説明

断熱容器及びその製造方法

【課題】 本発明は、製造コストを低減させるとともに十分な断熱効果が得られ、更には異形状の設置スペースに対応可能な断熱容器及びその製造方法を提供することにある。
【解決手段】 液体を保温貯留する断熱容器であって、内部に液体を貯留し液体の流入口及び流出口5を備えた内部容器1と、該内部容器1を収容するシート状の外装材3と、該外装材3と内部容器1との間に断熱材2とガス吸着材4を封入され減圧空間とされた断熱空間とを備え、前期外装材3と内部容器1との接合部7に充填材6を設けた断熱容器とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を保温貯留する断熱容器に関するもので、特に車両用エンジンのLLCを保温貯留する断熱容器に適用する。
【背景技術】
【0002】
現在、世界的な省エネルギー、環境対策として燃費向上がうたわれ、エンジン始動時のコールドスタートパターン(始動時の燃費)が燃費モードの指標のひとつとなっている。
従来、車両用エンジンのLLCを断熱容器にて保温貯留し、エンジン始動時に保温されたLLCをエンジンに循環させることにより、エンジンの暖機運転を促進することが知られている(特許文献1)。
また、同じく容器を保温する手法として、金属箔または金属蒸着部を有するラミネートフィルムで袋を形成し、内部に空隙を有する断熱材を入れて減圧封止する真空断熱材を容器の周囲に形成したものが知られている(特許文献2)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−104974号公報
【特許文献2】特開2002−058604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両用エンジンの断熱容器には、始動時の燃費を向上させるために、エンジンの予熱で温められたLLCを、次のエンジンスタート時まで保温する高性能な保温性能、さらには製造コストの低減が求められている。また、エンジンルーム内に設置するため、省スペース化、異形状への対応が強く求められている。
【0005】
特許文献1に示される断熱容器は、金属製の内部容器と金属製の外部容器との間に真空状態の断熱空間が形成され、内部容器と外部容器とは溶接あるいはスピニング加工にて一体成形されている。
しかしながら、内部容器と外部容器とをステンレス等の金属製として製作した場合、製造コストが高く、さらに内部容器と外部容器との金属接合部からは熱橋(ヒートブリッジ効果)により熱が伝わり易く、十分な断熱効果が得られてはいなかった。また、熱橋を制御するため1mm以下の薄いステンレスが使用され、大気との気圧差での変形をふせぐために、形状も円筒形に限られ、設置スペースに適応した形状への設計には限界があり、搭載車種も制限されていた。
【0006】
一方、特許文献2に示される断熱構造は、板状の真空断熱材を形成した後、容器側面に巻きつけるため、容器との間に隙間(空気層)が生じやすく、更に、内部に収納される容器が円柱形状の場合、容器の側面に巻きつけた真空断熱材の端部の合わせ面、及び蓋部、底部と側面部の接合部に生じる隙間からの熱損失により、車両用エンジンの断熱容器に求められるような高性能な保温容器への適用は困難であった。
【0007】
本発明は、上記の問題点を鑑み、製造コストを低減させるとともに十分な断熱効果が得られ、更には異形状の設置スペースに対応可能な断熱容器及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、液体を保温貯留する断熱容器であって、液体の流入口及び流出口を備え液体を貯留する内部容器と、内部容器を収容するシート状の外装材と、内部容器と外装材との間に断熱材とガス吸着材が封入され減圧空間とされた断熱空間とを備えたことを特徴とする断熱容器を提供する。
請求項2に記載の発明では、前記内部容器がステンレススチール製、または、樹脂製であり、前記外装材が接着層を備えたラミネートフィルムであることを特徴とする断熱容器を提供する。
請求項3に記載の発明では、内部容器と外装材との接合部に充填材を設けたことを特徴とする断熱容器を提供する。
請求項4に記載された発明では、断熱材がグラスウール、ロックウール、セラミックファイバーのいずれかの無機繊維であり、吸着剤が酸化カルシウム、バリウム/リチウム合金、及び酸化コバルトからなることを特徴とする断熱容器を提供する。
請求項5に記載された発明では、液体を保温貯留する断熱容器の製造方法であって、内部に液体を貯留し液体の流入口及び流出口を備えた内部容器と、内部容器を収容して内部容器との間に断熱空間を形成するシート状の外装材とを備え、断熱空間内に断熱材とガス吸着材を封入して減圧空間とするとともに、前記外装材と内部容器との接合部に充填材を設けて接合することを特徴とした断熱容器の製造方法を提供する。
