説明

新規癌抗原に対する抗体

がん細胞に高発現しているDHCR24を検出することにより、高精度ながんの診断が可能である。また、DHCR24を認識する抗体は、簡便かつ高精度ながんの診断や治療に有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、DHCR24を認識する抗体に関する。さらに、本発明はDHCR24を検出することを含むがんの診断方法に関する。
【背景技術】
C型肝炎ウイルス(HCV)は輸血後の非A非B肝炎の主な原因ウイルスであり、このウイルスに起因する肝炎は慢性化率が高い。このウイルスのcDNAは、1989年にChooらによりクローニングされ(Choo,Q.L.et al.,Science,244,359−362,1989)、フラビウイルス科に属する1本鎖RNAウイルスであることが知られている(Kato,N.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87,9524−9528,1990)。又、幾つかのグループにより全塩基配列およびアミノ酸配列の解明がなされている。
本発明者らは、以前にHCVの完全長遺伝子を発現するベクターを作製している(WO99/67394号)。
C型肝炎の治療手段の発見が急がれているが、その理由の1つとして、C型肝炎から肝癌・肝硬変に移行する確立が高いことが挙げられる。特にC型肝炎から移行する肝癌については、早急な治療手段の確立が必要とされている。
近年、効率的にがん細胞を攻撃するターゲットとしてがん抗原タンパク質が注目されている。がん抗原タンパク質はがん細胞に存在し、正常細胞にはほとんど発現していない抗原の総称であり、がん抗原タンパク質としては、CEA(J.Natl.Cancer.Inst.,87:982,1995)、gp100(J.Exp.Med.,179:1005,1994)、MART−1(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:3515,1994)、チロシナーゼ(J.Exp.Med.,178:489,1993)、HER2(J.Exp.Med.,181:2109,1995)、PSA(J.Natl.Cancer.Inst.,89:293,1997)などが知られている。
がん細胞で特異的に高発現しているがん抗原タンパク質のようなタンパク質は、腫瘍マーカーとしてがんの診断に用いられており、又、がん抗原タンパク質を特異的に認識する抗体を用いた抗がん剤のように、がん治療薬のターゲットにもなり得る。例えば、乳がん細胞で高発現しているHER2を特異的に認識するヒト化抗HER2モノクローナル抗体が、乳がん治療剤として用いられている(WO89/06692号)。このようにがん細胞で特に高発現しているタンパク質および該タンパク質に結合する抗体は、がんの診断・治療などに特に有用であると考えられている。
【発明の開示】
本発明は、簡便かつ高精度ながんの診断を可能にする抗体を提供することを目的とする。また、本発明は、がん細胞に特異的に発現する抗原を検出することによるがんの診断方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、まず、HCVタンパク質をコードする遺伝子を導入した細胞を免疫原としてマウスを免疫し、抗体を取得した。その後、得られた抗体の中から、肝癌細胞を特異的に認識する抗体を選択した。その後の解析により、該抗体はDHCR24を認識する抗体であることが判明した。さらに本発明者らは、DHCR24が、正常細胞や肝癌患者の非癌部と比較して、肝癌患者の癌部及び肝癌細胞株において高発現していることを見出した。DHCR24はHCV陽性の肝癌患者において特に高発現していると推測された。
従って、がん細胞に高発現しているDHCR24を検出することにより、高精度ながんの診断が可能であることを見出した。また、DHCR24を認識する抗体は、がんの診断や治療に有効であることを見出した。本発明はこれらの知見に基づき完成したものである。
すなわち、本発明はDHCR24を認識する抗体を提供するものである。
また、本発明はDHCR24を特異的に認識する抗体を提供するものである。
さらに、本発明は、がんを診断することができる、DHRC24を認識する抗体を提供する。
さらに、本発明は、C型肝炎ウイルスタンパク質をコードする遺伝子を細胞に導入し、該細胞で動物を免疫する、ことを含む抗体作製方法により得ることのできるDHCR24を認識する抗体を提供する。
さらに、本発明は、肝がん細胞で動物を免役することを含む抗体作製方法により得ることのできるDHCR24を認識する抗体を提供する。
また、本発明は上記抗体を含む、がんの診断薬を提供するものである。
さらに、本発明は、上記抗体及び医薬的に許容可能な担体を含む、抗がん剤を提供するものである。
さらに、本発明はDHCR24を検出することを含むがんの診断方法を提供する。
さらに、本発明は、上記抗体を生細胞又は細胞溶解物と反応させることを含む、がんを診断するためのDHCR24の検出方法を提供する。
さらに、本発明は、上記抗体を投与することを含む、がんの治療方法を提供するものである。
さらに、本発明は、抗DHCR24抗体を用いて、DHCR24を発現しているがん細胞を死滅させる方法、該がん細胞に細胞障害を引き起こす方法、該がん細胞の増殖を抑制する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
図1Aは、Cre/loxPシステムを用いたHCVタンパク質発現系の概略を示す図である。
図1Bは、図1Aに示すHCVタンパク質発現系を組み込んだ細胞株におけるHCVタンパク質の発現を示す図である。
図2は、Rz−HepM2−18−6 48d細胞に対するモノクローナル抗体を作出し、生細胞ELISA系を用いてスクリーニングした結果を示す図である。
図3は、モノクローナル抗体クローン2−152、2−243及び2−433を用いて、各種細胞株における抗体認識抗原分子の発現を解析した結果を示す図である。
図4は、肝癌患者の癌部と非癌部の組織における認識抗原の発現量をウエスタンブロットで解析した結果を示す図である。
図5は、モノクローナル抗体クローン2−152を用いてP55の細胞内局在を蛍光抗体法により解析した結果を示す図である。
図6は、(A)HCR6−Rz遺伝子をWRL68及びHepG2細胞にトランスフェクションした場合、並びに(B)Rz−HepM2−18−6細胞でHCVを発現させた場合(M6 Tm+)及び同細胞でHCVを発現・継代した場合(M6−48d)のP55の発現について解析した結果である。
図7は、(A)HepG2細胞にHCV遺伝子をトランスフェエクションし、2−152、抗HCV−core(ウサギRR8血清)で2重染色した図である。(B)HepG2細胞にCAGコントロールプラスミドをトランスフェクションし、同様に多重染色した図である。(C)WRL68細胞にHCV遺伝子をトランスフェクションし、2−152、抗HCV−core(ウサギRR8血清)で2重染色した図である。(D)WRL68細胞にCAGコントロールプラスミドをトランスフェクションし、同様に多重染色した図である。
図8は、Rz−HepM2−18−6細胞でHCVを発現させ、2−152、抗core抗体で2重染色した図である(発現4日後)。
図9は、Rz−HepM2−18−6細胞でHCVを発現・継代(48日以上)し、2−152、抗core抗体で2重染色した図である。
図10は、モノクロナール抗体クローン2−152を用いてDHCR24を認識した結果を示す図である。(A)pGEM−T−DHCR24(Exp.1)の試験管内翻訳、(B)pGEM−T−DHCR24の試験管内翻訳タンパク質と2−152の反応(ウェスタンブロッティング)、(C)pCAG−DHCR24(Exp.2)をWRL68細胞にトランスフェクション後、2−152と反応(ウェスタンブロッティング)を示す。
図11は、細胞株WRL68、HepG2またはHuH−7に対する、モノクローナル抗体2−152または正常マウスIgGのCDC活性を表したグラフである。
図12は、HCV感染HCC患者の肝臓の癌部組織(A)または非癌部組織(B)を免疫染色した顕微鏡写真(600倍)である。左図は、それぞれモノクローナル抗体2−152染色、TO−PRO−3染色、これらの2重染色(Merge)、および正常IgG(Normal)染色を表す。右図は、細胞の形態を観察するためにHE染色した顕微鏡写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
DHCR24は、正常肝細胞では細胞膜上にはほとんど発現していないと考えられるが、肝細胞のがん化に伴い、その分布が崩れ、細胞膜上に発現すると考えられる。このことは、抗DHCR24抗体が、肝癌細胞へは容易に到達することが可能であるが、正常肝細胞へは到達が困難であることを示している。したがって、抗DHCR24抗体はがんの診断・治療に有用であると考えられる。
本発明のDHCR24を認識する抗体は、DHCRへの結合能を有していれば、いかなる抗体でもよく、由来や形状などで限定されない。なお、DHCRへの結合能は、DHCRに特異的に結合することが好ましい。
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよいが、治療や診断に用いる場合には、モノクローナル抗体であることが好ましい。
また、本発明の抗体はマウス抗体、ヒト抗体、ラット抗体、ウサギ抗体、ヤギ抗体、ラクダ抗体など、どのような動物由来の抗体でもよい。
さらに、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体などのアミノ酸配列を置換した改変抗体でもよいし、又、各種分子を結合させた抗体修飾物、抗体断片、低分子化抗体、糖鎖改変抗体など、いかなる抗体でもよい。
1. 抗DHCR24抗体
本発明で使用される抗DHCR24抗体は、公知の手段を用いてポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体として得ることができる。本発明の抗DHCR24抗体として、特に哺乳動物由来のモノクローナル抗体が好ましい。哺乳動物由来のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマに産生されるもの、および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主に産生されるもの、などを含む。
