説明

既設杭の引抜き装置

【課題】 手作業による油圧ホースの接続・分離作業の省力化を図れる既設杭の引抜き装置を提供する。
【解決手段】 既設杭引抜き用のケーシング5の外面上部側に油圧シリンダ17を、外面下部に油圧シリンダ17の伸縮作動によりケーシング5に突入・退出する既設杭チャック爪18をそれぞれ取付けている。駆動装置3側に油圧スイベル30が設置され、この油圧スイベル30は非回転のハウジング内に駆動シャフト9に連結されたスピンドルを回転可能に嵌挿するとともに、油圧源からの作動油が前記ハウジングから前記スピンドルへ流れるように油路を形成しており、前記スピンドルから送られる作動油によって油圧シリンダ17が伸長作動して既設杭チャック爪18を突入させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設されている既設杭の引抜き装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
既設杭の引抜き装置として、例えば、既設杭を引抜くためのケーシングの外面の上下部に油圧シリンダと、この油圧シリンダの伸縮作動によりケーシングに突入・退出する既設杭チャック爪とを取付けたものがある。かくして、ケーシングの打ち込み後、油圧シリンダを作動させることで既設杭チャック爪をケーシングに突入させ既設杭の下端側に当接係合させてケーシングを既設杭と共に引き上げる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−154541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、上記既設杭の引抜き装置では、油圧源側の油圧ホースとケーシング上の油圧シリンダ側の油圧ホースとを繋いだままにしておくと、ケーシングの回転に伴い油圧ホースが引きちぎれるため、油圧源側の油圧ホースとケーシング上の油圧シリンダ側の油圧ホースとはホース継手を介して接続・分離可能に接続している。かくして、予め作業者によって油圧源側の油圧ホースと油圧シリンダ側の油圧ホースとを分離しておいて、ケーシングを回転させながら地中に打ち込む。打ち込み後は、既設杭チャック爪を突入作動させるために、一旦駆動装置の運転を停止させたうえで、油圧源側の油圧ホースと油圧シリンダ側の油圧ホースとをホース継手を介して接続していた。かかる手作業による油圧ホースの接続・分離作業は厄介であり、作業能率低下の原因になっていた。
【0005】
本発明は、このような問題を解消するためになされたもので、その目的とするところは、手作業による油圧ホースの接続・分離作業の省力化を図れる既設杭の引抜き装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、リーダマストに昇降自在に装着され電動機、減速機を内蔵した駆動装置と、この駆動装置の下部に配設され前記減速機に連動連結された中空の駆動シャフト、及びこの駆動シャフトと同心でかつ該駆動シャフトとは逆方向に回転するフランジカップリングを備えた回転伝達機構と、前記駆動シャフトの下端部に連結され、既設杭の最大外径よりも大きい内径を有しかつ下端に掘削刃を有する円筒形状のケーシングと、油圧源とを備えており、前記ケーシングの外面上部側に油圧シリンダを、前記ケーシングの外面下部に前記油圧シリンダの伸縮作動により前記ケーシングに突入・退出する既設杭チャック爪をそれぞれ取付けている既設杭の引抜き装置において、前記駆動装置側に油圧スイベルが設置され、この油圧スイベルは、非回転の筒形状のハウジング内に、前記駆動シャフトの上端部に連結されたスピンドルを回転可能に嵌挿するとともに、前記油圧源からの作動油が前記ハウジングから前記スピンドルへ流れるように油路を形成しており、前記スピンドルの送り油出口および戻り油入口と前記油圧シリンダの送り油入口および戻り油出口とを前記駆動シャフトの中空内に通された油圧ホースでそれぞれ接続しており、前記スピンドルから送られる作動油によって前記油圧シリンダが伸長作動し、前記油圧シリンダから作動油が前記スピンドルに戻されることによって前記油圧シリンダが縮小作動するように構成していることに特徴を有するものである。
【0007】
