説明

方向揃え装置

【課題】 できるだけ簡易な装置でリーマ等の歯科用治療器具の向きを揃える方向揃え装置を提供する。
【解決手段】 刃部21とハンドル部22を有する歯科用治療器具20の方向揃え装置10であって、歯科用治療器具20を滑降させる上斜面11及び下斜面12の二つの斜面を有し、上斜面11及び下斜面12は、互いに逆向きの斜面であって、いずれの斜面も歯科用治療器具20が滑降可能な勾配を有し、上斜面11は下斜面12の上方に離間して位置してあり、上斜面11の最下端まで滑降した歯科用治療器具20が、下斜面12上に着地し、ハンドル部22が斜面下側になった状態で滑降することを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーマ等の歯科用治療器具の方向を揃える装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
根管治療に使用されるリーマ等の歯科用治療器具は、刃部とハンドル部を有する。製造されたこのような歯科用治療器具は、ケースに入れて出荷されるが、そのとき向きを揃える必要がある。従来は、手作業により向きを揃えてケース詰めを行っていたが、作業効率を向上させるためには方向揃えは自動で行われることが望ましい。しかし、自動化するためには、画像センサをはじめとする各種センサを備えた装置が必要になると考えられるので、装置が複雑かつ高価になってしまうという問題がある。
【0003】
そこで、センサ等を特に必要としない簡易な方法で方向揃えをする装置が望まれるところ、揃える対象となる物品は異なるが、箸の向きを揃える簡易な装置が特許文献1(特開2008−247594号公報)に開示されている。ここでは、箸を水平に落下させ、その箸の中央付近を中間受け手段に載せることで、箸の太い方から落下することを利用して、向きを揃えるものである。
【0004】
ここで、本発明で方向揃えの対象としているリーマ等の歯科用治療器具は、刃部とハンドル部を有していることから、ハンドル部の方が重いという特徴があるので、特許文献1と同じ方法を使用できそうだが、歯科用治療器具は箸のように長くはないので、同じ方法をそのまま適用して方向を制御することは難しく、また、特許文献1の方法では、歯科用治療器具の刃部を傷める可能性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−247594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、対象としている歯科用治療器具が刃部とハンドル部を有しているという特徴を生かしつつ、できるだけ簡易な装置で、刃部を傷めないように歯科用治療器具の向きを揃える方向揃え装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の方向揃え装置は、刃部とハンドル部を有する歯科用治療器具の方向揃え装置であって、歯科用治療器具を滑降させる上斜面及び下斜面の二つの斜面を有し、前記上斜面及び下斜面は、互いに逆向きの斜面であって、いずれの斜面も歯科用治療器具が滑降可能な勾配を有し、上斜面は下斜面の上方に離間して位置してあり、上斜面の最下端まで滑降した歯科用治療器具が、下斜面上に着地し、ハンドル部が斜面下側になった状態で滑降することを特徴とするものである。
【0008】
ここで、上斜面をレール状としたり、下斜面の勾配を水平面に対し10゜より大きく40゜より小さい角度としたり、上斜面と下斜面との離間距離を、上斜面の最下端から下斜面上に鉛直方向に前記ハンドル部の長さに対して5mm以上、20mm以下の長さの範囲にすると良い。なお、本発明で取り扱う歯科用治療器具は、具体的には、リーマ、ファイル、スプレッダー、プラガー、ピーソリーマ、ゲーツドリル又はペーストキャリア等である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基本的には二つの斜面を設けただけの簡易な装置にも拘わらず、刃部とハンドル部とを有する歯科用治療器具の方向を揃えることができるという効果を奏する。また、斜面を滑降するときに刃部の先端が斜面に接触することがあるが、根管壁を削る刃部の側面部分は接触しないので、刃部を傷めることはないという効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の方向揃え装置の構造を示す図であり、(a)は上斜面上を歯科用治療器具の刃部が前になって滑降する場合、(b)は上斜面上を歯科用治療器具のハンドル部が前になって滑降する場合を示す。
