説明

新規な有機/無機酸化物多層材料

【課題】 新規な有機/無機酸化物多層材料を得る。
【解決手段】 新規な有機/無機酸化物材料は、有機スペーサ層の間に点在する酸化タングステン、酸化モリブデン又は他の金属酸化物の単又は多原子層に基づく。この材料は、好ましくはセルフアセンブリによって調製される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規な有機/無機酸化物多層材料に関する。より具体的には、本発明は、非排他的に、有機スペーサ層の間に点在する酸化タングステン、酸化モリブデン又は他の金属酸化物の単又は多原子層に基づく新規な有機/無機酸化物材料に関する。
【0002】
【従来の技術】最近の数十年における有機導体及び半導体の開発は、フレキシブルプラスチックディスプレーならびに廉価な論理及び記憶装置の可能性への扉を開いた[たとえば、P. Yam, 'Plastics get wired.' Scientific American, 273(1),74-79 (July 1995)又はJ. C. Scott, 'Conducting Polymers: From novel science to new technology.' Science, 278(5346), 2071-2072(12Dec 1997)を参照]。これらの材料を実際の装置に応用しようとして多大な努力が国際的に払われている[たとえば、上記参考文献又はJ. S. Miller, 'Conducting Polymers―materials of commerce', Advanced Materials, 5(7/8 & 9), 587-589 & 671-676, (1993)を参照]。これらの開発の圧倒的な重要性は、導電ポリマーポリアセチレンの発見者であるMacDiarmid、Heeger及びShirakawaに対する2000年度ノーベル化学賞によって認められている[たとえば、R. F. Service 'Getting a Charge Out of Plastics' Science,290, 425-427, (20 October 2000)を参照]。しかし、有機半導体の使用における有意な限界は、隣接するポリマー分子どうしの弱いファン・デル・ワールス結合から生じるその低い電子移動性である。これが逆に、装置切換え速度を制限する。高い電子移動性は、ドープされた結晶質無機酸化物に見いだすことができるが(これらの長いフレームワークの強力な共有結合のため)、これらの材料は、合成に高温を要し、脆くて可撓性のない材料である。
【0003】このような酸化物材料の具体例が三酸化タングステンWO3である。この材料は、ドーピングレベルに依存してn形半導体から金属にまで及ぶ広範囲の電子的性質を帯びる。これらのドーピング状態は、たとえば塗料の顔料に使用されてきたいわゆるタングステンブロンズで認められる周知の変色を伴う。より進んだ用途は、建築用ガラス、眼科用装置、計測機器及び表示装置を含む。三酸化タングステンは、W6+の6+原子価状態と合致する、通常は12配位A部位が空であるペロブスカイトABO3型構造を有する。各Wイオンは、ほぼ八面体の配位で酸素原子に対して6重配位されている。八面体は、角を共有するひし形によって八面体を表す図1の断面図によって示すように、角が共有である。導電バンドへの電子ドーピングは、他の場合には空の12配位A部位にさらなるカチオンを挿入することによって達成される。三酸化モリブデンMoO3は、ほぼ同じ化学的性質及び構造を示す。(ABO3は、ペロブスカイト式を普通に一般化したものであるが、以下、一般的な有機基を説明するために識別子Aを使用する。混乱を避けるため、ABO3の代わりに一般式ZMO3を使用する(Zは、12配位ペロブスカイト部位を表し、Mは、6配位のほぼ八面体の部位を表す)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、電子移動性/導電特性を示す新規な材料及びそのような材料を調製する方法を提供することである。さらなる/代替の目的は、半導体及び又は超伝導体として応用するための新規な材料を提供することである。さらなる/代替の目的は、有用な代替を一般の人々に提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の第一の態様では、角を共有するMO6八面体(Mは金属である)の一つ以上の原子面からなる金属酸化物の一つ以上の層と、有機分子の一つ以上の層とを含み、金属酸化物層が一つ以上の有機層とで交互になって周期的平面構造を形成する積層有機無機酸化物材料が提供される。
【0006】好ましくは、金属Mは、W、VもしくはMo又はこれらの組み合わせである。好ましくは、金属Mは、W、VもしくはMo又はこれらの組み合わせであり、他の高原子価金属、たとえばTi、Nb、Ta、Ru及びReがMo、W又はVとで部分的に組み合わせて使用される。好ましくは、材料は一般式X.Mm3m+1を有する(Mは金属であり、Xは有機カチオンであり、m=1、2、3である)。
【0007】好ましくは、有機カチオンは二座である。好ましくは、無機層に対する有機層の配置は重なり形である。一つの形態で、有機カチオンはジアンモニウムカチオンであり、材料は組成NH3.A.NH3.Mm3m+1を有する。好ましくは、m=1であり、各無機酸化物原子面が有機層とで交互になり、あるいはまた、m=2であり、組成物はNH3.A.NH3.M27であり、有機酸化物は、角を共有するMO6八面体の二重原子面層として存在して、材料が積層構造−A−O−MO2−O−MO2−O−Aを有するようになっている。
