説明

新規懸濁媒体を組込んだSPD光バルブフィルムおよびそれを組込んだ光バルブ

懸濁粒子デバイス光バルブの光変調ユニットとして使用するのに適するフィルム。該フィルムは、マトリックスポリマー材料を含み、かつ液状光バルブ懸濁液の液滴を有し、該懸濁液は、該マトリックス内に分布する液状懸濁媒体中に分散している複数の粒子を含む。該懸濁媒体は、(a)該マトリックスポリマー材料とは実質的に不混和性であり、(b) 大気圧下で約100℃よりも高い沸点を有し、(c)少なくとも約0.8×106Ω/□の電気抵抗率を有し、かつ(d) 25℃において、実質的に同一の温度で測定した該マトリックスポリマーの屈折率と約0.002以下だけ異なる屈折率を持つ。該懸濁媒体はメチルピロリジノン、エチルピロリジノン、ジメチルマロネート、ジエチルマロネート、ジメチルスクシネート、ジ(プロピレングリコール)メチルエーテル、ジメチルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルラクテート、プロピレンカーボネート、ジメチルパーフルオロスベレート、ジメチルテトラフルオロスクシネート、テトラ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、トリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、ジ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化大豆油、ジエチルイソフタレート、シリコーンコポリオールをベースとするラウリン酸エステル、シリコーンコポリオールコポリマー、シリコーンコポリオールエステル、シリコーンコポリオールをベースとするイソステアリン酸エステル、シリコーンコポリオールをベースとするペラルゴン酸エステル、ジエチルイソフタレート、ジメチルオクトフルオロアジペートおよびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの液体成分を含み、また場合により、1または2以上の以前から公知の液状懸濁媒体を含む。該マトリックスポリマーは、場合により、該フィルムを成形する際に架橋されて、架橋ポリマーマトリックスを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光バルブ等の懸濁粒子デバイスにおいて使用するための、改良されたフィルムに関連する。更に詳しくは、本発明は、このようなフィルムを製造するに際して使用するための新規な懸濁媒体、および本発明の改良されたフィルムを組込んだ光バルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光バルブは、60年以上前から、光を変調するものとして公知である。光バルブは、その間に、例えば英数字ディスプレイ、テレビジョンディスプレイ、窓、サンルーフ、サンバイザー、鏡、眼鏡等を包含する多くの用途に対して、これらを透過する光の量を調節する目的で提案されている。ここに記載する型の光バルブは、「懸濁粒子デバイス(suspended particle device)」または「SPD」としても知られている。
ここで使用する用語「光バルブ」とは、僅かな距離だけ離されて配置されている2つの壁によって形成されたセルを表すのに使用され、ここで該壁の少なくとも一つは透明である。これらの壁は、その上に電極を有し、該電極は、通常透明な導電性被膜の形状にある。該セルは、光変調エレメント(ここでは、しばしば「活性化可能な材料」と呼ばれる)を含み、該エレメントは、粒子の液状懸濁物であるか、または粒子の液状懸濁物の液滴が分布しているプラスチックフィルムであり得る。
【0003】
この液状懸濁物(しばしば「液状光バルブ懸濁物(液)」または「光バルブ懸濁物(液)」と呼ばれる)は、液状懸濁媒体中に懸濁された小さな粒子を含む。電場が印加されていない場合には、この液状懸濁液中の該粒子は、ブラウン運動のためにランダムな配置状態にあるものと推定される。従って、このセル内に通された光のビームは、該セルの構造、該粒子の特性および濃度、並びに該光のエネルギー含量に依存して、反射、透過または吸収される。従って、この光バルブは、オフ(OFF)状態において比較的暗色である。しかし、該光バルブ内の該液状光バルブ懸濁液を介して電場を印加した場合には、該粒子が整列され、多くの懸濁液に関して、該光の大部分が、このセルを透過できる。従って、この光バルブは、そのオン(ON)状態において比較的透明である。
多くの用途に対して、該活性化可能な材料、即ち該光変調エレメントにとって、液状懸濁液ではなく、寧ろプラスチックフィルムであることが好ましい。例えば、可変光透過性窓として使用される光バルブでは、液状懸濁物単独よりは、液状懸濁物の液滴が分布しているプラスチックフィルムが好ましい。というのは、静水圧作用、例えば液状懸濁物の高いカラムに関連する膨れは、フィルムの使用によって回避でき、また起こり得る漏れの可能性も、回避できるからである。プラスチックフィルムを用いるもう一つの利点は、プラスチックフィルムでは、該粒子が一般的に極めて小さな液滴内のみに存在し、そのために、該フィルムが電位によって反復的に活性化する場合であっても、該粒子は検知し得る程の凝集を起こさないということである。
【0004】
ここで使用する用語「光バルブフィルム」とは、フィルム内部にまたは該フィルムの一部に分配された粒子を含む、液状懸濁物の液滴を含有するフィルムを意味する。
米国特許第5,409,734号は、均一な溶液からの相分離によって生成される、ある種の光バルブフィルムを例示している。エマルションの架橋によって製造された光バルブフィルムも、公知である。これらについては、米国特許第5,463,491号および同第5,463,492号を参照されたい。これら特許は、本発明の譲受人に帰属する。
本発明に従って製造される懸濁粒子デバイスの良好な理解を容易にするために、先行技術に従って製造したSPD光バルブの特徴を以下において、簡単に説明する。
様々な液状光バルブ懸濁物が、先行技術において周知であり、またこのような懸濁物は、当分野における当業者にとって周知の技術に従って、容易に処方できる。ここで使用する用語「液状光バルブ懸濁物(液)(liquid light valve suspension)」とは、多数の小粒子が分散されている、「液状懸濁媒体(liquid suspending medium)」を意味する。この「液状懸濁媒体」は、1または2以上の非水溶性で電気的に抵抗性の液体を含み、この液体中には、該粒子の凝集傾向を減じるように機能し、かつこれらを分散状態および懸濁状態に維持するように機能する、少なくとも1つの種類のポリマー安定化剤を溶解しておくことが好ましい。
【0005】
