説明

敷地内の二次汚染を抑制する汚染浄化工法

【課題】敷地内の保護エリアについて非汚染であることを容易に保証できるようにする。
【解決手段】この汚染浄化工法では、敷地1を複数のエリアに区画し、エリア毎に汚染度合いを判定する汚染判定工程(S1,S2)と、エリア毎の汚染度合いに応じて、保護エリアを選定する保護エリア選定工程(S4,S22)と、汚染物質の浸透を阻止する保護層を、保護エリアの表面に形成する保護層形成工程(S5,S23,S6)とを、汚染エリアの汚染土を掘削除去する掘削除去工程(S9)に先立って行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄化対象となる汚染土によって敷地内の二次汚染を抑制する汚染浄化工法に関する。
【背景技術】
【0002】
汚染物質で汚染された汚染土や汚染水を、浄化対象となる敷地内で浄化処理するオンサイト処理が知られている。このオンサイト処理は、浄化後の土を埋め戻しに用いることができる等、環境に優しい処理として推奨されている。
【0003】
このオンサイト処理では、汚染土を洗浄浄化する土壌洗浄設備、及び、汚染土や浄化後の土を仮置きするための土壌仮置設備を設ける必要があり、これら設備の設置箇所で二次汚染(汚染土に含まれる汚染物質による非汚染エリアの汚染)が懸念される。そして、平成22年7月に発行された「土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン」にて、敷地内に浄化用設備を設置した場合には、浄化処理の完了後に浄化用設備の設置箇所に二次汚染が発生していないことを確認する必要があると示された。
【0004】
しかし、浄化用設備を撤去した後でなければ設備下の表層土壌を採取できず、採取した土壌の分析にも数週間の期間を要する。このため、作業が完了しても措置完全報告書が提出できるまで概ね1ヶ月程度の追加期間を要してしまう。また、設備撤去後の土壌調査で自然的原因による汚染や、ばらつきの影響を受ける可能性もある。この場合、設備撤去後であるにも拘わらず、再度の汚染浄化処理が必要となってしまう。
【0005】
ここで、特許文献1には、バイオヤードと汚染土の仮置場の底部に遮水シートを敷設した土壌浄化設備が開示されている。特許文献1の遮水シートを浄化用設備の設置箇所に設けることで、これら浄化用設備の設置箇所における二次汚染を抑制でき、前述の問題を解決できるとも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−8941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の遮水シートは、汚染水の回収を目的として設けられたものである。このことは、遮水シートの上に透水性砕石層が設けられており、かつ、集水溝の箇所で溝内に連続させて敷設されていることから理解できる。このため、この遮水シートを単に設けただけでは、遮水シートを設けた後の二次汚染については抑制できるものの、現地盤のばらつきの影響の除外については何等保証されない。従って、設備の撤去後に土壌を採取して分析を行わなければならず、追加期間を要してしまう問題や再度の汚染浄化処理が必要となってしまう問題については解決できない。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、敷地内の保護エリアについて非汚染であることを容易に保証できる汚染浄化工法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、汚染浄化の対象となる敷地から汚染物質によって汚染された汚染土を掘削除去する掘削除去工程と、前記敷地の掘削箇所を健全土によって埋め戻す埋め戻し工程とを行うことで、前記敷地を浄化する汚染浄化工法であって、前記敷地を複数のエリアに区画し、前記エリア毎に汚染度合いを判定する汚染判定工程と、前記エリア毎の汚染度合いに応じて、浄化対象となる前記エリアから掘削された前記汚染土による二次汚染から保護される、非汚染の保護エリアを選定する保護エリア選定工程と、前記汚染物質の浸透を防止する保護層を、前記保護エリアの表面に形成する保護層形成工程とを、前記掘削除去工程に先立って行うことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、掘削除去工程に先立って汚染判定工程と保護エリア選定工程と保護層形成工程とが行われ、汚染度合いに応じて選定された非汚染の保護エリアの表面に、汚染物質の浸透を防止する保護層が形成される。この保護層によって掘削除去工程で掘削された汚染土による保護エリアの二次汚染が抑制されるため、敷地内の保護エリアについて非汚染であることを容易に保証できる。
