説明

方向標示杭

【課題】杭を位置基準にして、方向または方位を容易に認識させることができる方向標示杭を提供する。
【解決手段】特定の方向を標示する、1つまたは複数の方向標示マーク52と、1つまたは複数のICタグ72,74とが設けられ、地盤に一部が埋め込まれる方向標示杭1であって、ICタグ72,74は、方向標示マーク52に関する情報、方向標示マーク52が標示する方向に関する情報、および方向標示マーク52が標示する方向に関する情報へのリンク先の少なくとも1つを記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方向標示マークが設けられ、1つまたは複数の方向を標示することができる方向標示杭に関する。
【背景技術】
【0002】
土地や道路の境界、または地下埋設物の埋設位置などを表示するための標示杭は、位置を標示するものである。そのため、杭の設置場所において撮影された写真は、特定の位置における写真として利用されることができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−022980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、杭の周囲を撮影する場合、全周囲360°のうち、方位を定めて対象を撮影する必要がある。したがって、例えば、時間をおいて、杭を基準にして特定の方位つまり同一の対象を複数回撮影する場合には、同一の杭を位置基準にして撮影するだけでなく、その杭に対する撮影方向も同一にしなければならない。ここで、絶対的な方向、つまり方位を撮影方向として指定し、撮影ごとに同一の方位を撮影するようにする方法もあるが、杭が設置された現地において正確な方位を認識するためには方位磁石や地図などが必要となる。
【0005】
そこで、本発明は、杭を位置基準にして、方向または方位を容易に認識させることができる方向標示杭を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一構成にかかる方向標示杭は、特定の方向を標示する、1つまたは複数の方向標示マークと、1つまたは複数のICタグとが設けられ、地盤に一部が埋め込まれる方向標示杭であって、前記ICタグは、前記方向標示マークに関する情報、前記方向標示マークが標示する方向に関する情報、および前記方向標示マークが標示する方向に関する情報へのリンク先の少なくとも1つを記憶する。
【0007】
この構成によれば、ICタグが、方向標示マークに関する情報、方向標示マークが標示する方向に関する情報、および方向標示マークが標示する方向に関する情報へのリンク先の少なくとも1つを記憶するため、ICタグのリーダによってこの情報を取り出すだけで、この情報に基づいて、方向標示杭を位置基準にした方位または方向を認識させることができる。なお、方向標示マークは、特定の方位(「北」や「南」など)を標示するものであってもよい。
【0008】
「方向標示杭」は、1つまたは複数の方向を標示、つまり指し示すことができる杭である。
「方向標示マークに関する情報」には、例えば、1つまたは複数の方向標示マークのうちの特定の方向標示マークの識別番号が含まれる。ただし、方向標示杭の識別番号であっても、サーバのような他の装置において、方向標示杭と方向標示マークの関係が保持されていれば、方向標示マークに関する情報に含まれる。
「方向標示マークが標示する方向に関する情報」には、方向標示マークが標示する方向の方位角が含まれる。この他にも、方向標示杭の用途に応じた様々な情報が含まれてもよい。
「情報へのリンク先」とは、例えば、その情報を記憶するウェブサーバのURLである。ただし、「情報へのリンク先」はURLに限定されるものではなく、情報の所在場所を示すものであって、情報取得を可能にするものであれば、いかなるものであってもよい。
【0009】
