説明

断熱水槽

【課題】通気口からの放熱を抑制された通気用具、及び、この通気用具の設けられた断熱水槽を提供する。
【解決手段】通気弁34は、弾性膜で構成され、連通路22Rを横切ると共に、内側筒部材30の筒内が外側筒部材22側と貯水空間R側とに区画されるように配置され、外縁が分割された内側筒部材30の間に挟み込まれている。また、通気弁34は、円の直径方向に切込部36が構成されて2分割されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱水槽に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数のパネル部材を接合して形成される水槽が知られている。このような水槽では、一般的に、水槽への水の補給の際に内部が正圧となったり、水槽から放水した際に内部が負圧となったりすることを抑制するために、通気口が設けられている(特許文献1、2参照)。
【0003】
一方、このような水槽に断熱、保温機能を付加して、水槽内に温水を貯留する断熱水槽が提案されている。この断熱水槽は、内部に貯留されている湯の温度が低下しないように、様々な工夫がなされている。しかしながら、通気口から外部へ熱が逃げてしまい、水温が低下してしまうという問題がある。水温が低下すると、一定温度の維持が求められている場合には、当該温度となるように再加熱しなければならす、温度維持のための費用が高くなると共に、加熱装置の稼働時間も長くなり、加熱装置の耐久性にも影響がでてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−273601号公報
【特許文献2】特開平9−175595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮してなされたものであり、貯水空間の熱が通気口を介して外部へ放熱されにくく、保温性を向上させた、断熱水槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の本発明の断熱水槽は、 温水を貯留する水槽と、筒内に連通路が構成され、前記水槽の内部に構成される貯水空間と前記水槽外とを連通させ、前記水槽外に突出した外側筒部及び前記外側筒部から延出され前記貯水空間内に配置される内側筒部を有する連通筒と、前記連通筒の前記外側筒部側の開口を覆う上蓋部材と、前記上蓋部材の下側と前記連通筒の上部との間に構成され、前記連通筒の筒内と筒外とを連通させる連通口と、中央部に切込部が構成された弾性膜で構成され、前記通気筒の前記内側筒部に設けられて前記貯水空間側と前記連通口側とを区画し、通常時には前記切込部が閉じて前記貯水空間を閉鎖し、前記貯水空間内圧が正圧及び負圧になると、弾性変形により前記切込部に隙間が構成されて前記貯水空間が開放する通気弁と、
を有し、前記水槽に設置された通気用具と、を備えている。
【0007】
本発明の断熱水槽は、温水を貯留する水槽であって、通気を通気用具で行っている。通気用具は、水槽の内部に構成される貯水空間と水槽外とを連通させる連通筒を有している。連通筒の筒内には、連通路が構成され、水槽外に突出した外側筒部と貯水空間内に配置される内側筒部とを有している。連通筒の外側筒部側の開口は、上蓋部材で覆われている。上蓋部材により、外部からの異物の水槽内への進入が阻止されている。上蓋部材の下側と連通筒の上部との間には、連通筒の筒内と筒外とを連通させる連通口が構成されている。そして、連通筒には通気弁が設けられている。通気弁は、貯水空間側と連通口側とを区画して、通常時、すなわち、貯水空間内が大気圧の時には、弾性膜に構成された切込部が閉じて貯水空間は閉鎖され、貯水空間内圧が正圧または負圧となった場合に弾性膜の弾性変形により切込部に隙間が構成されて記貯水空間が開放される。
【0008】
本発明によれば、通気弁により、貯水空間側と連通口側とが区画されて、貯水空間が閉鎖されているので、水槽内の熱が連通口を通って外部へ放出されることを抑制することができる。また、通気弁は、貯水空間内圧が正圧となった場合に貯水空間の内側から押されて弾性膜の弾性変形により切込部に隙間が構成され貯水空間を開放すると共に、貯水空間内圧が負圧となった場合に貯水空間の外側から押されて同様に弾性膜の弾性変形により切込部に隙間が構成され前記貯水空間を開放する。このように、貯水空間内圧の変化を利用して、簡易開閉動作を行うことができる。
【0009】
また、通気弁を、貯水空間内に配置される内側筒部に配置しているので、連通筒の外側筒部に設けた場合と比較して、貯水空間からの熱の放出を、効果的に抑制することができる。