このような抗体は、例えば、以下のような当業者に公知の方法によって得ることが可能である。
2. 抗体産生ハイブリドーマ
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、例えば以下のようにして作製できる。すなわち、DHCR24タンパク質又はDHCR24発現細胞(例えば、HCVタンパク質をコードする遺伝子を導入した肝細胞、肝癌細胞、など)を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
具体的には、モノクローナル抗体を作製するには次のようにすればよい。
まず、抗体取得の感作抗原として使用されるDHCR24タンパク質を、GenBank:NM_014762に開示されたDHCR24遺伝子/アミノ酸配列を発現させることによって得る(又はAm.J.Hum.Genet.69(4),685−694(2001);J.Neurosci.20(19),7345−7352(2000)に記載の配列)。すなわち、DHCR24をコードする遺伝子配列を公知の発現ベクター系に挿入して適当な宿主細胞を形質転換させた後、その宿主細胞中または培養上清中から目的のヒトDHCR24タンパク質を公知の方法で精製する。
次に、この精製DHCR24タンパク質を感作抗原として用いる。あるいは、DHCR24の部分ペプチドを感作抗原として使用することもできる。この際、部分ペプチドはヒトDHCR24のアミノ酸配列より化学合成により得ることも可能である。
本発明の抗DHCR24抗体の認識するDHCR24分子上のエピトープは特定のものに限定されず、DHCR24分子上に存在するエピトープならばどのエピトープを認識してもよい。従って、本発明の抗DHCR24抗体を作製するための抗原は、DHCR24分子上に存在するエピトープを含む断片ならば、如何なる断片も用いることが可能である。
感作抗原で免疫される哺乳動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的にはげっ歯類の動物、例えば、マウス、ラット、ハムスター、あるいはウサギ、サル等が使用される。
感作抗原を動物に免疫するには、公知の方法にしたがって行われる。例えば、一般的方法として、感作抗原を哺乳動物の腹腔内または皮下に注射することにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS(Phosphate−Buffered Saline)や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものに所望により通常のアジュバント、例えばフロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に4〜21日毎に数回投与する。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することもできる。
このように哺乳動物を免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞を採取し、細胞融合に付されるが、好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。
前記免疫細胞と融合される他方の親細胞として、哺乳動物のミエローマ細胞を用いる。このミエローマ細胞は、公知の種々の細胞株、例えば、P3(P3x63Ag8.653)(J.Immnol.123,1548−1550,1979)、P3x63Ag8U.1(Current Topics in Microbiology and Immunology,81,1−7,1978)、NS−1(Kohler.G.and Milstein,C.Eur.J.Immunol.,6,511−519,1976)、MPC−11(Margulies.D.H.et al.,Cell,8,405−415,1976)、SP2/0(Shulman,M.et al.,Nature,276,269−270,1978)、FO(deSt.Groth,S.F.et al.,J.Immunol.Methods,35,1−21,1980)、S194(Trowbridge,I,S.J,Exp.Med.,148,313−323,1978)、R210(Galfre,G.et al.,Nature,277,131−133,1979)等が好適である。
前記免疫細胞とミエローマ細胞との細胞融合は、基本的には公知の方法、たとえば、ケーラーとミルステインらの方法(Kohler.G.and Milstein,C.、Methods Enzymol.,73,3−46,1981)等に準じて行うことができる。
より具体的には、前記細胞融合は、例えば細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては、例えばポリエチレングリコール(PEG)、センダイウイルス(HVJ)等が使用され、更に所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加使用することもできる。
免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は任意に設定することができる。例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1〜10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI 1640培養液、MEM培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め37℃程度に加温したPEG溶液(例えば平均分子量1,000〜6,000程度)を通常30〜60%(w/v)の濃度で添加し、混合することによって目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)を形成する。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去する。
このようにして得られたハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えばHAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。上記HAT培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間(通常、数日〜数週間)継続する。ついで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングおよび単一クローニングを行う。
また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイブリドーマを得る他に、ヒトリンパ球をin vitroでDHCR24に感作し、感作リンパ球をヒト由来の永久分裂能を有するミエローマ細胞と融合させ、DHCR24への結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公平1−59878号公報参照)。さらに、ヒト抗体遺伝子の全てのレパートリーを有するトランスジェニック動物に抗原となるDHCR24を投与して抗DHCR24抗体産生細胞を取得し、これを不死化させた細胞からDHCR24に対するヒト抗体を取得してもよい(WO94/25585号公報、WO93/12227号公報、WO92/03918号公報、WO94/02602号公報参照)。
このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。
当該ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、当該ハイブリドーマを通常の方法にしたがい培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に投与して増殖させ、その腹水として得る方法などが採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。
3. 組換え型抗体
本発明では、モノクローナル抗体として、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型のものを用いることができる(例えば、Vandamme,A.M.et al.,Eur.J.Biochem.,192,767−775,1990参照)。
具体的には、抗DHCR24抗体を産生するハイブリドーマから、抗DHCR24抗体の可変(V)領域をコードするmRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin,J,M.et al.,Biochemistry,18,5294−5299,1979)、AGPC法(Chomczynski,P.et al.,Anal.Biochem.,162,156−159,1987)等により行って全RNAを調製し、mRNA Purification Kit(Pharmacia製)等を使用して目的のmRNAを調製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit(Pharmacia製)を用いることによりmRNAを直接調製することもできる。
得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体V領域のcDNAを合成する。
