説明

断面強度分布が不均一な出力ビームを用いたレーザによる処置方法およびシステム

【課題】皮膚への火傷またはその他の損傷のリスクを最小限にしながら、組織の広い範囲を一斉に処置する処置方法を提供する。
【解決手段】断面強度分布が不均一なレーザ照射を用いて、レーザ照射強度が高い部分は処置部位の選択された箇所内においてコラーゲン破壊およびコラーゲン収縮を生じさせる一方、照射強度の低い部分は線維芽細胞の刺激を起こし、処置部位内の前記選択箇所以外におけるコラーゲン生成につなげる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は2006年2月3日に出願された米国特許出願第11/347,672号の一部継続出願であり、2005年4月22日に出願された米国仮出願第60/673,914号の利益を主張し、その出願の全内容は参照によって本明細書に引用したものとする。
【技術分野】
【0002】
本発明は、断面強度分布が不均一なレーザ照射を用いた処置方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0003】
形成外科医、皮膚科医、および彼らの処置を受ける者は、老化した皮膚の影響を処理する新しい、改良された方法を絶えず探している。老化した皮膚または光損傷を受けた皮膚の外観を若返らせる一般的な手段の1つは、炭酸ガスレーザを用いたレーザ・スキン・リサーフェシング(laser skin resurfacing(レーザで肌をきれいにすること))である。炭酸ガスレーザエネルギは組織の水分に吸収され、皮膚の外層の蒸発を引き起こす。炭酸ガスレーザは約30年間利用され続けている。しかし、炭酸ガスレーザが周辺皮膚への熱損傷を最小限にしながら、薄い組織の層のみを除去できるように構成されてきたのは、つい2,3年前である。炭酸ガスレーザは約150ミクロンメートルの皮膚を除去するが、この手段を受けて皮膚が回復するには1ヶ月またはそれ以上かかる。
【0004】
Er:YAGレーザは炭酸ガスレーザよりもさらに薄い組織の層を除去させる(蒸発させて炭化させる)ために利用されてきた。しかし、凝固特性に欠けるので、使用中は炭酸ガスレーザよりも出血が多くなる。
【0005】
皮膚表面に損傷を与えない皮膚若返り(Non-ablative skin rejuvenation)は、皮膚の最上層を除去せず、深く貫通するレーザを使用して外側の表皮層よりも下方に位置する皮膚層を処置する方法であって、見た目の好ましくない血管障害や色素障害を処置したり、それらの下に位置するコラーゲンを収縮および変性させ、皮膚を引き締めてシワを減らしたりすることで、より若い外見を提供する方法である。しかし、この方法は非効率性であり、皮膚の最上層または上層への損傷を最小限に抑えて、痛みの発生も最小限に抑えるためには、積極的な冷却方法が皮膚に対して用いられなければならない。この方法に使用されるレーザのフルエンスすなわちエネルギ密度は1平方センチメートルあたり10ジュールを超え、より効果的であるためには、フルエンスはしばしば1平方センチあたり30ジュールに達する。このレベルのエネルギは痛みや表皮の損傷を生じさせる。
【0006】
Andersonらによる米国特許出願公開第2002/0161357号は、集束照射ビームを用いて患者の皮膚の処置を受けていない領域内に、処置または損傷の「島々」を作ることによって患者の皮膚に治療処理を行う方法と装置について述べている。しかし、この方法における処置ビームのパラメータは、皮膚の若返り処置に適していない。
【0007】
さらに別の処置方法がCho etらに特許された米国特許第6,077,294号に開示されている。なお、この出願の全内容は参照によって本明細書に引用したものとする。この特許は約585ナノメートル(nm)の波長と1平方cm(cm2)あたり5ジュール未満のエネルギを持つパルス色素レーザを利用した非侵襲性の皮膚処置のシステムおよびその方法を記載している。このレーザよりも高いエネルギを持つパルス光を使用して表皮よりも下方に位置するコラーゲンを損傷して「収縮」させる以前の技術とは対照的に、それよりも比較的小さい、上記米国特許第6,077,294号におけるビームのエネルギは、コラーゲンが再生したり皮膚の谷間を「埋め」たりするようにコラーゲンを刺激し、より若くて染みのない透き通った皮膚にするように設計されている。
【発明の開示】
【0008】
本発明の断面強度分布が不均一なレーザ照射を用いた処置方法およびその装置は、好ましくは、皮膚の若返り処置に用いられ、レーザ照射の照射強度の高い部分が、処置部位の選択された箇所内のコラーゲン破壊およびコラーゲン収縮を生じさせ、その一方で照射強度の低い部分が線維芽細胞刺激を起こし、処置部位の前記選択箇所以外におけるコラーゲン生成につなげる。
【0009】
好ましくは、本発明の方法およびシステムは、Nd:YAGレーザのような固体レーザ源を利用する。レーザ源からの出力ビームは光学システムに結合(couple into)され、この光学システムが該出力ビームを、照射強度の低い領域にそれぞれ囲まれた複数の照射強度の高い区域を処置ビーム内に備えた不均一なエネルギプロファイルを有する直径の大きい出力ビームに変換する。照射強度の高い区域は、対象組織の選択された箇所を、第1の処置(例えばコラーゲン収縮)に十分な温度まで加熱し、照射強度の低い区域は、第2の処置(例えば刺激によるコラーゲン生成)を施すのに十分なエネルギを周辺組織に提供する。このようにして、皮膚への火傷、または皮膚へのその他の損傷のリスクを最小限にしながら、組織の広い範囲、好ましくは直径7〜10mmの範囲が、一斉に処置されることができる。
