説明

新規耐エージング性エアロゾルプロペラントおよびその製造方法

新しい耐エージング性エアロゾル発生剤およびその製造方法。エアロゾル発生剤は、酸化剤、還元剤および結合剤から構成される。酸化剤は硝酸カリウムであり、結合剤はフェノール−ホルムアルデヒド樹脂であり;還元剤はメラミンであり;3成分の質量百分率は、硝酸カリウム60〜80%、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂8〜15%およびメラミン残余、である。製造方法において、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂をエタノールに溶解する必要があり、濃度が質量百分率で40〜55重量%のフェノール−ホルムアルデヒド樹脂溶液を作製し;酸化剤および還元剤を粉砕して混合し;その後フェノール−ホルムアルデヒド樹脂溶液を、混合した粉末に加え、攪拌し、粒状化し、乾燥し、圧力で成形する。従来技術と比較して、耐エージング性エアロゾル発生剤は、高い消火効率および速い速度を有し、また発生剤の耐エージング性が大いに強化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火の技術分野に属し、新規耐エージング性エアロゾル発生剤およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロン製品の代替品として、エアロゾルは、高い消火性能および二次汚染がないなどの利点を有しており、消火業界において国内外で広く適用されている。既存製品において、エアロゾル発生剤は、酸化剤、還元剤、接着剤、添加剤および処理助剤(processing assistant)などから主に配合される。これらの配合物において、適切な材料を選択することによって、エアロゾル発生剤の消火効果を大幅に向上させるだけでなく、処理、貯蔵および使用に関するエアロゾル発生剤の特性を向上させることができる。これらの特性は、エアロゾル発生剤に不可欠である。
【0003】
エアロゾル消火技術の従来技術において、いくつかのエアロゾル発生剤が、特許出願番号WO9733653(PCT/RU 1997/000065、1997.07.08)、RU2106167 (1998.03.10)、RU2116095(1998.07.27)、RU2105581(1998.02.27)、EP0561035(1992.09.01)、US5588493(1994.10.25)、US6116348(1999.07.08)、CN99115863.6およびUS6042664 (1998.07.21)に開示されている。これらのエアロゾル発生剤において、高い過敏性または活性の過塩素酸カリウムまたは塩素酸カリウムが酸化剤として使用されるか、または添加剤、たとえばマグネシウム粉末、アルミニウム粉末、硫黄粉末、ホウ素粉末、フェリシアン化カリウム、ジシクロペンタジエニル鉄などが添加される。しかしながら、これらの高活性酸化剤または添加剤は、発生剤の長期保存に不利であり、発生剤の耐エージング性能を著しく低下させる。
【0004】
特許出願番号CN99115863.6において、主成分として硝酸カリウム、メラミンおよびフェノール樹脂、ならびに補助剤としてフェリシアン化カリウムおよび炭酸水素カリウムが配合されたエアロゾル発生剤が開示され、ここでフェノール樹脂をエタノールに溶解し、10%〜30%濃度でフェノール樹脂溶液を得ている:同特許出願に開示されたエアロゾル発生剤の消火効果は30〜40g/mである。エアロゾル発生剤は、特許出願番号US6042664 (1998.07.21)に開示されている。エアロゾル発生剤の成分は、硝酸カリウム67〜72重量%、フェノール樹脂8〜12重量%、ジシアンジアミド9〜16重量%を含み、残りの成分は、炭酸水素カリウム、フェリシアン化カリウムまたは安息香酸カリウムである。消火組成物においてジシアンジアミドを使用した場合、ガス発生速度が低いことは証明されている。同特許出願に開示されているエアロゾル発生剤の消火効果は35〜45g/mである。また、両特許文献は活性を高めるために添加剤(たとえばフェリシアン化カリウム)を用いているため、エアロゾル発生剤は貯蔵安定性がより低く、また耐エージング性能がより低い。
【発明の概要】
【0005】
先行技術の現状に鑑み、本発明の課題は、高収率でガスを発生し、完全に燃焼することができ、優れた耐エージング性能を有する、簡単な配合のカリウム塩型エアロゾル発生剤およびその製造方法を提供することである。