【0011】
本発明において、前記保護層は、内部が気密状態の多数の区画に分割された二重構造の遮水シートを含んでおり、前記区画内に負圧をかけると共にこの負圧による真空度を監視し、前記真空度の低下度合いが設定値を越えた場合に、前記遮水シートに破損が生じたと判定する破損監視処理を、前記遮水シートが敷設された後から前記埋め戻し工程が終了するまでの期間に亘って行うことが好ましい。このようにすると、保護層に対する破損の有無を長期間に亘って容易に監視できる。
【0012】
本発明において、前記保護層形成工程では、前記保護エリア選定工程で選定された保護エリアの表面土を除去した後に、前記表面土を除去した範囲に健全土を敷き詰め、前記健全土の表面側に前記遮水シートを敷設することが好ましい。このようにすると、設備撤去後の土壌調査で自然的原因による汚染や、ばらつきの影響を受ける不具合を抑制できる。
【0013】
本発明において、前記保護エリア選定工程では、前記複数のエリアのうち、非汚染と判定されたエリアを前記保護エリアに選定することが好ましい。このようにすると、浄化工事の工期を短縮することができる。
【0014】
本発明において、前記保護エリア選定工程では、前記複数のエリアのうち、汚染度合いが他のエリアに比べて小さく、汚染土の掘削除去後に健全土で埋め戻されることで非汚染とされたエリアを、前記保護エリアに選定することが好ましい。このようにすると、敷地全体が汚染されていたとしても、敷地内の保護エリアについて二次汚染がないことを保証することができる。
【0015】
本発明において、前記汚染土の浄化に用いられる浄化用設備を、前記保護エリアの上に設置する設備設置工程を、前記保護層形成工程よりも後であって前記掘削除去工程よりも前に行うことが好ましい。そして、前記浄化用設備は、前記汚染土を洗浄浄化する土壌洗浄設備と、前記汚染土或いは前記埋め戻し工程で用いられる健全土を仮置きするための土壌仮置設備の少なくとも一方であることが好ましい。このようにすると、非汚染とされた保護エリアの上に浄化用設備が設置されるので、浄化用設備に起因する二次汚染から保護エリアを保護できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、敷地内の保護エリアについて非汚染であることを保証することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】汚染浄化の対象となる現場を説明する図である。
【図2】汚染浄化工法の手順を説明するフローチャートである。
【図3】汚染浄化対象の敷地を複数のエリアに区画した状態を説明する図である。
【図4】エリア毎の汚染度合いを説明する図である。
【図5】浄化用設備を設置可能な大きさの非汚染エリアを説明する図である。
【図6】非汚染エリアに選定された保護エリアを説明する図である。
【図7】遮水シート及びアスファルトの敷設を説明する図である。
【図8】遮水シートの破損監視システムを説明する図である。
【図9】浄化用設備や通路を設置した状態を説明する図である。
【図10】土壌浄化処理を行っている状態の現場を説明する図である。
【図11】浄化設備を撤去した状態を説明する図である。
【図12】保護エリアの遮水シートを撤去した状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1に示す現場では、汚染浄化の対象となる敷地1が複数のエリアに分割されている。便宜上、以下の説明では、横方向の位置が異なっており縦方向に延びる仮想線を符号Y1〜Y14で表し、縦方向の位置が異なっており横方向に延びる仮想線をX1〜X9で表すこととする。従って、敷地1は、仮想線Y1〜Y14及び仮想線X1〜X9を境界とする複数のエリアに分割されている。
