説明

既存組立柱の柱脚部の補強方法および既存組立柱の柱脚部の補強構造

【課題】柱脚部を容易にかつ確実に補強することができる組立柱の柱脚部の補強方法および組立柱の柱脚部の補強構造を提供する。
【解決手段】複数の柱材15の配列の内部においてベースプレート14および基礎13に鉛直方向に穿孔して孔部2を形成する孔部形成工程と、補強用鋼材4を孔部2に挿入して鉛直方向に延在させ補強用鋼材4の上端部4aをベースプレート14よりも上方へ突出させる補強用鋼材設置工程と、孔部2を貫通するとともに複数の柱材15の内部に補強用鋼材4の上端部4aの高さ以上の高さまで充填材5を充填する充填材充填工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存組立柱の柱脚部の補強方法および既存組立柱の柱脚部の補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物などの構造物において柱脚部は、上部架構の鉛直力を基礎へ伝達するとともに、地震荷重または風荷重による水平力に耐えるための構造上重要な部位である。そして、柱脚部の強度の増大や、施工の簡便化を図ることを目的とした柱脚部の構造や、柱脚部に使用される金物などが知られている(例えば、特許文献1および2参照)。
また、従来、コンクリートで形成された基礎上にベースプレートを介して立設する複数の柱材と、該複数の柱材どうしを連結する複数の斜材と、を備える組立柱が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−339992号公報
【特許文献2】特開2005−344289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、既存構造物の上部架構を改造したり、上部架構の積載荷重を増加させたりすると、柱脚部に作用する応力が増大するため、この増大した応力に対応できるように柱脚部の補強を必要とする場合がある。
しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示されたような柱脚部の構造や柱脚部に使用される金物は、新規に立設する柱の柱脚部に使用されるものであり、既存の柱の柱脚部を補強するために使用することは考えられていない。
【0005】
このため、既存構造物に組立柱が採用されている場合、既存組立柱の柱脚部を補強する方法としては、柱脚部の周囲にコンクリートによる根巻を行う方法や、ベースプレートおよび基礎部分に後施工アンカーボルトを増し打ちする方法が知られている。
しかしながら、既存組立柱の柱脚部の周囲にコンクリートによる根巻を行う方法では、柱脚部の周囲にスペースが必要となり、柱脚部の周囲に設備などが設置されている場合は、この設備などを移動させる必要があり施工に手間がかかるという問題がある。
【0006】
また、ベースプレートおよび基礎部分に後施工アンカーボルトを増し打ちする方法では、基礎のコンクリート強度の不足によって後施工アンカーの周囲のコンクリートにコーン状破壊が生じたり、ベースプレートの面外強度が不足したりする虞がある。また、この方法においても柱脚部の周囲にスペースが必要となり、柱脚部の周囲に設備などが設置されている場合は、移動させる必要があり施工に手間がかかるという問題がある。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、柱脚部を容易にかつ確実に補強することができる既存組立柱の柱脚部の補強方法および既存組立柱の柱脚部の補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る既存組立柱の柱脚部の補強方法は、コンクリートで形成された基礎の上部に配設されたベースプレートと、該ベースプレートの上部に立設し水平方向に互いに間隔をあけて配列され該配列の内部に空間を形成する複数の柱材と、隣り合う前記柱材間に配設された複数のラチス材と、を備える既存組立柱の柱脚部の補強方法であって、前記複数の柱材の配列の内部において前記ベースプレートを貫通させるとともに前記基礎に鉛直方向に穿孔して孔部を形成する孔部形成工程と、補強用鋼材を前記孔部に挿入して鉛直方向に延在させ該補強用鋼材の上端部を前記ベースプレートよりも上方へ突出させる補強用鋼材設置工程と、前記孔部および前記複数の柱材の内部に前記補強用鋼材の上端部の高さ以上の高さまで充填材を充填する充填材充填工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