【0008】好ましくは、有機カチオンは脂肪族ジアンモニウムカチオンであり、A=(CH)n、n=1、2、・・・である。好ましくは、有機カチオン上、アンモニウムカチオン基は、Aの末端アルカン単位上に配置されている。もう一つの形態では、材料は化学式NH3(CH2nNH3MO4を有する。
【0009】好ましくは、n=2又は6又は12である。好ましくは、有機カチオンは芳香族ジアンモニウムカチオンである。好ましくは、A=C64であり、有機カチオンはNH364NH3である。あるいはまた、有機カチオンは、等しい長さ又は異なる長さの2個の脂肪族側鎖を有し、各側鎖がアンモニウムイオンによって終端されている芳香環を含み、有機カチオンは、一般式NH3(CH2n64(CH2mNH3を有する。
【0010】好ましくは、隣接する芳香環どうしが架橋して有機ポリマー層を形成している。好ましくは、有機ポリマー層は導電性である。もう一つの形態で、材料は一般式X′2.Mm3m+1を有する(Mは金属であり、X′は有機カチオンであり、m=1、2、3である)。
【0011】好ましくは、有機カチオンは単座である。好ましくは、無機層に対する有機層の配置はねじれ形である。好ましくは、両方の有機カチオンはモノアンモニウムカチオンであり、材料は組成(NH3.A′)2.Mm3m+1を有する。好ましくは、m=1であり、各無機酸化物原子層が有機層とで交互にある。
【0012】あるいはまた、m=2であり、組成物は(NH3.A′)2.M27であり、有機酸化物は、Z部位が空である、ほぼZWO3ペロブスカイト型の構造を有する二重原子面層として存在して、材料が積層構造NH3.A′−MO2−O−MO2−A′.NH3を有するようになっている。好ましくは、一方又は両方の有機カチオンが脂肪族アンモニウムカチオンであり、A′=(CH)nであり、n=1、2、...である。
【0013】あるいはまた、一方又は両方の有機カチオンが芳香族アンモニウムカチオンである。好ましくは、芳香環は、脂肪族であり、アンモニウムイオンによって終端された側鎖を有し、式(C65.(CH2mNH32MO4(m=0、1、2、3、...)を有する。
【0014】好ましくは、隣接する芳香環どうしが架橋して有機ポリマー層を形成している。好ましくは、有機ポリマー層は導電性である。好ましくは、ドープ剤が構造に導入される。好ましくは、ドープ剤は、アルカリカチオン、メチルアンモニウムカチオン、置換性アンモニウム基、電界効果注入電子又は電界効果注入正孔の一つ以上から選択される。
【0015】好ましくは、ドープ剤は、無機酸化物層中に存在し、酸化物のドーピング状態は、その酸化物が40Kを超える温度で超伝導性を示すように調節される。好ましくは、酸化物のドーピング状態は、その酸化物が90Kを超える温度で超伝導性を示すように調節される。好ましくは、Mは、磁気的に秩序ある状態を示すため、磁性遷移金属イオンによって部分的又は完全に置換されている。
【0016】さらなる実施態様では、MO4、M27又はMm3m+1を含む酸化物層が以下の酸化物層、すなわちCuO2、NiO2、CoO2、CuO2CaCuO2、Cam-1Cum2m(m=1、2、3、...)、NiO2CaNiO2、Cam-1Nim2m(m=1、2、3、...)、正方形角錐MnO3、正方形角錐RuO3、八面体RuO4、O−MnO2−Y−MnO2−O、O−MnO2−Ca−MnO2−O、O−RuO2−Y−RuO2−O又はO−RuO2−Ca−RuO2−Oのいずれかによって完全に置換されている、請求項1〜33のいずれか1項記載の有機/無機酸化物材料が提供される。
【0017】本発明のさらなる態様によると、Z部位が空である実質的にZMO3ペロブスカイト型の構造(M=金属)を有する金属酸化物の一つ以上の原子面からなる金属酸化物の一つ以上の層と、有機分子の一つ以上の層とを含み、金属が二価のカチオンを形成し、角を共有する正方形平面構造中に配位されているか、金属が四価のカチオンを形成し、角を共有する正方形角錐構造中に配位されており、一つ以上の金属酸化物層が一つ以上の有機層とで交互になって周期的平面構造を形成する積層有機無機酸化物材料が提供される。
【0018】好ましくは、金属Mは、Cu、Ni、Ru、Mn又はこれらの組み合わせである。好ましくは、ペロブスカイトA部位に位置するアルカリ土類金属イオンによってそれぞれが分けられた二つ以上の酸化物層により、より高次の構造が形成されている。
【0019】好ましくは、アルカリ土類金属イオンはカルシウムである.好ましくは、材料は、NH3.A.NH3CuO2、(A.NH32CuO2、NH3.A.NH3Cam-1Cum2m(m=1、2、3、...)、(A.NH32Cam-1Cum2m(m=1、2、3、...)、NH3.A.NH3NiO2、(A.NH32NiO2、NH3.A.NH3Cam-1Nim2m(m=1、2、3、...)、(A.NH32Cam-1Nim2m(m=1、2、3、...)及びNH3.A.NH3MnO3、(A.NH32MnO3、NH3.A.NH3Cam-1Mnm2m+2(m=1、2、3、...)、(A.NH32Cam-1Mnm2m+2(m=1、2、3、...)、NH3.A.NH3RuO3、(A.NH32RuO3、NH3.A.NH3Cam-1Rum2m+2(m=1、2、3、...)、(A.NH32Cam-1Rum2m+2(m=1、2、3、...)のいずれか一つの一般式を有する。
【0020】好ましくは、ドープ剤が構造に導入される。好ましくは、ドープ剤は、アルカリカチオン、メチルアンモニウムカチオン、置換性アンモニウム基、電界効果注入電子又は電界効果注入正孔の一つ以上から選択される。好ましくは、ドープ剤は、無機酸化物層中に存在し、酸化物のドーピング状態は、その酸化物が40Kを超える温度で超伝導性を示すように調節される。
