説明

新規なベクター、それを含有する医薬及び癌の治療方法

【課題】癌を治療するためのADP(Adenovirus Death Protein)遺伝子をコードしたベクター又はADP遺伝子とGM−CSF遺伝子の両者をコードしたベクターの提供。
【解決手段】ADP遺伝子又はADP遺伝子とGM−CSF遺伝子の両者をコードしたベクター。ADP遺伝子又はADP遺伝子とGM−CSF遺伝子の両者をコードしたベクターと遺伝子導入化試薬を含有する複合体。それらを含有する医薬。それらを用いる癌の治療方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ADP(Adenovirus Death Protein)遺伝子をコードしたベクター又はADP遺伝子とGM−CSF遺伝子の両者をコードしたベクター、及びこれらベクターと遺伝子導入試薬との複合体、それらを含有する医薬並びにそれらを用いる癌の治療方法に関する。
【技術背景】
【0002】
遺伝子治療は、遺伝子に欠損や異常があることによる遺伝子疾患の患者に、正常遺伝子を与えて病気を治す、根治的な治療法として期待され、試みられてきた。正式な手続きを踏み、治療目的として行われた初めての遺伝子治療は、1990年に、ADA(アデノシンデアミ ナーゼ)欠損症の患者に対して行われた。治療に必要な遺伝子をコードしたDNAを目的の細胞に導入するためには、多くの場合ベクターと呼ばれる遺伝子の運びやが使用される、ベクターには現在(1)ウイルスベクターと(2)カチオン性ポリマー、あるいはカチオン性脂質などの非ウイルスベクターとがある。
【0003】
これまで行われてきた遺伝子治療臨床試験の多くはウイルスベクターを利用したものである。(1)レトロウイルスベクター(2)アデノウイルス(Ad)ベクター(3)アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターなどが使用されてきた。このうちアデノウイルスベクターは、これまでに最も多く利用されたベクターであり、400例の臨床試験が試みられている。
アデノウイルスには50種類以上の血清型が知られているが、ベクターとしては、アデノウイルス5型を遺伝子組み換えした非増殖型組換えアデノウイルスが、その優れた遺伝子導入特性から遺伝子治療研究において広く用いられてきた。
【0004】
多くの非増殖型アデノウイルスベクターでは、アデノウイルスのE1遺伝子を取り除き、代わりにp53などの治療用の遺伝子を挿入している。アデノウイルス遺伝子の発現の開始に必要なE1遺伝子を欠損しているため、一般の細胞内では増殖しないが、E1を発現している293細胞のような特殊な細胞内では増殖させることが可能である。このようにして得られる非増殖型組換えアデノウイルスは、標的細胞に効率良く感染し、治療遺伝子を発現するが、標的細胞内にはE1遺伝子産物がないため、増殖することなく安全性が高いと考えられる。
また、目的遺伝子を挿入するためのより大きなスペースを確保するために、培養細胞での増殖に必須ではないE3領域も除去したものが広く利用されてきた。
【0005】
アデノウイルスベクターは感染性が強く、また、レトロウイルスベクターが分裂細胞にしか導入できないのに対して、非分裂細胞にも遺伝子を直接導入できる。しかし、成人のほとんどは抗アデノウイルス抗体を持つ。また、アデノウイルスベクターの発現は一過性であるため複数回の投与が必要であり、治療開始時に患者に抗アデノウイルス抗体がなくても、投与を繰り返すことで抗アデノウイルス抗体ができる。そのために感染、遺伝子導入は著しく阻害され、p53遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクターが中国では認可され使用されているが、十分治癒効果は得られていない。
【0006】
一方、アデノウイルスの細胞溶解活性を利用して、腫瘍細胞のみを選択的に殺す組み替えウイルスが、癌遺伝子治療の新しい手法として開発された。これらは、腫瘍溶解性ウイルス、制限増殖型ウイルスなどと呼ばれ、アデノウイルスのE1領域のプロモーターを腫瘍細胞でのみ選択的に発現するプロモーターで置換して得られる。腫瘍選択的プロモーターとしては、テロメラーゼプロモーター、ミドカインプロモーター、IAI3Bプロモーターなどが利用されてきた。
これらの腫瘍溶解性ウイルスにおいても、E3領域は必須ではないため、当初はE3領域を除去したものが作成され、試された。しかし、Suzukiら(非特許文献1)によって、E3領域を残したアデノウイルスの方が高い腫瘍細胞溶解性を示すことが明らかになった。E3領域にはADP(Adenovirus Death Protein)がコードされている。ADPの機能はすべて解明されたわけではないが、アデノウイルスの感染後期において、細胞融解とウイルスの細胞からの放出の効率を向上させることが報告(非特許文献2)されており、この機能がE3領域を持つ腫瘍溶解性ウイルスの高い効率と関連すると推測されている。
【0007】
また、E3領域を除去した後に、ADP遺伝子のみを再挿入した腫瘍溶解性アデノウイルスは、強い腫瘍増殖抑制能力を示したとの報告(非特許文献3)もあり、ADPが重要な役割を担っていることが考えられた。
また一方で、本発明者の一人でもある濱田らは、E3領域を持つ腫瘍溶解性ウイルスによって治癒されたマウスにおいては、抗アデノウイルス免疫だけでなく、抗腫瘍免疫が大きく活性化されていることを見いだした(非特許文献4)。このことは、腫瘍溶解性ウイルス治療における抗腫瘍効果が、必ずしもウイルス自体による殺細胞効果だけではなく、腫瘍溶解性ウイルスによって活性化されたCTLによる効果である可能性を示唆している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
▲1▼Clinical Cancer Research,Vol.8,3348−3359,November 2002,Kaori Suzuki,Ramo´n Alemany,
Masato Yamamoto,and David T.Curiel
▲2▼JOURNAL OF VIROLOGY,Apr.1996,p.2296−2306,ANN E.TOLLEFSON,ABRAHAM SCARIA,TERRY W.HERMISTON,JAN S.RYERSE,LORA J.WOLD,AND WILLIAM S.M.WOLD
▲3▼JOURNAL OF VIROLOGY,July 2000,p.6147−6155,KONSTANTIN DORONIN,KAROLY TOTH,MOHAN KUPPUSWAMY,PETER WARD,ANN E.TOLLEFSON,AND WILLIAM S.M,WOLD
▲4▼Molecular Therapy vol.15 no.6,1121−1128(2007),Katsuyuki Hamada,Junzo Desaki,Kou Nakagawa,Ting Zhang,Toshiro Shirakawa,Akinobu Gotoh and Masatoshi Tagawa
▲5▼Biomaterials 31(2010)2912−2918,Tomoko Ito,Chieko Yoshihara,Katsuyuki Hamada,Yoshiyuki Koyama,
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような状況下、本発明者らは、腫瘍溶解性ウイルスによる抗腫瘍免疫活性化のメカニズムを詳細に検討した結果、感染した腫瘍細胞におけるADPの発現が、抗腫瘍免疫の成立に関わっている可能性を見いだした。
さらに我々は、上述の非ウイルス型遺伝子治療のためのツールとして、生体内で高発現するプラスミドDNAのシステムを固有技術として持っている(非特許文献5)。そこで、ADPの遺伝子をコードしたプラスミドを構築し、そのイオン複合体からなる遺伝子導入システムを調製し、担癌モデルマウスに腫瘍局所内投与してみた。すると、最も抗腫瘍効果が高いといわれているサイトカインであるGM−CSFの遺伝子をコードしたプラスミドを用いた比較例よりも、著しく高い抗腫瘍効果が確認された。
【0010】
また、前述の腫瘍溶解性ウイルスによる抗腫瘍効果の発現には、GM−CSFFの同時投与が有効であることを見いだしている(非特許文献5)。そこで、ADPの遺伝子をコードしたプラスミド複合体とGM−CSFの遺伝子をコードしたプラスミド複合体を混合して担癌モデルマウスに腫瘍局所内投与したところ、ADPの遺伝子をコードしたプラスミド複合体単独よりもさらに高い抗腫瘍効果が認められた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