DNAの合成は、AMV Reverse Transcriptase First−strand cDNA Synthesis Kit(生化学工業社製)等を用いて行う。また、cDNAの合成および増幅を行うには、5’−Ampli FINDER RACE Kit(Clontech製)およびPCRを用いた5’−RACE法(Frohman,M.A.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85,8998−9002,1988;Belyavsky,A.et al.,Nucleic Acids Res.,17,2919−2932,1989)等を使用することができる。
得られたPCR産物から目的とするDNA断片を精製し、ベクターDNAと連結する。さらに、これより組換えベクターを作製し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。そして、目的とするDNAの塩基配列を公知の方法、例えば、ジデオキシヌクレオチドチェインターミネーション法等により確認する。
目的とする抗DHCR24抗体のV領域をコードするDNAを得たのち、これを、所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAを含有する発現ベクターへ組み込む。
本発明で使用される抗DHCR24抗体を製造するには、通常、抗体遺伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより、宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させる。
抗体遺伝子の発現は、抗体重鎖(H鎖)または軽鎖(L鎖)をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を同時形質転換させてもよいし、あるいはH鎖およびL鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換させてもよい(WO94/11523号公報参照)。
また、組換え型抗体の産生には上記宿主細胞だけではなく、トランスジェニック動物を使用することができる。例えば、抗体遺伝子を、乳汁中に固有に産生されるタンパク質(ヤギβカゼインなど)をコードする遺伝子の途中に挿入して融合遺伝子として調製する。抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギまたはその子孫が産生する乳汁から所望の抗体を得る。また、トランスジェニックヤギから産生される所望の抗体を含む乳汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい(Ebert,K.M.et al.,Bio/Technology,12,699−702,1994)。
4. 改変抗体
本発明の抗体には、上記抗体のほかに、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した改変抗体、例えば、キメラ抗体、ヒト化(Humanized)抗体などを含む。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
キメラ抗体は、前記のようにして得た抗体V領域をコードするDNAをヒト抗体C領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる。この既知の方法を用いて、キメラ抗体を得ることができる。
ヒト化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、これは、ヒト以外の哺乳動物、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR;complementarity determining region)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている(EP125023号公報、WO96/02576号公報参照)。
具体的には、マウス抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(framework region;FR)とを連結するように設計したDNA配列を、CDR及びFR両方の末端領域にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いてPCR法により合成する(WO98/13388号公報に記載の方法を参照)。
CDRを介して連結されるヒト抗体のフレームワーク領域は、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように、抗体の可変領域におけるフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato,K.et al.,Cancer Res.,53,851−856,1993)。
キメラ抗体及びヒト型化抗体のC領域には、ヒト抗体のものが使用され、例えばH鎖では、Cγ1、Cγ2、Cγ3、Cγ4を、L鎖ではCκ、Cλを使用することができる。また、抗体またはその産生の安定性を改善するために、ヒト抗体C領域を修飾してもよい。
一般的に、キメラ抗体は、ヒト以外の哺乳動物由来抗体の可変領域とヒト抗体由来の定常領域とからなる。一方、ヒト化抗体は、ヒト以外の哺乳動物由来抗体の相補性決定領域と、ヒト抗体由来のフレームワーク領域およびC領域とからなる。キメラ抗体やヒト化抗体はヒト体内における抗原性が低下されているため、治療目的などでヒトに投与する場合に有用と考えられる。
5. 抗体修飾物
本発明で使用される抗体は、抗体の全体分子に限られずDHCR24に結合する限り、抗体の断片又はその修飾物であってもよく、2価抗体も1価抗体も含まれる。例えば、抗体の断片としては、Fab、F(ab’)、Fv、1個のFabと完全なFcを有するFab/c、またはH鎖若しくはL鎖のFvを適当なリンカーで連結させた1本鎖Fv(scFv)、diabodyなどが挙げられる。具体的には、抗体を酵素、例えばパパイン、ペプシンで処理し抗体断片を生成させるか、または、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させる(例えば、Co,M.S.et al.,J.Immunol.,152,2968−2976,1994;Better,M.& Horwitz,A.H,Methods in Enzymology,178,476−496,1989;Academic Press,Inc.,Plueckthun,A.& Skerra,A.Methods in Enzymology,178,476−496,1989;Academic Press,Inc.、Lamoyi,E.,Methods in Enzymology,121,652−663,1989;Rousseaux,J.et al.,Methods in Enzymology,121,663−669,1989;Bird,R.E.et al.,TIBTECH,9,132−137,1991参照)。
scFvは、抗体のH鎖V領域とL鎖V領域とを連結することにより得られる。このscFvにおいて、H鎖V領域とL鎖V領域は、リンカー、好ましくはペプチドリンカーを介して連結される(Huston,J.S.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,85,5879−5883,1988)。scFvにおけるH鎖V領域およびL鎖V領域は、本明細書に抗体として記載されたもののいずれの由来であってもよい。V領域を連結するペプチドリンカーとしては、例えばアミノ酸5〜20残基程度の任意の1本鎖ペプチドが用いられる。
scFvをコードするDNAは、前記抗体のH鎖またはH鎖V領域をコードするDNA、およびL鎖またはL鎖V領域をコードするDNAのうち、それらの配列のうちの全部又は所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を鋳型とし、その両端を規定するプライマー対を用いてPCR法により増幅し、次いで、さらにペプチドリンカー部分をコードするDNA、およびその両端が各々H鎖、L鎖と連結されるように規定するプライマー対を組み合せて増幅することにより得られる。
また、一旦scFvをコードするDNAが作製されると、それらを含有する発現ベクター、および該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得ることができ、また、その宿主を用いることにより、常法に従ってscFvを得ることができる。
これら抗体の断片は、前記と同様にしてその遺伝子を取得し発現させ、宿主により産生させることができる。本発明における「抗体」にはこれらの抗体の断片も包含される。
抗体の修飾物として、細胞障害性物質やポリエチレングリコール(PEG)等の各種分子と結合した抗DHCR24抗体を挙げることができる。細胞障害性物質としては、例えば、放射性同位元素、化学療法剤、細菌由来トキシン等を挙げることができる。本発明における「抗体」には、このような他の物質と結合している抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物は、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。なお、抗体の修飾方法はこの分野においてすでに確立されている。
さらに、本発明で使用される抗体は、2重特異性抗体(bispecific antibody)であってもよい。2重特異性抗体はDHCR24分子上の異なるエピトープを認識する抗原結合部位を有する2重特異性抗体であってもよいし、一方の抗原結合部位がDHCR24を認識し、他方の抗原結合部位が化学療法剤、細胞由来トキシン、放射性物質等の細胞障害性物質を認識してもよい。この場合、DHCR24を発現している細胞に直接細胞障害性物質を作用させ腫瘍細胞に特異的に傷害を与え、腫瘍細胞の増殖を抑えることが可能である。2重特異性抗体は2種類の抗体のHL対を結合させて作製することもできるし、異なるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを融合させて2重特異性抗体産生融合細胞を作製し、得ることもできる。さらに、遺伝子工学的手法により2重特異性抗体を作製することも可能である。