上記構成の既設杭の引抜き装置によれば、駆動装置の駆動によりケーシングを回転させながら地中に打ち込むとき、油圧源と油圧シリンダとは油圧スイベルを介して連通状態にしてあるので、従来のごとき油圧源側の油圧ホースと油圧シリンダ側の油圧ホースとを接続・分離する手作業を省略することができ、ケーシングの回転に伴い油圧ホースが引きちぎれるという問題も解消される。また、油圧スイベルのスピンドル、駆動シャフト、およびケーシングは同行回転し、スピンドルの送り油出口および戻り油入口とケーシング上の油圧シリンダの送り油入口および戻り油出口とを接続する油圧ホースは駆動シャフトの中空内に通してあるため引きちぎれることもない。
打ち込み後は、油圧スイベルから送られる作動油によって油圧シリンダを伸長させることで既設杭チャック爪をケーシングに突入させて既設杭の下端または中途部を掴んでケーシングを既設杭と共に引き上げることができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、リーダマストに昇降自在に装着され電動機、減速機を内蔵した駆動装置と、この駆動装置の下部に配設され前記減速機に連結された中空の駆動シャフト、及びこの駆動シャフトと同心でかつ該駆動シャフトとは逆方向に回転するフランジカップリングを備えた回転伝達機構と、前記フランジカップリングに着脱可能に連結され、既設杭の最大外径よりも大きい内径を有しかつ下端に掘削刃を有する円筒形状のケーシングと、油圧源とを備えており、前記ケーシングの外面上部側に油圧シリンダを、前記ケーシングの外面下部に前記油圧シリンダの伸縮作動により前記ケーシングに突入・退出する既設杭チャック爪をそれぞれ取付けている既設杭の引抜き装置において、前記駆動装置側に第1の油圧スイベルが設置され、この油圧スイベルは非回転の筒形状の第1のハウジング内に前記駆動シャフトの上端部に連結された第1のスピンドルを回転可能に嵌挿するとともに、前記油圧源からの作動油が前記第1のハウジングから前記第1のスピンドルへ流れるように油路を形成しており、前記駆動シャフトの下端部に連結ロッドを介して第2の油圧スイベルが着脱可能に取付けられ、この油圧スイベルは、回転自由状態の第2の筒形状のハウジング内に、前記連結ロッドに着脱可能に連結された第2のスピンドルを回転可能に嵌挿し、かつ前記第1のスピンドルの送り油出口および戻り油入口と前記第2のスピンドルの送り油入口および戻り油出口とをそれぞれ前記駆動シャフトの中空内に通される油圧ホースで接続するとともに、前記第1のスピンドルからの作動油が前記第2のスピンドルから前記第2のハウジングへ流れるように前記第2のスピンドルと前記第2のハウジングとの間に油路を形成しており、前記第2のハウジングから送られる作動油によって前記油圧シリンダが伸長作動し、前記油圧シリンダから作動油が前記第2のハウジングに戻されることによって前記油圧シリンダが縮小作動するように構成してあることに特徴を有するものである。
【0009】
上記構成の既設杭の引抜き装置によれば、駆動装置の駆動によりケーシングを回転させながら地中に打ち込むとき、油圧源と油圧シリンダとは第1、2の油圧スイベルを介して連通状態にしてあるので、従来のごとき手作業による油圧ホースの接続・分離作業を省略でき、ケーシングの回転に伴い油圧ホースが引きちぎれるという問題も解消されること、また、第1のスピンドル、駆動シャフト、第2のスピンドルおよびケーシングは同行回転し、第1のスピンドルの送り油出口および戻り油入口と前記第2のスピンドルの送り油入口および戻り油出口とを接続する油圧ホースは駆動シャフトの中空内に通してあるため引きちぎれることもないこと、さらに打ち込み後、油圧スイベルから送られる作動油によって油圧シリンダを伸長させることで既設杭チャック爪をケーシングに突入させ既設杭の下端または中途部を掴んでケーシングを既設杭と共に引き上げることができることは請求項1に記載の発明と同様である。
【0010】