(1)ADP(Adenovirus Death Protein)遺伝子又はADP遺伝子とGM−CSF遺伝子の両者をコードしたベクター。
(2)ベクターがプラスミドベクターであることを特徴とする上記(1)記載のベクター。
(3)ADP遺伝子又はADP遺伝子とGM−CSF遺伝子の両者をコードしたベクターと遺伝子導入化試薬を含有する複合体。
(4)ベクターがプラスミドベクターであることを特徴とする上記(3)記載の複合体。
(5)遺伝子導入試薬が、カチオン性ポリマー、カチオン性脂質及びアニオン性ポリマーから選択される1以上の化合物からなることを特徴とする上記(3)又は(4)記載の複合体。
【0012】
(6)遺伝子導入試薬が、カチオン性ポリマー又はカチオン性脂質と、アニオン性ポリマーからなることを特徴とする上記(5)記載の複合体。
(7)カチオン性ポリマーが、ポリエチレンイミン(直鎖状ポリエチレンイミン又はポリ分枝型エチレンイミン)、2−ジメチルアミノエチルメタクリレートの重合体又は共重合体、2−トリメチルアミノエイルメタクリレートの重合体又は共重合体、ポリアミドアミンデンドリマー、ポリリジンデンドリマー、プロタミン、ヒストン、HelΔ1、ゼラチン、ポリ−L−リジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、ポリビニルイミダゾール、側鎖にエチレンジアミン構造を有する高分子及びそれらの共重合体、またはそれらの塩から1つ以上選択される上記(5)又は(6)記載の複合体。
【0013】
(8)カチオン性脂質が、DC−Chol(3β−(N−(N‘,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル)コレステロール、DDAB(N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムブロミド)、DMRI(N−(1,2−ジミリスチルオキシプパ−3−イル)−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド)、DODAC(N,N−ジオレイル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド)、DOGS(ジヘプタデシルアミドグリシルスペルミジン)、DOSPA(N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N−(2−(スペルミンカルボキサミド)−N,N−ジメチルアンモニウムトリフルオロアセタート)、DOTAP(N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド)及びDOTMA(N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N、N、N−トリメチルアンモニウムクロリド)およびそれらの異なる酸との塩から1つ以上選択される上記(5)又は(6)記載の複合体。
【0014】
(9)アニオン性ポリマーが、カルボキシル側鎖を持つPEG誘導体、アクリル酸又はメタクリル酸の重合体若しくは共重合体、ポリビニルアルコールの硫酸エステル体、サクシニミジル化ポリ−L−リジン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン、デルタマン硫酸又はそれらの誘導体、及びそれらの塩から1つ以上選択される上記(5)又は(6)記載の複合体。
(10)凍結乾燥処理を施した上記(3)から(9)いずれか記載の複合体。
(11)ADP遺伝子又はADP遺伝子とGM−CSF遺伝子の両者をコードしたベクターを含有する医薬。
(12)ベクターがプラスミドベクターであることを特徴とする上記(11)記載の医薬。
(13)ADP遺伝子又はADP遺伝子とGM−CSF遺伝子の両者をコードしたベクターと遺伝子導入化試薬を含有する医薬。
(14)ベクターがプラスミドベクターであることを特徴とする上記(13)記載の医薬。
【0015】
(15)遺伝子導入試薬が、カチオン性ポリマー、カチオン性脂質及びアニオン性ポリマーから選択される1以上の化合物からなることを特徴とする上記(13)又は(14)記載の医薬。
(16)遺伝子導入試薬が、カチオン性ポリマー又はカチオン性脂質と、アニオン性ポリマーからなることを特徴とする上記(15)記載の医薬。
(17)カチオン性ポリマーが、ポリエチレンイミン(直鎖状ポリエチレンイミン又はポリ分枝型エチレンイミン)、2−ジメチルアミノエチルメタクリレートの重合体又は共重合体、2−トリメチルアミノエイルメタクリレートの重合体又は共重合体、ポリアミドアミンデンドリマー、ポリリジンデンドリマー、プロタミン、ヒストン、HelΔ1、ゼラチン、ポリ−L−リジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、ポリビニルイミダゾール、側鎖にエチレンジアミン構造を有する高分子及びそれらの共重合体、またはそれらの塩から1つ以上選択される上記(15)又は(16)記載の医薬。
【0016】
(18)カチオン性脂質が、DC−Chol(3β−(N−(N‘,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル)コレステロール、DDAB(N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムブロミド)、DMRI(N−(1,2−ジミリスチルオキシプパ−3−イル)−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド)、DODAC(N,N−ジオレイル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド)、DOGS(ジヘプタデシルアミドグリシルスペルミジン)、DOSPA(N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N−(2−(スペルミンカルボキサミド)−N,N−ジメチルアンモニウムトリフルオロアセタート)、DOTAP(N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド)及びDOTMA(N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N、N、N−トリメチルアンモニウムクロリド)およびそれらの異なる酸との塩から1つ以上選択される上記(15)又は(16)記載の医薬。
【0017】
(19)アニオン性ポリマーが、カルボキシル側鎖を持つPEG誘導体、アクリル酸又はメタクリル酸の重合体若しくは共重合体、ポリビニルアルコールの硫酸エステル体、サクシニミジル化ポリ−L−リジン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン、デルタマン硫酸又はそれらの誘導体、及びそれらの塩から1つ以上選択される上記(15)又は(16)記載の医薬。
(20)凍結乾燥処理を施した上記(13)から(19)いずれか記載の医薬。
(21)ADP遺伝子又はADP遺伝子とGM−CSF遺伝子の両者をコードしたベクターを有効量投与すること特徴とする癌の治療方法。
(22)ベクターがプラスミドベクターであることを特徴とする上記(21)記載の癌の治療方法。
【0018】
(23)ADP遺伝子又はADP遺伝子とGM−CSF遺伝子の両者をコードしたベクターと遺伝子導入化試薬を含有する複合体を有効量投与すること特徴とする癌の治療方法。
(24)ベクターがプラスミドベクターであることを特徴とする上記(23)記載の癌の治療方法。
(25)遺伝子導入試薬が、カチオン性ポリマー、カチオン性脂質及びアニオン性ポリマーから選択される1以上の化合物からなることを特徴とする上記(23)又は(24)記載の癌の治療方法。
(26)遺伝子導入試薬が、カチオン性ポリマー又はカチオン性脂質と、アニオン性ポリマーからなることを特徴とする上記(25)記載の癌の治療方法。
(27)カチオン性ポリマーが、ポリエチレンイミン(直鎖状ポリエチレンイミン又はポリ分枝型エチレンイミン)、2−ジメチルアミノエチルメタクリレートの重合体又は共重合体、2−トリメチルアミノエイルメタクリレートの重合体又は共重合体、ポリアミドアミンデンドリマー、ポリリジンデンドリマー、プロタミン、ヒストン、HelΔ1、ゼラチン、ポリ−L−リジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、ポリビニルイミダゾール、側鎖にエチレンジアミン構造を有する高分子及びそれらの共重合体、またはそれらの塩から1つ以上選択される上記(25)又は(26)記載の癌の治療方法。
【0019】
