既存建造物の耐震補強構造
【課題】建造物の外側のある面に左右いずれか一方の筋交い部材のみを配置した場合においても十分な補強効果が得られる既存建造物の耐震補強構造を提供すること。
【解決手段】
既存建造物Hの任意の一面の左右のコーナー部に左右一対の付属基礎2を配置する。両付属基礎2間にはターンバックル7を介して丸棒8が配設されており、両付属基礎2の離間方向への動きが規制されている。既存建造物Hの上部側の梁10と左右いずれかの付属基礎2との間に筋交いブレス17を斜めに配設する。筋交いブレス17には付属基礎2の上面に当接される脚プレート20が形成されている。このような耐震補強構造であると1本のブレス17だけで耐震補強が実現されることなる。
【解決手段】
既存建造物Hの任意の一面の左右のコーナー部に左右一対の付属基礎2を配置する。両付属基礎2間にはターンバックル7を介して丸棒8が配設されており、両付属基礎2の離間方向への動きが規制されている。既存建造物Hの上部側の梁10と左右いずれかの付属基礎2との間に筋交いブレス17を斜めに配設する。筋交いブレス17には付属基礎2の上面に当接される脚プレート20が形成されている。このような耐震補強構造であると1本のブレス17だけで耐震補強が実現されることなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は既存建造物を主として地震の揺れから保護するために施される耐震補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から建造物の耐震性を増すために種々の方策が提案されている。
例えば特許文献1には、その図1に示すように土台2と二階梁3との間に斜めにテンション調整機構4(ターンバックル)を設けた連結体6,10(ブレース様部材)を配設して耐震性を向上させる技術が開示されている。特許文献1の技術は現在施工中の建造物に行う補強工事であってこれらターンバックルやブレース様部材からなる筋交い部材は建造物の完成とともに壁内部に収容されてしまうため邪魔にはならない。
ところが、近年既存の建造物の地震に対する強度を向上させるためにこのような耐震構造を既存の建造物に追加施工したいとする要望が多くなってきている。
その場合において、例えば倉庫や工場のようにスペースに余裕があり、なおかつ機能のみが重視される既存の建造物であれば建造物の内側壁面寄りに筋交い部材を配設することも自由である。しかしながら、一般住宅においてこのように内側(つまり住居側)に筋交い部材を配設することは美観の点、あるいはスペース的な制限等から好ましくない。その場合に、もし特許文献1のように筋交い部材を壁内部に内蔵させる工事をするとすれば施工費用が極めて高額となってしまう。
そのため、筋交い部材を既存の建造物の外側に配設するという発想がある。このような先行技術として特許文献2を挙げる。特許文献2は出願人の提案した技術であって、既存の建造物の基礎の外に別途付属基礎を構築し、梁とこの付属基礎に埋設されたアンカーの間を斜めに筋交い部材を張設するようにしたものである。このような技術であれば、内側の住居側における影響はまったくなく、付属基礎と梁との間で補強するため、既存建造物がしっかりと基礎に固定されることとなり補強効果が高くなるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−111875号公報
【特許文献2】特開2006−118234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、筋交い部材というのは左右いずれの方向からの力に対しても耐える必要からある1つの面に対しては斜めクロス状に交叉して2本配置させることが望ましい。しかし、筋交い部材を既存の建造物の外側に配設する場合、色々な器物の存在、例えばエアコンの室外機や、設置された物置等があるために一方の筋交い部材は配設できても、もう一方の筋交い部材がどうしても取り付けられないといったケースがある。これは新築する建造物では考えにくい既存の建造物だからこそ生じる課題である。
そのため、建造物の外側のある面に左右いずれか一方の筋交い部材のみを配置した場合においてもその筋交い部材で十分に補強となるような既存建造物の耐震補強構造が望まれていた。
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、建造物の外側のある面に左右いずれか一方の筋交い部材のみを配置した場合においても十分な補強効果が得られる既存建造物の耐震補強構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明では、既存建造物の任意の一面の左右のコーナー部において前記既存建造物に係合する左右一対の付属基礎を配置するとともに、同両付属基礎間に同両付属基礎の離間方向への動きを規制するための連結部材を配設する一方、前記既存建造物の上部側に配設された架構部材と左右いずれかの前記付属基礎との間に筋交い部材を斜めに配設したことをその要旨とする。
このような構成では、既存建造物の任意の一面の左右のコーナー部において既存建造物に係合する左右一対の付属基礎を配置する。そして、両付属基礎間に両付属基礎の離間方向への動きを規制するための連結部材を配設する。一方で既存建造物の上部側に配設された架構部材、例えば梁と左右いずれかの付属基礎との間に筋交い部材を斜めに配設する。
このような構成を採用することによって、地震による揺れに対して次のように作用する。ここでは例えば図23(a)のように左上方から右下方に向かって筋交い部材が配設される場合を例に取って説明する(もちろん、本発明は図23(a)に限定されるものではない)。図23(a)のように左方から右方に向かって建造物を押動するような力に対しては基本的に筋交い部材が支えとなって建造物の構造を保持する。但し、その際に右側付属基礎を外方に押し出す力がかかることとなる。しかし、右側付属基礎は既存建造物と係合している左側付属基礎と連結部材によって互いに連結されているため、外方に押し出されることはない。
【0006】
ここに、「付属基礎」とは現場で既存基礎に隣接してコンクリートを打設して成形するようにしてもよく、プレキャストのコンクリート製の基礎を埋め込んでもよく、更に既存基礎に鋼板等で構成された金属製部材をアンカーやボルト等で固着するようにしてもよい。既存基礎ではなく土台や柱に固着させてもよい。要は後付けで筋交い部材や連結部材を取りつけることができるベースとなればよい。
「筋交い部材」の形状や材質も特に限定はされず、鋼材であっても木材であってもよい。形状は断面I状でもよいが、鋼材であればより軽量で曲げ強度に優れるようなL形状やH形状やC形状のように屈曲部を有することが好ましい。筋交い部材は架構部材と同じあるいはそれ以上圧縮強度及び曲げ強度のあることが好ましい。
【0007】
また、請求項2に記載の発明では請求項1に記載の発明の構成に加え、前記筋交い部材に下方に向かって延出される脚部材を形成し、同脚部材の下端を前記既存建造物の外部に設置された硬質面に当接させるようにしたことをその要旨とする。
請求項1の構成に加えこのように構成すれば、筋交い部材には下方に向かって脚部材が延出されているため、図23(c)のように右方から左方に向かって建造物を押動するような力に対して脚部材が支えとなるため、建造物の構造を保持することができる。ここに「脚部材」も同様に鋼材であっても木材であってもよく、形状、数は適宜変更が可能である。
【0008】
また、請求項3に記載の発明では請求項2記載の発明の構成に加え、前記硬質面は前記筋交い部材の下端側が支持される側の付属基礎の上面であることをその要旨とする。
つまり、別途硬質面を有する部材を用意しなくとも、付属基礎をそのまま使用することができる。
【0009】
また、請求項4に記載の発明では請求項1〜3のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記筋交い部材の下端が支持される前記付属基礎は前記左右のコーナー部を結ぶ線分に沿った方向であって、前記既存建造物の外方に向かって延出する延長部分を有し、前記筋交い部材の下端側は前記延長部分において支持されることをその要旨とする。
このような構成とすることで、例えば、建物周囲が立て込んでおり、スペース的に筋交い部材を取り付けられないような場合において、左右のコーナー部から離間した延長部分に筋交い部材の下端を配置させることで筋交い部材を外方にオフセットさせることができる。
