説明

新規置換ビフェニルカルボン酸誘導体

【課題】PPARδのパーシャルアゴニスト又はアンタゴニストとして機能する置換ビフェニルカルボン酸誘導体の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるPPARδに選択的なパーシャルアゴニスト及び/又はアンタゴニスト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はペルオキシゾーム増殖薬活性化受容体δに選択的なパーシャルアゴニスト(又は部分アゴニスト)又はアンタゴニストに関し、さらに、ペルオキシゾーム増殖薬活性化受容体δの異常調節に起因する疾患等の治療及び/又は予防のための医薬又は医薬組成物、並びに、ペルオキシゾーム増殖薬活性化受容体δの異常調節に起因する疾患等の治療及び/又は予防方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(Peroxisome proliferator−activated receptor:PPAR、以下PPARとする)は、核内受容体スーパーファミリーに属するリガンド依存性の転写因子であり、標的遺伝子の転写をリガンド依存的に誘導する。すなわち、リガンドがPPARに結合すると、PPARは標的遺伝子のプロモーター領域に存在するPPAR応答配列(PPAR responsive element:PPRE)に結合し、標的遺伝子の転写が誘導される。
これまでに組織分布を異にする3種類のアイソフォーム(α型、δ型、γ型)がヒトをはじめとする様々な動物種で同定されている。これらのうち、PPARαは、脂肪酸の異化能の高い肝臓、腎臓、心臓及び筋肉等に分布しており、特に肝臓において高発現が認められ、PPARαによって標的遺伝子の転写が誘導されると、血中中性脂肪の低下、HDLコレステロールの増加、体重の減少、血管新生の促進等が誘起される。PPARδは、骨格筋を中心に生体内各組織に普遍的に発現しており、PPARδの活性化により、骨格筋における脂肪酸の異化、HDLコレステロールの増加、インスリン抵抗性の改善、肥満の抑制などが誘導されることが明らかとなってきている(非特許文献1、非特許文献2)。また、PPARγは、脂肪細胞やマクロファージに高発現しており、脂肪細胞の分化、インスリン感受性の獲得などに関与するタンパク質を誘導する。このように、PPARの各アイソフォームは、特定の臓器又は組織において様々な機能を果たしている。
【0003】
細胞内において、PPARはレチノイドXレセプター(RXR)とヘテロ二量体を形成する。このヘテロ二量体がPPAR応答配列(PPRE)として知られるDNA配列に結合して、各種遺伝子の転写を活性化する。また、PPAR/RXRヘテロ二量体は、DRIP−205やSRC−1などの活性化補助因子を取り込んで、標的遺伝子にコードされるmRNAの発現レベルを調節する。
【0004】
PPARの各アイソフォームは、各々のターゲット遺伝子の転写を誘導することにより、脂肪代謝、インスリン抵抗の改善など、いわゆる、メタボリック症候群として知られる諸症状の緩和に寄与していることが予想されている。すでに、PPARαに対する外因性リガンドとしてはフェノフィブラート,ベザフィブラート,クロフィブラートなどのいわゆるフィブラート系の薬剤が、また、PPARγに対する外因性リガンドとしてはトログリタゾンやピオグリタゾンのようないわゆるチアゾリジン系の薬剤が知られている。また、フィブラート系、チアゾリジン系以外で、PPARの各アイソフォームをターゲットとする化合物もいくつか報告されている(特許文献1〜6を参照のこと)。
PPARδについては、脂肪代謝あるいはコレステロール代謝に関与していることが予想されている。δ型のアイソフォームをターゲットとする有効な薬剤候補として、これまでに、例えば、L−165041(非特許文献3)、GW−501516(非特許文献1)などが報告されているが、薬剤として認可されるまでには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO01/092201号
【特許文献2】WO00/75103号
【特許文献3】WO2004/056748号
【特許文献4】WO2004/046091号
【特許文献5】WO03/051821号
【特許文献6】WO02/098840号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Oliverら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 98:5306−5311 2001
【非特許文献2】Tanakaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 100:15924−15929 2003
【非特許文献3】Leibowitzら、FEBS Lett.473:333−336 2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体δ(PPARδ)に選択的な部分アゴニスト(partial agonist;パーシャルアゴニスト)、及び/又はアンタゴニストの提供を目的とする。
また、本発明はこれらの化合物(部分アゴニスト又はアンタゴニスト)を有効成分として含むPPARδ転写活性化剤、及びPPARδ転写活性抑制剤の提供を目的とする。
さらに、本発明は、これらの化合物を有効成分として含む、PPARδ転写活性の異常(転写活性の異常亢進あるいは異常抑制)に起因する疾患の治療剤及び/又は予防剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の通り、脂肪代謝異常などのメタボリック症候群の治療薬として注目を浴びているPPARアゴニストであるが、解決すべき問題も存在している。既存のPPARアゴニスト(例えば、PPARγアゴニスト)の中には、その強力なアゴニスト活性に基づく副作用(例えば、肝機能障害、浮腫、体重増加など)を誘発する化合物が報告されている(特開2007−314464明細書などを参照)。そのため、最近では、PPARに対する完全な活性を有するアゴニスト(full agonist;フルアゴニスト)だけではなく、活性の弱いアゴニスト(部分アゴニスト、パーシャルアゴニスト)やアンタゴニストの開発も重要となってきている。
本発明者らは、上記事情に鑑み、鋭意研究を行ったところ、PPARδに選択的なパーシャルアゴニスト及び/又はアンタゴニスト活性を示す化合物を見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち本発明は、 一般式(1):
【化1】


[式中、Rは直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10の炭化水素基、メトキシエトキシ基を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子を表し、Rは直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10の炭化水素基、トリフルオロメチル基、無置換又は置換基を有していてもよいフェニル基、無置換又は置換基を有していてもよいフェノキシ基、無置換又は置換基を有していてもよいアダマンチル基を表し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基を表し、Xは、CHNHCO基又はCONHCH基を表す]で表されるPPARδに選択的なパーシャルアゴニスト及び/又はアンタゴニストである。
また、本発明は、一般式(1):
【化2】


[式中、Rは直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10の炭化水素基、メトキシエトキシ基を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子を表し、Rは直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10の炭化水素基、トリフルオロメチル基、無置換又は置換基を有していてもよいフェニル基、無置換又は置換基を有していてもよいフェノキシ基、無置換又は置換基を有していてもよいアダマンチル基を表し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基を表し、Xは、CHNHCO基又はCONHCH基を表す]で表されるPPARδに選択的なパーシャルアゴニストを含有する、PPARδ転写活性化剤である。
さらに、本発明は、一般式(1):
【化3】