【0019】
図示の現場には、敷地1のエリアA〜Dで土壌の汚染が確認されている。なお、エリアBは、7個のエリアB1〜B7から構成されており、エリアDは、2個のエリアD1,D2から構成されている。また、図1における上部左右中央には浄化プラント2が設置されている。また、敷地1のほぼ中心には、浄化土をストックするための浄化土仮置場3が設置され、浄化土仮置場3に隣接して埋戻土仮置場4が設置されている。さらに、浄化土仮置場3及び埋戻土仮置場4の外周を囲むように、かつ、汚染エリアA〜Dや浄化プラント2を結ぶようにアスファルト敷きの車路5が形成されている。
【0020】
本実施形態の汚染浄化工法では、汚染物質によって汚染された汚染土を敷地1の汚染エリアA〜Dから掘削除去し、掘削箇所を健全土によって埋め戻すことで、敷地1を浄化する。
【0021】
概略を説明すると、まず、汚染エリアA〜Dから汚染土を掘削除去し、この汚染土を車路5に沿って浄化プラント2まで運搬する。そして、汚染土を浄化プラント2で洗浄浄化する。この浄化プラント2としては、例えば株式会社大林組の土壌浄化システム「アールキュービックMINI」(登録商標)が好適に用いられる。この土壌浄化システムでは、汚染土を、汚染物質が洗浄除去された砂分と汚染物質が付着した細粒分とに分級する。そして、砂分は浄化土として埋め戻しに再利用し、細粒分についてはフィルタープレスによって脱水ケーキとして排出される。また、洗浄で使用された水は、汚染物質が除去されて再利用される。
【0022】
浄化プラント2で浄化された浄化土は、検査確認が終了するまでの期間に亘って浄化土仮置場3に仮置きされ、検査確認が終了した浄化土(すなわち健全土)は、埋戻土として埋戻土仮置場4に仮置きされる。そして、汚染土を掘削除去した汚染エリアA〜Dに埋戻土を埋め戻すことで、その汚染エリアA〜Dに対する浄化が完了する。
【0023】
そして、本実施形態の汚染浄化工法は、浄化プラント2、浄化土仮置場3、及び埋戻土仮置場4といった浄化用設備を設置する前(すなわち汚染土の掘削除去前)に、浄化用設備が設置されるエリアを保護エリアに選定し、汚染物質の浸透を防止する保護層を保護エリアの表面に形成する点に特徴を有している。なお、保護エリアとは、浄化対象となる汚染エリアから掘削された汚染土による二次汚染から保護される非汚染のエリアを意味する。以下、この点を中心に、汚染浄化工法の詳細について説明する。
【0024】
図2のフローチャートに示すように、この汚染浄化工法では、まず浄化対象の敷地1を複数のエリアに区画する(S1)。例えば、図2に示すように、仮想線Y1〜Y14と仮想線X1〜X9とにより、敷地1を複数のエリアに区画する。なお、隣り合う仮想線Y1〜Y14同士の間隔及び仮想線X1〜X9同士の間隔は等しく定められており、例えば10mである。そして、各エリアは、掘削や埋め戻しの単位になっている。すなわち、汚染度合いの判定、汚染土の掘削、及び埋戻土による埋め戻しは、エリア毎に行われる。
【0025】
複数のエリアに区画したならば、エリア毎に汚染度合いを判定する(S2)。すなわち、各エリアについて化学分析を行い、汚染物質の種類と濃度とを測定する。このとき、汚染物質の種類と濃度は、土壌の深さを変えて数回測定される。図4は、汚染度合いの判定結果を模式的に示している。前述したように、エリアA〜Dはいずれも汚染物質によって汚染された汚染エリアである。そして、これらのエリアA〜Dのうち、エリアAとエリアB5は、他の汚染エリアに比べて汚染度合いが高いエリアである。
【0026】
エリア毎に汚染度合いを判定したならば、浄化用設備を設置可能な大きさの非汚染エリアがあるか否かを判定する(S3)。図5に示す例では、仮想線X1及びX7と仮想線Y5及びY13とで囲まれた範囲に、浄化用設備(浄化プラント2、浄化土仮置場3、及び埋戻土仮置場4)を設置可能な大きさの非汚染エリアEが存在する。このため、浄化用設備を設置可能な大きさの非汚染エリアがあると判断される。
【0027】