る組立柱の柱脚部の補強構造は、コンクリートで形成された基礎の上部に配設されたベースプレートと、該ベースプレートの上部に立設し水平方向に互いに間隔をあけて配列され該配列の内部に空間を形成する複数の柱材と、隣り合う前記柱材間に配設された複数のラチス材と、を備える既存組立柱の柱脚部の補強構造であって、前記複数の柱材の配列の内部において前記ベースプレートを貫通するとともに前記基礎に鉛直方向に延びる孔部と、該孔部に挿入されて鉛直方向に延在するとともに上端部が前記ベースプレートよりも上方へ突出する補強用鋼材と、前記孔部および前記複数の柱材の配列の内部に前記補強用鋼材の上端部の高さ以上の高さまで充填された充填材と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明では、充填材によって補強用鋼材が基礎および柱材と一体化し、組立柱の柱脚部に作用する外力の一部を負担することができるため、既存組立柱の柱脚部を確実に補強することができる。
特に、組立柱の柱脚部に作用する曲げモーメントに対しては、その一部を補強用鋼材の曲げ抵抗力によって負担することができる。また、組立柱の柱脚部に作用するせん断力に対しては、その一部を補強用鋼材のせん断抵抗力によって負担することができる。また、組立柱の柱脚部に作用する軸力に対しては、その一部を補強用鋼材と充填材との付着力や摩擦力および柱材と充填材との付着力や摩擦力によって負担することができる。
さらに、従来のように既存組立柱の柱脚部の周囲にコンクリートの根巻きや、アンカーボルトの増し打ちなどのような柱脚部の四方から行う作業がないため、柱脚部の周囲に設備などが設置されている場合でもこの設備などを移動させずに容易に施工することができる。
【0011】
また、本発明に係る既存組立柱の柱脚部の補強方法では、前記補強用鋼材を前記柱材に連結部材を介して連結することが好ましい。
このようにすることにより、補強用鋼板と柱材とが確実に一体化するため、柱脚部に作用する外力の一部を補強鋼材が確実に負担することができる。
【0012】
また、本発明に係る既存組立柱の柱脚部の補強方法では、前記補強用鋼材の表面には突起部が形成されていることが好ましい。
また、本発明に係る既存組立柱の柱脚部の補強方法では、前記突起部は、前記補強用鋼材に固定されたスタットジベル、鉄筋およびリブのいずれか1つ以上であることが好ましい。
このようにすることにより、補強用鋼材と充填材とが確実に一体化するため、柱脚部に作用する外力の一部を補強用鋼材が確実に負担することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、補強用鋼材が基礎および柱材と一体化し、組立柱の柱脚部に作用する外力の一部を負担することができるため、組立柱の柱脚部を確実に補強することができる。
また、従来のように柱脚部の周囲にコンクリートの根巻きや、アンカーボルトの増し打ちなどのような柱脚部の四方から行う作業がないため、柱脚部の周囲に設備などが設置されている場合でもこの設備などを移動させずに容易に施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態による既存建築物の一例を示す立面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図2】(a)は本発明の第1実施形態による既存組立柱の柱脚部の補強構造の一例を示す図で(b)のB−B線断面図、(b)は(a)のC−C線断面図である。
【図3】(a)は補強用鋼材の位置調整機構の一例を示す図で(b)のD−D線断面図、(b)は(a)のF−F線断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態による既存組立柱の柱脚部の補強構造の一例を示す図である。
【図5】本発明の第3実施形態による既存組立柱の柱脚部の補強構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態による既存組立柱の柱脚部の補強構造について、図1乃至図3に基づいて説明する。
図1(a)に示すように、第1実施形態による既存組立柱の柱脚部の補強構造は、梁間方向(図中の矢印Aの方向)の架構がラーメン構造で構築され、桁行方向(梁間方向に直交する水平方向)の架構がブレース構造で構築された既存建築物11を構成する組立柱12の柱脚部12aを補強するための構造である。
【0016】