[式中、Rは直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10の炭化水素基、メトキシエトキシ基を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子を表し、Rは直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10の炭化水素基、トリフルオロメチル基、無置換又は置換基を有していてもよいフェニル基、無置換又は置換基を有していてもよいフェノキシ基、無置換又は置換基を有していてもよいアダマンチル基を表し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基を表し、Xは、CHNHCO基又はCONHCH基を表す]で表されるPPARδに選択的なアンタゴニストを含有する、PPARδ転写活性抑制剤である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、PPARδに選択的なアンタゴニスト又はパーシャルアゴニストが提供される。
【0011】
本発明の化合物により、あるいは、本発明の化合物と本発明の化合物以外のPPARδアゴニストを組み合わせて使用することにより、PPARδの転写活性化状態を所望のレベルに調節することができる。
【0012】
本発明の化合物を有効成分とする、メタボリック症候群(例えば、糖尿病、高脂血症、高コレステロール(特に、LDL)症、高血圧症、肥満症、動脈硬化症など)の予防又は治療剤であって、副作用の少ない薬剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】PPARδ転写活性に対する、本発明の化合物、4’−ブトキシ−3’−((2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)メチル)ビフェニル−3−カルボン酸(J87)、及び4’−ブトキシ−3’−((2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)メチル)ビフェニル−4−カルボン酸(J85)の影響を調べた結果である。GWは、コントロールとして使用したGW−501516である。GWの最大活性を100%として、GWに対する各化合物の最大活性の%を図中に記載した。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一般式(1)において、Rは、直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10の炭化水素基、メトキシエトキシ基のいずれかであり、好ましくは、n−ブチル基である。Rは水素原子又はハロゲン原子のいずれかであり、好ましくは、ハロゲン原子、より好ましくはフッ素原子である。Rは直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10の炭化水素基、トリフルオロメチル基、無置換又は置換基を有していてもよいフェニル基、無置換又は置換基を有していてもよいフェノキシ基、無置換又は置換基を有していてもよいアダマンチル基のいずれかであり、好ましくは、トリフルオロメチル基、アダマンチル基である。Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基のいずれかであり、好ましくはメチル基、フッ素原子である。また、Xは、CHNHCO基又はCONHCH基のいずれかであり、好ましくは、CONHCH基である。一般式(1)中、カルボキシル基の結合位置は、特に限定はしないが、例えば、3位又は4位が好ましい。
【0015】
一般式(1)で表されるPPARδに選択的なパーシャルアゴニスト又はアンタゴニストは、一般式(1)で表されるビフェニル置換カルボン酸誘導体のみならず、その塩又はそれらの溶媒和物若しくは水和物であってもよい。ビフェニル置換カルボン酸誘導体の塩は特に限定されるものではなく、慣用の塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩等の金属塩が挙げられ、好ましくは薬剤学上許容されるものである。
また、一般式(1)で表されるビフェニル置換カルボン酸誘導体には、特に断らない限り、その互変異性体、幾何異性体(例えば、E体、Z体など)、鏡像異性体等の立体異性体も含まれる。すなわち、一般式(1)で表されるビフェニル置換カルボン酸誘導体中に、1個又は2個以上の不斉炭素が含まれる場合、不斉炭素の立体化学については、それぞれ独立して(R)体又は(S)体のいずれかをとることができ、該誘導体の鏡像異性体又はジアステレオ異性体などの立体異性体として存在することがある。
本発明の医薬の有効成分としは、純粋な形態の任意の立体異性体、立体異性体の任意の混合物、ラセミ体などを用いることが可能である。
【0016】
一般式(1)でPPARδに選択的なパーシャルアゴニスト又はアンタゴニスト及びその塩としては、限定はしないが、例えば、次のものが挙げられる。
4’−ブトキシ−3’−((2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)メチル)ビフェニル−4−カルボン酸及びその塩
4’−ブトキシ−3’−((2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)メチル)ビフェニル−3−カルボン酸及びその塩
4’−ブトキシ−3’−((2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)メチル)−2−メチルビフェニル−4−カルボン酸及びその塩
4’−ブトキシ−3’−((2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)メチル)−2−フルオロビフェニル−4−カルボン酸及びその塩
3’−((2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)メチル)4’−メトキシエトキシビフェニル−3−カルボン酸及びその塩
【0017】
本発明の一般式(1)で表される化合物の内、Rが直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10の炭化水素基、メトキシエトキシ基、Rが水素原子又はハロゲン原子、Rが直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10の炭化水素基、トリフルオロメチル基、無置換又は置換基を有していてもよいフェニル基、無置換又は置換基を有していてもよいフェノキシ基、無置換または置換基を有していてもよいアダマンチル基、XがCONHCH基、カルボキシル基の結合位置が3位又は4位である一般式(1a)
【化4】


[式中、Rは直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10の炭化水素基、メトキシエトキシ基、Rは水素原子又はハロゲン原子を表し、Rは直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10の炭化水素基、トリフルオロメチル基、無置換又は置換基を有していてもよいフェニル基、無置換又は置換基を有していてもよいフェノキシ基、無置換又は置換基を有していてもよいアダマンチル基を表し、カルボキシル基の結合位置が3位又は4位である]は、以下の方法により製造することができる(スキーム1)。
【化5】

【0018】
すなわち、一般式(1a)
【化6】


[式中、Rは直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10の炭化水素基、メトキシエトキシ基、Rは水素原子又はハロゲン原子を表し、Rは直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10の炭化水素基、トリフルオロメチル基、無置換又は置換基を有していてもよいフェニル基、無置換又は置換基を有していてもよいフェノキシ基、無置換又は置換基を有していてもよいアダマンチル基を表し、カルボキシル基の結合位置が3位又は4位である]は、メチル 4’−メトキシ−3’−ホルミルビフェニル−4−カルボキシレート(2)と一般式(7)
【化7】


[式中、R、Rは前述の通り]で表される化合物を反応させる(第I工程)ことにより製造される一般式(3)、
【化8】


[式中、R、Rは前述の通り]で表される化合物のエーテル部及びエステル部を脱保護する(第II工程)ことより製造される一般式(4)、
【化9】


[式中、R、Rは前述の通り]で表される化合物のカルボキシ基をベンジルエステル化する(第III工程)ことより製造される一般式(5)、
【化10】


[式中、R、Rは前述の通り]で表される化合物と一般式(8)、
【化11】


[式中、Rは直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10の炭化水素基、メトキシエトキシ基を表し、Yはハロゲン原子を表す]で表される化合物とを反応させる(第IV工程)ことにより得られる一般式(6)、
【化12】