(28)カチオン性脂質が、DC−Chol(3β−(N−(N‘,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル)コレステロール、DDAB(N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムブロミド)、DMRI(N−(1,2−ジミリスチルオキシプパ−3−イル)−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド)、DODAC(N,N−ジオレイル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド)、DOGS(ジヘプタデシルアミドグリシルスペルミジン)、DOSPA(N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N−(2−(スペルミンカルボキサミド)−N,N−ジメチルアンモニウムトリフルオロアセタート)、DOTAP(N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド)及びDOTMA(N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N、N、N−トリメチルアンモニウムクロリド)およびそれらの異なる酸との塩から1つ以上選択される上記(25)又は(26)記載の癌の治療方法。
【0020】
(29)アニオン性ポリマーが、カルボキシル側鎖を持つPEG誘導体、アクリル酸又はメタクリル酸の重合体若しくは共重合体、ポリビニルアルコールの硫酸エステル体、サクシニミジル化ポリ−L−リジン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン、デルタマン硫酸又はそれらの誘導体、及びそれらの塩から1つ以上選択される上記(25)又は(26)記載の癌の治療方法。
(30)凍結乾燥処理を施した上記(23)から(29)いずれか記載の癌の治療方法。
に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明のADP遺伝子をコードしたベクター又はADP遺伝子とGM−CSF遺伝子の両者をコードしたベクター、及びこれらベクターと遺伝子導入試薬との複合体は、ADP遺伝子やGM−CSF遺伝子を効率よく細胞に導入可能で、医薬分野、特に、癌の治療に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明において、ADP遺伝子とは、ADPをコードするアデノウイルスE3−11.6Kタンパクの遺伝子(Ad5型では11.6kではなく10.5kであるが、発見者らによってこのように呼ばれている。)のほか、その一部を欠失したものや、一部を置換したのもなど、ADPが有する機能を発揮するタンパク又はペプチドをコードする遺伝子を意味する。また、GM−CSF遺伝子とは、GM−CSFをコードする遺伝子のほか、その一部を欠失したのもや、一部を置換したものなど、GM−CSFが有する機能を発揮するタンパク又はペプチドをコードする遺伝子を意味し、ヒトGM−CSFや犬猫等の動物用GM−CSFも意味する。
さらに、ADP遺伝子とGM−CSF遺伝子の両者をコードする場合、たとえばADP遺伝子発現カセットとGM−CSF遺伝子発現カセットをベクターにタンデムに挿入したものなどを使用することができる。
また、ADPのプラスミドとGM−CSFのプラスミドの両者を含む複合体、またはそれぞれの複合体を混合して用いてもよい。
【0023】
また、本発明において、ベクターとは、遺伝子組み換え技術で用いられる、組み換えDNAを増幅、維持、導入させる核酸分子を意味し、通常使用される、pCMV、pcDNA、pACT等のプラスミドベクター;コスミドベクター;PACベクター、YACベクター、BACベクター等の人工染色体ベクターなど、通常、当該分野で使用されるベクターを意味する。
さらに、本発明において、遺伝子導入試薬とは、通常使用されている、遺伝子を導入する目的で使用される試薬、たとえば、カチオン性ポリマー、カチオン性脂質、アニオン性ポリマーなどを意味し、また、これらを組み合わせたものも意味する。
本発明の複合体中で遺伝子をコードしたベクター(以後、「核酸等」と記載する)は、カチオン性ポリマー又はカチオン性脂質若しくはそれを含む集合体とイオン結合による複合体を形成しており、アニオン性ポリマーを加えた場合は、アニオン性ポリマーはカチオン性ポリマー又はカチオン性脂質とイオン結合している。これらは、混合比、混合順序等によっては、主にアニオン性ポリマーで覆われた複合体を形成することができる。
【0024】
本発明の複合体に用いることができるカチオン性ポリマーとしては、正に荷電された分子量が1000〜300万程度の天然由来又は合成高分子であって、水中でDNAと複合体を形成できる官能基を1分子中に複数、好ましくは5個以上有する高分子を使用することができ、このような官能基としては、例えば置換されていてもよいアミノ基若しくはアンモニウム基又はその塩(これらの基は、例えば炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基などで単又は多置換されていてもよい)、イミノ基、イミダゾリル基、グアニジノ基などの有機アミノ基を挙げることができる。このようなカチオン性ポリマーとしては、例えば、正に荷電された蛋白質やポリペプチド;正に荷電されたデンドリマー;正に荷電された合成ポリマー;及び正に荷電された多糖類誘導体、又はそれらのグラフト、あるいはブロック共重合体およびそれらの塩、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0025】
本発明の複合体にカチオン性ポリマーとして用いることができる正に荷電された蛋白質、正に荷電されたポリペプチドの分子量は、好ましくは1000〜50万程度である。このような蛋白質、ポリペプチドとしては、具体的にはプロタミン、ヒストン、HelΔ1、ゼラチンなどのタンパク質及びポリペプチドを例示することができ、また、正に荷電されたアミノ酸残基を含むポリアミノ酸もまた例示することができる。このような正に荷電されたアミノ酸残基を含むポリアミノ酸としては、具体的にはポリ−L−リジン、ポリアルギニン、ポリオルニチンなどを例示することができる。これらの蛋白質、及びポリペプチドの塩としては、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩などを例示することができる。
カチオン性ポリマーとして用いることができる上記のような官能基を有する正に荷電されたデンドリマーとは、分岐した分子鎖の末端または内部に、置換されていてもよいアミノ基若しくはアンモニウム基又はその塩(これらの基は、例えば炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基などで単又は多置換されていてもよい)を有するデンドリマーであり、その分子量は、好ましくは1000〜50万程度である。デンドリマーとしては、具体的にはポリアミドアミンデンドリマー、ポリリジンデンドリマーなどを例示することができる。また、デンドリマーの塩としては、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩などを例示することができる。
【0026】
カチオン性ポリマーとして用いることができる正に荷電された合成ポリマーは、上記のような、水中でDNAと複合体を形成できる官能基を1分子中に複数、好ましくは5個以上有する合成ポリマーであって、分子量が好ましくは1000〜300万である合成ポリマーである。合成ポリマーとしては具体的には、ポリエチレンイミン(直鎖状ポリエチレンイミン、又はポリ分岐型エチレンイミンを含む)、2−ジメチルアミノエチルメタクリレートの重合体又は共重合体、2−トリメチルアミノエチルメタクリレートの重合体又は共重合体、ポリビニルイミダゾール、側鎖にエチレンジアミン構造を有する高分子及びそれらの共重合体、またはそれらの塩などを例示することができる。合成ポリマーの一例であるポリエチレンイミンの分子量は、好ましくは1000〜50万程度であり、より好ましくは5000〜20万程度であり、もっとも好ましくは1万〜10万程度である。あるいは、より短いポリエチレンイミンを結合して得られるブロック共重合体である。また、ポリエチレンイミンの塩として、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩などを例示することができる。
【0027】
