説明

断線検査方法

【課題】導電糸を含む布材について、最終製品に組み込むための大きさに裁断する前の段階で導電糸の断線を検査可能とする。
【解決手段】導電糸と非導電性の他の繊維とを含む布材中の前記導電糸の断線を検査する断線検査方法であって、布材における導電糸の配向方向の両端部において、他の繊維を除去して前記導電糸の端部を露出させる露出工程と、露出工程で露出させた導電糸の両端部に通電手段を接続して該導電糸に通電し、導電糸の抵抗値または発熱の程度によって該導電糸の断線の有無を検出する断線検出工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電糸と非導電性の他の繊維とを含む布材中の導電糸の断線を検査する断線検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導電性の繊維(導電糸)を含む布材がある。このような布材は、導電糸に通電することにより、面状のヒータ、静電容量式センサあるいはアンテナ等として機能させることができ、例えば、自動車のシートの表皮材として活用されている。例えば、下記特許文献1には、タテ糸ないしヨコ糸の少なくとも一部を導電糸とした織物であって、導電糸に通電することで発熱可能とされた布材が開示されている。このような織物では、導電糸が織物組織中で浮き沈みしているため、そのままでは、効率よく通電手段を接続するのが難しい。そこで、織物を自動車のシートに取付けるための大きさに裁断した上で、導電糸の配向方向の両端部に金属テープを貼付し、該金属テープを介して車載電源が接続されている。つまり、金属テープの“面”を導電糸の“点”に接触させることで、該金属テープを介して効率よく通電することが可能となっているのである。また、特許文献1の織物では、40本程度の多数の導電糸を一群として加熱帯が形成されており、その加熱帯の両端部が電気的に接続されることで一群の導電糸が一つの回路中で並列に接続されている。それにより、加熱帯を構成する導電糸のうちの1本又は2本が断線したとしても、加熱帯全体としてみれば、抵抗値に大きな影響を生じさせず、概ね一定の発熱効果を発揮するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−227384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、布材中の導電糸には、布材の製造過程で負荷がかかることがあり、断線や損傷の可能性がある。特に、染色工程では揉み操作による断線や損傷が懸念される。上記従来の導電糸を含む織物を用いれば、断線した導電糸が導電糸群(加熱帯)のうちの1本又は2本のみであれば、概ね一定の発熱効果を発揮することができる。しかし、もっと多くの導電糸が断線した場合については、何ら対策は講じられていない。したがって、従来は、自動車のシート等の最終製品に組み込むための大きさに裁断され、金属テープが貼付され、最終製品に組み込まれて通電されることではじめて、その発熱の度合いから不具合が発見されることとなり、当該最終製品全体が無駄になる可能性があった。
【0005】
そこで、本発明者らは、最終製品に組み込むための大きさに裁断する前の布材において導電糸の断線検査をすることを想起した。裁断前の布材において導電糸の断線を検出することができれば、該断線箇所を避けて最終製品に組み込むための構成ピースを採取することができる。しかし、従来、裁断前の布材において導電糸の断線を検査する発想自体が無く、その具体的な方法は見当たらなかった。仮に、導電糸の外観から断線や損傷を見つけ出そうとするならば、X線等で導電糸だけを投影することはできると考えられる。しかし、導電糸が布材の組織中において、浮き沈みしたり、他の繊維と重複したりしているため、その断線や損傷を確実に検出することは困難であり、実用性は乏しい。
【0006】
そこで、本発明の課題は、導電糸を含む布材について、最終製品に組み込むための大きさに裁断する前の段階で導電糸の断線を検査可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、導電糸と非導電性の他の繊維とを含む布材中の前記導電糸の断線を検査する断線検査方法であって、前記布材における前記導電糸の配向方向の両端部において、前記他の繊維を除去して前記導電糸の端部を露出させる露出工程と、前記露出工程で露出させた導電糸の両端部に通電手段を接続して該導電糸に通電し、前記導電糸の抵抗値または発熱の程度によって該導電糸の断線の有無を検出する断線検出工程と、を備えることを特徴とする断線検査方法である。
【0008】
この断線検査方法によれば、導電糸の端部を露出させ、通電して断線の有無を検出するため、導電糸が布材において浮き沈みしていたり、他の繊維と重複していたりしても断線や損傷を検出することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、導電糸を含む布材について、最終製品に組み込むための大きさに裁断する前の段階で導電糸の断線を検査可能とすることができる。その結果、断線部分の最終製品への混入を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態1に係る断線検査方法のフローチャートである。