とくに、駆動シャフトの上端部に第1の油圧スイベルを連結し、駆動シャフトの下端部に連結ロッドを介して第2の油圧スイベルを着脱可能に連結して、第1の油圧スイベルは非回転の第1のハウジング内に、駆動シャフトの上端部に連結された第1のスピンドルを回転可能に嵌挿するとともに、油圧源からの作動油が第1のハウジングから第1のスピンドルへ流れるように油路を形成する一方、第2の油圧スイベルは第2のハウジング内に、駆動シャフトの下端部に着脱可能に連結された第2のスピンドルを回転可能に嵌挿するとともに、第1のスピンドルからの作動油が第2のスピンドルから第2のハウジングへ流れるように油路を形成して、第2のハウジングから送られる作動油によって油圧シリンダが油圧シリンダが伸長作動し、油圧シリンダから作動油が第2のハウジングに戻されることによって油圧シリンダが縮小作動するように構成してある。したがって、駆動シャフトの下端部から第2の油圧スイベルを外し、該駆動シャフトの下端部にフランジ付きジョイントを介してケーシングを連結する使用形態と、フランジカップリングにケーシングを連結する使用形態と、フランジカップリングにケーシングを連結するとともに第2のスピンドルの下端部にオーガースクリューを連結する使用形態の三つの使用形態を一つの駆動装置を兼用して採用することができる。
【0011】
請求項3、4に係る発明は、請求項1又は2に記載の既設杭の引抜き装置において、スピンドルは水や空気、セメントミルク等流体の流通路に兼用できるよう中空状に形成してあることに特徴を有するものである。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項4記載の既設杭の引抜き装置において、第2のスピンドルの下端部にウォータースイベルを介してスクリューオーガーが連動連結することに特徴を有するものである。これによれば、スクリューオーガーによりコンクリート製の既設杭を破砕しながらこの破砕物を排出することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明よれば、駆動装置側に設置された油圧スイベルから送り込まれる作動油によって油圧シリンダが伸縮作動し、この伸縮作動により既設杭チャック爪がケーシングに突入・退出するようにしてあるので、油圧源と油圧シリンダとの間での手作業による油圧ホースの接続・分離作業の省力化を図れ、既設杭の引抜き作業が能率よく行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る既設杭の引抜き装置の実施形態を図面に基づき説明する。図1は本発明の一実施例を示す既設杭の引抜き装置全体の側面図、図2は図1の引抜き装置の駆動装置及びケーシングの側面図、図3は図2の駆動装置の縦断正面図、図4は図2の駆動装置に組み込まれたウォータースイベル及び油圧スイベルの縦断面図、図5は図1の引抜き装置のケーシングに取付けた既設杭チャック爪を退出状態で示す側面図、図6は図1の引抜き装置のケーシングに取付けた既設杭チャック爪を突入状態で示す側面図である。
【0015】
図1において、この既設杭の引抜き装置は、クローラクレーン1のリーダマスト2に昇降自在に装着された駆動装置3と、この駆動装置3の下部に回転伝達機構4を介して連結される円筒形状のケーシング5と、クローラクレーン1に搭載された油圧源6とを備える。
【0016】
図2、図3において、駆動装置3はこれの本体ケース3a内に電動機7及び減速機8を内蔵している。回転伝達機構4は、ドーナツオーガ方式であって、減速機8に連動連結された中空の駆動シャフト9、及びこの駆動シャフト9と同心でかつ該駆動シャフト9とは逆方向に回転するフランジカップリング10を備える。具体的には、中空の駆動シャフト9、駆動シャフト9の上下に設けた上下ギヤ11,12、減速機8に連動連結され上ギヤ11に噛合するピニオンギヤ13、下ギヤ12の外周に配備された内歯を有する外輪14、下ギヤ12と外輪14の内歯との間に噛合する遊星ギヤ15を備える。駆動シャフト9の下端部に中空の連結ロッド16を一体的に結合し、外輪14の下部にフランジカップリング10を一体的に結合固定しており、電動機7の回転により回転伝達機構4を介して連結ロッド16とフランジカップリング10が互いに逆回転する構成となっている。
【0017】
図2に示すように、ケーシング5は既設杭の最大外径よりも大きい内径をもつ鋼管等からなる円筒状に形成され、下端に掘削刃5aを取付けている。ケーシング5の外面上部側には油圧シリンダ17を取付け、ケーシング5の外面下部には油圧シリンダ17の伸縮作動によりケーシング5に突入・退出する複数個の既設杭チャック爪18を取付けている。
