説明

施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機

【課題】本発明の目的は、作物・植物の病害が少なく、また、高品質な作物・植物を育てることができる施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機を得ることにある。
【解決手段】前記課題を解決するため、本発明は、再熱除湿運転が可能な施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機において、各センサから情報が入力され、各機器に制御信号を出力する制御装置であって、時刻機能を備えた制御装置と、加湿ユニットと、冷房(冷却)運転,再熱除湿運転,暖房運転,加湿運転を選択する選択手段と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビニールハウスや温室(例えばグラスハウス)などの施設園芸用のハウス(以下、ハウスと称する)内に用いられる施設園芸ハウス用の冷暖房機能及び除加湿機能付きヒートポンプ式空気調和機に関し、ハウス内の空気調和に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
ハウス内の空調用に用いられるヒートポンプ式空気調和機としては特許文献1や特許文献2に記載のものなどがある。
【0003】
特許文献1に記載のものでは、ヒートポンプ式空気調和機を利用してハウス内の冷房と除湿を行うことが記載されている。
【0004】
また、特許文献2のものでは、ヒートポンプ式空気調和機を利用してハウス内の冷房,除湿,暖房を行うことが記載されている。
【0005】
施設園芸向け電気式ヒートポンプパッケージが、国の農業分野に於ける温室効果ガスの排出量削減及び地球温暖化対策の流れを受け、また原油高の影響も相まって急速にその市場を伸ばしている。
【0006】
現時点での施設園芸向け電気式ヒートポンプパッケージの主な用途は、第一にA重油削減目的の補助暖房機、第二に作物の品質向上を目的とした夜間冷房機である。
【0007】
前記の空調方法において、栽培者や公的機関(農業試験場等)からは、除湿効果による作物への好影響が指摘され、実証試験も各地で実施されている状況から、今後施設園芸分野における除湿ニーズが急速に高まることが確実視されているが、冷房,再熱除湿,暖房の3モード、或いはこれに加湿を加えた4モードの機能を有した空調機は存在していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−308859号公報
【特許文献2】特開昭58−175764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現状の施設園芸向け電気式ヒートポンプパッケージは、冷房運転による除湿効果はあるものの、温室内温度を維持したままでの再熱除湿機能は不可能である。
【0010】
一方、現状の電気式除湿機は、「再熱専用型」と「冷却機能付型」が存在しており、後者の「冷却機能付型」は、所定の温湿度を維持するために、冷却と除湿を交互に繰り返すことで、温室内温度を維持することができる。
【0011】
但し、ハウスにて除湿機能が求められるのは、ハウスを室温維持のために、温風暖房機や温湯暖房機などの燃焼系加温機を使用している場合が大多数であり、暖房機能を有していない前記の除湿機では燃焼系加温機の代替えにはならず、更に、加熱(暖房)機能を付加した除湿機は世の中に存在しない。
【0012】
本発明の目的は、作物・植物の病害が少なく、また、高品質な作物・植物を育てることができる施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明は、
再熱除湿運転が可能な施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機において、
各センサから情報が入力され、各機器に制御信号を出力する制御装置であって、時刻機能を備えた制御装置と、
加湿ユニットと、