また、請求項5の発明では請求項1〜4のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記付属基礎は前記コーナー部に鉤状に当接する部分を有することをその要旨とする。
つまり、コーナー部分の形状に対応した、例えばL字状の形状の当接面を有する場合が考えられる。これによって付属基礎に何らかの外力が作用した場合であっても付属基礎が位置ずれしにくくなる。
【0010】
また、請求項6の発明では、既存建造物の任意の一面の左右のいずれかのコーナー部において前記既存建造物に係合する付属基礎を配置し、前記既存建造物の上部側に配設された架構部材と前記付属基礎との間に筋交い部材を斜めに配設するとともに、平面視において前記筋交い部材と略同方向であって前記付属基礎と前記既存建造物の間には前記付属基礎が前記任意の一面に沿った外側方向に移動することを規制するための連結部材を配設するようにしたことをその要旨とする。
このような構成では、既存建造物の任意の一面の左右いずれかのコーナー部において既存建造物に係合する付属基礎を配置する。そして、筋交い部材と略同方向であって付属基礎と既存建造物の間には付属基礎が任意の一面に沿った外側方向に移動することを規制するための連結部材を配設する。一方で既存建造物の上部側に配設された架構部材、例えば梁と左右いずれかの付属基礎との間に筋交い部材を斜めに配設する。
このような構成を採用することによって、地震による揺れに対して次のように作用する。ここでは例えば図23(b)のように左上方から右下方に向かって筋交い部材が配設される場合を例に取って説明する(もちろん、本発明は図23(b)に限定されるものではない)。図23(b)のように左方から右方に向かって建造物を押動するような力に対しては基本的に筋交い部材が支えとなって建造物の構造を保持する。但し、その際に付属基礎を外方に押し出す力がかかることとなる。しかし、付属基礎は既存建造物に対して連結部材によって連結されているため、外方に押し出されることはない。連結部材はできる限り平面視において筋交い部材と平行となるように逆コーナー、あるいはその近傍に連結されることが好ましい。
「付属基礎」や「筋交い部材」の概念は請求項1と同様である。
【0011】
また、請求項7の発明では、前記左右のコーナー部を結ぶ線分と交差する方向であって、既存建造物の任意の一面から外方に離間した位置に前記既存建造物から延出される間隔保持部材によって前記既存建造物方向への移動が規制された状態で付属基礎を配置し、前記既存建造物の上部側に配設された架構部材と前記付属基礎との間に筋交い部材を斜めに配設するとともに、平面視において前記筋交い部材と略同方向であって前記付属基礎と前記既存建造物の間には前記任意の一面に沿った外側方向に移動することを規制するための連結部材を配設するようにしたことをその要旨とする。
このような構成では、左右のコーナー部を結ぶ線分と交差する方向であって、既存建造物の任意の一面から外方に離間した位置に前記既存建造物から延出される間隔保持部材によって既存建造物方向への移動が規制された状態で付属基礎を配置する。この際に付属基礎が既存建造物方向に引き寄せられる方向に力が働くが、間隔保持部材によって付属基礎が既存建造物方向に引き寄せられるのが防止されることとなる。そして、筋交い部材と略同方向であって付属基礎と既存建造物の間には付属基礎が任意の一面に沿った外側方向に移動することを規制するための連結部材を配設する。一方で既存建造物の上部側に配設された架構部材、例えば梁と左右いずれかの付属基礎との間に筋交い部材を斜めに配設する。
これによって例えば、建物周囲が立て込んでおり、スペース的に1本の筋交い部材でさえ取り付けられないような場合に任意に付属基礎を移動させることができる。
「付属基礎」や「筋交い部材」の概念は請求項1と同様である。
【0012】
また、請求項8の発明では請求項1〜7のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記架構部材には前記既存建造物の側面に沿った補強材を架設し、前記筋交い部材を前記補強材を介して前記架構部材に配設したことをその要旨とする。
このような構成では、既存建造物の上部側に配設された架構部材、例えば複数の梁や梁の側面等に既存建造物の側面に沿った補強材を架設し、この補強材と左右いずれかの付属基礎との間に筋交い部材を斜めに配設することができる。このような構成を採用することによって、既存の梁のような外方に突出した部材を利用しなくともよく、補強材の任意の位置に筋交い部材の上部側を配置させることができる。
【発明の効果】
【0013】
上記各請求項の発明では、既存建造物は1本の筋交い部材であっても耐震補強が実現されることなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1の耐震補強構造を既存建造物に施工した状態の既存建造物の架構のみを示す概略正面図。
【図2】実施の形態1の耐震補強構造を説明する既存建造物の一部省略一部破断断面図。
【図3】実施の形態1において筋交い部材の上端側の取り付け構造を説明する説明図。
【図4】実施の形態1において筋交い部材の上端側の取り付け構造を説明する部分拡大正面図。
【図5】(a)は同じ実施の形態1において筋交い部材の下端側の取り付け構造を説明する部分拡大正面図、(b)は同じく部分拡大側面図。
【図6】実施の形態1において(a)は付属基礎の斜視図、(b)は同じく正面図。
【図7】実施の形態1において梁に取り付けた連結金具と右側の付属基礎との間に筋交い部材を配設した状態を中間を省略して説明する説明図。
【図8】実施の形態1で使用される付属基礎の平面図。
【図9】本発明の実施の形態2の耐震補強構造を既存建造物に施工した状態の既存建造物の架構のみを示す概略正面図。
【図10】同じ実施の形態2において筋交い部材の上端側の取り付け構造を説明する部分拡大側面図。
【図11】実施の形態3の耐震補強構造を説明する既存建造物の一部省略一部破断断面図。
【図12】実施の形態3において使用する付属基礎の斜視図。
【図13】実施の形態4において筋交い部材の下端側の取り付け構造を説明する部分拡大正面図。
【図14】実施の形態4の耐震補強構造を説明する既存建造物の一部省略一部破断断面図。
【図15】実施の形態4で使用される付属基礎の斜視図。
【図16】本発明の実施の形態5の耐震補強構造を既存建造物に施工した状態の既存建造物の架構のみを示す概略正面図。
【図17】実施の形態5の耐震補強構造を説明する既存建造物の一部省略一部破断断面図。
【図18】実施の形態5において筋交い部材の上端側の取り付け構造を説明する部分拡大平面図。
【図19】本発明の実施の形態6の耐震補強構造を既存建造物に施工した状態の既存建造物の架構のみを示す概略正面図。
【図20】実施の形態6の耐震補強構造を説明する既存建造物の一部省略一部破断断面図。
【図21】実施の形態5で使用される付属基礎の斜視図。
【図22】他の実施の形態の耐震補強構造を説明する既存建造物の部分拡大正面図。
【図23】(a)〜(c)は本発明の原理を模式的に説明する説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の既存建造物の耐震補強構造を具体化した実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1に示すように、既存建造物Hが布基礎1の上に設置されている。本実施の形態1では既存建造物Hは在来工法によって建てられた平屋造りとされている。布基礎1は鉄筋コンクリート造りとされている。布基礎1下半身は地盤(地上面をGとする)に埋設されている。
本実施の形態1では建造物Hのある一面に対して本発明の耐震補強構造を適用するものとするが、複数の面に適用することも可能である。
図1及び図2に示すように、建造物Hの両コーナー部C1、C2の地中に一対の付属基礎2を埋設する。図6(a)(b)に示すように、付属基礎2は布基礎1のコーナー部C1、C2の形状に対応したコンクリート製のプレキャストブロック基礎である。付属基礎2は同形状の第1及び第2の直方体部分2A,2Bを90度の角度で鉤状に突き合わせて平面形状略L字状となるように構成したブロック体である。付属基礎2の鉤状に90度屈曲した内側面を当接内周面2aとする。付属基礎2内には成形時に埋め込まれたねじ棒4の先端が第1及び第2の直方体部分2A,2Bの端面位置から突出させられている。付属基礎2の上面2bは平面に形成されており、成形時に埋め込まれた2枚の支持プレート3が上面2bに対して垂直方向に突出させられている。支持プレート3にはボルト孔5が形成されている。図8に示すように、支持プレート3はラインLで鏡像対称となるように上面2bに配置されている。図1及び図2に示すように、付属基礎2は両コーナー部C1、C2の布基礎1の外側を掘削して下半身が埋設されるとともに当接内周面2aが布基礎1に当接させられている。