【0021】好ましくは、酸化物のドーピング状態は、その酸化物が90Kを超える温度で超伝導性を示すように調節される。好ましくは、Mは、磁気的に秩序ある状態を示すため、磁性遷移金属イオンによって部分的又は完全に置換されている。本発明のさらなる態様によると、金属酸化物の一つ以上の層と、一つ以上の有機層とを含み、各層が実質的にペロブスカイト型構造で存在する積層無機有機材料を調製する方法であって、金属及び/又は酸化物のソースを有機層のソースと接触させて層構造が実質的にセルフアセンブルするようにする工程を含む方法が提供される。
【0022】好ましくは、材料は、一般構造NH3.A.NH3.Mm3m+1を有し、ジアミノアルカンとタングステン酸(金属がWである場合)又はモリブデン酸(金属がMoである場合)との反応によって、あるいはタングステン酸(金属がWである場合)又はモリブデン酸(金属がMoである場合)アンモニア溶液の溶解によって、あるいはW又はMo金属と過酸化水素との反応によって調製される。
【0023】本発明のさらなる態様によると、実質的に上記方法にしたがって調製された積層無機有機材料が提供される。本発明のさらなる態様によると、実質的にZMO3ペロブスカイト型の構造を有する金属酸化物又はZ部位が空であるその誘導体/類似体(M=金属)の一つ以上の原子面からなる金属酸化物の一つ以上の層と、有機分子の一つ以上の層とを含み、一つ以上の金属酸化物層が一つ以上の有機層とで交互になって周期的平面構造を形成し、隣接するが離間する無機層の間の間隔及び電子カップリングを適切な有機分子の選択によって事前に選択することができる積層無機有機材料を調製する方法が提供される。
【0024】本発明のさらなる態様によると、実質的に上記方法にしたがって調製された積層無機有機材料が提供される。
【0025】
【発明の実施の形態】本発明は、有機スペーサ層の間に点在する酸化タングステン、酸化モリブデン又は他の金属酸化物の単又は多原子層に基づく新規なセルフアセンブリ性有機/無機酸化物多層材料を記載する。これらは、電子的用途、特にフレキシブルディスプレー、エレクトロクロミック装置、センサならびに論理及び記憶装置に適した同調性の高い電子的性質を有するプラスチック様の材料を提供する。加えて、これらのハイブリッド多層の二次元特性は、熱電冷却器及びおそらくは新規な超伝導体をはじめとする広範囲の他の用途の可能性を提供する。本発明はまた、新奇な準二次元磁性及び超伝導性を示す、銅、ニッケル、マンガン又はルテニウムの酸化物に基づく他の類似した有機/無機多層材料を包含する。溶液ベースの製造を利用するこれらのセルフアセンブリの簡素性が、プラスチックのすべての利点、特に可撓性及び製造しやすさを備えた費用的に有利な技術を提供する。
【0026】一例として、本発明は、有機スペーサ層の間に点在する角を共有するWO6八面体の二次元単原子層を含む材料の製造に関する。このような材料は、拡張したWO6シートに伴う高い電子移動性を、ハイブリッド材料のセルフアセンブリを容易にする有機スペーサ層に伴う可撓性とともに提供する。このような原子的に積層された材料はさらに、WO6シートの低い次元数に伴う増強された新奇な電子的性質を提供する。
【0027】WO6八面体の単原子層が形成するとき、その化学式はWO42-である(4個の面内酸素すべてが隣接する八面体によって共有され、2個の頂点酸素は一つの八面体に完全に制限される)。したがって、構造を安定化するためには式単位あたり2個のさらなるカチオン電荷を供給しなければならない。本発明では、これらのさらなる電荷(電荷均衡を提供する)は、WO42-層の上下の空のA部位に配置されたアンモニウムイオンを使用して導入される。これらのアンモニウムイオンは、図2に示すように、有機分子の各端を止めることができ、c方向に不定に反復する構造が、有機スペーサ層がジアンモニウム有機カチオンである有機/無機多層化ハイブリッド材料を提供する。このような構造は、高い異方性及び強力な二次元平面内電子的性質を有する。有機スペーサ分子は、たとえば、一般にNH3(CH2nNH32+と表されるジアンモニウムアルカンカチオンであることができ、ハイブリッド化合物は、たとえば、溶液中でジアミノアルカンをタングステン酸と反応させることによって合成することができる。すなわちNH2(CH2nNH2+H2WO4→(CH2n(NH32WO4上記の考察すべてでW(タングステン)をMo(モリブデン)又はバナジウムとして読み換えることもできるし、これらを組み合わせて使用してもよい。さらには、他の高原子価金属、たとえばTi、Nb、Ta、Ru及びReをMo、W又はVと部分的に組み合わせて使用してもよい。他の公知のジアンモニウム有機イオンもまた、可能な安定化有機スペーサ分子を提供する。溶液中の合成の場合、タングステン(又はモリブデン)酸をアンモニア溶液に溶解してもよいし、あるいはまた、金属W又はMoを過酸化水素と反応させてペルオキソポリタングステート又はペルオキソポリモリブデート酸を前駆体として形成してもよい。金属酸化物種のための他の標準的な溶液前駆体は当該技術で公知である。
【0028】本発明のさらなる新規な化合物は、より高次の有機/無機酸化物材料を含む。これらは、有機スペーサ層によって分けられたWO6又はMoO6八面体の二つ以上の隣接するシートの多層を含む。このような材料は、一般式NH3ANH3.Wm3m+1(m=1、2、3)を有するか、より具体的に、ジアンモニウムアルカンスペーサ分子の場合、NH3(CH2nNH3.Wm3m+1(m=1、2、3)を有する。この種の二層化合物が図3に示されている。
【0029】図2及び3に示す新規な材料構造は、八面体がc軸に沿って一層に1個ずつ有機層を挟んで隣接する層の八面体の真上に配置されるように並ぶ、重なり形構造と説明することができる。上述したような材料における有機分子は、二つの活性基部位(2個のアンモニウム基)を有し、二座と呼ばれる。本発明はまた、隣接する層の八面体どうしが互い違いに並ぶ、ねじれ形有機無機酸化物ハイブリッド材料のクラスを含む。ここで、有機スペーサ分子は、1個のアンモニウム基を含み、一座と呼ぶことができるモノアンモニウム有機分子A.NH3+であることができる。これらは、有機分子どうしが弱く結合しながら互いにかみ合う配置で重なって、図4に示すねじれ形酸化物層を提供することができる。
