説明

施錠検出装置

【課題】施錠状態を確実に検出するとともに、窓体等への電源供給を不要にしつつ、検出素子には外部から有線で電源供給可能にし、小型化、低コスト化を図ることができるクレセント錠等の施錠検出装置を提供する。
【解決手段】開口部を開閉可能な可動体4に設けたレバー25を操作することにより、可動体4を閉状態にロック可能なロック機構に設けられる施錠検出装置1であって、可動体4に、レバー25の操作によって移動させられる磁石26と、磁石26の近傍位置から可動体4の端部まで延びる一対のヨーク27,28とが設けられるとともに、これらヨークの基端部27a,28aは、磁石26の磁極の移動軌跡の一部の範囲で両磁極に対峙するように設けられ、開口部を形成する枠体2に、ヨークの先端部27b,28b間の磁界を検出する磁気検出素子41が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレセント錠などのレバーの操作によって閉状態をロック可能な窓等の施錠検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クレセント錠は、引き違い窓等の縦框の高さ方向のほぼ中間位置に設けられ、一方の窓体に取り付けた半月状のロック片で他方の窓体のフック部を係止することにより、窓を閉状態にロックすることができる。
このようなクレセント錠によるロック機構を備えた窓において、防犯を目的として、その施錠を検出する装置を設けたものが普及している。
特許文献1に記載されている窓では、クレセント錠の近くの窓体の縦框に、リードスイッチからなる磁気検出素子、発光素子、受光素子を備えた検出ユニットが設けられ、クレセント錠のレバーに磁石が設けられており、レバーを操作すると、その磁石の移動が磁気検出素子に検出され、また、発光素子から発した光の他方の窓体からの反射光が受光素子により検出される。これらの検出信号は、検出ユニットに内蔵した出力用の発信機によって外部の受信機に発信される。その電源としては、リチウム電池、太陽電池等が用いられている。
【0003】
また、特許文献2では、クレセント錠と窓体の縦框の召し合わせ部にそれぞれ磁石が設けられるとともに、これら磁石の移動に伴い作動する2個のリードスイッチが直列に接続され、その回路に接続状態のコイルと、枠体に配置したコイルとが対向配置され、これらコイル間の電磁誘導により、クレセント錠の操作と、そのクレセント錠の操作によって引き寄せられる窓体の縦框の召し合わせ部の相対移動との両方を検出する構成とされる。特許文献3では、磁石とコイルとを用いてクレセント錠の操作を検出するようにしており、電源としてリチウム電池を内蔵している。
また、特許文献4及び特許文献5では、開閉検出装置からの信号送信のための電源として、クレセント錠の操作により起動される発電装置を備えたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭64−17980号公報
【特許文献2】特開平1―163380号公報
【特許文献3】特開平10−611273号公報
【特許文献4】特開2005−139627号公報
【特許文献5】特開2007−63773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、クレセント錠は、高い頻度で可動する窓体の縦框の高さ方向中間位置に設けられることから、外部から有線で電源を供給することが困難である。このため、特許文献1又は特許文献4に記載のように電池を内蔵するか、特許文献5に記載のように発電装置を設ける必要がある。電池を内蔵するのでは電池交換等が必要であり、また、発電装置を設けるのでは大型化、高コストを招く。特許文献3に記載の構造の場合は、窓体に電源等を設ける必要はないが、コイルの小型化が困難であるとともに、電磁誘導による検出のため、ゆっくりした移動の場合は検出できない場合がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、施錠状態を確実に検出するとともに、窓体等への電源供給を不要にしつつ、検出素子には外部から有線で電源供給可能にし、小型化、低コスト化を図ることができるクレセント錠等の施錠検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の施錠検出装置は、開口部を開閉可能な可動体に設けたレバーを操作することにより、前記可動体を閉状態にロック可能なロック機構に設けられる施錠検出装置であって、前記可動体に、前記レバーの操作によって移動させられる磁石と、該磁石の近傍位置から前記可動体の端部まで延びる一対のヨークとが設けられるとともに、これらヨークの基端部は、前記磁石の磁極の移動軌跡の一部の範囲で両磁極に対峙するように設けられ、前記開口部を形成する枠体に、前記ヨークの先端部間の磁界を検出する磁気検出素子が設けられていることを特徴とする。