以下において論じる幾つかの限定を条件にして、本発明に従って製造される懸濁粒子デバイスにおいて有用な該液状懸濁媒体は、場合により、即ちここに記載する新規な液状懸濁媒体に加えて、このような光バルブにおいて使用するために、以前から知られている「公知技術」の液状懸濁媒体の一種またはそれ以上を、このような光バルブの意図した用途および/または動作パラメータ等の考慮に応じて、含むことができる。このような「公知技術」の媒体は、米国特許第4,247,175号、同第4,407,565号、同第4,772,103号、同第5,409,734号、同第5,461,506号および同第5,463,492号に記載されているものを含むが、これらに限定されない。一般的に、液状懸濁媒体とその媒体中に溶解されるポリマー安定化剤(以下に説明する)の一方または両方は、懸濁粒子を重力平衡状態に維持するように選択される。
ポリマー安定化剤を使用する場合、ポリマー安定化剤は、該粒子の表面と結合するが、該液状懸濁媒体の非水性液体にも溶解する単一の型の固体ポリマーであり得る。あるいはまた、ポリマー安定化剤系として機能する、2以上の固体ポリマー安定化剤であってもよい。例えば、これら粒子は、実際にこれらの粒子に対して平坦な表面被覆を与える、ニトロセルロース等の、第一の型の固体ポリマー安定化剤で、該第一の型の固体ポリマー安定化剤と併合し、もしくはこれと組合せ、かつ該液状懸濁媒体中に溶解して、分散液を与え、かつ該粒子に対する立体的な保護作用をもたらす、1または2以上の種類の更なる固体ポリマー安定化剤と共に、被覆することができる。また、液状ポリマー安定化剤は、例えば米国特許第5,463,492号に記載されているように、特にSPD光バルブフィルムにおいて利益を得るために、使用することができる。
【0006】
無機および有機粒子は、光バルブ懸濁液において使用でき、またこのような粒子は、その電磁スペクトルの可視部分において、光吸収または光反射性のものであり得る。
従来のSPD光バルブでは、一般にコロイド状サイズの粒子を使用している。ここで使用する用語「コロイド状」とは、該粒子が、一般に平均して、約1μmまたはそれ以下の最大の寸法を有することを意味する。好ましくは、SPD光バルブ懸濁液において使用される、またはそこでの使用を意図した、多くのポリハライドまたは非ポリハライド型の粒子は、光散乱を極めて低いレベルに維持するために、平均して0.3μmまたはそれ以下、およびより好ましくは、平均して青色光の波長の1/2未満、即ち2000Å未満の最大寸法を有するであろう。
ここで使用する用語「減衰時間(decay time)」とは、該デバイスに対する電力供給を停止した後に、SPDフィルムの作動 (ON)状態において、その光透過率を90%から10%に変動させるのに必要とされる時間を意味する。ここで使用する用語「立上り時間(rise time)」とは、電力供給を開始した後に、該フィルムの作動状態における、その光透過率を、10%から90%に変動させるのに必要な時間である。該フィルムの作動状態におけるその光透過率の100%が、その可能な最大の光透過率である必要はないが、ユーザーが使用すべく選択した電位、周波数および/またはその他のパラメータを考慮して、有利となるように、あらゆる量の光透過率をユーザーが選択することができる。一般に、立上り時間は、該減衰時間よりも2〜3倍速く、その理由は該立上り時間が、印加された電位によって発生する電場の関数であり、一方で該減衰時間は通常ブラウン運動によって決定されるからである。
【0007】
ここで付随的に使用するような、「迅速な」減衰時間とは、25℃において250ミリ秒(msec)またはそれ以下、好ましくは25℃において100msecまたはそれ以下である。また、同様にここで使用するような、「極めて迅速な」減衰時間とは、25℃において50msecまたはそれ以下および好ましくは25℃において20msecまたはそれ以下である。該SPDフィルムの該立上り時間と該減衰時間とを一緒に加えた場合には、これらは、ここで使用するような用語、フィルムの「応答時間」を構成する。実際のところ、該減衰時間の低下は、該フィルムの立上り時間および全体としての応答時間両者を低下する作用を有する。
意図した用途に依存して、SPDフィルムが迅速なまたは迅速でない応答時間を有することが望まれる場合がある。所望の速度を達成するために、液状懸濁媒体の広い選択の幅を持ち、結果的に多くの異なる粘度を有する液体が利用できることが望ましい。というのは、その他のファクターに加えて、液状懸濁液の立上り時間、減衰時間および応答時間が各々該懸濁液の粘度の関数であるからであり、該粘度は、一般に該液状懸濁媒体または該懸濁液媒体の粘度の関数である。即ち、他のファクターが一定である場合、液状懸濁液の立上り時間、減衰時間および応答時間は全て、その液状懸濁媒体の粘度が増大する場合には増大し、また逆に、該懸濁媒体の粘度が減少する場合には減少するであろう。
非重合性液体および重合性液体の多種多様な液体が、SPD光バルブの液状懸濁媒体として、または少なくともその一成分として使用するために、公知技術において示唆されている。該非重合性液体は、限定的なものではなしに、様々なハロゲン化液体、低級エステルおよび可塑剤を含む。以前に開示された重合性液体としては、限定的なものではないが、米国特許第5,463,492号に記載されているポリマー型の液状コポリマーおよびポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0008】
液体が、SPDフィルムの液滴における液状懸濁媒体(またはその成分)として有用であるためには、該液体は、(a) 高温、例えば90℃においてさえ、該フィルムの成形に使用するマトリックスポリマーとは、実質的にまたは完全に不混和性であり;(b) 大気圧下で、適度に高い沸点(100℃より高く、好ましくは150℃より高く、より好ましくは200℃より高い)を有し;(c) 25℃において、好ましくは0℃において、より好ましくは−20℃以下において、液体であるべきである。その上、全体として、該液状懸濁媒体は、25℃において、該マトリックスポリマーの屈折率とは、0.002単位以下だけ、好ましくは0.001単位以下だけ異なる屈折率を有するべきである。更に、この液体は、少なくとも0.8×106Ω/□、好ましくは5×106Ω/□以上の電気抵抗率を有するべきである。幾つかの液状懸濁媒体は、1012Ω/□またはそれ以上の電気抵抗率を有する。
SPDフィルムが、均一溶液からの相分離によって製造された型のものである(例えば、米国特許第5,409,734号に記載されているように)場合には、該液滴の液状懸濁媒体は、沈殿する(相分離する)マトリックスポリマーとは不混和性であるべきである。SPDフィルムが、該マトリックスを架橋(即ち、放射線硬化または熱硬化)することによって成形された種類のフィルムである場合、該液状懸濁媒体は、硬化されていないフィルムおよび硬化されたフィルム双方に対して不混和性である必要がある。
【発明の開示】
【0009】
本発明は、光バルブ等の懸濁粒子デバイスで使用するための、改良されたフィルムを提供することに関する。特に、本発明は、このようなフィルムの製造において使用するための新規な懸濁媒体、並びに本発明の改良したフィルムを組込んだSPD光バルブに関する。