請求項6に記載された発明では、液体を保温貯留する断熱容器の製造方法であって、内部に液体を貯留し液体の流入口及び流出口を備えた内部容器と、該内部容器を収容して内部容器との間に断熱空間を形成するシート状の外装材とを備え、該断熱空間内に断熱材とガス吸着材を封入して減圧空間とするとともに、該外装材と接合する該内部容器の接合部の内側を予備加熱して該接合部を熱溶着することを特徴とした断熱容器の製造方法を提供する。ここで、予備加熱には、補助ヒーターによる加熱方法、あるいは熱風により加熱する方法などを利用することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)シート状の外装材によって内部容器と真空断熱層を一体化するため、高性能な真空断熱層を形成できる。その結果、例えば、車両用エンジンルームに配置された、LLC液の容器内部からの熱漏洩を低減し、自動車の燃費向上、特にエンジン始動時の燃費に効果が得られる。
(2)また、シート状の外装材によって内部容器と真空断熱層を一体化するため、様々な形状の内部容器にも対応でき、設置スペースにあわせた内部容器の設計およびその断熱層形成が可能となる。例えば、スペースの限られた車両用エンジンルーム内においても、LLC液を保温貯留する断熱容器を配置する設計が可能となる。
(3)さらに、内部容器をステンレス容器とし、外装材には安価なラミネートフィルムを使用することにより、製造コストを大幅に削減することができる。
(4)内部容器と外装材との接合部に充填材を設けることで、断熱空間を容易且つ確実に形成できるようになる。
(5)内部容器の接合部の内側を予備加熱することで、内部容器と外装材との熱融着が確実になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の断熱容器例を図1、図2に示す。本発明では、シート状のラミネートフィルム3を外装材として内部容器1と真空断熱層を一体化するため、様々な形状の内部容器1にも対応し、高性能な真空断熱層を形成することが可能である。また、図3には、内部容器1と外装材3との接合部7に充填材6を設けた断面図を示す。
この構造を実現させるため、本発明ではシート状のラミネートフィルム3を内部容器1の液体流出入口5に直接熱溶着し、断熱層の真空状態を維持している。但し、2枚のラミネートフィルム3と内部容器1の接する3重点では隙間が生じやすく、真空状態を維持することが難しい。そこで、本発明では充填材6を使用することにより隙間のできない熱溶着を可能とした。充填材6とは、ラミネートフィルム3の接着層11と同材質または異材質の熱可塑性樹脂で作製し、熱溶着時に溶融し隙間を埋めるもの、内部容器1の接合部7を加工して作製した突起、または、異材質で隙間の発生を制御し得る構造体を接合部7に貼り合せたものである。図4〜図6に充填材6の形状例を示す。
【0011】
次に、内容器材質1は金属製または樹脂製を用いる。保温性能の観点から、熱容量の大きい金属製が好ましく、特に熱伝導率が低いステンレス製が望ましい。しかし、更なるコストダウン、または、金属では対応が困難な容器形状の場合、樹脂で形成することも可能である。樹脂はアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、アクリルニトリルスチレン共重合体(AS)、EEA樹脂(EEA)、エポキシ樹脂(EP)、エチレン酢酸ビニルポリマー(EVA)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、液晶ポリマー(LCP)、MBS樹脂(MBS)、メラミンホルムアルデヒド(MMF)、ポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテルポリマー(PFA)、ポリイミド(PI)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリプロピレン(PP)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)、ポリスチレン(PS)、ポリテトラフルオロエチレンポリ四フッ化エチレン(PTFE)、ポリウレタン(PU)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、等から選択使用される。しかし、樹脂は金属に比べ気体透過量が大きいため、内部容器材質として樹脂を選択した場合、気体透過を制御するためにガスパリア層を形成することが望ましく、メッキ処理による金属層の形成が好適である。それにより、真空断熱層の真空度が長期間維持されることとなる。
【0012】