【0018】
図5及び図6に示すように、既設杭チャック爪18は鋼材等で円弧縁18aと直状縁18bとで先細で後端円形の舟形状に形成されて円弧状のカム溝19を有する。この既設杭チャック爪18は、ケーシング5の下端側に設けた開口20の外側に固定された軸受21に横架された軸22にカム溝19を挿通することにより、ケーシング5の開口20の外側上方に略垂直に添う退出姿勢(図5参照)と、開口20からケーシング5内に向けて略水平に突入する突入姿勢(図6参照)とにわたって軸22を中心にして垂直方向に進退動自在に取付けられる。
【0019】
一方、図2に示すように、油圧シリンダ17はこれの上端部がケーシング5の上部外側に突設した支持突片23に枢着され、この油圧シリンダ17の下端から突入する伸縮自在なシリンダロッド24の下端部と、既設杭チャック爪18の後端部に回動自在に枢結した継手25とが連結ロッド26で連結される。そして油圧シリンダ17の伸縮作動が上下方向に真っ直ぐに行えるようにシリンダロッド24の下端部と連結ロッド26の上端部とは枢軸27で連結する一方、ケーシング5に上下方向に真っ直ぐな縦溝28を有するガイド29を固定し、その縦溝28に前記枢軸27の両端部を摺動自在に嵌合することによりシリンダロッド24が上下方向に真っ直ぐに上下動するよう規制されている。しかるときは、油圧シリンダ17のシリンダロッド24が縮小作動すると既設杭チャック爪18が連結ロッド26で上方へ牽引されて開口20からケーシング5外に略垂直姿勢に退出し(図5参照)、シリンダロッド24が伸長作動すると既設杭チャック爪18が連結ロッド26で押し下げられて開口20からケーシング5内に略水平姿勢に突入する(図6参照)。
【0020】
図3、図4において、駆動装置3内に突出する駆動シャフト9の上端部に油圧スイベル30、ウォータースイベル31が取付けられる。
油圧スイベル30は非回転の筒形状のハウジング32内に、駆動シャフト9の上端部に一体的に連結されたスピンドル33をベアリング34およびオイルシール35を介して回転可能に嵌挿する。そして、ハウジング32には送り油導入口36および戻り油導出口37を設け、これら送り油導入口36および戻り油導出口37と油圧源6とを油圧ホース38,39で接続し、油圧源6から油圧ホース38を経て送られる作動油がハウジング32からスピンドル33へ流れるようにハウジング32とスピンドル33との間に油路40を形成している。スピンドル33の下端には送り油出口41および戻り油入口42を設け、それら送り油出口41および戻り油入口42と油圧シリンダ17の送り油入口(図示省略)および戻り油出口(図示省略)とを駆動シャフト9の中空内に通される油圧ホース43,44でそれぞれ接続することにより、スピンドル33の送り油出口41から油圧ホース43を介して送られる作動油によって油圧シリンダ17が伸長作動し、油圧シリンダ17の戻り油出口から作動油(戻り油)が油圧ホース43を介してスピンドル33の戻り油入口42に戻されることによって油圧シリンダ17が縮小作動するように構成してある。
【0021】
油圧スイベル30の上部に連結されるウォータースイベル31は、スピンドル33の上端部に一体的に連結された円筒状のOリング受け45内に非回転のスイベルパイプ46をOリング47およびグリース48を介して嵌挿している。スイベルパイプ46の上端には水やベントナイト等の泥濘化剤、あるいはセメントミルクなどの送りと空気の送りに兼用される水ホース49を接続している。
【0022】
駆動シャフト9の下端部に一体的に結合された中空の連結ロッド16に、ケーシング5の上端フランジ5bがフランジ付きジョイント50を介して一体的に連結される。
【0023】
スピンドル33はスイベルパイプ46の内部および駆動シャフト9の中空と連通するよう中空に形成して、水やベントナイト等の泥濘化剤あるいはセメントミルクなどの送りと空気の送りに兼用する。図2に示すように、ケーシング5の外周には流体輸送ホース51を上下方向に這わせてあり、この流体輸送ホース51の上端部は中空の駆動シャフト9、中空の連結ロッド16、フランジ付きジョイント50の中央貫通孔に連通状に接続してあり、流体輸送ホース51の先端にはノズル51aが取付けられ、このノズル51aをケーシング5の下端の隣り合う既設杭チャック爪18,18間に設けた開口52に臨ませている。