冷房(冷却)運転,再熱除湿運転,暖房運転,加湿運転を選択する選択手段と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、作物・植物の病害が少なく、また、高品質な作物・植物を育てることができる施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施例の室内ユニット,室外ユニットの具体的構成を示す図。
【図2】本実施例の冷凍サイクル構成図。
【図3】本実施例の運転モードを示す図。
【図4】ハウス内外の温度や湿度を示す図(0)。
【図5】ハウス内外の温度や湿度を示す図(1)。
【図6】ハウス内外の温度や湿度を示す図(2)。
【図7】ハウス内外の温度や湿度を示す図(3)。
【図8】本実施例の空気調和機をハウスに設置した図(1)。
【図9】本実施例の空気調和機をハウスに設置した図(2)。
【図10】本実施例の空気調和機をハウスに設置した図(3)。
【図11】本実施例の空気調和機をハウスに設置した図(4)。
【図12】バラの品質について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は本実施例の空気調和機を一部破断して内部構造が分かるようにした正面図,側面図,上面図を示している。
【0018】
1は空気調和機の室内ユニットの筐体で、この筐体1内には、ハウス20内の空気を循環する室内送風機7と、冷暖房および再熱除湿などの運転モードを切り替えたりして冷凍サイクルを構成する部品が設置されている。それらは主として、圧縮機3,蒸発用熱交換器となる室内熱交換器A(4),再熱用熱交換器となる室内熱交換器B(5),膨張弁9,四方弁10である。更に、ドレンパン11,温湿度センサ12,加湿ユニット13が設けられている。蒸発用熱交換器4下方のドレンパン11には、蒸発用熱交換器4で凝縮された凝縮水を機外(外部)へ排出するためのドレン排水孔も筐体下部に設けられている。その他に圧縮機をON/OFF制御するための温湿度センサ12や電気品箱が設けられている。
【0019】
2は空気調和機の室外ユニットの筐体で、この筐体2内には、室外送風機8と、冷凍サイクルを構成する部品が設置されている。それらは、冷房運転時には冷媒を凝縮させ、暖房運転時には冷媒を蒸発させる室外熱交換器6,室外膨張弁14を備えている。
【0020】
室内ユニット1及び室外ユニット2は、その間を結ぶ冷媒配管19で接続される。各熱交換器と、ハウス20内の空気を吸い込んで室内熱交換器A,Bなどに導き、冷却・暖房(熱交換)、または、再熱除湿(熱交換)させる。その他、加湿ユニット13によりハウス20内を加湿する。
【0021】
これら各機器の制御としては、基本的に、制御装置CU30によって、室内ユニット1の空気吸い込み口に設けられた温湿度センサ12でハウス20内の空気状態(温度と湿度)を検知し、圧縮機のON/OFFや運転モードを切り替えることにより行う。
【0022】
図2に、本実施例の冷凍サイクル構成図を示す。この図を用いて各運転モードの詳細について説明する。この空気調和機は4つの運転モードを有している。
【0023】
AA冷房(冷却)運転機能
室内ユニット1内の圧縮機3より吐き出した高温・高圧の冷媒ガスを冷媒配管19を介して室外ユニット2内の凝縮・蒸発兼用熱交換器6にて放熱・凝縮させ、室内ユニット1に戻し、膨張弁9で冷媒液を膨張させ、蒸発用熱交換器4へ送り込む。このとき、室内送風機7より吸い込んだハウス20内の空気を蒸発用熱交換器4で吸熱・蒸発させることで、ハウス20内に冷風を吹き出す冷房減湿(冷却、絶対湿度の低下)運転が行われる。冷房運転を行う場合には、冷風をハウス20内に吹き出すと共に、室外ユニット2で温風をハウス20外でハウス20から離れる方向に排出する。
【0024】
この際に室内送風機7より吸い込んだハウス20内空気は蒸発用熱交換器4により温度を低下させるとともに空気中の水分を凝縮させ、ドレンパン11を介してハウス20外へ放出させる。
【0025】
BB再熱除湿運転機能
冷房(冷却)運転機能に、室内ユニット1内の圧縮機3より吐き出した高温・高圧の冷媒ガスを室内ユニット1内に設置した再熱用熱交換器5に流し、放熱・凝縮させ、膨張弁9を介し冷媒液を膨張させ、蒸発用熱交換器4へ送り込む。このとき、室内送風機7により吸い込んだハウス20内の空気を蒸発用熱交換器4で吸熱・蒸発させることで、温度が低下し絶対湿度が低下する。更に蒸発用熱交換4で冷やされた循環空気の二次側に再熱用熱交換器5が設置されているため、ハウス20内には温風(乾燥空気、吸い込んだ空気とほぼ同等の温度)を吹き出す再熱除湿(相対湿度の低下)運転が行われる。