本発明は、懸濁粒子デバイス(SPD)光バルブの、光変調ユニットとして使用するのに適したフィルムを提供する。該フィルムはマトリックスポリマー材料を含み、前記マトリックスポリマー材料は、該マトリックス内に分散している液状光バルブ懸濁媒体の液滴を含有する。該液状光バルブ懸濁媒体は、(a)該マトリックスポリマー材料と実質的に不混和性であり、(b)大気圧下で約100℃よりも高い沸点を有し、(c)少なくとも約0.8×106Ω/□の電気抵抗率を有し、かつ(d) 25℃において、実質的に同一の温度での該マトリックスポリマーの屈折率とは約0.002以下だけ異なる屈折率を有する。該液状懸濁媒体は、メチルピロリジノン、エチルピロリジノン、ジメチルマロネート、ジエチルマロネート、ジメチルスクシネート、ジ(プロピレングリコール)メチルエーテル、ジメチルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルラクテート、プロピレンカーボネート、ジメチルペルフルオロスベレート、ジメチルテトラフルオロスクシネート、テトラ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、トリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、ジ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化大豆油、ジエチルイソフタレート、シリコーンコポリオールをベースとするラウリン酸エステル、シリコーンコポリオールコポリマー、シリコーンコポリオールエステル、シリコーンコポリオールをベースとするイソステアリン酸エステル、シリコーンコポリオールをベースとするペラルゴン酸エステル、ジエチルイソフタレート、ジメチルオクトフルオロアジペート、およびこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1つの液体成分を含む。
【0010】
ある種の用途に対して、および/またはある種の動作条件下で、本発明の光バルブと共に使用するため、液状懸濁媒体は、上に示す液体の少なくとも1つに加えて、当業者には公知の「先行技術」の液状懸濁媒体の1または2以上を含むことができる。例えば、限定的ではないが、先行技術の懸濁媒体は、その懸濁媒体が組み込まれる液状懸濁媒体全体の粘度または屈折率を調節するのに使用することができる。しかしながら、このような「先行技術」の媒体成分も、上記の最低沸点および不混和性に関する要求を満たす必要がある。
【0011】
もう一つの態様によれば、本発明は、更に懸濁粒子デバイス光バルブの、光変調ユニットとして使用するのに適したフィルムを提供するものであり、ここにおいて、該フィルムはマトリックスポリマー材料を含み、該マトリックスポリマー材料は、該フィルムを製造するに際して架橋されて架橋ポリマーマトリックスを形成する。該フィルムは、該架橋マトリックス内に分散している液状光バルブ懸濁物の液滴を有する。該液状光バルブ懸濁媒体は、(a)該マトリックスポリマー材料とは実質的に不混和性であり、(b) 大気圧下で約100℃よりも高い沸点を有し、(c)少なくとも約0.8×106Ω/□の電気抵抗率を有し、かつ(d) 25℃において、実質的に同一の温度での該マトリックスポリマーの屈折率とは約0.002以下だけ異なる屈折率を有する。該懸濁媒体は、メチルピロリジノン、エチルピロリジノン、ジメチルマロネート、ジエチルマロネート、ジメチルスクシネート、ジ(プロピレングリコール)メチルエーテル、ジメチルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルラクテート、プロピレンカーボネート、ジメチルペルフルオロスベレート、ジメチルテトラフルオロスクシネート、テトラ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、トリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、ジ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化大豆油、ジエチルイソフタレート、シリコーンコポリオールをベースとするラウリン酸エステル、シリコーンコポリオールコポリマー、シリコーンコポリオールエステル、シリコーンコポリオールをベースとするイソステアリン酸エステル、シリコーンコポリオールをベースとするペラルゴン酸エステル、ジエチルイソフタレート、ジメチルオクトフルオロアジペート、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの液体成分を含む。
【0012】
上で論じた通り、ある種の用途に対して、および/またはある種の動作条件下で、本発明の光バルブと共に使用するために、該液状懸濁媒体は、上に示した液体の少なくとも1つに加えて、当業者には公知の、「先行技術」の液状懸濁媒体を1または2以上含むことができる。しかし、このような「先行技術」の媒体成分も、上記の最低沸点および不混和性に関する要求を満たす必要がある。
本発明は、更に輻射線の透過を調節するための電気光学デバイスを提供する。このデバイスは、対向するセル壁で形成されたセルと、該対向するセル壁間に配置された光変調エレメントと、該セル壁と機能可能な状態で結合した対向する電極手段とを含む。該光変調エレメントは、マトリックスポリマー材料で構成されるフィルムを含み、該ポリマーマトリックス内に分散している液状光バルブ懸濁媒体の液滴を有する。該電極手段は、該懸濁液を横切って電場を印加するのに適合されている。該液状懸濁媒体は、(a)該マトリックスポリマー材料と実質的に不混和性であり、(b) 大気圧下で約100℃より高い沸点を有し、(c)少なくとも約0.8×106Ω/□の電気抵抗率を有し、かつ(d) 25℃において、実質的に同一の温度での該マトリックスポリマーの屈折率とは約0.002以下だけ異なる屈折率を有し、また該懸濁媒体は、メチルピロリジノン、エチルピロリジノン、ジメチルマロネート、ジエチルマロネート、ジメチルスクシネート、ジ(プロピレングリコール)メチルエーテル、ジメチルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルラクテート、プロピレンカーボネート、ジメチルペルフルオロスベレート、ジメチルテトラフルオロスクシネート、テトラ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、トリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、ジ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化大豆油、ジエチルイソフタレート、シリコーンコポリオールをベースとするラウリン酸エステル、シリコーンコポリオールコポリマー、シリコーンコポリオールエステル、シリコーンコポリオールをベースとするイソステアリン酸エステル、シリコーンコポリオールをベースとするペラルゴン酸エステル、ジエチルイソフタレート、ジメチルオクトフルオロアジペート、およびこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1つの液体成分を含む。