[式中、R、R、Rは前述の通り]で表される化合物を脱保護(第V工程)して実施する事ができる。
【0019】
第I工程の反応はトルエン、ベンゼン、アセトニトリル、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒中、酸(例えば、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸)の存在下、還元剤としてトリエチルシランの存在下で実施することができる。この際の反応温度は通常−20〜150℃、好ましくは0〜100℃であり、反応時間は通常1〜48時間、好ましくは6〜24時間である。
第II工程の反応はクロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素等の溶媒中、BBrまたはBClの存在下で実施することができる。この際の反応温度は通常−100〜100℃、好ましくは−80〜50℃であり、反応時間は通常1〜72時間、好ましくは6〜48時間である。
第III工程の反応はクロロホルム、塩化メチレン、アセトニトリル等の溶媒中、ベンジルブロマイドをフッ化セシウム存在下、セライトまたはシリカゲルの存在下で実施することができる。この際の反応温度は通常0〜150℃、好ましくは溶媒の沸騰温度であり、反応時間は通常1〜48時間、好ましくは3〜24時間である。
第IV工程の反応はN,N−ジメチルホルムアミド、DMSO、トルエン、ベンゼン、アセトニトリル、ジオキサン等の溶媒中、塩基としては例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩等の存在下で実施することができる。この際の反応温度は通常−20〜150℃、好ましくは0〜100℃であり、反応時間は通常1〜48時間、好ましくは6〜24時間である。
第V工程の反応はパラジウム担持活性炭、白金担持活性炭、酸化白金、ロジウム担持アルミナ等の金属触媒存在下、エタノール、メタノール、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒中水素圧1kgf/cmから5kgf/cmで実施する事ができる。反応温度としては0℃から100℃にて、好適には室温から80℃にて実施する事ができる。
【0020】
また、本発明の一般式(1)で表される化合物の内、Rが直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10の炭化水素基、メトキシエトキシ基、Rが水素原子又はハロゲン原子、Rが直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10の炭化水素基、トリフルオロメチル基、無置換又は置換基を有していてもよいフェニル基、無置換又は置換基を有していてもよいフェノキシ基、無置換又は置換基を有していてもよいアダマンチル基、Rが、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、XがCONHCH基、カルボキシル基の結合位置が3位または4位である一般式(1b)
【化13】


[式中、Rが直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10の炭化水素基、メトキシエトキシ基、Rが水素原子又はハロゲン原子、Rが直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10の炭化水素基、トリフルオロメチル基、無置換又は置換基を有していてもよいフェニル基、無置換又は置換基を有していてもよいフェノキシ基、無置換又は置換基を有していてもよいアダマンチル基、Rが、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、XがCONHCH基、カルボキシル基の結合位置が3位又は4位である]は、以下の方法により製造することができる(スキーム2)。
【化14】

【0021】
すなわち、一般式(1b)
【化15】


[式中、Rが直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10の炭化水素基、メトキシエトキシ基、Rが水素原子又はハロゲン原子、Rが直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10の炭化水素基、トリフルオロメチル基、無置換又は置換基を有していてもよいフェニル基、無置換又は置換基を有していてもよいフェノキシ基、無置換又は置換基を有していてもよいアダマンチル基、Rが、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、XがCONHCH基、カルボキシル基の結合位置が3位又は4位である]は、4−ブロモフェノール(9)と一般式(8)、
【0022】
【化16】


[式中、Rは直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10の炭化水素基、メトキシエトキシ基、を表し、Yはハロゲン原子を表す]で表される化合物とを反応させる(第VI工程)ことにより得られる一般式(10)、
【化17】


[式中、Rは前述の通り]で表される化合物をホルミル化する(第VII工程)ことより製造される一般式(11)、
【化18】


[式中、Rは前述の通り]で表される化合物と一般式(7)、
【化19】


[式中、R、Rは前述の通り]で表される化合物を反応させる(第VIII工程)ことにより製造される一般式(12)、
【化20】


[式中、R、R、Rは前述の通り]で表される化合物とビス(ピナコラト)ジボランとを反応させる(第IX工程)ことにより製造される一般式(13)、
【化21】


[式中、R、R、Rは前述の通り]で表される化合物で表される化合物と一般式(15)、
【化22】


[式中、Rが水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、Rが水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、Zがハロゲン原子を表す]で表される化合物を反応させる(第X工程)ことにより製造することができる。Rが炭素数1〜10の炭化水素基の場合には一般式(14)の化合物を加水分解する(第XI工程)ことにより製造することができる。
【0023】
第VI工程の反応はN,N−ジメチルホルムアミド、DMSO、トルエン、ベンゼン、アセトニトリル、ジオキサン等の溶媒中、塩基としては例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩等の存在下で実施することができる。この際の反応温度は通常−20〜150℃、好ましくは0〜100℃であり、反応時間は通常1〜48時間、好ましくは6〜24時間である。
第VII工程の反応はクロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素等の溶媒中、ジクロロメチルメチルエーテルの存在下、四塩化チタン、塩化アルミニウム、四塩化スズ等のルイス酸の存在下で実施することができる。この際の反応温度は通常−100〜100℃、好ましくは−50〜50℃であり、反応時間は通常1〜72時間、好ましくは6〜48時間である。
第VIII工程の反応は第I工程の反応はトルエン、ベンゼン、アセトニトリル、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒中、酸(例えば、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸)の存在下、還元剤としてトリエチルシランの存在下で実施することができる。この際の反応温度は通常−20〜150℃、好ましくは0〜100℃であり、反応時間は通常1〜48時間、好ましくは6〜24時間である。
第XI工程の反応はN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジオキサン等の溶媒中、塩基としては例えば酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の存在下、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリ-O-トリルホスフィン)パラジウム等のパラジウム存在下で実施することができる。反応温度は通常−100〜180℃、好ましくは0〜150℃であり、反応時間は通常1〜48時間、好ましくは6〜24時間である。
第X工程の反応はN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジオキサン、エタノール等の単一または混合溶媒中、塩基としては例えば酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の存在下、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリ-O-トリルホスフィン)パラジウム等のパラジウム存在下で実施することができる。反応温度は通常−100〜180℃、好ましくは0〜150℃であり、反応時間は通常1〜48時間、好ましくは6〜24時間である。
第XI工程の反応は酸性条件下または塩基性条件下で実施することができる。酸性条件下としては、塩酸、酢酸、臭化水素酸等の単一または混合酸性溶媒中で実施することができる。反応温度は通常0〜150℃、好ましくは20〜100℃であり、反応時間は通常1〜48時間、好ましくは6〜24時間である。塩基性条件下としては水とメタノール、エタノール、ジオキサン等の有機溶媒との混合溶媒中で実施することができる。反応温度は通常0〜120℃、好ましくは溶媒の沸騰温度であり、反応時間は通常1〜48時間、好ましくは6〜24時間である。
【0024】
また、本発明の一般式(1)で表される化合物の内、Rが直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10の炭化水素基、メトキシエトキシ基、Rが水素原子又はハロゲン原子、Rが直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10の炭化水素基、トリフルオロメチル基、無置換又は置換基を有していてもよいフェニル基、無置換又は置換基を有していてもよいフェノキシ基、無置換又は置換基を有していてもよいアダマンチル基、Rが水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、XがCONHCH基、カルボキシル基の結合位置が3位又は4位である一般式(1b)
【0025】
【化23】


