説明

既設管人孔接続部の耐震化工法

【課題】 人孔の周壁の周囲に周壁に近接して存在する地下ケーブルや各種流体用埋設管等の埋設物に傷を付けるおそれがなく、また、人孔の強度に影響を与えることなく、耐震化と作業性及び作業時間の短縮化が図れる既設管人孔接続部の耐震化工法を得る。
【解決手段】 既設管2が人孔3の周壁4の管孔5に嵌合して接続されている既設管人孔接続部6の耐震化を図る既設管人孔接続部の耐震化工法であって、人孔3の周壁4の管孔5に嵌合している既設管2の、人孔3の周壁4の内周壁面10と外周壁面11を超えない所定の範囲の部分を環状に切除して人孔3の周壁4の管孔5内に環状切除部12を形成する工程と、人孔3の周壁4の管孔5内に形成した環状切除部12内に弾性変形可能な弾性止水環状部13を環状切除部12との間で液密に設ける工程と、既設管2及び弾性止水環状部13の内側に、弾性止水環状部13を跨いでライニング管14を配置する工程を含むものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設管が人孔を構成している周壁の管孔に嵌合して接続されている既設管人孔接続部の耐震化を非開削で行う既設管人孔接続部の耐震化工法に関する。
【背景技術】
【0002】
過去に発生した大きな地震において、下水道施設は甚大な被害を被り、市民生活に与えた影響は深刻なものであった。そのなかで既設管が受けた被害をみると、破損、抜け出し、ずれ、ひび割れ等が発生し、とりわけ既設管が人孔のところで該人孔の周壁の管孔に嵌合して接続されている既設管人孔接続部に被害が多くみられた。これは、既設管と人孔との既設管人孔接続部が剛接合となっているために、該既設管人孔接続部が地震動に対する動きの違いを吸収できないことに起因している。
【0003】
このため、剛接合となっている既設管と人孔との既設管人孔接続部の耐震化が求められるものとなった。剛接合となっている既設管人孔接続部の耐震化を図る工法として、人孔内から管状のカッターで既設管外周囲にある人孔の周壁を一定幅で切除して、既設管と人孔周壁とを縁切りし、切除によって形成された既設管と人孔の周壁との環状空隙内に弾性変形可能な弾性止水材を充填するようにした工法が開示されている。(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−40751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような既設管人孔接続部の耐震化工法では、カッターによる既設管と人孔周壁との縁切りでは、カッターが人孔の周壁を突き抜けて周壁の外に突出するまで押し進めるので、人孔の周壁の外周壁面における既設管の周囲に環状空隙が大きく開口し、人孔の周壁の外にある土砂や水が前記環状空隙内に流入してしまい、環状空隙内への弾性止水材の充填が困難となり、作業が妨げられるおそれがある。
【0006】
また、前記既設管と人孔周壁との縁切りを確実にするため、カッターを人孔の周壁の外に必要以上に突出させる結果となる。一般に、人孔の周壁の外周囲には、周壁に近接して地下ケーブルや各種流体用埋設管等の埋設物が存在する場合が多い。このため、カッターによる既設管と人孔の周壁との縁切り作業の際、人孔の周壁の外に突出したカッターにより、地下ケーブルや各種流体用埋設管等の埋設物を傷付けてしまうおそれがある。
【0007】
また、既設管と人孔周壁との縁切りのための既設管外周囲にある人孔の周壁の切除に際しては、既設管の端部前面のインバートコンクリートを切除し、そして、この切除した部分には、既設管と人孔の周壁との環状空隙内に弾性変形可能な弾性止水材を充填した後、新たなインバートコンクリートを打設するといった作業を要するため、工事全体の作業に手間と時間がかかるといった問題がある。
【0008】
本発明の目的は、人孔の周壁の周囲に周壁に近接して存在する地下ケーブルや各種流体用埋設管等の埋設物に傷を付けるおそれがなく、また、人孔の強度に影響を与えることなく、耐震化と作業性及び作業時間の短縮化が図れる既設管人孔接続部の耐震化工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、既設管が人孔の周壁の管孔に嵌合して接続されている既設管人孔接続部の耐震化を図る既設管人孔接続部の耐震化工法であって、前記人孔の周壁の前記管孔に嵌合している前記既設管の、前記人孔の周壁の内周壁面と外周壁面を超えない所定の範囲の部分を環状に切除して前記人孔の周壁の前記管孔内に環状切除部を形成する工程と、前記人孔の周壁の前記管孔内に形成した環状切除部内に弾性変形可能な弾性止水環状部を環状切除部との間で液密に設ける工程と、前記既設管及び前記弾性止水環状部の内側に、前記弾性止水環状部を跨いでライニング管を配置する工程を含むことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、既設管が人孔の周壁の管孔に嵌合して接続されている既設管人孔接続部の耐震化を図る既設管人孔接続部の耐震化工法であって、