【0026】
また、除湿運転時には、除湿された風だけでなく、乾燥された温風をハウス20内に吹き出すことができるので、除湿運転時の風量を増大させることでハウス20内を効果的に除湿することが可能となる。この際も前述のように凝縮された水分はドレンパン11を介してハウス20外へ放出させる。
【0027】
CC暖房運転機能
室内ユニット1内の圧縮機3より吐き出した高温・高圧の冷媒ガスを室内ユニット1内に設置した再熱用熱交換器5に流し、放熱・凝縮させ、冷媒配管19を介して室外ユニット2内の膨張弁14で冷媒液を膨張させ、凝縮・蒸発兼用熱交換器6にて吸熱・蒸発させる。このとき、室内送風機7により吸い込んだハウス20内の空気は湿度変化の無い状態で、ハウス20内に温風を吹き出す暖房運転が行われる。
【0028】
更に、現状の施設園芸向け電気式ヒートポンプパッケージで改善要望の強い「除霜運転時の相対的暖房能力低下」についても、通常の施設園芸向け電気式ヒートポンプパッケージは、室内ユニットと室外ユニットのそれぞれに熱交換器を各1個、合計2個しか有していない。よって、除霜運転時は暖房運転を一時中断し、四方弁10により冷凍サイクルを切り替えて過熱冷媒ガスを室外ユニットに供給するための冷房(冷却)運転を行い、室外ユニットに着霜した霜を除去する運転を余儀なくされる。
【0029】
上記の運転により、もう一方の室内ユニット側は冷房(冷却)運転となることにより相対的に暖房能力が低下することを意味するのに対し、本実施例の空気調和機は室内ユニットにもう1個、合計3個の熱交換器を有しているため、同じ除霜運転としての冷房(冷却)運転を行う場合でも室外ユニットの熱交換器と室内ユニットのもう1個の熱交換器に同時に冷媒を流すことで、一般の現状の施設園芸向け電気式ヒートポンプパッケージに比べ、除霜運転時の相対的暖房能力低下を低く抑えることも考慮できる。
【0030】
DD加湿運転機能(加湿+暖房)
本空気調和機は、加湿ユニット13を備えている。これは単独で運転することはなく、暖房運転とともに運転される。冷凍サイクルではないので、電力を与えるだけでよい。これを加湿運転と称することとする。なお、前述のように凝縮された水分はドレンパン11を介してハウス20外へ放出させているが、これを貯めておき、加湿時の水分として用いることにより加湿機能を実現することも考えられる。例えば、ゼオライトなどを利用して加湿する技術が知られている。
【0031】
次に運転モードについて説明する。室内ユニット1は、加湿ユニット13を備えている。従って、この空気調和機の冷凍サイクルとしては運転モードを4つ備えている。その4つとは、冷房,再熱除湿,暖房,加湿である。より正確には、冷房,除湿,暖房,暖房+加湿である。図3に、本実施例の運転モードを示している。4つの運転モードの何れかが運転されることを表している。
【0032】
これら4つの運転モードは場合分けされて決定される。但し、これは基本運転であり、デフォルトであるが、制御装置CU30および温湿度センサ12から情報を得て、以下のように適宜運転モードを変更して運転される。運転モードを変更するための温湿度の情報については後述する。
【0033】
ステップS0で運転がスタートすると、ステップS10で選択された運転モードにより、冷房運転・再熱除湿運転・暖房運転の何れかを実施する。なお、暖房+加湿運転については別にセンサーを設けて制御すると良い。また、使用者が任意に設定できるタイマー(時計50機能)を設けてステップS10で選択された運転を自動で行う機能を有するものとする。
【0034】
ステップS10で、冷房運転を選択した場合には前述のAA冷房(冷却)運転機能である冷房運転を行う。昼は風通しを良くしておくことで、特段冷房運転を行う必要はない場合もあるが、胡蝶蘭などの特定の植物においては冷房運転を行った方がより良いときもある。また、作物の品質向上や栽培品種の拡大を考慮した場合は、夜間冷房が適した場合もあり、このような場合には、昼は温度が高くて、夜は温度が低いということを植物などにも体感させることも可能となる。
【0035】