【0010】
また、通気弁を弾性膜で形成することにより、貯水空間内圧変化に応じて弾性変形させて、貯水空間を簡易に開閉することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明の断熱水槽によれば、貯水空間の熱が通気口を介して外部へ放熱されにくく、保温性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る断熱水槽の斜視図である。
【図2】本実施形態に係る通気用具の分解斜視図である。
【図3】本実施形態に係る通気用具が取り付けられた状態(通気弁閉鎖)を示す断面図である。
【図4】本実施形態に係る通気用具が取り付けられた状態(通気弁開放)を示す断面図である。
【図5】本実施形態に係る通気用具の通気弁の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る断熱水槽について、図面に基づき説明する。
【0014】
図1に示されるように、本実施形態の断熱水槽10は、屋外に配置されて温水の貯水に用いられるものであって、水槽を支持する基礎台12上に設置されている。断熱水槽10は、天井部14、側面部16、及び、底面部(不図示)を有し、各々が複数のパネル部材を組み付けて構成され、内部に貯水空間Rが構成されている。貯水空間Rには、常温よりも高い温度の温水が貯留される。断熱水槽10には、加温装置としてヒートポンプ給湯システム装置11が接続されており、貯水空間R内の水を加熱できるようになっている。
【0015】
断熱水槽10の天井部14には、取付穴14Aが構成されており(図3参照)、取付穴14Aに通気用具20が設置されている。通気用具20は、図2に示されるように、外側筒部材22、及び、内側筒部材30を備えている。
【0016】
外側筒部材22は円筒形状とされ、本体部24、フランジ部26、及び、取付部28を有している。本体部24は、天井部14から突出するように配置されている。取付部28は、本体部24と一体的に形成されて、貯水空間R内に挿入されている。取付部28の外周面には、後述する内側筒部材30の雌ネジ30Nと螺合する雄ネジ28Nが形成されている。本体部24及び取付部28の外径は、取付穴14Aよりも小径とされており、取付部28が取付穴14Aを挿通可能になっている。
【0017】
フランジ部26は、本体部24の外周面から径方向外側に張り出して取付穴14Aよりも外径が大径とされており、止水部材29を介して天井部14の上部に配置されている。止水部材29は、内径が取付穴14Aと略同径、外径がフランジ部26の外径と略同径の、板状リング形状とされ、樹脂、ゴムなどの弾性変形可能な材料で形成されている。外側筒部材22の筒内空間は、後述する内側筒部材30の筒内空間と共に、連通路22Rを構成している。(図3参照)本体部24の先端側には、メッシュ状の網板40が筒軸と直交するように配置されている。網板40は、本体部24の先端部24Aに挟み込まれるように取り付けられ、連通路22Rを横切ると共に、外側筒部材22の側面から外側に突出され、円板形状とされている。
【0018】
内側筒部材30は、短尺の筒状とされ、筒軸方向に突出する突起32が筒端に複数(本実施形態では4つ)形成されている。また、内側筒部材30は、貯水空間R内に配置され、筒内空間は、外側筒部材22の筒内空間と共に連通路22Rを構成している。内側筒部材30と外側筒部材22とで、連通筒が構成され、連通路22Rを介して貯水空間Rが外部と連通されている。内側筒部材30は、筒軸方向に2分割されており、2分割された一方の内壁に取付部28の雄ネジ28Nと螺合される雌ネジ30Nが形成されている。外側筒部材22の取付部28を断熱水槽10の外側から取付穴14Aに挿入すると共に、貯水空間R内側に配置された内側筒部材30の雌ネジ30Nへ雄ネジ28Nを螺合させて、通気用具20が取り付けられる。このとき、突起32とフランジ部26で天井部14の取付穴14A周りが挟持されて、通気用具20が立設される。
【0019】
内側筒部材30の分割部分(筒軸方向の中間部)には、通気弁34が設けられている。通気弁34は、弾性膜で構成され、連通路22Rを横切ると共に、内側筒部材30の筒内が外側筒部材22側と貯水空間R側とに区画されるように配置され、外縁が分割された内側筒部材30の間に挟み込まれている。また、通気弁34は、図5にも示されるように、円の直径方向に切込部36が構成されて略2分割されている。切込部36は、貯水空間R内が大気圧の時には、閉鎖されている。また、切込部36は、貯水空間Rの内圧が正圧(大気圧よりも高い内圧)となった場合に、貯水空間Rの内側からの圧力により押されて開き、貯水空間Rから空気が排気されるように弾性変形可能とされている。また、貯水空間Rの内圧が負圧(大気圧よりも低い内圧)となった場合に、貯水空間Rの外側からの圧力により押されて開き、貯水空間Rへ空気が流入するように弾性変形可能とされている。