好ましい実施形態によれば、前記方向標示マークが複数設けられ、各方向標示マークに前記ICタグが1つ以上関連付けられており、これらICタグは、それぞれ、関連付けられた方向標示マークが標示する方向に関する情報、または関連付けられた方向標示マークが標示する方向に関する情報へのリンク先を記憶する。これにより、方向標示マーク自体は単に方向を標示するものであるが、その方向に関する情報をICタグまたはICタグが記憶するリンク先から取り出すことができる。したがって、この方向標示杭は、方向標示マークによって標示される方向と、それに関連した情報とを結び付けて、様々な用途で利用されることができる。また、方向標示杭自体に、そのような方向に関する情報を直接付す場合には、付すことができる情報の量に制限があるが、ICタグまたはリンク先に記憶させることで、方向標示杭に情報を直接付す場合に比べて、様々な情報を含めることができる。
【0010】
前記方向標示杭において、前記方向標示マークが複数設けられ、これら複数の方向標示マークの数が任意の整数nの場合、これら方向標示マークがそれぞれ標示する方向は、隣接する方向標示マークに対してほぼ(360/n)°の角度をなしてもよい。
【0011】
前記1つまたは複数のICタグの少なくとも1つがアクティブ型ICタグであってもよい。代わりに、前記1つまたは複数のICタグの少なくとも1つがパッシブ型ICタグであってもよい。
なお、本明細書中に記載する「アクティブ型ICタグ」は、能動型、すなわち電池を備えることでICタグ自体が電波を発信するものを意味する。これに対して、「パッシブ型ICタグ」は、受動型、すなわち例えばリーダなどから電波を受信して、このように供給された電力を用いて動作するものを意味する。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる方向標示杭によれば、方向標示杭に設けられたICタグが、方向標示マークに関する情報、方向標示マークが標示する方向に関する情報、または方向標示マークが標示する方向に関する情報へのリンク先を記憶するため、これらの情報を取得して、当該方向標示杭に設けられた方向標示マークと共に用いれば、単に方向を標示するだけの機能を有する方向標示マークに様々な情報が付加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1〜第3実施形態にかかる方向標示杭の斜視図である。
【図2】本発明の第1および第2実施形態にかかる方向標示杭の上面図である。
【図3】(a)は図1の方向標示杭への情報の書込みを示す概略図であり、(b)図1の方向標示杭からの情報の読出しを示す概略図である。
【図4】本発明の第3実施形態にかかる方向標示杭の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第1実施形態にかかる方向標示杭を図面に基づいて説明する。
図1に示す本実施形態にかかる方向標示杭1は例えば位置標示部材として用いられる標示杭である。この方向標示杭1は、細長い断面十字形の杭本体10の先端側に先鋭部11を、基端側に四角柱形状とされた頭部12をそれぞれ形成して、この頭部12にキャップ20を被嵌させている。なお、杭本体10は、断面十字形ではなく、頭部12と同形および同一寸法、すなわち頭部12から続いた四角柱形状で、先鋭部11に向って先細りになったものでもよい。前記杭本体10およびキャップ20の横断面形状は、三角形、四角形以上の多角形、円形など種々の形状とすることができる。前記杭本体10およびキャップ20の材料には、主に樹脂製品の成形時に発生する樹脂かすや樹脂製品の廃物などを原料とするリサイクル樹脂が用いられる。
【0015】
キャップ20の頂面50には、図2に示すように、中心部に円形状の杭標示プレート30を取り付けるための円形状の杭標示用凹所51が形成されている。この凹所51の周りには、矢印形状からなり、矢印の先端がそれぞれ特定の方向を標示する8つの方向標示マーク52が設けられている。これら方向標示マーク52は、本実施形態ではプリントして頂面50に付されたものである。ただし、これら方向標示マーク52は、線を彫り込んで形成されてもよく、その他いかなる方法によって形成されてもよい。これら方向標示マーク52がそれぞれ標示する方向は、方向標示マーク52の数がnの場合、隣接する方向標示マーク52に対してほぼ(180/n)°の角度をなしている。すなわち、本実施形態では方向標示マーク52の数が8であるため、これら方向標示マーク52が標示する方向は、設置後は水平方向に延びる頂面50内において、互いに45°の角度をなしている。具体的には、方向標示マーク52の矢印の先端が指示する方向は45°ずつずれており、8方向を指し示している。キャップ20(図1)の頂面50の周縁は面取りされている。