【0024】
次に、上記構成の既設杭の引抜き装置の作動について説明する。まず、地中に埋設されている既設杭53(図6参照)に対してケーシング5を打ち込む。ケーシング5は駆動装置3の駆動によって回転駆動され、掘削刃5aで掘削しつつ既設杭53を囲繞するよう土中に打ち込まれて行く。この時、水やベントナイト等の泥濘化剤を流体輸送ホース51内に通してケーシング5の下端に送り、その流体輸送ホース51の先端のノズル51aから噴出させてケーシング5の下端の内外周辺の土砂を泥濘化することにより、ケーシング5は土砂との摩擦抵抗を低減するのでその打ち込みが容易に行える。このケーシング5の打ち込みは少なくとも既設杭53の深度まで打ち込まれ、好ましくはケーシング5の下端が既設杭53の下端よりも1mほど下方に達する深さにまで打ち込まれる。
【0025】
ケーシング5の打ち込み後、油圧スイベル30から送られる作動油によって油圧シリンダ17を伸長作動させ、連結ロッド26を介して既設杭チャック爪18を図6のようにケーシング5内に向けて突入させる。既設杭チャック爪18を完全に突入させた後、駆動装置3によりケーシング5に引上げ力を加えると、図6に示すように、既設杭53の最下端に当接する既設杭チャック爪18により既設杭53に持ち上げ力が加えられてケーシング5をこのケーシング5内の既設杭53及び土砂と共に引抜くことができる。
【0026】
この引抜時には、流体輸送ホース51に泥濘化剤を送るのを止め、該流体輸送ホース51に空気又は圧縮した空気を送り、この空気を既設杭53の下端と地中との間に生じる引抜き跡の空間に送り込み続けることにより既設杭53の引抜き跡に生じる空間内の負圧を低減できるため、既設杭53の引抜きがより小さい引抜操作力で容易に行え、また既設杭53を途中で引きちぎる恐れなく確実に引抜くことができる。
【0027】
なお、上記構成の複数個の既設杭チャック爪18によるチャック機構によれば既設杭53の途中をも強力につかむことができる。したがって、既設杭53の全部を引抜く必要がなくて、その既設杭53の柱身だけを引抜くことで済む場合は、その柱身の途中をつかんで引抜くことも可能である。
【0028】
流体輸送ホース51を泥濘化剤と空気の送りに兼用することによりケーシング5への付帯設備の簡略化、コストの低減を図ることができて有利であるが、これに代えて、流体輸送ホース51としては、ケーシング5に対して泥濘化剤送り専用のホースと、空気送り専用のホースとを併設することもできる。
【0029】
図7〜図9は他の実施例を示す。この実施例では、図7に示すように、ケーシング5が上記実施例のフランジカップリング10に連結され、駆動シャフト9の下端部に第2の油圧スイベル55が連結ロッド16を介して着脱可能に連結されるとともに第2の油圧スイベル55の下端に第2のウォータースイベル56が連結されている点が上記実施例の場合と大きく異なり、その他の駆動装置3、回転伝達機構4、ケーシング5等の構成は上記実施例と同様であるため、同一部材に同一符号を付してその説明を省略する。
【0030】
図9に示すように、第2の油圧スイベル55は、回転自由状態の第2の筒形状のハウジング57内に、駆動シャフト9の下端の連結ロッド16に着脱可能に連結された第2のスピンドル58をベアリング34およびオイルシール35を介して回転可能に嵌挿する。そして、図8に示すように上記実施例と同じスピンドル33(第1のスピンドル33)の下端に設けた送り油出口41および戻り油入口42と第2のスピンドル58に設けた送り油入口59および戻り油出口60とをそれぞれ駆動シャフト9の中空内に通された油圧ホース43,44で接続するとともに、第1のスピンドル33の送り油出口41からの作動油が第2のスピンドル58から第2のハウジング57へ流れるように第2のスピンドル58と第2のハウジング57との間に油路61を形成している。第2のハウジング57に設けた送り油出口62および戻り油入口63と油圧シリンダ17の送り油入口(図示省略)および戻り油出口(図示省略)とはそれぞれ油圧ホース64,65で接続する。かくして、第2のハウジング57の送り油出口62から送られる作動油によって油圧シリンダ17が伸長作動し、油圧シリンダ17の戻り油出口から作動油(戻り油)が第2のハウジング57の戻り油入口63に戻されることによって油圧シリンダ17が縮小作動するように構成してある。第2のハウジング57は油圧ホース64,65を介してケーシング5と共回りする。