ステップS3で非汚染エリアEがあると判断されたならば、この非汚染エリアE内に保護エリアを選定する(S4)。本実施形態では、図6に示すように、浄化プラント2が設置される第1保護エリアE1と、浄化土仮置場3が設置される第2保護エリアE2と、埋戻土仮置場4が設置される第3保護エリアE3とが選定される。
【0028】
次に、図7に示すように、選定された保護エリアE1〜E3に遮水シート11を敷設する(S5)。この遮水シート11は、その表面を覆うアスファルト12とともに、保護エリアE1〜E3に対する保護層を構成し、汚染エリアA〜Dにて掘削された汚染土による二次汚染から保護エリアE1〜E3を保護する。図7(a)に示すように、遮水シート11を敷設するに際しては、まず選定された保護エリアE1〜E3の表面土を除去する。次に、図7(b)に示すように、表面土を除去した範囲に健全土を敷き詰め、図7(c)に示すように、健全土の表面側に遮水シート11を敷設する。さらに、図7(d)に示すように、遮水シート11を覆う状態でアスファルト12を敷設する(S6)。
【0029】
ここで、遮水シート11は、遮水シート11に対する破損の有無を検知可能なものを用いることが好ましい。これは、遮水シート11に対する破損がないという検知結果を示すことで、汚染物質による保護エリアの二次汚染がないことを間接的に証明できるからである。このような遮水シート11を有する破損監視システムとしては、例えば株式会社大林組の「T&OHシステム」(登録商標)が好適に用いられる。
【0030】
図7(c),(d)に示すように、この破損監視システムで用いられる遮水シート11は、中層マット13a(保護材)を、上層シート13b及び下層シート13cからなる二重シートによって上面側と下面側とから挟んだ袋構造体13を、複数接合することで作製されている。すなわち、遮水シート11は、内部が気密状態の多数の区画(袋構造体13)に分割された二重構造となっている。そして、中層マット13aは不織布等の通気性及び通水性を有する素材によって作製され、上層シート13b及び下層シート13cは、軟質合成樹脂又はゴム系シートといった遮水性を有する可撓性シート材によって作製されている。また中層マット13aには管理ホース14が埋設されている。この管理ホース14は袋構造体13毎に設けられており、遮水シート11に対する破損の有無を検知する場合には減圧状態とされ、破損した袋構造体13の止水を行う場合には止水材が送出される。
【0031】
管理ホース14は、遮水シート11の外部に引き出されて、監視設備に接続される。図8に示すように、監視設備は、各管理ホース14の途中に設けられた個別負圧センサ15及び電動バルブ16と、各管理ホース14における個別負圧センサ15よりも上流側(袋構造体13側)に設けられ、止水材を供給するための供給ホース(図示せず)が接続されるバルブ付接続部17と、各管理ホース14の端部が接続される吸引管18と、吸引管18の内部圧力を計測して表示する真空計19と、吸引管18の途中に設けられた共通負圧センサ20と、吸引管18の端部に設けられた真空ポンプ21と、吸引管18における真空ポンプ21よりも上流側の位置に設けられたドレーンタンク22と、各負圧センサ15,20、各電動バルブ16、及び真空ポンプ21と電気的に接続され、各負圧センサ15,20による検出結果に応じて真空ポンプ21や電磁バルブを制御する制御部23とを有している。
【0032】
アスファルト12を敷設したならば、破損監視システムによる破損監視処理を開始する(S7)。この場合において制御部23は、各電動バルブ16を開放させるとともに真空ポンプ21の運転を開始させる。その後、制御部23は、各負圧センサ15,20の検出信号に基づき、各管理ホース14及び吸引管18の内部が所定の真空度(漏れがないとの判断に十分な真空度)に達したことを条件に真空ポンプ21の動作を停止させ、各負圧センサ15,20の検出信号を監視する。前述したように、各管理ホース14の端部は袋構造体13の中層マット13aに埋設されているので、吸引管18の内部を所定の真空度にすることは、袋構造体13の内部(区画内)に負圧をかけることに相当し、各負圧センサ15,20の検出信号を監視することは、袋構造体13の真空度を監視することに相当する。そして、真空状態が保たれていれば遮水シート11の破損はないと判断する。