【0016】
杭表示用凹所51に接着剤によって固着される円形状の杭表示プレート30の表面には、方向標示杭1の識別番号や用途、土地の境界表示や区画番号、基準点からの距離、地下埋設物の情報などが付されている(図2では杭表示プレート30の表面に付された表示を図示していない)。この杭標示プレート30の中心部の下側の杭表示用凹所51には、アクティブ型ICタグ72が設けられてもよい。このアクティブ型ICタグ72は、杭表示プレート30の表面に付される、方向標示杭1の識別番号や用途、土地の境界表示や区画番号、基準点からの距離、地下埋設物の情報などに加えて、例えばこの方向標示杭1に収納されたセンサ(図示せず)が検知した検知データを記憶する。アクティブ型ICタグ72が方向標示杭1の識別番号や用途などを記憶する場合、杭表示プレート30の表面には、これらの情報の一部または全部が付されなくてもよい。
【0017】
杭表示プレート30は樹脂製であり、円形、多角形などの任意のものを使用できるが、本実施形態では円形状のものを用い、杭表示用凹所51も平面視円形状に形成している。この杭表示プレート30の中心部31には、窪みが設けられて、杭の断面中心を示している。杭表示プレート30は、接着剤によって杭表示用凹所51に取り付けられている。
【0018】
各方向標示マーク52には、その矢印形状の矢印先端部52aに、それぞれパッシブ型ICタグ74が設けられている。このように、方向標示マーク52が構成する矢印形状の内側にパッシブ型ICタグ74を設けることで、各方向標示マーク52にパッシブ型ICタグ74が1つ対応して関連付けられている。
【0019】
これらパッシブ型ICタグ74は、関連付けられた方向標示マーク52が標示する方向に関する情報を記憶する。具体的には、例えば、方向標示杭1が地盤に一部埋め込まれて固定された状態において、ある方向標示マーク52Aに関連付けられたパッシブ型ICタグ74Aは、方向標示マーク52Aが標示する方向、つまり方向標示マーク52Aを構成する矢印の先端が指示する方向の方位角を記憶する。方位角に加えて、この方位角の方向に関連した情報を記憶してもよい。代替形態として、パッシブ型ICタグ74は、関連付けられた方向標示マークが標示する方向に関する情報へのリンク先を記憶してもよい。具体的には、ICタグ74Aは特定のウェブサーバのURLを記憶する。そして、このURLが示すウェブページが、方位角やこの方位角の方向に関連した情報を含んでもよい。このようにパッシブ型ICタグ74AにURLのみを記憶した場合、ICタグの最大記憶容量の制限を受けずに、方向標示マークが標示する方向に関する情報を記憶することができる。
【0020】
本実施形態において、1つの方向標示マーク52に1つのパッシブ型ICタグ74が対応して関連付けられるものとしたが、2つ以上のパッシブ型ICタグ74が1つの方向標示マーク52に対応して関連付けられてもよい。
【0021】
次に、この第1実施形態にかかる方向標示杭の使用方法について説明する。本実施形態における方向標示杭は、山林中に多数設置されるものとする。
図1に示す方向標示杭1、すなわちICタグ72,74およびキャップ20が既に取付けられて一体化している方向標示杭1を、所定の地盤に打ち込む。なお、地盤への打ち込み時にキャップ20は必ずしも杭1に一体化していなくてもよく、地盤への打ち込み後に取付けられて一体化させてもよい。なお、キャップ20は、杭1の一部を構成する杭本体10に取り付けられる場合に限らず、既に機能している杭の頭部に付属的に取り付けられてもよい。このように方向標示マーク52が設けられたキャップ20を既存の杭に取り付けることで、既存の杭に方向標示機能を追加して方向標示杭にすることができる。次に、図2の杭表示プレート30をキャップ20の頂面50に取り付ける。
【0022】
その後、図3(a)に示すように、方向標示杭1の各パッシブ型ICタグ74に、それぞれ関連付けられた方向標示マーク52が標示する方向に関する情報を、ICタグライタ82によって書き込む。このICタグライタ82は、例えば、多機能携帯端末(または高機能携帯端末)84における1つの機能として実現されている。
【0023】