【0010】
本発明の一実施形態においては、不均一なエネルギを持つ出力ビームを供給するためにファイバ束を用いる。また、本発明の別の実施形態においては、断面強度分布が不均一な出力ビームを生成するために回折レンズアレイを使用する。
【0011】
本発明の一構成に従ったヒトの皮膚の処置方法は、
Nd:YAGレーザのようなレーザ源から出力ビームを発生させ、
照射強度の低い区域にそれぞれ囲まれた複数の照射強度の高い区域を備えた、不均一なエネルギプロファイルを持つ処置ビームを提供するように、前記出力ビームを変換する光学システムに、前記出力ビームを結合させ、
この処置ビームを対象組織部に導き、照射強度の高い区域は、対象組織の選択された箇所を、第1の処置に十分な温度まで加熱し、照射強度の低い区域は、第2の処置をするのに十分なエネルギを周辺組織に供給する。好ましくは、第1の処置がコラーゲン収縮を含み、第2の処置がコラーゲン刺激を含む。出力ビームは、約1.3〜1.6ミクロン、好ましくは約1.41〜1.44ミクロンの波長を有し、0.1〜100ミリ秒、好ましくは約1〜5ミリ秒のパルス幅を有してもよい。処置ビームの平均フルエンスは約10J/cm2未満であってもよい。一般的に、処置ビームの平均フルエンスは約5〜6J/cm2である。処置ビームの照射強度の低い区域における平均フルエンスは、一般的におよそ2〜3J/cm2である。
【0012】
光学システムは、例として1000〜2000の数の個別のファイバを有するようなファイバ束、およびビームをファイバ束に結合させる集束レンズを備えてもよい。光学窓、好ましくは1から5ミリの厚みを持つ光学窓が、ファイバ束の遠位端(レーザ源から離れた側の端部)に設けられ、この光学窓により、束のファイバそれぞれから出射されるビームが、対象組織へ届く前に発散して互いに部分的に重なり合う。本発明の特定の実施形態においては、伝送ファイバが、レーザ源からの出力ビームをファイバ束に運ぶことが可能で、この場合、ファイバ束はハンドピース内に設置される。
【0013】
本発明の別の実施形態において、光学システムはレーザ源と処置部位の間の光路に、好ましくは約2000以下の数のレンズを備えた回折レンズアレイを備えてもよく、アレイ内のそれぞれのレンズは、照射強度の低い区域に囲まれた照射強度の高い区域を提供する。アレイ内の各レンズは約150〜450ミクロンの直径をそれぞれ有してもよく、レンズアレイ全体は約7〜10mmの直径を有してもよい。好ましくは、レーザ出力ビームの平均フルエンスが約10J/cm2未満である。
【0014】
本発明の別の実施形態において、本発明のレーザシステムは、
出力ビームを発生させるレーザ源と、
照射強度の低い区域にそれぞれ囲まれた複数の照射強度の高い区域を備えた不均一なエネルギプロファイルを有する処置ビームを提供するように、前記出力ビームを変換する光学システムとを備え、
照射強度の高い区域は、対象組織の選択された箇所を、第1の処置に十分な温度にまで加熱し、照射強度の低い区域は、第2の処置を施すのに十分なエネルギを周辺組織に供給する。レーザ源はNd:YAGレーザでもよく、約1.3〜1.6ミクロン、好ましくは1.41〜1.44ミクロンの波長を有し、0.1〜100ミリ秒、好ましくは1〜5ミリ秒のパルス幅を有する出力ビームを一般的に生成する。光学システムは、ファイバ束を備えてよく、好ましくは束の遠位端と対象組織との間に光学窓を持つ。代わりに、光学システムはレーザ源と対象部位の間の光路に回折レンズアレイを有してもよく、この場合、アレイ内の各レンズは照射強度の低い区域に囲まれた照射強度の高い区域をそれぞれ生成する。
【0015】
本発明の別の実施形態によると、レーザシステムは出力ビームを発生させるレーザ源と、近位端(レーザ源に近い側の端部)および遠位端を有し、複数の個別のファイバを有するファイバ束と、出力ビームをファイバ束の近位端に結合させる集束レンズと、ファイバ束の遠位端に位置する光学窓とを備え、この光学窓により、束のファイバそれぞれから出射されるビームが光学窓を通過する際に発散され、その結果、各ビームが束において隣り合うファイバから出るビームと部分的に重なり合う。光学窓はガラスのような透明素材を備えてよく、またはファイバ束の遠位端と処置部位の間に中空空間を有するスペーサを備えてもよい。
【0016】
さらに別の実施形態によると、レーザシステムは出力ビームを発生させるレーザ源と、レーザ源と処置部位の間の光路に配列された回折レンズアレイとを備え、アレイ内の各レンズは照射強度の低い区域に囲まれた照射強度の高い区域をそれぞれ生成する。
【0017】
特定の実施形態において、本発明のレーザシステムおよび方法は、不均一なエネルギプロファイルを有する処置ビームを供給する光学システムを収容する先端ハウジングと、先端ハウジングに冷気を送る導管とを備える。先端ハウジングの遠位端は処置を受ける人の対象組織部と接触できるようにされており、導管は先端ハウジングの遠位端に冷気を送るように曲げられた出口を備えている。
【0018】
本発明のさらなる実施形態において、レーザシステムは、フラッシュランプシステムのようなパルス光システムをさらに備え、レーザシステムと一体化され、色素障害を処置する。
【0019】
処置を受ける人の皮膚の広範囲を対象とするレーザ処置を提供する本発明は、レーザ照射の高吸収性と低いピークエネルギによって特徴付けられており、その結果、皮膚の損傷のリスクを最小限にする。本発明の一構成では、有利なことに、単一の処置部位においてコラーゲン収縮のみでなく刺激によるコラーゲン生成も同時に達成する。本発明の原理は、皮膚の若返り処置のみでなく、にきび、脱毛、および血管障害もしくは色素障害、その他限定されない処置を含む他のタイプの光照射処置での使用にも拡張されることができる。