【0031】
第2の油圧スイベル55の下部に連結される第2のウォータースイベル56は上記実施例のウォータースイベル31(第1のウォータースイベル31)と略同様であって第2のスピンドル58の下端に一体的に連結されたOリング受け63内にスイベルパイプ64をOリングおよびグリースを介して嵌挿している。スイベルパイプ64の下端にはケーシング5の外周に上下方向に這わせて装着してある流体輸送ホース51の上端部を接続する。
【0032】
この実施例の既設杭の引抜き装置の作動においても、上記実施例の場合と同様に、ケーシング5は駆動装置3の駆動によって回転駆動され、掘削刃5aで掘削しつつ既設杭53(図6参照)を囲繞するよう土中に打ち込まれて行く。ケーシング5の打ち込み後、第2の油圧スイベル55から送られる作動油によって油圧シリンダ17を伸長作動させ、連結ロッド26を介して既設杭チャック爪18を図6のようにケーシング5内に向けて突入させる。既設杭チャック爪18を完全に突入させた後、駆動装置3によりケーシング5に引上げ力を加えると、既設杭53の最下端に当接する既設杭チャック爪18により既設杭53に持ち上げ力が加えられてケーシング5をこのケーシング5内の既設杭53及び土砂と共に引抜くことができる。
【0033】
この実施例では、駆動シャフト9の下端の連結ロッド16から第2の油圧スイベル55を外し、上記実施例の場合と同様に該駆動シャフト9の下端部にフランジ付きジョイント50を介してケーシング5を連結する使用形態と、フランジカップリング10にケーシング5を連結する使用形態と、フランジカップリング10にケーシング5を連結するとともに第2のスピンドル58の下端部に第2のウォータースイベル56を介してオーガースクリュー65を連結する使用形態とを可能にする。オーガースクリュー65を使用する場合はコンクリート製の既設杭(図示省略)をこの下端部が少し残存するまで破砕しながらこの破砕物を排出することができ、残存する既設杭下端部は既設杭チャック爪18により引抜くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施例を示す既設杭の引抜き装置全体の側面図である。
【図2】図1の引抜き装置の駆動装置及びケーシングの側面図である。
【図3】図2の駆動装置の縦断正面図である。
【図4】図2の駆動装置に組み込まれたウォータースイベル及び油圧スイベルの縦断面図である。
【図5】図1の引抜き装置のケーシングに取付けた既設杭チャック爪を退出状態で示す側面図である。
【図6】図1の引抜き装置のケーシングに取付けた既設杭チャック爪を突入状態で示す側面図である。
【図7】他の実施例の引抜き装置の駆動装置及びケーシングの側面図である。
【図8】図7の駆動装置の縦断正面図である。
【図9】図7の引抜き装置の第2の油圧スイベルの縦断面図である。
【符号の説明】
【0035】
2 リーダマスト
3 駆動装置
4 回転伝達機構
5 ケーシング
5a 掘削刃
6 油圧源
7 電動機
8 減速機
9 駆動シャフト
10 フランジカップリング
16 連結ロッド
17 油圧シリンダ
18 既設杭チャック爪
30 油圧スイベル(第1の油圧スイベル)
32 ハウジング(第1のハウジング)
33 スピンドル(第1のスピンドル)
38.39 油圧ホース
40 油路
43,44 油圧ホース
53 既設杭
55 第2の油圧スイベル
56 第2のウォータースイベル
57 第2のハウジング
58 第2のスピンドル
61 油路
65 オーガースクリュー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダマストに昇降自在に装着され電動機、減速機を内蔵した駆動装置と、この駆動装置の下部に配設され前記減速機に連動連結された中空の駆動シャフト、及びこの駆動シャフトと同心でかつ該駆動シャフトとは逆方向に回転するフランジカップリングを備えた回転伝達機構と、前記駆動シャフトの下端部に連結され、既設杭の最大外径よりも大きい内径を有しかつ下端に掘削刃を有する円筒形状のケーシングと、油圧源とを備えており、前記ケーシングの外面上部側に油圧シリンダを、前記ケーシングの外面下部に前記油圧シリンダの伸縮作動により前記ケーシングに突入・退出する既設杭チャック爪をそれぞれ取付けている既設杭の引抜き装置において、