図2に示すように、左右の付属基礎2において、対向するねじ棒4間にターンバックル7を介して両端にねじ部を有する断面円形の鋼材からなる丸棒8が配設されている。丸棒8は左右の付属基礎2のねじ棒4の間隔よりも若干短く構成され、ターンバックル7によって左右の付属基礎2を互いに引き付け合うようにテンションを与えられた状態で保持されている。
【0016】
図1に示すように、既存建造物Hの梁10の端部が外壁Wから外側に張り出している。本実施の形態1では図1において図上左方に配置された梁10に対してその外周を包囲するように連結金具11が装着されている。
連結金具11は梁10の外周形状と略一致した断面長方形の内周面とされたリング状の金属部材であって、前面プレート11aと前面プレート11aの上下端から直角に後方にそれぞれ延出される上部及び下部プレート11b,11cと上部プレート11bの後端から下垂する第1の背面プレート11dと、下部プレート11cの後端から起立する第2の背面プレート11eから構成されている。第1及び第2の背面プレート11d,11eの突合せ部分には外方に張りだす上下一対のフランジ部12が形成されており、図4に示すように、フランジ部12に形成された図示しないボルト孔を介してボルト13及びナット14によってフランジ部12が締め付けられることで連結金具11は梁10に固定されるようになっている。連結金具11の前面プレート11aの中央には略半円形状の挿入プレート15が形成されている。挿入プレート15にはボルト孔16が形成されている。
【0017】
図1及び図7に示すように、梁10に取り付けた連結金具11と右側の付属基礎2との間には筋交いブレス17が斜めに配設されている。図1及び図5に示すように、筋交いブレス17は断面C状に屈曲成形された鋼材であって、長手方向に沿った開口部17aは下方を向くように配置されている。筋交いブレス17の上下端寄りの側面にはボルト穴18(下方側図示省略)が形成されており、図3に示すように、上端側上面(開口部17aの対向面)中央にはスリット19が形成されている。図1、図5(a)及び(b)に示すように筋交いブレス17の下部寄り位置には脚部材としての脚プレート20が下方に延出するようにボルト21及びナット22によって締め付け固定されている。脚プレート20は筋交いブレス17の斜めに配設される際の角度に併せて鉛直方向に延出されるように取り付けられており、水平な下端面20aがちょうど付属基礎2の水平な上面2bと密着するように配置される。
図3に示すように、筋交いブレス17の上端側は連結金具11の挿入プレート15をスリット19に挿入させて接合し、ボルト孔16,18同士を照合させて固定手段としてボルト23及びナット24をワッシャ25を介して締め付けることで固定する。一方、図5(a)及び(b)に示すように、筋交いブレス17の下端側は支持プレート3の側面に筋交いブレス17を配置させ、ボルト孔5,18同士を照合させてボルト23及びナット24をワッシャ25を介して締め付けることで固定する。
【0018】
次に、本実施の形態1の耐震補強構造の作用について説明する。
上記のように構成することで既存建造物Hに対して地震によって次のような作用が生じる。まず、図1において左方から右方に向かって建造物を押動するような力に対しては基本的に筋交いブレス17が支えとなって既存建造物Hの構造を保持する。このとき、右側の付属基礎2を外方に押し出す力がかかることとなる。しかし、左右の付属基礎2は丸棒8とターンバックル7によって連結されており、上記のような力がかかっても左側の付属基礎2が布基礎1と係合することによって右側の付属基礎2が外方に押し出されることはない。
一方、右方から左方に向かって建造物を押動するような力に対しては基本的に筋交いブレス17が支えとなることはない。しかし、この場合には筋交いブレス17から下方に向かって延出される脚プレート20が硬質面としての上面2bに当接しており、これが支えとなるため、やはり建造物の構造を保持することができる。
本発明は上記実施の形態のように構成することにより次のような具体的効果を奏する。(1)1本の筋交いブレス17のみで左右方向の力に耐えることが可能となるため、既存建造物Hの周囲が立て込んでいて2本の筋交いを配設できない場合に本発明の耐震補強構造を適用することで1本の筋交いブレス17のみでも耐震補強が可能となる。
(2)付属基礎2は布基礎1のコーナー部の形状に対応しているため、横ずれしにくく、また、鏡像対称であるため筋交いブレス17の傾斜方向が逆であっても異なる種類の付属基礎を用意する必要はなく、1種類の付属基礎2のみで対応することができる。
【0019】
(実施の形態2)
実施の形態2は実施の形態1の変形である。実施の形態1と同様の構成については図面上で同じ符号を付して詳しい説明は省略する。
図9に示すように、実施の形態2の既存建造物Hでは水平に配置された3つの梁10の端部に対して外壁Wに沿って鋼製の補強材としての水平ブレス31が架設されている。水平ブレス31は図10に示すように断面C状に屈曲形成された鋼材から構成されており、任意の水平位置に対して取り付け孔32を穿設し、前記筋交いブレス17の上端寄りのボルト穴18を取り付け孔32に照合させボルト33及びナットをワッシャー34を介して締め付けることで固定する。
このような構成であれば、上記(1)の効果に加え、既存建造物Hの周囲が立て込んでいて実施の形態1のように梁10に対して取りつけた連結金具11に筋交いブレス17の上端側を固定できない場合に有利である。
【0020】
(実施の形態3)
上記実施の形態1及び2では地中に埋めるコンクリート製のプレキャストブロック基礎の付属基礎2を使用したが、図11及び図12に示すような地中に埋めない金属製の付属基礎35を使用するようにしてもよい。付属基礎35は鉤状に屈曲された上面が平面に構成された本体35aと、本体35aの90度屈曲した内端面から上方に立ち上がる壁部35bから骨格が形成されている。本体35aの上面には左右の付属基礎35を連結する丸棒36を固定するための丸棒支持プレート37が立設されている。また筋交いブレス17を固定するための支持プレート38が立設されている。
図11に示すように、付属基礎35はホールインアンカー39によって布基礎1のコーナー部C1、C2に固定される。左右の付属基礎35間は丸棒36によって連結される。丸棒36は各付属基礎35の丸棒支持プレート37にナット40によって固定される。そして、筋交いブレス17の下端側を支持プレート38に固着する。このとき、筋交いブレス17の脚プレート20の下端面20aは付属基礎35の本体35a上に当接させられる。
このような構成であっても上記実施の形態1の(1)と同様の効果が奏される。また、上記実施の形態1及び2のように付属基礎2を埋設するために掘削する必要がなく、経費の削減と作業時間の短縮となる。
【0021】
(実施の形態4)
図13及び図14に示すように、コーナー部C1に配置される付属基礎41を極めて長尺に構成し(あるいは長尺の部分を有するように構成し)、筋交いブレス17が配置される面を延長した外方の既存建造物Hから離れた位置に支持プレート3が配置されるようにしてもよい。本実施の形態4の付属基礎41は図15に示すような直方体形状のコンクリート製のプレキャストブロック基礎である。左側の付属基礎2と付属基礎41とは上記実施の形態1と同様にターンバックル7を介して接続された丸棒8によって連結されいている。このような付属基礎41を使用することで筋交いブレス17の下端側をコーナー部C1からオフセットさせた位置に配置することが可能である。
このように構成することで上記実施の形態1の(1)と同様の効果が奏されるとともに、より筋交いブレス17の配置の裕度ができるため、既存建造物Hの周囲が立て込んでいても筋交いブレス17を設置することが可能となる。
【0022】
(実施の形態5)
実施の形態5も実施の形態1の変形である。実施の形態1と同様の構成については図面上で同じ符号を付して詳しい説明は省略する。