カチオン性ポリマーとして用いることができる正に荷電された多糖類誘導体は、水中でDNAと複合体を形成できる官能基を1分子中に複数、好ましくは5個以上有する、分子量が、好ましくは1000〜300万であり、より好ましくは5000〜50万である多糖類誘導体である。このような多糖類としては、具体的にはキトサン、上記のような官能基を導入したデキストラン誘導体などを例示することができる。これらのうちキトサンの分子量は、好ましくは1000〜50万程度であり、より好ましくは5000〜20万程度であり、もっとも好ましくは1万〜10万程度である。キトサンの塩としては、塩酸塩、酢酸塩などを例示することができる。また、デキストラン誘導体の分子量は、好ましくは3000〜100万である。このようなデキストラン誘導体としては、具体的にはジエチルアミノエチル−デキストランなどを例示することができる。
【0028】
上記のカチオン性ポリマーは、従来正に荷電していないものにアミノ基などの官能基を導入し、正に荷電するようにしたものでも良い。また、通常は正に荷電されていないものであっても、複合体形成時に正に荷電されるものであれば使用可能であり、また、必要により糖鎖、オリゴペプチド、抗体などで更に修飾されていてもよい。
【0029】
本発明の複合体に用いることができるカチオン性脂質(カチオン性コレステロール誘導体を含む)としては、DC−Chol(3β−(N−(N′,N′−ジメチルアミノエタン)カルバモイル)コレステロール)、DDAB(N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムブロミド)、DMRI(N−(1,2−ジミリスチルオキシプロパ−3−イル)−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド)、DODAC(N,N−ジオレイル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド)、DOGS(ジヘプタデシルアミドグリシルスペルミジン)、DOSPA(N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N−(2−(スペルミンカルボキサミド)エチル)−N,N−ジメチルアンモニウムトリフルオロアセタート)、DOTAP(N−(1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド)、又はDOTMA(N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド)、およびそれらの異なる酸との塩、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0030】
また、カチオン性脂質を含む集合体としては、上記カチオン性脂質(たとえばDOSPA)と、例えばDOPE(ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン)、コレステロールなどの中性物質を混合したものを使用することができる。例えばカチオン性脂質を含む集合体としては、リポフェクタミン(上記DOSPAとDOPEの3:1w/w混合体リポソーム)、リポフェクチン(上記DOTMAとDOPEの1:1w/w混合体リポソーム)、またはこれらの混合物などを好ましく挙げることができる。また、ポドプラニン、ポドカリキシン、キタラン硫酸、ガングリオシド、ポドプラニン−CLEC−2受容体(C型レクチン様受容体,C−type lectin−like receptor−2)、MUC、あるいは腫瘍細胞特異的な各種糖タンパクに対する抗体等、あるいは抗体医薬である リツキシマブ(抗CD20抗体)、トラスツマブ(ハーセプチン)などの抗HER−2抗体、抗EGFR抗体、オムニターグなどを結合したカチオン性ポリマーを使用し、標的指向性を付与することができる。
【0031】
本発明の複合体においては、カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン;プロタミン;HelΔ1;ポリアミドアミンデンドリマー、ポリリジンデンドリマーなどのデンドリマー;キトサン;2−ジメチルアミノエチルメタクリレートの重合体又は共重合体;2−トリメチルアミノエチルメタクリレートの重合体又は共重合体などを好ましく用いることができ、ポリエチレンイミン、ポリアミドアミンデンドリマー、ポリリジンデンドリマー、キトサンを特に好ましく用いることができる。また、カチオン性脂質若しくはそれを含む集合体としては、リポフェクタミン(上記DOSPAとDOPEの3:1w/w混合体リポソーム)を好ましくは用いることができる。
【0032】
本発明の複合体において使用するアニオン性ポリマーとしては、分子中にアニオン性基を含む、負に荷電された、分子量が500〜400万程度の天然由来又は合成高分子であって、水中でポリカチオンと複合体を形成できる官能基を1分子中に複数、好ましくは5個以上有する高分子を使用することができ、このような官能基としては、例えばカルボキシル基、−OSOH基、−SOH基、リン酸基、及びこれらの塩を挙げることができる。このようなアニオン性ポリマーとしては、両イオン性ポリマーも含まれる。
【0033】
本発明の複合体においては、アニオン性ポリマーとしては、カルボキシル基、−OSOH基、−SOH基、リン酸基、及びこれらの塩から選択される官能基を有する多糖類又はその誘導体;負に荷電した側鎖を有するアミノ酸残基を含むポリアミノ酸;カルボキシル側鎖を持つPEG誘導体;カルボキシル基、−OSOH基、−SOH基、リン酸基、及びこれらの塩から選択される官能基を有する合成高分子;カルボキシル基、−OSOH基、−SOH基、リン酸基、及びこれらの塩から選択される官能基、並びに置換されていてもよいアミノ基若しくはアンモニウム基又はその塩(これらの基は、例えば炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基などで単又は多置換されていてもよい)を有する高分子;並びにそれらの組み合わせを用いることができる。
【0034】
本発明の複合体においてアニオン性ポリマーとして用いることができる上記のような官能基を有する多糖類又はその誘導体としては、好ましくはグルコサミノグリカンを用いることができる。このようなグルコサミノグリカンの分子量は、好ましくは1000〜400万、より好ましくは4000〜300万である。このようなグルコサミノグリカンとして、具体的には例えばヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン、デルマタン硫酸などを例示することができる。なかでもヒアルロン酸を好ましく用いることができる。ヒアルロン酸は、その塩又は負に荷電した誘導体としても用いることができる。その分子量は、5,000以上であればよいが、10,000以上が好ましく、10万〜300万がより好ましい。ヒアルロン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などを例示することができる。また、ヒアルロン酸の誘導体としては、例えば、ヒアルロン酸にポリエチレングリコール、ペプチド、糖、蛋白質、ヨウ酸、抗体又はその一部などを導入することによって得られるものが挙げられ、スペルミン、スペルミジン等を導入し、プラスに荷電した部分を持つ両イオン性の誘導体も含まれる。
【0035】
本発明の複合体においてアニオン性ポリマーとして用いることができる、負に荷電した側鎖を有するアミノ酸残基を含むポリアミノ酸とは、カルボキシル基、−O−SOH基、−SOH基、リン酸基、及びこれらの塩などの基を側鎖として有するアミノ酸残基を含む、好ましくは500〜100万の分子量を有するポリアミノ酸である。このようなポリアミノ酸としては、具体的にはポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸などを例示することができる。
【0036】
本発明の複合体においてアニオン性ポリマーとして用いることができるカルボキシル側鎖を持つPEG誘導体とは、PEG1分子当たりカルボキシル側鎖を複数、好ましくは5個以上有する、500以上、好ましくは2000以上、より好ましくは4000〜40000の分子量を有するPEG誘導体である。カルボキシル側鎖を持つPEG誘導体は、その塩又は負に荷電した誘導体としても用いることができる。これらの塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などを例示することができる。このようなPEG誘導体としては、具体的にはJ.Biomater.Sci.Polymer Edn.Vol.14,pp 515−531(2003)などに記載されたPEG誘導体を例示することができる。
【0037】