【0013】
上で論じた通り、ある種の用途に対して、および/またはある種の動作条件下で、本発明の光バルブと共に使用するために、該液状懸濁媒体は、上に示した液体の少なくとも1つに加えて、当業者には公知の「先行技術」の液状懸濁媒体を1または2以上含むことができる。しかし、このような「先行技術」の媒体成分も、上記の最低沸点および不混和性に関する要求を満たす必要がある。
本発明は更に、本発明の懸濁粒子デバイス光バルブの光変調ユニットとして使用するのに適するフィルムの製造方法を提供する。該方法は、所定量のマトリックスポリマー材料を調製する工程と、該マトリックスポリマー材料の少なくとも一部と所定量の液状光バルブ懸濁物との組合せからエマルションを生成する工程とを含む。該懸濁物は、液状懸濁媒体中に懸濁された複数の粒子を含み、該液状懸濁媒体は、(a)該マトリックスポリマー材料と実質的に不混和性であり、(b) 大気圧下で約100℃よりも高い沸点を有し、(c)少なくとも約0.8×106Ω/□の電気抵抗率を有し、かつ(d) 25℃において、実質的に同一の温度での該マトリックスポリマーの屈折率とは約0.002以下だけ異なる屈折率を有する。該懸濁媒体は、メチルピロリジノン、エチルピロリジノン、ジメチルマロネート、ジエチルマロネート、ジメチルスクシネート、ジ(プロピレングリコール)メチルエーテル、ジメチルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルラクテート、プロピレンカーボネート、ジメチルペルフルオロスベレート、ジメチルテトラフルオロスクシネート、テトラ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、トリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、ジ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化大豆油、ジエチルイソフタレート、シリコーンコポリオールをベースとするラウリン酸エステル、シリコーンコポリオールコポリマー、シリコーンコポリオールエステル、シリコーンコポリオールをベースとするイソステアリン酸エステル、シリコーンコポリオールをベースとするペラルゴン酸エステル、ジエチルイソフタレート、ジメチルオクトフルオロアジペート、およびこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1つの液体成分を含む。
【0014】
上記組成物の場合に、上で論じたように、ある種の用途に対して、および/またはある種の動作条件下で、本発明の光バルブと共に使用するために、該液状懸濁媒体は、上に示した液体の少なくとも1つに加えて、当業者には公知の「先行技術」の液状懸濁媒体を1または2以上含むことができる。しかし、このような「先行技術」の媒体成分も、上記の最低沸点および不混和性に関する要求を満たす必要がある。
本発明の方法は、更に、ポリマーマトリックスを架橋して、これを凝固させ、該架橋されたポリマーマトリックス中に分布した該液状光バルブ懸濁物の液滴を有するフィルムを生成する工程を含む。
【0015】
(発明の詳細な説明)
本発明は、以前には懸濁粒子デバイスでの使用が教示されていない幾つかの液剤の提供を目的とし、前記液剤は、単独でまたは相互に組合せて、SPDフィルム用の液滴の液状懸濁媒体として、またはそのような媒体の成分として使用することができる。該媒体の残部は、1または2以上の上述するような「先行技術」の液状懸濁媒体で構成されている。これらの新規な液体材料を、以下の表1に示す。液体のあるカテゴリー、例えば、ランベント(Lambent) MFF 159-100を挙げた場合(これに限定するものではないが)、これは、本発明が、液体で、かつ本明細書の各所に記載する最低沸点およびSPDフィルムのマトリックスポリマーとの不混和性に関する要件を満たす、前記カテゴリーのメンバーのみを含むものと理解すべきである。好ましくは、このマトリックス材料の屈折率は、表1に示す液体の屈折率の範囲内(即ち、25℃において約1.3384〜1.5339の範囲内)にあるべきである。
「ランベント」なる名称で表1に列挙する液体は、シリコーンコポリオールをベースとする脂肪酸エステル類、湿潤剤、およびジョージア州、ノルクロスのランベントテクノロジーズ(Lambent Technologies)社によって市販されており、例えばランベントテクノロジーズ社(ノルクロス部門)の、製品ガイドに記載されている、また以下の表1の脚注に示されている、シリコーンコポリオール類を含む。




























【0016】
【表1】







【0017】
上記のように、本発明の液状懸濁媒体は、更に(すなわち、上記表1に記載の少なくとも1つの液体に加えて)、先行技術のSPD光バルブ懸濁液に使用されるかまたは先行技術のSPD光バルブ懸濁液での使用が示唆され、かつ本明細書の各所に記載される最低沸点およびSPDフィルムのマトリックスポリマーとの不混和性に関する要件を満たしている1または2以上の液剤を含むことができる。
一般的に言えば、本発明において有用な該液体組成物は、非重合性液体または重合性液体のどちらであってもよい。
【0018】
従って、第一の態様において、本発明は、懸濁粒子デバイス(SPD)光バルブの光変調ユニットとして使用するのに適したフィルムを含む。このフィルムは、マトリックスポリマー材料を含み、液状懸濁媒体中に分散して該マトリックス内に分布している複数の粒子を含む液状光バルブ懸濁媒体の液滴を有する。該液状懸濁媒体は、(a)該マトリックスポリマー材料と実質的に不混和性であり、(b) 大気圧下で、約100℃よりも高い沸点を有し、(c)少なくとも約0.8×106Ω/□の電気抵抗率を有し、かつ(d) 25℃において、実質的に同一の温度での該マトリックスポリマーの屈折率とは約0.002以下だけ異なる屈折率を有する。前記懸濁媒体は、メチルピロリジノン、エチルピロリジノン、ジメチルマロネート、ジエチルマロネート、ジメチルスクシネート、ジ(プロピレングリコール)メチルエーテル、ジメチルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルラクテート、プロピレンカーボネート、ジメチルペルフルオロスベレート、ジメチルテトラフルオロスクシネート、テトラ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、トリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、ジ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化大豆油、ジエチルイソフタレート、シリコーンコポリオールをベースとするラウリン酸エステル、シリコーンコポリオールコポリマー、シリコーンコポリオールエステル、シリコーンコポリオールをベースとするイソステアリン酸エステル、シリコーンコポリオールをベースとするペラルゴン酸エステル、ジエチルイソフタレート、ジメチルオクトフルオロアジペート、およびこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1つの液体成分を含む。