図16及び図17に示すように、左右のいずれかのコーナー部(ここではコーナー部C1)側の付属基礎51を筋交い部材が配置される建造物Hの一面に対向した位置(図16では手前位置)であって建造物Hから離間した位置に配置するようにしてもよい。
付属基礎51はコンクリート製のプレキャストブロック基礎であって土中に埋設されている。付属基礎51と既存建造物Hの布基礎1とは間隔保持部材としてのL状鋼材からなる間隔保持ブレス52によって連結されている。付属基礎51の上面51aは平面に形成されており、成形時に埋め込まれた1枚の支持プレート53が上面51aに対して垂直方向に突出させられている。支持プレート53は筋交いブレス54は支持プレート53と梁10の間に配設されている。図17及び図18に示すように付属基礎51は建造物Hから離間しているため、筋交いブレス54は上記実施の形態1〜4とは異なり正面視だけでなく平面視においても斜状に配設されている。筋交いブレス54の左右のコーナー部C1,C2を結ぶ直線との角度θは付属基礎51は建造物Hからの離間距離やコーナー部C1からの距離に応じて変動する。
【0023】
図16〜図18に示すように、筋交いブレス54の上端側にはブラケット55が形成されている。ブラケット55は上記角度θに応じて複数種類が用意されている。ブラケット55の梁10側の当接面55aは梁10の外面と平行に形成されている。筋交いブレス54は梁10に対してブラケット55を介してスクリューボルト56の締め付けによって固定されている。一方、筋交いブレス54の下端側は支持プレート53の側面に筋交いブレス54を配置させ、上記実施の形態1〜4と同様にボルト23及びナット24をワッシャ25を介して締め付けることで固定されている。
コーナー部C1とは逆側のコーナー部C2には図21のような金属製の付属基礎57がホールインアンカー58によって固定されている。付属基礎57は鉤状に屈曲された上面が平面に構成された本体57aと、本体57aの90度屈曲した内端面から上方に立ち上がる壁部57bから骨格が形成されている。本体57aの上面にはねじ棒4が溶着されたアーム60が回動可能に取着されている。左右の付属基礎51,57において、対向するねじ棒4間にターンバックル7を介して両端にねじ部を有する断面円形の鋼材からなる丸棒8が配設されている。
このような構成であれば、上記(1)の効果に加え、既存建造物Hの周囲が立て込んでいて実施の形態1のように梁10に対して取りつけた連結金具11に筋交いブレス17の上端側を固定できない場合に有利である。
また、実施の形態5では筋交いブレス54は上下の各固定位置においてボルト23,56等の複数の固定手段(上端側、下端側とも3か所)で固定されているため、固定位置における回動モーメントに十分な耐力を有することとなる。
【0024】
(実施の形態6)
実施の形態6は実施の形態5のバリエーションである。図19及び図20に示すように、付属基礎51をコーナー部C1から中央寄りに移動させている。実施の形態5では金属製の付属基礎57をコーナー部C2のみに配置させたが、実施の形態6では両側のコーナー部C1,C2に配置させている。そして、中央位置の付属基礎51と左右の付属基礎57において、それぞれ対向するねじ棒4間にターンバックル7を介して両端にねじ部を有する断面円形の鋼材からなる丸棒8が配設している。このように付属基礎51を左右方向から連結部材としてのねじ棒4、ターンバックル7、丸棒8によって連結することによって左右方向からの力に対して付属基礎51がより強固に埋設位置で保持されることとなる。
【0025】
尚、この発明は、次のように変更して具体化することも可能である。
・付属基礎2として現場において鉄筋を組んでコンクリートを打設することで付属基礎を構築するようにしてもよい。
・実施の形態4において筋交いブレス17の下端側をコーナー部C1からオフセットさせることができれば上記形状に限定されるものではない。
・実施の形態1において筋交いブレス17の上端側を固定する連結金具11は他の梁10に取り付けるようにして異なる角度で筋交いブレス17を配設するようにしてもよい。
・上記付属基礎2,51や連結金具11の形状は一例であって、他の形状で実施することは自由である。
・連結部材として上記実施の形態では例えば対向するねじ棒4間にターンバックル7を介して両端にねじ部を有する断面円形の鋼材からなる丸棒8が配設するような構成であったが、他の部材(例えばL状鋼材やH状鋼材)で連結するようにしてもよい。
・筋交いブレス17は左右どちらが上方側となっても構わない。
・実施の形態実施例5における付属基礎51を金属製のもので構成してもよい。また、逆に金属製の付属基礎57をコンクリート製としてもよい。
・連結部材は例えば実施の形態1では左右の付属基礎2間に配置している。このように付属基礎間に連結部材を配置しなくとも、筋交い部材の下端側が固定される付属基礎と既存建造物H(布基礎1に限定されるものではない)の間に配置するような構成を採用してもよい。
・金属製の付属基礎は例えば図22のように布基礎1ではなく土台59に固定するようにしてもよい。また、布基礎1や土台59以外の構造体に固定するようにしてもよい。
・実施の形態2の補強材としての水平ブレス31を実施の形態5及び6に適用することも可能である。
・実施の形態1の脚部材としての脚プレート20を実施の形態5及び6に適用することも可能である。
・その他、本発明の趣旨を逸脱しない態様で実施することは自由である。
【符号の説明】
【0026】
2,35,41,51…付属基礎、2b…硬質面としての上面、7…連結部材の一部をなすターンバックル、8…連結部材の一部をなす丸棒、10…架構部材としての梁、17,54…筋交い部材としての筋交いブレス、20…脚部材としての脚プレート、31…補強材としての水平ブレス、C1、C2…コーナー部、H…既存建造物。
【技術分野】
【0001】
本発明は既存建造物を主として地震の揺れから保護するために施される耐震補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から建造物の耐震性を増すために種々の方策が提案されている。
例えば特許文献1には、その図1に示すように土台2と二階梁3との間に斜めにテンション調整機構4(ターンバックル)を設けた連結体6,10(ブレース様部材)を配設して耐震性を向上させる技術が開示されている。特許文献1の技術は現在施工中の建造物に行う補強工事であってこれらターンバックルやブレース様部材からなる筋交い部材は建造物の完成とともに壁内部に収容されてしまうため邪魔にはならない。
ところが、近年既存の建造物の地震に対する強度を向上させるためにこのような耐震構造を既存の建造物に追加施工したいとする要望が多くなってきている。
その場合において、例えば倉庫や工場のようにスペースに余裕があり、なおかつ機能のみが重視される既存の建造物であれば建造物の内側壁面寄りに筋交い部材を配設することも自由である。しかしながら、一般住宅においてこのように内側(つまり住居側)に筋交い部材を配設することは美観の点、あるいはスペース的な制限等から好ましくない。その場合に、もし特許文献1のように筋交い部材を壁内部に内蔵させる工事をするとすれば施工費用が極めて高額となってしまう。
そのため、筋交い部材を既存の建造物の外側に配設するという発想がある。このような先行技術として特許文献2を挙げる。特許文献2は出願人の提案した技術であって、既存の建造物の基礎の外に別途付属基礎を構築し、梁とこの付属基礎に埋設されたアンカーの間を斜めに筋交い部材を張設するようにしたものである。このような技術であれば、内側の住居側における影響はまったくなく、付属基礎と梁との間で補強するため、既存建造物がしっかりと基礎に固定されることとなり補強効果が高くなるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−111875号公報
【特許文献2】特開2006−118234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、筋交い部材というのは左右いずれの方向からの力に対しても耐える必要からある1つの面に対しては斜めクロス状に交叉して2本配置させることが望ましい。しかし、筋交い部材を既存の建造物の外側に配設する場合、色々な器物の存在、例えばエアコンの室外機や、設置された物置等があるために一方の筋交い部材は配設できても、もう一方の筋交い部材がどうしても取り付けられないといったケースがある。これは新築する建造物では考えにくい既存の建造物だからこそ生じる課題である。