【0008】
レバーを操作して磁石を移動させると、その移動軌跡の一部の範囲でヨークが磁極に対峙し、可動体の端部におけるヨークの先端部間に磁界が生じる。ヨークとの対峙位置から磁石が離れると、可動体の端部におけるヨークの先端部間の磁界も小さくなる。このヨークの先端部間の磁界の変化を磁気検出素子によって検出することにより、施錠状態を検出することができる。この場合、可動体には磁石とヨークのみ配設されているので、外部から電源の供給は不要であり、磁気検出素子は、躯体等に固定状態の枠体に設けられているから、外部から有線での電源供給が可能である。したがって、可動体には電池等を内蔵する必要がなく、小型化が可能であり、磁石とヨークとを組み込むだけであるから、可動体の厚さを増大させることも少なく、薄型化が可能で、可動体が窓やドア等である場合、その意匠性を損なうこともない。
【0009】
可動体としては、引き違い式の窓や戸、観音開き状の扉等を対象とすることができる。
レバーとしては、前述したクレセント錠、あるいはサムターン錠のように、回動によりロック状態とロック解除の状態との二つの状態に保持できるもの以外にも、回動でなく、スライドによりロック状態とロック解除の状態との二つの状態に保持できるものにも適用することができる。このスライド式の場合も、その直線的な移動軌跡のうちの一部の範囲で磁石の磁極がヨークに対峙するように配置すればよい。
磁気検出素子としては、リードスイッチ、ホール素子、MI素子、MR素子、GMR素子、TMR素子等の磁気抵抗素子のいずれかを用いることができる。また、この磁気検出素子は、1軸方向だけでなく、X軸,Y軸,Z軸のうちの2軸方向あるいは3軸方向の磁界を検出可能なものとしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の施錠検出装置によれば、施錠状態を確実に検出することができるとともに、レバーの操作に伴う磁界の変化をヨークによって可動体の端部まで伝達し、可動体を囲む枠体に設けた磁気検出素子によって検出しており、可動体に電池等を内蔵する必要がないので、小型化、薄型化が可能で意匠性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態の施錠検出装置を組み込んだ窓におけるクレセント錠のロック解除状態を示す一部を省略した縦断面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う一部を省略した横断面図である。
【図3】図1の窓の正面図である。
【図4】図1のB−B線に沿うクレセント錠の一部を断面にした正面図である。
【図5】図1に示すロック解除状態における磁気検出素子の外部磁界と出力電圧との関係を示すグラフである。
【図6】第1実施形態においてクレセント錠のレバーを水平姿勢まで回動した状態を示す一部を省略した縦断面図である。
【図7】図6に示す状態における磁気検出素子の外部磁界と出力電圧との関係を示すグラフである。
【図8】第1実施形態においてクレセント錠のロック状態を示す一部を省略した縦断面図である。
【図9】図8に示すロック状態における磁気検出素子の外部磁界と出力電圧との関係を示すグラフである。
【図10】本発明の第2実施形態の施錠検出装置を組み込んだ窓におけるクレセント錠のロック解除状態を示す一部を省略した図1同様の縦断面図である。
【図11】図10のC−C線に沿う一部を省略した図2同様の横断面図である。
【図12】図10に示すロック解除状態における磁気検出素子の外部磁界と出力電圧との関係を示すグラフであり、(a)がX方向、(b)がY方向を示す。
【図13】第2実施形態においてクレセント錠のレバーを水平姿勢まで回動した状態を示す一部を省略した縦断面図である。
【図14】図13に示す状態における磁気検出素子の外部磁界と出力電圧との関係を示す図12同様のグラフである。
【図15】第2実施形態においてクレセント錠のロック状態を示す一部を省略した縦断面図である。
【図16】図15のD−D線に示す一部を省略した横断面図である。