[式中、Rが直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10の炭化水素基、メトキシエトキシ基、Rが水素原子又はハロゲン原子、Rが直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10の炭化水素基、トリフルオロメチル基、無置換又は置換基を有していてもよいフェニル基、無置換又は置換基を有していてもよいフェノキシ基、無置換又は置換基を有していてもよいアダマンチル基、Rが水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、XがCONHCH基、カルボキシル基の結合位置が3位又は4位である]は、以下の方法により製造することもできる(スキーム3)。
【化24】


すなわち、一般式(1b)
【化25】


[式中、Rが直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10の炭化水素基、メトキシエトキシ基、Rが水素原子又はハロゲン原子、Rが直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10の炭化水素基、トリフルオロメチル基、無置換又は置換基を有していてもよいフェニル基、無置換又は置換基を有していてもよいフェノキシ基、無置換又は置換基を有していてもよいアダマンチル基、Rが水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、XがCONHCH基、カルボキシル基の結合位置が3位又は4位である]は、一般式(12)、
【化26】


[式中、Rが直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10の炭化水素基、メトキシエトキシ基、Rが水素原子又はハロゲン原子、Rが直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10の炭化水素基、トリフルオロメチル基、無置換又は置換基を有していてもよいフェニル基、無置換又は置換基を有していてもよいフェノキシ基、無置換又は置換基を有していてもよいアダマンチル基を表す]で表される化合物と一般式(16)、
【化27】