【図2】本発明の実施形態1に係る断線検査方法の概念を布材の側方から見た側面図として示す図である。
【図3】図2に示されるIII部分を上方から見た平面図として示す図である。
【図4】本発明の実施形態1に係る他の繊維を除去可能な手段(1)を模式的に示した図である。
【図5】本発明の実施形態1に係る他の繊維を除去可能な手段(2)を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本発明の実施形態で断線検査の対象となる布材について説明する。断線検査の対象となる布材には、導電糸と、非導電性の他の繊維とが含まれている。
【0012】
<導電糸>
導電糸は、通電可能な導電性の繊維状材料であり、典型的に比抵抗(体積抵抗率)が100〜10-12Ω・cmである。比抵抗(体積抵抗率)は、例えば、「JIS K 7194」に準拠して測定することができる。導電糸として、例えば、炭素繊維のフィラメント、金属線及びメッキ線材等が挙げられる。
【0013】
上記炭素繊維としては、例えば、ポリアクリロニトリル系炭素繊維(PAN系炭素繊維)やピッチ系炭素繊維が挙げられる。なかでも、焼成温度1000℃以上の炭素繊維(炭素化繊維、黒鉛化繊維、黒鉛繊維)は、良好な電気伝導性を有する。
【0014】
上記金属線としては、その材質として、金、銀、銅、黄銅、白金、鉄、鋼、亜鉛、錫、ニッケル、ステンレス、アルミニウム及びタングステンを例示できる。これらの金属線は、例えば、ポリエステル繊維などの他の繊維材料を芯糸とし、金属線を鞘糸とし、S又はZ撚方向に金属線を巻きつけた、複合糸の形態とされていてもよい。また、金属線は、その表面に、ウレタン、アクリル、シリコーン、ポリエステル等の樹脂コーティングの施されたものであってもよい。
【0015】
上記メッキ線材は、非導電性又は導電性の繊維材料を芯部とし、該芯部の表面の全体または一部に形成された金属又は合金のメッキ部を有する。芯部として用いられる非導電性の繊維として、例えば、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミドPBO繊維、ポリアクリレート繊維、PPS繊維、PEEK繊維、ポリイミド繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維及びボロン繊維が挙げられる。メッキ処理に用いられる金属として、例えば、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、鉄(Fe)、鉛(Pb)、白金(Pt)、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)、コバルト(Co)及びパラジウム(Pd)が挙げられる。また、メッキ処理に用いられる合金として、例えば、Ni−Sn、Cu−Ni、Cu−Sn、Cu−Zn及びFe−Niが挙げられる。
【0016】
<他の繊維>
他の繊維は非導電性の繊維であり、植物系及び動物系の天然繊維、レーヨンなどの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、ナイロンやポリエステル等の樹脂からなる合成繊維及びこれらの混紡繊維が例示される。これらの繊維は比抵抗が108Ω・cmを超える絶縁繊維である。
【0017】
布材における導電糸の含有形態は限定されない。例えば、織物又は編物を導電糸と他の繊維とを用いて形成することで、導電糸が織り込まれた、又は編み込まれた布材を断線検査の対象とすることができる。また、他の繊維で形成した織物、編物または不織布をベースに導電糸を貼付し、あるいは縫い込むなどして保持させた布材も断線検査の対象とすることができる。
【0018】
次に、断線検査方法について説明する。本発明の断線方法において、断線検査方法は、少なくとも露出工程と断線検出工程とを備える。以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0019】
(実施形態1)
図1に示されるように、本実施形態の断線検査方法は、露出工程、位置検知工程、断線検出工程、断線位置マーキング工程及び露出部分削除工程を順に備える。本実施形態では、図3に示されるように、導電糸21の織り込まれた布材11を断線検査の対象とした場合を取り上げ、その断線検査方法を説明する。布材11は、タテ糸として他の繊維13を用い、ヨコ糸として他の繊維13と導電糸21とを用いて形成した織物である。図3では、布材11における導電糸21の配設位置をより明確にするため、導電糸21のみを線で示している。布材11の導電糸21以外の部分は他の繊維13で構成されている。図3に示されるように、布材11において、導電糸21は、幅方向に沿い、流れ方向に間隔を置いて配設されている。本実施形態では、図2に示されるように、巻物状の原反としての布材11を送出装置41で繰り出して一旦広げ、巻取装置43で巻き取りながら、布材11の広がった状態で移送されている部分において断線検査する。