【図17】図15に示すロック状態における磁気検出素子の外部磁界と出力電圧との関係を示す図12同様のグラフである。
【図18】第2実施形態において空かけ状態を示す一部を省略した縦断面図である。
【図19】図18のE−E線に沿う一部を省略した横断面図である。
【図20】図18に示す空かけ状態における磁気検出素子の外部磁界と出力電圧との関係を示す図12同様のグラフである。
【図21】第2実施形態において他の空かけ状態を示す一部を省略した縦断面図である。
【図22】図21のF−F線に沿う一部を省略した横断面図である。
【図23】図21に示す空かけ状態における磁気検出素子の外部磁界と出力電圧との関係を示す図12同様のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1〜図9は本発明の第1実施形態の施錠検出装置1を引き違い窓に組み込んだ例を示している。この窓は、建物の躯体に固定される矩形の枠体2と、この枠体2内に収容された二枚の引き戸形式の窓体(可動体)3,4とを備えている。
【0013】
枠体2は上枠5、下枠6及びこれらの左右に配置される一対の縦枠7により構成され、これらの枠材は、例えばアルミニウム合金の押出形材からなっている。窓体3,4は、それぞれ上框9、下框10及びこれらの左右に配置される一対の縦框11からなる框枠9の内部に窓ガラス12が嵌め込まれた構成であり、枠体2の上枠5及び下枠6に2本ずつ平行に形成したレール13,14間に、窓体3,4が1枚ずつ室内側と室外側とに分けて引き違い状に配置される。この窓体3,4の各框材も、例えばアルミニウム合金の押出形材から構成される。
【0014】
これら窓体3,4を閉じた状態では、両窓体3,4の召し合わせ側の縦框11どうし、及びこれら縦框11の両端が接続されている上框9と下框10の端部どうしが、それぞれ窓体3,4の厚さ方向に重なり合うように配置される。そして、この閉じた状態で重なり合う縦框の高さ方向中間位置にクレセント錠21が設けられている。
このクレセント錠21は、室内側の窓体4に軸22を中心に回動自在に取り付けられた半月状のロック片23と、室外側の窓体3に取り付けられたフック部24とにより構成され、ロック片23に半径方向外方に突出するようにレバー25が一体に形成され、そのレバー25を操作してロック片23を回動させ、その一部をフック部24に係止することにより窓体3,4の閉状態をロックし、フック部24からロック片23の一部を退避させることによりロック状態を解除する構成である。
【0015】
図示例では、レバー25は、垂直下向き姿勢から垂直上向き姿勢までほぼ180°回動させられるようになっており、レバー25が垂直下向き姿勢のときにロック解除状態、レバー25を水平姿勢にしたときにロック片23の先端部がフック部24に係合し始め、レバー25を垂直上向き姿勢にまで回動することにより、ロック片23をフック部24に深く係合させて、ロック状態となる。
【0016】
このクレセント錠21のロック片23が設けられている縦框11内には、水平な軸22の端部に固定された磁石26が収容されている。この磁石26は、両端部に磁極を有する棒状に形成され、軸22に直交して固定され、軸22と一体に回動させられる。図示例では、レバー25が垂直下向き姿勢に配置されているときに、磁石26の両磁極が水平方向に向くように配置されている。
そして、この磁石26の半径方向外側に一対のヨーク27,28が固定されている。これらヨーク27,28は、鉄、ニッケル、コバルト又はこれらの合金等の強磁性体により形成される。磁石26の近傍位置から縦框11の上端部まで延びて設けられている。
【0017】
磁石26近傍に配置されるヨークの基端部27a,28aは、上下方向に沿う帯板状に形成されるとともに、その幅方向を窓体4の厚さ方向に向け、磁石26の回動面の外側で軸22の両側に配置されるように窓体4の表面側と裏面側とに配設されている。また、軸22に向けた側部に磁極の円弧状の回動軌跡より大きい曲率半径の円弧状の凹部29が形成され、軸22を介して凹部29を対向させるように配置されることにより、磁石26の回動による磁極の回動軌跡の外側に凹部29の内周部が配置されている。この場合、両ヨークの基端部27a,28aは、軸22の左右方向(窓体3の厚さ方向)には凹部29の内周部が対向しているが、軸22の上下方向には両ヨーク27,28間の空間部30が配置される。