[式中、Rが水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基を表す]で表される化合物を反応させる(第XII工程)ことにより製造することができる。
【0026】
第XII工程の反応はN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジオキサン、エタノール等の単一又は混合溶媒中、塩基としては例えば酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の存在下、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリ−O−トリルホスフィン)パラジウム等のパラジウム存在下で実施することができる。反応温度は通常−100〜180℃、好ましくは0〜150℃であり、反応時間は通常1〜48時間、好ましくは6〜24時間である。
【0027】
本発明のある実施形態によれば、PPARδに選択的なパーシャルアゴニスト(部分アゴニスト)又はアンタゴニストを含むPPARδ転写活性化剤(PPARδ標的遺伝子の転写を活性化(又は誘導)する薬剤)又はPPARδ転写活性抑制剤(アゴニスト等によるPPARδ標的遺伝子の転写活性化を抑制する薬剤)が提供される。
ここで、「アゴニスト」とは、PPARδに結合して、PPARδによる標的遺伝子の転写活性化を誘導する化合物のことである。また、「パーシャルアゴニスト(又は部分アゴニスト)」とは、PPARδに結合して、PPARδによる標的遺伝子の転写活性化を誘導するが完全なアゴニスト(フルアゴニスト;例えば、生体内において実際にアゴニストとして作用している化合物など)よりは作用が弱い化合物のことである。本明細書において、「パーシャルアゴニスト」とは、その最大活性が、フルアゴニストとして知られているGW−501516の最大活性の数%〜75%程度、好ましくは、10%〜50%程度の化合物のことである。一方、「アンタゴニスト」とは、PPARδに結合はするが、PPARδによる転写活性を誘導せず、アゴニストによるPPARδ転写活性の活性化を抑制する化合物のことである。本明細書において「アンタゴニスト」とは、フルアゴニストを共存させた場合に、フルアゴニストの活性を、例えば、70%以下に減少させる化合物、好ましくは50%以下に減少させる化合物、より好ましくは30%以下に減少させる化合物、さらにより好ましくは10%以下に減少させる化合物のことである。
パーシャルアゴニストには、他のアゴニストと共存させた場合に、アンタゴニストとして作用する化合物も含まれる。
【0028】
本発明の化合物は、PPARδによる標的遺伝子の転写活性をフルアゴニストより低い程度で誘導することができる。あるいは、本発明の化合物は、フルアゴニストによるPPARδの標的遺伝子の転写活性化を抑制することができる。従って、本発明の化合物を医薬として、PPARδが関連する疾患(例えば、糖尿病、高脂血症、高コレステロール(特に、LDL)症、高血圧症、肥満症、動脈硬化症など、及びこれらの疾患を惹起し易い状態として特徴づけられるメタボリック症候群の諸症状)の予防又は治療に使用する場合、公知のフルアゴニスト(例えば、GW−501516)によって惹起されることが予測されるような副作用の発症を低く抑え、対象疾患の予防又は治療を有効に行うことができる。
【0029】
本発明の医薬の有効成分としては、上記一般式(1)で表される化合物のほか、生理学的に許容されるその塩を用いてもよい。塩としては、例えば、酸性基が存在する場合には、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属塩;アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、エタノールアミン、N−メチルグルカミン、L−グルカミン等のアミンの塩;又はリジン、δ−ヒドロキシリジン、アルギニンなどの塩基性アミノ酸との塩を形成することができる。塩基性基が存在する場合には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸の塩;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、酢酸、プロピオン酸塩、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、マンデル酸、ケイ皮酸、乳酸、グリコール酸、グルクロン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、サリチル酸等の有機酸との塩;又はアスパラギン酸、グルタミン酸などの酸性アミノ酸との塩などを挙げることができる。
さらに、本発明の医薬の有効成分として、一般式(1)で表される化合物又はその塩の溶媒和物若しくは水和物を用いることもできる。
【0030】
本発明の医薬は、有効成分である一般式(1)で表される化合物及び薬理学的に許容されるその塩、又はそれらの溶媒和物若しくはそれらの水和物自体を投与してもよいが、一般的には、有効成分である上記物質と1又は2以上の製剤用添加物とを含む医薬組成物の形態で投与することが望ましい。本発明の医薬の有効成分としては、上記の物質の2種以上を組み合わせて用いることができ、上記医薬組成物には、糖尿病、高脂血症、高コレステロール(特に、LDL)症、高血圧症、肥満症、動脈硬化症など、及びこれらの疾患を惹起し易い状態として特徴づけられるメタボリック症候群の諸症状の予防又は治療のための他の既知の有効成分を配合することも可能である。
【0031】
医薬組成物の種類は特に限定されず、剤型としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、懸濁剤、座剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤、吸入剤、注射剤等が挙げられる。これらの製剤は常法に従って調製される。なお、液体製剤にあっては、用時、水又は他の適当な溶媒に溶解又は懸濁する形であってもよい。また錠剤、顆粒剤は周知の方法でコーティングしてもよい。注射剤の場合には、本発明の化合物を水に溶解させて調製されるが、必要に応じて生理食塩水あるいはブドウ糖溶液に溶解させてもよく、また緩衝剤や保存剤を添加してもよい。経口投与用又は非経口投与用の任意の製剤形態で提供される。例えば、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤又は液剤等の形態の経口投与用医薬組成物、静脈内投与用、筋肉内投与用、若しくは皮下投与用などの注射剤、点滴剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、点鼻剤、吸入剤、坐剤などの形態の非経口投与用医薬組成物として調製することができる。注射剤や点滴剤などは、凍結乾燥形態などの粉末状の剤形として調製し、用時に生理食塩水などの適宜の水性媒体に溶解して用いることもできる。また、高分子などで被覆した徐放製剤を脳内に直接投与することも可能である。
【0032】
医薬組成物の製造に用いられる製剤用添加物の種類、有効成分に対する製剤用添加物の割合、又は医薬組成物の製造方法は、組成物の形態に応じて当業者が適宜選択することが可能である。製剤用添加物としては無機又は有機物質あるいは固体又は液体の物質を用いることができ、一般的には、有効成分重量に対して1重量%から90重量%の間で配合することができる。具体的には、その様な物質の例として乳糖、ブドウ糖、マンニット、デキストリン、シクロデキストリン、デンプン、蔗糖、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルデンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、イオン交換樹脂、メチルセルロース、ゼラチン、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、タルク、トラガント、ベントナイト、ビーガム、酸化チタン、ソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、グリセリン、脂肪酸グリセリンエステル、精製ラノリン、グリセロゼラチン、ポリソルベート、マクロゴール、植物油、ロウ、流動パラフィン、白色ワセリン、フルオロカーボン、非イオン性界面活性剤、プロピレングルコール、水等が挙げられる。
【0033】
経口投与用の固形製剤を製造するには、有効成分と賦形剤成分例えば乳糖、澱粉、結晶セルロース、乳酸カルシウム、無水ケイ酸などと混合して散剤とするか、さらに必要に応じて白糖、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの結合剤、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどの崩壊剤などを加えて湿式又は乾式造粒して顆粒剤とする。錠剤を製造するには、これらの散剤及び顆粒剤をそのまま或いはステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤を加えて打錠すればよい。これらの顆粒又は錠剤はヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸−メタクリル酸メチルポリマーなどの腸溶剤基剤で被覆して腸溶剤製剤あるいはエチルセルロース、カルナウバロウ、硬化油などで被覆して持続性製剤とすることもできる。また、カプセル剤を製造するには、散剤又は顆粒剤を硬カプセルに充填するか、有効成分をそのまま或いはグリセリン、ポリエチレングリコール、ゴマ油、オリーブ油などに溶解した後ゼラチン膜で被覆し軟カプセルとすることができる。
【0034】
注射剤を製造するには、有効成分を必要に応じて塩酸、水酸化ナトリウム、乳糖、乳酸、ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなどのpH調整剤、塩化ナトリウム、ブドウ糖などの等張化剤と共に注射用蒸留水に溶解し、無菌濾過してアンプルに充填するか、更にマンニトール、デキストリン、シクロデキストリン、ゼラチンなどを加えて真空凍結乾燥し、用事溶解型の注射剤としてもよい。また、有効成分にレチシン、ポリソルベート80 、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などを加えて水中で乳化せしめ注射剤用乳剤とすることもできる。
【0035】
直腸投与剤を製造するには、有効成分をカカオ脂、脂肪酸のトリ、ジ及びモノグリセリド、ポリエチレングリコールなどの座剤用基材と共に加湿して溶解し型に流し込んで冷却するか、有効成分をポリエチレングリコール、大豆油などに溶解した後、ゼラチン膜で被覆すればよい。
【0036】
皮膚用外用剤を製造するには、有効成分を白色ワセリン、ミツロウ、流動パラフィン、ポリエチレングリコールなどに加えて必要ならば加湿して練合し軟膏剤とするか、ロジン、アクリル酸アルキルエステル重合体などの粘着剤と練合した後ポリアルキルなどの不織布に展延してテープ剤とする。
【0037】
本発明の医薬の投与量及び投与回数は特に限定されず、治療対象疾患の悪化・進展の防止及び/又は治療の目的、疾患の種類、患者の体重や年齢、疾患の重篤度などの条件に応じて、医師の判断により適宜選択することが可能である。一般的には、経口投与における成人一日あたりの投与量は0.01〜1000mg(有効成分重量)程度であり、一日1回又は数回に分けて、或いは数日ごとに投与することができる。注射剤として用いる場合には、成人に対して一日量0.001〜100mg(有効成分重量)を連続投与又は間欠投与することが望ましい。
【0038】
本発明の医薬は、植込錠及びマイクロカプセルに封入された送達システムなどの徐放性製剤として、体内から即時に除去されることを防ぎ得る担体を用いて調製することができる。担体として、例えば、エチレンビニル酢酸塩、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの、生物分解性、生物適合性ポリマーを用いることができる。このような材料は、当業者によって容易に調製することができる。また、リポソームの懸濁液も薬剤的に受容可能な担体として使用することができる。有用なリポソームは、限定はしないが、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG誘導ホスファチジルエタノール(PEG−PE)を含む脂質組成物として、使用に適するサイズになるように、適当なポアサイズのフィルターを通して調製され、逆相蒸発法によって精製される。
【0039】
本発明の医薬は、医薬組成物としてキットの形態で、容器、パック中に投与の説明書と共に含めることができる。本発明の医薬組成物がキットとして供給される場合、該組成物のうち異なる構成成分が別々の容器中に包装され、使用直前に混合される。このように構成成分を別々に包装するのは、活性構成成分の機能を失うことなく長期間の貯蔵を可能にするためである。
キット中に含まれる試薬は、構成成分が活性を長期間有効に持続し、容器の材質によって吸着されず、変質を受けないような容器中に供給される。例えば、封着されたガラスアンプルは、窒素ガスのような中性で不反応性ガスの下において包装されたバッファーを含む。アンプルは、ガラス、ポリカーボネート、ポリスチレンなどの有機ポリマー、セラミック、金属、又は試薬を保持するために通常用いられる他の何れかの適切な材料などから構成される。その他、適切な容器の例として、アンプルなどの類似物質から作られる簡単なボトル、及び内部がアルミニウム又は合金などのホイルで裏打ちされた包装材が含まれる。また、容器には、試験管、バイアル、フラスコ、ボトル、シリンジ、又はその類似物が含まれる。
【0040】
また、キットには使用説明書も添付される。本キットの使用説明は、紙又は他の材質上に印刷され、及び/又はフロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、Zipディスク、ビデオテープ、オーディオテープなどの電気的又は電磁的に読み取り可能な媒体として供給されてもよい。詳細な使用説明は、キット内に実際に添付されていてもよく、或いは、キットの製造者又は分配者によって指定され又は電子メール等で通知されるウェブサイトに掲載されていてもよい。
【0041】
さらに、本発明には、PPARδ転写活性の異常に起因して発症する疾患等(例えば、糖尿病、高脂血症、高コレステロール(特に、LDL)症、高血圧症、肥満症、動脈硬化症、及びこれらの疾患を惹起し易い状態として特徴づけられるメタボリック症候群)の予防又は治療方法が含まれる。
ここで「治療」とは、PPARδ転写活性の異常に起因して発症する疾患等に罹患した哺乳動物において、その病態の進行及び悪化を阻止又は緩和することを意味し、これによって該疾患の進行及び悪化を阻止又は緩和することを目的とする処置のことである。
また、「予防」とは、PPARδ転写活性の異常に起因して発症する疾患等に罹患するおそれがある哺乳動物について、該疾患の発症又は罹患を予め阻止することを意味し、これによって該疾患の諸症状等の発症を予め阻止することを目的とする処置のことである。
【0042】
治療の対象となる「哺乳動物」は、哺乳類に分類される任意の動物を意味し、特に限定はしないが、例えば、ヒトの他、イヌ、ネコ、ウサギなどのペット動物、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマなどの家畜動物などのことである。特に好ましい「哺乳動物」は、ヒトである。
【0043】
以下に実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0044】
〔合成例1〕4’−ブトキシ−3’−((2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)メチル)−2−メチルビフェニル−4−カルボン酸(17)
【化28】