本発明の複合体においてアニオン性ポリマーとして用いることができるカルボキシル基、−OSOH基、−SOH基、リン酸基、及びこれらの塩から選択される官能基を有する合成高分子とは、1分子当たり複数、好ましくは5個以上の、カルボキシル基、−O−SOH基、−SOH基、リン酸基、及びこれらの塩から選択される官能基を有する重合体又は共重合体であって、好ましくは500〜400万の分子量を有する重合体又は共重合体である。このような重合体又は共重合体としては、具体的には分子量1000〜300万のアクリル酸又はメタクリル酸の重合体又は共重合体、あるいはポリビニルアルコールの硫酸エステル体、サクシニミジル化ポリ−L−リジンなどを例示することができる。
【0038】
本発明の複合体においてアニオン性ポリマーとして用いることができるカルボキシル基、−OSOH基、−SOH基、リン酸基、及びこれらの塩から選択される官能基、並びに置換されていてもよいアミノ基若しくはアンモニウム基又はその塩(これらの基は、例えば炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基などで単又は多置換されていてもよい)を有する高分子とは、1分子当たりカルボキシル基、−OSOH基、−SOH基、リン酸基、及びこれらの塩から選択される官能基を複数、好ましくは5個以上、並びに上記のように置換されていてもよいアミノ基若しくはアンモニウム基又はその塩を有する、500以上、好ましくは2000以上、より好ましくは4000〜40000の分子量を有する高分子である。このような高分子としては、好ましくは、カルボキシル側鎖とその当量以下の上記のアミノ基若しくはアンモニウム基又はその塩を持つPEG誘導体を挙げることができ、具体的にはMacromol.Biosci.Vol.2,pp 251−256(2002)などに記載されている方法で調製することができるPEG誘導体を例示することができる。
【0039】
本発明の複合体において用いることができるアニオン性ポリマーは、従来負に荷電していないものにカルボキシル基などの官能基を導入し、負に荷電するようにしたものでも良い。通常は負に荷電されていないものであっても、複合体形成時に負に荷電されるものであれば使用可能であり、また必要により糖鎖、オリゴペプチド、抗体などで更に修飾されていてもよい。
【0040】
本発明の複合体においては、アニオン性ポリマーとしては、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、カルボキシル側鎖を持つPEG誘導体、ポリアクリル酸などのアニオン性ポリマー又はそれらの塩を好ましく用いることができ、ヒアルロン酸、カルボキシル側鎖を持つPEG誘導体又はそれらの塩などを特に好ましく用いることができる。
【0041】
また、アニオン性ポリマーとして、遺伝子導入の標的細胞に対して特異的接着能を有するものを用いることにより、標的細胞に対して特異的に遺伝子導入をすることが可能である。例えばアニオン性ポリマーとしてヒアルロン酸を用いる場合、ヒアルロン酸と特異的に結合するCD44などの細胞表面分子を有する細胞を標的とすることができる。また、RGDペプチドを導入したアニオン性ポリマーを用いることにより、多くの種類の腫瘍細胞を標的とすることができ、またガラクトース側鎖を導入したアニオン性ポリマーを用いることにより肝細胞又は肝由来の細胞を標的とすることができる。また、ポドプラニン、ポドカリキシン、キタラン硫酸、ガングリオシド、ポドブラニン−CLEC−2受容体(C型レクチン様受容体,C−type lectin−like receptor−2)、MUC、あるいは腫瘍細胞特異的な各種糖タンパクに対する抗体等、あるいは抗体医薬であるリツキシマブ(抗CD20抗体)、トラスツマブ(ハーセプチン)などの抗HER−2抗体、抗EGFR抗体、オムニターグなどを結合したアニオン性ポリマーを使用し、標的指向性を付与することができる。
【0042】
本発明の複合体において、カチオン性ポリマー又はカチオン性脂質若しくはそれを含む集合体と、アニオン性ポリマーの組み合わせとしては、ポリエチレンイミンとヒアルロン酸;ポリエチレンイミンとコンドロイチン硫酸;ポリエチレンイミンとカルボキシル側鎖を持つPEG誘導体;DOSPAを含む集合体(例えばリポフェクタミン(DOSPAとDOPEの3:1w/w混合体リポソーム))とヒアルロン酸;DOSPAを含む集合体(例えばリポフェクタミン)とカルボキシル側鎖を持つPEG誘導体を好ましく挙げることができる。
【0043】
本発明の複合体において使用する核酸等と、カチオン性ポリマー又はカチオン性脂質若しくはそれを含む集合体の各荷電基のモル比(負電荷:正電荷比)は、標的細胞・核酸等・カチオン性ポリマー等の種類により異なるが、1:0.8〜1:100であるとよく、好ましくは1:1〜1:50であり、より好ましくは1:1.2〜1:30である。ここでいう核酸等と、カチオン性ポリマー又はカチオン性脂質若しくはそれを含む集合体の配合比とは、各荷電基のモル比であり、具体的には核酸、オリゴ核酸、又はその誘導体のリン酸アニオンによる負電荷:カチオン性ポリマー又はカチオン性脂質若しくはそれを含む集合体の正電荷又は正に帯電できる官能基のモル比を指す。
【0044】
本発明の複合体において使用する核酸等と、アニオン性ポリマーの各荷電基のモル比(負電荷:負電荷比)は、標的細胞・核酸等・アニオン性ポリマーの種類により異なるが、1:0.2〜1:1000であるとよく、好ましくは1:0.2〜1:100であり、より好ましくは1:1〜1:60である。ここでいう核酸等と、アニオン性ポリマーの配合比とは、各荷電基のモル比であり、具体的には核酸、オリゴ核酸、又はその誘導体のリン酸アニオンによる負電荷:アニオン性ポリマーの負電荷又は負に帯電できる官能基のモル比を指す。
【0045】
例えばアニオン性ポリマーとしてヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸を用いる場合、核酸等とヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸との配合比は、1:0.2〜1:1000であるとよく、好ましくは1:0.2〜1:100であり、より好ましくは1:1〜1:60である。
【0046】
例えばアニオン性ポリマーとしてカルボキシル側鎖を持つPEG誘導体を用いる場合、核酸等とカルボキシル側鎖を持つPEG誘導体との配合比は、1:0.2〜1:1000であるとよく、好ましくは1:0.2〜1:100であり、より好ましくは1:1〜1:60である。
【0047】
特に、カチオン性ポリマーとしてポリエチレンイミンを、アニオン性ポリマーとしてヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸を用いる場合、核酸等:ポリエチレンイミン:ヒアルロン酸(又はコンドロイチン硫酸)配合比は、1:2〜60:1〜240、好ましくは1:4〜24:1〜160であり、より好ましくは1:5〜20:2〜60、特に好ましくは1:6〜14:2〜32である。
【0048】
特に、カチオン性ポリマーとしてポリエチレンイミンを、アニオン性ポリマーとしてカルボキシル側鎖を持つPEG誘導体を用いる場合、核酸等:ポリエチレンイミン:カルボキシル側鎖を持つPEG誘導体配合比は、1:2〜60:1〜240、好ましくは1:4〜24:2〜160であり、より好ましくは1:5〜20:2〜60、特に好ましくは1:6〜18:4〜42である。
【0049】
特に、カチオン性脂質を含む集合体としてリポフェクタミン(DOSPAとDOPEの3:1w/w混合体リポソーム)を、アニオン性ポリマーとしてヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸を用いる場合、核酸等:リポフェクタミン:ヒアルロン酸(又はコンドロイチン硫酸)配合比は、1:1〜50:0.2〜240、好ましくは1:1.2〜48:0.2〜160であり、より好ましくは1:1.5〜30:0.5〜60、特に好ましくは1:1.8〜16:1〜32である。
【0050】
特に、カチオン性脂質を含む集合体としてリポフェクタミンを、アニオン性ポリマーとしてカルボキシル側鎖を持つPEG誘導体を用いる場合、核酸等:リポフェクタミン:カルボキシル側鎖を持つPEG誘導体配合比は、1:1〜50:0.1〜160、好ましくは1:1.2〜48:0.2〜160であり、より好ましくは1:1.5〜30:0.5〜60特に好ましくは1:1.8〜16:2〜32である。
【0051】