具体的には、方位角センサ(図示せず)を用いて、1つの方向標示マーク52が標示する方向の方位角(北方向を基準とする水平方向の角度)を測定し、この測定した方位角を、その方向標示マーク52に関連付けられたパッシブ型ICタグ74に、ICタグライタ82によって作業者Aが書き込む。方位角センサとして、多機能携帯端末84に搭載された地磁気センサ(図示せず)を用いてもよい。作業者Aは、さらに、この方向標示マーク52が標示する方向に関する情報、例えば、方向標示マーク52が標示する方向付近に位置する方向標示杭の識別番号や、その方向標示杭までの距離などの任意の情報を、ICタグライタ82によってICタグ74に書き込む。そして、この作業を、全ての方向標示マーク52に対して行う。
【0024】
なお、方向標示杭1を地盤に打ち込む際に、各方向標示マーク52が標示する方向は必ずしも設定されなくてもよい。すなわち、適当に方向標示杭1を地盤に打ち込んだとしても、各方向標示マーク52が標示する方向は、東西南北のような方向には設定されないが、任意の方向となる。もちろん、方向標示杭1を地盤に打ち込む際に、方向標示1をその長手方向軸を中心として回転させながら、各方向標示マーク52が特定の方位を標示するように調節してもよい。
【0025】
なお、方向標示杭1のアクティブ型ICタグ72に対しては、設置後に情報が記憶されるのではなく、アクティブ型ICタグ72を方向標示杭1のキャップ20に取り付けた時点で記憶されるのが好ましい。
【0026】
このようにして山林中に多数の方向標示杭1が設置されると、各方向標示杭1のアクティブ型ICタグ72が、その方向標示杭1に収納されたセンサ(図示せず)が検知した検知データを上書きしながら記憶する。アクティブ型ICタグ72は、また、記憶している方向標示杭1の識別番号を定期的に発信する。
【0027】
図3(b)に示すように、山林で作業を行う作業者Aは、ICタグリーダ86の機能を有する多機能携帯端末84を保持し、適切なアプリケーションソフトウェアを起動してICタグリーダ機能を実行させる。そして、作業者Aは、探し出そうとする方向標示杭1の識別番号を、このアプリケーションソフトウェアに入力する。ここで、設置された方向標示杭1のアクティブ型ICタグ72から所定範囲内に作業者Aが保持する多機能携帯端末84が位置すると、その方向標示杭1が発信する、方向標示杭1の識別番号を、多機能携帯端末84が受信する。そして、起動されているアプリケーションソフトウェアが、この受信した識別番号と、作業者Aが入力した識別番号とが同一であるか否かを判断する。同一であれば、多機能携帯端末84の画像や音声の出力によって作業者Aに対象とする方向標示杭1が所定範囲内に存在することを通知する。
【0028】
これにより、作業者Aは、周辺に方向標示杭1が設置されていることを認識できる。そのため、作業者Aは、方向標示杭1を容易に探し出すことができ、次に、多機能携帯端末84の適切なアプリケーションソフトウェアを起動させて、探し出した方向標示杭1の各方向標示マーク52に多機能携帯端末84を近づけることで、そのICタグリーダ86によって各方向標示マーク52に対応するICタグ74が記憶する情報を読み出すことができる。具体的には、方向標示マーク52が標示する方向の方位角に加えて、その方向付近に位置する方向標示杭の識別番号およびその方向標示杭までの距離などを読出す。そのため、作業者Aは、次に探し出すべき方向標示杭の方向を確認することができる。
【0029】
次に、本発明の第2実施形態にかかる方向標示杭について説明する。この方向標示杭は、図1および図2に示した第1実施形態にかかる方向標示杭1と構造は同一であるが、用途が異なるためパッシブ型ICタグ74が記憶する情報が異なる。具体的には、パッシブ型ICタグ74は、それぞれ、各方向標示マークが標示する方向の地域やその地域の名所などを記憶する。
【0030】
この第2実施形態にかかる方向標示杭は、道路に設置されている。図3(b)に示したようにICタグリーダ86の機能を有する多機能携帯端末84を保持する個人が、多機能携帯端末84の適切なアプリケーションソフトウェアを起動させて、方向標示杭1の特定の方向標示マーク52のパッシブ型ICタグ74に多機能携帯端末84を近づけることで、各方向標示マーク52に対応するパッシブ型ICタグ74が記憶する情報を読み出すことができる。具体的には、各方向標示マークが標示する方向の地域やその地域の名所などを読み出す。これにより、その個人は、目的地の方向や目的の名所の方向を確認することができる。