【0033】
一方、真空状態が保たれなくなった場合(真空度の低下度合いが設定値を越えた場合)、制御部23は、遮水シート11が破損したと判断するとともに、各個別負圧センサ15による検出結果に基づき、何れの管理ホース14から空気等が流入したかを判断する。その後、制御部23は、空気等が流入した管理ホース14に対応する電動バルブ16を遮断し、その管理ホース14を報知する。この報知に伴って作業者は、報知対象の管理ホース14に設けられたバルブ付接続部17に供給ホースを接続し、止水材を袋構造体13に向けて圧送する。これにより、破損した袋構造体13の内部に止水材が充填され、袋構造体13の破損が修復される。
【0034】
なお、予め全てのバルブ付接続部17に供給ホースを接続しておき、制御部23によって止水材の充填を自動的に行わせるようにしてもよい。また、止水材としては、例えば、セメントやモルタルなどのセメント系の固化材、又は、ウレタン樹脂、高吸水性樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂などの樹脂系の固化材を用いることができる。
【0035】
次に、保護エリアE1〜E3の上に浄化用設備を設置する(S8)。本実施形態では、図9に示すように、第1保護エリアE1に浄化プラント2が設置され、第2保護エリアE2に浄化土仮置場3が設置され、第3保護エリアE3に埋戻土仮置場4が設置される。また、車両が通る場所にアスファルトを敷設して車路5を設け、車路5における車両転回箇所に鉄板6を敷いて車路5の破損を防止する。
【0036】
浄化用設備2〜4が設置されたならば、汚染土壌の浄化処理を行う(S9)。図10に示すように、この浄化処理では、汚染エリアA〜Dの汚染土を掘削除去し、第1保護エリアE1に設けられた汚染土仮置場7に仮置きする。そして、汚染土仮置場7に仮置きされた汚染土は、浄化プラント2で浄化される。浄化プラント2で浄化された浄化土は、確認検査が終了するまでの期間に亘って浄化土仮置場3にストックされる。浄化が確認された浄化土は、埋戻土(健全土)として埋戻土仮置場4にストックされた後、掘削後の汚染エリアA〜Dに対する埋め戻しに使用される。
【0037】
図10の例において、汚染エリアA,Bは、汚染土が掘削除去された状態にあり、最後に掘削された汚染土が汚染土仮置場7に仮置きされている。そして、汚染エリアA,Bから掘削された浄化土が浄化土仮置場3に仮置きされ、埋戻土が埋戻土仮置場4に仮置きされている。また、汚染エリアC,Dは、埋戻土で埋め戻されている。
【0038】
全ての汚染エリアA〜Dについて浄化が完了したならば、浄化用設備2〜4を解体して撤去する(S10)。これにより、図11に示すように、保護エリアE1〜E3が更地になる。
【0039】
浄化用設備2〜4を撤去したならば、保護エリアE1〜E3に対する非汚染の確認処理を行う(S11)。この確認処理は、例えば、破損監視システムによる監視結果の提出によって行われる。すなわち、浄化工事の期間に亘って遮水シート11に破損が生じていなければ、保護エリアE1〜E3は非汚染と推定することができる。このため、保護エリアE1〜E3が二次汚染されていないことを確認するための分析作業を省略することができる。仮に、分析作業を行ったとしても、保護エリアE1〜E3の表面土は健全土に置換されているため、汚染は検知されない。
【0040】
なお、遮水シート11に破損が生じた場合であっても、アスファルト12によって汚染物質の浸透を防止できる。また、遮水シート11に対する止水処理によって迅速な対応が可能であるため、多くの場合において、遮水シート11の下側に敷いた健全土の層で二次汚染を留めることができる。この場合、健全土の入れ換えによって二次汚染に対する浄化が行えるので、浄化工事を短期間で行うことができる。さらに、遮水シート11の破損箇所は破損監視システムによって特定可能であるため、二次汚染の場所を絞り込むことができ、保護エリアE1〜E3の二次汚染に対する浄化工事も短期間で行うことができる。
【0041】