外装材であるラミネートフィルム3の模式図を図7に示す。保護層8/保護層(基材層)9/ガスバリア層10/接着層11という多層構造であるが、特に接着層11には接着層同士の接合、及び金属表面との接合が可能で、更には気体透過性の低いエチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステルが望ましく、特にエチレン−ビニルアルコール共重合体が好適である。また、接着層11とガスバリア層10の界面から断熱層への気体漏れを防ぐために、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムには、予め片面に金属蒸着層を設けておくと真空度の維持に効果がある。
【0013】
内包する断熱材2はグラスウール、ロックウール、セラミックファイバーのいずれかの無機繊維からなり、特に平均繊維径が5μm以下で、高温雰囲気で吸着水分を乾燥したグラスウールを使用することが望ましい。
また、断熱層は長期使用すると、断熱材2から発生するガス、接合部樹脂を透過するガス等により真空度が低下する恐れがあり、それを防ぐために断熱層内部のガスを吸着するための吸着剤4が不可欠である。吸着剤4は主に水分を吸着する酸化カルシウム、主に酸素、窒素を吸着するバリウム/リチウム合金、主に水素を吸着する酸化コバルトが望ましい。但し、それぞれの吸着剤を単独で封入した場合、バリウム/リチウム合金は断熱材から発生する水分を吸着し、目的である酸素、窒素の吸着能力が低下する問題があるため、バリウム/リチウム合金層を中間層とする、酸化カルシウム層、酸化コバルト層からなる3層構造とすることが好適である(図示省略)。
【0014】
ラミネートフィルム3を内部容器1に熱溶着するには、内部容器1の接合部7である液体の流入出口5の形状に合わせたシーラーを使用する。金属製の内部容器1を使用する際、内部容器接合部7への接着層11の熱融着を容易にすること、内部容器1からガスバリア層10であるアルミ箔までの距離を増やして接合部7の熱抵抗を大きくすることを目的として、予め、内部容器接合部7へ接着層11と同材質のシートを巻き付けておくことが望ましい。この時巻き付け量が多いほど熱抵抗は大きくなるが、接着層11樹脂を透過する気体量が増えるため、巻き付け量は50μm以下が望ましい。
また、2枚のラミネートフィルム3,3と内部容器1の接する3重点では隙間が生じやすいため、予め、充填材6を設置することが望ましい。充填材6とは、前記したようにラミネートフィルム3の接着層11と同材質で作製したロッドを接合部7に接合、内部容器1と同材質で作製したロッドを接合部7に接合、内部容器1の接合部7を加工して作製した突起、または、異材質で作製したロッドを接合部7に接合するものである(図3)。具体的には、図4の断面円形、図5の断面三角形、図6の接合部全周に形成されたものなどが考えられるが、これに限るものではない。
【0015】
充填材6を形成した内部容器に対して、グラスウール2を巻き付ける。この時のグラスウール2の巻き付け量は断熱容器に求められる断熱性能から決定される(詳しくは実施例2で説明する)。
グラスウール2を巻き付けた内部容器1の液体の流出入口5に対して、図8に示す通り、接着層11を対向させた2枚のラミネートフィルム3,3間に、内部容器1を前述の充填材6が3重点の位置となるよう設置し、シーラーで熱溶着する。
前述のシーラーはフッ素製高耐熱ゴム12を接合部形状に成形し、その上にリボン状の金属ヒーター13、更にガラスクロス14を配した構造となっている。また、シーラーによる融着条件は、内部容器1にラミネートフィルム3を押し付けた状態で、接着層11の融点より20℃高い温度で6秒以上保持する。但し、金属製内部容器1を使用した場合は、シーラーのヒーターのみでは内部容器1の熱伝導率、熱容量が大きいため、ラミネートフィルム3の内部容器接合部7の温度を接着層の溶着温度と同等にすることは困難であり、補助ヒーターにより内部容器接合部7を予備加熱する必要がある(図9)。なお、図9に示す予備加熱は、内部容器接合部7の内側に熱風ノズル15を差し込み、熱風16を送り込むことで内部容器接合部7を加熱するものであるが、電熱ヒーター等の加熱方式を用いることも可能であり、これに限るものではない。
【0016】
内部容器1とラミネートフィルム3とを熱融着した後、ラミネートフィルム3の両側面を熱溶着する。この時も前述同様、ラミネートフィルム3同士を押し付けた状態で接着層11の融点より20℃高い温度で6秒以上保持する。ラミネートフィルム3の両側面が熱融着され、ラミネートフィルム3を袋状に形成した後、ガス吸着剤となるゲッター材4を装填する。
この状態で真空チャンバーに入れ、チャンバー内を真空排気して内部圧力を10Pa以下とし、残りの1辺である容器底部を前述同様の条件で熱溶着して真空断熱層を形成する。
内部を真空にする目的は、断熱材の熱伝導率を下げ、断熱容器内部からの放散熱量を低減することにある。前述の繊維質断熱材の内部を伝播する熱は、気体を介して伝わる熱、固体を介して伝わる熱、輻射により伝わる熱の和である。減圧し内部の気体を排除することにより、気体を介して伝わる熱を抑制し、全体の熱伝導率を下げ放散熱量を低減させることができる。