なお、召し合わせ側の縦框11には、窓3を開閉する際の取っ手にもなる補強縦材31が一体に設けられており、クレセント錠21のロック片23、磁石26及びヨーク27,28は、この補強縦材31を含む縦框11に取り付けられている。本発明のロック機構は、この実施形態ではこのクレセント錠21を指す。
【0018】
また、ヨークの先端部27b,28bは窓体4の上端部に設けられる。両窓体3,4の上框9及びその両端部に固定されている縦框11の上端部には、枠体2の上枠5に設けられている上レール13を配置するための溝部36が上方に向けて開放した状態に形成されており、クレセント錠21のロック片23が設けられている窓体4の縦框11には、その溝部36内に、ヨークの先端部27b、28bが窓体4の厚さ方向に対峙するように上方に向けて平行に固定されている。したがって、クレセント錠21の磁石26の両磁極がヨークの基端部27a,28aに対峙したときに、これらヨークの先端部27b、28b間に図1及び図2の破線で示すように磁界が発生する。
【0019】
一方、枠体2の上枠5の長さ方向の中間位置には、閉じた状態の窓体3,4の縦框11の上方位置に、磁気検出素子41を備える防犯センサモジュール42が設けられている。図1〜図3等に示す例では、窓体4の上框9を収容する凹部43内に防犯センサモジュール42が設けられている。この防犯センサモジュール42の下面側に磁気検出素子41が設けられおり、この磁気検出素子41が、閉じた状態の窓体4のヨークの先端部27b、28bの真上付近に配置されることにより、これらヨークの先端部27b、28b間からの漏れ磁束を検出するようになっている。
磁気検出素子41としては例えばGMR素子が用いられ、その感度軸は、両ヨークの先端部27b、28bの対峙方向、つまり窓体4の厚さ方向に沿って配置されている。
本発明の施錠検出装置1は、この実施形態では磁石26、ヨーク27,28及び磁気検出素子41によって構成される。
【0020】
防犯センサモジュール42は、この磁気検出素子41とともに、この磁気検出素子41の検出結果の出力機器を内蔵しており、出力機器には無線送信部、電池等が設けられる。この防犯センサモジュール42からの出力を外部の受信機で受信し、警報等を発するようになっている。あるいは、防犯センサモジュール42に、可聴音やガラスが切断あるいは破壊される際に発する超音波を検出するためのマイクや、振動を検出するための加速度センサ、遠赤外線センサ、警報を発するためのアンプ及びスピーカ、発光素子、ディスプレーやスイッチ等へのインターフェイスなどを搭載してもよい。その他、防犯センサモジュール42から携帯電話、外部の警備会社等に無線又は有線で通報するようにしてもよい。
また、枠体2の上枠5には、防犯センサモジュール42を覆うカバー44が着脱可能に設けられている。このカバー44も例えばアルミニウム合金の押出形材により構成される。
【0021】
このように構成した開閉検出装置1において、クレセント錠21のレバー25を操作すると、その回動に伴い磁石26も一体に回動し、その回動に伴い窓体4上端部のヨーク先端部27b、28b間の磁界が変化し、その変化を磁気検出素子41によって検出することにより、クレセント錠21の作動状態を検出することができる。
以下、窓を閉め、クレセント錠21を操作してロックする場合について順に説明する。
【0022】
(1)図1及び図2に示すようにレバー25が垂直下向きに配置された状態では、ロック片23がフック部24から離間した施錠解除状態であり、そのとき磁石26は水平方向(窓体4の厚さ方向)に沿って配置され、両磁極がそれぞれヨーク基端部27a,28aの凹部29の内周部に対峙した状態となる。したがって、図示例のように、磁石26のS極がヨーク27、N極がヨーク28に対峙しているとすると、窓体4上端部のヨークの先端部27bがS極、ヨーク先端部28bがN極となり、これら先端部27b,28b間に破線で示すように磁界が発生し、その磁界が磁気検出素子41によって検出される。図5は、磁気検出素子41に対する外部磁界と出力電圧との関係をグラフにしたものであり、磁気検出素子41は、外部磁界の変化に対応して曲線に沿って出力電圧が変化する。そして、このロック解除状態においては、磁石26の両磁極がヨーク27,28に対峙していることから、その磁界に応じた出力が発生する。図5では破線で示すように(−)の外部磁界であり、その外部磁界に応じた例えば(+)の出力が発生している。磁気検出素子41は、この出力により、ロック解除状態であることを検出する。
