説明

断熱壁および断熱箱体

【課題】本発明は、省スペースで大容量の断熱箱体でかつ、高い断熱性能を有するため省エネ性能の高い断熱箱体を提供するもの。
【解決手段】複数の断熱区画で構成された箱体の本体と、本体を仕切る断熱仕切り部とを備え、複数の温度帯で構成された断熱箱体において、少なくとも繊維材料を含む芯材と、ガスバリア性に優れた包材からなる袋に真空封止された気体吸着デバイスを備えた真空断熱材を搭載し、前記気体吸着デバイスは芯材の厚み方向の中心より外被材に近い位置に寄って配置されるため、気体の吸着速度がより速くなり、短時間で高い真空度となり、長期間真空度を保持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空断熱材を適用した断熱箱体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、冷蔵庫の省エネルギー化や省スペース化を狙いに、断熱箱体の断熱性能を高める一手段として、高断熱性能を有する真空断熱材を利用する方法があり、省エネルギーの要請が益々高まる今日では、硬質ウレタンフォームと比較して数倍から10倍程度の断熱性能を有する真空断熱材を適切な範囲内で最大限に利用することにより断熱性能を向上させていくことが急務であるといえる。
【0003】
その中で、真空断熱材を備えた従来の断熱箱体としては、例えば特開2007−198622号公報(特許文献1)に開示されたものがある。
【0004】
以下、図面を参照しながら上記従来の断熱箱体を説明する。
【0005】
図7は特許文献1に記載されている冷蔵庫の側面断面図を示すものである。外箱と、内箱と、前記内箱と前記外箱と間に充填されるウレタン断熱材とからなる断熱壁を有する冷蔵庫において、前記外箱と前記内箱との間で前記外箱に密着して備えられた真空断熱材105と、前記真空断熱材105と前記外箱の間に構成された放熱パイプ120とを備え、前記放熱パイプ120は前記真空断熱材105の表面に埋設されている。
【0006】
本構成により、放熱パイプ120を真空断熱材105に密着固定できることにより、真空断熱材105に形成される放熱パイプ120の溝は従来に比べ狭小化でき、冷蔵庫の外箱の外観変形を防止し、かつアルミ廃止によるリサイクル性が向上できる。
【0007】
また、例えば昭61−24961(特許文献2)に開示されたものがある。
【0008】
以下、図面を参照しながら上記従来の断熱箱体を説明する。
【0009】
図8は特許文献2に記載されている冷蔵庫の側面断面図を示すものである。外箱と、内箱と、前記内箱と前記外箱と間に充填されるウレタン断熱材とからなる断熱壁を有する冷蔵庫において、前記ウレタン断熱材内には真空断熱材105が埋設されている。前記真空断熱材105は、無機質粉末あるいはグラスウール等の繊維あるいは有機発砲体等の芯材132とプラスチック、金属箔、金属蒸着フィルム等からなるラミネート製の包材132と前記包材132を透過してきたフロンガスを吸熱する活性炭、モレキュラーシーブ等の吸着剤138を多袋入した吸着部139を備えており、前記真空断熱材の前記吸着剤138の前記吸着部139は前記外箱と前記内箱の間の低温側となる箱の内側に配置されている。
【0010】
本構成により、前記真空断熱材105の前記包材132を透過してきたフロンガスを効果的に吸着する事が出来、少ない吸着剤の使用量で長期に亘りその断熱特性を維持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−198622号公報
【特許文献2】昭59−145122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来例に記載されている冷蔵庫では、冷蔵庫に埋設されている真空断熱パネルは、芯材と、外袋と、吸着部とからなり、その吸着部を真空断熱パネルの最も温度の低い部分に配置することにより、平衡吸着量が最も大きい状態で使用し、少ない吸着剤の使用量で長期間真空度を保持することができるとされているが、温度が高いと平衡吸着量が少なく、逆に温度が低いと平衡吸着量が多くなるという性質がある吸着材は一般的なものであって、吸着材料全てに当てはまるものでないため、逆の性質を持つ気体吸着デバイスに適応するとむしろ吸着能力が低下してしまう。
【0013】