又、抗体の細胞障害活性を増強させる目的で、抗体の糖鎖を改変してもよい。抗体の糖鎖改変技術は既に知られている(例えば、WO/0061739号、WO02/31140号など)。
抗DHCR24抗体は、細胞障害活性として、ADCC(antibody−dependent cellular cytotoxity)活性又はCDC(complement−dependent cytotoxity)活性を有していてもよい。
ADCC活性は、例えば、抗DHCR抗体とエフェクター細胞を標的細胞と混合し、ADCCの程度を調べることにより測定することができる。エフェクター細胞としては例えば、マウス脾細胞やヒト末梢血または骨髄から分離した単核球等を利用することができる。標的細胞としては、ヒト肝細胞株HuH−7等のヒト株化細胞を用いることができる。標的細胞を予め51Crで標識し、これに抗DHCR24抗体を加えてインキュベーションを行い、その後、標的細胞に対し適切な比のエフェクター細胞を加えてインキュベーションを行う。インキュベーション後、上清を採取し、上清中の放射活性をカウントすることによりADCC活性を測定することができる。
また、CDC活性は、上述の標識標的細胞と抗DHCR24抗体を混合し、その後補体を添加してインキュベーションを行い、培養後に上清中の放射活性をカウントすることにより測定することができる。
抗体が細胞障害活性を発揮するには、通常、Fc部分が必要である。したがって、本発明の抗癌剤が抗体の細胞障害活性を利用したものである場合は、本発明に使用する抗DHCR24抗体はFC部分を含んでいることが好ましい。
抗DHCR24抗体をDHCR24を発現しているがん細胞、特に肝癌細胞に接触させることにより、該がん細胞に細胞障害を引き起こすことが可能であり、さらに、該がん細胞を死滅させることが可能である。さらに、抗DHCR24抗体を用いることにより、DHCR24を発現しているがん細胞の増殖を抑制することも可能である。したがって、本発明は、抗DHCR24抗体を用いて、DHCR24を発現しているがん細胞を死滅させる方法、該がん細胞に細胞障害を引き起こす方法、または該がん細胞の増殖を抑制する方法を提供する。
6. 組換え型抗体または改変抗体の発現および産生
前記のように構築した抗体遺伝子は、公知の方法により発現させ、取得することができる。哺乳類細胞の場合、常用される有用なプロモーター、発現させる抗体遺伝子、その3’側下流にポリAシグナルを機能的に結合させて発現させることができる。例えばプロモーター/エンハンサーとしては、ヒトサイトメガロウイルス前期プロモーター/エンハンサー(human cytomegalovirus immediate early promoter/enhancer)を挙げることができる。
また、その他に本発明で使用される抗体発現に使用できるプロモーター/エンハンサーとして、レトロウィルス、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、シミアンウィルス40(SV40)等のウィルスプロモーター/エンハンサー、あるいはヒトエロンゲーションファクター1α(HEF1α)などの哺乳類細胞由来のプロモーター/エンハンサー等が挙げられる。
SV40プロモーター/エンハンサーを使用する場合はMulliganらの方法(Nature,277,108,1979)により、また、HEF1αプロモーター/エンハンサーを使用する場合はMizushimaらの方法(Nucleic AcidsRes.,18,5322,1990)により、容易に遺伝子発現を行うことができる。
大腸菌の場合、常用される有用なプロモーター、抗体分泌のためのシグナル配列及び発現させる抗体遺伝子を機能的に結合させて当該遺伝子を発現させることができる。プロモーターとしては、例えばlacZプロモーター、araBプロモーターを挙げることができる。lacZプロモーターを使用する場合はWardらの方法(Nature,341,544−546,1998;FASEB J.,6,2422−2427,1992)により、あるいはaraBプロモーターを使用する場合はBetterらの方法(Science,240,1041−1043,1988)により発現させることができる。
抗体分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei,S.P.et al J.Bacteriol.,169,4379,1987)を使用すればよい。そして、ペリプラズムに産生された抗体を分離した後、抗体の構造を適切に組み直して(refold)使用する。
複製起源としては、SV40、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス(BPV)等の由来のものを用いることができ、さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは、選択マーカーとしてアミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。
本発明で使用される抗体の製造のために、任意の発現系、例えば真核細胞又は原核細胞系を使用することができる。真核細胞としては、例えば樹立された哺乳類細胞系、昆虫細胞系、真糸状菌細胞および酵母細胞などの動物細胞等が挙げられ、原核細胞としては、例えば大腸菌細胞等の細菌細胞が挙げられる。
好ましくは、本発明で使用される抗体は、哺乳類細胞、例えばCHO、COS、ミエローマ、BHK、Vero、HeLa細胞中で発現される。
次に、形質転換された宿主細胞をin vitroまたはin vivoで培養して目的とする抗体を産生させる。宿主細胞の培養は公知の方法に従い行う。例えば、培養液として、DMEM、MEM、RPMI 1640、IMDMを使用することができ、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
7. 抗体の分離、精製
前記のように発現、産生された抗体は、細胞、宿主動物から分離し均一にまで精製することができる。本発明で使用される抗体の分離、精製はアフィニティーカラムを用いて行うことができる。例えば、プロテインAカラムを用いたカラムとして、Hyper D、POROS、SepharoseF.F.(Pharmacia製)等が挙げられる。その他、通常のタンパク質で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、上記アフィニティーカラム以外のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、透析等を適宜選択、組み合わせることにより、抗体を分離、精製することができる(Antibodies A Laboratory Manual.Ed Harlow,David Lane,Cold Spring Harbor Laboratory,1988)。
8. 抗体の活性の確認
抗体の抗原結合活性(Antibodies A Laboratory Manual.Ed Harlow,David Lane,Cold Spring Harbor Laboratory,1988)の測定には公知の手段を使用することができる。
本発明で使用される抗DHCR24抗体の抗原結合活性を測定する方法として、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、EIA(酵素免疫測定法)、RIA(放射免疫測定法)あるいは蛍光抗体法を用いることができる。例えば、酵素免疫測定法を用いる場合、DHCR24をコーティングしたプレートに、抗DHCR24抗体を含む試料、例えば、抗DHCR24抗体産生細胞の培養上清や精製抗体を加える。アルカリフォスファターゼ等の酵素で標識した2次抗体を添加し、プレートをインキュベートし、洗浄した後、p−ニトロフェニルリン酸などの酵素基質を加えて吸光度を測定することで抗原結合活性を評価することができる。
9. 投与方法および製剤
本発明の抗体を抗がん剤として用いる場合、有効投与量は、1回につき体重1kgあたり0.001〜1,000mgの範囲で選ぶことができる。あるいは、患者あたり0.01〜100,000mg/bodyの投与量を選ぶことができる。しかしながら、本発明の抗DHCR24抗体を含有する抗がん剤はこれらの投与量に制限されるものではない。
また、本発明の抗がん剤の投与時期としては、疾患の臨床症状が生ずる前後を問わず投与することができる。
本発明の抗がん剤は1日1〜3回、1週間に1〜7日投与することが可能である。
本発明の抗がん剤は、通常、非経口投与で、例えば注射剤(皮下注、静注、筋注、腹腔内注など)で投与されるが、特に限定されず、経皮、経粘膜、経鼻、経肺、経口などで投与してもよい。
しかしながら、本発明の抗がん剤は上記投与量、投与方法などに限定されるものではない。
本発明の抗DHCR24抗体を有効成分として含有する抗がん剤は、常法にしたがって製剤化することができ(Remington’s Pharmaceutical Science,latestedition,Mark Publishing Company,Easton,米国)、医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。
このような担体および医薬添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤等が挙げられる。
実際の添加物は、本発明の抗がん剤の剤型に応じて上記の中から単独で又は適宜組み合わせて選ばれるが、もちろんこれらに限定するものではない。例えば、注射用製剤として使用する場合、精製された抗DHCR24抗体を溶剤、例えば生理食塩水、緩衝液、ブドウ糖溶液等に溶解し、これに吸着防止剤、例えばTween80、Tween20、ゼラチン、ヒト血清アルブミン等を加えたものを使用することができる。あるいは、使用前に溶解再構成する剤形とするために凍結乾燥したものであってもよく、凍結乾燥のための賦形剤としては、例えば、マンニトール、ブドウ糖等の糖アルコールや糖類を使用することができる。
10. がんの診断
本発明は、DHCR24を検出することによるがんの診断方法に関するものである。
DHCR24の検出は、DHCR24遺伝子(例えば、mRNAなど)を検出してもよいし、DHCR24タンパク質を検出してもよい。