そのため、建造物の外側のある面に左右いずれか一方の筋交い部材のみを配置した場合においてもその筋交い部材で十分に補強となるような既存建造物の耐震補強構造が望まれていた。
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、建造物の外側のある面に左右いずれか一方の筋交い部材のみを配置した場合においても十分な補強効果が得られる既存建造物の耐震補強構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明では、既存建造物の任意の一面の左右のコーナー部において前記既存建造物に係合する左右一対の付属基礎を配置するとともに、同両付属基礎間に同両付属基礎の離間方向への動きを規制するための連結部材を配設する一方、前記既存建造物の上部側に配設された架構部材と左右いずれかの前記付属基礎との間に筋交い部材を斜めに配設したことをその要旨とする。
このような構成では、既存建造物の任意の一面の左右のコーナー部において既存建造物に係合する左右一対の付属基礎を配置する。そして、両付属基礎間に両付属基礎の離間方向への動きを規制するための連結部材を配設する。一方で既存建造物の上部側に配設された架構部材、例えば梁と左右いずれかの付属基礎との間に筋交い部材を斜めに配設する。
このような構成を採用することによって、地震による揺れに対して次のように作用する。ここでは例えば図23(a)のように左上方から右下方に向かって筋交い部材が配設される場合を例に取って説明する(もちろん、本発明は図23(a)に限定されるものではない)。図23(a)のように左方から右方に向かって建造物を押動するような力に対しては基本的に筋交い部材が支えとなって建造物の構造を保持する。但し、その際に右側付属基礎を外方に押し出す力がかかることとなる。しかし、右側付属基礎は既存建造物と係合している左側付属基礎と連結部材によって互いに連結されているため、外方に押し出されることはない。
【0006】
ここに、「付属基礎」とは現場で既存基礎に隣接してコンクリートを打設して成形するようにしてもよく、プレキャストのコンクリート製の基礎を埋め込んでもよく、更に既存基礎に鋼板等で構成された金属製部材をアンカーやボルト等で固着するようにしてもよい。既存基礎ではなく土台や柱に固着させてもよい。要は後付けで筋交い部材や連結部材を取りつけることができるベースとなればよい。
「筋交い部材」の形状や材質も特に限定はされず、鋼材であっても木材であってもよい。形状は断面I状でもよいが、鋼材であればより軽量で曲げ強度に優れるようなL形状やH形状やC形状のように屈曲部を有することが好ましい。筋交い部材は架構部材と同じあるいはそれ以上圧縮強度及び曲げ強度のあることが好ましい。
【0007】
また、請求項2に記載の発明では請求項1に記載の発明の構成に加え、前記筋交い部材に下方に向かって延出される脚部材を形成し、同脚部材の下端を前記既存建造物の外部に設置された硬質面に当接させるようにしたことをその要旨とする。
請求項1の構成に加えこのように構成すれば、筋交い部材には下方に向かって脚部材が延出されているため、図23(c)のように右方から左方に向かって建造物を押動するような力に対して脚部材が支えとなるため、建造物の構造を保持することができる。ここに「脚部材」も同様に鋼材であっても木材であってもよく、形状、数は適宜変更が可能である。
【0008】
また、請求項3に記載の発明では請求項2記載の発明の構成に加え、前記硬質面は前記筋交い部材の下端側が支持される側の付属基礎の上面であることをその要旨とする。
つまり、別途硬質面を有する部材を用意しなくとも、付属基礎をそのまま使用することができる。
【0009】
また、請求項4に記載の発明では請求項1〜3のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記筋交い部材の下端が支持される前記付属基礎は前記左右のコーナー部を結ぶ線分に沿った方向であって、前記既存建造物の外方に向かって延出する延長部分を有し、前記筋交い部材の下端側は前記延長部分において支持されることをその要旨とする。
このような構成とすることで、例えば、建物周囲が立て込んでおり、スペース的に筋交い部材を取り付けられないような場合において、左右のコーナー部から離間した延長部分に筋交い部材の下端を配置させることで筋交い部材を外方にオフセットさせることができる。
また、請求項5の発明では請求項1〜4のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記付属基礎は前記コーナー部に鉤状に当接する部分を有することをその要旨とする。
つまり、コーナー部分の形状に対応した、例えばL字状の形状の当接面を有する場合が考えられる。これによって付属基礎に何らかの外力が作用した場合であっても付属基礎が位置ずれしにくくなる。
【0010】
また、請求項6の発明では、既存建造物の任意の一面の左右のいずれかのコーナー部において前記既存建造物に係合する付属基礎を配置し、前記既存建造物の上部側に配設された架構部材と前記付属基礎との間に筋交い部材を斜めに配設するとともに、平面視において前記筋交い部材と略同方向であって前記付属基礎と前記既存建造物の間には前記付属基礎が前記任意の一面に沿った外側方向に移動することを規制するための連結部材を配設するようにしたことをその要旨とする。
このような構成では、既存建造物の任意の一面の左右いずれかのコーナー部において既存建造物に係合する付属基礎を配置する。そして、筋交い部材と略同方向であって付属基礎と既存建造物の間には付属基礎が任意の一面に沿った外側方向に移動することを規制するための連結部材を配設する。一方で既存建造物の上部側に配設された架構部材、例えば梁と左右いずれかの付属基礎との間に筋交い部材を斜めに配設する。
このような構成を採用することによって、地震による揺れに対して次のように作用する。ここでは例えば図23(b)のように左上方から右下方に向かって筋交い部材が配設される場合を例に取って説明する(もちろん、本発明は図23(b)に限定されるものではない)。図23(b)のように左方から右方に向かって建造物を押動するような力に対しては基本的に筋交い部材が支えとなって建造物の構造を保持する。但し、その際に付属基礎を外方に押し出す力がかかることとなる。しかし、付属基礎は既存建造物に対して連結部材によって連結されているため、外方に押し出されることはない。連結部材はできる限り平面視において筋交い部材と平行となるように逆コーナー、あるいはその近傍に連結されることが好ましい。
「付属基礎」や「筋交い部材」の概念は請求項1と同様である。
【0011】
また、請求項7の発明では、前記左右のコーナー部を結ぶ線分と交差する方向であって、既存建造物の任意の一面から外方に離間した位置に前記既存建造物から延出される間隔保持部材によって前記既存建造物方向への移動が規制された状態で付属基礎を配置し、前記既存建造物の上部側に配設された架構部材と前記付属基礎との間に筋交い部材を斜めに配設するとともに、平面視において前記筋交い部材と略同方向であって前記付属基礎と前記既存建造物の間には前記任意の一面に沿った外側方向に移動することを規制するための連結部材を配設するようにしたことをその要旨とする。
このような構成では、左右のコーナー部を結ぶ線分と交差する方向であって、既存建造物の任意の一面から外方に離間した位置に前記既存建造物から延出される間隔保持部材によって既存建造物方向への移動が規制された状態で付属基礎を配置する。この際に付属基礎が既存建造物方向に引き寄せられる方向に力が働くが、間隔保持部材によって付属基礎が既存建造物方向に引き寄せられるのが防止されることとなる。そして、筋交い部材と略同方向であって付属基礎と既存建造物の間には付属基礎が任意の一面に沿った外側方向に移動することを規制するための連結部材を配設する。一方で既存建造物の上部側に配設された架構部材、例えば梁と左右いずれかの付属基礎との間に筋交い部材を斜めに配設する。
これによって例えば、建物周囲が立て込んでおり、スペース的に1本の筋交い部材でさえ取り付けられないような場合に任意に付属基礎を移動させることができる。
「付属基礎」や「筋交い部材」の概念は請求項1と同様である。
【0012】
また、請求項8の発明では請求項1〜7のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記架構部材には前記既存建造物の側面に沿った補強材を架設し、前記筋交い部材を前記補強材を介して前記架構部材に配設したことをその要旨とする。