既存建築物11の組立柱12は、地中に埋設されたコンクリートの基礎13の上部に配設されたベースプレート14と、ベースプレート14の上部に立設した複数の柱材15と、隣り合う柱材15間に配設された複数のラチス材16と、を備えている。
基礎13は、既存建築物11を支持できる所定の大きさに形成されていて、必要に応じて下方に杭が埋設されている。
図1(a)および(b)に示すように、ベースプレート14は、基礎13の上端面13aと当接して設置された鋼板で、複数のアンカーボルト17によって基礎13に固定されている。
【0017】
図1(a)に示すように、複数の柱材15は、4つの山形鋼で構成され、平面視における略長方形の各角部にそれぞれ位置するように互いに所定の間隔をあけて配列されている。複数の柱材15の内部には空間が形成されている。
柱材15は、ベースプレート14に溶接されて固定されていてもよいし、アングル材(不図示)を介してボルトなどの締結具で固定されていてもよい。
ラチス材16は、形鋼や長尺の鋼板などから構成され、柱材15に沿って鉛直方向にジグザグ状に配列されている。
【0018】
図2(a)および(b)に示すように、本実施形態による既存組立柱の柱脚部の補強構造1Aは、複数の柱材15の配列の内部においてベースプレート14を鉛直方向に貫通するとともにコンクリート基礎13に鉛直方向に延びる孔部2が形成されていて、隣り合う柱材15の下部側の間隔を閉塞する複数の添え板3と、鉛直方向に延在し孔部2に挿入された例えばH形鋼材などの補強用鋼材4と、孔部2および複数の添え板3の内側に充填された充填材5と、を備えている。
【0019】
孔部2は、補強用鋼材4の延在方向の一端部(下端部4b)側が挿入可能な形状に形成されている。本実施形態では、孔部2は、互いに一部が重なる円筒状の第1孔部21および第2孔部22から構成されている。第1孔部21および第2孔部22は、それぞれコアボーリングによって形成されていて、第1孔部21を形成した後に、一部が第1孔部21と重なるように第2孔部22を形成することで孔部2が形成されている。
なお、孔部2は、補強用鋼材4の下端部4b側が挿入可能な形状であれば、1つの円筒状の孔部としてもよいし、その他の形状としてもよい。また、孔部2はコアボーリング以外の方法で形成されてもよい。
【0020】
添え板3は、所定の高さの鋼板で、両端部3c(図2(a)参照)がボルトなどの固定具(不図示)で柱材15に固定されるとともに、下端部3b(図2(b)参照)がベースプレート14と隙間なく固定されている。また、添え板3とラチス材16(図2(b)参照)とは、干渉しないように構成されていて、ラチス材16は、添え板3の上端部3aよりも上方に設置されている。
なお、添え板3とラチス材16とが干渉するときは、干渉する部分のラチス材16を取り外して添え板3を設置する。このとき、ラチス材16を取り外すことで、組立柱12の強度が低下する場合は、補強を行う。
本実施形態では、添え板3は、隣り合う柱材15の間隔をそれぞれ塞ぐ4枚の鋼板から構成されている。
【0021】
補強用鋼材4は、下端部4bが孔部2の底部2bに位置し、上端部4aがベースプレート14よりも上方へ突出する長さに形成されている。
本実施形態では、補強用鋼材4は、フランジ4cが梁間方向(図中の矢印Aの方向)に直交する向きとなるように設置されている。
【0022】
充填材5は、例えば、コンクリートやモルタルなどで、孔部2の内周面および添え板3の内周面と、補強用鋼材4の外周面との間に充填されている。充填材5は、孔部2および複数の添え板3の内側に充填されることにより、補強用鋼材4が充填材5の内部に埋設し、補強用鋼材4とコンクリート基礎13および組立柱12と一体化している。
本実施形態では、ベースプレート14よりも上方において、補強用鋼材4の周囲にフープ筋6が配設されていて、充填材5の内部に埋設されている。なお、フープ筋6は、設置されていなくてもよい。
【0023】
次に、上述した既存組立柱の柱脚部の補強方法について図面を用いて説明する。
(孔部形成工程)
まず、ベースプレート14および基礎13に補強用鋼材4を挿入するための孔部2を形成する。
孔部2の形成は、コアボーリングにより行い、ベースプレート14を上方から貫通させた後に連続して下方の基礎13を穿孔する。
本実施形態では、コアボーリングにより円筒状の第1孔部21を形成し、続いて第1孔部と一部が重なるようにコアボーリングにより円筒状の第2孔部22を形成する。これにより補強用鋼材4を挿入するための孔部2が形成される。
