説明

旋回フレームの構造

【課題】 従来技術の一実施例旋回フレームでは、底面板の中央部に立設された左右一対の側板の間に左右方向に直立状態の仕切板を溶着して、補強を実施していた。そのために旋回モータなどに通じる油圧配管のレイアウトに制限を受けるので、上部旋回体の内部構成が複雑になるばかりでなく、車体内スペースの有効活用に悪影響を及ぼしていた。本発明は前記仕切板を不要にし、しかも旋回フレームの剛性と配管スペースを確保できる旋回フレームの構造を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明では、前記一対の側板の間で、前記底面板の上面部に固設される旋回モータ取付用の座板を左右方向に延設し、前記一対の側板の互いに相対する内側面にわたって溶着せしめるとともに、前記座板の後端面部が、前記底面板の上面より後方へ向けて開放状態に形成されるようにした。また前記座板の前端(後端)上部に、下方へ向けて傾斜するテーパ面部を形成した。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、油圧ショベルなど建設機械,作業車両の下部走行体の上部に連設した上部旋回体における旋回フレームの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】図7は、実開平6−79851号公報に記載されている従来技術の一実施例旋回フレーム5を示す平面図である。図において、6は旋回フレーム5のメインフレーム、7は左サイドデッキ、8は右サイドデッキである。図8は実開平6−79851号公報には記載されていないが、図7におけるメインフレーム6の要部拡大詳細平面図である。図において、11はメインフレーム6の底面板、12L,12Rは底面板11の上面部に立設された左右一対の側板、13は前記一対の側板12Lと12Rの間で前記底面板11の上面部に溶着されている旋回モータ(図示していない)取付用の座板、14は座板13の上面にざぐり施工を行った取付座面、15は前記座板13に穿設した複数の締付ボルト(締付ボルトは図示していない)用ねじ穴、16は座板13に対して図示していない旋回モータのインロー部を嵌込むインロー用嵌合穴、17は前記側板12Lと12Rの互いに相対する内側面にわたって溶着されている左右方向に直立状態の仕切板である。図9は、図8のA−Aより見た要部断面図である。図10は、図8のB−Bより見た要部断面図である。
【0003】図7〜図10に示すように従来技術の一実施例旋回フレーム5では、前記旋回フレーム5の主要構成フレーム部分であるメインフレーム6において、左右一対の側板12Lと12Rが底面板11の中央部の上面に前後方向に立設され、前記一対の側板12Lと12Rの間で、前記底面板11の上面部に旋回モータ取付用の座板13が溶着されている。そしてまた前記側板12Lと12Rの互いに相対するそれぞれ内側面と、前記底面板11の上面とにわたって左右方向に直立状態の仕切板17が溶着されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来より建設機械,作業車両等の上部旋回体の旋回フレームに設けられている旋回モータ取付用の座板の平面視形状は、旋回モータ取付用の取付座面を有する程度の大きさのものである。すなわち前記旋回モータを旋回フレームのメインフレームにおける底面板に対して確実に支持固定できる機能をそなえているものであって、前記底面板の中央部の上面に前後方向に立設された左右一対の側板の間を補強するようにはしていない。そのために前記一対の側板の互いに相対するそれぞれ内側面と、前記底面板の上面とにわたって左右方向に直立状態の仕切板を溶着して、前記一対の側板の間の補強を実施していた。しかし前記仕切板は前記旋回モータに通じる油圧配管と干渉をおこすおそれもあり、前記油圧配管のレイアウトに制限を受けるので、上部旋回体の内部構成が複雑になるばかりでなく、車体内スペースの有効活用に悪影響を及ぼしていた。また前記仕切板の左右両端部の前記両側板内側面に対する溶接が、前記側板の上方へ向かう方向に延長して施工されている。そのために建設機械の作業時にその振動,揺動などにより、前記仕切板溶接部に応力集中を受けやすいので、前記仕切板の左右両端部の形状を応力分散可能な形状に工夫しなければならなかった。したがって前記仕切板の製作費及び溶接加工費が高くなり、コスト上、具合が悪かった。