前記人孔の周壁の前記管孔に嵌合している前記既設管の、前記人孔の周壁の内周壁面と外周壁面を超えない所定の範囲の部分を環状に切除して前記人孔の周壁の前記管孔内に環状切除部を形成する工程と、前記人孔の周壁の前記管孔内に形成した環状切除部内に弾性変形可能な弾性止水環状部を環状切除部との間で液密に設ける工程と、前記既設管及び前記弾性止水環状部の内側に、前記弾性止水環状部を跨いで且つ前記弾性止水環状部との間で液密となる鋼管を嵌合する工程と、前記既設管及び前記鋼管の内側にライニング管を配置する工程を含むことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、既設管が人孔の周壁の管孔に嵌合して接続されている既設管人孔接続部の耐震化を図る既設管人孔接続部の耐震化工法であって、前記人孔の周壁の前記管孔に嵌合している前記既設管の、前記人孔の周壁の内周壁面と外周壁面を超えない所定の範囲の部分を環状に切除して前記人孔の周壁の前記管孔内に環状切除部を形成する工程と、前記既設管の内側に、前記環状切除部を跨いで鋼管を嵌合する工程と、前記人孔の周壁の前記管孔内に形成した環状切除部内に弾性変形可能な弾性止水環状部を環状切除部及び鋼管との間で液密に設ける工程と、前記既設管及び前記鋼管の内側にライニング管を配置する工程を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、既設管が人孔の周壁の管孔に嵌合して接続されている既設管人孔接続部の耐震化を図る既設管人孔接続部の耐震化工法であって、前記人孔の周壁の前記管孔に嵌合している前記既設管の、前記人孔の周壁の内周壁面と外周壁面を超えない範囲の一部分を環状に切除して前記人孔の周壁の前記管孔内に環状切除部を形成する工程と、前記人孔の周壁の前記管孔の内壁に、該内壁における前記既設管の一部分を切除して形成された環状切除部に開放された部分を、前記環状切除部に沿って環状に切除して前記環状切除部と連通する環状溝を形成する工程と、前記人孔の周壁の前記管孔内に形成した前記環状切除部及び環状溝内に弾性変形可能な弾性止水環状部を前記環状切除部及び環状溝との間で液密に設ける工程と、前記既設管及び前記弾性止水環状部の内側に、前記弾性止水環状部を跨いでライニング管を配置する工程を含むことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、既設管が人孔の周壁の管孔に嵌合して接続されている既設管人孔接続部の耐震化を図る既設管人孔接続部の耐震化工法であって、前記人孔の周壁の前記管孔に嵌合している前記既設管の、前記人孔の周壁の内周壁面と外周壁面を超えない範囲の一部分を環状に切除して前記人孔の周壁の前記管孔内に環状切除部を形成する工程と、前記人孔の周壁の前記管孔の内壁に、該内壁における前記既設管の一部分を切除して形成された環状切除部に開放された部分を、前記環状切除部に沿って環状に切除して前記環状切除部と連通する環状溝を形成する工程と、前記人孔の周壁の前記管孔内に形成した前記環状切除部及び環状溝内に弾性変形可能な弾性止水環状部を前記環状切除部及び環状溝との間で液密に設ける工程と、前記既設管及び前記弾性止水環状部の内側に、前記弾性止水環状部を跨いで且つ前記弾性止水環状部との間で液密となる鋼管を嵌合する工程と、前記既設管及び前記鋼管の内側にライニング管を配置する工程を含むことを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、既設管が人孔の周壁の管孔に嵌合して接続されている既設管人孔接続部の耐震化を図る既設管人孔接続部の耐震化工法であって、前記人孔の周壁の前記管孔に嵌合している前記既設管の、前記人孔の周壁の内周壁面と外周壁面を超えない範囲の一部分を環状に切除して前記人孔の周壁の前記管孔内に環状切除部を形成する工程と、前記人孔の周壁の前記管孔の内壁に、該内壁における前記既設管の一部分を切除して形成された環状切除部に開放された部分を、前記環状切除部に沿って環状に切除して前記環状切除部と連通する環状溝を形成する工程と、前記既設管の内側に、前記環状切除部を跨いで鋼管を嵌合する工程と、前記人孔の周壁の前記管孔内に形成した環状切除部及び環状溝内に弾性変形可能な弾性止水環状部を環状切除部,環状溝及び鋼管との間で液密に設ける工程と、前記既設管及び前記鋼管の内側にライニング管を配置する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の既設管人孔接続部の耐震化工法によれば、前記人孔の周壁の前記管孔に嵌合している前記既設管の、前記人孔の周壁の内周壁面と外周壁面を超えない所定の範囲の部分を環状に切除するので、カッターは人孔の周壁の外に突出せず、このため人孔の周壁の外周壁面と既設管の周囲との間は閉じられた状態にあり、外周壁面と既設管の周囲との間から人孔の周壁の管孔内へ人孔の周壁の外にある土砂が流入することを防止でき、また水の流入も防止でき或いは最小限に抑えることができることになり、作業を容易に行うことができ、また、カッターにより人孔の周壁の外周囲に近接して存在する地下ケーブルや各種流体用埋設管等の埋設物に傷を付けるおそれがない。また、前記既設管における所定の範囲の部分を環状に切除する作業に際し、既設管の端部前面のインバートコンクリートを切除する必要がなく、これにより工事の作業性及び作業時間の短縮化を図ることができる。