【0020】
本発明の上記、また上記以外に述べられた目的、特徴、および利点は、以下に示した本発明における好ましい実施形態に関する具体的な説明と、添付された図面から明らかとなる。図中に使用される同一参照符号は異なる図面で使われている場合も同じ部分を示している。これらの図は必ずしも縮尺通りではなく、重点はむしろ本発明の発明原理を示すことに置かれている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の好ましい実施形態の詳細な説明を以下に示す。
【0022】
図1Aに示されているとおり、本装置は出力ビームを出射するレーザ源を有する。このビームは、1つまたはそれ以上の数の集束レンズを用いて光ファイバ束に結合される。好ましくは、この束が1000〜2000の数の個別のファイバを有する。典型的に、各ファイバは約100〜200ミクロンの直径をそれぞれ有する。したがって、出力レーザビームは1000〜2000の数の小さいビームに導かれ、それぞれの小さいビームが個々の光ファイバにおいてファイバ束の全長を通過していく。ファイバ束の遠位端における終点は、処置を受ける人の皮膚に直接接触させることが可能な光学窓である。この光学窓はおよそ1〜5mmの厚みを有し、ファイバ束の出力面を汚染から保護し、また、この窓によって、ファイバからそれぞれ出射するビームは処置を受ける人の皮膚に届く前に発散することができる。好ましくは、この結果、束内において隣り合うファイバからのビームと部分的に重なり合う。
【0023】
束のファイバは、緊密にまとめられてもよく、または機械式スペーサを使用してファイバが互いに間隔を有するようにしてもよい。束の遠位端における機械式スペーサの使用は束からのエネルギを広い範囲に分散させて、処置を受ける人の痛みの感覚を軽減させるのに役立つ。一般的に、ファイバ束に含まれる全てのファイバの照射スポットを合わせた、皮膚上での結合スポットサイズは直径にして約7〜10mmである。
【0024】
図1Aの実施形態の好ましい処置方法によると、レーザ源、好ましくはNd:YAGレーザが、1.3〜1.6ミクロン、好ましくは約1.40〜1.41ミクロンの波長を有し、0.1〜100ミリ秒、好ましくは約1から5ミリ秒のパルス幅を有する出力レーザパルスを生成する。このレーザは皮膚に良好に吸収される波長で動作するので、比較的低いエネルギで動作し、皮膚への火傷または損傷のリスクを最小限にする。
【0025】
稼動時には、光学窓は処置を受ける人の皮膚に押し付けられ、レーザ源は活性化されてレーザ光パルスを生成し、このレーザ光パルスはレーザ源から出射してファイバ束および光学窓を通って進み、処置を受ける人の皮膚に入る。光学窓はおよそ1〜5mmの厚さであるため、光学窓はファイバ束の出力端と処置を受ける人の皮膚の間のスペーサの役割も果たす。このようにして、レーザ光が束のファイバからそれぞれ出射される際、処置を受ける人の皮膚に向かってこの光学窓を介して進むことにより、光は発散することができる。本発明の好ましい実施形態において、ファイバは直径にしておよそ100〜200ミクロンであり、ファイバからそれぞれ出射するビームは光学窓を通過した後、処置を受ける人の皮膚の上に直径150〜900ミクロンのスポットを生成する。光ファイバを出射した光の発散する性質によって、各スポットの中心部の光は比較的高いエネルギをそれぞれ有する光となり、その一方で各スポット周縁部は中心部に比べてかなり低いエネルギをそれぞれ有する。このようにして、ファイバ束全体の7〜10mmの結合スポットにおいて、直径にして一般的に約150〜900ミクロンの小さい処置スポットがおよそ1000〜2000の数存在し、各処置スポットがフルエンスの小さい放射の「クーラー・ゾーン」に囲まれた、スポットの中心に位置するフルエンスの大きい放射の「ホット・スポット」からそれぞれなる。中心の「ホット・スポット」のエネルギはその下に位置する組織を収縮させ、コラーゲンを損傷させ、コラーゲン収縮を生成するのに十分な大きさである。一般的に、照射強度の高い区域、すなわち「ホット・スポット」におけるエネルギは対象組織の温度を70℃以上に上昇させるのに十分である。しかし、ホット・スポットを取り囲む「クーラー・ゾーン」における照射は組織に損傷を与えて、その下に位置する組織においてコラーゲン収縮を生じさせるのに、一般的に十分でない。これら照射強度の低い「クーラー・ゾーン」では、供給されたエネルギは、皮膚の温度を2,3℃上昇させるのみであるため(すなわち問題になる程の温度上昇を生じさせないため)、組織に損傷を与えるどころか「衝撃」を与えることさえないであろう。しかしながら、線維芽細胞がコラーゲンを生成して、皮膚の隙間やくぼみを「埋める」ことで、より若くて、より染みのない透き通った皮膚にするように、組織内の線維芽細胞を刺激することに対して、この強度の低い照射は一般的により適切であり、または好ましい。
【0026】
本発明の好ましい実施形態において、それぞれのファイバからの放射のスポットサイズが処置を受ける人の皮膚上において、束の隣り合うファイバからのスポットと接するかまたは部分的に重なり合うように、束においてファイバは配置されている。このようにして、本発明は、ファイバ束から出る各出力スポットの中心にそれぞれ位置する「ホット・スポット」での高エネルギ・コラーゲン収縮処置、および結合ファイバ束出力ビームの範囲全体のいたるところにおける全体的な刺激によるコラーゲン生成の2様態の皮膚の若返り処置を同時に行うことができる。