このようなことから、本発明は、上記課題に鑑み、高い断熱性能を有するため省エネ性能の高い冷蔵庫を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記従来の課題を解決するために、複数の断熱区画で構成された箱体の本体と、本体を仕切る断熱仕切り部とを備え、複数の温度帯で構成された断熱箱体で、少なくとも芯材を外被材で内包して減圧密封した真空断熱材を搭載し、真空断熱材は気体吸着デバイスを内包している。真空断熱材の気体吸着デバイスのデバイス配置部は、芯材の厚み方向の中心より外被材に近い位置に寄って配置され、真空断熱材は外箱または内箱のうち、使用環境において高温側に近い箱体の側に配置されて、更にデバイス配置部は高温側に寄って配置されている。
【0015】
これによって、気体吸着デバイスが箱体のもっとも高温側に配置されているため、気体の吸着速度が速くなり、短時間で高い真空度となり、長期間真空度を保持することができる。また、断熱箱体を長期に渡り使用した場合でも、真空断熱材に搭載した気体吸着デバイスは外部から侵入してくる空気の吸着を継続して行えるので、真空断熱材の真空度維持を図ることができ、気体吸着デバイスの効果で低真空度となる真空断熱材は、熱伝導率が向上される。長期使用時でも低真空度は維持されるため、壁厚の薄壁化を行うことができ、庫内容量UPが可能となる。また、壁厚の薄壁化によって、使用する硬質ウレタンフォームの使用量も低減できコストダウンが図れるとともに製品重量も低減することができるため、搬入時の運搬性も向上する。
【発明の効果】
【0016】
気体の吸着速度が速くなり、短時間で高い真空度となり、長期間真空度を保持することができる。長期使用時でも真空断熱材の真空度維持ができ、真空断熱材の熱伝導率の劣化防止が図れ、省エネ性に優れた断熱箱体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1における冷蔵庫の斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における冷蔵庫の正面断面図
【図3】本発明の実施の形態1における冷蔵庫の縦断面図
【図4】本発明の実施の形態1における気体吸着デバイスを適用した真空断熱材の断面図
【図5】本発明の実施の形態1における図1のA−A´断面図
【図6】本発明の実施の形態1における気体吸着デバイスを適用した真空断熱材の経年劣化イメージ図
【図7】従来技術による冷蔵庫を説明する冷蔵庫の断面図
【図8】従来技術による冷蔵庫を説明する冷蔵庫の断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、複数の断熱区画で構成された箱体の本体と、本体を仕切る断熱仕切り部とを備え、複数の温度帯で構成された断熱箱体で、少なくとも芯材を外被材で内包して減圧密封した真空断熱材を搭載し、真空断熱材は気体吸着デバイスを内包している。真空断熱材の気体吸着デバイスのデバイス配置部は、芯材の厚み方向の中心より外被材に近い位置に寄って配置され、真空断熱材は外箱または内箱のうち、使用環境において高温側に近い箱体の側に配置されて、更にデバイス配置部は高温側に寄って配置されている。
【0019】
これによって、気体吸着デバイスのデバイス配置部は箱体のもっとも高温側に配置されるため、気体の吸着速度がより速くなり、短時間で高い真空度となり、長期間真空度を保持することができるとともに、真空断熱材に搭載した気体吸着デバイスは外部から侵入してくる空気の吸着を継続して行えるので、真空断熱材の真空度維持を図り、真空断熱材の熱伝導率の劣化を抑制することができ、気体吸着デバイスの効果で低真空度となる真空断熱材は、熱伝導率が向上される。長期使用時でも低真空度は維持されるため、壁厚の薄壁化を行うことができ、庫内容量UPが可能となる。また、壁厚の薄壁化によって、使用する硬質ウレタンフォームの使用量も低減できコストダウンが図れるとともに製品重量も低減することができるため、搬入時の運搬性も向上する。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。また、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0021】