【図2】上斜面をVレール状にした断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の方向揃え装置の構造を示す図であり、(a)は上斜面上を歯科用治療器具の刃部が前になって滑降する場合、(b)は上斜面上を歯科用治療器具のハンドル部が前になって滑降する場合を示す。また、図2は、上斜面をVレール状にした断面図である。
【0012】
本発明の方向揃えの対象となる歯科用治療器具20は、根管治療等に用いられるリーマ、ファイル、スプレッダー、プラガー、ピーソリーマ、ゲーツドリル又はペーストキャリア等であって、刃部21とハンドル部22を有するものである。刃部21はステンレス製のものが多く、テーパーを付けて所望の作業部の形状に研削したり、また、テーパー状の角棒に研削した後、らせん状にねじったりして形成される。尚、本発明でいう刃部とは、刃をつけた部分の元側のシャンク部やネック部(ピーソリーマ又はゲーツドリル等において、シャンク部とハンドル部とをテーパー状に接続する部分)も含むものとする。ハンドル部22はストレート状等で、刃部21よりも直径が大きく且つ重量が大きく構成されており、医師が使用時に摘む箇所又はハンドピースに接続する際にチャックする箇所であり、合成樹脂または金属等で形成されている。刃部21とハンドル部22とを別々に形成し、接続して歯科用治療器具20を構成しても良く、刃部21とハンドル部22とを、線材の研削加工等により一体成形で形成しても良い。そして、ハンドル部22を手で、又はハンドピースの駆動機構により上下させたり、回転させたりして使用する。なお、このような歯科用治療器具20は、ハンドル部22が重いので、重心はハンドル部22側にある。径及び長さ等のサイズは使用する器具により様々であるが、本発明が対象とする器具のサイズは、刃部21の先端部(先端から3mm部)の直径が約0.12〜1.85mm、長さが約18〜31mm、ハンドル部22の直径が約2.35〜4.5mm、長さが約10〜15mmの範囲におおよそ含まれるものである。
【0013】
図1(a)を用いて、上斜面11上を歯科用治療器具20の刃部21が前になって滑降している場合の方向揃えを説明する。まず、歯科用治療器具20が上斜面11から下斜面12に移るときに、刃部21の先端部が下斜面12に接触する。ここでは、斜面を滑ってきただけなので、刃部21を傷めるほど強く衝突する訳ではない。そして、次に、ハンドル部22が上斜面11の最下端を過ぎて、下斜面12上に落下する。このとき、上斜面11を滑降してきた勢いによって、刃部21が下斜面12に接した状態で若干斜面を上る。これは、ハンドル部22が刃部21に比べて重いことから、刃部21が上斜面11の最下端を過ぎたときにも、先行している刃部21から真下に落下し難いことに因る。その後、下斜面12上に着地した歯科用治療器具20は、ハンドル部22が前になった状態で滑降することになる。
【0014】
次に、図1(b)を用いて、上斜面11上を歯科用治療器具20のハンドル部22が前になって滑降している場合の方向揃えを説明する。この場合、ハンドル部22が上斜面11の最下端を過ぎたとき、刃部21よりもハンドル部22の方が重いことから、ハンドル部22が真下に向かって落下する。そうするとハンドル部22が落下する力によって、刃部21が持ち上げられ、歯科用治療器具20は回転しながら、下斜面12に向かって落下する。そうして、ハンドル部22から、下斜面12上に着地する。そして、ハンドル部22が前になった状態で滑降する。
【0015】
以上のように、図1(a)(b)のどちらの場合も、下斜面12を滑降するときは、ハンドル部22が前となっているため、上斜面11を滑降するときの歯科用治療器具20の向きに拘わらず、最終的には同じ方向に揃えることができることになる。
【0016】
ここで、いずれの斜面についても、歯科用治療器具20が斜面の外へ逸脱するのを防ぐため、図2に示すようにレール状にするのが望ましい。特に、上斜面11では、完成した歯科用治療器具20を無造作に斜面上に載せたときに、歯科用治療器具20が横を向いて転がってしまうのを防ぐためにも、V字型やU字型、コの字型等のレール状(溝状)にしておく必要がある。本実施例では、金属の板を塑性加工等して形成したVレールとしている。下斜面12については、歯科用治療器具20が下斜面12を滑降するときにハンドル部22が斜面下側になっているため、必ずしもレール状にしておく必要はないが、レール状にしておくと確実である。
【0017】