【0019】
別の態様では、上で論じた通り、ある種の用途に対して、および/またはある種の動作条件下で、該液状光バルブ懸濁媒体は、更に、すなわち本発明の必須成分である上記液体の1または2以上に加えて、当業者には公知の「先行技術」の液状懸濁媒体の1または2以上を含むことができる。しかし、このような媒体も、上記の最低沸点および不混和性に関する要件を満たす必要がある。
更なる態様においては、マトリックスポリマー材料をフィルムの製造の際に架橋して、架橋されたポリマーマトリックスを生成する。
別の態様では、上述のようにフィルム内に組み込まれる液状懸濁媒体は、大気圧下で、約150℃よりも高い沸点を有する。更に別の態様では、該光バルブ懸濁媒体の沸点は、大気圧下で少なくとも約200℃である。
更に別の態様では、本発明の液状光バルブ懸濁物は、約250ミリ秒以下の減衰時間を有する。更なる態様において、該液状光バルブ懸濁液は、約100ミリ秒以下の減衰時間を有する。更なる態様において、該液状光バルブ懸濁液は、約50ミリ秒以下の減衰時間を有し、また更に別の態様では、該液状光バルブ懸濁液は、約20ミリ秒以下の減衰時間を有する。
別の態様では、該液状懸濁媒体は、25℃において、約1 cps〜約1807 cpsの粘度を有する。別の態様では、該液状懸濁媒体は、25℃において、約5.5 cps〜約66.5 cpsの粘度を有する。
本発明の更なる態様において、マトリックスポリマー材料は、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリオルガノシロキサン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセテート、酢酸セルロースおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
別の態様では、本発明は、光バルブの提供を目的とし、この光バルブは、間隔をあけて配置された一対のセル壁と、該セル壁の間の光変調エレメントとを含み、該光変調エレメントは上記フィルムの何れかを含む。
【0020】
更なる態様において、本発明は、輻射線の透過を調節するための電気光学デバイスの提供を目的とする。このデバイスは、対向するセル壁で形成されたセルと、該対向するセル壁の間に配置された光変調エレメントと、機能可能な状態で該セル壁と結合した対向する電極手段とを含む。該光変調エレメントは、ポリマーマトリックス材料を含むフィルムを含み、前記ポリマーマトリックス材料は、該ポリマーマトリックス内に分散している液状懸濁媒体の液滴を含む。該電極手段は、該懸濁液を横切って電場を印加するのに適したものである。該液状懸濁媒体は、(a)該マトリックスポリマー材料と実質的に不混和性であり、(b) 大気圧下で約100℃よりも高い沸点を有し、(c)少なくとも約0.8×106Ω/□の電気抵抗率を有し、かつ(d) 25℃において、実質的に同一の温度での該マトリックスポリマーの屈折率と約0.002以下だけ異なる屈折率を有する。該懸濁媒体は、メチルピロリジノン、エチルピロリジノン、ジメチルマロネート、ジエチルマロネート、ジメチルスクシネート、ジ(プロピレングリコール)メチルエーテル、ジメチルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルラクテート、プロピレンカーボネート、ジメチルペルフルオロスベレート、ジメチルテトラフルオロスクシネート、テトラ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、トリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、ジ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化大豆油、ジエチルイソフタレート、シリコーンコポリオールをベースとするラウリン酸エステル、シリコーンコポリオールコポリマー、シリコーンコポリオールエステル、シリコーンコポリオールをベースとするイソステアリン酸エステル、シリコーンコポリオールをベースとするペラルゴン酸エステル、ジエチルイソフタレート、ジメチルオクトフルオロアジペートおよびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの液体成分を含む。場合によっては、上記のように、該懸濁媒体は、更に少なくとも1つの「先行技術」の液状懸濁媒体、即ち上記特許の一つに記載されているような懸濁媒体を含むこともできる。
【0021】
上記電気光学デバイスの更なる態様において、該マトリックスポリマー材料は、該フィルムを成形するに際して架橋されて、架橋マトリックスポリマーを生成する。
他の態様では、該液状光バルブ懸濁媒体の沸点は、大気圧下で少なくとも約150℃である。より好ましい態様において、該液状光バルブ懸濁媒体の沸点は、大気圧下で少なくとも約200℃である。
更なる態様において、該電気光学デバイスの該液状懸濁媒体は、25℃において、該マトリックスポリマー材料の屈折率と約0.001単位以下だけ異なる屈折率を有する。他の態様では、液状懸濁媒体は、少なくとも約5×106Ω/□の電気抵抗率を有する。更に別の態様において、液状懸濁媒体は、25℃において、約1cps〜約1807cpsの粘度を有する。より好ましい態様において、該液状懸濁媒体は、25℃において、約5.5cps〜約66.5cpsの粘度を有する。
更に他の態様において、本発明は、電気光学デバイスの提供を意図しており、ここで該マトリックスポリマーは、アクリルオキシプロピルジメトキシメチルシランと、次のa)〜e)のうちの少なくとも1つとを含む:a) ジシラノール末端を有するポリ(ジメチルシロキサン);b) ジシラノール末端を有するポリ(ジフェニルジメチルシロキサン);c) ジシラノール末端を有するポリ(ジフェニルシロキサン);d) ジアルコキシ末端を有するジフェニルシラン;およびe) メチルフェニルジメトキシシラン。
本発明の更に別の態様において、該電気光学デバイス内の該マトリックスポリマーは、メタクリルオキシプロピルジメトキシメチルシランと、次のa)〜e)のうちの少なくとも1つとを含む:a) ジシラノール末端を有するポリ(ジメチルシロキサン);b) ジシラノール末端を有するポリ(ジフェニルジメチルシロキサン);c) ジシラノール末端を有するポリ(ジフェニルシロキサン);d) ジアルコキシ末端を有するジフェニルシラン;およびe) メチルフェニルジメトキシシラン。
【0022】