【0020】
[露出工程]
露出工程は、他の繊維13を除去可能な手段31により、布材11における導電糸21の配向方向の両端部において他の繊維13を除去して導電糸21を露出させる工程である。つまり、導電糸21を残して他の繊維13を除去することで、布材11の両端部11a,11aに導電糸21を露出させる工程である。露出工程において、他の繊維13を除去する手段は限定されず、物理的又は化学的に他の繊維13を除去すればよい。
【0021】
他の繊維13を除去可能な手段31として、好ましくは、導電糸21と他の繊維13との融点や燃えやすさの差を利用することができる。導電糸21が他の繊維13よりも耐熱性に優れる場合に有効である。導電糸21として用いられる金属線は、一般に、他の繊維として用いられる天然繊維や合成繊維よりも耐熱性に優れ、高融点で燃えにくい。燃えやすさ(燃焼性)の指標としては燃焼性の指標としては限界酸素指数(LOI)を用いることができる。限界酸素指数(LOI)は、「JIS K 7201 高分子材料の酸素指数燃焼試験方法」や「JIS L 1091(1999) 8.5E−2法(酸素指数法試験)」に準拠して測定できる。例えば、他の繊維13として用いられる天然繊維は、LOIが26未満であることが多い。例えば、綿のLOIは、18〜20であり、羊毛のLOIは24〜25である。また、合成繊維のポリエステルのLOIは18〜20でありナイロンのLOIは20〜22である。これに対して、導電糸21として用いられるステンレス繊維のLOIは49.6であり、炭素繊維(PAN系炭素繊維及びピッチ系炭素繊維)は、非溶融性であり、LOIが60.0以上である。導電糸21の方が他の繊維13比べて耐熱性に優れることを利用した他の繊維13を除去可能な手段31としては、以下の2つの手段を例示することができる。
【0022】
<他の繊維13を除去可能な手段(1)>
布材11の端部11aの一定幅部分において、加熱手段により、他の繊維13だけを溶融させ、或いは燃焼させて除去する。すなわち、他の繊維13は溶融ないし燃焼するが導電糸21は溶融も燃焼もしない温度で加熱することにより、他の繊維13だけを溶融させ、或いは燃焼させて除去する。図4には、この他の繊維13を除去可能な手段(1)の概略を示すため、他の繊維13を除去可能な手段31での加熱手段による加熱領域LP1に格子模様を付して示した。図4に示されるように、布材11の他の繊維13が溶融し、或いは燃焼することで除去されて布材11の端部11aに導電糸21(21a)だけが残り、導電糸21(21a)が布材11の端から幅方向外方に延びて露出する。例えば、導電糸21がSUS線、他の繊維13がポリエステルである場合、SUS線(例えばSUS316)の融点は1371〜1450℃であり、ポリエステル繊維の融点は264℃であるから、500〜1000℃加熱することで他の繊維13のみを溶融させて除去することができる。
【0023】
上記加熱手段として、布材11と物理的に接触可能な加熱装置(パンチ機構やハサミ機構等)や、レーザなどの光学的な加熱手段を例示できる。なかでもレーザは正確な温度(出力)の制御が可能であり好適である。レーザとしては、例えば、CO2レーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ、UVレーザ、半導体レーザ、ファイバレーザ、LDレーザ、LD励起固体レーザが挙げられる。なかでも有機物(他の繊維13)への吸収が高いCO2レーザが好ましい。例えば、CO2レーザの出力装置として、三菱炭酸ガスレーザ加工機(形式:2512H2、発信機形式名:25SRP、レーザ定格出力:1000W)を加熱手段として使用する。このとき、導電糸21がSUS線、他の繊維13がポリエステルである場合には、出力15W以上25W未満(周波数200Hz,加工速度1500mm/min)に設定することで、導電糸21を溶融させることなく他の繊維13だけを溶融させることができる。なお、レーザの焦点を幅方向にずらすことで、一定幅部分の他の繊維13を加熱して除去することができる。
【0024】
なお、レーザは、布材11の表裏面のいずれからも照射可能である。また、レーザの照射とともに不活性ガス(窒素やヘリウムなど)を布材11に吹付けることもできる。不活性ガスの存在下でレーザの照射を行うことで、過熱による導電糸21の酸化(燃焼)を防止又は低減することができる。
【0025】
<他の繊維13を除去可能な手段(2)>