いずれの斜面の材質も、表面が滑りやすく、錆びたり簡単に削れたりしないものであれば、特に問題はない。したがって、基本的にはステンレス板で十分で、その他の金属や合成樹脂等も使用可能である。また、歯科用治療器具20が斜面を滑降しているときには、刃部21の先端が斜面に接触することもあるが、強く衝突する訳ではないので、刃部21を傷めることはない。
【0018】
以上のような方向揃え装置10によっても、歯科用治療器具20が上斜面11と下斜面12との間で止まってしまったり、歯科用治療器具20が想定している動きをせず、方向が揃わないという不都合を生じることがある。そこで、様々なサイズ(径、長さ等)の歯科用治療器具20について実験を行い、最適な斜面の勾配や、上斜面11と下斜面12との離間距離dを検討する必要がある。
【0019】
まず、斜面の勾配について実験をしたところ、水平面に対し勾配が10゜以下の場合は、ほとんどのサイズの歯科用治療器具20で滑降せずに止まってしまった。つまり、上斜面11、下斜面12共に、勾配は少なくとも10゜よりも大きくする必要があることが分かった。また、下斜面12の勾配αについては、勾配を40゜以上にすると、図1(a)のように上斜面11を刃部21が前になって滑降する場合、刃部21の先端が下斜面12に接触したときに、下斜面12上を滑らかに上らないため、歯科用治療器具20が上斜面11と下斜面12の間に引っかかってしまうという不都合が生じやすい。したがって、斜面の勾配としては、少なくとも10゜よりも大きくし、特に下斜面の勾配αについては、40゜よりも小さくすべきである。さらに望ましくは、30゜〜35゜にすると、より方向揃えの確実性が増すことがわかった。
【0020】
次に上斜面11と下斜面12との離間距離dについて検討をする。ここで離間距離dとは、上斜面11の最下端から下斜面12上に鉛直方向に測った距離である。歯科用治療器具20が、上斜面11をハンドル部22が前の状態で滑降するときは、離間距離dがハンドル部22の長さよりも十分に長くなければ、図1(b)のように上手く回転できないと考えられる。また、逆に離間距離dが大きすぎると、歯科用治療器具20が下斜面12上に落下したときに跳ねたりして、想定外の方向を向くことがあると考えられる。そこで、様々なサイズの歯科用治療器具20を用いて、実験を行ったところ、離間距離dがハンドル部22より5mm〜20mm程度大きい場合に成功する傾向があることがわかり、特に20mm以上30mm以下のときは、概ね方向揃えに成功し、特に25mm程度のときの成功率が高いことが分かった。
【0021】
以上のように、二つの斜面を備えた方向揃え装置によれば、センサー等を必要とせず、比較的簡易な構造で、リーマ等の歯科用治療器具の方向を揃えることが可能である。
【符号の説明】
【0022】
10 方向揃え装置
11 上斜面
12 下斜面
20 歯科用治療器具
21 刃部
22 ハンドル部
d 離間距離
α 下斜面の勾配

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃部とハンドル部を有する歯科用治療器具の方向揃え装置であって、
前記歯科用治療器具を滑降させる上斜面及び下斜面の二つの斜面を有し、
前記上斜面と前記下斜面は、互いに逆向きの斜面であって、いずれの斜面も前記歯科用治療器具が滑降可能な勾配を有し、
前記上斜面は前記下斜面の上方に離間して位置してあり、前記上斜面の最下端まで滑降した前記歯科用治療器具は、前記下斜面上に着地し、前記ハンドル部が斜面下方向になった状態で滑降することを特徴とする方向揃え装置。
【請求項2】
前記上斜面がレール状であることを特徴とする請求項1に記載の方向揃え装置。
【請求項3】
前記下斜面の勾配が、水平面に対し10゜より大きく40゜より小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の方向揃え装置。
【請求項4】
前記上斜面と前記下斜面との離間距離が、前記上斜面の最下端から前記下斜面上に鉛直方向に前記ハンドル部の長さに対して5mm以上、20mm以下の長さの範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方向揃え装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−45651(P2011−45651A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198620(P2009−198620)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(390003229)マニー株式会社 (66)
【Fターム(参考)】