【0016】
また、前記人孔の周壁の前記管孔内に形成した環状切除部内に弾性変形可能な弾性止水環状部を環状切除部との間で液密に設け、前記既設管及び前記弾性止水環状部の内側に、前記弾性止水環状部を跨いでライニング管を配置するので、ライニング管が既設管としての役割を果たし、そして、地震が発生したとき、地震により生じるライニング管で構成される既設管と人孔の周壁との動きの違いを弾性止水環状部が吸収することにより既設管人孔接続部が地震動で破壊されるのを防止することができ、また、地震による既設管と人孔の周壁との動きの違いにより、管孔内に嵌合している既設管の端部に破壊があってもライニング管で十分補うことができ、既設管としての機能を損ねるおそれはない。
【0017】
請求項2に記載の既設管人孔接続部の耐震化工法によれば、前記人孔の周壁の前記管孔に嵌合している前記既設管の、前記人孔の周壁の内周壁面と外周壁面を超えない所定の範囲の部分を環状に切除するので、カッターは人孔の周壁の外に突出せず、このため人孔の周壁の外周壁面と既設管の周囲との間は閉じられた状態にあり、外周壁面と既設管の周囲との間から人孔の周壁の管孔内へ人孔の周壁の外にある土砂が流入することを防止でき、また水の流入も防止でき或いは最小限に抑えることができることになり、作業を容易に行うことができ、また、カッターにより人孔の周壁の外周囲に近接して存在する地下ケーブルや各種流体用埋設管等の埋設物に傷を付けるおそれがない。また、前記既設管における所定の範囲の部分を環状に切除する作業に際し、既設管の端部前面のインバートコンクリートを切除する必要がなく、これにより工事の作業性及び作業時間の短縮化を図ることができる。
【0018】
また、前記人孔の周壁の前記管孔内に形成した環状切除部内に弾性変形可能な弾性止水環状部を環状切除部との間で液密に設け、前記既設管及び前記弾性止水環状部の内側に、前記弾性止水環状部を跨いで且つ前記弾性止水環状部との間で液密となる鋼管を嵌合し、前記既設管及び前記鋼管の内側にライニング管を配置するので、前記鋼管とライニング管とが既設管としての役割を果たし、そして、地震が発生したとき、地震により生じる鋼管及びライニング管で構成される既設管と人孔の周壁との動きの違いを弾性止水環状部が吸収することにより既設管人孔接続部が地震動で破壊されるのを防止することができ、また、地震による既設管と人孔の周壁との動きの違いにより、管孔内に嵌合している既設管の端部に破壊があっても前記鋼管とライニング管で十分補うことができ、既設管としての機能を損ねるおそれはない。
【0019】
請求項3に記載の既設管人孔接続部の耐震化工法によれば、前記人孔の周壁の前記管孔に嵌合している前記既設管の、前記人孔の周壁の内周壁面と外周壁面を超えない所定の範囲の部分を環状に切除するので、カッターは人孔の周壁の外に突出せず、このため人孔の周壁の外周壁面と既設管の周囲との間は閉じられた状態にあり、外周壁面と既設管の周囲との間から人孔の周壁の管孔内へ人孔の周壁の外にある土砂が流入することを防止でき、また水の流入も防止でき或いは最小限に抑えることができることになり、作業を容易に行うことができ、また、カッターにより人孔の周壁の外周囲に近接して存在する地下ケーブルや各種流体用埋設管等の埋設物に傷を付けるおそれがない。また、前記既設管における所定の範囲の部分を環状に切除する作業に際し、既設管の端部前面のインバートコンクリートを切除する必要がなく、これにより工事の作業性及び作業時間の短縮化を図ることができる。
【0020】
また、前記既設管の内側に、前記環状切除部を跨いで鋼管を嵌合し、前記人孔の周壁の前記管孔内に形成した環状切除部内に弾性変形可能な弾性止水環状部を環状切除部及び鋼管との間で液密に設けるので、この弾性止水環状部が弾性止水材を型枠に注入することにより現場成形されて設けられる場合、前記鋼管が弾性止水環状部の成形型枠を兼ねるものとなり、弾性止水環状部を成形するための型枠を用意する必要がなくなる。
【0021】
また、前記既設管及び前記鋼管の内側にライニング管を配置するので、前記鋼管とライニング管とが既設管としての役割を果たし、地震が発生したとき、地震により生じる鋼管及びライニング管で構成される既設管と人孔の周壁との動きの違いを弾性止水環状部が吸収することにより既設管人孔接続部が地震動で破壊されるのを防止することができ、また、地震による既設管と人孔の周壁との動きの違いにより、管孔内に嵌合している既設管の端部に破壊があっても前記鋼管とライニング管で十分補うことができ、既設管としての機能を損ねるおそれはない。
【0022】