布材11の端部11aにおいて、布の縁から一定幅だけ内側において、加熱手段により、他の繊維13だけを溶断して、或いは焼き切ったうえで、該切断位置よりも幅方向外方の他の繊維だけを剥ぎ取って除去する。図5は、この他の繊維13を除去可能な手段(2)の概略を示し、他の繊維13を除去可能な手段31での加熱手段による加熱点に符号LP2を付して示した。図5に示されるように、他の繊維13を流れ方向に沿って溶融或いは燃焼させることで布材11の端部11aで他の繊維13を帯状に分割し、分割された帯状の他の繊維13(u)を剥ぎ取る。それにより、布材11の端部11aに導電糸21(21a)だけが残り、導電糸21が布材11の端から幅方向外方に延びて露出する。例えば、導電糸21がSUS線、他の繊維13がポリエステルである場合、SUS線(例えばSUS316)の融点は1371〜1450℃であり、ポリエステル繊維の融点は264℃であるから、500〜1000℃で加熱することで他の繊維13のみを切断(溶断)して、布材11から分離可能とすることができる。
【0026】
上記加熱手段としては、上記他の繊維13を除去可能な手段(1)で例示される各種の加熱手段を用いることができる。加熱手段としてCO2レーザ等のレーザを用いる場合、レーザの焦点を布材11に対して流れ方向に相対移動させることで、他の繊維13を切断することができる。
【0027】
[位置検知工程]
位置検知工程は、導電糸21の幅方向の両端部(露出部分21a,21a)の位置を検知することのできる位置検知手段33により導電糸21の両端部の位置を検知する工程である。布材11では、導電糸21がヨコ糸として布材11の幅方向に沿って織り込まれており、流れ方向に所定間隔を置いて配設されているが、織物はその構造上、変形に対して融通性を有するため、加工時にヨコ糸が多少の斜行して、一連の導電糸21の両端部(露出部分21a,21a)の流れ方向位置がずれることがある。そこで、位置検知手段33により、導電糸21の両端部両端部(露出部分21a,21a)の位置を検知し、後の断線検出工程に伝達する。
【0028】
位置検知手段33として、導電糸21の露出部分21a,21aを物理的に検知する方法や映像から検知する方法が挙げられる。なかでも、導電糸21と他の繊維13の静電容量の差を利用し、静電容量を測定して導電糸21の位置を検知する方法は好適である。静電容量を測定して導電糸21の位置を検知する方法であれば、布材11に接触することなく導電糸21の位置を検知することができ、布材11にダメージを与えない点で好ましい。
【0029】
[断線検出工程]
断線検出工程は、導電糸21の両端部の露出部分21a,21aに通電用端子35,35を電気的に接続して導電糸21に通電し、断線検出手段36により、導電糸21の断線の有無を検出する工程である。
【0030】
通電用端子35,35は、図3に示されるように、数本の導電糸21を含む導電糸群の両端部の露出部分に対して接続し、並列回路を形成して通電してもよいし、図示しないが、導電糸21の一本ずつに通電してもよい。通電用端子35は、例えば、導電糸21の露出部分21aを挟み込むことのできる一対の金属板や、図2に示されるように、一対の金属製のローラーで構成することができる。通電用端子35,35は、それぞれが、位置検知工程において位置検知手段33により検知された導電糸21の両端部の位置に合わせて、その位置を調節しながら導電糸21の露出部分21a,21aに接続される。
【0031】
断線検出手段36として、通電した導電糸21の抵抗値を測定し、抵抗値の測定結果により断線ないし損傷の有無を検出する方法がある。導電糸21が完全に断線していれば、通電不能であるため抵抗値は零となり、損傷している場合は、通電しにくくなるため通常よりも抵抗値が高くなる。
【0032】
また、別の断線検出手段36として、導電糸21の発熱の程度によって断線の有無を検出する方法がある。導電糸21の発熱の程度は、各種の温度検出手段により検出することができる。例えば、サーマルカメラなどの非接触で温度(発熱の程度)を検出することのできる温度検出手段は、布材11にダメージを与えない点で好ましい。また、断線検出手段36は複数方法を組み合わせてもよい。
【0033】
断線検出工程において、断線検出手段36により検出された導電糸21の断線の有無の判定は、抵抗値ないし温度にしきい値を設定して判定することができる。
【0034】
[断線位置マーキング工程]
断線位置マーキング工程は、上記断線検出工程での断線検出結果に基づき、断線した導電糸21の位置にマークを付すことのできる手段39により、マーク39mを付す工程である。断線位置にマーク39mを付すことのできる手段39は、断線検出手段36から伝達された断線検出結果に基づき自動でマーク39mを付すものであっても、手動でマーク39mを付すものであってもよい。マークを付すことのできる手段39として、好適な一実施形態としては、例えば、マーク39mを自動でスタンプする装置が挙げられる。
【0035】
[露出部分削除工程]
露出部分削除工程は、布材11の端部の導電糸21の露出部分21aを削除することのできる削除手段37により導電糸21の露出部分21a,21aを削除する工程である。削除手段37としては、導電糸21を切断可能なカッターを好適に用いることができる。
【0036】
本実施形態の断線検査方法によれば、以下の作用効果を奏する。