【0027】
ファイバ束伝送システムを用いたレーザ処置方法の例が図1Bに示されている。この図は束の4本のファイバの皮膚上における位置の関数として、皮膚上の相対的な照射強度を表したグラフである。実際には、ファイバ束は、1000〜2000の数の個々のファイバからなり、規則的に間隔をあけた配置状態で束を形成している。この実施形態では、束において隣り合うファイバ同士の中心間の距離はおよそ500ミクロンである。それぞれのファイバの直径は200ミクロンであり、ファイバの開口数(NA)はおよそ0.2である。ファイバ束全体の直径はおよそ9ミリとなる。それぞれのファイバからのレーザエネルギは透明窓を通過する際に発散するので、その結果、それぞれのファイバから出射された皮膚の上のスポットサイズは直径にして少なくとも約250ミクロンである。このため、それぞれのファイバからのスポットは一般的に、束において隣り合うファイバからのスポットと接するかまたは部分的に重なり合う。この様子は図1Bに示されており、全体部分が少なくとも照射強度の低いパルスで処置されている一方で、各スポットの中心における部分が極めて高いエネルギをそれぞれ受けていることが分かる。点線は処置部位全体における平均強度を示す。この例では、各スポットの中心における皮膚上のピークフルエンスはそれぞれおよそ9J/cm2であり、各スポットにおける周縁部のフルエンスはそれぞれおよそ2J/cm2である。全体部分のフルエンスはおよそ5J/cm2である。
【0028】
処置部位の様々な箇所において受けるフルエンスは、例えば、レーザ源からの総エネルギ出力を上昇または低下させたり、束のファイバ同士の中心間の距離を変化させたり、異なる直径の長さのファイバを使用したり、異なるNAを持つファイバを用いてビームの発散角を変化させたり、および/または光学窓の厚さを変更してビーム発散量を多くしたり少なくしたりすることによって、変化および制御されることができる。このようにして、ビームプロファイルは様々な異なる条件およびレーザ処置方法に応じて最適化されることができる。
【0029】
図2は図1の実施形態と類似した、別の実施形態を示しているが、レーザ出力ビームをレーザ源から光学窓に結合させる長いファイバ束の代わりに、この実施形態はレーザ源から短いファイバ束を含むハンドピースにレーザエネルギを運ぶ単一の伝送ファイバを使用する。ハンドピースでは、この単一のファイバからの出力レーザパルスが短いファイバ束に結合される。先に示した実施形態のように、この短いファイバ束は、複数の個別の光ファイバ、好ましくは1000〜2000の数のファイバからなる。この短いファイバ束はその近位端においてより小さい束直径を持ち、単一の伝送ファイバからの出力光がこの束に効率良く入射されるように許可している。ファイバ束は、例えば機械式スペーサを用いることで、近位端から遠位端にかけて「扇状に広がり」、ファイバ束の出力部において、拡がった表面を提供する。好ましくは、この拡がった表面が、約7〜10mmの直径を有し、また、図1の実施形態に示されているように光学窓と結合される。図2の実施形態は、好ましくは、図1に関して説明されたものと同一の処置パラメータを使用する。
【0030】
図3〜8には、対象組織内に不均一な加熱を提供するために回折レンズアレイを用いる、本発明のさらに別の実施形態が示されている。複数の段を有する回折レンズは、さまざまな厚みを有する光学的に透明な素材から作製された同心円状の複数の環体からなる。それぞれの同心円状の環体の上面は平坦であるため、屈折の影響は無視できる。さまざまな厚みを有する複数の環体が、伝搬入射光ビームに空間位相遅延パターンを生み出す。伝搬光ビームは回折レンズの表面を過ぎた後も空間位相遅延パターンを保ち、空間においてさまざまな光強度を有する照明パターンを発生させる。光強度は、干渉による強め合いの条件に合致する幾何学的位置において高くなり、干渉による弱め合いの条件に合致する幾何学的位置において低くなる。一般的に回折レンズの設計は、回折像の主極大(主極小)がレンズ面から距離f離れた、光軸線上の位置に現れるように最適化されている。この距離fがレンズの焦点距離である。また一般的に、回折レンズ設計の目的は、主極大における入射エネルギの割合を増加させることである。しかし、この割合は常に1未満であり、その値は回折レンズの段数、レンズのF値、およびその他の設計パラメータに依存する。実際に、回折レンズのパターンの設計次第で、入射光のエネルギの割合は、主極大において多く(1未満)なり、入射光の残りのエネルギは二次極大に配分される。
【0031】
複数の段を有する回折レンズの様々な例が図3〜5の断面図に示されている。図3は4段の回折レンズを示し、図4は2段の回折レンズを示し、図5は8段の回折レンズを示す。
【0032】
本発明の一実施形態において、レーザ処置装置とレーザ処置方法は、アレイ状に配置された複数の回折レンズを利用して、不均一なエネルギプロファイルを有する出力ビームを生成する。より具体的には、回折レンズアレイはレーザ源と処置部位との間の光路に配置され、アレイ内の各レンズが、低いフルエンスの照射の領域に囲まれた高いフルエンスの「ホット・スポット」の部分をそれぞれ規定する。皮膚の若返り処置では、例えば、この高エネルギの部分が「ホット・スポット」におけるコラーゲンに損傷を与え収縮させるのに十分な熱を提供し、その一方でこれら「ホット・スポット」の外側に位置する強度の低い照射領域は重なり合って結合し、処置部位全体においてコラーゲン再生を刺激する。