【0017】
[実施例1]
下記に本発明に係る断熱容器の詳細な作製方法を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
内部容器1は、内容積約2.6L、肉厚8mmの直方体形状のポリエチレン製容器を使用し、内部容器1の一面に外径φ18.5mm、内径φ13mm、高さ30mmの液体の流出入口部5を設け、さらに流出入口部5には液体の流出入口の上面から10mmの位置に高さ10mmの図5に示す、ポリエチレン製充填材6を形成した。充填材6を除く内部容器1の表面にはABS樹脂を形成した後、無電解ニッケルメッキ層、更に電解銅メッキ層を形成してガスバリア層とした。
外装材3となるラミネートフィルムは保護層8となるポリエチレンテレフタラート層(12μm)/保護層9となるナイロン層(15μm)/ガスバリア層10となるアルミ箔(6μm)/接着層11となるポリエチレン層(50μm)という多層構成のものを使用した。
繊維質断熱材2とは旭ファイバーグラス製ホワイトウールを用い、ガス吸着剤4(ゲッター材)はサエス・ゲッターズ製COMBO3GETTERを使用した。
【0018】
内部容器1であるポリエチレン製容器の周囲にグラスウールを内部容器1の流出入口部5に設けた充填材6下面の位置となる厚さまで被覆する。このときのグラスウールの密度は、内部容器1の表面積に対して約0.25g/cm2であった。次に、内部容器1の液体の流出入口部5に設けた充填材6に、2枚の外装材3となるラミネートフィルムの接着面を対向させ、図8に示すようなシーラーで、接合部7の位置を160℃に調整し、加圧した状態で6秒間保持した。その後、外装材3となるラミネートフィルムの側面を通常のシーラーを用いて、前述同様160℃の温度で6秒間加圧して熱溶着し、内部容器1と熱溶着した2枚の外装材3(ラミネートフィルム)は、底部を除く3方が熱溶着されて袋状とした。更に、120℃のオーブン中で24時間放置しグラスウール中に含まれる水分を蒸発させた。
乾燥後はアルゴン雰囲気としたチャンバーに搬入し、外装材3が開放された底部より、ガス吸着剤4となるゲッター材を1個(約7g)装填した後、チャンバー内を10Pa迄減圧し、外装材3の開放部を真空チャンバー内に設けたヒーターにより接合させて封止し、厚さ10mmの真空断熱層を有する断熱容器を製作した。これを実施例1とする。
上記実施例1の断熱容器に約100℃の温水を注ぎ約10分間放置した後廃棄し、再度約100℃の温水を断熱容器内に注ぎ液体の流出入口部から熱電対を挿入して流出入口部をゴム栓で閉じた。断熱容器内の水温が95℃になった時点をスタートとして12時間継続して水温を測定した。
【0019】
[比較例1]
比較例1として、金属製2重管構造であって内部容器及び外部容器ともに厚さ約0.5mmのステンレス板を用いており、内部容器及び外部容器間に真空断熱層を設けた構造のものを使用した。また、比較例1の断熱容器の流体注ぎ口は蓋材により断熱された構造となっており、流体注ぎ口からの放熱が抑えられている。
この比較例1の断熱容器に、実施例1と同じ容量の約100℃の温水を注ぎ10分間放置した後廃棄し、再度約100℃の温水を断熱容器内に注ぎ、断熱容器内に熱電対を挿入した後注ぎ口を閉じた。断熱容器内の水温が95℃になった時点をスタートとして12時間継続して水温を測定した。
【0020】
[測定結果]
実施例1および比較例1の測定結果を図10に示す。
実施例1(本発明の断熱容器)は95℃の温水を12時間経過後に約83℃を維持し、比較例1では95℃の温水を12時間経過させた後の温度は約78℃であった。この結果、実施例1による断熱容器は、比較例1と同等以上の断熱性能を有することが証明された。尚、上記比較例1として用いた金属製2重管構造の断熱容器は市販の魔法瓶タイプであり、内部容器及び外部容器ともに厚さ約0.5mmのステンレス板を用いており、内部容器及び外部容器間に真空断熱層を設けた構造のものである。また、比較例1の断熱容器の流体注ぎ口は蓋材により断熱された構造となっており、流体注ぎ口からの放熱が抑えられている。
【0021】
[実施例2]
次に、実施例2として、グラスウール2の巻き付け量が断熱容器に求められる断熱性能から決定される具体例を紹介する。
例えば、0.25g/cm2の巻き付け量で厚さ10mmの真空断熱層と、0.13g/cm2で厚さ5mmの真空断熱層と、0.38g/cm2で厚さ15mmの真空断熱層を備えた断熱容器に、それぞれ95℃の水を入れて12時間後の水温を測定すると、5mm厚の場合では約70℃、10mm厚の場合では約78℃、15mm厚の場合では約82℃の結果となった。
【0022】
[実施例3]