【0031】
次に、本発明の第3実施形態にかかる方向標示杭について説明する。この方向標示杭は、その構造は図1に示した第1および第2実施形態にかかる方向標示杭1と同一である。しかし、方向標示マーク52の構成が異なり、パッシブ型ICタグ72を備えていない点が、第1および第2実施形態にかかる方向標示杭1とは異なる。
【0032】
本実施形態にかかる方向標示杭1では、図4に示すように、キャップ20の頂面50には、中心部に円形状の杭標示プレート30を取り付けるための円形状の杭標示用凹所51およびこの凹所51から8つの方向延びた矢印形状の8つの方向標示用凹所(方向標示マーク)52が形成されている。これら方向標示用凹所52はこのように矢印形状から形成され、矢印の先端が特定の方向を指示するため、方向標示用凹所52はそれぞれ特定の方向を標示する方向標示マークである。
【0033】
杭表示プレート30の表面には、また、方向標示用凹所52に対応して、中心部分から放射線状に延び、その延在方向が45°ずつずれた線32が付されている。この線32は、後述するように、杭表示プレート30の取付け時に位置合わせに用いられる。
【0034】
方向標示用凹所52には、方向を指示する方向番号表示体60がキャップ20の成形時に形成されている。具体的には、それぞれ「1」,「2」,「3」,「4」,「5」,「6」,「7」および「8」の形状からなる方向番号表示体60が、8つの方向標示用凹所52に、数字の順序が例えば時計方向周りになるようにそれぞれ配置されている。これら各方向番号表示体60は、頂面50の中心が数字の下側となるように方向付けられている。このように、方向番号表示体60が矢印形状の各方向標示用凹所52に設けられているため、各矢印はこれら番号によってそれぞれ識別されることができる。各方向標示用凹所52には、また、頂面50の中心から放射線状に延び、その延在方向が45°ずつずれた線61が、キャップ20の成形時に形成されている。すなわち、線61は、それぞれ、方向番号表示体60に沿っている。
【0035】
また、方向標示杭1の埋設される場所の地理的情報や埋設状況のような標示情報を記憶させたアクティブ型ICタグ72が、杭表示プレート30の中心部の下側の杭表示用凹所51に取り付けられている。そして、このアクティブ型ICタグ72には、方向標示杭1の識別番号や用途、土地の境界表示や区画番号、基準点からの距離、地下埋設物の情報など、ならびに方向標示杭1に収納されたセンサ(図示せず)が検知した検知データに加えて、方向標示用凹所52に関する情報を記憶する。方向標示用凹所52に関する情報としては、特定の方向標示用凹所52Aの識別番号(例えば、方向番号表示体60に対応する番号「1」)である。ただし、方向標示用凹所52に関する情報は、方向標示杭1の識別番号であってもよく、この場合、サーバ(図示せず)のような他の装置において、方向標示杭1と、特定の方向標示用凹所52Aとの関係が保持されている。
【0036】
次に、この第3実施形態にかかる方向標示杭の使用方法について説明する。
方向標示杭を地盤に打ち込んだ後に、図4(b)の杭表示プレート30をキャップ20の頂面50に取り付ける。この際に、杭表示プレート30の線32は方向標示用凹所52の線61に合わせられて、線32と線61が一直線となるように取付けられる。ここで、方向番号表示体60は方向標示用凹所52内に予め固着されており、各方向番号表示体60が指示する方向は特に調整されるものではない。すなわち、例えば番号「1」の形状からなる方向番号表示体60が設けられた矢印形状の方向標示用凹所52を北向きに設定しようとすると、方向標示杭1の設置が困難になってしまうが、そのような設定は不要とする。したがって、各方向標示用凹所52の矢印は絶対的な方向(特定の方位)を指し示すものではなく、方向標示杭1の設置後はどれだけ期間が経過しても各方向標示用凹所52からなる矢印が指し示す方向は変化しない、ということを利用するものである。
【0037】
このように設置された方向標示杭1を、例えば景観の変化を観測するために、長期間にわたる写真撮影に利用することについて説明する。