【0023】
(2)上記(1)の状態から、レバー25を起こすように回動させると、その回動に伴い磁石26の磁極がヨーク基端部27a,28aの凹部29の内周部に沿って回動し、レバー25が水平状態になるまで、(1)のロック解除状態から90°回動させると、図6に示すようにロック片23の先端部がフック部24にわずかに係合した状態となり、磁石26は上下方向に沿って配置され、両磁極はヨーク27,28間の空間部30に向けられた状態となる。したがって、ヨークの基端部27a,28aにおいて磁界は閉じた状態となり、ヨークの先端部27b,28b間での漏れ磁束の発生はない。図に7示すように外部磁界は「0」であり、磁気検出素子の出力も「0」となる。
【0024】
(3)上記(2)の状態からさらにレバー25を上方に回動させ、(1)のロック解除状態から180°回動させてレバー25を垂直上向きに配置すると、図8に示すようにロック片23がフック部24に深く係合してロック状態となり、磁石26は、水平方向(窓体4の厚さ方向)に沿って配置され、両磁極がヨーク基端部27a,28aの凹部29の内周部に対峙する。したがって、窓体4上端部のヨークの先端部27b,28b間に磁界が発生し、その磁界が磁気検出素子41によって検出される。
この一連の操作の中で、(1)及び(3)で述べたように磁石26の磁極がヨーク基端部27a,28aの凹部29の内周部に対峙する状態が、(2)で述べた状態を挟んで(1)と(3)の2回生じるが、(1)のロック解除状態と(3)のロック状態とでは、磁極の向きは180°反対向きになっており、(3)のロック状態においては、図9に示すように、外部磁界は、図5の場合とは逆の(+)の磁界であり、その磁界に応じて(−)の出力が発生している。そして、磁気検出素子41は、この出力により、ロック状態であることを検出する。
【0025】
このように、この施錠検出装置1においては、クレセント錠21と一体に磁石26を回動させ、その磁石26により形成される磁界をヨーク27,28を介して窓体4の上端部にまで伝達し、窓体4の上方の枠体2から磁気検出素子41によって漏れ磁束を検出しており、窓体4には磁石26とヨーク27,28のみ配置されるだけであるので、電源の供給は不要であり、磁気検出素子41を有する防犯センサモジュール42への電源供給は、これらが躯体に固定状態の枠体2に設けられているので、外部から供給が容易である。
また、1個の磁気検出素子41で施錠状態を検出できるので、防犯センサモジュール42を小型化、低コスト化することができ、窓に取り付ける場合に、枠体2の大きさ等を変更することなく、あるいはわずかな寸法変更等により、実装が可能になる。また、窓体4には磁石26及びヨーク27,28を組み込むだけであるので、窓体4の厚さの増大を抑制することができる。したがって、枠体2や窓体3,4の施工費用も抑制することができ、また、枠体2及び窓体3,4に取り付けた状態でこれらを外部から発見し難く、防犯性も向上する。
【0026】
図10〜図23は本発明の第2実施形態の施錠検出装置を示している。第1実施形態では一つの窓体4に一対のヨーク27,28の両方ともを組み込んだが、この実施形態の施錠検出装置51は、ヨーク52,53を二つの窓体3,4に分けて配設している。すなわち、両ヨーク52,53は、その基端部52a,53aがいずれもストレートに形成され、一方のヨーク52が室外側の窓体3の縦框11内に収容され、他方のヨーク53が室内側の窓体4の縦框11内に収容されており、これらヨーク52,53が、窓体3,4を閉じたときに、室内側の縦框11に取り付けられている磁石26を介して対峙するように配置されている。これらヨーク52,53は、それぞれの窓体3,4の縦框11内を上下方向に沿って設けられ、その先端部52b、53bは、それぞれの窓体3,4の上框9の溝部36内に臨ませられている。この場合、室内側の窓体4に設けられているヨーク53は、その先端部53bが室外側に向けて屈曲形成され、室外側の窓体3上端部のヨークの先端部52bに接近して対峙しており、これらの対峙位置の上方に磁気検出素子41が設けられている。その他の構成は第1実施形態と同様であるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0027】
この施錠検出装置51においても、第1実施形態と同様、窓体3,4の上方の枠体2から磁気検出素子41によって漏れ磁束を検出することができ、各窓体3,4への電源の供給は不要であるとともに、防犯モジュール42へは外部から容易に電源供給することができる。