このような構成では、既存建造物の上部側に配設された架構部材、例えば複数の梁や梁の側面等に既存建造物の側面に沿った補強材を架設し、この補強材と左右いずれかの付属基礎との間に筋交い部材を斜めに配設することができる。このような構成を採用することによって、既存の梁のような外方に突出した部材を利用しなくともよく、補強材の任意の位置に筋交い部材の上部側を配置させることができる。
【発明の効果】
【0013】
上記各請求項の発明では、既存建造物は1本の筋交い部材であっても耐震補強が実現されることなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1の耐震補強構造を既存建造物に施工した状態の既存建造物の架構のみを示す概略正面図。
【図2】実施の形態1の耐震補強構造を説明する既存建造物の一部省略一部破断断面図。
【図3】実施の形態1において筋交い部材の上端側の取り付け構造を説明する説明図。
【図4】実施の形態1において筋交い部材の上端側の取り付け構造を説明する部分拡大正面図。
【図5】(a)は同じ実施の形態1において筋交い部材の下端側の取り付け構造を説明する部分拡大正面図、(b)は同じく部分拡大側面図。
【図6】実施の形態1において(a)は付属基礎の斜視図、(b)は同じく正面図。
【図7】実施の形態1において梁に取り付けた連結金具と右側の付属基礎との間に筋交い部材を配設した状態を中間を省略して説明する説明図。
【図8】実施の形態1で使用される付属基礎の平面図。
【図9】本発明の実施の形態2の耐震補強構造を既存建造物に施工した状態の既存建造物の架構のみを示す概略正面図。
【図10】同じ実施の形態2において筋交い部材の上端側の取り付け構造を説明する部分拡大側面図。
【図11】実施の形態3の耐震補強構造を説明する既存建造物の一部省略一部破断断面図。
【図12】実施の形態3において使用する付属基礎の斜視図。
【図13】実施の形態4において筋交い部材の下端側の取り付け構造を説明する部分拡大正面図。
【図14】実施の形態4の耐震補強構造を説明する既存建造物の一部省略一部破断断面図。
【図15】実施の形態4で使用される付属基礎の斜視図。
【図16】本発明の実施の形態5の耐震補強構造を既存建造物に施工した状態の既存建造物の架構のみを示す概略正面図。
【図17】実施の形態5の耐震補強構造を説明する既存建造物の一部省略一部破断断面図。
【図18】実施の形態5において筋交い部材の上端側の取り付け構造を説明する部分拡大平面図。
【図19】本発明の実施の形態6の耐震補強構造を既存建造物に施工した状態の既存建造物の架構のみを示す概略正面図。
【図20】実施の形態6の耐震補強構造を説明する既存建造物の一部省略一部破断断面図。
【図21】実施の形態5で使用される付属基礎の斜視図。
【図22】他の実施の形態の耐震補強構造を説明する既存建造物の部分拡大正面図。
【図23】(a)〜(c)は本発明の原理を模式的に説明する説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の既存建造物の耐震補強構造を具体化した実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1に示すように、既存建造物Hが布基礎1の上に設置されている。本実施の形態1では既存建造物Hは在来工法によって建てられた平屋造りとされている。布基礎1は鉄筋コンクリート造りとされている。布基礎1下半身は地盤(地上面をGとする)に埋設されている。
本実施の形態1では建造物Hのある一面に対して本発明の耐震補強構造を適用するものとするが、複数の面に適用することも可能である。
図1及び図2に示すように、建造物Hの両コーナー部C1、C2の地中に一対の付属基礎2を埋設する。図6(a)(b)に示すように、付属基礎2は布基礎1のコーナー部C1、C2の形状に対応したコンクリート製のプレキャストブロック基礎である。付属基礎2は同形状の第1及び第2の直方体部分2A,2Bを90度の角度で鉤状に突き合わせて平面形状略L字状となるように構成したブロック体である。付属基礎2の鉤状に90度屈曲した内側面を当接内周面2aとする。付属基礎2内には成形時に埋め込まれたねじ棒4の先端が第1及び第2の直方体部分2A,2Bの端面位置から突出させられている。付属基礎2の上面2bは平面に形成されており、成形時に埋め込まれた2枚の支持プレート3が上面2bに対して垂直方向に突出させられている。支持プレート3にはボルト孔5が形成されている。図8に示すように、支持プレート3はラインLで鏡像対称となるように上面2bに配置されている。図1及び図2に示すように、付属基礎2は両コーナー部C1、C2の布基礎1の外側を掘削して下半身が埋設されるとともに当接内周面2aが布基礎1に当接させられている。
図2に示すように、左右の付属基礎2において、対向するねじ棒4間にターンバックル7を介して両端にねじ部を有する断面円形の鋼材からなる丸棒8が配設されている。丸棒8は左右の付属基礎2のねじ棒4の間隔よりも若干短く構成され、ターンバックル7によって左右の付属基礎2を互いに引き付け合うようにテンションを与えられた状態で保持されている。
【0016】
図1に示すように、既存建造物Hの梁10の端部が外壁Wから外側に張り出している。本実施の形態1では図1において図上左方に配置された梁10に対してその外周を包囲するように連結金具11が装着されている。
連結金具11は梁10の外周形状と略一致した断面長方形の内周面とされたリング状の金属部材であって、前面プレート11aと前面プレート11aの上下端から直角に後方にそれぞれ延出される上部及び下部プレート11b,11cと上部プレート11bの後端から下垂する第1の背面プレート11dと、下部プレート11cの後端から起立する第2の背面プレート11eから構成されている。第1及び第2の背面プレート11d,11eの突合せ部分には外方に張りだす上下一対のフランジ部12が形成されており、図4に示すように、フランジ部12に形成された図示しないボルト孔を介してボルト13及びナット14によってフランジ部12が締め付けられることで連結金具11は梁10に固定されるようになっている。連結金具11の前面プレート11aの中央には略半円形状の挿入プレート15が形成されている。挿入プレート15にはボルト孔16が形成されている。
【0017】
図1及び図7に示すように、梁10に取り付けた連結金具11と右側の付属基礎2との間には筋交いブレス17が斜めに配設されている。図1及び図5に示すように、筋交いブレス17は断面C状に屈曲成形された鋼材であって、長手方向に沿った開口部17aは下方を向くように配置されている。筋交いブレス17の上下端寄りの側面にはボルト穴18(下方側図示省略)が形成されており、図3に示すように、上端側上面(開口部17aの対向面)中央にはスリット19が形成されている。図1、図5(a)及び(b)に示すように筋交いブレス17の下部寄り位置には脚部材としての脚プレート20が下方に延出するようにボルト21及びナット22によって締め付け固定されている。脚プレート20は筋交いブレス17の斜めに配設される際の角度に併せて鉛直方向に延出されるように取り付けられており、水平な下端面20aがちょうど付属基礎2の水平な上面2bと密着するように配置される。
図3に示すように、筋交いブレス17の上端側は連結金具11の挿入プレート15をスリット19に挿入させて接合し、ボルト孔16,18同士を照合させて固定手段としてボルト23及びナット24をワッシャ25を介して締め付けることで固定する。一方、図5(a)及び(b)に示すように、筋交いブレス17の下端側は支持プレート3の側面に筋交いブレス17を配置させ、ボルト孔5,18同士を照合させてボルト23及びナット24をワッシャ25を介して締め付けることで固定する。
【0018】
次に、本実施の形態1の耐震補強構造の作用について説明する。
上記のように構成することで既存建造物Hに対して地震によって次のような作用が生じる。まず、図1において左方から右方に向かって建造物を押動するような力に対しては基本的に筋交いブレス17が支えとなって既存建造物Hの構造を保持する。このとき、右側の付属基礎2を外方に押し出す力がかかることとなる。しかし、左右の付属基礎2は丸棒8とターンバックル7によって連結されており、上記のような力がかかっても左側の付属基礎2が布基礎1と係合することによって右側の付属基礎2が外方に押し出されることはない。