図3(b)のICタグリーダ86の機能を有する多機能携帯端末84をアクティブ型ICタグ72が設けられた杭1に近づけると、アクティブ型ICタグ72に記憶された、方向標示杭1の識別番号を多機能携帯端末が読み込むことができる。多機能携帯端末84は種々のアプリケーションソフトウェアを実行することができるため、方向標示杭を利用した写真撮影用のソフトウェアを実行して、写真撮影者はそのソフトウェアからの指示に基づいて写真撮影を行えばよい。多機能携帯端末84は、また、撮影された写真のデジタルデータを記憶しておくことができる。
【0038】
具体的には、まず、写真撮影者は、所持している多機能携帯端末84で実行したソフトウェアの指示に基づいて、方向標示杭1に多機能携帯端末84を近づける。この多機能携帯端末84のICタグリーダが方向標示杭1のアクティブ型ICタグ72に記憶された、この方向標示杭1の識別番号を読み込む。当該ソフトウェアでは、その識別番号に応じて、図示しないサーバのような装置から、方向標示杭1および写真撮影者に対応した特定の方向標示用凹所52の識別番号を取り出し、この写真撮影の方向を1〜8のいずれかの番号で指示する。写真撮影者は、多機能携帯端末84に表示された番号に基づいて、方向標示杭1のすぐ側からその番号からなる図4の方向番号表示体60が設けられた方向標示用凹所52からなる矢印が指し示す方向に向って写真撮影を行えばよい。また、杭表示プレート30の線32および方向標示用凹所52の線61が方向標示用凹所52からなる矢印方向に延びているため、これらの線が延びた方向に向って写真撮影を行うようにすれば、さらに方向決めが容易になる。写真撮影は、多機能携帯端末が有するカメラ機能によって行われ、撮影された画像データは当該ソフトウェアによって管理される。
【0039】
このような写真撮影は、景観の変化を観測するために所定の期間が経過後に同様に行われるが、撮影時には、写真撮影者は多機能形態端末に表示された番号に基づいて、その番号からなる方向番号表示体60が設けられた方向標示用凹所52からなる矢印が指し示す方向に向って写真撮影を行うだけでよい。
【0040】
このような写真撮影は、多数設置された方向標示杭1それぞれに関して行われ、撮影箇所が極めて広い範囲にわたることが多い。広範囲にわたる写真撮影では、複数の撮影者がそれぞれ所持する多機能携帯端末で同一のアプリケーションソフトウェアを実行して、そのソフトウェアの指示に従えば、同様の写真撮影を行うことができる。
【0041】
また、ICタグリーダ86によって読み込まれた方向標示杭1の識別番号や撮影された画像データは多機能携帯端末84に取り込まれるが、その後サーバ(図示せず)に送信されてサーバで管理される。好ましくは、サーバに集められたデータは、方向標示杭1の設置位置などの情報に対応して付与された識別番号に関連付けられて、地理情報システム(GIS)において管理される。
【0042】
この第3実施形態では、ICタグは杭に1つ設けられるものとして説明したが、第1および第2実施形態のように、8つの方向番号表示体60に対応して、全体で9つ設けられてもよい。この場合、各方向番号表示体60の例えば下側に設けられたICタグは、表示体60の形状に対応した方向番号を記憶している。
【0043】
この第3実施形態にかかる方向標示杭を写真撮影に利用することを示したが、この他様々な用途に用いられることができる。特に、用途に応じたアプリケーションソフトウェアが用意されれば、操作者はこのソフトウェアの指示に基づいて、杭1の方向標示(本実施形態では方向標示用凹所52および方向番号表示体60)を利用するだけで、所定の操作を行うことができる。
【0044】
本実施形態では、ICタグリーダ機能およびアプリケーションソフトウェアの実行機能を備えたものとして、多機能携帯端末の例を示したが、これら機能を実行できるものであればいかなるものであってもよい。ただし、個人が多機能携帯端末を所有して所持していることが多いため、操作者は特別な機器を持参せずに杭の設置場所において写真撮影のような作業を行うことができることより、多機能携帯端末が特に好ましい。
【0045】