請求項4に記載の既設管人孔接続部の耐震化工法によれば、前記人孔の周壁の前記管孔に嵌合している前記既設管の、前記人孔の周壁の内周壁面と外周壁面を超えない範囲の一部分を環状に切除して前記人孔の周壁の前記管孔内に環状切除部をし、前記人孔の周壁の前記管孔の内壁に、該内壁における前記既設管の一部分を切除して形成された環状切除部に開放された部分を、前記環状切除部に沿って環状に切除して前記環状切除部と連通する環状溝を形成するので、かかる作業ではカッターは人孔の周壁の外に突出せず、このため人孔の周壁の外周壁面と既設管の周囲との間は閉じられた状態にあり、外周壁面と既設管の周囲との間から人孔の周壁の管孔内へ人孔の周壁の外にある土砂が流入することを防止でき、また水の流入も防止でき或いは最小限に抑えることができることになり、作業を容易に行うことができ、また、カッターにより人孔の周壁の外周囲に近接して存在する地下ケーブルや各種流体用埋設管等の埋設物に傷を付けるおそれがない。また、前記既設管における所定の範囲の部分を環状に切除する作業及び前記人孔の周壁の前記管孔の内壁に環状溝を形成する作業に際し、既設管の端部前面のインバートコンクリートを切除する必要がなく、これにより工事の作業性及び作業時間の短縮化を図ることができる。
【0023】
また、前記人孔の周壁の前記管孔内に形成した前記環状切除部及び環状溝内に弾性変形可能な弾性止水環状部を前記環状切除部及び環状溝との間で液密に設け、前記既設管及び前記弾性止水環状部の内側に、前記弾性止水環状部を跨いでライニング管を配置するので、ライニング管が既設管としての役割を果たし、そして、地震が発生したとき、地震により生じるライニング管で構成される既設管と人孔の周壁との動きの違いを弾性止水環状部で吸収するが、弾性止水環状部は前記人孔の周壁の前記管孔内に形成した前記環状切除部及びこれと連通する環状溝内に設けられるので、弾性止水環状部の肉厚が大きくとれ、弾性止水環状部の変形量も大きいことから、ライニング管で構成される既設管と人孔の周壁との動きの違いを効果的に吸収することができ、既設管人孔接続部が地震動で破壊されるのを防止することができる。また、地震による既設管と人孔の周壁との動きの違いにより、管孔内に嵌合している既設管の端部に破壊があってもライニング管で十分補うことができ、既設管としての機能を損ねるおそれはない。
【0024】
請求項5に記載の既設管人孔接続部の耐震化工法によれば、前記人孔の周壁の前記管孔に嵌合している前記既設管の、前記人孔の周壁の内周壁面と外周壁面を超えない範囲の一部分を環状に切除して前記人孔の周壁の前記管孔内に環状切除部をし、前記人孔の周壁の前記管孔の内壁に、該内壁における前記既設管の一部分を切除して形成された環状切除部に開放された部分を、前記環状切除部に沿って環状に切除して前記環状切除部と連通する環状溝を形成するので、かかる作業ではカッターは人孔の周壁の外に突出せず、このため人孔の周壁の外周壁面と既設管の周囲との間は閉じられた状態にあり、外周壁面と既設管の周囲との間から人孔の周壁の管孔内へ人孔の周壁の外にある土砂が流入することを防止でき、また水の流入も防止でき或いは最小限に抑えることができることになり、作業を容易に行うことができ、また、カッターにより人孔の周壁の外周囲に近接して存在する地下ケーブルや各種流体用埋設管等の埋設物に傷を付けるおそれがない。また、前記既設管における所定の範囲の部分を環状に切除する作業及び前記人孔の周壁の前記管孔の内壁に環状溝を形成する作業に際し、既設管の端部前面のインバートコンクリートを切除する必要がなく、これにより工事の作業性及び作業時間の短縮化を図ることができる。
【0025】
また、前記人孔の周壁の前記管孔内に形成した前記環状切除部及び環状溝内に弾性変形可能な弾性止水環状部を前記環状切除部及び環状溝との間で液密に設け、前記既設管及び前記弾性止水環状部の内側に、前記弾性止水環状部を跨いで且つ前記弾性止水環状部との間で液密となる鋼管を嵌合し、前記既設管及び前記鋼管の内側にライニング管を配置するので、前記鋼管とライニング管が既設管としての役割を果たし、そして、地震が発生したとき、地震により生じる鋼管及びライニング管で構成される既設管と人孔の周壁との動きの違いを弾性止水環状部で吸収するが、弾性止水環状部は前記人孔の周壁の前記管孔内に形成した前記環状切除部及びこれと連通する環状溝内に設けられるので、弾性止水環状部の肉厚が大きくとれ、弾性止水環状部の変形量も大きいことから、ライニング管で構成される既設管と人孔の周壁との動きの違いを効果的に吸収することができ、既設管人孔接続部が地震動で破壊されるのを防止することができる。また、地震による既設管と人孔の周壁との動きの違いにより、管孔内に嵌合している既設管の端部に破壊があっても前記鋼管とライニング管で十分補うことができ、既設管としての機能を損ねるおそれはない。
【0026】