なお、従来と同一構成及び差異がない部分については、詳細な説明を省略する。また、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1による断熱箱体の斜視図である。図2は本発明の実施の形態1による断熱箱体の正面断面図である。図3は本発明の実施の形態1による断熱箱体の縦断面図である。
【0023】
図に示すように、箱体を形成する断熱箱体101は、前方に開口する金属製(例えば鉄板)の面材である外箱124と硬質樹脂製(例えばABS)の面材である内箱125と、外箱124と内箱125の間に発泡充填された硬質ウレタンフォーム126からなる断熱箱体で、この本体101の上部に設けられた冷蔵室102と、冷蔵室102の下に設けられた上段冷凍室103と、冷蔵室102の下で上段冷凍室103に並列に設けられた製氷室104と、本体下部に設けられた野菜室106と、並列に設置された上段冷凍室103及び製氷室104と野菜室106の間に設けられた下段冷凍室105で構成されている。
【0024】
断熱箱体の本体101の天面部は、断熱箱体の背面方向に向かって階段状に凹みを設けて機械室119があり、第一の天面部108と第二の天面部109で構成されている。この階段状の凹部に配置された圧縮機117と、水分除去を行うドライヤ(図示せず)と、コンデンサ(図示せず)と、放熱用の放熱パイプ143と、キャピラリーチューブ118と、冷却器(図示せず)とを順次環状に接続してなる冷凍サイクルに冷媒を封入し、冷却運転を行う。
【0025】
前記冷媒には近年、環境保護のために可燃性冷媒であるR600aを用いる。
【0026】
ここで、真空断熱材127,128,129,130,131は、硬質ウレタンフォーム126とともに断熱箱体の本体101を構成している。
【0027】
ここで、真空断熱材127,128,129,130は、外箱124にそれぞれ天面、
背面、左側面、右側面の内側に接して貼り付けられている。また、真空断熱材131は、内箱125の底面に接して貼り付けられている。
【0028】
放熱パイプ143は、真空断熱材128,129,130の外箱124側に設置されている。
【0029】
また、冷蔵室102と製氷室104および上段冷凍室103とは第一の断熱仕切り部110で区画されている。
【0030】
また、製氷室104と上段冷凍室103とは第二の断熱仕切り部111で区画されている。
【0031】
また、製氷室104および上段冷凍室103と、下段冷凍室105とは第三の断熱仕切り部112で区画されている。
【0032】
断熱箱体の本体101の背面には冷却室123が設けられ、冷却室123内には、代表的なものとしてフィンアンドチューブ式の冷気を生成する冷却器107が断熱仕切壁である第二および第三の仕切り部111、112の後方領域を含めて下段冷凍室105の背面に上下方向に縦長に配置されている。また、冷却器107の材質は、アルミや銅が用いられる。
【0033】
冷却器107の近傍(例えば上部空間)には強制対流方式により冷蔵室102,製氷室104、上段冷凍室103、下段冷凍室105、野菜室106の各貯蔵室に冷却器107で生成した冷気を送風する冷気送風ファン116が配置され、冷却器107の下部空間には冷却時に冷却器107や冷気送風ファン116に付着する霜を除霜する除霜装置としてのガラス管製のラジアントヒータ136が設けられている。
【0034】
除霜装置は特に指定するものではなく、ラジアントヒータの他に、冷却器107に密着したパイプヒータを用いても良い。
【0035】
次に断熱箱体の冷却について説明する。
【0036】
圧縮機117から吐出された高温高圧の冷媒は、最終的に機械室119に配置されたドライヤ(図示せず)まで到達する間、特に外箱124に設置される放熱パイプ143において、外箱124の外側の空気や庫内の硬質ウレタンフォーム126との熱交換により、冷却されて液化する。
【0037】
次に液化した冷媒はキャピラリーチューブ118で減圧されて、冷却器107に流入し冷却器107周辺の庫内空気と熱交換する。熱交換された冷気は、近傍の冷気送風ファン116により庫内に冷気が送風され庫内を冷却する。
【0038】
この後、冷媒は加熱されガス化して圧縮器117に戻る。庫内が冷却されて冷凍室センサ(図示せず)の温度が停止温度以下になった場合に圧縮機117の運転が停止する。
【0039】
冷気送風ファン116は、内箱125に直接配置されることもあるが、発泡後に組み立てられる第二の仕切り部111に配置し、部品のブロック加工を行うことで製造コストの低減を図ることもできる。