【0033】
この実施形態では、レーザ源が、およそ1.3〜1.6ミクロン、好ましくは1.40〜1.44ミクロンの波長、および0.1〜100ミリ秒、好ましくは1〜5ミリ秒のパルス幅を有する照射パルスを生成するものであるのが好ましい。例えば、レーザ源はNd:YAGレーザでもよい。光学システムはビームをレーザ源から処置部位に運ぶ。回折レンズアレイは処置を受ける人の皮膚と隣接する、光学システムの遠位端に設けられるのが好ましい。アレイは個別で複数の互いに隣り合う回折レンズを備える。一般的に、アレイには2000以下の数のレンズが存在し、好ましくは約1800個のレンズが存在する。それぞれのレンズは直径が約150〜450ミクロンで、好ましくは直径が約250ミクロンである。回折レンズのアレイ全体は、直径が一般的に約7〜10mmである。アレイはレーザ源(これも、好ましくは直径が約7〜10mmである)からの入力ビームを、アレイ内の個々のレンズの中心箇所に相当する、照射強度の高い複数の「ホット・スポット」と、各「ホット・スポット」をそれぞれ取り囲む照射強度の低い領域とに導く。これらを合わせた、処置を受ける人の組織における効果は、照射強度の低い部分に囲まれたそれぞれ回折レンズの中心に相当する、皮膚における照射強度の高い複数の区域を生成することである。これは、図8の処置ビームプロファイルに示されている。このグラフから分かるように、処置部位全体が少なくとも低レベルの処置照射を受け、所定の間隔を空けた幾つかの部分が高レベルのレーザ照射を受ける。皮膚の若返り処置の場合、例えば、レーザエネルギがコラーゲン層に深く侵入し、ここでコラーゲンが「ホット・スポット」における収縮温度にまで加熱される一方、処置部位全体がコラーゲン再生を生じるように処置される。皮膚の若返り処置の他にも、回折レンズアレイはにきび処置や脱毛処置のような他の用途における使用にも最適化されることができる。回折レンズアレイからのビームプロファイルを調整して、様々な用途に用いられるようにすることができる。
【0034】
回折レンズに、操作者によって選択されたレーザフルエンス設定によって決定される均一な平均フルエンスFavのレーザが照射されると考えられる。一般的に、この実施形態でのレーザの平均フルエンスは約10J/cm2未満、好ましくは約9J/cm2未満である。例示のために、直径Dを持つそれぞれの回折レンズは単純化された構造を有すると仮定し、そのため、レンズは直径dの均一なフルエンスF1を有すると仮定されるホット・エリアおよび均一なフルエンスF2を有する周縁部を生成する。また、レンズの構造は、ホット・エリアに対する周縁部の比率を表すフルエンス比率βとして、β=F1/F2を生成すると仮定する。これら単純化の仮定の下で、ホット・エリアにおけるフルエンスF1の近似値を求める簡単な公式を導き出すことが可能となる。
【0035】
【数1】

【0036】
図9は、中心のホット・エリアの相対直径d/Dの関数としてのホット・エリアの相対フルエンス係数F1/Favのグラフである。例として、回折レンズが、β=5、直径D=250μm、ホット・エリアの直径d=100μm、となるように設計され、レーザが平均フルエンスFav=9J/cm2を有するように選択されると、ホット・エリアのフルエンスは、F1=3.05×9J/cm2=27.4J/cm2となる。
【0037】
第2の例として、回折レンズが、β=5、直径D=350μm、ホット・エリアの直径d=200μmを有するように設計され、レーザが平均フルエンスFav=9J/cm2を有するように選択されると、ホット・エリアのフルエンスは、F1=2.17×9J/cm2=19.5J/cm2となる。
【0038】
図6と図7は本発明による回折レンズアレイの2つの例示的な実施形態を示している。図6では、回折レンズが六角形のパターンに並べられている。図7では、回折レンズが長六角形のパターンに並べられている。
【0039】
図10は、回折レンズアレイを通して1440nmのレーザが照射された皮膚の一部分における、ピーク組織温度分布を示している。グラフから分かるように、第1の回折レンズの中心は、グラフの横軸上の約200μmに位置し、第2の回折レンズは横軸上の約600μmに位置する。また、このグラフから分かるように、比較的高い温度(例えば70℃以上の温度)に加熱されている約200μm幅の組織の部分がそれぞれの回折レンズの中心に位置している。高い温度を有するこの部分は、基本的に皮膚の表面から約350μmの深さまで延びている。図1Aおよび図1Bのファイバ束の実施形態と関連して上述したように、これら温度はコラーゲン収縮を起こすのに十分な温度である。高い温度を有するこれら高温度処置区域の外では、ピーク温度は急激に下降する。例えば、グラフ横軸上の約300μm〜500μmの間に位置する組織では、ピーク皮膚温度は一般的に35℃(または35℃未満)〜50℃であり、かつ、一般的に約40℃未満である。前述のように、これら照射強度の低い区域はコラーゲン刺激処置を提供する。
【0040】