請求項6に記載の既設管人孔接続部の耐震化工法によれば、前記人孔の周壁の前記管孔に嵌合している前記既設管の、前記人孔の周壁の内周壁面と外周壁面を超えない範囲の一部分を環状に切除して前記人孔の周壁の前記管孔内に環状切除部をし、前記人孔の周壁の前記管孔の内壁に、該内壁における前記既設管の一部分を切除して形成された環状切除部に開放された部分を、前記環状切除部に沿って環状に切除して前記環状切除部と連通する環状溝を形成するので、かかる作業ではカッターは人孔の周壁の外に突出せず、このため人孔の周壁の外周壁面と既設管の周囲との間は閉じられた状態にあり、外周壁面と既設管の周囲との間から人孔の周壁の管孔内へ人孔の周壁の外にある土砂が流入することを防止でき、また水の流入も防止でき或いは最小限に抑えることができることになり、作業を容易に行うことができ、また、カッターにより人孔の周壁の外周囲に近接して存在する地下ケーブルや各種流体用埋設管等の埋設物に傷を付けるおそれがない。また、前記既設管における所定の範囲の部分を環状に切除する作業及び前記人孔の周壁の前記管孔の内壁に環状溝を形成する作業に際し、既設管の端部前面のインバートコンクリートを切除する必要がなく、これにより工事の作業性及び作業時間の短縮化を図ることができる。
【0027】
また、前記既設管の内側に、前記環状切除部を跨いで鋼管を嵌合し、前記人孔の周壁の前記管孔内に形成した環状切除部及び環状溝内に弾性変形可能な弾性止水環状部を環状切除部,環状溝及び鋼管との間で液密に設けるので、この弾性止水環状部が弾性止水材を型枠に注入することにより現場成形されて設けられる場合、前記鋼管が弾性止水環状部の成形型枠を兼ねるものとなり、弾性止水環状部を成形するための型枠を用意する必要がなくなる。
【0028】
また、前記既設管及び前記鋼管の内側にライニング管を配置するので、前記鋼管とライニング管とが既設管としての役割を果たし、そして、地震が発生したとき、地震により生じる鋼管及びライニング管で構成される既設管と人孔の周壁との動きの違いを弾性止水環状部で吸収するが、弾性止水環状部は前記人孔の周壁の前記管孔内に形成した前記環状切除部及びこれと連通する環状溝内に設けられるので、弾性止水環状部の肉厚が大きくとれ、弾性止水環状部の変形量も大きいことから、ライニング管で構成される既設管と人孔の周壁との動きの違いを効果的に吸収することができ、既設管人孔接続部が地震動で破壊されるのを防止することができる。また、地震による既設管と人孔の周壁との動きの違いにより、管孔内に嵌合している既設管の端部に破壊があっても前記鋼管とライニング管で十分補うことができ、既設管としての機能を損ねるおそれはない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る既設管人孔接続部の耐震化工法の実施の第1例の工程で、工事前の状態を示す縦断面図である。
【図2】本発明に係る既設管人孔接続部の耐震化工法の実施の第1例の工程で、人孔の周壁の管孔に嵌合している既設管の一部分を環状に切除した状態を示す縦断面図である。
【図3】第1例の工程で、人孔の周壁の管孔に形成された環状切除部内に弾性止水環状部を設けた状態を示す縦断面図である。
【図4】第1例の工程で、既設管及び弾性止水環状部の内側にライニング管を配置した状態を示す縦断面図である。
【図5】第1例の工程で、ライニング管の他例を示す縦断面図である。
【図6】本発明に係る既設管人孔接続部の耐震化工法の実施の第2例の工程で、人孔の周壁の管孔に嵌合している既設管の一部分を環状に切除した状態を示す縦断面図である。
【図7】第2例の工程で、人孔の周壁の管孔に形成された環状切除部内に弾性止水環状部を設けた状態を示す縦断面図である。
【図8】第2例の工程で、既設管及び弾性止水環状部の内側に鋼管を液密に嵌合した状態を示す縦断面図である。
【図9】第2例の工程で、既設管及び鋼管の内側にライニング管を配置した状態を示す縦断面図である。
【図10】本発明に係る既設管人孔接続部の耐震化工法の実施の第3例の工程で、人孔の周壁の管孔に嵌合している既設管の一部分を環状に切除した状態を示す縦断面図である。
【図11】第3例の工程で、既設管の内側に環状切除部を跨いで鋼管を嵌合した状態を示す縦断面図である。
【図12】第3例の工程で、環状切除部内に弾性止水環状部を液密に設けた状態を示す縦断面図である。
【図13】第3例の工程で、既設管及び鋼管の内側にライニング管を配置した状態を示す縦断面図である。
【図14】本発明に係る既設管人孔接続部の耐震化工法の実施の第4例の工程で、人孔の周壁の管孔に嵌合している既設管の一部分を切除して環状切除部を形成し、人孔の周壁の管孔の内壁に、環状切除部に開放された部分を切除して環状切除部と連通する環状溝を形成した状態を示す縦断面図である。
【図15】第4例の工程で、環状切除部及び環状溝内に弾性止水環状部を液密に設けた状態を示す縦断面図である。
【図16】第4例の工程で、既設管及び弾性止水環状部の内側にライニング管を配置した状態を示す縦断面図である。
【図17】本発明に係る既設管人孔接続部の耐震化工法の実施の第5例の工程で、人孔の周壁の管孔に嵌合している既設管の一部分を切除して環状切除部を形成し、人孔の周壁の管孔の内壁に、環状切除部に開放された部分を切除して環状切除部と連通する環状溝を形成した状態を示す縦断面図である。