次に、前述のステップS3で、必要な大きさの非汚染エリアがないと判断された場合の処理について、図2のフローチャートを参照して説明する。
【0042】
この場合、まず、浄化用設備が設置可能であって、相対的に汚染度合いが小さいエリアを複数のエリアの中から選定する(S21)。例えば図5に符号Eで示したエリアを選定する。エリアを選定したならば、この選定エリアについて汚染土を掘削除去し、健全土で埋め戻して浄化する。そして、図6に符号E1〜E3で示すエリアを保護エリアに選定する(S22)。保護エリアE1〜E3を選定したならば、この保護エリアE1〜E3に遮水シート11を敷設する(S23)。なお、この場合には、健全土で埋め戻されているので、単に健全土の表面に遮水シート11を敷設するだけでよい。以後の処理は、先に説明した処理と同じであるため、説明は省略する。
【0043】
以上の処理を行うことで、敷地1の全体が汚染され、浄化用設備2〜4を設置するための非汚染エリアがない場合であっても、敷地内の保護エリアE1〜E3について二次汚染がないことを保証することができる。
【0044】
なお、上述したステップS9の汚染土壌の浄化処理は、汚染浄化の対象となる敷地1から汚染物質によって汚染された汚染土を掘削除去する掘削除去工程、及び、敷地1の掘削箇所を健全土によって埋め戻す埋め戻し工程に相当する。また、ステップS1の区画処理、及び、ステップS2の汚染度合いの判定処理は、敷地1を複数のエリアに区画し、エリア毎に汚染度合いを判定する汚染判定工程に相当する。また、ステップS3の非汚染エリアの大きさ判定処理、及び、ステップS4の保護エリア選定処理は、エリア毎の汚染度合いに応じて保護エリアを選定する保護エリア選定工程に相当する。同様に、ステップS21のエリア選定処理、及び、ステップS22の浄化及びエリア選定処理も、保護エリア選定工程に相当する。また、ステップS5及びステップS23の遮水シート11敷設処理とステップS6のアスファルト敷設処理は、汚染物質の浸透を阻止する保護層を保護エリアの表面に形成する保護層形成工程に相当する。また、ステップS8の設置処理は、汚染土の浄化に用いられる浄化用設備を保護エリアの上に設置する設備設置工程に相当する。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の汚染浄化工法によれば、汚染エリアの掘削に先立って、敷地1の汚染度合いがエリア毎に判定され、非汚染であって浄化用設備が設置可能な大きさのエリアが保護エリアE1〜E3として選定され、その表面に汚染物質の浸透を防止する保護層(遮水シート11,アスファルト12)が形成される。この保護層により、掘削された汚染土による保護エリアE1〜E3の二次汚染が抑制され、浄化工事の終了後において保護エリアE1〜E3が非汚染であることを保証できる。
【0046】
また、この汚染浄化工法では、ステップS7の破損監視処理において、袋構造体13の内部(区画内)に負圧をかけると共にこの負圧による真空度を監視し、真空度の低下度合いが設定値を越えた場合に、前記遮水シート11に破損が生じたと判定しているので、遮水シート11(保護層)に対する破損の有無を長期間に亘って容易に監視できる。
【0047】
また、この汚染浄化工法では、非汚染の保護エリアに対して表面土を除去した後に、前記表面土を除去した範囲に健全土を敷き詰め、健全土の表面側に遮水シート11を敷設している。このようにすると、表面土が健全土に置換されているので、設備撤去後の土壌調査で自然的原因による汚染や、ばらつきの影響を受けてしまう不具合を抑制できる。
【0048】
ところで、以上の実施形態に関する説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨、目的を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、次のように構成してもよい。
【0049】
前述の実施形態における保護エリアは浄化用設備の設置位置としたが、これに限定されるものではない。掘削された汚染土による二次汚染から保護すべき領域であれば、保護エリアとなり得る。例えば、車路5が敷設されるエリアを保護エリアに選定してもよい。
【0050】