また、このような方向標示杭の方向標示は、様々な用途に活用される。例えば、通常設置された方向標示杭を見つけるには、地図で設置場所を確認してから探す必要があるが、この際に、方向標示杭の方向標示が複数存在する杭を順番に辿るようにさせることができる。具体的には、多数設置された杭の位置を考慮して杭を探す順番を予め定めておくと共に、ある杭の次の順番の杭の方向を指し示す方向の番号を予め指定しておけば、多数の方向標示杭を順番に見つけようとする作業者は、探し出した方向標示杭の方向標示を確認して、予め指定された方向番号の矢印が示す方向に前進していくだけで複数の杭を順番に辿ることができる。また、探し出した杭の次の順番の方向標示杭の方向だけでなく、この探し出した方向標示杭と次の順番の方向標示杭の間の距離も、予め算出されている。このように距離まで示されていれば、杭を順番に辿って行く際に、作業の見通しが立てやすい。なお、このような杭同士の相対的な方向や相対的な距離は、現場で作業をする作業者が手元のパーソナルコンピュータにおいて、任意の杭の組合せで表示させることができる。したがって、例えば、探し出した方向標示杭の近隣に設置された全ての方向標示杭に対する方向および距離を表示させて、次に探すべき杭を作業者が現場で選択することもできる。
【0046】
杭の方向標示の別の用途としては、観光や山登りの際の経路標示である。この場合も、観光者や登山者は、予め指定された方向番号の矢印が示す方向に前進して複数の杭を順番に辿ることで、目的地に到達することができる。
【0047】
各実施形態では、方向標示マーク52が8つ存在する場合について説明したが、方向標示マーク52は任意の個数存在することができ、1つまたは複数存在する。ただし、好ましくは、4つまたは8つ存在する。
【0048】
以上、第1〜第3実施形態にかかる方向標示杭によれば、方向標示杭に設けられたICタグが、方向標示マークに関する情報、方向標示マークが標示する方向に関する情報、または方向標示マークが標示する方向に関する情報へのリンク先を記憶するため、これらの情報を取得して、当該方向標示杭に設けられた方向標示マークと共に用いれば、単に方向を標示するだけの機能を有する方向標示マークに様々な情報が付加することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 方向標示杭
52 方向標示マーク
72,74 ICタグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の方向を標示する、1つまたは複数の方向標示マークと、
1つまたは複数のICタグとが設けられ、地盤に一部が埋め込まれる方向標示杭であって、
前記ICタグは、前記方向標示マークに関する情報、前記方向標示マークが標示する方向に関する情報、および前記方向標示マークが標示する方向に関する情報へのリンク先の少なくとも1つを記憶する、方向標示杭。
【請求項2】
請求項1に記載の方向標示杭において、
前記方向標示マークが複数設けられ、各方向標示マークに前記ICタグが1つ以上関連付けられており、これらICタグは、それぞれ、関連付けられた方向標示マークが標示する方向に関する情報、または関連付けられた方向標示マークが標示する方向に関する情報へのリンク先を記憶する、方向標示杭。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方向標示杭において、
前記方向標示マークが複数設けられ、これら複数の方向標示マークの数が任意の整数nの場合、これら方向標示マークがそれぞれ標示する方向は、隣接する方向標示マークに対してほぼ(360/n)°の角度をなしている、方向標示杭。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の方向標示杭において、
前記1つまたは複数のICタグの少なくとも1つがアクティブ型ICタグである、方向標示杭。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の方向標示杭において、
前記1つまたは複数のICタグの少なくとも1つがパッシブ型ICタグである、方向標示杭。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−50443(P2013−50443A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−165540(P2012−165540)
【出願日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【出願人】(591034017)株式会社リプロ (15)