本発明は前記仕切板を不要にし、しかも前記メインフレームの剛性と配管スペースを確保でき、かつフレーム構成を簡単にできる旋回フレームの構造を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明では、左右一対の側板が底面板の中央部の上面に前後方向に立設され、前記一対の側板の間で、前記底面板の上面部に旋回モータ取付用の座板が固設されている建設機械,作業車両等の上部旋回体の旋回フレームにおいて、前記座板を左右方向に延設し、前記一対の側板の互いに相対する内側面にわたって固着せしめた。したがって前記座板の左右両端部の前記両側板内側面に対する溶接が、前記側板の上方へ向かう方向に延長して施工されないで前記側板の基部近くに水平方向に施工されるので、建設機械の振動,揺動などに起因する応力集中を前記座板の両端部に発生させることなく、旋回フレームの剛性を確保することができる。また前記座板の前端上部と後端上部のうち少くとも一方に、前記座板の上面より下方へ向けて傾斜するテーパ面部を形成した。それにより前記座板の上面に入ってきた雨水又は露水などが、前記テーパ面部を伝って流れ落ちやすい。すなわち水はけを良くするので、前記座板の上面などに前記水が溜まるのを防止することができる。また前記座板の後端面部が、前記底面板の上面より後方へ向けて開放状態になるように形成した。すなわち従来技術のように座板の後方に設けられていた仕切板を、本発明では不要にしているので、旋回モータなどの油圧配管が障害物等と干渉をおこさないように合理的に配管されるとともに、車体内スペースの有効活用をはかることができる。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態の旋回フレーム18を示す平面図である。図において、19は旋回フレーム18のメインフレーム、20は左サイドフレーム、21は右サイドフレームである。図2は、図1におけるメインフレーム19の要部拡大詳細平面図である。図において、11’はメインフレーム19の底面板、12’L,12’Rは底面板11’の上面に立設された左右一対の側板、22は前記一対の側板12’Lと12’Rのそれぞれ内側面部と前記底面板11’の上面部にわたって溶着されている旋回モータ(図示していないが後述する)取付用の座板、14’は座板22の上面にざぐり施工を行った取付座面、15’は前記座板22に穿設した複数の締付ボルト(締付ボルトは図示していない)用ねじ穴、16’は座板22に対して図示していない旋回モータのインロー部を嵌込むインロー用嵌合穴である。
【0007】次に図3は図2のC−Cより見た要部断面図であるが、仮想線で示す旋回モータ23の取付状態を示す図である。図において、24は旋回モータ23の駆動モータ部、25は前記駆動モータ部24が一体型に組付けられている旋回減速機、26は旋回減速機25の取付用フランジ部、27は座板22のテーパ面部である。なお前記座板22に対して旋回モータ23がボルト締付けされるのであるが、詳しく述べるならば前記座板22に対して、旋回減速機25の取付用フランジ部26がボルト締付けされる。図4は、図2及び図3における座板22の斜視図である。図5は、図3のD部拡大図である。なお図5に示す座板22では、インロー用嵌合穴16’の内周下端縁部イに溶接用開先を形成していないが、底面板11’の開口穴28を前記インロー用嵌合穴16’より大径に開穿しているので、前記開口穴28の上端側内周面部と、前記インロー用嵌合穴16’の内周下端側底面部とをすみ肉溶接している。図6は、図5における座板22のインロー用嵌合穴16’の内周側下端縁部イの変形例溶接を示す図である。図6に示す前記溶接では、座板22(座板の符号は説明を容易にするために図5と同符号を付す)のインロー用嵌合穴16’(図5と同符号を付す)の内周下端縁部イに溶接用開先を形成して、底面板11’の開口穴28(図5と同符号を付す)の内周上端側上面部を溶接している。
【0008】次に、本発明の一実施形態の旋回フレーム18の構造及び作用を図1〜図5について述べる。本実施形態では、旋回フレーム18のメインフレーム19における左右一対の側板12’Lと12’Rの間で、底面板11’の上面部に固設される旋回モータ23取付用の座板22を左右方向に延設し、前記一対の側板12’Lと12’Rのそれぞれ内側面部と前記底面板11’の上面部にわたって溶着せしめた。したがって前記座板22の左右両端部の前記両側板12’L,12’R内側面に対する溶接が、前記側板12’L,12’Rの上方へ向かう方向に延長して施工されないで前記側板12’L,12’Rの基部近くに水平方向に施工されるので、油圧ショベル等建設機械の振動,揺動などに起因する応力集中を前記座板22の両端部に発生させることなく、旋回フレーム18の剛性を確保することができる。