本発明の複合体に含まれる核酸等;カチオン性ポリマー又はカチオン性脂質若しくはそれを含む集合体;及びアニオン性ポリマーの好ましい配合比は、上述のとおりであるが、核酸などを導入する細胞の数や種類により最適な条件は変動するため、配合比は、当業者が、用いる細胞、核酸等の種類に応じて、適宜決定することができる。
【0052】
本発明の複合体は、上述した核酸等;カチオン性ポリマー又はカチオン性脂質若しくはそれを含む集合体;及び必要であればアニオン性ポリマーを、上述した配合比で、混合することによって複合体を形成させる工程、必要ならばこれに次いでこれを凍結乾燥する工程によって調製することができる。混合する順序としては、[1]核酸等;[2]カチオン性ポリマー又はカチオン性脂質若しくはそれを含む集合体、[3]アニオン性ポリマーの順、又は、[1]核酸等;[2]アニオン性ポリマー、[3]カチオン性ポリマー又はカチオン性脂質若しくはそれを含む集合体の順が好ましい。核酸等は、カチオン性ポリマー又はカチオン性脂質若しくはそれを含む集合体とイオン結合によって結合し、さらにカチオン性ポリマー又はカチオン性脂質若しくはそれを含む集合体が、アニオン性ポリマーともイオン結合した複合体が形成される。あるいは、各成分の配合組成によっては、このような複合体構造の外殻を主にアニオン性ポリマーが被覆し、負の表面電位を有する態様が形成される
【0053】
次いで、必要であれば得られた複合体を凍結乾燥する。凍結乾燥は、通常の凍結乾燥条件下で行うことができ、例えば減圧下(好ましくは、5〜100mmHg、より好ましくは10mmHg)、外気温−78℃〜60℃、好ましくは−30℃〜40℃で乾燥することによって行うことができる。乾燥に要する時間は、減圧度、溶媒の量によって異なり、通常は1時間〜2日間で完了する。
【0054】
このようにして調製した本発明の複合体は、ヒトや動物に対する各種の遺伝子治療、免疫治療、あるいはADP遺伝子やGM−CSF遺伝子を導入した実験動物や細胞の作成に利用することができる。凍結乾燥を施した場合には、使用前に本発明の複合体を水、生理食塩水、緩衝液、ブドウ糖溶液、培地液などの溶媒に懸濁又は溶解することにより再水和物としてから用いることができる。再水和に際しては、凍結乾燥体を、例えば核酸、又はその誘導体の100〜10000倍(重量比)の溶媒を用いて懸濁又は稀釈する。凍結乾燥前と異なる量、異なる種類の溶媒を用いることができるため、従来困難であった比較的高濃度の懸濁液や溶液(たとえば1ml中にDNAを1mg含む液)も容易に調製することができる。
【0055】
このようにして再水和した本発明の複合体は、細胞への核酸等の導入に際しては、具体的には、例えば、ウェル中、体外に取り出した標的細胞を、水和した本発明の複合体で処理することにより遺伝子を導入した後、該細胞を生体内に戻して、目的とする遺伝子を発現させるex vivo法(ワクチン療法)、あるいは、in vivo、in situ法などの直接的な遺伝子導入法など、生体細胞への核酸、又はその誘導体の導入に通常用いられる任意の方法を用いることができる。
また、本発明の複合体は、凍結乾燥後、再水和することなく、そのまま核酸等の導入を行う細胞と接触させたり、核酸等の導入を行う動物に皮下移殖する、核酸等の導入の標的である組織内、組織表面、または近傍に移殖するなどの手段によって投与することもできる。
【0056】
本発明の複合体の細胞への適用量は、上述した導入方法、疾患の種類などによって異なるが、例えば核酸、又はその誘導体の量にして、ex vivo法、in situ法では、直径1〜2cmのウェル当たりで0.2〜10μg/104〜7個・細胞、in vivo法では、投与部位によって大きく異なるが、腫瘍内への局所投与では例えば5〜1000μg/cm・腫瘍、膀胱などの臓器への投与では例えば0.1μg〜100mg/臓器、全身投与では例えば0.1ng〜10mg/Kg・体重とすることができる。
【0057】
生体に直接投与するin vivo法としては、本発明の複合体、または水和させた本発明の凍結乾燥体水和物を、静脈、皮下又は筋肉、腹腔、腫瘍内、腫瘍近傍などへ注射し;鼻腔、口腔、肺などから吸入させ;膀胱内、直腸内に直接注入し;病変部組織ないし近傍の血管内に直接投与し;あるいは、ゲル状物、スポンジなどの多孔体、不織布などに担持させて留置するなど、遺伝子治療技術の如何なる方法も用いることができる。
また、本発明の凍結乾燥体水和物を再水和することなく用いる際においても、上記の量の凍結乾燥体を、上述したようなex vivo法、in situ法、またはin vivo法により、用いることができる。
【0058】
本発明の複合体においては、通常の核酸等と、カチオン性ポリマー又はカチオン性脂質若しくはそれを含む集合体との複合体が持つ正の荷電を、アニオン性ポリマーが中和すると共に、その中和作用が、生体、細胞への投与後においても保持されていることによって、複合体と、血清タンパク質、血球細胞、細胞外マトリックスなどとによる凝集等の相互作用が阻止され、また、核酸、オリゴ核酸、又はその誘導体等の酵素分解が阻止されるため、核酸が細胞に効率的に取り込まれ、その発現効率も高い。
上記より、本発明の複合体は、核酸、又はその誘導体の導入用製剤又は試薬として、あるいは核酸、又はその誘導体の導入用キットとして使用することができる。
【0059】
本発明に使用するプラスミドまたはその誘導体のGM−CSF遺伝子は、対象とする動物種によって、ヒトGM−CSF、ネコGM−CSF、イヌGM−CSFなどから、効果のあるものを自由に選ぶことが出来る。
【0060】
本発明に使用するプラスミドまたはその誘導体のプロモーターは、対象とする動物種、細胞種によって、サイトメガウイルス由来プロモーター、RSV(Rous Sarcoma virus,ラウス肉腫ウイルス)由来プロモーター、SV40(simian virus40(シミアンウイルス))由来プロモーター、Elongation Factor 1a プロモーター等の癌選択性プロモーターなどから、自由に選ぶことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】 ADPの遺伝子をコードしたプラスミド/ポリエチレンイミン(PEI)/コンドロイチン硫酸(CS)複合体の腫瘍局所内注射による皮下移植B16細胞に対する治癒効果
【図2】ADPの遺伝子をコードしたプラスミド複合体にマウスGM−CSFの遺伝子をコードしたプラスミド複合体を併用した腫瘍局所内注射による皮下移植B16細胞に対する治癒効果
【0062】
【図3】ADPをコードしたプラスミドによる事前免疫有無でのマウスの腫瘍退縮効果
【図4】ADPをコードしたプラスミド複合体の腫瘍局所内注射による、マウス(事前免疫した)への皮下移植卵巣癌由来OVHM細胞に対する治癒効果
【実施例】
本発明を、実施例により更に具体的に説明する。なお、これらの実施例は、本発明を説明するためのものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【実施例1】
【0063】
ADPの遺伝子をコードしたプラスミド/ポリエチレンイミン(PEI)/コンドロイチン硫酸(CS)複合体の腫瘍局所内注射による皮下移植B16細胞に対する治癒効果
ADPの遺伝子をコードしたプラスミド・PEI・CSからなる三成分の複合体をマウスのメラノーマ細胞由来のB16を皮下に移植したマウスに腫瘍局所内投与し、腫瘍増大抑制効果を確認した。
【0064】
CSは、生化学工業株式会社製のサメ由来のものを用いた。PBSはRoman Industries社製のPhosphate Buffered Salts(Tablet)を蒸留したイオン交換水に溶解したものを用いた。PEIは、Polyscience社製の直鎖状PEI、Polyethylenimine“Max”(Mw=40000)を用いた。これらは以降の実施例でも同様である。
[操作手順]
[1]ADPの遺伝子をコードしたプラスミドは、以下の通り作成した。
アデノウイルス5型の右側large fragment(Microvix社、カナダ)をテンプレートにして、下記のADP−S、ADP−ASをプライマーにしてEX Tag(takara)の酵素を用いてPCRを行いクローニングベクターpTAC−1に挿入した。Sequenceanalysis(ABI)にてsequenceを確認して発現ベクター(pcDNA3.1(−):Invitrogen)と共にEco RI,Bam HIにて酵素処理して発現ベクターに挿入し、pcDNA3.1(−)−ADP−S−AS1を作成した。さらに,Sequence analysis(ABI)にてsequenceを確認した。
ADP−S:ATGACCAACACAACCAACGC
ADP−AS−1:ACTCGAGGAATCATGTCTCA
【0065】
[2]細胞培養ディッシュにB16細胞をまき、EMEM培地を用いてインキュベートし、移植用細胞を準備した。