他の態様において、本発明は、更に懸濁粒子デバイス光バルブの光変調ユニットとして使用するのに適したフィルムの製造方法の提供を目的とする。この方法は、マトリックスポリマー材料を調製する工程を含む。この方法は、更に、該マトリックスポリマー材料の少なくとも一部と液状光バルブ懸濁液との組合せからエマルションを生成する工程を含み、該液状光バルブ懸濁液は、液状懸濁媒体中に懸濁された複数の粒子を含み、該液状懸濁媒体は、(a)該マトリックスポリマー材料とは実質的に不混和性であり、(b) 大気圧下で約100℃よりも高い沸点を有し、(c)少なくとも約0.8×106Ω/□の電気抵抗率を有し、かつ(d) 25℃において、実質的に同一の温度での該マトリックスポリマーの屈折率と約0.002以下だけ異なる屈折率を有する。該懸濁媒体はメチルピロリジノン、エチルピロリジノン、ジメチルマロネート、ジエチルマロネート、ジメチルスクシネート、ジ(プロピレングリコール)メチルエーテル、ジメチルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルラクテート、プロピレンカーボネート、ジメチルペルフルオロスベレート、ジメチルテトラフルオロスクシネート、テトラ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、トリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、ジ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化大豆油、ジエチルイソフタレート、シリコーンコポリオールをベースとするラウリン酸エステル、シリコーンコポリオールコポリマー、シリコーンコポリオールエステル、シリコーンコポリオールをベースとするイソステアリン酸エステル、シリコーンコポリオールをベースとするペラルゴン酸エステル、ジエチルイソフタレート、ジメチルオクトフルオロアジペートおよびこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1つの液体成分を含む。上記のように、所望によって、該懸濁媒体は、更に1または2以上の公知の、即ち「先行技術」の液状懸濁媒体を含むこともできる。該ポリマーマトリックスを架橋してマトリックスポリマーを凝固させ、架橋ポリマーマトリックス内に分布した液状光バルブ懸濁液の液滴を有するフィルムを製造する。
【0023】
本発明の方法の更なる態様において、該マトリックスポリマーエマルションを充分な量の熱または放射線に、該エマルションを少なくとも実質的にフィルムに変換するのに充分な時間暴露することによって、該ポリマーマトリックスを架橋する。このような硬化のために放射線を用いた場合、有用な種類の放射線の例は、電子ビーム線および紫外線を含むが、これらに限定されない。あるいはまた、上で述べたように、該ポリマーマトリックスは、熱に暴露することによって硬化することができる。該ポリマーマトリックスの、夫々このような熱または放射線による架橋を容易にするために、場合により、該エマルションに触媒または光開始剤を添加することができる。
適度な量の懸濁ポリマーのみを使用し、かつ最大寸法が平均して約0.3μmのコロイド状粒子を含む液状懸濁物に関して、迅速な減衰時間、即ち250ミリ秒またはそれ以下の減衰時間を達成するためには、一般的に、25℃において66.5cps以下の粘度を有する液状懸濁媒体(単一の液体または2以上の液体の混合物の何れかを含み得る)を使用する必要があることが確認されている。100ミリ秒以下の減衰時間を達成するためには、該液状懸濁媒体は27cps以下の粘度を有するべきである。極めて迅速な減衰時間、即ち25℃において50ミリ秒以下の減衰時間を達成するためには、該液状懸濁媒体は13.5cpsの粘度を有するべきである。20ミリ秒以下の減衰時間を達成するためには、該液状懸濁媒体は約5.5cpsの粘度を有するべきである。しかし、より小さな粒子、例えば平均約0.2μmの最大寸法を有する粒子を含む懸濁液については、より粘稠な液状懸濁媒体が、同等に上記の減衰時間を達成する。というのは、このようなより小さな粒子が、運動する液体分子との衝突によって、即ちブラウン運動として知られる現象を介して、より大きな影響を受けるからである。
【0024】
更に、上記態様に加えて、多数かつ多様なマトリックスポリマーが、SPDフィルムにおける使用について先行技術に記載されている。例えば、以下のものに限定されないが、米国特許第5,463,491号は、架橋されたポリブタジエン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタンおよびポリオルガノシロキサンを開示している。米国特許第5,409,734号は、架橋してないポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセテートおよび酢酸セルロースを、可能なポリマーマトリックスとして開示している。
本発明に従ってSPDデバイスを製造する上で特に有用なポリオルガノシロキサン型マトリックスの2つの具体的例を以下に与えるが、これだけに限られない。その一つのマトリックスポリマーは、質量基準で、(1)ジシラノール末端を有するポリ(ジメチルシロキサン) 14.3%、(2)ジシラノール末端を有するポリ(ジフェニルジメチルシロキサン) 77.5%(このうち、14〜18質量%はジフェニルシロキサンであり、残部はジメチルシロキサンである)、および(3) 3-アクリルオキシプロピルジメトキシメチルシラン 8.2%を含む、縮合コポリマーである。他のマトリックスポリマーは、同一のモノマーを同一のパーセンテージで含むが、低い粘度を有する縮合コポリマーである。
有用なマトリックスポリマーの中で、極性および溶解度における大きな相違のために、本発明の液状懸濁媒体の製造で使用する該液体の何れも、場合に応じて、特定のマトリックスポリマーと混和性であっても、また不混和性であっても良い。しかし、本発明は、不混和性である液体およびポリマーマトリックスのみを含む。このような不混和性は、如何なる過度の実験をも行うことなしに、極めて容易に、当業者が経験的に決定することができる。
【0025】
例えばある種の型のフラットパネルディスプレイおよびアイウエア(これらに限定されない)などのある種の用途に対して、SPDフィルムが、迅速なまたは極めて迅速な減衰時間を有することが望まれる場合がある。迅速なまたは極めて迅速な減衰時間を達成するためには、該液状懸濁物は、比較的低い粘度を有するべきである。液状懸濁物の粘度は、主として、(a) 該懸濁物の液状懸濁媒体の粘度と、(b) その液状懸濁媒体中に溶解して懸濁粒子を分散させるポリマーの種類および量との関数である。この減衰時間は、また該懸濁粒子サイズの関数でもある。約0.3μm以下の平均の最大寸法を有する粒子を含有する懸濁液に関連して、本明細書において上記したように、迅速な減衰時間または極めて迅速な減衰時間は、一般に、25℃において液状懸濁媒体の粘度が約5.5〜66.5cpsの範囲にある場合に達成できる。上記表1に掲載した液体の相当数は、単独でか、または同一グループから選択される他の液体および/または先行技術の液状懸濁処方物から選択される他の液体との組合せで、この基準を満足している。