図11は、不均一なエネルギプロファイルを持つ出力ビームを提供する回折レンズアレイを有するレーザ処置装置の先端部10の断面図である。操作者は、先端部10を処置を受ける人の皮膚30に対して直接当接させる。レーザ源(図示せず)が活性化されて出力ビーム23を生成し、この出力ビーム23は1本の光ファイバ20によって先端部10に運ばれる。出力ビーム23は光ファイバ20の先端部から放射されて、回折レンズアレイ61に向けられる。回折レンズアレイ61に隣接するのは光学窓60で、光学窓60は処置を受ける人の皮膚30に直接接触する。光学窓60は図1に関連して説明された光学窓と同様であり、ファイバ束の出力端と処置を受ける人の皮膚の間のスペーサとして機能する。光学窓60は回折レンズアレイ61と一体化させられてもよい。好ましくは、光学窓がガラスのような良好な熱伝導性を有する素材で作製される。光ファイバ20、回折レンズアレイ61、および光学窓60は全て先端ハウジング40に封入され、先端ハウジング40は、好ましくは円筒形状のハウジングである。先端ハウジング40はプラスチックで作製されてもよい。先端ハウジング40の外部に冷却機構11が存在する。好ましくは、冷却機構11は冷却空気51を冷却空気源(図示せず)から処置装置の先端部10に運ぶ導管50を備える。導管50は、好ましくは、先端ハウジング40に向けて曲げられた出口を有し、その結果、冷却空気51が先端ハウジング40の遠位端(先端部10が処置を受ける人の皮膚30と接触するところ)に向けられている。この構成により、レーザ処置の間、効率的に皮膚が冷却される。先端部10および冷却機構11は図3〜8の回折レンズアレイの実施形態と関連してここに示されているが、図1と図2との関連で図示および説明されたもののように、この設計はファイバ束を持つレーザ装置にも採用されてよいということが理解されるであろう。
【0041】
図12は、本発明の一構成に従った、皮膚の若返り処置用のレーザおよびパルス光の統合システムを示している。図示されているように、システム100は、レーザ源103を有するハウジング101を備える。このレーザ源103は、好ましくは、約1.4ミクロンの波長および約3ミリ秒パルス幅で動作する、Nd:YAGレーザのような固体レーザである。レーザ源103からの光は、ハウジング101から第1のハンドピース105に延びる光ファイバ伝送システム20に結合される。第1のハンドピース105は、これまでに説明された任意の実施形態に従って、不均一なエネルギプロファイルのビームを生成する光学システムを有する。ハンドピース105は、図11との関連で前述した先端部10を含んでもよい。光学システムは、図11との関連で説明された冷却システムも採用してよい。
【0042】
統合システム100は、パルス光部も有し、このパルス光部は、好ましくは、フラッシュランプ光源115を有する。本発明の好ましい実施形態において、フラッシュランプ源は、560〜950nmの波長および5〜35ミリ秒のパルス幅を持つ処置パルスを生成するキセノンフラッシュランプを備える。フラッシュランプ115は第2のハンドピース113内に位置し、この第2のハンドピース113は、ハウジング101内部に位置する高電圧源109からフラッシュランプ115に電力を供給する高電圧ケーブル111によって、ハウジング101と接続されている。このパルス部は、好ましくは、さらに水循環システム(図示せず)を有し、この水循環システムは、従来知られているように、フラッシュランプを冷却するものである。パルス光システムは、図11との関連で説明された冷却システムを採用してもよい。一実施形態では、空気冷却器および導管が、冷気をハンドピース113に運ぶ。ハンドピース113の先端部はサファイア窓を有する。サファイア窓の近位側の端部(フラッシュランプ源に近い方の端部)は冷却システムからの冷気によって冷却される。サファイア窓の遠位表面は処置を受ける人の皮膚に接触する。
【0043】
稼動時には、第2のハンドピース113は処置を受ける人の皮膚に近いところで握られ、フラッシュランプ115が活性化されて処置パルスを供給する。パルス光部のスポットサイズは一般的にレーザ部よりも大きく、かつ、一般的に11×55mm(すなわち6cm2)前後である。このため、パルス光部は処置を受ける人の皮膚の広い範囲を比較的短時間で処置することができる。パルス光部の最大フルエンスは典型的に20J/cm2前後である。
【0044】
統合システムのパルス光部は、色素障害および特定の血管障害を処置するのに適している。パルス光部は例えば、光損傷を受けた皮膚に関連する表皮の色素障害、静脈および酒さの赤らみ(blush of rosacea)のみでなく、老化皮膚に関連する一般的な症状である色素異常症(dyschromia)を効果的に処置する。システムのレーザ部は前述のように、コラーゲン生成の刺激および皮膚の引き締めの刺激に有効である。統合システムにおけるレーザ処置とパルス光処置の組み合わせは、顔の若返り処置の効率的で完成されたシステムを提供する。レーザシステムおよびパルス光システムは、共通のハウジングに一体化されており、好ましくは共通の制御システム117を使用し、さらには、レーザ源103とフラッシュランプ源115の両方を駆動する同一の電子駆動回路119を使用してもよい。
【0045】
本発明を好ましい実施形態により詳細に示し、説明してきたが、添付の特許請求項に含まれる本発明の範囲から逸脱することなく、形態および細部にさまざまな変更を加えることが可能であることは当業者には理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1A】ファイバ束および光学窓を備えたレーザ処置システムを示す図である。
【図1B】図1Aのレーザ処置システムについて、皮膚上のビームプロファイルを表したグラフである。
【図2】拡がった端面を有する短いファイバ束を備えたレーザ処置システムを示す図である。
【図3】4段階レベルの回折レンズを示す図である。
【図4】2段階レベルの回折レンズを示す図である。
【図5】8段階レベルの回折レンズを示す図である。