[3]移植する直前に培養した培地を取り除き、10%FCSと25Uのペニシリンと25μgのストレプトマイシンを含むEMEM加え、細胞を剥離した。
[4]5週令の雄のC57BL/6マウスに、ADPの遺伝子をコードしたプラスミド10μgを後肢筋肉内に投与しマウスを免役した。2〜3週間後に20x10個のB16メラノーマ細胞を腹部の皮下に移植した。比較のため、免役していないマウスに関しても同様に実験した。
【0066】
[5] 導入する数日前に以下の方法でプラスミド複合体を調製した。
ADPの遺伝子をコードしたプラスミド100μgを含む7.4mMリン酸緩衝液(pH7.4)4820μlに、594μgのCSを含む水溶液119μlを加え、続いてPEI293.5μgを含む水溶液59μlを加えて攪拌後、20分室温で放置した。
その後、10%デキストラン溶液を50μl加え、さらに10分放置後、マイナス30℃で凍結した。その後、凍結乾燥して、本発明の複合体を調製した。
[6][4]で作成した担癌マウスモデルの腫瘍サイズが短径3mm以上になったところで、[5]で調製した凍結乾燥体に純水250μlを加え、十分に溶解、分散させたものを、腫瘍組織内に投与した。
[7]1〜2日に1度腫瘍のサイズを測定した。
【0067】
[結果]
結果を図1に示す。ここで、図中の腫瘍サイズは、(4/3)x短径x短径x長径x(1/8)x3.14として計算したものである。
何も投与していないコントロール群では急激な腫瘍の増大が見られたのに対して、ADPの遺伝子をコードしたプラスミド/ポリエチレンイミン(PEI)/コンドロイチン硫酸(CS)複合体を腫瘍局所内投与したマウスでは明確な腫瘍増大抑制が見られた。
【実施例2】
【0068】
ADPの遺伝子をコードしたプラスミド複合体にマウスGM−CSFの遺伝子をコードしたプラスミド複合体を併用した腫瘍局所内注射による皮下移植B16細胞に対する治癒効果。
マウスGM−CSFの遺伝子をコードしたプラスミド/ポリエチレンイミン(PEI)/コンドロイチン硫酸(CS)複合体を実施例1と同様に作成し、実施例1で作成したADPの遺伝子をコードしたプラスミド/ポリエチレンイミン(PEI)/コンドロイチン硫酸(CS)複合体とともにマウスのメラノーマ細胞由来のB16を皮下に移植したマウスに腫瘍局所内投与し、腫瘍増大抑制効果を確認した。
【0069】
[操作手順]
[1]実施例1と同様に担癌モデルマウス、ADPの遺伝子をコードしたプラスミド/ポリエチレンイミン(PEI)/コンドロイチン硫酸(CS)複合体、およびマウスGM−CSFの遺伝子をコードしたプラスミド/ポリエチレンイミン(PEI)/コンドロイチン硫酸(CS)複合体を用意した。
[2]担癌マウスモデルの腫瘍サイズが短径3mm以上になったところで、上記2種類の凍結乾燥体にそれぞれ純水100μlを加え、十分に溶解、分散させたものを混合し、腫瘍組織内に投与した。
[3]1〜2日に1度腫瘍のサイズを測定した。
【0070】
[結果]
結果を図2に示す。ここで、図中の腫瘍サイズは、(4/3)x短径x短径x長径x(1/8)x3.14として計算したものを示した。
ADPの遺伝子をコードしたプラスミド複合体のみ、あるいは、GM−CSFの遺伝子をコードしたプラスミド複合体のみを投与した群に比べ、両者を混合して腫瘍組織内投与したマウスの方が腫瘍の退縮が速く、相乗効果が認められた。
【実施例3】
【0071】
実施例2と同様の実験を、実験の開始3週間前にADPのプラスミド10μgを後肢に筋肉内投与して免疫したマウスと、免疫していないマウスとで行い、腫瘍退縮の早さを比べたのが図3である。Day0での腫瘍サイズを100として腫瘍の比サイズで表している。ここで、図中の腫瘍サイズは、(4/3)x短径x長径x長径x3.14として計算したものをDNA複合体投与日のサイズに対する相対値示したものである。
あらかじめ免疫したマウスの方が腫瘍の退縮が速く、事前免疫の効果が認められた。
【実施例4】
【0072】
[1]マウス卵巣癌由来のOVHM細胞(Jpn.J.Cancer Res.80,459−463(1989)に記載された「OV2944−HM−1」)を、FCS10%を含むRPMI培地を用いて培養し、移植用細胞を準備した。
[2]3週間前に1010pfuのAd−GFPで予め免疫処置した雌の(C57BL/6×C3/He)F1マウス(入手先:日本クレア)に、マウス一匹あたり10個の割合で、皮下に投与した。
[3] 導入する数日前に以下の方法でプラスミド複合体を調製した。
ADPの遺伝子をコードしたプラスミド100μgを含む7.4mMリン酸緩衝液(pH7.4)4820μlに、594μgのCSを含む水溶液119μlを加え、絖いてPEI293.5μgを含む水溶液59μlを加えて攪拌後、20分室温で放置した。その後、10%デキストラン溶液を50μl加え、さらに10分放置後、マイナス30℃で凍結した。その後、凍結乾燥して、本発明の複合体を調製した。
[4][2]で作成した担癌マウスモデルの腫瘍サイズが直径7mm以上になったところで、[3]で調製した凍結乾燥体に純水250μlを加え十分に溶解、分散させたものを、さらに250μlのPBSで希釈した後、腫瘍組織内に連日3回投与した。
【0073】
[6]1〜2日に1度腫瘍のサイズを測定した。
[結果]
結果を図4に示す。ここで、図中の腫瘍サイズは、(4/3)x短径x短径x長径x(1/8)x3.14として計算したものである。
何も投与していないコントロール群では急激な腫瘍の増大が見られたのに対して、ADPの遺伝子をコードしたプラスミド/ポリエチレンイミン(PEI)/コンドロイチン硫酸(CS)複合体を腫瘍局所内投与したマウスでは明確な腫瘍増大抑制が見られた。
【産業上の利用可能性】
本発明は、ADP(Adenovirus Death Protein)遺伝子をコードしたベクター又はADP遺伝子とGM−CSF遺伝子の両者をコードしたベクター、及びこれらベクターと遺伝子導入試薬との複合体、それらを含有する医薬並びにそれらを用いる癌の治療方法に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ADP(Adenovirus Death Protein)遺伝子又はADP遺伝子とGM−CSF遺伝子の両者をコードしたベクター。
【請求項2】
ベクターがプラスミドベクターであることを特徴とする請求項1記載のベクター。
【請求項3】
ADP遺伝子又はADP遺伝子とGM−CSF遺伝子の両者をコードしたベクターと遺伝子導入化試薬を含有する複合体。
【請求項4】
ベクターがプラスミドベクターであることを特徴とする請求項3記載の複合体。
【請求項5】
遺伝子導入試薬が、カチオン性ポリマー、カチオン性脂質及びアニオン性ポリマーから選択される1以上の化合物からなることを特徴とする請求項3又は4記載の複合体。
【請求項6】
遺伝子導入試薬が、カチオン性ポリマー又はカチオン性脂質と、アニオン性ポリマーからなることを特徴とする請求項5記載の複合体。
【請求項7】
カチオン性ポリマーが、ポリエチレンイミン(直鎖状ポリエチレンイミン又はポリ分枝型エチレンイミン)、2−ジメチルアミノエチルメタクリレートの重合体又は共重合体、2−トリメチルアミノエイルメタクリレートの重合体又は共重合体、ポリアミドアミンデンドリマー、ポリリジンデンドリマー、プロタミン、ヒストン、HelΔ1、ゼラチン、ポリーL−リジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、ポリビニルイミダゾール、側鎖にエチレンジアミン構造を有する高分子及びそれらの共重合体、またはそれらの塩から1つ以上選択される請求項5又は6記載の複合体。
【請求項8】
カチオン性脂質が、DC−Chol(3β−(N−(N‘,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル)コレステロール、DDAB(N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムブロミド)、DMRI(N−(1,2−ジミリスチルオキシプパ−3−イル)−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド)、DODAC(N,N−ジオレイル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド)、DOGS(ジヘプタデシルアミドグリシルスペルミジン)、DOSPA(N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N−(2−(スペルミンカルボキサミド)−N,N−ジメチルアンモニウムトリフルオロアセタート)、DOTAP(N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド)及びDOTMA(N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N、N、N−トリメチルアンモニウムクロリド)およびそれらの異なる酸との塩から1つ以上選択される請求項5又は6記載の複合体。