一方、右方から左方に向かって建造物を押動するような力に対しては基本的に筋交いブレス17が支えとなることはない。しかし、この場合には筋交いブレス17から下方に向かって延出される脚プレート20が硬質面としての上面2bに当接しており、これが支えとなるため、やはり建造物の構造を保持することができる。
本発明は上記実施の形態のように構成することにより次のような具体的効果を奏する。(1)1本の筋交いブレス17のみで左右方向の力に耐えることが可能となるため、既存建造物Hの周囲が立て込んでいて2本の筋交いを配設できない場合に本発明の耐震補強構造を適用することで1本の筋交いブレス17のみでも耐震補強が可能となる。
(2)付属基礎2は布基礎1のコーナー部の形状に対応しているため、横ずれしにくく、また、鏡像対称であるため筋交いブレス17の傾斜方向が逆であっても異なる種類の付属基礎を用意する必要はなく、1種類の付属基礎2のみで対応することができる。
【0019】
(実施の形態2)
実施の形態2は実施の形態1の変形である。実施の形態1と同様の構成については図面上で同じ符号を付して詳しい説明は省略する。
図9に示すように、実施の形態2の既存建造物Hでは水平に配置された3つの梁10の端部に対して外壁Wに沿って鋼製の補強材としての水平ブレス31が架設されている。水平ブレス31は図10に示すように断面C状に屈曲形成された鋼材から構成されており、任意の水平位置に対して取り付け孔32を穿設し、前記筋交いブレス17の上端寄りのボルト穴18を取り付け孔32に照合させボルト33及びナットをワッシャー34を介して締め付けることで固定する。
このような構成であれば、上記(1)の効果に加え、既存建造物Hの周囲が立て込んでいて実施の形態1のように梁10に対して取りつけた連結金具11に筋交いブレス17の上端側を固定できない場合に有利である。
【0020】
(実施の形態3)
上記実施の形態1及び2では地中に埋めるコンクリート製のプレキャストブロック基礎の付属基礎2を使用したが、図11及び図12に示すような地中に埋めない金属製の付属基礎35を使用するようにしてもよい。付属基礎35は鉤状に屈曲された上面が平面に構成された本体35aと、本体35aの90度屈曲した内端面から上方に立ち上がる壁部35bから骨格が形成されている。本体35aの上面には左右の付属基礎35を連結する丸棒36を固定するための丸棒支持プレート37が立設されている。また筋交いブレス17を固定するための支持プレート38が立設されている。
図11に示すように、付属基礎35はホールインアンカー39によって布基礎1のコーナー部C1、C2に固定される。左右の付属基礎35間は丸棒36によって連結される。丸棒36は各付属基礎35の丸棒支持プレート37にナット40によって固定される。そして、筋交いブレス17の下端側を支持プレート38に固着する。このとき、筋交いブレス17の脚プレート20の下端面20aは付属基礎35の本体35a上に当接させられる。
このような構成であっても上記実施の形態1の(1)と同様の効果が奏される。また、上記実施の形態1及び2のように付属基礎2を埋設するために掘削する必要がなく、経費の削減と作業時間の短縮となる。
【0021】
(実施の形態4)
図13及び図14に示すように、コーナー部C1に配置される付属基礎41を極めて長尺に構成し(あるいは長尺の部分を有するように構成し)、筋交いブレス17が配置される面を延長した外方の既存建造物Hから離れた位置に支持プレート3が配置されるようにしてもよい。本実施の形態4の付属基礎41は図15に示すような直方体形状のコンクリート製のプレキャストブロック基礎である。左側の付属基礎2と付属基礎41とは上記実施の形態1と同様にターンバックル7を介して接続された丸棒8によって連結されいている。このような付属基礎41を使用することで筋交いブレス17の下端側をコーナー部C1からオフセットさせた位置に配置することが可能である。
このように構成することで上記実施の形態1の(1)と同様の効果が奏されるとともに、より筋交いブレス17の配置の裕度ができるため、既存建造物Hの周囲が立て込んでいても筋交いブレス17を設置することが可能となる。
【0022】
(実施の形態5)
実施の形態5も実施の形態1の変形である。実施の形態1と同様の構成については図面上で同じ符号を付して詳しい説明は省略する。
図16及び図17に示すように、左右のいずれかのコーナー部(ここではコーナー部C1)側の付属基礎51を筋交い部材が配置される建造物Hの一面に対向した位置(図16では手前位置)であって建造物Hから離間した位置に配置するようにしてもよい。
付属基礎51はコンクリート製のプレキャストブロック基礎であって土中に埋設されている。付属基礎51と既存建造物Hの布基礎1とは間隔保持部材としてのL状鋼材からなる間隔保持ブレス52によって連結されている。付属基礎51の上面51aは平面に形成されており、成形時に埋め込まれた1枚の支持プレート53が上面51aに対して垂直方向に突出させられている。支持プレート53は筋交いブレス54は支持プレート53と梁10の間に配設されている。図17及び図18に示すように付属基礎51は建造物Hから離間しているため、筋交いブレス54は上記実施の形態1〜4とは異なり正面視だけでなく平面視においても斜状に配設されている。筋交いブレス54の左右のコーナー部C1,C2を結ぶ直線との角度θは付属基礎51は建造物Hからの離間距離やコーナー部C1からの距離に応じて変動する。
【0023】
図16〜図18に示すように、筋交いブレス54の上端側にはブラケット55が形成されている。ブラケット55は上記角度θに応じて複数種類が用意されている。ブラケット55の梁10側の当接面55aは梁10の外面と平行に形成されている。筋交いブレス54は梁10に対してブラケット55を介してスクリューボルト56の締め付けによって固定されている。一方、筋交いブレス54の下端側は支持プレート53の側面に筋交いブレス54を配置させ、上記実施の形態1〜4と同様にボルト23及びナット24をワッシャ25を介して締め付けることで固定されている。
コーナー部C1とは逆側のコーナー部C2には図21のような金属製の付属基礎57がホールインアンカー58によって固定されている。付属基礎57は鉤状に屈曲された上面が平面に構成された本体57aと、本体57aの90度屈曲した内端面から上方に立ち上がる壁部57bから骨格が形成されている。本体57aの上面にはねじ棒4が溶着されたアーム60が回動可能に取着されている。左右の付属基礎51,57において、対向するねじ棒4間にターンバックル7を介して両端にねじ部を有する断面円形の鋼材からなる丸棒8が配設されている。
このような構成であれば、上記(1)の効果に加え、既存建造物Hの周囲が立て込んでいて実施の形態1のように梁10に対して取りつけた連結金具11に筋交いブレス17の上端側を固定できない場合に有利である。
また、実施の形態5では筋交いブレス54は上下の各固定位置においてボルト23,56等の複数の固定手段(上端側、下端側とも3か所)で固定されているため、固定位置における回動モーメントに十分な耐力を有することとなる。
【0024】
(実施の形態6)
実施の形態6は実施の形態5のバリエーションである。図19及び図20に示すように、付属基礎51をコーナー部C1から中央寄りに移動させている。実施の形態5では金属製の付属基礎57をコーナー部C2のみに配置させたが、実施の形態6では両側のコーナー部C1,C2に配置させている。そして、中央位置の付属基礎51と左右の付属基礎57において、それぞれ対向するねじ棒4間にターンバックル7を介して両端にねじ部を有する断面円形の鋼材からなる丸棒8が配設している。このように付属基礎51を左右方向から連結部材としてのねじ棒4、ターンバックル7、丸棒8によって連結することによって左右方向からの力に対して付属基礎51がより強固に埋設位置で保持されることとなる。
【0025】
尚、この発明は、次のように変更して具体化することも可能である。
・付属基礎2として現場において鉄筋を組んでコンクリートを打設することで付属基礎を構築するようにしてもよい。
・実施の形態4において筋交いブレス17の下端側をコーナー部C1からオフセットさせることができれば上記形状に限定されるものではない。
・実施の形態1において筋交いブレス17の上端側を固定する連結金具11は他の梁10に取り付けるようにして異なる角度で筋交いブレス17を配設するようにしてもよい。
・上記付属基礎2,51や連結金具11の形状は一例であって、他の形状で実施することは自由である。