本発明のがんの診断方法は特に肝癌の診断に有用である。
本発明において検出とは、定量的又は非定量的な検出を含み、例えば、非定量的な検出としては、単にDHCR24タンパク質が存在するか否かの測定、DHCR24タンパク質が一定の量以上存在するか否かの測定、DHCR24タンパク質の量を他の試料(例えば、コントロール試料など)と比較する測定などを挙げることができ、定量的な検出としては、DHCR24タンパク質の発現量の測定などを挙げることができる。
被検試料とは、DHCR24タンパク質またはDHCR24遺伝子が含まれる可能性のある試料であれば特に制限されず、被検試料の具体的な例としては、例えば、がんの診断が必要とされる患者若しくは健常者から採取された細胞(肝細胞など)や、該細胞を破砕して得られた試料などを挙げることができる。
DHCR24タンパク質を検出する場合、DHCR24タンパク質の検出はどのような方法により行ってもよいが、例えば、本発明の抗DHCR24抗体を用いた免疫学的方法により検出することが可能である。免疫学的方法としては、例えば、ラジオイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイ、蛍光イムノアッセイ、発光イムノアッセイ、免疫沈降法、免疫比濁法、ウエスタンブロット、免疫染色、免疫拡散法などを挙げることができる。
ウエスタンブロット法は電気泳動により分離されたタンパク質を抗原抗体反応を用いて検出する方法である。DHCR24タンパク質を尿素、SDS、2−メルカプトエタノールなどの変性剤や還元剤で可溶化し、SDSポリアクリルアミドゲルで分離する。分離されたバンドは電気泳動的にニトロセルロース膜などの固体支持体に移し、抗原に特異的な抗体を反応させる。結合した抗体は、ペルオキシダーゼやアルカリフォスファターゼなどが結合した抗IgG抗体や125I標識プロテインAなどを用いて検出する。
又、抗DHCR24抗体を用いた他の検出方法としては、例えば、抗DHCR24抗体を支持体に固定し、ここに被検試料を加え、インキュベートを行い、抗DHCR24抗体とDHCR24を結合させた後に洗浄して、抗DHCR24抗体を介して支持体に結合したDHCR24を検出することにより、被検試料中のDHCR24の検出を行う方法を挙げることができる。支持体としては、例えば、アガロース、セルロースなどの不溶性の多糖類、シリコン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂などの合成樹脂や、ガラスなどの不溶性の支持体を挙げることができる。これらの支持体は、ビーズやプレートの形状で用いることが可能である。ビーズの場合、これらが充填されたカラムなどを用いることができる。プレートの場合、マルチウェルプレート(96穴マルチウェルブレート等)、やバイオセンサーチップなどを用いることができる。抗DHCR24抗体と支持体との結合は、化学結合や物理的な吸着などの通常用いられる方法により結合することができる。これらの支持体はすべて市販のものを用いることができる。
抗DHCR24抗体とDHCR24との結合は、通常、緩衝液中で行われる。緩衝液としては、例えば、リン酸緩衝液、Tris緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸塩緩衝液、炭酸塩緩衝液、などが使用される。また、インキュベーションの条件としては、すでによく用いられている条件、例えば、4℃〜室温にて1〜24時間のインキュベーションが行われる。インキュベート後の洗浄は、DHCR24と抗DHCR24抗体の結合を妨げないものであれば何でもよく、例えば、Tween20等の界面活性剤を含む緩衝液などが使用される。
本発明のDHCR24の検出方法においては、DHCR24を検出したい被検試料の他に、コントロール試料を設置してもよい。コントロール試料としては、DHCR24を含まない陰性コントロール試料やDHCR24を含む陽性コントロール試料などがある。この場合、DHCR24を含まない陰性コントロール試料で得られた結果と、DHCR24を含む陽性コントロール試料で得られた結果とを比較することにより、被検試料中のDHCR24を検出することが可能である。また、濃度を段階的に変化させた一連のコントロール試料を調製し、各コントロール試料に対する検出結果を数値として得て、標準曲線を作成し、被検試料の数値から標準曲線に基づいて、被検試料に含まれるDHCR24を定量的に検出することも可能である。
抗DHCR24抗体を介して支持体に結合したDHCR24の検出の好ましい態様として、標識物質で標識された抗DHCR24抗体を用いる方法を挙げることができる。
例えば、支持体に固定された抗DHCR24抗体に被検試料を接触させ、洗浄後に、DHCR24を特異的に認識する標識抗体を用いて検出する。
この際、支持体に固定される抗DHCR24抗体と標識物質で標識される抗DHCR24抗体はDHCR24分子の同じエピトープを認識してもよいが、異なるエピトープを認識することが好ましい。
抗DHCR24抗体の標識は通常知られている方法により行うことが可能である。標識物質としては、蛍光色素、酵素、補酵素、化学発光物質、放射性物質などの当業者に公知の標識物質を用いることが可能であり、具体的な例としては、ラジオアイソトープ(32P、14C、125I、H、131Iなど)、フルオレセイン、ローダミン、ダンシルクロリド、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカリドオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、ビオチンなどを挙げることができる。標識物質としてビオチンを用いる場合には、ビオチン標識抗体を添加後に、アルカリホスファターゼなどの酵素を結合させたアビジンをさらに添加することが好ましい。標識物質と抗DHCR24抗体との結合には、グルタルアルデヒド法、マレイミド法、ピリジルジスルフィド法、過ヨウ素酸法、などの公知の方法を用いることができる。
具体的には、抗DHCR24抗体を含む溶液をプレートなどの支持体に加え、抗DHCR24抗体を固定する。プレートを洗浄後、タンパク質の非特異的な結合を防ぐため、例えばBSAなどでブロッキングする。再び洗浄し、被検試料をプレートに加える。インキュベートの後、洗浄し、標識抗DHC24抗体を加える。適度なインキュベーションの後、プレートを洗浄し、プレートに残った標識抗DHCR24抗体を検出する。検出は当業者に公知の方法により行うことができ、例えば、放射性物質による標識の場合には液体シンチレーションやRIA法により検出することができる。酵素による標識の場合には基質を加え、基質の酵素的変化、例えば発色を吸光度計により検出することができる。基質の具体的な例としては、2,2−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)ジアンモニウム塩(ABTS)、1,2−フェニレンジアミン(オルソ−フェニレンジアミン)、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TME)などを挙げることができる。蛍光物質の場合には蛍光光度計により検出することができる。
本発明のDHCR24の検出方法の他の態様として、ビオチンで標識された抗DHCR24抗体及びアビジンを用いる方法を挙げることができる。
具体的には、抗DHCR24抗体を含む溶液をプレートなどの支持体に加え、抗DHCR24抗体を固定する。プレートを洗浄後、タンパク質の非特異的な結合を防ぐため、例えばBSAなどでブロッキングする。再び洗浄し、被検試料をプレートに加える。インキュベートの後、洗浄し、ビオチン標識抗DHCR24抗体を加える。適度なインキュベーションの後、プレートを洗浄し、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼなどの酵素と結合したアビジンを加える。インキュベーション後、プレートを洗浄し、アビジンに結合している酵素に対応した基質を加え、基質の酵素的変化などを指標にDHCR24を検出する。
本発明のDHCR24の検出方法の他の態様として、DHCR24を特異的に認識する1次抗体、及び該1次抗体を特異的に認識する2次抗体を用いる方法を挙げることができる。
例えば、支持体に固定された抗DHCR24抗体に被検試料を接触させ、インキュベーションした後、洗浄し、洗浄後に結合しているDHCR24を、1次抗DHCR24抗体及び該1次抗体を特異的に認識する2次抗体により検出する。この場合、2次抗体は好ましくは標識物質により標識されている。
具体的には、抗DHCR24抗体を含む溶液をプレートなどの支持体に加え、抗DHCR24抗体を固定する。プレートを洗浄後、タンパク質の非特異的な結合を防ぐため、例えばBSAなどでブロッキングする。再び洗浄し、被検試料をプレートに加える。インキュベートの後、洗浄し、1次抗DHCR24抗体を加える。適度なインキュベーションの後、プレートを洗浄し、次いで1次抗体を特異的に認識する2次抗体を加える。適度なインキュベーションの後、洗浄して、プレートに残った2次抗体を検出する。2次抗体の検出は前述の方法により行うことができる。
本発明のDHCR24の検出方法の他の態様としては、凝集反応を利用した検出方法を挙げることができる。該方法においては、抗DHCR24抗体を感作した担体を用いてDHCR24を検出することができる。抗体を感作する担体としては、不溶性で、非特異的な反応を起こさず、かつ安定である限り、いかなる担体を使用してもよい。例えば、ラテックス粒子、ベントナイト、コロジオン、カオリン、固定羊赤血球等を使用することができるが、ラテックス粒子を使用するのが好ましい。ラテックス粒子としては、例えば、ポリスチレンラテックス粒子、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス粒子、ポリビニルトルエンラテックス粒子等を使用することができるが、ポリスチレンラテックス粒子を使用するのが好ましい。感作した粒子と試料を混合し、一定時間攪拌した後に、試料中に抗DHCR24抗体が高濃度で含まれるほど粒子の凝集度が大きくなるので、凝集を肉眼でみることによりDHCR24を検出することができる。また、凝集による濁度を分光光度計等で測定することにより検出することが可能である。