なお、孔部形成工程において、コアボーリング装置とラチス材16とが干渉する場合は、干渉するラチス材16を取り外して孔部形成工程を行う。
【0024】
(補強用鋼材設置工程)
続いて、孔部2に補強用鋼材4を設置する。
補強用鋼材4の下端部4b側を孔部2に挿入し、補強用鋼材4の上端部4aをベースプレート14よりも上方に突出させる。
このとき、孔部2および柱材15に対する補強用鋼材4の位置調整を行う。
そして、補強用鋼材4のベースプレート14よりも上方に突出する部分の周囲には、上下方向に互いに間隔をあけて複数のフープ筋6を設置する。
【0025】
なお、孔部2および柱材15に対する補強用鋼材4の位置調整は、例えば、図3(a)および(b)に示すような補強用鋼材位置決め機構30を用いて行うことができる。
孔部2および柱材15に対する補強用鋼材4の位置調整では、予め、補強用鋼材4の一対のフランジ4c,4cの外面に、ウェブ4dと略同一面内に配されて外方に突出する一対の第1プレート31,31を接合しておくとともに、基礎13に、第1プレート31,31と平行に配された一対の第2プレート32,32を接合しておく。
このとき、第1プレート31および第2プレート32には、それぞれボルト孔33,34が形成されていて、ボルト35およびナット36によって第1プレート31と第2プレート32とが接合可能に構成されている。また、第1プレート31のボルト孔33は、上下方向に延びる長孔状に形成されていて、第2プレート32のボルト孔34は、通常の円形状に形成されている。
【0026】
そして、補強用鋼材4の位置調整を行うときには、孔部2に挿入された補強用鋼材4を移動させて所望の位置に配置し、第1プレート31および第2プレート32のボルト孔33,34にボルト35を挿通させナット36で締結する。
このとき、第1プレート31のボルト孔33が上下方向に延びる長孔状に形成されていることにより、第一プレート31を所望の高さで第2プレート32に接合することができる。
また、補強用鋼材4を所望の位置に配置したときに、第1プレート31と第2プレート32とが離間する場合は、第1プレート31と、第2プレート32との間にワッシャー(不図示)などを設置することで、第1プレート31と第2プレート32とを互いに離間した状態で接合することができる。
これにより、補強用鋼材4の位置が所望の位置に固定される。
【0027】
なお、第1プレート31のボルト孔33は、長孔状に代わって、第2プレート32のボルト孔34よりも大きい円形状とし、上下方向のみでなく、水平方向においても位置調整可能に構成されていてもよい。
また、第1プレート31には、上下方向に延びる長孔状のボルト孔33を形成し、第2プレート32には、水平方向に延びる長孔状のボルト孔34を形成して、各ボルト孔33,34の重なる部分にボルト35を挿通させることで、補強用鋼材4の上下方向および水平方向の位置調整を行ってもよい。
【0028】
(添え板設置工程)
続いて、添え板3を設置する。
添え板3の下端部3bをベースプレート14と隙間なく固定するとともに、隣り合う柱材15の間隔を塞ぐように添え板3を設置する。
なお、本実施形態では、組立柱12の柱脚部12aを補強する時に添え板3を取り付けているが、既存の組立柱12の柱脚部12aに添え板3が取り付けられている場合は、この添え板3を利用し、添え板設置工程を省略してもよい。
【0029】
(充填材充填工程)
続いて、孔部2および添え板3の内側に充填材5を充填する。そして充填材5が硬化することで、補強用鋼材4が基礎13および柱材15と一体化する。
【0030】
上述した本実施形態による既存組立柱の柱脚部の補強構造1Aでは、柱脚部12aに曲げモーメントが生じると、この曲げモーメントに対してアンカーボルト17の引き抜き抵抗力とベースプレート14の支圧力に加えて、補強用鋼材4の曲げ抵抗力により抵抗している。
また、柱脚部12aにせん断力が生じると、ベースプレート14と基礎13との摩擦力と、アンカーボルトのせん断抵抗力に加えて、補強用鋼材4のせん断抵抗力により抵抗している。
また、柱脚部12aに軸力が生じると、アンカーボルト17の引き抜き力とベースプレート14の支圧力に加えて、補強用鋼材4と充填材5の付着力や摩擦力および柱材15と充填材5との付着力や摩擦力により抵抗している。
このため、補強用鋼材4の各部の寸法、孔部2の深さ寸法、補強用鋼材4がベースプレート14から上方へ突出する寸法、添え板3の高さ寸法などは、要求される強度に合わせて設定されることが好ましい。