また、前述の実施形態では、汚染土を現場で浄化するオンサイト処理を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、汚染土を現場から離れた処理場で処理する場合であっても、本発明を適用できる。この場合、車両に積載するための汚染土を仮置きする汚染土仮置場7の設置するエリアが保護エリアに選定される。
【0051】
また、保護層に関し、前述の実施形態では遮水シート11とアスファルト12の2層構造としたが、この構成に限定されるものではない。例えば、アスファルト12だけで構成してもよい。要するに、汚染物質の浸透を阻止する層であればよい。
【符号の説明】
【0052】
1 敷地
2 浄化プラント
3 浄化土仮置場
4 埋戻土仮置場
5 車路
6 鉄板
7 汚染土仮置場
11 遮水シート
12 アスファルト
13 袋構造体
13a 中層マット
13b 上層シート
13c 下層シート
14 管理ホース
15 個別負圧センサ
16 電動バルブ
17 バルブ付接続部
18 吸引管
19 真空計
20 共通負圧センサ
21 真空ポンプ
22 ドレーンタンク
23 制御部
X1〜X9 仮想線
Y1〜Y14 仮想線
A〜D 汚染エリア
E 非汚染エリア
E1〜E3 保護エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染浄化の対象となる敷地から汚染物質によって汚染された汚染土を掘削除去する掘削除去工程と、前記敷地の掘削箇所を健全土によって埋め戻す埋め戻し工程とを行うことで、前記敷地を浄化する汚染浄化工法であって、
前記敷地を複数のエリアに区画し、前記エリア毎に汚染度合いを判定する汚染判定工程と、
前記エリア毎の汚染度合いに応じて、浄化対象となる前記エリアから掘削された前記汚染土による二次汚染から保護される、非汚染の保護エリアを選定する保護エリア選定工程と、
前記汚染物質の浸透を阻止する保護層を、前記保護エリアの表面に形成する保護層形成工程とを、前記掘削除去工程に先立って行うことを特徴とする汚染浄化工法。
【請求項2】
前記保護層は、内部が気密状態の多数の区画に分割された二重構造の遮水シートを含んでおり、
前記区画内に負圧をかけると共にこの負圧による真空度を監視し、前記真空度の低下度合いが設定値を越えた場合に、前記遮水シートに破損が生じたと判定する破損監視処理を、前記遮水シートが敷設された後から前記埋め戻し工程が終了するまでの期間に亘って行うことを特徴とする請求項1に記載の汚染浄化工法。
【請求項3】
前記保護層形成工程では、前記保護エリア選定工程で選定された保護エリアの表面土を除去した後に、前記表面土を除去した範囲に健全土を敷き詰め、前記健全土の表面側に前記遮水シートを敷設することを特徴とする請求項2に記載の汚染浄化工法。
【請求項4】
前記保護エリア選定工程では、前記複数のエリアのうち、非汚染と判定されたエリアを前記保護エリアに選定することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の汚染浄化工法。
【請求項5】
前記保護エリア選定工程では、前記複数のエリアのうち、汚染度合いが他のエリアに比べて小さく、汚染土の掘削除去後に健全土で埋め戻されることで非汚染とされたエリアを、前記保護エリアに選定することを特徴とする請求項1又は2に記載の汚染浄化工法。
【請求項6】
前記汚染土の浄化に用いられる浄化用設備を、前記保護エリアの上に設置する設備設置工程を、前記保護層形成工程よりも後であって前記掘削除去工程よりも前に行うことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の汚染浄化工法。
【請求項7】
前記浄化用設備は、前記汚染土を洗浄浄化する土壌洗浄設備と、前記汚染土或いは前記埋め戻し工程で用いられる健全土を仮置きするための土壌仮置設備の少なくとも一方であることを特徴とする請求項6に記載の汚染浄化工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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