本発明のDHCR24の検出方法の他の態様としては、例えば、表面プラズモン共鳴現象を利用したバイオセンサーを用いた方法を挙げることができる。表面プラズモン共鳴現象を利用したバイオセンサーはタンパク質−タンパク質間の相互作用を微量のタンパク質を用いてかつ標識することなく、表面プラズモン共鳴シグナルとしてリアルタイムに観察することが可能である。例えば、BIAcore(Pharmacia製)等のバイオセンサーを用いることによりDHCR24と抗DHCR24抗体の結合を検出することが可能である。具体的には、抗DHCR24抗体を固定化したセンサーチップに、被検試料を接触させ、抗DHCR24抗体に結合するDHCR24を共鳴シグナルの変化として検出することができる。
本発明の検出方法は、種々の自動検査装置を用いて自動化することもでき、一度に大量の試料について検査を行うことも可能である。
又、被検細胞に、蛍光物質などで標識した抗DHCR24抗体を接触させ、DHCR24に結合していない抗DHCR24抗体を除いた後に、蛍光物質などの標識物質を検出することにより、細胞がDHCR24を発現しているか否かを検出することも可能である。蛍光などの標識物質の検出は当業者に公知の方法で行うことが可能である。
さらに本発明においては、SDSポリアクリルアミド電気泳動法などの、抗DHCR24抗体を使用しない方法を用いてDHCR24タンパク質を検出してもよい。
本発明においては、DHCR24タンパク質の検出だけでなく、DHCR24遺伝子の検出をすることによりがんの診断を行ってもよい。
例えば、本発明の診断方法の1つの態様としては、まず、被検者からRNA試料を調製する。次いで、該RNA試料に含まれるDHCR24タンパク質をコードするRNAの量を測定する。次いで、測定されたRNAの量を対照と比較する。
別の態様としては、まず、被検者からcDNA試料を調製する。次いで、該cDNA試料に含まれるDHCR24タンパク質をコードするcDNAの量を測定する。次いで、測定されたcDNAの量を対照と比較する。
これらのような方法としては、当業者らに周知の方法、例えばノーザンブロッティング法、RT−PCR法、DNAアレイ法等を挙げることができる。
例えば、DNAアレイ法においては、被検者から調製したRNAを鋳型としてcDNA試料を調製し、DHCR24遺伝子とハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが固定された基板と接触させ、該cDNA試料と該基板に固定されたヌクレオチドプローブとのハイブリダイズの強度を検出することにより、該cDNA試料に含まれる遺伝子の発現量を測定する。次いで、測定された遺伝子の発現量を対照と比較する。ハイブリダイゼーションは、DNAまたはこれに対応するRNAが、溶液中でまたは固体支持体上で、別のDNAまたはRNA分子と水素結合相互作用により結合することを意味する。このような相互作用の強さは、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーを変化させることにより評価することができる。所望の特異性および選択性によって、種々のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件を用いることができ、ストリンジェンシーは、塩濃度または変性剤の濃度を変化させることにより調節することができる。そのようなストリンジェンシーの調節方法は当該技術分野においてよく知られており、例えば、”Molecular Cloning:A Laboratory Manual”、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory,Sambrook,Fritsch & Maniatis,eds.、1989に記載されている。
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の一例は、50%ホルムアミド、5×SSC、50mM NaHPO、PH6.8、0.5%SDS、0.1mg/mL超音波処理サケ精子DNA、および5×デンハルト溶液中、42℃で一夜のハイブリダイゼーション;2×SSC、0.1%SDSで45℃での洗浄;および0.2×SSC、0.1%SDSで45℃での洗浄である。
本発明で用いられるヌクレオチドプローブは、当業者に公知の方法で製造することが可能である。例えば、当該技術分野において知られるプロトコルを用いて、市販のDNA合成機(例えば394合成器、Applied Biosystems社製)で合成することができる。あるいは、DHCR24の配列情報に基づいて、適当なテンプレートとプライマーとを組み合わせて用いて、当該技術分野においてよく知られるPCR増幅技術により製造することができる。
ヌクレオチドプローブは、通常、DHCR24塩基配列またはこれと相補的な塩基配列の少なくとも12塩基、20、30、50または100塩基またはそれ以上の連続する塩基配列を有し、DHCR24遺伝子の特定の領域に特異的にハイブリダイズするよう選択される。
プローブは、固体支持体上に固定化してもよい。そのような固体支持体の例としては、限定されないが、プラスチック、アガロース、セファロース、ポリアクリルアミド、ラテックスビーズおよびニトロセルロース等が含まれる。プローブをそのような固体支持体に結合させる技術は当該技術分野においてよく知られている。プローブは、標準的な標識技術、例えば放射性標識、酵素標識(西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ)、蛍光標識、ビオチン−アビジン標識、化学発光等を用いて標識することにより可視化することができる。
被検者からのcDNA試料の調製は、当業者に周知の方法で行うことができる。cDNA試料の調製の好ましい態様においては、まず被検者の細胞あるいは組織(例えば、肝臓など)から全RNAの抽出を行う。全RNAの抽出は、当業者にとって周知の方法、例えば次のようにして行うことができる。全RNA抽出には純度の高い全RNAが調製できる方法であれば、既存の方法およびキット等を用いることが可能である。例えばAmbion社製RNA laterを用いて前処理を行った後、ニッポンジーン社製Isogenを用いて全RNAの抽出を行う。具体的方法にはそれらの添付プロトコールに従えばよい。
次いで、抽出した全RNAを鋳型として、逆転写酵素を用いてcDNAの合成を行い、cDNA試料を調製する。全RNAからのcDNAの合成は、当業者に周知の方法で実施することができる。調製したcDNA試料には、必要に応じて、検出のための標識を施す。標識物質としては、検出可能なものであれば特に制限はなく、例えば、蛍光物質、放射性元素等を挙げることができる。標識は、当業者によって一般的に行われる方法(L Luo et al.,Gene expression profiles of laser−captured adjacent neuronal subtypes.Nat Med.1999,117−122)で実施することができる。
ヌクレオチドプローブと該cDNAとのハイブリダイズの強度の検出は、cDNA試料を標識した物質の種類に応じて当業者においては適宜行うことができる。例えば、cDNAが蛍光物質によって標識された場合、スキャナーで蛍光シグナルを読み取ることによって検出することができる。
上記の方法において、対照と比較して、遺伝子またはタンパク質の発現量が有意に上昇していた場合、被検者は、がんを発症している、もしくは発症する可能性が高いと判定される。
本発明はまた、がんの検査方法に用いるための検査薬を提供する。このような検査薬としては、DHCR24とハイブリダイズ可能なヌクレオチドプローブを含む検査薬(ヌクレオチドプローブが固定された基板を含む)または本発明の抗体を含む検査薬などが挙げられる。上記抗体は、検査に用いることが可能な抗体であれば、特に制限はない。プローブや抗体は必要に応じて標識される。
上記の検査薬においては、有効成分であるヌクレオチドプローブや抗体以外に、例えば、滅菌水、生理食塩水、植物油、界面活性剤、脂質、溶解補助剤、緩衝剤、タンパク質安定剤(BSAやゼラチンなど)、保存剤等が必要に応じて混合されていてもよい。又、適宜、ブロッキング溶液、反応溶液、反応停止液、試料を処理するための試薬等を含んでいてもよい。
DHCR24は、特定のヒトがん組織においてその発現が亢進されている。したがって、治療目的でDHCR24遺伝子の発現を阻害する場合は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、siRNA等を用いることができる。
アンチセンス、リボザイム、siRNAなどを用いる場合、ポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドは少なくとも12ヌクレオチド以上の鎖長を有していることが好ましく、さらに好ましくは12〜50ヌクレオチドであり、特に好ましくは12〜25ヌクレオチドである。これらのポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、所望のアンチセンス、リボザイムまたはsiRNAの活性を有する限り、標的部位の相補配列から、1または数個の塩基が欠失、置換または付加された変異体であってもよい。このような変異体は、好ましくは、標的部位の相補配列と、少なくとも70%、好ましくは90%またはそれ以上、より好ましくは95%またはそれ以上の同一性を有するヌクレオチド配列を有する。
塩基配列の同一性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5877,1993)によって決定することができる。このアルゴリズムに基づいて、BLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul et al.J.Mol.Biol.215:403−410,1990)。BLASTに基づいてBLASTNによって塩基配列を解析する場合には、パラメーターはたとえばscore=100、word length=12とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である(http://www.ncbi.nlm,nih.gov.)。