本明細書に引用する全ての特許およびその他参考文献は、参照により、本発明を完全に理解するのに必要とされる程度まで、本件出願に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸濁粒子デバイス(SPD)光バルブの光変調ユニットとして使用するのに適するフィルムであって、
前記フィルムは、マトリックスポリマー材料を含み、かつ前記マトリックス内に分布する液状懸濁媒体中に分散している複数の粒子を含む液状光バルブ懸濁物の液滴を有し、
前記液状懸濁媒体は、
(a)前記マトリックスポリマー材料とは実質的に不混和性であり;
(b) 大気圧下で約100℃よりも高い沸点を有し;
(c)少なくとも約0.8×106Ω/□の電気抵抗率を有し;かつ
(d) 25℃において、実質的に同一の温度での前記マトリックスポリマーの屈折率と約0.002以下だけ異なる屈折率を有し;
また前記液状懸濁媒体は、メチルピロリジノン、エチルピロリジノン、ジメチルマロネート、ジエチルマロネート、ジメチルスクシネート、ジ(プロピレングリコール)メチルエーテル、ジメチルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルラクテート、プロピレンカーボネート、ジメチルペルフルオロスベレート、ジメチルテトラフルオロスクシネート、テトラ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、トリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、ジ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化大豆油、ジエチルイソフタレート、シリコーンコポリオールをベースとするラウリン酸エステル、シリコーンコポリオールコポリマー、シリコーンコポリオールエステル、シリコーンコポリオールをベースとするイソステアリン酸エステル、シリコーンコポリオールをベースとするペラルゴン酸エステル、ジエチルイソフタレート、ジメチルオクトフルオロアジペートおよびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの液体成分を含むことを特徴とする、前記フィルム。
【請求項2】
マトリックスポリマー材料が、フィルムを形成するに際して架橋されて、架橋ポリマーマトリックスを生成する、請求項1記載のフィルム。
【請求項3】
懸濁粒子デバイス(SPD)光バルブの光変調ユニットとして使用するのに適するフィルムであって、
前記フィルムは、フィルムを形成するに際して架橋されて架橋ポリマーマトリックスを生成するマトリックスポリマー材料を含み、かつ前記架橋マトリックス内に分布する液状懸濁媒体中に分散している複数の粒子を含む液状光バルブ懸濁物の液滴を有し、
前記液状懸濁媒体は、
(a)前記マトリックスポリマー材料とは実質的に不混和性であり;
(b) 大気圧下で約100℃よりも高い沸点を有し;
(c)少なくとも約0.8×106Ω/□の電気抵抗率を有し;かつ
(d) 25℃において、実質的に同一の温度での前記マトリックスポリマーの屈折率と約0.002以下だけ異なる屈折率を有し;
また前記液状懸濁媒体は、メチルピロリジノン、エチルピロリジノン、ジメチルマロネート、ジエチルマロネート、ジメチルスクシネート、ジ(プロピレングリコール)メチルエーテル、ジメチルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルラクテート、プロピレンカーボネート、ジメチルペルフルオロスベレート、ジメチルテトラフルオロスクシネート、テトラ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、トリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、ジ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化大豆油、ジエチルイソフタレート、シリコーンコポリオールをベースとするラウリン酸エステル、シリコーンコポリオールコポリマー、シリコーンコポリオールエステル、シリコーンコポリオールをベースとするイソステアリン酸エステル、シリコーンコポリオールをベースとするペラルゴン酸エステル、ジエチルイソフタレート、ジメチルオクトフルオロアジペートおよびこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの液体成分を含む、前記フィルム。
【請求項4】
液状懸濁媒体が、大気圧下で約150℃よりも高い沸点を有する、請求項1または3記載のフィルム。
【請求項5】
液状懸濁媒体の沸点が、大気圧下で少なくとも約200℃である、請求項4記載のフィルム。
【請求項6】
液状光バルブ懸濁物が約250ミリ秒未満の減衰時間を有する、請求項1または3記載のフィルム。
【請求項7】
液状光バルブ懸濁物が約100ミリ秒未満の減衰時間を有する、請求項6記載のフィルム。
【請求項8】
液状懸濁媒体が、25℃において約1 cps〜約1807 cpsの粘度を有する、請求項1または3記載のフィルム。
【請求項9】
液状懸濁媒体が、25℃において約5.5 cps〜約66.5 cpsの粘度を有する、請求項8記載のフィルム。
【請求項10】
マトリックスポリマー材料が、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリオルガノシロキサン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセテート、酢酸セルロースおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1または3記載のフィルム。
【請求項11】
間隔をあけて配置された一対の対向するセル壁と、前記セル壁の間の光変調エレメントを含む光バルブであって、
前記光変調エレメントが請求項1または3記載のフィルムを含む、前記光バルブ。
【請求項12】
輻射線の透過を調節するための電気光学デバイスであって、
該デバイスは、対向するセル壁で形成されたセルと、前記対向するセル壁の間の光変調エレメントと、機能可能な状態で前記セル壁と結合した対向する電極手段とを含み、 前記光変調エレメントは、フィルムを含み、
前記フィルムは、マトリックスポリマー材料を含み、かつ前記ポリマーマトリックス内に分布する液状懸濁媒体中に分散している複数の粒子を含む液状光バルブ懸濁物の液滴を有し、
前記電極手段は、前記懸濁物を横切って電場を印加するのに適したものであり、
前記液状懸濁媒体は、
(a)前記マトリックスポリマー材料とは実質的に不混和性であり;
(b) 大気圧下で約100℃よりも高い沸点を有し;
(c)少なくとも約0.8×106Ω/□の電気抵抗率を有し;かつ
(d) 25℃において、実質的に同一の温度での前記マトリックスポリマーの屈折率と約0.002以下だけ異なる屈折率を有し;