【図18】第5例の工程で、人孔の周壁の管孔に形成された環状切除部及び環状溝内に弾性止水環状部を液密に設けた状態を示す縦断面図である。
【図19】第5例の工程で、既設管及び弾性止水環状部の内側に鋼管を液密に嵌合した状態を示す縦断面図である。
【図20】第5例の工程で、既設管及び鋼管の内側にライニング管を配置した状態を示す縦断面図である。
【図21】本発明に係る既設管人孔接続部の耐震化工法の実施の第6例の工程で、人孔の周壁の管孔に嵌合している既設管の一部分を切除して環状切除部を形成し、人孔の周壁の管孔の内壁に、環状切除部に開放された部分を切除して環状切除部と連通する環状溝を形成した状態を示す縦断面図である。
【図22】第6例の工程で、既設管の内側に環状切除部を跨いで鋼管を嵌合した状態を示す縦断面図である。
【図23】第6例の工程で、環状切除部及び弾性止水環状部内に弾性止水環状部を液密に設けた状態を示す縦断面図である。
【図24】第6例の工程で、既設管及び鋼管の内側にライニング管を配置した状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る既設管人孔接続部の耐震化工法を実施するための形態を、図面に示す実施例を参照して詳細に説明する。
【0031】
図1乃至図5は本発明に係る既設管人孔接続部の耐震化工法を実施する第1例を示すものであり、図1は工事前の状態を示す縦断面図、図2は人孔の周壁の管孔に嵌合している既設管の一部分を環状に切除した状態を示す縦断面図、図3は人孔の周壁の管孔に形成された環状切除部内に弾性止水環状部を設けた状態を示す縦断面図、図4は既設管及び弾性止水環状部の内側にライニング管を配置した状態を示す縦断面図、図5はライニング管の他例を示す縦断面図である。
【0032】
図1は本例の工法を実施する人孔(マンホール)の一例を示しており、同図に示すように、工事前の状態では地盤1の中に敷設されている既設管2は、人孔3のところで該人孔3の基礎周壁部4aの管孔5に差し込まれて接続されて既設管人孔接続部6が形成されている。人孔3は、コンクリートで構築された基礎周壁部4aの上に、予めコンクリートで成型された成型周壁部4bが設置されて周壁4が形成され、上端の開口部7が開閉可能に蓋8で閉塞されている。また、人孔3の底部にはインバートコンクリート9が打設されている。
【0033】
このような構造の既設管人孔接続部6に対して行う本例の耐震化工法は、先ず、図2に示すように、人孔3の基礎周壁部4aの管孔5に嵌合している既設管2における、前記した人孔3の周壁4の内周壁面10と外周壁面11を超えない所定の範囲の部分を環状に切除し、人孔3の基礎周壁部4aの管孔5内に環状切除部12を形成する。
【0034】
前記した人孔3の基礎周壁部4aの内周壁面10と外周壁面11を超えないとは、環状切除部12の先端側と後端側が基礎周壁部4aの内周壁面10と外周壁面11の内側に位置させることであって、内周壁面10と外周壁面11から3cm以上内側にあることが好ましいが、特に限定されない。また、所定の範囲とは、この範囲を切除して形成される環状切除部12に後述する弾性止水環状部を設けたとき、地震により生じる既設管2と人孔3の周壁4との動きの違いを弾性止水環状部で吸収することができる長さを確保できる範囲であり、既設管2と人孔3の基礎周壁部4aとの動きの違いを弾性止水環状部で吸収することができる限り、特に限定されるものではない。
【0035】
既設管2の端部の切除にあっては、特に限定されないが、本例では円盤状のカッターを用い、このカッターを既設管2内に挿入して、人孔3の周壁4の管孔5に嵌合している既設管2における、前記した人孔3の周壁4の内周壁面10と外周壁面11を超えない所定の範囲の先端側と後端側を切断し、この切断した既設管2の部分をハツって管孔5から除去する。
【0036】
次に、図3に示すように、人孔3の基礎周壁部4aの管孔5内に形成した環状切除部12内に弾性変形可能な弾性止水環状部13を環状切除部12との間で液密に設ける。
【0037】
弾性止水環状部13は、例えばシリコン樹脂、軟性エポキシウレタン等の軟性樹脂や吸水材を含有する水膨張ゴム材、合成ゴム等の弾性止水材を用いて成形される。弾性止水環状部13を環状切除部12内に設ける手段としては、環状切除部12内に、弾性止水材を環状切除部12とほぼ同じ巾で且つ既設管2の肉厚とほぼ等しい厚さに環状に貼り付けて弾性止水環状部13を形成して設けてもよく、或いは弾性止水材で環状切除部12とほぼ同じ巾で且つ既設管2の肉厚とほぼ等しい厚さの弾性止水環状部13を成形し、この弾性止水環状部13を環状切除部12に挿入して設けてもよい。本例では、弾性止水環状部13を環状切除部12より僅かに広巾で且つ既設管2の肉厚より内径方向に僅かに厚くし、環状切除部12に圧入するようにして設けている。
【0038】
また、環状切除部12に挿入して設けた弾性止水環状部13は、弾性止水環状部13と管孔5の内壁との間及び弾性止水環状部13と後述するライニング管の外周面との間が止水されればよい。
【0039】