【化29】


化合物18(145mg、0.323mmol)、ビス(ピナコレート)ジボロン(120mg、0.473mmol)、(PhP)PdCl(18mg、0.0398mmol)及びKOAc(140mg、1.43mmol)をジオキサン(3mL)に溶解し、100℃で3時間攪拌した。反応物を酢酸エチル及び水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機層をMgSOで乾燥し、濃縮後、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=10/1)で精製し、化合物19(139mg、0.281mmol、87%)を得た。
【化30】


1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.24 (t, J = 7.9 Hz, 1H), 7.78 (d, J = 1.4 Hz, 1H), 7.74 (dd, J = 8.0, 1.4 Hz, 1H), 7.51 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.37 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 7.31 (m, 1H), 6.89 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 4.69 (d, J = 4.9 Hz, 2H), 4.06 (t, J = 6.7 Hz, 2H), 1.82 (m, 2H), 1.50 (m, 2H), 1.32 (s, 12H), 0.97 (t, J = 7.6 Hz, 3H); MS (FAB) 495 (M)+
化合物19(132mg、0.266mmol)とメチル4−ブロモ−3−メチルベンゾエート(110mg、0.480mmol)を、DME(3mL)、エタノール(2mL)及び2M NaCO水溶液に溶解し、(PhP)PdCl(35mg、0.049mmol)で処理し、60℃で5時間攪拌した。反応物を酢酸エチルで希釈し、ブラインで急冷し、酢酸エチルで抽出した。有機層をMgSOで乾燥し、濃縮後、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=10/1)で精製し、化合物20(111mg、0.214mmol、81%)を得た。
【化31】


1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.25 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 7.93 (s, 1H), 7.86 (dd, J = 7.9, 1.8 Hz, 1H), 7.52 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.42 (m, 1H), 7.39 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 7.31 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 7.27 (m, 1H), 7.23 (dd, J = 8.3, 2.2 Hz, 1H), 6.95 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 4.73 (d, J = 5.5 Hz, 2H), 4.10 (t, J = 6.7 Hz, 2H), 3.92 (s, 3H), 2.32 (s, 3H), 1.86 (m, 2H), 1.55 (m, 2H), 1.01 (t, J = 7.6 Hz, 3H); MS (FAB) 517 (M)+
【0045】
化合物20(32.1mg、62.0μmol)を6N HCL水溶液(3mL)及び酢酸(8mL)に溶解し、100℃で2時間攪拌した。反応物を水に注ぎ、生じた沈殿をフィルターに通して、表題化合物(4’−ブトキシ−3’−((2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)メチル)−2−メチルビフェニル−4−カルボン酸)を白色個体として得た(30.1mg、59.8μmol、96%)。
mp. 240-241℃;
1H-NMR (500 MHz, DMSO) 12.88 (s, 1H), 8.94 (t, J = 5.9 Hz, 1H), 7.84-7.77 (m, 4H), 7.66 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.28-7.25 (m, 3H), 7.08 (m, 1H), 4.50 (d, J = 5.9 Hz, 2H), 4.07 (t, J = 6.1 Hz, 2H), 2.28 (s, 3H), 1.76 (m, 2H), 1.50 (m, 2H), 0.95 (t, J = 7.6 Hz, 3H);
MS (FAB) 504 (M+H)+
【0046】
〔合成例2〕4’−ブトキシ−3’−((2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)メチル)−2−フルオロビフェニル−4−カルボン酸(21)
【化32】