また、実施例3として、本発明に係る断熱容器の材質の組み合わせ例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
例(A)
・内部容器 : ステンレス
・充填材 : ステンレス(加工)
・接着層 : エチレン−ビニルアルコール共重合体
例(B)
・内部容器 : ステンレス
・充填材 : エチレン−ビニルアルコール共重合体
・接着層 : エチレン−ビニルアルコール共重合体
例(C)
・内部容器 : ポリエチレン
・充填材 : ポリエチレン
・接着層 : ポリエチレン
例(D)
・内部容器 : ポリプロピレン
・充填材 : ポリポロピレン
・接着層 : ポリプロピレン
例(E)
・内部容器 : ABS樹脂
・充填材 : ABS樹脂(加工)+金属被膜
・接着層 : エチレン−ビニルアルコール共重合体
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によれば、液体を保温貯留する断熱容器として利用でき、特に車両用エンジンのLLCを保温貯留する断熱容器に適用するものである。その他に、電気ポットなどの保温容器あるいは液体ガスなどの保冷容器にも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る断熱容器例を示す断面図。
【図2】本発明に係る断熱容器例を示す断面図。
【図3】内部容器と外装材との接合部に充填材を配置した断面図(図1のA−A’断面図)。
【図4】充填材の形状例を示す断面図。
【図5】充填材の形状例を示す断面図。
【図6】充填材の形状例を示す断面図。
【図7】外装材であるラミネートフィルムの模式図。
【図8】内部容器と外装材の接合部の接合方法を示す説明図。
【図9】内部容器と外装材の接合部の予備加熱を示す説明図。
【図10】実施例1および比較例1の測定結果を示すグラフ。
【符号の説明】
【0025】
1:内部容器
2:繊維質断熱材(グラスウール)
3:外装材(ラミネートフィルム)
4:吸着剤(ゲッター材)
5:液体の流出入口
6:充填材
7:接合部
8:保護層(ナイロン層)
9:保護層(基材層)(ポリエチレンテレフタラート層)
10:ガスバリア層(アルミ箔)
11:接着層(エチレンビニルアルコール層)
12:高耐熱ゴム
13:リボン状の金属ヒーター
14:ガラスクロス
15:熱風ノズル
16:熱風

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を保温貯留する断熱容器であって、液体の流入口及び流出口を備え液体を貯留する内部容器と、該内部容器を収容するシート状の外装材と、該内部容器と外装材との間に断熱材とガス吸着材が封入され減圧空間とされた断熱空間とを備えたことを特徴とする断熱容器。
【請求項2】
前記内部容器がステンレススチール製、または、樹脂製であり、前記外装材が接着層を備えたラミネートフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の断熱容器。
【請求項3】
前記内部容器と外装材との接合部に充填材を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の断熱容器。
【請求項4】
前記断熱材が、グラスウール、ロックウール、セラミックファイバーのいずれかの無機繊維であり、前記吸着剤が酸化カルシウム、バリウム/リチウム合金、及び酸化コバルトからなることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の断熱容器。
【請求項5】
液体を保温貯留する断熱容器の製造方法であって、内部に液体を貯留し液体の流入口及び流出口を備えた内部容器と、該内部容器を収容して内部容器との間に断熱空間を形成するシート状の外装材とを備え、該断熱空間内に断熱材とガス吸着材を封入して減圧空間とするとともに、前記外装材と内部容器との接合部に充填材を設けて接合することを特徴とした断熱容器の製造方法。
【請求項6】
液体を保温貯留する断熱容器の製造方法であって、内部に液体を貯留し液体の流入口及び流出口を備えた内部容器と、該内部容器を収容して内部容器との間に断熱空間を形成するシート状の外装材とを備え、該断熱空間内に断熱材とガス吸着材を封入して減圧空間とするとともに、該外装材と接合する該内部容器の接合部の内側を予備加熱して該接合部を熱溶着することを特徴とした断熱容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−105748(P2008−105748A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163023(P2007−163023)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】