【図6】六角形のパターンを有する回折レンズアレイを示す図である。
【図7】長六角形のパターンを有する回折レンズアレイを示す図である。
【図8】回折レンズアレイを通した場合の処置ビームのビームプロファイルを示す図である。
【図9】中心のホット・エリアの相対的な直径のd/Dの関数としてのホット・エリアのフルエンス係数F1/Favを表したグラフである。
【図10】回折レンズアレイからの断面強度分布が不均一な出力ビームで処置された皮膚の温度プロファイルを示す図である。
【図11】冷却機構を有するレーザ処置ハンドピースの先端を示す図である。
【図12】皮膚の若返り処置のレーザおよびパルス光の統合システムを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ源から出力ビームを発生させる工程と、
不均一なエネルギプロファイルを有する処置ビームを提供するように前記出力ビームを変換する光学システムに、前記出力ビームを結合させる工程であって、この処置ビームは、照射強度の低い区域にそれぞれ囲まれた複数の照射強度の高い区域を備えている工程と、
前記照射強度の高い区域はコラーゲンを収縮させるのに十分な第1の温度まで対象組織の選択された箇所を加熱し、前記照射強度の低い区域はコラーゲン生成を刺激するのに十分なエネルギを周辺組織に供給するように、前記処置ビームを前記対象組織部位に導く工程とを備えたヒト組織処置方法。
【請求項2】
請求項1において、前記処置ビームが、前記照射強度の高い区域において、前記対象組織の選択された箇所を、70℃以上の温度にまで加熱するヒト組織処置方法。
【請求項3】
請求項1において、前記レーザ源がNd:YAGレーザを備えたヒト組織処置方法。
【請求項4】
請求項1において、前記出力ビームの波長が約1.3〜1.6μmであるヒト組織処置方法。
【請求項5】
請求項4において、前記出力ビームの波長が約1.40〜1.44μmであるヒト組織処置方法。
【請求項6】
請求項1において、前記処置ビームが、前記対象組織部位において約7〜10mmの直径を有するヒト組織処置方法。
【請求項7】
請求項6において、前記処置ビームの平均フルエンスが、前記対象組織部位において約10J/cm2未満であるヒト組織処置方法。
【請求項8】
請求項1において、前記出力ビームが0.1〜100m秒のパルス幅を有するヒト組織処置方法。
【請求項9】
請求項8において、前記出力ビームが1〜5m秒のパルス幅を有するヒト組織処置方法。
【請求項10】
請求項1において、前記光学システムがファイバ束を備えたヒト組織処置方法。
【請求項11】
請求項10において、前記ファイバ束が1000〜2000の数のファイバを備えたヒト組織処置方法。
【請求項12】
請求項10において、前記光学システムが、前記出力ビームを前記ファイバ束の近位端に結合させる集束レンズと、前記ファイバ束の遠位端と前記対象組織との間に位置する光学窓とを備え、この光学窓により、前記ファイバ束の各ファイバから出射されるビームが対象皮膚に到達する前に発散して、各ビームが前記束の隣り合うファイバからのビームと部分的に重なり合う、ヒト組織処置方法。
【請求項13】
請求項12において、前記光学窓が1〜5mmの厚さであるヒト組織処置方法。
【請求項14】
請求項10において、前記処置ビームの平均フルエンスが約10J/cm2未満であるヒト組織処置方法。
【請求項15】
請求項10において、前記光学システムが、前記出力パルスを前記レーザ源から前記ファイバ束を収容するハンドピースに運ぶ伝送ファイバを備えたヒト組織処置方法。
【請求項16】
請求項1において、前記光学システムが、レーザ源と前記処置部位の間の光路に配置された回折レンズアレイを備え、このアレイ内の各レンズが、照射強度の低い区域に囲まれた照射強度の高い区域をそれぞれもたらすヒト組織処置方法。
【請求項17】
請求項16において、前記回折レンズアレイがアレイ内に約2000以下の数のレンズを備えたヒト組織処置方法。
【請求項18】
請求項17において、前記レンズがそれぞれ直径約150〜450μmであるヒト組織処置方法。
【請求項19】
請求項16において、前記回折レンズアレイが直径7〜10mmであるヒト組織処置方法。
【請求項20】
請求項16において、前記レーザ出力ビームの平均フルエンスが約10J/cm2未満であるヒト組織処置方法。
【請求項21】
請求項16において、前記出力ビームのパルス幅が0.1〜100m秒であるヒト組織処置方法。
【請求項22】
請求項21において、前記出力ビームのパルス幅が1〜5m秒であるヒト組織処置方法。
【請求項23】
出力ビームを発生させるレーザ源と、
不均一なエネルギプロファイルを有する処置ビームを提供するように前記出力ビームを変換する光学システムであって、前記処置ビームは、照射強度の低い区域にそれぞれ囲まれた複数の照射強度の高い区域を備え、前記照射強度の高い区域はコラーゲンを収縮させる第1の温度まで対象組織の選択された箇所を加熱し、前記照射強度の低い区域はコラーゲン生成を刺激するのに十分なエネルギを周辺組織に供給する光学システムとを備えた処置システム。
【請求項24】
請求項23において、前記照射強度の高い区域が前記組織を70℃以上の温度にまで加熱する処置システム。
【請求項25】
請求項23において、前記レーザ源がNd:YAGレーザを備えた処置システム。
【請求項26】
請求項23において、前記出力ビームの波長が約1.3〜1.6μmである処置システム。
【請求項27】
請求項26において、前記出力ビームの波長が約1.40〜1.44μmである処置システム。