また前記液状懸濁媒体は、メチルピロリジノン、エチルピロリジノン、ジメチルマロネート、ジエチルマロネート、ジメチルスクシネート、ジ(プロピレングリコール)メチルエーテル、ジメチルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルラクテート、プロピレンカーボネート、ジメチルペルフルオロスベレート、ジメチルテトラフルオロスクシネート、テトラ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、トリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、ジ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化大豆油、ジエチルイソフタレート、シリコーンコポリオールをベースとするラウリン酸エステル、シリコーンコポリオールコポリマー、シリコーンコポリオールエステル、シリコーンコポリオールをベースとするイソステアリン酸エステル、シリコーンコポリオールをベースとするペラルゴン酸エステル、ジエチルイソフタレート、ジメチルオクトフルオロアジペートおよびこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの液体成分を含む、前記電気光学デバイス。
【請求項13】
マトリックスポリマー材料が、フィルムを成形するに際して架橋されて、架橋ポリマーマトリックスを生成する、請求項12記載の電気光学デバイス。
【請求項14】
液状懸濁媒体の沸点が、大気圧下で少なくとも約150℃である、請求項12記載の電気光学デバイス。
【請求項15】
液状懸濁媒体の沸点が、大気圧下で少なくとも約200℃である、請求項14記載の電気光学デバイス。
【請求項16】
液状懸濁媒体が、25℃において、マトリックスポリマー材料の屈折率とは約0.001単位以下だけ異なっている屈折率を有する、請求項12記載の電気光学デバイス。
【請求項17】
液状懸濁媒体が、少なくとも約5×106Ω/□の電気抵抗率を有する、請求項12記載の電気光学デバイス。
【請求項18】
液状懸濁媒体が、25℃において、約1 cps〜約1807 cpsの粘度を有する、請求項12記載の電気光学デバイス。
【請求項19】
液状懸濁媒体が、25℃において、約5.5 cps〜約66.5 cpsの粘度を有する、請求項18記載の電気光学デバイス。
【請求項20】
マトリックスポリマーが、アクリルオキシプロピルジメトキシメチルシランと、以下のa)〜e)のうちの少なくとも1つとを含む、請求項12記載の電気光学デバイス:
a) ジシラノール末端を有するポリ(ジメチルシロキサン);
b) ジシラノール末端を有するポリ(ジフェニルジメチルシロキサン);
c) ジシラノール末端を有するポリ(ジフェニルシロキサン);
d) ジアルコキシ末端を有するジフェニルシラン;および
e) メチルフェニルジメトキシシラン。
【請求項21】
マトリックスポリマーが、メタクリルオキシプロピルジメトキシメチルシランと、以下のa)〜e)のうちの少なくとも1つとを含む、請求項12記載の電気光学デバイス:
a) ジシラノール末端を有するポリ(ジメチルシロキサン);
b) ジシラノール末端を有するポリ(ジフェニルジメチルシロキサン);
c) ジシラノール末端を有するポリ(ジフェニルシロキサン);
d) ジアルコキシ末端を有するジフェニルシラン;および
e) メチルフェニルジメトキシシラン。
【請求項22】
懸濁粒子デバイス(SPD)光バルブの光変調ユニットとして使用するのに適するフィルムの製造方法であって、
マトリックスポリマー材料を調製する工程;
前記マトリックスポリマー材料の少なくとも一部と液状光バルブ懸濁物との組合せからエマルションを生成する工程、ここで
前記液状光バルブ懸濁物は、液状懸濁媒体中に懸濁されている複数の粒子を含み、
前記液状懸濁媒体は、(a)前記マトリックスポリマー材料とは実質的に不混和性であり、(b) 大気圧下で約100℃より高い沸点を有し、(c)少なくとも約0.8×106Ω/□の電気抵抗率を有し、かつ(d) 25℃において、実質的に同一温度での前記マトリックスポリマーの屈折率と約0.002以下だけ異なる屈折率を有し、また前記液状懸濁媒体は、メチルピロリジノン、エチルピロリジノン、ジメチルマロネート、ジエチルマロネート、ジメチルスクシネート、ジ(プロピレングリコール)メチルエーテル、ジメチルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルラクテート、プロピレンカーボネート、ジメチルペルフルオロスベレート、ジメチルテトラフルオロスクシネート、テトラ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、トリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、ジ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化大豆油、ジエチルイソフタレート、シリコーンコポリオールをベースとするラウリン酸エステル、シリコーンコポリオールコポリマー、シリコーンコポリオールエステル、シリコーンコポリオールをベースとするイソステアリン酸エステル、シリコーンコポリオールをベースとするペラルゴン酸エステル、ジエチルイソフタレート、ジメチルオクトフルオロアジペートおよびこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1つの液体成分を含み;ならびに
前記ポリマーマトリックスを架橋して、前記マトリックスポリマーを凝固させ、架橋ポリマーマトリックス中に分布する前記液状光バルブ懸濁物の液滴を有するフィルムを生成する工程;
を含む前記方法。
【請求項23】
ポリマーマトリックスが、マトリックスポリマーのエマルションを、少なくとも実質的に前記エマルションをフィルムに変換するのに充分な時間、充分な量の熱または放射線に暴露することによって架橋される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
放射線が、電子ビーム線または紫外線である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
ポリマーマトリックスが熱への暴露によって架橋される請求項22記載の方法であって、更に、エマルションに触媒または光開始剤を添加して、前記ポリマーマトリックスの架橋を容易にすることを含む前記方法。

【公表番号】特表2006−523764(P2006−523764A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509949(P2006−509949)
【出願日】平成16年4月13日(2004.4.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/011278
【国際公開番号】WO2004/092807
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(591215041)リサーチ フロンティアーズ インコーポレイテッド (14)
【Fターム(参考)】