ステップS10で、暖房運転を選択した場合には前述のDD暖房運転を行う。一般的に冬は湿度が低くなるので、加湿が必要となる場合がある。その場合には加湿センサーと連動させた加湿運転を行うことにより暖房+加湿運転を行う。
【0036】
本実施例の空気調和機は、使用者の任意で冷房(冷却)運転や、再熱除湿運転・暖房運転を切り替えることができることを特徴とする。また、加湿運転も切り替えることができる。これは図示しない操作パネルなどで選択手段により選択することができる。
【0037】
これに加えて更に、冷房(冷却)運転と再熱除湿運転に優先順位を設けて、例えば冷房(冷却)運転を選択中であってもハウス20内の湿度が高くなった場合には自動的に再熱除湿運転を実施するようにしても良い。逆に再熱除湿運転を選択中でのハウス20の温度により、冷房(冷却)運転を優先させるなどしても良い。
【0038】
また、この優先順位を設けることは暖房運転と再熱除湿運転との間においても設定できる。このようにすれば、暖房運転中であっても再熱除湿運転を行うことにより、使用者の求めるより良いハウス20内の環境を実現することができる。
【0039】
これらの運転モードの切替は、湿度情報および/または温度情報に基づいて、後述の切替手段で行われる。
【0040】
ビニールハウスや温室(例えばグラスハウス)などのハウス20を示し、このハウス20内では薔薇などの草木や、メロン,トマト,きゅうり,苺などの作物が栽培されるものである。また、室内ユニット1はこのハウス20内の所定の位置に置かれ、室外ユニット2は室内ユニット1に近接もしくは、屋外の任意の場所に冷媒配管19を介して設置される。通常のハウス20内の空調では加温機21を併用させた方が良い。
【0041】
次に、冬期の雨の場合で、加温機21が無い場合と、加温機21を併用させた場合との比較について、図4を用いて簡単に説明する。図4は、(a)加温機21が無い場合、(b)加温機21を併用させた場合である。各図とも、縦軸(左)は温度、縦軸(右)は湿度、横軸は時刻である。
【0042】
加温機21が無い場合(a)では、外気温の動きとしては、日中がピークとなり、未明・早朝あたりが低い気温となる。ハウス20内の温度の動きとしては、外気温より高いものの、外気温度と共に低下する。ハウス20内の相対湿度の動きとしては、ハウス20内の湿度は深夜近辺がピークとなり、ほぼ一日中一定値または緩やかに変化する。
【0043】
これに対し、加温機21を併用させた場合(b)には、外気温は(a)の場合と特に変わらないが、次のようなことが可能となる。
【0044】
実線で表されるハウス20内温度は、作物の管理温度の下限が10℃の場合は、10℃を維持するように加温機21で加熱運転を実施することができる。この10℃はユーザーが設定することが可能である。
【0045】
また、破線で表されるハウス20内相対湿度については、例えば18時〜翌朝6時で加温機21を運転することにより、ハウス20内の温度上昇に伴って相対湿度が低下することとなる。図中では、方形状にグラフが凹んでいる。加温機21を運転していない6時〜18時で湿度が制限値より高ければ、その部分で除湿運転を行えばよい。一般的に病害の発生が多いのはハウス内相対湿度が90%以上と言われており、この湿度を超えた場合は除湿運転が望ましい。加温機での加熱運転を実施してもハウス内相対湿度が高い場合は、除湿運転との同時運転が必要な場合も生じ得る。
【0046】
冬期で晴れやくもりの場合は外気湿度が異常に低いことが多く、ハウス20内の湿度も低く推移することが多い。特に植物や作物の管理温度の下限が高い場合には日中での加熱運転も必要となり、ハウス20内の相対湿度の更なる低下を招く。乾燥を嫌う作物の場合には、加湿運転を実施し一定以上の湿度を維持させる必要が発生する場合もある。
【0047】
次に、より一般的に、各シーズン、時間帯毎の状況を図5〜7を用いて説明する。
各図は、薔薇を栽培するハウスについて、1日の運転パターンの例を天候毎に(a)晴れ,(b)くもり,(c)雨として示したものであり、縦軸(左)は温度、縦軸(右)は湿度、横軸は時刻である。また、実線はハウス20内の温度、破線はハウス20内の湿度、一点鎖線は外気温度を表している。
【0048】