本例では、弾性止水環状部13は管孔5の内壁面及び管孔5の内周壁面10側に残っている既設管2aの後端面と接着剤で液密状に接着され、管孔5の外周壁面11側にある既設管2bの先端面とは非接着となっている。また、弾性止水環状部13は後述するライニング管との間は、圧接により液密が図られ、両者間は非接着となっている。
【0040】
次に、図4に示すように、既設管2及び弾性止水環状部13の内側に、弾性止水環状部13を跨いでライニング管14を配置する。
【0041】
ライニング管14にあっては、本例では、硬化可能な軟質状態にある筒状ライニング材15を既設管2及び弾性止水環状部13の内側に挿入し、既設管2及び弾性止水環状部13の内壁に筒状ライニング材15の周壁面を押し付けて硬化させることによりライニング管14を形成し配置している。
【0042】
既設管2及び弾性止水環状部13の内側に、筒状ライニング材15を挿入し、既設管2及び弾性止水環状部13の内壁にライニング管14を形成し配置する方法にあっては、公知となっている技術が用いられる。
【0043】
例えば、特公平7−4853号公報や特開2005−90581号公報で開示されている技術を用い、未硬化の硬化性樹脂を含浸または塗布した可撓性がある筒状ライニング材15を既設管2及び弾性止水環状部13の内側に挿入し、既設管2及び弾性止水環状部13の内壁に筒状ライニング材15の周壁面を押し付けて硬化性樹脂を硬化させることによりライニング管14を形成し配置することができる。筒状ライニング材15は、不浸透性内側フィルム層と硬化性樹脂を含浸した樹脂吸収性内層と不浸透性外側フィルム層の3層構造となっている。硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂或いは常温硬化性樹脂が挙げられ、フェルトに含浸されて樹脂吸収性内層となっている。また、不浸透性内側フィルム層としてはポリウレタンフィルムが使用され、不浸透性外側フィルム層としてはポリエチレンフィルムが使用されるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
また、特開平10−278113号公報や特開平6−293071号公報で開示されている技術を用い、熱可塑性樹脂で成型された硬質乃至半硬質の筒状ライニング材15を既設管2及び弾性止水環状部13の内部に挿入し、筒状ライニング材15を加熱して軟化させ加圧して膨張させることにより既設管2及び弾性止水環状部13の内壁に押し付け硬化させることによりライニング管14を形成し配置するようにしてもよい。
【0045】
既設管2及び弾性止水環状部13の内部に、筒状ライニング材15を挿入する場合、2つの人孔3で区切られている既設管2の全長に渡って挿入し、既設管2及び弾性止水環状部13の内部に、筒状ライニング材15によるライニング管14を形成し配置することが好ましい。
【0046】
また、ライニング管14の他例として、図5に示すように、例えば、特開平10−82497号公報で開示されている技術を用い、未硬化の硬化性樹脂を含浸または塗布した可撓性があるシート状ライニング材15aを補修機に巻き付け、この補修機を既設管2及び弾性止水環状部13の内部に挿入して、既設管2及び弾性止水環状部13に跨るように位置させ、空気圧によりシート状ライニング材15aを膨張させてシート状ライニング材15aを既設管2及び弾性止水環状部13の内壁に押し付けて硬化性樹脂を硬化させることによりライニング管14を形成し配置することができる。
【0047】
また、図示しないが、ライニング管14を形成し既設管2及び弾性止水環状部13の内部に配置する他例として、例えば、特公平4−44153号公報や特開2003−191329号公報に開示されている、帯状部材を順次円周方向に折り込み、かつ該帯状部材の側端部を互いに接合して螺旋巻きによるライニング管14を形成しながら、該ライニング管14を既設管2及び弾性止水環状部13の内部に送り込んで配置するようにしてもよい。
【0048】
このようにして、既設管人孔接続部の耐震化工法の実施の工程が完了する。
【0049】
なお、前記既設管人孔接続部6の耐震化は、図面では、図上左側にある既設管人孔接続部6の耐震化の工程が示されているが、図上右側の既設管人孔接続部6についても、前記と同様の工程で耐震化が実施される。
【0050】
上記の既設管人孔接続部の耐震化工法によれば、管孔5に嵌合している既設管2の、人孔3の基礎周壁部4aの内周壁面10と外周壁面11を超えない所定の範囲の部分を環状に切除するので、カッターは基礎周壁部4aの外に突出せず、このため基礎周壁部4aの外周壁面11と既設管2の周囲との間は閉じられた状態にあり、外周壁面11と既設管2の周囲との間から管孔5内へ基礎周壁部4aの外にある土砂が流入することを防止でき、また水の流入も防止でき或いは最小限に抑えることができることになり、作業を容易に行うことができ、また、カッターにより基礎周壁部4aの外周囲に近接して存在する地下ケーブルや各種流体用埋設管等の埋設物に傷を付けるおそれがない。また、既設管2における所定の範囲の部分を環状に切除する作業に際し、既設管2の端部前面のインバートコンクリート9を切除する必要がなく、これにより工事の作業性及び作業時間の短縮化が図れる。