【0040】
本実施の形態の発熱部とは、圧縮機117や放熱パイプ143を指す。
【0041】
次に、本実施の形態で使用した気体吸着デバイス137を用いた真空断熱材について説明する。
【0042】
気体吸着デバイス137を用いた真空断熱材138は、少なくとも繊維材料を含む芯材132と、ガスバリア性に優れた包材133からなる容器に真空封止された気体吸着デバイス137とを、ガスバリア性に優れた外被材135で被い、外被材135を真空封止後に、突起物を有する部材134によって包材133に穴を開け、包材内部と外被材内部を連通させてなる真空断熱材である。
【0043】
本実施の形態では、包材133からなる容器として、金属製の容器とし、容器内に粉末形状からなる気体吸着デバイス137を有するものとした。
【0044】
繊維材料を含む芯材132とは、芯材132の重量に対して繊維を1パーセント以上100パーセント以下含むものであって、繊維材料と繊維材料以外の複合体であっても良い。
【0045】
またガスバリア性に優れた包材133は、本実施の形態では金属製の容器としたが、気体難透過性の製袋可能なフィルムまたはシート状の部材である。例えば、ポリプロピレンフィルム、アルミニウム箔、低密度ポリエチレンの順にラミネートしたフィルムであってもよく、気体吸着デバイス137を包み込むことにより、周囲の空間と独立させるものであり、4方をヒートシールした袋、ピロー袋、ガゼット袋等がある。また、気体透過度が10[cm/m・day・atm]以下であることが好ましく、より望ましくは10[cm/m・day・atm]以下となるものである。
【0046】
気体吸着デバイス137とは、気体中に含まれる非凝縮性気体を吸着できる吸着材料と容器で構成されているものである。
【0047】
主な吸着材料として、高温で吸着材料が活性化される金属イオン交換したZSM−5型ゼオライトを用いている。さらに、ZSM−5型ゼオライトは、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを用い、特に窒素吸着能力の高い銅1価を70%以上占めたものとした。さらに銅1価の中の酸素三配位を80%以上にすることが望ましい。
【0048】
このZSM−5型ゼオライトは、温度によって活性が異なり、温度の上昇に伴って吸着能力が高くなるものである。
【0049】
この構成によって、空気中の概ね75%を有する窒素を常温状態で吸着できるため、高い真空度を得ることができる。
【0050】
主な容器としては、アルミニウム、鉄、胴、ステンレスなどの金属材料があり、本願発明のような吸着能力が高く減圧密封後に容器を開封するといった取り扱いを考慮するとアルミニウムが望ましい。
【0051】
突起物を有する部材134とは、周囲の曲率に比較して、曲率が著しく大きい部分を有するものである。曲率が大きい部分は、同一の力をより小さい面積で受けるため、単位面積あたりに加わる力が大きくなる。従って曲率が大きい部分が包材133に押し付けられた際、包材133に貫通孔が生じやすくなる。
【0052】
ガスバリア性に優れた外被材135は、本実施の形態では蒸着層フィルムとした。
【0053】
穴を開ける方法は、突起物に圧力を加えることによりなされるものである。
【0054】
連通とは、包材内部と包材外部で隔てられていた空間を一続きの空間にすることである。
【0055】
なお、繊維材料を含む芯材を用いて作製した真空断熱材138の熱伝導率は、粉末材料のみからなる芯材132を用いて作製した真空断熱材138の熱伝導率に比較して、低圧力領域では小さく、高圧力領域では大きい。従って、繊維材料を含む芯材132を用いて作製した真空断熱材138はその外被材135内部の圧力を低く維持することが重要である。
【0056】
また、気体吸着デバイス137のデバイス配置部139は、芯材132の厚み方向の中心より外被材135に近い位置に寄って配置し、このデバイス配置部139は外箱124または内箱125のうち、使用環境において高温側の配置されていることが望ましい。気体吸着デバイス137を用いた真空断熱材138の気体吸着デバイス137のデバイス配置部139は箱体のもっとも高温側に配置されるため、気体の吸着速度がより速くなり、短時間で高い真空度となり、長期間真空度を保持することができる。また、外被材135内部は圧力が低く維持され、繊維材料を含む芯材132を用いた真空断熱材138の熱伝導率は低く維持される。よって、外被材135内部の圧力が低く維持される。