前記駆動装置側に油圧スイベルが設置され、この油圧スイベルは、非回転の筒形状のハウジング内に、前記駆動シャフトの上端部に連結されたスピンドルを回転可能に嵌挿するとともに、前記油圧源からの作動油が前記ハウジングから前記スピンドルへ流れるように油路を形成しており、前記スピンドルの送り油出口および戻り油入口と前記油圧シリンダの送り油入口および戻り油出口とを前記駆動シャフトの中空内に通された油圧ホースでそれぞれ接続しており、前記スピンドルから送られる作動油によって前記油圧シリンダが伸長作動し、前記油圧シリンダから作動油が前記スピンドルに戻されることによって前記油圧シリンダが縮小作動するように構成していることを特徴とする、既設杭の引抜き装置。
【請求項2】
リーダマストに昇降自在に装着され電動機、減速機を内蔵した駆動装置と、この駆動装置の下部に配設され前記減速機に連結された中空の駆動シャフト、及びこの駆動シャフトと同心でかつ該駆動シャフトとは逆方向に回転するフランジカップリングを備えた回転伝達機構と、前記フランジカップリングに着脱可能に連結され、既設杭の最大外径よりも大きい内径を有しかつ下端に掘削刃を有する円筒形状のケーシングと、油圧源とを備えており、前記ケーシングの外面上部側に油圧シリンダを、前記ケーシングの外面下部に前記油圧シリンダの伸縮作動により前記ケーシングに突入・退出する既設杭チャック爪をそれぞれ取付けている既設杭の引抜き装置において、
前記駆動装置側に第1の油圧スイベルが設置され、この油圧スイベルは非回転の筒形状の第1のハウジング内に前記駆動シャフトの上端部に連結された第1のスピンドルを回転可能に嵌挿するとともに、前記油圧源からの作動油が前記第1のハウジングから前記第1のスピンドルへ流れるように油路を形成しており、
前記駆動シャフトの下端部に連結ロッドを介して第2の油圧スイベルが着脱可能に取付けられ、この油圧スイベルは、回転自由状態の第2の筒形状のハウジング内に、前記連結ロッドに着脱可能に連結された第2のスピンドルを回転可能に嵌挿し、かつ前記第1のスピンドルの送り油出口および戻り油入口と前記第2のスピンドルの送り油入口および戻り油出口とをそれぞれ前記駆動シャフトの中空内に通される油圧ホースで接続するとともに、前記第1のスピンドルからの作動油が前記第2のスピンドルから前記第2のハウジングへ流れるように前記第2のスピンドルと前記第2のハウジングとの間に油路を形成しており、
前記第2のハウジングから送られる作動油によって前記油圧シリンダが伸長作動し、前記油圧シリンダから作動油が前記第2のハウジングに戻されることによって前記油圧シリンダが縮小作動するように構成してあることを特徴とする、既設杭の引抜き装置。
【請求項3】
前記スピンドルの上端部にウォータースイベルを連結し、前記スピンドルを流体の流通路に兼用できるよう中空状に形成してある、請求項1記載の既設杭の引抜き装置。
【請求項4】
前記第1、2のスピンドルを流体の流通路に兼用できるよう中空状に形成してある、請求項2記載の既設杭の引抜き装置。
【請求項5】
前記第2のスピンドルの下端部にウォータースイベルを介してスクリューオーガーが連動連結されている、請求項4記載の既設杭の引抜き装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−207312(P2006−207312A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22913(P2005−22913)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【特許番号】特許第3780293号(P3780293)
【特許公報発行日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(591140639)株式会社岡田組 (3)
【Fターム(参考)】