図5は中間期であり、(a)の運転は、加温機21のランニングコストを削減するとともに、作物や植物が真っ直ぐ育つよう育成管理して品質を向上させるものである。このため、夜間は19時から翌朝9時で20℃以上を保つようにCCの暖房運転を行うとともに、昼間は9時から19時で60〜70%を保つようにDDの加湿運転を行う。
【0049】
作物や植物の品質について言及しておくと、次のようである。例えば、薔薇は高湿度では病害などにより品質が低下する。葉に菌が付着しやすくなるからである。低湿度では茎が節の部分で折れ曲がって成長してしまうなどにより品質が低下する(図12参照)。適正な温湿度としては、薔薇であれば例えば15〜20℃程度,60〜85%程度である。
【0050】
図5の(b)(c)の運転は、加温機21のランニングコストを削減するとともに、作物や植物が病害無く育つように品質を向上させるようものである。このため、夜間は19時から翌朝9時で20℃以上を保つようにCCの暖房運転を行うとともに、昼間は9時から19時で70〜80%を保つようにBBの除湿運転を行う。雨が降ると湿度が高くなるので、葉っぱが湿りやすくなる。こうなると前述のとおり品質低下を招くので、再熱除湿運転を行い、葉っぱに菌が付着しないようにすることが重要である。
【0051】
図6は夏期であり、(a)(b)の運転は、生育向上による品質向上を狙うものである。このため、夜間は19時から翌朝9時で20℃以上を保つようにAAの冷房運転を行うとともに、昼間は9時から19時で70〜80%を保つようにする。
【0052】
図6の(c)の運転は、生育向上による品質向上と、病害無しの品質向上を狙うものである。このため、夜間は19時から翌朝9時で20℃以上を保つようにAAの冷房運転を行うとともに、昼間は9時から19時で70〜80%を保つようにBBの再熱除湿運転を行う。
【0053】
図7は冬期であり、(a)(b)の運転は、加温機21のランニングコストを削減するとともに、作物や植物が真っ直ぐ育つよう育成管理して品質を向上させるものである。このため、夜間は18時から翌朝9時で20℃以上を保つようにCCの暖房運転を行うとともに、昼間は9時から18時で60〜70%を保つようにする。
【0054】
図7の(c)の運転は、加温機21のランニングコストを削減するとともに、作物や植物が病害無く育つように品質を向上させるようものである。このため、夜間は18時から翌朝9時で20℃以上を保つようにCCの暖房運転を行うとともに、昼間は9時から18時で70〜80%を保つようにBBの再熱除湿運転を行う。
【0055】
これらのAA冷房運転,BB再熱除湿運転,CC暖房運転,DD加湿運転は、それぞれ設定湿度や設定温度を保つように、或る範囲に温度や湿度を収めるフィードバック制御を行う。そして、前記のステップS0の判断は一定時間(ex.15分)毎に繰り返される。シーズンや昼夜の時間帯はデフォルトで設定しておくが、ユーザーが変更できるようにしておき、操作は室内ユニット1で行う。
【0056】
更に、各時刻で運転を切り替えるようなプログラム運転を予め設定できるようにしておけば手間がかからず便利である。プログラム運転が可能な構成にしておけば、例えば、8時から12時は加湿運転して15℃・60%以上とし、12時から17時は加湿運転で20℃・70%以上とし、17時から0時は暖房運転または除湿運転で85%以下とし、0時から翌朝8時は暖房運転または除湿運転で80%以下とするような細やかな制御も可能となり、比較的容易に高品質の作物,植物を育成することができる。
【0057】
このように自動運転切替機能、つまり切替手段を設け、一日に4回以上切り替えることができるようにすることによって、手の行き届いた作物,植物の育成を行うができる。この運転パターンの切り替えは一日4回以上の任意の時間帯にて行うことができる。温度・湿度の設定を行うことで、各々の園芸農家などのハウス独特の要求を満たすことができる。本実施例の空気調和機は、このような自動運転切り替え機能を有し、プログラム運転を行うことが可能である。
【0058】
図8〜図10において、20はビニールハウスや温室(例えばグラスハウス)などのハウス20を示し、このハウス20内では薔薇などの草木や、メロン,トマト,きゅうり,苺などの作物が栽培されるものである。また、室内ユニット1はこのハウス20内の所定の位置に置かれ、室外ユニット2は室内ユニット1に近接もしくは、屋外の任意の場所に冷媒配管19を介して設置される。