【0057】
一般に、真空断熱材の熱伝導率は、芯材による熱伝導と、外被材内の残留ガスによる熱伝導の和により決定する。例えば、芯材が粉末を含む場合は、芯材内部に存在する気体の平均自由工程が短いため、気体による熱伝導率は非常に小さく、芯材による熱伝導が支配的である。
【0058】
一方、芯材が繊維の場合は、繊維同士の接点が少ないため、芯材の熱伝導率は非常に小さくなるが、気体の平均自由工程が大きいため、わずかな圧力上昇で、気体による熱伝導率が支配的になってしまう。従って、芯材が繊維のみからなるときは、このような効果が大きいため繊維芯材では外被材内部を低圧に保つことが、真空断熱材の熱伝導率を低減するために非常に有効な手段となる。
【0059】
ここで、繊維集合体とは、繊維のみからなる集合体であって、バインダーや酸、熱等で成型されていても良い。
【0060】
なお、真空断熱材は、内部に芯材を有しており、芯材はグラスウールなどの無機繊維集合体を加熱乾燥後、蒸着層フィルムと金属箔層フィルムを貼り合わせた外被材中に挿入し、内部を真空引きして開口部を封止することにより形成されている。
【0061】
蒸着層フィルムは、アルミ蒸着フィルムをナイロンフィルムと高密度ポリエチレンフィルムとで挟み込んだ複合プラスチックフィルムで、金属箔層フィルムは、アルミ箔をナイロンフィルムと高密度ポリエチレンフィルムとで挟み込んだ複合プラスチックフィルムである。
【0062】
また、蒸着層フィルムと金属箔層フィルムとのシール面は蒸着層フィルム側を一平面状とし、金属箔層フィルム側の面を立体的に構成している。そして、蒸着層フィルム側を外箱124もしくは内箱125に接して配置している。
【0063】
以上のように構成された断熱箱体について、以下その動作、作用について説明する。
【0064】
近年では、省エネとして環境への取り組みの中で、硬質ウレタンフォーム126と比較して数倍から10倍程度の断熱性能を有する真空断熱材を適切な範囲内で最大限に利用す
ることにより断熱性能や強度を向上させている断熱箱体も発売されている。
【0065】
その中で、図3、図5に示すように本実施の形態では、真空断熱材は気体吸着デバイスを内包するとともに、真空断熱材は、使用環境において高温側に近い、すなわち外箱側に配置したものである。また、真空断熱材に内包されている気体吸着デバイスのデバイス配置部は芯材の厚み方向の中心より外被材に近い位置に寄って配置され、真空断熱材は外箱または内箱のうち、使用環境において高温側に近い箱体の側に配置されて、更にデバイス配置部は高温側に寄って配置されている。
【0066】
上記構成によって、箱体のもっとも高温側に配置されるため、気体の吸着速度がより速くなり、短時間で高い真空度となり、長期間真空度を保持することができるとともに、真空断熱材に搭載した気体吸着デバイスは外部から侵入してくる空気の吸着を継続して行えるので、真空断熱材の真空度維持を図り、真空断熱材の熱伝導率の劣化を抑制することができる。
【0067】
放熱パイプ143は、図5のように、断熱箱体の本体101の外箱124の内側に配置されアルミテープ145により固定される。アルミテープ145は、硬質ウレタンフォーム126の充填される外箱124と内箱125の内部から外部へと配置される。つまり、アルミテープ145内の空気は外部と連通となっている。
【0068】
これは、断熱箱体の製造工程で硬質ウレタンフォーム126を発泡する際に発生する熱によりアルミテープ145内に存在する空気が膨張し、その圧力によって外箱124が変形するのを防止するためである。
【0069】
そのため、真空断熱材は硬質ウレタンフォーム126の内部となるが、放熱用パイプ143は硬質ウレタンフォーム126の外部へと配置されていることと、放熱用パイプ143自身を外箱124に貼り付ける際のアルミテープ145により空気層が生まれるため、外部空気と真空断熱材が直接的、もしくは硬質ウレタンフォーム126やアルミテープ145を介して間接的にも接触するのである。
【0070】
このため、断熱箱体を長期に渡り使用した際に、少なからず空気に触れている真空断熱材は時間経過からの変化とともに、外部から侵入してくる空気の影響を受け、内部真空度が劣化し膨張すると共に、断熱箱体外箱124への外観変形を及ぼすのである。