【請求項28】
請求項23において、前記処置ビームが、前記対象組織部位において約7〜10mmの直径を有する処置システム。
【請求項29】
請求項28において、前記処置ビームの平均フルエンスが、前記対象組織部位において約10J/cm2未満である処置システム。
【請求項30】
請求項23において、前記出力ビームが0.1〜100m秒のパルス幅を有する処置システム。
【請求項31】
請求項30において、前記出力ビームが1〜5m秒のパルス幅を有する処置システム。
【請求項32】
請求項23において、前記光学システムがファイバ束を備えた処置システム。
【請求項33】
請求項32において、前記ファイバ束が1000〜2000の数のファイバを備えた処置システム。
【請求項34】
請求項32において、前記光学システムが、前記出力ビームを前記ファイバ束の近位端に結合させる集束レンズと、前記ファイバ束の遠位端と前記対象組織との間に位置する光学窓とを備え、この光学窓により、前記ファイバ束の各ファイバから出射されるビームが対象皮膚に到達する前に発散して、各ビームが前記束の隣り合うファイバからのビームと部分的に重なり合う、処置システム。
【請求項35】
請求項34において、前記光学窓が1〜5mmの厚さである処置システム。
【請求項36】
請求項32において、前記処置ビームの平均フルエンスが約10J/cm2未満である処置システム。
【請求項37】
請求項32において、前記光学システムが、前記出力パルスを前記レーザ源から、前記ファイバ束を収容するハンドピースに運ぶ伝送ファイバを備えた処置システム。
【請求項38】
請求項23において、前記光学システムが、レーザ源と前記処置部位の間の光路に配置された回折レンズアレイを備え、このアレイ内の各レンズが、照射強度の低い区域に囲まれた照射強度の高い区域をそれぞれもたらす処置システム。
【請求項39】
請求項38において、前記回折レンズアレイがアレイ内に約2000以下の数のレンズを備えた処置システム。
【請求項40】
請求項38において、前記レンズがそれぞれ直径約150〜450μmである処置システム。
【請求項41】
請求項38において、前記回折レンズアレイが直径7〜10mmである処置システム。
【請求項42】
請求項41において、前記レーザ出力ビームの平均フルエンスが約10J/cm2未満である処置システム。
【請求項43】
請求項38において、前記出力ビームのパルス幅が0.1〜100m秒である処置システム。
【請求項44】
請求項38において、前記出力ビームのパルス幅が1〜5m秒である処置システム。
【請求項45】
請求項23において、さらに、
前記光学システムを収容する先端ハウジングであって、この先端ハウジングの遠位端が、処置を受ける人の対象組織部位に接触できるようにされている先端ハウジングと、
前記先端ハウジングに冷気を送る導管であって、前記先端ハウジングの遠位端に冷気を送るように曲げられた出口を有する導管とを備えた処置システム。
【請求項46】
出力ビームを発生させるレーザ源と、
複数の個別のファイバを有するファイバ束であって、近位端および遠位端を有するファイバ束と、
前記出力ビームを前記ファイバ束の近位端に結合させる集束レンズと、
前記ファイバ束の遠位端に位置する光学窓であって、この光学窓により、前記ファイバ束の各ファイバから出射されるビームがこの光学窓を通過する際に発散されて、各ビームが前記束の隣り合うファイバからのビームと部分的に重なり合う光学窓とを備えたレーザシステム。
【請求項47】
約10 J/cm2未満の平均フルエンスを有する出力ビームを発生させるレーザ源と、
このレーザ源と処置部位との間の光路に配置された回折レンズアレイであって、前記出力ビームがこのレンズアレイを通過する際に、照射強度の低い領域に隣接してそれぞれ囲まれた複数の照射強度の高い区域を備えた、不均一な処置ビームが生成される回折レンズアレイとを備えたレーザシステム。
【請求項48】
請求項23において、さらに、前記レーザ源と一体化されたパルス光源を備えた処置システム。
【請求項49】
請求項48において、前記パルス光源がフラッシュランプを備えた処置システム。
【請求項50】
請求項49において、前記フラッシュランプがキセノンフラッシュランプを備えた処置システム。
【請求項51】
約10 J/cm2未満の平均フルエンスを有する出力ビームを発生させるレーザ源と、
このレーザ源と処置部位との間の光路に配置された回折レンズアレイであって、前記出力ビームがこのレンズアレイを通過する際に、照射強度の低い領域に隣接してそれぞれ囲まれた複数の照射強度の高い区域を備えた、不均一な処置ビームが生成される回折レンズアレイと、
前記レーザ源と一体化されたパルス光源とを備えた処置システム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2008−536653(P2008−536653A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507939(P2008−507939)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/015180
【国際公開番号】WO2006/116141
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(501033084)サイノシュア・インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】