化合物17の合成と同様にして、表題化合物(4’−ブトキシ−3’−((2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)メチル)−2−フルオロビフェニル−4−カルボン酸)を無色個体として得た。
収率71%
mp. 219-221℃;
1H-NMR (500 MHz, DMSO) δ 13.25 (s, 1H), 8.96 (t, J = 5.7 Hz, 1H), 7.83-7.78 (m, 3H), 7.72 (dd, J = 11.3, 1.5 Hz, 1H), 7.68 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.60 (t, J = 7.9 Hz, 1H), 7.52-7.49 (m, 2H), 7.14 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 4.51 (d, J = 5.7 Hz, 2H), 4.09 (t, J = 6.1 Hz, 2H), 1.76 (m, 2H), 1.49 (m, 2H), 0.95 (t, J = 7.3 Hz, 3H);
MS (FAB) 508 (M+H)+
【0047】
〔合成例3〕4’−ブトキシ−3’−((2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)メチル)ビフェニル−4−カルボン酸(22)
【化33】


化合物19(60mg、0.13mmol)とメチル4−カルボキシフェニルボロン酸(50mg、0.30mmol)を、DME(6mL)、エタノール(4mL)及び2M NaCO水溶液に溶解し、(PhP)PdCl(10mg、0.014mmol)で処理し、50℃で5時間攪拌した。反応物を酢酸エチルで希釈し、ブラインで急冷し、酢酸エチルで抽出した。有機層をMgSOで乾燥し、濃縮後、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/1)で精製し、表題化合物(4’−ブトキシ−3’−((2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)メチル)ビフェニル−4−カルボン酸)(30mg、0.061mmol、47%)を白色個体として得た。
mp. 263-265℃;
1H-NMR (500 MHz, DMSO x d6) δ 8.96 (t, J = 5.7 Hz, 1H), 7.98 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.83 (m, 2H), 7.71 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.69-7.62 (m, 3H), 7.12 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 4.52 (d, J = 5.7 Hz, 2H), 4.08 (t, J = 6.1 Hz, 2H), 1.75 (m, 2H), 1.49 (m, 2H), 0.95 (t, J = 7.6 Hz, 3H);
MS (FAB) 490 (M+H)+
【0048】
〔合成例4〕4’−ブトキシ−3’−((2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)メチル)ビフェニル−3−カルボン酸(23)
【化34】


化合物22の合成と同様の方法により、表題化合物(4’−ブトキシ−3’−((2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)メチル)ビフェニル−3−カルボン酸)を得た。
67%;
mp. 263-265℃;
1H-NMR (500 MHz, DMSO) δ 8.28 (t, J = 1.8 Hz, 1H), 8.26 (t, J = 7.9 Hz, 1H), 8.03 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.79 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.63 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.56-7.50 (m, 3H), 7.42 (m, 1H), 7.40 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 6.99 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 4.76 (d, J = 5.5 Hz, 2H), 4.11 (t, J = 6.7 Hz, 2H), 1.87 (m, 2H), 1.55 (m, 2H), 1.01 (t, J = 7.6 Hz, 3H); MS (FAB) 490 (M+H)+
【0049】
〔合成例5〕3’−((2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)メチル)4’−メトキシエトキシビフェニル−3−カルボン酸(24)
【化35】

【0050】
3’−((2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)メチル)−4’−メトキシビフェニル−4−カルボン酸メチル(25)の合成
【化36】


3’−ホルミル−4’−メトキシビフェニル−4−カルボン酸メチル(1.08g,4.00mmol)、2−フルオロ−4−トリフルオロメチルベンズアミド(1.66g,8.01mmol)、トルエン(30mL)の混合溶媒中にトリフルオロ酢酸(0.5mL)、トリエチルシラン(0.5mL)を加え24時間加熱還流した。反応液を濃縮後水中に空け、酢酸エチルで抽出した。有機層をMgSOで乾燥し、濃縮後、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=5/1から3/1)で精製し、化合物25(1.35g、73%)を白色個体として得た。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.25 (t, J = 7.9 Hz, 1H), 8.07 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 7.64 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.62 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 7.57 (dd, J = 8.5, 1.8 Hz, 1H), 7.52 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.42 (m, 1H), 7.39 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 7.00 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 4.74 (d, J = 5.5 Hz, 2H), 3.96 (s, 3H), 3.93 (s, 3H);
MS (FAB) 461 (M)+
【0051】
3’−((2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)メチル)−4’−ヒドロキシビフェニル−4−カルボン酸(26)の合成
【化37】


化合物25(1.15g,2.49mmol)とジクロロメタン(80mL)を混合し−78?Cに冷却した。1mol/L三臭化ホウ素のジクロロメタン溶液(10mmol)を加え、3時間撹拌し、室温にまで戻した。反応液に飽和食塩水を加えジクルルメタンおよび酢酸エチルで抽出した。有機層をMgSOで乾燥し、濃縮後、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=2/1から0/1)で精製し、化合物26(880mg、82%)を白色個体として得た。
1H-NMR (500 MHz, DMSO) δ 9.96 (s, 1H), 8.99 (t, J = 5.5 Hz, 1H), 7.96 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.84-7.81 (m, 2H), 7.68-7.66 (m, 3H), 7.59 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.50 (dd, J = 8.5, 2.4 Hz, 1H), 6.94 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 4.49 (d, J = 5.5 Hz, 2H);
MS (FAB) 434 (M+H)+
【0052】
3’−((2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)メチル)−4’−ヒドロキシビフェニル−4−カルボン酸ベンジルエステル(27)の合成
【化38】


化合物(26)(396mg,0.914mmol)とアセトニトリル(80mL)を混合した。CsF−Celite(0.36g)およびベンジルブロマイド(0.66g, 3.9mmol)を加え5時間加熱還流した。反応液を濃縮し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=5/1から2/1)で精製し、化合物27(353mg74%)を白色個体として得た。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ 9.25 (s, 1H), 8.29 (t, J = 8.2 Hz, 1H), 8.11 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.64 (m, 1H), 7.60 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.56 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.52 (dd, J = 8.5, 2.4 Hz, 1H), 7.47-7.34 (m, 7H), 7.06 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 5.38 (s, 2H), 4.67 (d, J = 6.1 Hz, 2H);
MS (FAB) 524 (M+H)+;
【0053】
3’−((2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)メチル)4’−メトキシエトキシビフェニル−3−カルボン酸ベンジルエステル(28)の合成
【化39】

【0054】
化合物(27)(30.2mg,57.7μmol)、メトキシエトキシクロライド(20 mg,0.21mmol)、無水炭酸カリウム(10mg)およびDMF(1mL)を混合し、80℃にて2時間加熱撹拌した。反応液を飽和食塩水中に空け、ジクロロメタンで抽出した。有機層をMgSOで乾燥し、濃縮後、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=5/1から2/1)で精製し、化合物28(30.5mg、91%)を白色個体として得た。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.15 (t, J = 7.9 Hz, 1H), 8.11 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.65 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.62 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.55-7.34 (m, 9H), 6.99 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 5.38 (s, 2H), 4.75 (d, J = 4.9 Hz, 2H), 4.24 (t, J = 4.7 Hz, 2H), 3.79 (t, J = 4.7 Hz, 2H), 3.35 (s, 3H);
MS (FAB) 582 (M+H)+
【0055】
3’−((2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)メチル)4’−メトキシエトキシビフェニル−3−カルボン酸(24)の合成
【化40】