【0030】これらの構造における一座有機アンモニウムイオンは、アルキルアンモニウムイオンCH3(CH2mNH3+(m=1、2、3、...12)又は芳香族アンモニウムイオン、たとえばベンジルアンモニウムイオンC65CH2NH3+又はフェネチルアンモニウムイオンC65CH2CH2NH3+を含むことができる。ここでもまた、二つ以上の酸化物層が有機スペーサ層の間に点在することができる一般式(A.NH32n3n+1のより高次の構造が本発明に含まれる。n=2二重層化合物の例が図5に示されている。有機/無機酸化物ハイブリッド化合物は、タングステン酸(又はモリブデン酸)及びベンジルアミンもしくはフェネチルアミンを使用して溶液から合成することができる。
【0031】これらの新規な有機/無機酸化物化合物は、酸化物層どうしのカップリングの相当な制御、ひいては異方性の程度及び電子状態の有効次元数の制御を可能にする多大な構造的多様性を提供するということがわかる。そのうえ、前記のように、これらの化合物は、W、Mo、V又はそれらの組み合わせを使用して構成することができ、加えて、他の金属カチオン、たとえばTi、Nb、Ta、Re及びRu又は他の適当な金属を組み込んで構造を安定化し、その化学的安定性を増強し、酸化物層をドーピングして半伝導性又は金属的性質を提供することができる。電子ドーピングはまた、有機ドープ剤、たとえばメチルアンモニウムイオンの配合によって達成することもできる。これらは、当該技術で公知であるように、インターカレートするアルカリイオン、有機スペーサ分子の電気化学的酸化還元又は三端子装置、たとえば電界効果トランジスタへのキャリヤの電界効果挿入によってドーピングすることができる。
【0032】また、さらなる新規な銅酸塩、ニッケル酸塩、ルテニウム酸塩及びマンガンベースの有機/無機ハイブリッドが本発明に含まれる。上記材料の基本構造は、六価のカチオン、たとえばW6+又はMo6+の八面体酸素配位を条件とする。有機/無機酸化物構造は、二価のカチオン、たとえばCu2+及びNi2+(角を共有する正方形平面構造(すなわち頂点酸素がない)に配位される場合)又は四価のカチオン、たとえばMn4+又はRu4+(角を共有する正方形角錐構造に配位される場合)で製造することができる。いずれの場合でも、ペロブスカイトA部位に位置するアルカリ土類金属イオン、好ましくはカルシウムによってそれぞれが分けられた二つ以上の酸化物層により、より高次の構造を製造することができる。これらさらなる新規な材料の一般式は、NH3.A.NH3CuO2、(A.NH32CuO2、NH3.A.NH3Cam-1Cum2m(m=1、2、3、...)、(A.NH32Cam-1Cum2m(m=1、2、3、...)、NH3.A.NH3NiO2、(A.NH32NiO2、NH3.A.NH3Cam-1Nim2m(m=1、2、3、...)、(A.NH32Cam-1Nim2m(m=1、2、3、...)及びNH3.A.NH3MnO3、(A.NH32MnO3、NH3.A.NH3Cam-1Mnm2m+2(m=1、2、3、...)、(A.NH32Cam-1Mnm2m+2(m=1、2、3、...)、NH3.A.NH3RuO3、(A.NH32RuO3、NH3.A.NH3Cam-1Rum2m+2(m=1、2、3、...)、(A.NH32Cam-1Rum2m+2(m=1、2、3、...)である。これらには、上記と同じ方法でキャリヤをドーピングすることができる。これらの材料の多様性が、異なるタイプの磁気的秩序付け(たとえば、構造をねじれ形から重なり形に換えるだけで)ならびに他の相関状態、たとえば電荷密度波及び低次元超伝導性を可能にする。軽くドーピングされたNaxWO3単結晶の表面における91Kの表面超伝導性の発見[Y. Levi et al., ''Europhys. Lett. 51, 564(2000)を参照]が、本新規な二次元化合物における高温超伝導性の見込みを高める。
【0033】有機スペーサ層に使用することができるさらなる一座分子は、ビフェニルアミンC65.C64.NH2、チオフェンアミンC4SH3.NH2、ビチオフェンアミンC4SH3.C4SH2.NH2及びトリチオフェンアミンC4SH3.(C4SH22NH2を含む。有機スペーサ層に使用することができるさらなる二座分子は、ビフェニルジアミンNH2.(C642.NH2、ジアミノチオフェンNH2.C4SH2.NH2、ジアミノビチオフェンNH2.(C4SH22.NH2及びジアミノトリチオフェンNH2.(C4SH23NH2を含む。これら及び他の共役化分子は、有機スペーサ層を導通させる可能性及び有機スペーサ層の重合の可能性を提供する。導通する有機分子を使用する、無機酸化物層間のカップリングの制御は、新規な酸化物の位相挙動及び電子的性質を制御するための主要な手段を提供する。
【0034】本発明の化合物は、当該技術で公知の方法、たとえばスピンコーティング、浸漬コーティング、吹き付け、塗装、印刷などを使用する膜の製造によって装置に組み込むことができる。本発明の化合物の多大な有用性は、溶液からの沈殿によってセルフアセンブルすることである。そして、有機溶媒に溶解させ、適合する格子パラメータを有する適当な基材、たとえば単結晶ペロブスカイト基材、たとえばSrTiO3にスピンコーティングすることができる。基材格子パラメータは、膜を安定化させるように選択することができる。注意して熱処理することにより、c軸向きの膜を製造することができる。これらの方法を使用して、センサ、エレクトロクロミック膜及び薄膜電界効果トランジスタのような装置を製造することができる。電界効果トランジスタは、有機/無機酸化物を半伝導路として使用して製造することができ、装置特性は、ドーピング及び酸化物層間の間隔の制御によって最適化することができる。センサ用途は、吸着されるガスによって誘発されるドーピング状態の変化に基づいて実現することができる。