【0006】
本発明のエアロゾル発生剤は、酸化剤、還元剤および結合剤を含む。酸化剤は硝酸カリウムであり、結合剤はフェノール樹脂であり;還元剤はメラミンであり;エアロゾル発生剤の成分は、硝酸カリウム:60〜80重量%、フェノール樹脂:8〜15重量%およびメラミン:残余、である。
好ましくは、硝酸カリウムの含有量が70〜74重量%であり、フェノール樹脂の含有量が10〜12重量%であり、および残部がメラミンである。
【0007】
本発明のエアロゾル発生剤の製造方法は以下の工程を含む:
工程1:フェノール樹脂をエタノールに溶解し、40〜55重量%濃度のフェノール樹脂溶液を調製する;
工程2:酸化剤および還元剤を80〜200標準ふるいメッシュに粉砕する、特定の比率でそれらを混合する、および混合物を均一状態になるまで混合するために、混合物を80〜200メッシュのふるいを介して3回ふるう;
工程3:混合した粉末にフェノール樹脂溶液を加え、特定の時間攪拌し、その後40−メッシュのふるいを介してペレット化し;その後40℃および20%以下の相対湿度で、揮発性成分の割合が1%より小さくなるまで剤を乾燥する;
工程4:特定の圧力で加圧成形することによって乾燥した剤を成形する。
【0008】
従来技術と比較して、本発明の新規耐エージング性エアロゾル発生剤は、以下の利点を有する:高い消火効率および高い消火速度;また、高活性の酸化剤または添加剤を配合物中に用いないため、発生剤の耐エージング性能が向上する。
【0009】
態様の詳細な説明
本発明のエアロゾル発生剤およびその製造方法を以下の例において詳述する。
例1:
フェノール樹脂8Kgを秤量し、フェノール樹脂をエタノール8kgに完全に溶解し、結合剤溶液を得る。
硝酸カリウム60Kgおよびメラミン30Kgを秤量し、80標準メッシュに粉砕し、それらを混合する。それらを均一状態になるまで混合するために、80−メッシュのふるいを介して3回ふるう。その後、フェノール樹脂溶液を混合した粉末に加え、10分間攪拌し、40−メッシュのふるいを介して強制的にペレット化し、その後40℃および20%以下の相対湿度で、発生剤中の揮発性成分の割合が1%より小さくなるまで発生剤を乾燥する。10Mpaの圧力で加圧成形することによって乾燥化学粒を成形する。
【0010】
例2:
フェノール樹脂10Kgを秤量し、フェノール樹脂をエタノール15kgに完全に溶解し、結合剤溶液を製造する。
硝酸カリウム70Kgおよびメラミン20Kgを秤量し、100標準メッシュに粉砕し、それらを混合する。それらを均一状態になるまで混合するために、100−メッシュのふるいを介して3回ふるう。その後、フェノール樹脂溶液を混合した粉末に加え、10分間攪拌し、40−メッシュのふるいを介して強制的にペレット化し、その後40℃および20%以下の相対湿度で、発生剤中の揮発性成分の割合が1%より小さくなるまで発生剤を乾燥する。10Mpaの圧力で加圧成形することによって乾燥化学粒を成形する。
【0011】
例3:
フェノール樹脂15Kgを秤量し、フェノール樹脂をエタノール11kgに完全に溶解し、結合剤溶液を製造する。
硝酸カリウム60Kgおよびメラミン25Kgを秤量し、200標準メッシュに粉砕し、それらを混合する。それらを均一状態になるまで混合するために、200−メッシュのふるいを介して3回ふるう。その後、フェノール樹脂溶液を混合した粉末に加え、10分間攪拌し、40−メッシュのふるいを介して強制的にペレット化し、その後40℃および20%以下の相対湿度で、発生剤中の揮発性成分の割合が1%より小さくなるまで発生剤を乾燥する。10Mpaの圧力で加圧成形することによって乾燥化学粒を成形する。
【0012】
文献および特許文献で報告されているとおり、カリウム塩型エアロゾル発生剤の消火効率は、通常30〜50g/mである;対照的に、上述した例1〜3におけるエアロゾル発生剤の消火効率は20〜25g/mである。
本発明の別の特徴は;高活性の酸化剤または添加剤を配合物中に使用しない;したがって、エアロゾル発生剤の耐エージング性能が向上する。耐エージング性能は、エージング時間に基づいて試験する。エージング温度および寿命の関係は以下のとおりである:
t=エージング期間(日数)、t≧26日;
T=エージング試験の温度(℃)、T≧80℃
K=0.1ln(2)≒0.069315;
A=以下の表1に示す寿命定数:
【0013】
【表1】