あるいは、このようなポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、DHCR24をコードする遺伝子配列またはその相補配列を有するDNA又はRNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる。
アンチセンス、リボザイムおよびsiRNA技術を用いて遺伝子発現を制御する方法は当該技術分野においてよく知られている。例えば、アンチセンス、リボザイム、siRNAを適当な担体とともに投与してもよく、あるいは、アンチセンス、リボザイムまたはsiRNAをコードするベクターを投与してインビボでこれらの発現を誘導してもよい。
「リボザイム」との用語は、mRNAを切断する触媒活性を有する核酸分子を表す。リボザイムは、一般に、エンドヌクレアーゼ、リガーゼまたはポリメラーゼ活性を示す。種々のタイプのトランス作用性リボザイム、例えばハンマーヘッドおよびヘアピンタイプのリボザイムが知られている。
「アンチセンス」とは、ゲノムDNAおよび/またはmRNAと特異的にハイブリダイズし、その転写および/または翻訳を阻害することによりそのタンパク質の発現を阻害する、核酸分子またはその誘導体を表す。結合は一般的な塩基対相補性によるものでもよく、または、例えば、DNAデュープレックスへの結合の場合には、2重ヘリックスの主溝における特異的相互作用によるものでもよい。アンチセンス核酸の標的部位としては、mRNAの5’末端、例えばAUG開始コドンまでおよびこれを含む5’非翻訳配列が好ましいが、mRNAの3’非翻訳配列またはコーディング領域の配列もmRNAの翻訳の阻害に有効であることが知られている。
「siRNA」とは、RNA干渉(RNAi)を行うことができる2本鎖核酸を意味する(例えば、Bass,2001,Nature,411,428−429;Elbashir et al.,2001,Nature,411,494−498を参照)。siRNAは、配列特異的にmRNAを分解し、このことにより遺伝子の発現を抑制することができる。siRNAは、典型的には、標的とする配列に相補的な配列を含む20〜25塩基対の長さの2本鎖RNAである。siRNA分子は、化学的に修飾されたヌクレオチドおよび非ヌクレオチドを含んでいてもよい。
【実施例】
[実施例1]
1. 材料と方法
1.1培養細胞株
本研究で用いた細胞株の性状を表1に示す。

これらの細胞株はAmerican Type Culture Collection(ATCC)から購入した。HuH−7、293、HepG2細胞はDulbecco’s modified Eagle’s medium(DMEM;SIGMA)に10%FCS(SIGMA)を加えて培養した。WRL68細胞は10%FCS−DMEMに1mM Na Pyruvate(GIBCO−BRL)、0.1mM Non essential amino acid(GIBCO−BRL)を加えて培養した。NIH3T3細胞は、DMEMに5%neonatal calf serum(SIGMA)を加えて培養した。
ハイブリドーマやミエローマのPAI細胞は、10%FCSを加えたRPMI1640(SIGMA)で培養した。
全長HCV cDNAクローン(HCR6−Rz)をCre/loxPのスイッチング発現システムの下流に組み込んだユニット(図1A、上段)を、neo遺伝子を利用してHepG2細胞に組み込み、細胞株を樹立した(Rz−Hep2−18細胞)。さらに、これにMer−Cre−Merシステム(図1A、下段)を組み込んだ細胞株も樹立した(Rz−HepM2−18−6細胞)。Rz−HepM2−18−6細胞株をタモキシフェン(Tm)で処理するとCre酵素が産生され、全長HCVがスイッチング発現する(図1B)。
1.2 患者材料
東京都立駒込病院・肝臓内科を訪れた15人の肝癌患者検体を用いた(表2)。癌部、非癌部の検体は外科的に切除した組織から得た。これらの患者から本研究利用へのインフォームドコンセントは得ている。
1.3 ELISA系
(1)生細胞ELISA系
丸底の96ウェルプレート(Nunc)をPoly L lisine 10μg/ml−PBS(−)で室温30分インキュベートした。PBS(−)で3回洗浄し、細胞をウェル当たり1〜5×10でまき、1500rpm、4℃、1分遠心後、上清を吸引除去し、細胞ペレットをボルテックスミキサーで撹拌した。細胞を遠心しながら(1500rpm、1分、4℃)冷PBS(−)で4回洗浄した。細胞を1%BSA−PBSで室温1〜2時間反応させた。1%BSA−PBSで適当に希釈した抗体液を100μlずつ加え、室温で15分間に1回緩やかに撹拌しながら2時間反応させた。細胞を同様に2回洗浄後、HRP標識2次抗体F(ab’)−enzyme(Becton−Dickinson)(100ng/ml)100μlを加えた。4℃で1時間半、15分間隔で振盪しながら反応させ、細胞を3回洗浄して基質を加え、吸光度をOD655で測定した。
(2)細胞溶解物ELISA系
10個の細胞をライセートバッファー(1%SDS/0.5%NP−40/0.15M NaCl/10mM Tris pH7.4/5mM EDTA/1mM DTT)100μlで溶解し、これを抗原として(2μg/ウェル)常法に従いELISAを行った。
1.4 モノクロナール抗体の作製
Rz−HepM2−18−6細胞をタモキシフェン処理してHCVを発現させた後、48日以上継代した細胞Rz−HepM2−18−6 48d(5×10個)を、BALB/cマウスの腹腔内に8回以上免疫し、脾臓を取りだし、PEG 1500(Bohringer)を用いてPAIミエローマ細胞と融合させた(Kohler and Milstein,1975)。ハイブリドーマ細胞はHAT(GIBCO−BRL)で選択し、培養上清を生細胞ELISA系で解析した。
1.5 イムノブロット解析
10個の細胞を100μlのRIPA溶液(1%SDS/0.5%NP−40/0.15M NaCl/10mM Tris pH7.4/5mM EDTA/1mM DTT)に溶かし、SDS−PAGEを行った。ゲルはナイロン膜(Immobilon P)に転写してモノクロナール抗体とHRP標識抗マウス2次抗体(DAKO)を反応させた。凍結した患者組織はダンスホモジェナイザー(Wheaton science product)を用いてRIPAに氷中で溶解した。抗アクチンポリクロナール抗体(C−11、Santa−Cruz)を内部標準として使用した。
1.6 蛍光抗体法(IFA)
細胞はアセトン−メタノール(1:1)溶液を用いて−20℃で10分間固定するか、PBSでバッファライズしたホルマリン(WAKO)で固定した。これらを抗体と室温で60分間反応させ、PBSで洗浄後、FITC標識抗マウス2次抗体(DAKO)と室温で30分間反応させた。
1.7 抗原精製とMALDI−TOFF MSによる抗原決定
モノクロナール抗体クローン2−152 0.7mgをHi TrapNHS−activated HPカラム(ファルマシア)に結合させた抗体カラムを作製し、10個のHuH−7細胞の溶解液(ライセートバッファー:1%Triton X100/20mM Hepes−NaOH pH7.5/1mM EDTA/1mM DTT/1mM DFP)1mlを抗体カラムに流速1滴/2秒で流し、室温で30分通し続けた。ライセートバッファーで未吸着画分を洗浄し、結合画分を溶出バッファー(0.2Mグリシン−塩酸緩衝液、pH3.0)5mlで溶出した。ピーク画分を凍結乾燥機にかけて濃縮し、さらにSDS−PAGEで泳動後クマシー染色を行い、染色されたバンドを切り出し、MALDI−TOFFMSによってアミノ酸配列を決定した。
1.8 DHCR24タンパク質の発現
DHCR24の遺伝子配列(Genbank accession number NM_014762)に基づいてプライマー(センス;5’−GTTCTCGAGCAGTGACAGGAGGCGAAC−3’、アンチセンス;5’ −GTTCTCGAGTCCAGGCGGGCTCCAGCTCA−3’)を合成し、HuH−7細胞のmRNAからreverse transcribed PCR法によってcDNAを得た。これをpGEM−Tベクター(プロメガ)に組み込み、TNT coupled reticulocyte lysate systems(プロメガ)、35Sメチオニン(NEN)を用いてDHCR24タンパク質を合成した。また、35Sメチオニンを加えずに合成した細胞溶解物を抗原とし、ウェスタンブロッティング法によりモノクロナール抗体クローン2−152との反応を検討した。さらに、DHCR24遺伝子をpCAG−PUROベクターに組み込み、WRL68細胞にリン酸カルシウム法か、Lipofectin 2000でトランスフェクション後、DHCR24タンパク質の発現をウェスタンブロッティング法で解析した。
2. 結果
Rz−Hep細胞を用いた生細胞ELISA系の開発とモノクローナル抗体の樹立
発明者らは、先に全長HCV遺伝子:HCR6−Rzを発現するスイッチング発現系を確立し(図1A)、これをHepG2細胞に組み込んで細胞株を樹立している(Rz−Hep2−18−6細胞;Kohara et al.,submitted)。HCV発現細胞にがんに関連するような細胞表面抗原が表出するかを解析するため、生細胞の表面抗原を認識するようなELISA系を確立した。この系は免疫したマウスの血清に特異的に反応することが確認された(図2)。同時に、タモキシフェン(Tm)処理によりHCVを発現させ、その後48日以上継代することによって腫瘍原性が亢進したRz−Hep細胞(Rz−HepM2−18−6 48d細胞;Kohara et al.,Journal of Biological Chemistry,in press)をマウスに免疫し、モノクロナール抗体を樹立した。免疫したマウスの血清は、32,000倍まで細胞に反応した(図2)。