【0035】本有機/無機酸化物積層材料を組み合わせるさらなる手段は、アミン基によって終端されたセルフアセンブルした単層上にそれらを成長させることである。チオール、イソシアニド又はチオアセチルで終端された有機分子が金基質上でセルフアセンブルすることは周知である。これらの分子が反対側端をアミン基によって止められるならば、これらの分子を金の上に単層としてアセンブルしたのち、その単層の上に有機/無機酸化物材料をアセンブルすることができる。セルフアセンブルした単層を製造するためのそのようなアミノチオール化有機分子は、1−nアミノアルカンチオールHS.(CH2n.NH2(n=1、2、3、...)、アミノフェニルチオールHS.C64.NH2、アミノビフェニルチオールHS.(C642.NH2、アミノビチオフェンチオールHS.(C4SH22.NH2及び他の関連化合物を含む。上記すべてにおいてアルカン鎖を使用するフェニル基からのアミン又はチオール基の分離ならびにシアニド基又はチオアセチル基によるチオール基の置換を含むこれらの変形は、本発明の範囲に入る自明な態様である。
【0036】図面を詳細に参照する。図1は、角を共有するWO3八面体が角を共有する影入りひし形1によって表されている、WO3(又はMoO3)の構造の概略平面図を示す。ドーピングは、空の12配位ペロブスカイトA部位にカチオンを代入することによって達成される。
【0037】図2は、NH3ANH32+がジアンモニウムアルカン鎖であってもよいハイブリッド有機/無機多層化合物NH3ANH3.WO4の構造の概略側断面図を示す。WO6八面体の単原子層1が同じく影入りひし形によって表され、NH3+基2がアルカン鎖の各端部の円によって表され、有機基Aが楕円によって表されている。
【0038】図3は、NH3ANH32+がジアンモニウムアルカン鎖であってもよい二層ハイブリッド有機/無機多層化合物NH3ANH3.W27の構造の概略側断面図を示す。WO6八面体の単原子層1が同じく影入りひし形によって表され、NH3+基2がアルカン鎖の各端部の円によって表され、有機基Aが楕円によって表されている。一般に、いかなる数の酸化物層を有機スペーサ層の間に点在させて、一般式NH3ANH3.Wm3m+1を得てもよい。
【0039】図4は、Aが楕円によって表される有機分子であるねじれ形ハイブリッド有機/無機酸化物多層化合物(ANH32WO4の構造の概略側断面図を示す。WO6八面体1が同じく影入りひし形によって表され、NH3+基2が円によって表されている。図5は、一般的なねじれ形構造系(A.NH32n3n+1)の第二の要素の構造を示す概略図である。W27の二重層が影入りの角を共有するひし形の二重層によって示され、相互にかみ合う楕円Aが、アンモニウムイオンによって終端されたアルキル又は芳香族有機基2(円)を表す。
【0040】図6は、実施例2で記すようなジアンモニウムヘキサンタングステートのX線回折パターンを示す。図7は、実施例2、3及び4で記す、pH約10で調製したジアンモニウムアルカンタングステートに関して、c軸間隔をアルカン数nの関数として、n=2、6及び12の場合でプロットした図を示す。
【0041】図8は、実施例5で記す、pH約10及びpH約6で調製したジアンモニウムアルカンタングステートに関して、c軸間隔をアルカン数nの関数として、n=2、6及び12の場合でプロットした図を示す。図9R>9は、実施例10で記す、pH約10で調製したフェニレンジアンモニウムタングステート粉末の走査電子顕微鏡写真を示す。
【0042】図10は、実施例10で記す、pH約1.5で調製したフェニレンジアンモニウムタングステート粉末の走査電子顕微鏡写真を示す。
【0043】
【実施例】実施例1H2WO43.429gを計量し、穏やかに70℃で加熱しながらアンモニア溶液60mlに溶解した。冷却した後、ベンジルアミン3mlを加え、混合物を攪拌し、窒素流の下で加熱した。過剰なアンモニアをゆっくりと蒸発させて湿潤した沈殿物を残し、それをろ過し、乾燥させた。
【0044】得られた白色粉末に対してX線回折を実施した。粉末回折パターンは、16.48Å及び15.59Åのd間隔に対応する主ピークを明らかにした。これらの一方、おそらくは小さい方が、ジベンジルアンモニウムタングステート(C65CH2NH32WO4に予想される格子パラメータと合致していた。他方の化合物はまだ同定されていない。
【0045】粉末の一部を無水エタノールに再溶解し、SrTiO3単結晶基質に2000rpmでスピニングし、80℃の窒素気流下で15分間乾燥させることにより、膜を製造した。
【0046】実施例2化学量論的割合でジアミノアルカンをタングステン酸と反応させることにより、ハイブリッド有機/無機酸化物材料を合成した。タングステン酸H2WO4をアンモニア溶液に溶解し、別に、1−6ジアミノヘキサンをアンモニア溶液に溶解した。二つの溶液を化学量論的割合で混合し、得られたpH約10の溶液を90℃に加熱してアンモニアを蒸発させた。ひとたびアンモニアが蒸発すると、pHは約9.5でとどまった。次に、溶液を80℃で加熱して残留水を蒸発させ、粉末を沈殿させた。この粉末をX線粉末回折(XRD)に付した。XRDパターンを図6に示す。
【0047】マークした回折線は、c軸格子パラメータc=12.27Åで積層化合物の001、002及び003反射に対応する。化合物は、式(NH32(CH26WO4の新規な化合物ジアンモニウムヘキサンタングステートと同定された。