【0014】
上記式に基づき、以下の表2に示す値が得られる:
【表2】

【0015】
表3に示すとおり、本発明のエアロゾル発生剤と数個の特許文献に開示されたエアロゾル発生剤とを、材料、消火までの最小消費率、および耐エージング性の点において比較する。
【0016】
【表3】

【0017】
試験は以下のことを示した:100℃で40日間の試験後、本発明の例1〜3におけるエアロゾル発生剤は、エージング試験前の値と比較して噴出時間および燃焼状態の点において変化がなく、これは本発明のエアロゾル発生剤が、いかなる性能を低下させることなく、常温で10年間保存できることを意味する;対照的に、他の特許文献に開示された全てのエアロゾル発生剤が試験において、燃焼し分解する。最も簡単な発生剤の配合で、本発明は、従来技術の類似製品よりも高い消火効率および高い耐エージング性能を達成する。
本発明において、高活性酸化剤または添加剤は使用されないが、本発明の特別な工程を介して調製されたフェノール樹脂のエタノール溶液は40〜55重量%の濃度を有する。フェノール樹脂は、結合剤だけではなく、燃焼剤としてもまた使用することができ、これにより発生剤の燃焼効率が向上する。
【0018】
上記の例は、例示であることに留意されたい。本発明に対する上記の説示に基づいて、当業者は本発明の精神から逸脱することなく、容易に態様に改変やバリエーションを付すことができる;しかしながら、これらすべての改変やバリエーションは、本発明の保護範囲内にあると考えられるべきである。当業者は、上記の記載は、本発明に任意の制限を成すものではなく、本発明の課題を詳しく述べるためおよび説明するために提供されているにすぎないと理解するであろう。本発明の保護範囲は、特許請求の範囲およびその均等物でのみ限定されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新規耐エージング性エアロゾル発生剤であって、エアロゾル発生剤が、酸化剤、還元剤および結合剤を含み;酸化剤が硝酸カリウムであり、結合剤がフェノール樹脂であり;および還元剤がメラミンであり;3成分の重量百分率は、硝酸カリウム:60〜80%、フェノール樹脂:8〜15%およびメラミン:残余、であることを特徴とする、前記新規耐エージング性エアロゾル発生剤。
【請求項2】
硝酸カリウムの含有量が70〜74%であり、フェノール樹脂の含有量が10〜12%であり、残部がメラミンであることを特徴とする、請求項1に記載の新規耐エージング性エアロゾル発生剤。
【請求項3】
以下の工程:
工程1:フェノール樹脂をエタノールに溶解し、40〜55重量%濃度のフェノール樹脂溶液を調製する;
工程2:酸化剤および還元剤を80〜200標準ふるいメッシュに粉砕する、特定の比率でそれらを混合する、および混合物を均一状態になるまで混合するために、混合物を80〜200メッシュのふるいを介して3回ふるう;
工程3:混合した粉末にフェノール樹脂溶液を加え、特定の時間攪拌し、その後40−メッシュのふるいを介してペレット化し;その後40℃および20%以下の相対湿度で、揮発性成分の割合が1%より小さくなるまで剤を乾燥する;
工程4:特定の圧力で加圧成形することによって乾燥した剤を成形する、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の新規耐エージング性エアロゾル発生剤の製造方法。
【請求項4】
工程3において、混合する時間が10分であることを特徴とする、請求項3に記載の新規耐エージング性エアロゾル発生剤の製造方法。
【請求項5】
工程4において、かける圧力が10Mpaであることを特徴とする、請求項3に記載の新規耐エージング性エアロゾル発生剤の製造方法。

【公表番号】特表2013−508106(P2013−508106A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535600(P2012−535600)
【出願日】平成22年7月3日(2010.7.3)
【国際出願番号】PCT/CN2010/074967
【国際公開番号】WO2011/088667
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(510009290)シャンシー ジェイ アンド アール ファイア ファイティング カンパニー リミテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】SHAANXI J&R FIRE FIGHTING CO., LTD
【住所又は居所原語表記】7th Floor Qingyang International Building,65# Keji 2nd Road,Gaoxin District, Xi’an ,Shaanxi 710075 China
【Fターム(参考)】