次に、Rz−HepM2−18−6 48d細胞を8回以上マウスに免疫し、脾臓細胞をミエローマ細胞と融合してハイブリドーマを作製した。1,000クローン以上から上清を回収し、生細胞ELISA系で解析した。このうち、Rz−HepM2−18−6 48d細胞への反応性とRz−HepM2−18−6未発現細胞への反応性が異なるクローンを抽出し、さらにその反応性を蛍光抗体法(FA)とWB法で解析した。その結果、Rz−HepM2−18−6 48d細胞に反応する3つのクローンを得た。1つはクローン2−152で55kDaの分子(P55)を認識し、クローン2−243は70kDaの分子(P70)、クローン2−433は30kDaの分子(P30)を認識した(図3)。これら分子の発現レベルを各種細胞株:ヒト肝芽腫細胞HepG2;ヒト肝癌細胞HuH−7;ヒト胎児肝細胞WRL68;ヒト胎児腎細胞293細胞;及びマウス線維芽細胞NIH3T3(図3)で解析した。これら細胞の腫瘍原性を表1に示す。P55、P70、P30はHuH−7細胞での発現が最も高かった。P55、P30のこれら細胞群での発現は腫瘍原性に応じて変化していた。腫瘍原性の低いNIH3T3細胞におけるP55、P70、P30の発現レベルは低かった。
以上より、肝臓由来細胞株では腫瘍原性が高い程、各分子の発現が上昇している傾向がみられた。また上皮細胞(293細胞)やNIH3T3細胞では発現が低かった。
さらに、これら分子の発現レベルが細胞の腫瘍原性と関連する可能性が考えられたので、肝癌患者(HCC)の癌部、非癌部における発現を解析した(図4)。5例がHCV陽性(HCV(+))患者群(No.1、2、3、9及び10)、5例がHCV、HBV感染陰性(NBNC)患者群(No.4、5、6、7及び8)、5例がHBV陽性(HBV(+))患者群(No.11、12、13、14及び15)であった(表2)。

これら患者の凍結した各組織の細胞溶解物をWB法で解析した結果、P55の発現は、HCV(+)患者5例全例の癌部で上昇していた(図4)。HBV(+)では5例中3例が、NBNC患者群では5例中2例が癌部での発現が上昇していた。P70の発現は、一部の患者群(No.1、3、6、7、10、11、12及び14)の癌部では上昇していたが、他の患者群では癌部での発現上昇は見られなかった(No.2、4、5、9、13及び15)。P30の発現は、患者No.1、2、3、8、10、11、12及び14の癌部で発現上昇が見られたが、患者No.5、6、9、13及び15では見られなかった。このように、P55はHCV(+)患者群において最も高い割合で発現上昇が見られた(表3)。

以上より、モノクローナル抗体クローン2−243や2−433の認識する70kDa、30kDa分子は、20〜60%の患者で癌部での発現上昇が見られた。これに対しクローン2−152の認識する55kDa分子はHCV(+)の全ての患者で発現が上昇していた。またHBV(+)やNBNC肝癌患者での発現上昇率は40〜60%だった。
さらに、P55に関して解析した。まず、P55の細胞内局在を明らかにするため、蛍光抗体法を行った(図5)。細胞を1%パラフォルムアルデヒドで固定し、1%Triton X−100で処理(Fix)あるいは未処理(non−fixed)後、モノクローナル抗体2−152と反応させた。また、小胞体のマーカーであるPDIに対する抗体(Stressgen社製)とも同時に反応させた。その結果、小胞体のマーカーであるPDIは細胞を固定(透過)しないと検出されないのに対し、P55は細胞を固定(透過)しなくとも検出されるため、細胞表面膜に存在すると考えられた。
次にHCVの発現と、p55の発現の関連性を検討した。
まず、HCV遺伝子(HCR6−Rz)の発現とp55の発現に関連性があるか検討した。WRL68細胞やHepG2細胞にHCV遺伝子をトランスフェクションしたところ、WRL68細胞では発現は見られなかったが、HepG2細胞でP55の発現が上昇した(図6A)。同様な結果が蛍光抗体法でも観察された(図7)。HCV発現細胞株Rz−HepM2−18−6細胞、あるいは発現継代細胞(Rz−HepM2−18−6 48d)でのp55の発現変化も観察したが、HCVの発現に伴う発現上昇が見られた(図6B)。蛍光抗体法の観察によるとRz−HepM2−18−6細胞でHCVを発現しているもののうち50%程度でp55の発現が上昇していた(図8及び図9)。
そこで、p55を同定するため、モノクローナル抗体クローン2−152の抗体カラムを作製し、HuH−7細胞溶解物を流してカラムに結合させた。結合分画を凍結乾燥後、SDS−PAGEを行いCBB染色した。染色されたバンドを切り出してアミノ酸配列を決定するため、MALDI−TOF型質量分析計(ミリポア)でアミノ酸配列を決定した。その結果、p55はDHCR24と呼ばれる分子である確率が最も高いと考えられた。
次に、DHCR24遺伝子を上述の方法でクローニングし、pGEM−T easyベクターのT7プロモーター下流に組み込んで(pGEM−T−DHCR24)試験管内で合成した。その結果、分子量約55kDaのタンパク質が合成され(図10A)、これがクローン2−152抗体と反応した(図10B)。また、CAGプロモーター下流にDHCR24を組み込んだpCAG−DHCRをWRL68細胞にトランスフェクションしたところ、発現が見られた(図10C)。従って、モノクロナール抗体クローン2−152はDHCR24分子を認識していると考えられた。
[実施例2]
CDC活性の測定
標的細胞(10/ml、0.1ml)に抗体(0.1ml)を加えて30℃で30分間インキュベーションした。次に細胞をGVBバッファーで洗浄し、希釈したモルモット血清(SIGMA)0.1mlを加えて37℃で60分間インキュベーションした。細胞を0.05%トリパンブルー0.1mlで染色することにより、生存率を測定した。用いた標的細胞、抗体および補体を以下に示す。
標的細胞:WRL68、HepG2、HuH−7
抗体:2−152(1、10μg/ml)
正常マウスIgG(1、10μg/ml)
補体:モルモット由来(GVBバッファーで1:8に希釈)
本抗体2−152は、補体存在下で容量依存的かつ選択的にHuH−7細胞を障害することが明らかとなった(図11)。
蛍光抗体法(IFA)
Tissue−Tek(登録商標)OCT化合物(TED PELLA Inc.)中のHCC患者肺のがん組織及び非がん組織の凍結切片を室温で融解し、PBS(−)で洗浄後、PBS(−)中の1%パラホルムアルデヒドを用いて室温で10分間固定した。組織切片を1mM EDTA/1%BSA/PBS(−)を用いて室温で1時間ブロッキングし、PBS(−)で洗浄後、モノクローナル抗体2−152(5μg/ml)を加えて4℃で一晩反応させた。さらに、切片をPBS(−)で3回洗浄後、0.05%Tween20/PBS(−)中の抗マウスIgG Alexa 488(1:1000;ヤギ抗マウスIgG(Fab’)フラグメントFluor488、Molecular Probes)を加えて室温で30分間反応させた。切片をPBS(−)で3回洗浄後、TO−PRO−3(10μg/ml;Molecular Probes)を含有するベクターシールド(Vector Inc.)を用いてマウントした。
本抗体2−152は、HCC患者の肝臓組織のうち、非癌部よりも癌部を強く染色し、かつ癌部組織の細胞膜を染色することが明らかとなった(図12)。
【産業上の利用可能性】
DHCR24を検出することにより、高精度ながんの診断が可能である。また、本発明のDHCR24認識抗体を用いることにより、これまで検出できなかったがんの診断や治療が可能である。


【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
DHCR24を認識する抗体。
【請求項2】
DHCR24を特異的に認識する抗体。
【請求項3】
がんを診断することができる、DHRC24を認識する抗体。
【請求項4】
肝がんを診断することができる、請求項3に記載の抗体。
【請求項5】
C型肝炎ウイルスタンパク質をコードする遺伝子を細胞に導入し、該細胞で動物を免疫する、ことを含む抗体作製方法により得ることのできるDHCR24を認識する抗体。
【請求項6】
肝がん細胞で動物を免役することを含む抗体作製方法により得ることのできるDHCR24を認識する抗体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗体を含む、がんの診断薬。
【請求項8】
肝癌を診断する、請求項7に記載のがんの診断薬。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗体及び医薬的に許容可能な担体を含む、抗がん剤。
【請求項10】
肝癌に有効である、請求項9に記載の抗がん剤。
【請求項11】
DHCR24を検出することを含むがんの診断方法。
【請求項12】
該DHCR24がタンパク質である請求項11に記載の診断方法。
【請求項13】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗体を生細胞又は細胞溶解物と反応させることを含む、がんを診断するためのDHCR24の検出方法。
【請求項14】
該細胞が肝癌細胞である、請求項13に記載の検出方法。
【請求項15】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗体を投与することを含む、がんの治療方法。
【請求項16】
肝癌に有効である請求項15に記載の治療方法。

【国際公開番号】WO2005/019268
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【発行日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513383(P2005−513383)
【国際出願番号】PCT/JP2004/012428
【国際出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(503304670)
【出願人】(503304681)
【出願人】(591063394)財団法人 東京都医学研究機構 (69)
【出願人】(000173555)財団法人化学及血清療法研究所 (86)
【Fターム(参考)】