ところで、クレセント錠21は、ロック状態にすると、ロック片23がフック部24を引き寄せるため、ロック解除状態よりも両窓体3,4が接近した状態となる。また、ロック片23とフック部24との係合により、窓体3,4の戸当たり側の縦框(図3の左右両端側の縦框)11が縦枠7に押し付けられた状態となる。このため、ロック状態においては、窓体3,4相互の接近により磁界の強さが大きくなり、また、縦枠7に押し付けられることから、両ヨーク52,53が窓体3,4の開閉方向(水平方向)にずれた状態となる。図示例では、窓体3,4を閉じ、クレセント錠21がロック解除状態であるときに、両ヨークの先端部52b、53bが窓体2,4の厚さ方向に対峙し、ロック状態としたときには、厚さ方向の対峙姿勢から水平方向にずれて配置される。
【0028】
この第2実施形態の施錠検出装置51においては、一対のヨーク52,53が各窓体3,4に分けて設けられていることから、このようなロック時における窓体3,4どうしの移動についても検出することができ、また、ロック片23をロック位置に回動したにもかかわらずフック部24に係止されない、いわゆる「空かけ」状態も検出することができる。
以下、窓体3,4の開閉方向をX方向、窓体3,4の厚さ方向をY方向として、ロック解除状態、ロック状態及び「空かけ」状態について説明する。
【0029】
窓体3,4が閉で、レバー25が垂直下向きに配置されているロック解除状態は、図10及び図11に示すように両ヨークの先端部52b,53bが窓体3,4の厚さ方向(Y方向)に対峙した状態であるから、図12に示すようにX方向の出力は「0」となる。Y方向の出力は、磁界に応じた値となり、図示例では(−)の磁界により(+)の出力となっている。
そして、図13に示すように、クレセント錠21のレバー25を水平位置まで操作して、ロック片23の先端部がフック部24にわずかに係合した状態となると、磁石26が両ヨークの基端部52a,53aと平行に配置されるので、ヨークの先端部52b,53bにおける磁界は、図14に示すようにX方向、Y方向ともに「0」となり、磁気検出素子41の出力も「0」となる。
【0030】
さらにレバー25を垂直上向き状態となるまで操作し、クレセント錠21をロック状態とすると、磁石26の磁極が図10のロック解除状態から反転するので、図17(b)に示すようにY方向磁界が(+)に転じ、また、窓体3,4どうしが図15の矢印で示すように接近させられることにより、ヨークの先端部52a,53a間に比較的大きいY方向磁界が発生し、その磁界の大きさに応じた電圧が出力される。図17(b)では、(+)の磁界により、(−)の電圧が出力されている。また、両窓体3,4は図16の矢印で示すように戸当たり方向に押し付けられるため、ヨークの先端部52b,53bがX方向にずれることになり、X方向の磁界が発生する。図17(a)では、(+)の磁界により、(−)の電圧が出力されている。磁気検出素子41は、これらY方向及びX方向のそれぞれの磁界を検出できるように、例えば2軸のGMR素子の感度軸を各方向に向けて配置し、2軸方向の磁気を検出可能な磁気検出素子とする。
この場合、窓体3,4の開閉方向の磁束密度の変化は小さいため、GMR素子、TMR素子、MI素子を用いるのが好ましいが、リードスイッチやホール素子を用いてもよい。また、これら半導体センサを用いる場合は、小型化のため、感知軸方向の異なる複数の素子を一つのパッケージに組み込んだ1チップの磁気検出素子とするのが好ましい。さらに、アンプや信号処理回路等を内蔵したICと磁気検出素子とを1チップ化した構成とするのがより好ましい。
【0031】
次に、ロック片23はロック状態まで回動したが、フック部24に係止されなかった、いわゆる「空かけ」状態となった場合について説明する。この「空かけ」状態には、ロック片23がフック部24の手前側に外れてしまった場合と、ロック片23がフック部24の側方に外れてしまった場合とがある。
図18及び図19はロック片23がフック部24の手前側に外れてしまった場合を示しており、この場合は、ロック片23によってフック部24が外側に押されることにより、矢印で示すように窓体3,4どうしが厚さ方向に離れる方向に移動する。また、ロック状態のときとは異なり、窓体3,4が縦枠7に押し付けられることもない。このため、ヨーク先端部52b,53bの磁界は、図20に示すように、X方向には「0」で、Y方向には両ヨーク先端部52b,53bが離れることに伴いロック状態のとき(図17(b)参照)より小さい磁界が発生する。したがって、磁気検出素子41の出力はX方向には「0」で、Y方向にはロック状態のときより絶対値が低下した出力となる。