【0031】
また、本実施形態では、既存建築物11は、梁間方向(図中の矢印Aの方向)の架構がラーメン構造で構築され、補強用鋼材4は、フランジ4cが梁間方向(図中の矢印Aの方向)に直交する向きとなるように設置されたH形鋼であるため、梁間方向を含む鉛直面内における柱脚部12aの曲げモーメントに対して補強用鋼材4が有効に抵抗することができる。
一般的に、既存建築物11の梁間方向に作用する曲げモーメントは、桁行方向に作用する曲げモーメントよりもが大きいため、補強用鋼材4の曲げモーメントに対して他よりも有効に抵抗できる方向(例えば、本実施形態ではH形鋼のフランジ4cと直交する方向で、他よりも大きい曲げモーメントに抵抗できる方向)と既存建築物11に作用する曲げモーメントが他よりも大きい方向とを一致させることにより、既存建築物11を効率的に補強することができる。
【0032】
次に、上述した既存組立柱の柱脚部の補強構造および既存組立柱の柱脚部の補強方法の作用効果について説明する。
本実施形態による既存組立柱の柱脚部の補強構造1Aおよび既存組立柱の柱脚部の補強方法によれば、組立柱12の柱脚部12aに作用する外力の一部を補強用鋼材4に負担させることができるため、組立柱12の柱脚部12aを補強することができる。
また、従来のように柱脚部12aの周囲にコンクリートの根巻きや、アンカーボルト17の増し打ちを行うことがないため、柱脚部12aの周囲に設備などが設置されている場合でも容易に施工を行うことができる。
【0033】
また、補強用鋼材4がH形鋼であることにより、図3(a)のように、第1孔部21および第2孔部22をそれぞれ補強用鋼材4のフランジ4cの幅寸法よりもやや大きい径とし、第1孔部21および第2孔部22の一部が互いに重なることで補強用鋼材4が挿入可能な孔部2となる。これにより、第1孔部21および第2孔部22は、小さい径とすることができるため、第1孔部21および第2孔部22を形成するために大型の装置を使用する必要がなく、孔部2を形成する時にラチス材16(図2(b)参照)を外す箇所を最小限に抑えることができる。
【0034】
(第2実施形態)
次に、他の実施形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、実施形態と異なる構成について説明する。
図4に示すように、第2実施形態による既存組立柱の柱脚部の補強構造1Bでは、補強用鋼材4と組立柱12の柱材15とが連結部材23によって連結されている。
連結用部材は、形鋼や鋼板などで、補強用鋼材4と組立柱12の柱材15に固定されることで両者を連結している。
第2実施形態による組立柱の柱脚部の補強方法では、補強用鋼材設置工程において、補強用鋼材4と柱材15との間に連結部材23を設置している。
【0035】
第2実施形態による既存組立柱の柱脚部の補強構造1Bおよび組立柱の柱脚部の補強方法では、第1実施形態と同様の効果を奏するとともに、補強用鋼材4と組立柱12とが確実に一体化するため、柱脚部12aに作用する外力の一部を確実に負担することができる。
【0036】
(第3実施形態)
図5に示すように、第3実施形態による既存組立柱の柱脚部の補強構造1Cでは、補強用鋼材4の表面にスタッドジベル(突起部)24が取り付けられている。このスタッドジベル24は、予め工場などで補強用鋼材4に取り付けられていてもよいし、現場において補強用鋼材4に取り付けられてもよい。
【0037】
第3実施形態による既存組立柱の柱脚部の補強構造1Cでは、第1実施形態と同様の効果を奏するとともに、補強用鋼材4と充填材5とが確実に一体化するため、柱脚部12aに作用する外力の一部を補強用鋼材4が確実に負担することができる。
【0038】
以上、本発明による既存組立柱の柱脚部の補強構造1A〜1Cおよび既存組立柱の柱脚部の補強方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述した実施形態では、組立柱12は、柱材15が4つの山形鋼であるが、柱材15の数や形状はこれ以外でもよく、例えば、所定の間隔をあけて隣り合うフランジが平行に配されるように設置されたH形鋼と、隣り合うH形鋼のフランジに固定されたラチス材16とを備える構成としてもよい。
また、上述した実施形態では、補強用鋼材4は、H形鋼であるが、H形鋼に代わって、山形鋼や溝形鋼や鋼管などとしてもよい。そして、補強用鋼材4に山形鋼や溝形鋼を用いた場合においても、補強用鋼材4の曲げモーメントに対して有効に抵抗できる方向と既存建築物11に作用する曲げモーメントが他よりも大きい方向とを一致させることにより、既存建築物11を効率的に補強することができる。