【請求項9】
アニオン性ポリマーが、カルボキシル側鎖を持つPEG誘導体、アクリル酸又はメタクリル酸の重合体若しくは共重合体、ポリビニルアルコールの硫酸エステル体、サクシニミジル化ポリ−L−リジン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン、デルタマン硫酸又はそれらの誘導体、及びそれらの塩から1つ以上選択される請求項5又は6記載の複合体。
【請求項10】
凍結乾燥処理を施した請求項3から9いずれかの項記載の複合体。
【請求項11】
ADP遺伝子又はADP遺伝子とGM−CSF遺伝子の両者をコードしたベクターを含有する医薬。
【請求項12】
ベクターがプラスミドベクターであることを特徴とする請求項11記載の医薬。
【請求項13】
ADP遺伝子又はADP遺伝子とGM−CSF遺伝子の両者をコードしたベクターと遺伝子導入化試薬を含有する医薬。
【請求項14】
ベクターがプラスミドベクターであることを特徴とする請求項13記載の医薬。
【請求項15】
遺伝子導入試薬が、カチオン性ポリマー、カチオン性脂質及びアニオン性ポリマーから選択される1以上の化合物からなることを特徴とする請求項13又は14記載の医薬。
【請求項16】
遺伝子導入試薬が、カチオン性ポリマー又はカチオン性脂質と、アニオン性ポリマーからなることを特徴とする請求項15記載の医薬。
【請求項17】
カチオン性ポリマーが、ポリエチレンイミン(直鎖状ポリエチレンイミン又はポリ分枝型エチレンイミン)、2−ジメチルアミノエチルメタクリレートの重合体又は共重合体、2−トリメチルアミノエイルメタクリレートの重合体又は共重合体、ポリアミドアミンデンドリマー、ポリリジンデンドリマー、プロタミン、ヒストン、HelΔ1、ゼラチン、ポリーL−リジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、ポリビニルイミダゾール、側鎖にエチレンジアミン構造を有する高分子及びそれらの共重合体、またはそれらの塩から1つ以上選択される請求項15又は16記載の医薬。
【請求項18】
カチオン性脂質が、DC−Chol(3β−(N−(N‘,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル)コレステロール、DDAB(N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムブロミド)、DMRI(N−(1,2−ジミリスチルオキシプパ−3−イル)−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド)、DODAC(N,N−ジオレイル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド)、DOGS(ジヘプタデシルアミドグリシルスペルミジン)、DOSPA(N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N−(2−(スペルミンカルボキサミド)−N,N−ジメチルアンモニウムトリフルオロアセタート)、DOTAP(N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド)及びDOTMA(N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N、N、N−トリメチルアンモニウムクロリド)およびそれらの異なる酸との塩から1つ以上選択される請求項15又は16記載の医薬。
【請求項19】
アニオン性ポリマーが、カルボキシル側鎖を持つPEG誘導体、アクリル酸又はメタクリル酸の重合体若しくは共重合体、ポリビニルアルコールの硫酸エステル体、サクシニミジル化ポリ−L−リジン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン、デルタマン硫酸又はそれらの誘導体、及びそれらの塩から1つ以上選択される請求項15又は16記載の医薬。
【請求項20】
凍結乾燥処理を施した請求項13から19いずれかの項記載の医薬。
【請求項21】
ADP遺伝子又はADP遺伝子とGM−CSF遺伝子の両者をコードしたベクターを有効量投与すること特徴とする癌の治療方法。
【請求項22】
ベクターがプラスミドベクターであることを特徴とする請求項21記載の癌の治療方法。
【請求項23】
ADP遺伝子又はADP遺伝子とGM−CSF遺伝子の両者をコードしたベクターと遺伝子導入化試薬を含有する複合体を有効量投与すること特徴とする癌の治療方法。
【請求項24】
ベクターがプラスミドベクターであることを特徴とする請求項23記載の癌の治療方法。
【請求項25】
遺伝子導入試薬が、カチオン性ポリマー、カチオン性脂質及びアニオン性ポリマーから選択される1以上の化合物からなることを特徴とする請求項23又は24記載の癌の治療方法。
【請求項26】
遺伝子導入試薬が、カチオン性ポリマー又はカチオン性脂質と、アニオン性ポリマーからなることを特徴とする請求項25記載の癌の治療方法。
【請求項27】
カチオン性ポリマーが、ポリエチレンイミン(直鎖状ポリエチレンイミン又はポリ分枝型エチレンイミン)、2−ジメチルアミノエチルメタクリレートの重合体又は共重合体、2−トリメチルアミノエイルメタクリレートの重合体又は共重合体、ポリアミドアミンデンドリマー、ポリリジンデンドリマー、プロタミン、ヒストン、HelΔ1、ゼラチン、ポリーL−リジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、ポリビニルイミダゾール、側鎖にエチレンジアミン構造を有する高分子及びそれらの共重合体、またはそれらの塩から1つ以上選択される請求項25又は26記載の癌の治療方法。
【請求項28】
カチオン性脂質が、DC−Chol(3β−(N−(N‘,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル)コレステロール、DDAB(N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムブロミド)、DMRI(N−(1,2−ジミリスチルオキシプパ−3−イル)−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド)、DODAC(N,N−ジオレイル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド)、DOGS(ジヘプタデシルアミドグリシルスペルミジン)、DOSPA(N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N−(2−(スペルミンカルボキサミド)−N,N−ジメチルアンモニウムトリフルオロアセタート)、DOTAP(N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド)及びDOTMA(N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N、N、N−トリメチルアンモニウムクロリド)およびそれらの異なる酸との塩から1つ以上選択される請求項25又は26記載の癌の治療方法。
【請求項29】
アニオン性ポリマーが、カルボキシル側鎖を持つPEG誘導体、アクリル酸又はメタクリル酸の重合体若しくは共重合体、ポリビニルアルコールの硫酸エステル体、サクシニミジル化ポリ−L−リジン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン、デルタマン硫酸又はそれらの誘導体、及びそれらの塩から1つ以上選択される請求項25又は26記載の癌の治療方法。
【請求項30】
凍結乾燥処理を施した請求項23から29いずれかの項記載の癌の治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−50417(P2012−50417A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207266(P2010−207266)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(508363225)株式会社アルファ・ナノ・メディカ (4)
【Fターム(参考)】