【0048】実施例3アンモニア溶液に溶解した1−2ジアミノエタンを使用して、例2の手順を繰り返した。得られた粉末のXRDパターンは、7.39Åのc軸間隔を明らかにした。化合物は、式(NH32(CH22WO4の新規な化合物ジアンモニウムメタンタングステートと同定された。
【0049】実施例4エタノールに溶解した1−12ジアミノドデカンを使用して、例2の手順を繰り返した。得られた粉末のXRDパターンは、19.59Åのc軸間隔を明らかにした。化合物は、式(NH32(CH212WO4の新規な化合物ジアンモニウムドデカンタングステートと同定された。実施例2、3及び4の生成物のc軸間隔をアルカン数の関数として図7にプロットした。結果は、式c=1.22n+4.99Åの直線であった。これは、酸化タングステン層に対して垂直に並ぶ各化合物中のアルカン鎖及びZMO3構造中の頂点酸素原子の面における空のペロブスカイトZ部位中に位置するアンモニウム基中の窒素原子と合致していた。まず、鎖長中のさらなる炭素原子ごとのさらなるc軸間隔(1.22Å)が、1.54ÅのC−C結合長さ及び109.28゜のC−C−C結合角と合致して、アルカン鎖の長さに沿って投射されるC−C間隔1.25Åを与えた。ここで、ZMO3構造中のアンモニウム基及び空のペロブスカイトZ部位中の窒素原子間のオフセットdoを考える。切片値4.99Åは、W−W結合長(3.75Å)及び投射C−N結合長(1.22Å)+オフセットdoを含む。すなわち、4.99=3.75+1.22+doである。明らかに、doは本質的にゼロである。したがって、これらの化合物は、Wの八面体配位を完成させる頂点酸素によって上下をふさがれた、角を共有するWO2層からなるWO4の単原子層を含む模範的重なり形構造を形成する。ジアンモニウムアルカン鎖は、NH3基がペロブスカイトZMO3構造中のZ原子であるかのように、N原子がほぼ頂点酸素原子の平面中、面中心位置に位置するこれらのWO4層に対して垂直に延びる。走査電子鏡検法が、これらの材料が、その積層構造と合致する非常に平坦な雲母状微結晶を示すことを示した。
【0050】実施例5塩酸又は硝酸を加えることによって混合溶液のpHを下げたことを除いて、実施例2、3及び4を繰り返した。これらの実施例で記載したように、pH約10で、規範的な積層ジアミノアルカンタングステートが製造された。pH約8で、いずれの酸でも、有機成分を有しない純粋に無機の酸化物が沈殿した。XRDを使用してこれがアンモニウムタングステート(NH4101241であると同定した。pH6以下で、HCLは再び(NH4101241を形成させたが、HNO3は、大きなc軸間隔を有する粉末を生じさせ、これらの粉末は単相ではなかった。図8は、このようにしてpH=6、n=2、6及び12で得られたc間隔をアルカン数nの関数としてプロットしたものを示す。これらは、c=1.22n+6.96の直線当てはめを出した。したがって、これら新規な材料は、規範的な積層有機/無機材料よりも2Å大きいc間隔を有する。シンクロトロンX線回折は、これらが、ジアンモニウムアルカン鎖によって分けられた酸化タングステンの楕円形シェルの秩序ある配列からなることを明らかにした。これらは、形成するためには8を超えるpHを明らかに要する規範的な積層有機無機材料ではない。
【0051】実施例6アンモニウムジモリブデートの形態のモリブデン酸をタングステン酸に代えて使用して、実施例2、3及び4を繰り返した。これは、高いpHで、n=2、6及び12の場合で、化学式(NH32(CH2nWO4の同じ模範的積層有機無機材料を生じさせた。走査電子鏡検法が、これらが同じく平坦な微結晶を有することを示した。
【0052】実施例7実施例2に記載のようにして、ベンジルアミン及びタングステン酸を化学量論的割合で反応させた。アンモニア及び水を蒸発させたのち、白色の粉末を得た。これは、格子cパラメータが16.5Åの単相積層構造を示した。これは、式(C65CH2NH32WO4の模範的積層有機/無機酸化物であった。
【0053】実施例8実施例2に記載のようにpH約10で、アナリン及びタングステン酸を化学量論的割合で反応させた。アンモニア及び水を蒸発させたのち、白色の粉末を得た。これは、支配的な相としてアンモニウムタングステート(NH4101241及び規範的積層有機/無機酸化物の不在を明らかにした。pH=6で実施例を繰り返しても同じ結果が得られた。モリブデン酸を使用して実施例を繰り返しても同じ結果が得られた。
【0054】実施例9実施例2に記載のようにpH約10で、フェネチルアミンC65(CH22NH2及びタングステン酸を化学量論的割合で反応させた。アンモニア及び水を蒸発させたのち、白色の粉末を得た。これは、単相積層構造を示した。これは、式(C65(CH22NH32WO4の規範的積層有機/無機酸化物フェネチルアンモニウムタングステートであった。
【0055】実施例10実施例2に記載のようにpH約10で、フェニレンジアミンNH264NH2及びタングステン酸を化学量論的割合で反応させた。アンモニア及び水を蒸発させた後、黒色の粉末を得た。この粉末のXRDは、格子d間隔が14.2Å及び12.8Åである積層構造を明らかにした。図9に示す走査電子顕微鏡写真は、積層構造と合致する平坦なシートの形態の微結晶を示す。pH約1.5で実施例を繰り返した。得られた微結晶は、図10に示すように非常に平坦でプレート状であり、d間隔が12.6Åであった。
【0056】実施例11アンモニウムジモリブデートの形態のモリブデン酸を使用して、実施例10を繰り返した。pH約10で沈殿した粉末を可視光線及びUV分光分析法によって検査した。これは、1.5eVで、酸化物層間の導電性フェニレンジアンモニウム結合の形成と合致する明確なプラズマエッジを明らかにした。pH約1.5で実施例を繰り返した。d間隔が約12.8Åである平坦な微結晶が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】WO3又はMoO3の構造の概略平面図である。