化合物28(30.5mg,52.4μmol)、10%Pd−C(20mg)とAcOEt(5mL)を混合し、常温常圧下1時間接触還元を行った。反応液をセライトを通してろ過し、濃縮して表題化合物(3’−((2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)メチル)4’−メトキシエトキシビフェニル−3−カルボン酸)(21.0mg、82%)を白色個体として得た。
1H-NMR (500 MHz, DMSO) δ 2.92 (s, 1H), 8.94 (t, J = 5.5 Hz, 1H), 7.99 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 7.86-7.81 (m, 2H), 7.73-7.64 (m, 5H), 7.14 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 4.53 (d, J = 5.5 Hz, 2H), 4.21 (t, J = 4.0 Hz, 2H), 3.72 (t, J = 4.0 Hz, 2H), 3.31 (s, 3H);
MS (FAB) 492 (M+H)+
【0056】
〔実験例〕PPARδの転写活性に対する影響
ダルベッコ変法イーグル培地(10%FCS)中でコンフルエントに培養したヒト胎児腎臓由来細胞HEK−293を1/6に希釈し、96穴プレートに100μLずつ播き、培養を行った。翌日、リン酸バッファー(70μL)の入った14mLチューブをボルテックスで攪拌しながら、調製済みの各種プラスミド(GAL4DNA結合領域とヒトPPARδリガンド結合領域のキメラタンパク質を発現する受容体プラスミド、レポータープラスミド(ルシフェラーゼアッセイ用)、βガラクトシダーゼプラスミド(内部標準用))溶液(70μL)を1滴ずつ添加した。20分後、ボルテックスで攪拌しながら、10μLずつ、96穴プレートに添加した。96穴プレートを約8時間培養したのち、化合物(GW−501516(フルアゴニストとしてのコントロール)、化合物22(4’−ブトキシ−3’−((2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)メチル)ビフェニル−4−カルボン酸)、化合物23(4’−ブトキシ−3’−((2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)メチル)ビフェニル−3−カルボン酸))を含む培地溶液を25μLずつ各穴に添加し、1晩培養した。
培養後、ルシフェラーゼ活性とβガラクトシダーゼ活性を定法に従い測定した。得られたルシフェラーゼ活性をβガラクトシダーゼ活性で除した数値をRLU(Relative Light Unit)とした。
【0057】
活性測定の結果、化合物23の最大活性は、フルアゴニストであるGW−501516の最大活性の約50%程度であり、化合物22は、約10%であることが分かった。また、GW−501516の存在下において、化合物23又は化合物22を添加すると、濃度依存的に最大活性が低下することも明らかとなった(つまり、化合物23及び化合物22はアンタゴニスト活性も示す)。
化合物17(4’−ブトキシ−3’−((2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)メチル)−2−メチルビフェニル−4−カルボン酸)及び化合物21(4’−ブトキシ−3’−((2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)メチル)ビフェニル−4−カルボン酸)については、化合物22と同様に、GW−501516の最大活性の約10%程度の最大活性を示し、アンタゴニスト活性も示した。
また、化合物17、化合物21、化合物22及び化合物23のPPARδに対するEC50は、各々、11nM、53nM、170nM及び29nMであった。
以上のことから、本発明の化合物は、パーシャルアゴニストとしての活性を有し、フルアゴニストと共存させるとアンタゴニストとしても作用することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の化合物は、PPARδのパーシャルアゴニスト又はアンタゴニストとしての活性を有する。従って、これらの化合物を有効成分として含有する医薬は、PPARδのフルアゴニストによって惹起される可能性のある副作用などを回避した薬効を示すことが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】


[式中、Rは直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10の炭化水素基、メトキシエトキシ基を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子を表し、Rは直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜10の炭化水素基、トリフルオロメチル基、無置換又は置換基を有していてもよいフェニル基、無置換又は置換基を有していてもよいフェノキシ基、無置換又は置換基を有していてもよいアダマンチル基を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基を表し、Xは、CHNHCO基又はCONHCH基を表す]で表されるPPARδに選択的なパーシャルアゴニスト及び/又はアンタゴニスト。
【請求項2】
Xがカルボニル基である請求項1に記載のPPARδに選択的なパーシャルアゴニスト及び/又はアンタゴニスト。
【請求項3】
がn−ブチル基である請求項1に記載のPPARδに選択的なパーシャルアゴニスト及び/又はアンタゴニスト。
【請求項4】
が4位に結合するトリフルオロ基であり、Rが2位に結合するフッ素原子である請求項1に記載のPPARδに選択的なパーシャルアゴニスト及び/又はアンタゴニスト。
【請求項5】
が水素原子又はメチル基である請求項1に記載のPPARδに選択的なパーシャルアゴニスト及び/又はアンタゴニスト。
【請求項6】
一般式(1)で表される化合物が、4’−ブトキシ−3’−((2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)メチル)ビフェニル−4−カルボン酸、4’−ブトキシ−3’−((2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)メチル)ビフェニル−3−カルボン酸、4’−ブトキシ−3’−((2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)メチル)−2−メチルビフェニル−4−カルボン酸、4’−ブトキシ−3’−((2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)メチル)−2−フルオロビフェニル−4−カルボン酸、3’−((2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)メチル)4’−メトキシエトキシビフェニル−3−カルボン酸のいずれかである請求項1に記載のPPARδに選択的なパーシャルアゴニスト及び/又はアンタゴニスト。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のPPARδに選択的なパーシャルアゴニストを含むPPARδ転写活性化剤。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載のPPARδに選択的なアンタゴニストを含むPPARδ転写活性化抑制剤。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれかに記載のPPARδに選択的なパーシャルアゴニスト及び/又はアンタゴニストを含むメタボリック症候群の治療剤又は予防剤。
【請求項10】
請求項1乃至6のいずれかに記載のPPARδに選択的なパーシャルアゴニスト及び/又はアンタゴニストを含む、糖尿病、高脂血症、高コレステロール症、高血圧症、肥満症、動脈硬化症の治療剤又は予防剤。

【図1】
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【公開番号】特開2010−275270(P2010−275270A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132055(P2009−132055)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】