露出工程で、布材11の両端部11a,11aにおいて他の繊維13を除去して導電糸21を露出させるため、後の断線検出工程で、導電糸21に通電用端子35を接続しやすく、容易に通電することができる。また、位置検知工程で、導電糸21の両端の位置を検知したうえで、後の断線検出工程で通電用端子35,35の位置を調節しながら導電糸21の露出した部分21aに接続するため、確実に一続きの導電糸21の両端部(露出部分21a,21a)を電気的に接続することができる。さらに、導電糸21の露出位置が布材11の端部であり、最終製品の作成に使用される中央部分にダメージを与えない点で有利である。
【0037】
また、断線検出工程では、導電糸21に通電したうえで、通電の程度に起因する抵抗値または発熱の度合いを測定して断線の有無を判断するため、導電糸21の布材11中での配置形態に関わらず断線の有無を確実に判断することができる。例えば、導電糸21が布材11中で複雑に浮き沈みしている場合や、導電糸21が芯糸に巻きついた複合糸(カバリング糸)の形態で含まれている場合であっても、容易に断線の有無を判断することができる。
【0038】
本実施形態の断線検査方法による導電糸21の断線検査は、導電糸21が布材11に配置された後、最終製品に組み込むための大きさに裁断する前の各段階で行うことができる。そのため、最終製品に断線部分が混入するのを防ぐことが可能となる。断線検査は、布材11を製織した後に染色する場合には、染色工程より後に断線検査を行うのが好ましい。その場合、染色の揉み操作により断線した導電糸21を検出することができる。また、染色工程の後の仕上げ工程より後に断線検査を行うのがより好ましい。仕上げ工程は、一般に、布材11の幅方向の最端部(耳部)をピンテンターで保持して幅方向に張力を付与しながらヒートセットする。そのため、布材11の耳部は、ピンテンターのピンの差込み張力に耐える密度の高い組織とされていることが多い。断線検査では、布材11の端部11aの他の繊維13が除去されることで、耳部が除去されるため、断線検査よりも前に仕上げ工程を行うことで、ピンテンターで耳部を保持して円滑に仕上げ工程を行うことができる。なお、仕上げ工程と同時ないし前後してバックコーティングを施す場合には、バックコーティング工程も行った後に断線検査を行うのが好ましい。この場合、バックコーティングは導電糸21を露出させる布材11の両端部11a,11aには不要であるから、その位置には塗布しないことが望ましい。更に好ましくは、仕上げ工程の後の外観検査工程と同時に断線検査を行う。外観検査は、一般に布材11を繰り出して一旦広げて巻き取りながら、布材11の広がった状態で移送されている部分において行われるため、外観検査と同時に断線検査を行えば効率がよい。なお、布材11の裏面にウレタンシートをラミネートする場合には、断線検査時の布材11の取り扱い易さを考慮すると断線検査工程より後にラミネートするのが好ましい。
【0039】
なお、本実施形態は本発明の要旨を逸脱しない範囲内でその他種々の実施の形態が考えられるものである。
例えば、上記実施形態1では、露出工程において、布材11の端部11aの一定幅の領域において流れ方向の全ての他の繊維13を除去して導電糸21を露出させる手段を例示したが、布材11の端部11aにおいて、導電糸21の周囲の他の繊維13のみをスポット状に除去して導電糸21を露出させてもよい。露出工程においてスポット状に他の繊維13を除去する場合には、露出工程に先立って位置検知工程を行い、導電糸21の両端部の位置を検知し、その検知結果に基づいて露出工程で他の繊維13の除去位置を調節すれば、導電糸21の両端部を確実に露出させられ、好ましい。
【0040】
また、断線位置マーキング工程と露出部分削除工程とは、断線検出工程より後に設ければよく、その順序は限定されない。
【符号の説明】
【0041】
11 布材
13 他の繊維
21 導電糸
31 他の繊維を除去可能な手段
33 位置検知手段
35 通電用端子
36 断線検出手段
37 削除手段
39 マークを付すことのできる手段
39m マーク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電糸と非導電性の他の繊維とを含む布材中の前記導電糸の断線を検査する断線検査方法であって、
前記布材における前記導電糸の配向方向の両端部において、前記他の繊維を除去して前記導電糸を露出させる露出工程と、
前記露出工程で露出させた導電糸の両端部を電気的に接続して該導電糸に通電し、前記導電糸の抵抗値または発熱の程度によって該導電糸の断線の有無を検出する断線検出工程と、を備えることを特徴とする断線検査方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−243307(P2011−243307A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111840(P2010−111840)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】