【0009】また前記座板22の前端上部と後端上部のうち少くとも一方、例えば前端上部に、前記座板22の上面より下方へ向けて傾斜するテーパ面部27を形成した。それにより前記座板22の上面に入ってきた雨水又は露水などが、前記テーパ面部27を伝って流れ落ちやすい。すなわち水はけを良くするので、前記座板22の上面などに前記水が溜まるのを防止することができる。また前記座板22の後端面部が、前記底面板11’の上面より後方へ向けて開放状態になるように形成した。すなわち図8〜図10に示す従来技術のように座板11の後方に設けられていた仕切板17を不要にしているので、旋回モータ23などの油圧配管(図示していない)が障害物等と干渉をおこさないように合理的に配管されるとともに、車体(図示していない建設機械の上部旋回体をいう)内スペースの有効活用をはかることができる。
【0010】
【発明の効果】本発明では、旋回フレームのメインフレームにおける左右一対の側板の間で、底面板の上面部に固設される旋回モータ取付用の座板を左右方向に延設し、前記一対の側板の互いに相対するそれぞれ内側面部と、前記底面板の上面部にわたって前記座板を溶着せしめた。したがって前記座板の左右両端部の前記両側板内側面に対する溶接が、前記側板の上方へ向かう方向に延長して施工されないで前記側板の基部近くに水平方向に施工されるので、建設機械の振動,揺動などに起因する応力集中を前記座板の両端部に発生させることなく、旋回フレームの剛性を確保することができる。また前記座板の前端上部と後端上部のうち少くとも一方に、前記座板の上面より下方へ向けて傾斜するテーパ面部を形成した。それにより前記座板の上面に入ってきた雨水又は露水などが、前記テーパ面部を伝って流れ落ちやすい。すなわち水はけを良くするので、前記座板の上面などに前記水が溜まるのを防止することができる。また前記座板の後端面部が、前記底面板の上面より後方へ向けて開放状態になるように形成した。すなわち従来技術のように座板の後方に設けられていた仕切板を、本発明では不要にしているので、部品点数が減って構造も簡単となり、旋回モータなどの油圧配管が障害物等と干渉をおこさないように合理的に配管されるとともに、車体内スペースの有効活用をはかることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の旋回フレームを示す平面図である。
【図2】図1におけるメインフレームの要部拡大詳細平面図である。
【図3】図2のC−Cより見た要部断面図である。
【図4】図2及び図3における座板の斜視図である。
【図5】図3のD部拡大図である。
【図6】図5における座板の変形例溶接を示す図である。
【図7】従来技術の一実施例旋回フレームを示す平面図である。
【図8】図7におけるメインフレームの要部拡大詳細平面図である。
【図9】図8のA−Aより見た要部断面図である。
【図10】図8のB−Bより見た要部断面図である。
【符号の説明】
5,18 旋回フレーム
6,19 メインフレーム
11,11’ 底面板
12L,12’L,12R,12’R 側板
13,22 座板
14,14’ 取付座面
16,16’ インロー用嵌合穴
17 仕切板
23 旋回モータ
27 テーパ面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 左右一対の側板が底面板の中央部の上面に前後方向に立設され、前記一対の側板の間で、前記底面板の上面部に旋回モータ取付用の座板が固設されている建設機械,作業車両等の上部旋回体の旋回フレームにおいて、前記座板を左右方向に延設し、前記一対の側板の互いに相対する内側面にわたって固着せしめたことを特徴とする旋回フレームの構造。
【請求項2】 前記座板の前端上部と後端上部のうち少くとも一方に、前記座板の上面より下方へ向けて傾斜するテーパ面部を形成したことを特徴とする請求項1記載の旋回フレームの構造。
【請求項3】 前記座板の後端面部が、前記底面板の上面より後方へ向けて開放状態に形成されていることを特徴とする請求項1記載の旋回フレームの構造。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図10】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開平11−100862
【公開日】平成11年(1999)4月13日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−279758
【出願日】平成9年(1997)9月27日
【出願人】(000246273)油谷重工株式会社 (644)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)