【図2】本発明の一つの材料の概略側断面図である。
【図3】本発明の第二の材料の概略側断面図である。
【図4】本発明のさらなる材料の概略側断面図である。
【図5】本発明のさらなる材料の概略側断面図である。
【図6】本発明の一つの材料のXRDパターンを示す図である。
【図7】c軸間隔をアルカン数に対してプロットした図である。
【図8】c軸間隔をアルカン数に対してプロットした図である。
【図9】本発明の材料の走査電子顕微鏡写真である。
【図10】本発明の材料の走査電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1 単原子層
2 NH3+
A 有機分子

【特許請求の範囲】
【請求項1】 角を共有するMO6八面体(Mは金属である)の一つ以上の原子面からなる金属酸化物の一つ以上の層と、有機分子の一つ以上の層とを含み、前記金属酸化物層が一つ以上の有機層とで交互になって周期的平面構造を形成する積層有機無機酸化物材料。
【請求項2】 前記金属MがW、VもしくはMo又はこれらの組み合わせである、請求項1記載の材料。
【請求項3】 前記金属MがW、VもしくはMo又はこれらの組み合わせであり、他の高原子価金属、たとえばTi、Nb、Ta、Ru及びReがMo、W又はVとで部分的に組み合わせて使用されている、請求項2記載の材料。
【請求項4】 一般式X.Mm3m+1(式中、Mは金属であり、Xは有機カチオンであり、m=1、2、3である)を有する、請求項2又は3記載の材料。
【請求項5】 前記有機カチオンが二座である、請求項4記載の材料。
【請求項6】 前記無機層に対する有機層の配置が重なり形である、請求項5記載の材料。
【請求項7】 前記有機カチオンがジアンモニウムカチオンであり、前記材料が組成NH3.A.NH3.Mm3m+1を有する、請求項5又は6記載の材料。
【請求項8】 m=1であり、各無機酸化物原子面が有機層とで交互になる、請求項7記載の材料。
【請求項9】 m=2であり、前記組成がNH3.A.NH3.M27であり、前記有機酸化物が、角を共有するMO6八面体の二重原子面層として存在して、前記材料が積層構造−A−O−MO2−O−MO2−O−Aを有するようになっている、請求項8記載の材料。
【請求項10】 前記有機カチオンが脂肪族ジアンモニウムカチオンであり、A=(CH)nであり、n=1、2、・・・である、請求項8又は9記載の材料。
【請求項11】 前記有機カチオン上、前記アンモニウムカチオン基がAの末端アルカン単位に配置されている、請求項10記載の材料。
【請求項12】 化学式NH3(CH2nNH3MO4を有する、請求項11記載の材料。
【請求項13】 n=2である、請求項12記載の材料。
【請求項14】 n=6である、請求項12記載の材料。
【請求項15】 n=12である、請求項12記載の材料。
【請求項16】 前記有機カチオンが芳香族ジアンモニウムカチオンである、請求項8又は9記載の材料。
【請求項17】 A=C64であり、前記有機カチオンがNH364NH3である、請求項16記載の材料。
【請求項18】 前記有機カチオンが、等しい長さ又は不等な長さの二つの脂肪族側鎖を有する芳香環を含み、各側鎖がアンモニウムイオンによって終端されており、前記有機カチオンが一般式NH3(CH2n64(CH2mNH3を有する、請求項16記載の材料。
【請求項19】 隣接する芳香環どうしが架橋して有機ポリマー層を形成している、請求項17又は18記載の材料。
【請求項20】 前記有機ポリマー層が導電性である、請求項19記載の材料。
【請求項21】 一般式X′2.Mm3m+1(式中、Mは金属であり、X′は有機カチオンであり、m=1、2、3である)を有する、請求項2又は3記載の材料。
【請求項22】 前記有機カチオンが単座である、請求項21記載の材料。
【請求項23】 前記無機層に対する有機層の配置がねじれ形である、請求項21又は22記載の材料。
【請求項24】 両方の有機カチオンがモノアンモニウムカチオンであり、前記材料が組成(NH3.A′)2.Mm3m+1を有する、請求項23記載の材料。
【請求項25】 m=1であり、各無機酸化物原子層が有機層とで交互にある、請求項24記載の材料。
【請求項26】 m=2であり、前記組成が(NH3.A′)2.M27であり、前記有機酸化物が、Z部位が空であるほぼZWO3ペロブスカイト型の構造を有する二重原子面層として存在して、前記材料が積層構造NH3.A′−MO2−O−MO2−A′.NH3を有するようになっている、請求項24記載の材料。
【請求項27】 一方又は両方の有機カチオンが脂肪族アンモニウムカチオンであり、A′=(CH)nであり、n=1、2、・・・である、請求項25又は26記載の材料。
【請求項28】 一方又は両方の有機カチオンが芳香族アンモニウムカチオンである、請求項25又は26記載の材料。
【請求項29】 前記芳香環が、脂肪族であり、アンモニウムイオンによって終端された側鎖を有し、式(C65.(CH2mNH32MO4(m=0、1、2、3、...)を有する、請求項28記載の材料。
【請求項30】 隣接する芳香環どうしが架橋して有機ポリマー層を形成している、請求項28又は29記載の材料。
【請求項31】 前記有機ポリマー層が導電性である、請求項1〜30のいずれか1項記載の材料。
【請求項32】 ドープ剤が構造中に導入される、請求項項1〜31のいずれか1項記載の材料。
【請求項33】 前記ドープ剤が、アルカリカチオン、メチルアンモニウムカチオン、置換性アンモニウム基、電界効果注入電子又は電界効果注入正孔の一つ以上から選択される、請求項32記載の材料。