・連結部材として上記実施の形態では例えば対向するねじ棒4間にターンバックル7を介して両端にねじ部を有する断面円形の鋼材からなる丸棒8が配設するような構成であったが、他の部材(例えばL状鋼材やH状鋼材)で連結するようにしてもよい。
・筋交いブレス17は左右どちらが上方側となっても構わない。
・実施の形態実施例5における付属基礎51を金属製のもので構成してもよい。また、逆に金属製の付属基礎57をコンクリート製としてもよい。
・連結部材は例えば実施の形態1では左右の付属基礎2間に配置している。このように付属基礎間に連結部材を配置しなくとも、筋交い部材の下端側が固定される付属基礎と既存建造物H(布基礎1に限定されるものではない)の間に配置するような構成を採用してもよい。
・金属製の付属基礎は例えば図22のように布基礎1ではなく土台59に固定するようにしてもよい。また、布基礎1や土台59以外の構造体に固定するようにしてもよい。
・実施の形態2の補強材としての水平ブレス31を実施の形態5及び6に適用することも可能である。
・実施の形態1の脚部材としての脚プレート20を実施の形態5及び6に適用することも可能である。
・その他、本発明の趣旨を逸脱しない態様で実施することは自由である。
【符号の説明】
【0026】
2,35,41,51…付属基礎、2b…硬質面としての上面、7…連結部材の一部をなすターンバックル、8…連結部材の一部をなす丸棒、10…架構部材としての梁、17,54…筋交い部材としての筋交いブレス、20…脚部材としての脚プレート、31…補強材としての水平ブレス、C1、C2…コーナー部、H…既存建造物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存建造物の任意の一面の左右のコーナー部において前記既存建造物に係合する左右一対の付属基礎を配置するとともに、同両付属基礎間に同両付属基礎の離間方向への動きを規制するための連結部材を配設する一方、
前記既存建造物の上部側に配設された架構部材と左右いずれかの前記付属基礎との間に筋交い部材を斜めに配設したことを特徴とする既存建造物の耐震補強構造。
【請求項2】
前記筋交い部材に下方に向かって延出される脚部材を形成し、同脚部材の下端を前記既存建造物の外部に設置された硬質面に当接させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の既存建造物の耐震補強構造。
【請求項3】
前記硬質面は前記筋交い部材の下端側が支持される側の付属基礎の上面であることを特徴とする請求項2に記載の既存建造物の耐震補強構造。
【請求項4】
前記筋交い部材の下端が支持される前記付属基礎は前記左右のコーナー部を結ぶ線分に沿った方向であって、前記既存建造物の外方に向かって延出する延長部分を有し、前記筋交い部材の下端側は前記延長部分において支持されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の既存建造物の耐震補強構造。
【請求項5】
前記付属基礎は前記コーナー部に鉤状に当接する部分を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の既存建造物の耐震補強構造。
【請求項6】
既存建造物の任意の一面の左右のいずれかのコーナー部において前記既存建造物に係合する付属基礎を配置し、前記既存建造物の上部側に配設された架構部材と前記付属基礎との間に筋交い部材を斜めに配設するとともに、平面視において前記筋交い部材と略同方向であって前記付属基礎と前記既存建造物の間には前記付属基礎が前記任意の一面に沿った外側方向に移動することを規制するための連結部材を配設するようにしたことを特徴とする既存建造物の耐震補強構造。
【請求項7】
前記左右のコーナー部を結ぶ線分と交差する方向であって、既存建造物の任意の一面から外方に離間した位置に前記既存建造物から延出される間隔保持部材によって前記既存建造物方向への移動が規制された状態で付属基礎を配置し、前記既存建造物の上部側に配設された架構部材と前記付属基礎との間に筋交い部材を斜めに配設するとともに、平面視において前記筋交い部材と略同方向であって前記付属基礎と前記既存建造物の間には前記任意の一面に沿った外側方向に移動することを規制するための連結部材を配設するようにしたことを特徴とする既存建造物の耐震補強構造。
【請求項8】
前記架構部材には前記既存建造物の側面に沿った補強材を架設し、前記筋交い部材を前記補強材を介して前記架構部材に配設したことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の既存建造物の耐震補強構造。
【請求項1】
既存建造物の任意の一面の左右のコーナー部において前記既存建造物に係合する左右一対の付属基礎を配置するとともに、同両付属基礎間に同両付属基礎の離間方向への動きを規制するための連結部材を配設する一方、
前記既存建造物の上部側に配設された架構部材と左右いずれかの前記付属基礎との間に筋交い部材を斜めに配設したことを特徴とする既存建造物の耐震補強構造。
【請求項2】
前記筋交い部材に下方に向かって延出される脚部材を形成し、同脚部材の下端を前記既存建造物の外部に設置された硬質面に当接させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の既存建造物の耐震補強構造。
【請求項3】
前記硬質面は前記筋交い部材の下端側が支持される側の付属基礎の上面であることを特徴とする請求項2に記載の既存建造物の耐震補強構造。
【請求項4】
前記筋交い部材の下端が支持される前記付属基礎は前記左右のコーナー部を結ぶ線分に沿った方向であって、前記既存建造物の外方に向かって延出する延長部分を有し、前記筋交い部材の下端側は前記延長部分において支持されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の既存建造物の耐震補強構造。
【請求項5】
前記付属基礎は前記コーナー部に鉤状に当接する部分を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の既存建造物の耐震補強構造。
【請求項6】
既存建造物の任意の一面の左右のいずれかのコーナー部において前記既存建造物に係合する付属基礎を配置し、前記既存建造物の上部側に配設された架構部材と前記付属基礎との間に筋交い部材を斜めに配設するとともに、平面視において前記筋交い部材と略同方向であって前記付属基礎と前記既存建造物の間には前記付属基礎が前記任意の一面に沿った外側方向に移動することを規制するための連結部材を配設するようにしたことを特徴とする既存建造物の耐震補強構造。
【請求項7】
前記左右のコーナー部を結ぶ線分と交差する方向であって、既存建造物の任意の一面から外方に離間した位置に前記既存建造物から延出される間隔保持部材によって前記既存建造物方向への移動が規制された状態で付属基礎を配置し、前記既存建造物の上部側に配設された架構部材と前記付属基礎との間に筋交い部材を斜めに配設するとともに、平面視において前記筋交い部材と略同方向であって前記付属基礎と前記既存建造物の間には前記任意の一面に沿った外側方向に移動することを規制するための連結部材を配設するようにしたことを特徴とする既存建造物の耐震補強構造。
【請求項8】
前記架構部材には前記既存建造物の側面に沿った補強材を架設し、前記筋交い部材を前記補強材を介して前記架構部材に配設したことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の既存建造物の耐震補強構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2012−167524(P2012−167524A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31547(P2011−31547)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000141738)株式会社宮園製作所 (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000141738)株式会社宮園製作所 (10)
【Fターム(参考)】
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