【0020】
通気弁34は、樹脂材、ゴム材などの、弾性変形可能な膜状部材で構成することができる。例えば、(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体合成ゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)などを用いることができる。SEBSは、復元性、柔軟性に優れ、EPDMは、耐熱性、耐候性、耐オゾン性にすぐれる。また、通気弁34は、断熱効果のある部材であることが好ましい。
【0021】
外側筒部材22の上部には、上蓋部材42が配置されている。上蓋部材42は、逆椀状とされ、外側筒部材22の上部開口を覆うと共に、網板40の外周端により外側筒部材22の先端部24Aとの間が離間するように支持されている。この離間部分に、連通路22Rと外部とを連通させる連通口22Aが構成されている。上蓋部材42の外縁部42Aは、先端部24Aよりも低い位置に配置されている。
【0022】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0023】
貯水空間R内が大気圧の時には、図3に示されるように、切込部36の両側が互いに当接された状態となって、通気弁34は閉鎖されている。貯水空間Rに水が供給されて、貯水空間Rの内圧が正圧(大気圧よりも高い内圧)になると、図4に示されるように、通気弁34は、貯水空間Rの内側からの圧力により押されて外側開放位置P1のように弾性変形し、切込部36が開く。これにより、貯水空間Rから空気が排気される。
【0024】
また、貯水空間Rから水が流出されて、貯水空間Rの内圧が負圧(大気圧よりも低い内圧)となった場合に、通気弁34は、貯水空間Rの外側からの圧力により押されて内側開放位置P2のように弾性変形し、切込部36が開く。これにより、外部から貯水空間Rへ空気が流入する。
【0025】
本実施形態の通気用具20は、上記のように通気弁34を有しているので、貯水空間Rの内圧が大気圧の時には、連通路22Rを通って貯水空間R内の熱が外部へ放出されにくくなり、断熱水槽10の保温性を高めることができる。また、貯水空間R内が正圧、又は負圧となって、通気が必要な場合には、貯水空間R内の圧力変動により、自動的に通気弁34が開放されると共に、通気が不要となった時に自動的に閉鎖されるので、簡単な構成で通気機能を維持することができる。
【0026】
なお、本実施形態では、通気弁34を貯水空間R内に配置された内側筒部材30に設けたが、通気弁34は外側筒部材22側に設けてもよい。通気弁34を貯水空間R内、特に、取付穴14Aに近い位置に設けることにより、より効果的に放熱を抑制することができる。
【符号の説明】
【0027】
10 断熱水槽
20 通気用具
22 外側筒部材
22A 連通口
22R 連通路
30 内側筒部材
34 通気弁
36 切込部
42 上蓋部材
R 貯水空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水を貯留する水槽と、
筒内に連通路が構成され、前記水槽の内部に構成される貯水空間と前記水槽外とを連通させ、前記水槽外に突出した外側筒部及び前記外側筒部から延出され前記貯水空間内に配置される内側筒部を有する連通筒と、
前記連通筒の前記外側筒部側の開口を覆う上蓋部材と、
前記上蓋部材の下側と前記連通筒の上部との間に構成され、前記連通筒の筒内と筒外とを連通させる連通口と、
中央部に切込部が構成された弾性膜で構成され、前記通気筒の前記内側筒部に設けられて前記貯水空間側と前記連通口側とを区画し、通常時には前記切込部が閉じて前記貯水空間を閉鎖し、前記貯水空間内圧が正圧及び負圧になると、弾性変形により前記切込部に隙間が構成されて前記貯水空間が開放する通気弁と、
を有し、前記水槽に設置された通気用具と、
を備えた断熱水槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−91814(P2012−91814A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239881(P2010−239881)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】