【請求項34】 前記ドープ剤が無機酸化物層中に存在し、前記酸化物のドーピング状態が、その酸化物が40Kを超える温度で超伝導性を示すように調節されている、請求項32記載の材料。
【請求項35】 前記酸化物のドーピング状態が、その酸化物が90Kを超える温度で超伝導性を示すように調節されている、請求項32記載の材料。
【請求項36】 Mが、磁気的に秩序ある状態を示すため、磁性遷移金属イオンによって部分的又は完全に置換されている、請求項1〜35のいずれか1項記載の材料。
【請求項37】 MO4、M27又はMm3m+1を含む酸化物層が以下の酸化物層、すなわちCuO2、NiO2、CoO2、CuO2CaCuO2、Cam-1Cum2m(m=1、2、3、...)、NiO2CaNiO2、Cam-1Nim2m(m=1、2、3、...)、正方形角錐MnO3、正方形角錐RuO3、八面体RuO4、O−MnO2−Y−MnO2−O、O−MnO2−Ca−MnO2−O、O−RuO2−Y−RuO2−O又はO−RuO2−Ca−RuO2−Oのいずれかによって完全に置換されている、請求項1〜33のいずれか1項記載の有機/無機酸化物材料。
【請求項38】 Z部位が空である実質的にZMO3ペロブスカイト型の構造(M=金属)を有する金属酸化物の一つ以上の原子面からなる金属酸化物の一つ以上の層と、有機分子の一つ以上の層とを含み、前記金属が二価のカチオンを形成し、角を共有する正方形平面構造中に配位されているか、前記金属が四価のカチオンを形成し、角を共有する正方形角錐構造中に配位されており、一つ以上の金属酸化物層が一つ以上の有機層とで交互になって周期的平面構造を形成する積層有機無機酸化物材料。
【請求項39】 前記金属MがCu、Ni、Ru、Mn又はこれらの組み合わせである、請求項38記載の材料。
【請求項40】 ペロブスカイトA部位に位置するアルカリ土類金属イオンによってそれぞれが分けられた二つ以上の酸化物層により、より高次の構造が形成されている、請求項39記載の材料。
【請求項41】 前記アルカリ土類金属イオンがカルシウムである、請求項40記載の材料。
【請求項42】 NH3.A.NH3CuO2、(A.NH32CuO2、NH3.A.NH3Cam-1Cum2m(m=1、2、3、...)、(A.NH32Cam-1Cum2m(m=1、2、3、...)、NH3.A.NH3NiO2、(A.NH32NiO2、NH3.A.NH3Cam-1Nim2m(m=1、2、3、...)、(A.NH32Cam-1Nim2m(m=1、2、3、...)及びNH3.A.NH3MnO3、(A.NH32MnO3、NH3.A.NH3Cam-1Mnm2m+2(m=1、2、3、...)、(A.NH32Cam-1Mnm2m+2(m=1、2、3、...)、NH3.A.NH3RuO3、(A.NH32RuO3、NH3.A.NH3Cam-1Rum2m+2(m=1、2、3、...)、(A.NH32Cam-1Rum2m+2(m=1、2、3、...)のいずれか一つの一般式を有する、請求項41記載の材料。
【請求項43】 ドープ剤が構造に導入される、請求項38〜42のいずれか1項記載の材料。
【請求項44】 前記ドープ剤が、アルカリカチオン、メチルアンモニウムカチオン、置換性アンモニウム基、電界効果注入電子又は電界効果注入正孔の一つ以上から選択される、請求項43記載の材料。
【請求項45】 前記ドープ剤が無機酸化物層中に存在し、前記酸化物のドーピング状態が、その酸化物が40Kを超える温度で超伝導性を示すように調節されている、請求項44記載の材料。
【請求項46】 前記酸化物のドーピング状態が、その酸化物が90Kを超える温度で超伝導性を示すように調節されている、請求項44記載の材料。
【請求項47】 Mが、磁気的に秩序ある状態を示すため、磁性遷移金属イオンによって部分的又は完全に置換されている、請求項38〜46のいずれか1項記載の材料。
【請求項48】 金属酸化物の一つ以上の層と、一つ以上の有機層とを含み、各層が実質的にペロブスカイト型構造で存在する積層無機有機材料を調製する方法であって、金属及び/又は酸化物のソースを有機層のソースと接触させて層構造が実質的にセルフアセンブルするようにする工程を含む方法。
【請求項49】 前記材料が、一般構造NH3.A.NH3.Mm3m+1を有し、ジアミノアルカンとタングステン酸(金属がWである場合)又はモリブデン酸(金属がMoである場合)との反応によって、あるいはタングステン酸(金属がWである場合)又はモリブデン酸(金属がMoである場合)アンモニア溶液の溶解によって、あるいはW又はMo金属と過酸化水素との反応によって調製される、請求項48記載の方法。
【請求項50】 実質的に上記方法にしたがって調製された積層無機有機材料。
【請求項51】 実質的にZMO3ペロブスカイト型の構造を有する金属酸化物又はZ部位が空であるその誘導体/類似体(M=金属)の一つ以上の原子面からなる金属酸化物の一つ以上の層と、有機分子の一つ以上の層とを含み、一つ以上の金属酸化物層が一つ以上の有機層とで交互になって周期的平面構造を形成し、隣接するが離間する無機層の間の間隔及び電子カップリングを適切な有機分子の選択によって事前に選択することができる積層無機有機材料を調製する方法。
【請求項52】 実質的に請求項51記載の方法にしたがって調製された積層無機有機材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2003−245997(P2003−245997A)
【公開日】平成15年9月2日(2003.9.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】有
【出願番号】特願2002−48323(P2002−48323)
【出願日】平成14年2月25日(2002.2.25)
【出願人】(500084016)インダストリアル リサーチ リミテッド (8)
【Fターム(参考)】