また、上述した第3実施形態では、補強用鋼材4の表面にスタッドジベル24が設けられていいるが、スタッドジベル24に代わって補強用鋼材4の表面に鉄筋やリブなどを設けてもよく、また、表面より突出する突起状の部材を採用することも可能である。
【0039】
また、上述した実施形態では、隣り合う柱材15間に添え板3を設けているが、既存の組立柱12に添え板3が設けられている場合は、既存の添え板3を使用してもよい。
また、添え板3に代わって、柱材15の外側に充填材5用の型枠を設置し、充填材5が硬化した後に、この型枠を取り外してもよい。
また、上述した実施形態では、梁間方向の架構がラーメン構造で構築され、桁行方向の架構がブレース構造で構築された既存建築物11を構成する組立柱12の柱脚部12aを補強しているが、これ以外の既存構造物の組立柱12の柱脚部12aを補強してもよい。
また、上述した実施形態では、ベースプレート14の内部側が柱材15の配列の内部に配されていて、ベースプレート14を貫通するとともに基礎13に鉛直方向に延びる孔部2が形成されているが、ベースプレート14は、柱材15の配列の内側に配されていなくてもよく、このような場合は、孔部2は、基礎13のみに形成されていてよい。
【符号の説明】
【0040】
1A,1B,1C 既存組立柱の柱脚部の補強構造
2 孔部
3 添え板
4 補強用鋼材
5 充填材
6 フープ筋
11 既存建築物
12 組立柱
12a 柱脚部
13 基礎
14 ベースプレート
15 柱材
16 ラチス材
23 連結部材
24 スタッドジベル(突起部)
30 補強用鋼材位置決め機構
31 第1プレート
32 第2プレート
33 ボルト孔
34 ボルト孔
35 ボルト
36 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートで形成された基礎の上部に配設されたベースプレートと、
該ベースプレートの上部に立設し水平方向に互いに間隔をあけて配列され該配列の内部に空間を形成する複数の柱材と、
隣り合う前記柱材間に配設された複数のラチス材と、を備える既存組立柱の柱脚部の補強方法であって、
前記複数の柱材の配列の内部において前記基礎に鉛直方向に穿孔して孔部を形成する孔部形成工程と、
補強用鋼材を前記孔部に挿入して鉛直方向に延在させ該補強用鋼材の上端部を前記ベースプレートよりも上方へ突出させる補強用鋼材設置工程と、
前記孔部および前記複数の柱材の内部に前記補強用鋼材の上端部の高さ以上の高さまで充填材を充填する充填材充填工程と、を備えることを特徴とする既存組立柱の柱脚部の補強方法。
【請求項2】
前記補強用鋼材を前記柱材に連結部材を介して連結することを特徴とする請求項1に記載の既存組立柱の柱脚部の補強方法。
【請求項3】
前記補強用鋼材の表面には突起部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の既存組立柱の柱脚部の補強方法。
【請求項4】
前記突起部は、前記補強用鋼材に固定されたスタットジベル、鉄筋およびリブのいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項3に記載の既存組立柱の柱脚部の補強方法。
【請求項5】
コンクリートで形成された基礎の上部に配設されたベースプレートと、
該ベースプレートの上部に立設し水平方向に互いに間隔をあけて配列され該配列の内部に空間を形成する複数の柱材と、
隣り合う前記柱材間に配設された複数のラチス材と、を備える既存組立柱の柱脚部の補強構造であって、
前記複数の柱材の配列の内部において前記基礎に鉛直方向に延びる孔部と、
該孔部に挿入されて鉛直方向に延在するとともに上端部が前記ベースプレートよりも上方へ突出する補強用鋼材と、
前記孔部および前記複数の柱材の配列の内部に前記補強用鋼材の上端部の高さ以上の高さまで充填された充填材と、を備えることを特徴とする既存組立柱の柱脚部の補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−40486(P2013−40486A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177820(P2011−177820)
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】