【0059】
通常のハウス20内の空調では加温機21を併用した方が良い。
図8は、室内ユニット1をハウス20内に設置し、室外ユニット2をハウス20外に設置し、冷媒配管19で接続した施工の模式図である。
【0060】
図9は、室内ユニット1内の送風機7より吹き出した風を管(伸縮自在のダクト16)より、直接ハウス20内に吹き出した状態を示す模式図である。
【0061】
図10は、室内ユニット1内の送風機7より吹き出した風を管(伸縮自在のダクト16)の先端にビニールダクト17を装着して、ハウス20内に均一に吹き出した状態を示す模式図である。
【0062】
吹き出される冷風や温風は、図8のように室内ユニット1の筐体から直接ハウス20内に吹き出すものと、図9は吹き出すためのチャンバボックス15を取り付け、更に取り付け取り外しが可能で、かつ蛇腹で伸縮自在な吹き出し方向を自由に変えることができるダクト16が使われるものなどがある。
【0063】
更に、ハウス20内の温度低下やムラを軽減するため、図10のように、前記の伸縮自在なダクト16の先端にビニールダクト17を取り付ける。その結果、ハウス20内の気流の循環も良くなり、ハウス20内全体の湿度や温度のばらつきを低減できる効果がある。また、風が直接植物や作物に当たらず、遠方まで届くようになる。この効果は非常に大きく、特に薔薇などの栽培における病害対策や病害予防に極めて効果が大きい。
【0064】
なお、図8及び図9の場合には、ダクト16を正面または上面の双方に取り付けることができる構造であるため、使い勝手により自由自在にアレンジすることが可能になるものである。
【0065】
図11は、共通の一体型の架台に室内ユニット1と室外ユニット2、更に冷媒配管19を施し、ハウス20の屋外壁面に設置し、ハウス20に開口を設け、吸い込み空気と吹き出し空気を循環させ、ハウス20内の空調を行う状態を示す模式図である。
【0066】
1は室外に配置されているが、室内機である。ハウス20内に空気を吹き出すからである。このような一体型の空気調和機として構成されると、一体型の共通架台18を運搬するだけで、ハウス20内の別の場所に配置することが可能となり、ハウス20内の任意の場所に、いつでも自由に移動して設置,使用することが可能である。従来は、移動や移設する場合、一旦冷媒を回収、施工のやり直しが必要となるなど、事実上、移動や移設が不可能であったが、そのような面倒な作業等を排除として、イニシャルコストを低減することも可能となる。
【0067】
冷房・再熱除湿・暖房機能を有した本実施例の空気調和機を使うことにより、前記の病害対策・予防及び栽培されている植物などに最適な温湿度環境を作り出すことが可能となり、燃焼系加温機21の補助暖房機としても使用することが可能である。
【0068】
この空気調和機では、ハウス20内を除湿できるだけでなく、冷房(冷却)や加温(暖房)も加湿も可能であり、更には空気調和機をハウス20内の所定の位置まで台車やクレーンを利用して自由に移動させたり、ダクトの方向を変化させたり伸縮することで、随時所定のエリアの空調も可能になるものである。
【0069】
ハウス20内の空気が循環する室内ユニットの熱交換器及び冷凍サイクル構成部品には、肥料粉や農薬などの粉塵が空気調和機内に入って、銅製の冷媒配管を腐食させたり、故障の原因にならないように、防食塗装を施している。これは、一般の室外機の塩害に属するレベルであるが、更にカチオン電着塗装によるコーティングも可能である。
【0070】
圧縮機3、各熱交換器4,5,6は耐腐食コーティングされた銅製の冷媒配管で接続するようにすれば、薬剤などが使用されるビニールハウス周辺の環境下であっても十分な能力を発揮でき、薬剤などに対する腐食も防止して信頼性の高い施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機を得ることができる。
【0071】
また、ハウス20内は、夏は非常に高温になり40℃を超える環境、例えば40〜48℃という高温の環境でも能力を出せるようにすることが好ましい。本実施例では、このような高温環境下でも、除湿及び冷却ができるようにしている。即ち、再熱用熱交換器5の大きさ(熱交換面積,熱交換容量)を蒸発用熱交換器4よりも大とし、更に室内送風機7はシロッコファンとすることで、凝縮能力を十分に確保できるようにしている。
