装置1を用意した。この整復装置1は、100〜200ヘルツの範囲内の周波数で、振幅の強いものと弱いものとの二種類を用意した。振幅の弱いものは静寂環境下で振動音を確認できるが日常生活環境下では振動音を確認できない程度の振幅に設定し、振幅の強いものは日常生活環境下でかろうじて振動音を確認できる程度に振幅を設定した。
【0059】
−試験内容−
(1) 前屈計測台の台上で被験者に起立してもらい、前屈して手の先が地面から上または下に何cmまで前屈できるか測定した。
【0060】
その後、臍輪部の下約40mm位の位置の下腹部に整復装置1を設けて作動させ、10分後、同様に前屈度合いを測定した。
結果を表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
表1から、整復装置1によって下腹部の筋肉の促通が図られ、前屈能力が改善されていることが確認できた。
【0063】
(2) 平壁面に背中を当て、踵を閉じ、その踵を壁面に接触させた状態から片足の大腿部が床面と水平になる位置まで上げ、その時の体の動きを観察した。体の動きは、両上前腸骨棘部にLED発光体を取り付けておき、暗くした部屋の中で、片足を上げた後から5秒間にわたってシャッターを開放状態にして写真撮影を行い、LED発光体の軌跡の長さを測定して評価した。
【0064】
その後、臍輪部の下約40mm位の位置の下腹部に振幅の弱い整復装置1を設けて作動させ、作動直後および2〜3分経過後に、同様に体の動きを観察した。
結果を表2に示す。
【0065】
【表2】

【0066】
表2から、整復装置1によって体の軸が安定し、ボディーバランスが向上してスムーズなシフトウェイト(体重および重心移動)が行える様になることが確認できた。
【0067】
(3) ゴルフボールをドライバーで打球してもらい、その時の体の動きを観察した。体の動きは、両上前腸骨棘部の位置と臍輪部の位置とにLED発光体を取り付けておき、暗くした部屋の中でスイングを行う間にわたってシャッターを開放状態にして写真撮影を行い、LED発光体の軌跡の長さを測定して評価した。
【0068】
その後、臍輪部の下約40mm位の位置の下腹部に振幅の弱い整復装置1を設けて作動させ、2〜3分経過後に、同様に体の動きを観察した。
結果を表3に示す。
【0069】
【表3】

【0070】
表3から、整復装置1によって体の軸が安定し、無駄の無い安定したスイングが行える様になることが確認できた。
【符号の説明】
【0071】
1 整復装置
11 粘着剤
2 筐体
20 中空部
3 転跳物
4 振動発生装置
5 電源
6 制御装置
A 皮膚表面
B 衣類

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体表面に当接するようになされた内部が中空の筐体内に、転跳物が設けられてなり、
転跳物は、人体の動きに応じて筐体の中空部内で転跳して筐体を振動させるように、筐体内に転跳空間を存して設けられ、
筐体は、この振動を発生させるための転跳空間を中空部内に確保しつつ、当接した人体表面に相当する部位に、この振動による皮膚刺激を与えてこの部位の筋の神経伝達の促通を図ることができる大きさに形成されるとともに、粘着剤を介して人体表面に直接当接するようになされたことを特徴とする整復装置。
【請求項2】
人体表面に当接するようになされた内部が中空の筐体内に、転跳物が設けられてなり、
転跳物は、人体の動きに応じて筐体の中空部内で転跳して筐体を振動させるように、筐体内に転跳空間を存して設けられ、
筐体は、この振動を発生させるための転跳空間を中空部内に確保しつつ、当接した人体表面に相当する部位に、この振動による皮膚刺激を与えてこの部位の筋の神経伝達の促通を図ることができる大きさに形成されるとともに、衣類の肌面側に設けるようになされ、衣類を着用した状態で人体表面に当接するようになされたことを特徴とする整復装置。
【請求項3】
人体に直接着用して皮膚表面に当接するようになされた衣類であって、
衣類の肌面側に、請求項2記載の整復装置が設けられたことを特徴とする衣類。
【請求項4】
着用状態で、着用者の各筋肉のモーターポイントに相当する位置に印が設けられ、これら印を目安にして、請求項2記載の整復装置が設けられた請求項3記載の衣類。
【請求項5】
身体の筋群の中から選択される少なくとも1つの筋の起始停止範囲内の皮膚表面に相当する位置に、請求項1ないし4の何れか一記載の整復装置を設け、この整復装置を設けた筋の神経伝達を促通して所望の筋の筋意識を高めて身体を整えることを特徴とする整復方法。
【請求項6】
人体表面に当接するようになされた筐体内に、3ヘルツ〜5メガヘルツの振動を与えるようになされた振動発生装置と、この振動発生装置に供給する電源と、この振動発生装置による振動発生を制御する制御装置とが具備され、
筐体は、当接した人体表面に相当する部位に、振動発生装置からの振動による皮膚刺激を与えてこの部位の筋の神経伝達の促通を図ることができる大きさに形成された整復装置を用いる請求項5記載の整復方法。
【請求項7】
振動発生装置によって発生される振動が100〜200ヘルツとなされた請求項6記載の整復方法。
【請求項8】
制御装置は、筋の神経伝達の促通が対応・適応しないように振動刺激の入力時間と、振動刺激の強度の少なくとも何れか一方をファジー制御するようになされた請求項6記載の整復方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−66459(P2009−66459A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2413(P2009−2413)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【分割の表示】特願2002−309422(P2002−309422)の分割
【原出願日】平成14年10月24日(2002.10.24)
【出願人】(507214371)
【Fターム(参考)】