【0032】
図21及び図22はロック片23がフック部24の側方に外れてしまった場合を示しており、この場合は、両窓体3,4の厚さ方向の離間距離は変わらないが、ロック片23が側方に外れることにより、その外れた距離の分、両窓体3,4がレール13,14に沿って移動する。この窓体3,4の移動は、ロック状態のときの戸当たり方向への移動とは逆になる。Y方向距離は、ロック解除状態のときと同じであり、ロック状態のときより大きい。したがって、ヨーク先端部52b,53bの磁界は、X方向にはロック状態のときとは磁界方向が逆になり、Y方向はロック状態のときよりずれ量が大きいため小さい磁界となる。磁気検出素子41の出力としては、図23(a)(b)に示すように、ロック状態に比べて、X方向には(+)電圧に変化し、Y方向には絶対値が低下した値となる。
【0033】
このように、この実施形態の施錠検出装置51においては、施錠操作に伴い回動する磁石26と、窓体3,4に固定状態のヨーク52,53と、枠体2に固定状態の磁気検出素子41とにより、通常操作のロック状態及びロック解除状態とともに、2種類のいわゆる「空かけ」状態をも検出することができ、施錠状態を正確に検出することができる。
なお、磁石26に対峙するヨークの基端部52a,53aがストレート状に形成されているため、磁石26の回動に伴いヨーク52,53に伝わる磁界の強度が変化し、磁石26が水平方向に配置されたときが最も磁界が強く、水平方向からいずれの方向に回動しても磁界は漸次弱くなる。そして、磁気検出素子41の出力特性は、図12等に示すように磁界の変化に伴い変化するので、その出力電圧から磁界の強さを求めることができ、その磁界の強さからロック片23の回動位置を検出することもできる。
【0034】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本発明は実施形態で述べたクレセント錠以外にも、サムターン錠にも適用することができ、また、スライドによりロック状態とロック解除の状態との二つの状態に保持できるロック機構にも適用することができる。これら錠の回動操作、スライド操作に伴う移動軌跡のうちの一部の範囲で磁石の磁極がヨークに対峙するように配置すればよい。
また、施錠される可動体として、引き違い式のようなスライドする窓以外にも、観音開き形式の扉体のように回動する可動体にも適用することができ、両開きだけでなく、片開き式の窓や扉にも適用することができる。片開き式の窓や扉に適用する場合、ヨークの一方を躯体に固定状態の枠体に取り付けてもよい。本発明では、実施形態の窓体、この扉体等を含めて、可動体と称している。
【符号の説明】
【0035】
1…施錠検出装置、2…枠体、3,4…窓体(可動体)、11…縦框、21…クレセント錠、22…軸、23…ロック片、24…フック部、25…レバー、26…磁石、27,28…ヨーク、27a、28a…基端部、27b、28b…先端部、29…凹部、30…空間部、41…磁気検出素子、42…防犯センサモジュール、51…施錠検出装置、52,53…ヨーク、52a,53a…基端部、52b,53b…先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を開閉可能な可動体に設けたレバーを操作することにより、前記可動体を閉状態にロック可能なロック機構に設けられる施錠検出装置であって、前記可動体に、前記レバーの操作によって移動させられる磁石と、該磁石の近傍位置から前記可動体の端部まで延びる一対のヨークとが設けられるとともに、これらヨークの基端部は、前記磁石の磁極の移動軌跡の一部の範囲で両磁極に対峙するように設けられ、前記開口部を形成する枠体に、前記ヨークの先端部間の磁界を検出する磁気検出素子が設けられていることを特徴とする施錠検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−40466(P2013−40466A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176719(P2011−176719)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)