【0072】
また、室内送風機7はシロッコファンとしているため、静圧を高くできるので、ダクト16およびビニールダクト17を長くしても風を遠方まで送風することが可能となっている。つまり、シロッコファンを使用することで、静圧及び風量を確保することが可能となり、更に伸縮ダクトや延長ビニールダクトなどと組み合わせても、所定のエリアに容易に空調できる。
【0073】
また、現状の暖房運転機能を有した施設園芸向け電気式ヒートポンプパッケージは、燃焼系加温機21の補助暖房機として使用することで、燃焼系から電気系への転換によるCO2の削減効果がある。
【符号の説明】
【0074】
1 室内ユニット
2 室外ユニット
3 圧縮機
4 室内熱交換器A
5 室内熱交換器B
6 室外熱交換器
7 室内送風機
8 室外送風機
9 室内膨張弁
10 四方弁
11 ドレンパン
12 温湿度センサ
13 加湿ユニット
14 室外膨張弁
15 チャンバボックス
16 ダクト
17 ビニールダクト
18 一体型共通架台
19 冷媒配管
20 ハウス
21 加温機
30 制御装置CU
50 時計機能

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再熱除湿運転が可能な施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機において、
各センサから情報が入力され、各機器に制御信号を出力する制御装置であって、時刻機能を備えた制御装置と、
加湿ユニットと、
冷房(冷却)運転,再熱除湿運転,暖房運転,加湿運転を選択する選択手段と、
を備えた施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機。
【請求項2】
室内ユニット内に複数の熱交換器を備えるとともに、その間に膨張装置を備えることによって再熱除湿運転が可能な施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機において、
各センサから情報が入力され、各機器に制御信号を出力する制御装置であって、時刻機能を備えた制御装置と、
加湿ユニットと、
を備え、
前記時計機能からの情報に基づいて前記制御装置が前記加湿ユニットを運転することで加湿運転を行い、
前記時計機能からの情報に基づいて前記制御装置が前記膨張装置を制御することによって再熱除湿運転を行う
施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機。
【請求項3】
請求項1または2において、
冷房運転,再熱除湿運転,暖房運転,加湿運転の各運転モードを切り替える切替手段を有することを特長とする施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機。
【請求項4】
請求項3において、
冷房運転と再熱除湿運転とを湿度情報および/または温度情報に基づいて切り替える切替手段を有することを特徴とする施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機。
【請求項5】
請求項3において、
暖房運転と再熱除湿運転とを湿度情報および/または温度情報に基づいて切り替える切替手段を有することを特徴とする施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機。
【請求項6】
請求項3において、
冷房運転と再熱除湿運転、暖房運転と再熱除湿運転、を優先順位に応じて切り替える切替手段を有することを特徴とする施設園芸ハウス用ヒートポンプ式空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−188785(P2011−188785A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56904(P2010−56904)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【出願人】(000233310)株式会社日立空調SE (11)
【Fターム(参考)】