【0071】
上記のように、真空断熱材中の気体吸着デバイス137のデバイス配置部139は、圧縮機117や放熱パイプ143といった発熱部から近いい箱体側に設置し、また気体吸着デバイス137の容器が金属材料のため、発熱部からの熱を容器が吸収やすく、気体の吸着速度が速くなり短時間で高い真空度となり、長時間真空度を保持することができる。
【0072】
特に、本実施の形態の断熱箱体に少なくとも2本の放熱パイプが真空断熱材の表面に埋設されている場合、気体吸着デバイスは放熱パイプの間に配置されることが望ましい。これにより、放熱能力を増加し、省エネ性を向上させることができる。
【0073】
本実施の形態に用いた気体吸着デバイス137は、空気中の概ね75%程度の割合で存在する窒素を、常温でも吸着することができるため、真空断熱材内部の残留空気を低減でき、真空断熱材の真空度の向上や剛性の向上が図れ、熱伝導率の低減を行える。
【0074】
なお、断熱箱体内の温度は生鮮食品や飲料を貯蔵する概ね1℃〜5℃のプラス温度の冷蔵温度帯から、冷凍食品を貯蔵する概ね−18℃以下のマイナス温度の冷凍温度帯に区分けされている。
【0075】
また、本実施の形態に用いた気体吸着デバイス137のデバイス配置部は箱体の面材である壁面の高温側に配置されるため、気体の吸着速度がより速くなり、短時間で高い真空度となり、長期間真空度を保持することができる。
【0076】
さらに、真空断熱材に搭載した気体吸着デバイスは外部から侵入してくる空気の吸着を継続して行えるので、真空断熱材の真空度維持を図り、真空断熱材の熱伝導率の劣化を抑制することができ、気体吸着デバイスの効果で低真空度となる真空断熱材は、熱伝導率が向上される。長期使用時でも低真空度は維持されるため、壁厚の薄壁化を行うことができ、庫内容量UPが可能となる。
【0077】
また、壁厚の薄壁化によって、使用する硬質ウレタンフォームの使用量も低減できコストダウンが図れるとともに製品重量も低減することができるため、搬入時の運搬性も向上する。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上のように、本発明にかかる断熱箱体は、気体吸着デバイスが真空断熱材内部の残留空気や外部からの侵入空気も継続的に吸着することができるため、経年劣化後も含め、熱伝導率や本体外観の変形を抑制し、高い断熱性能を長期に渡り維持できる。よって、環境を配慮し省エネランニングコスト低減を目的とする家庭用断熱箱体、及び住宅用の断熱壁などに利用ができる。
【符号の説明】
【0079】
101 本体
124 外箱
125 内箱
127,128,129,130,138 真空断熱材
132 芯材
133 包材
137 気体吸着デバイス
139 デバイス配置部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の面材との間に真空断熱材を有した断熱壁であって、前記真空断熱材は、少なくとも繊維材料を含む芯材と、ガスバリア性に優れた包材からなる外被材に真空封止された気体吸着剤を備えた気体吸着デバイスを搭載し、前記真空断熱材の前記気体吸着デバイスのデバイス配置部は、前記芯材の厚み方向の中心より前記外被材に近い位置に寄って配置され、前記真空断熱材は前記2つの面材のうち、使用環境において高温側に近い側に配置されることを特徴とした断熱壁。
【請求項2】
外箱と内箱との間に断熱材を備え複数の断熱区画で構成された断熱箱体であって、少なくとも繊維材料を含む芯材と、ガスバリア性に優れた包材からなる袋に真空封止された気体吸着剤を備えた真空断熱材を搭載し、前記真空断熱材の前記気体吸着デバイスのデバイス配置部は、前記芯材の厚み方向の中心より前記外被材に近い位置に寄って配置され、前記真空断熱材は前記外箱または前記内箱のうち、使用環境において高温側に配置されることを特徴とする断熱箱体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−87806(P2013−87806A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226442(P2011−226442)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】