【0051】
また、管孔5内に形成した環状切除部12内に弾性変形可能な弾性止水環状部13を環状切除部12との間で液密に設け、既設管2及び弾性止水環状部13の内側に、弾性止水環状部13を跨いでライニング管14を配置するので、ライニング管14が既設管2としての役割を果たし、そして、地震が発生したとき、地震により生じるライニング管14で構成される既設管2と人孔3の周壁4との動きの違いを弾性止水環状部13が吸収することにより既設管人孔接続部6が地震動で破壊されるのを防止することができ、また、地震による既設管2と人孔3の周壁4との動きの違いにより、管孔5内に嵌合している既設管2bの端部に破壊があってもライニング管14で十分補うことができ、既設管2としての機能を損ねるおそれはない。
【0052】
本例では、弾性止水環状部13は管孔5の内壁面及び管孔5の内周壁面10側に残っている既設管2aの後端面と接着剤で液密状に接着され、管孔5の外周壁面11側にある既設管2bの先端面とは非接着となっているので、既設管2が管孔5から抜け出し方向(管孔5の外周壁面11側)へ動いたとき、既設管2aの先端面が弾性止水環状部13から離反し、弾性止水環状部13を伴わず、また管孔5内に嵌合している既設管2bの端部に破壊があっても管孔5の内周壁面10側に残っている既設管2aと弾性止水環状部13はその影響を受けないことから、管孔5の内壁とライニング管14との間の止水は一層確実に維持することができる。
【0053】
図6乃至図9は本発明に係る既設管人孔接続部の耐震化工法を実施する第2例を示すものであり、図6は人孔の周壁の管孔に嵌合している既設管の一部分を環状に切除した状態を示す縦断面図、図7は人孔の周壁の管孔に形成された環状切除部内に弾性止水環状部を設けた状態を示す縦断面図、図8は既設管及び弾性止水環状部の内側に鋼管を液密に嵌合した状態を示す縦断面図、図9は既設管及び鋼管の内側にライニング管を配置した状態を示す縦断面図である。
【0054】
本例の工法を実施する人孔(マンホール)は、第1例を実施する図1に示す人孔と同様であり、同図を援用して説明を省略する。
【0055】
図1に示す構造の既設管人孔接続部6に対して行う本例の耐震化工法は、先ず、図6に示すように、人孔3の基礎周壁部4aの管孔5に嵌合している既設管2における、前記した人孔3の周壁4の内周壁面10と外周壁面11を超えない所定の範囲の部分を環状に切除し、人孔3の基礎周壁部4aの管孔5内に環状切除部12を形成する。
【0056】
次に、図7に示すように、人孔3の基礎周壁部4aの管孔5内に形成した環状切除部12内に弾性変形可能な弾性止水環状部13を環状切除部12との間で液密に設ける。
【0057】
以上の工程は、前記した第1例と同様なので、第1例の説明を援用し、この工程の詳細な説明を省略する。
【0058】
本例では、後述するように、弾性止水環状部13の内側に鋼管を液密に嵌合するが、弾性止水環状部13を鋼管の外周面に接着させてもよく、または、鋼管の外周面に圧接させてもよい。
【0059】
次に、図8に示すように、既設管2及び弾性止水環状部13の内側に、弾性止水環状部13を跨いで且つ弾性止水環状部13との間で液密となる鋼管16を嵌合する。この鋼管16はステンレス製が好ましい。本例では、鋼管16の外径が既設管2の内径と同径に形成されている。この鋼管16と弾性止水環状部13とは、前記したように、接着させてもよく、或いは圧接させてもよい。本例では、鋼管16と弾性止水環状部13とは圧接させたものとなっている。また、鋼管16と既設管2との間にあっては、鋼管16と既設管2aとを接着剤で液密状に接着し、鋼管16と既設管2aとを非接着とすることが好ましい。本例では、鋼管16と既設管2aとを接着し、鋼管16と既設管2aとを非接着としている。
【0060】
次に、図9に示すように、既設管2及び鋼管16の内側にライニング管14を配置する。この工程も前記した第1例と同様なので、第1例の説明を援用し、この工程の詳細な説明を省略する。
【0061】
このようにして、既設管人孔接続部の耐震化工法の実施の工程が完了する。
【0062】
なお、前記既設管人孔接続部6の耐震化は、図面では、図上左側にある既設管人孔接続部6の耐震化の工程が示されているが、図上右側の既設管人孔接続部6についても、前記と同様の工程で耐震化が実施される。
【0063】
上記の既設管人孔接続部の耐震化工法によれば、第1例と同様に、管孔5に嵌合している既設管2の、人孔3の基礎周壁部4aの内周壁面10と外周壁面11を超えない所定の範囲の部分を環状に切除するので、カッターは基礎周壁部4aの外に突出せず、このため基礎周壁部4aの外周壁面11と既設管2の周囲との間は閉じられた状態にあり、外周壁面11と既設管2の周囲との間から管孔5内へ基礎周壁部4aの外にある土砂が流入することを防止でき、また水の流入も防止でき或いは最小限に抑えることができることになり、作業を容易に行うことができ、また、カッターにより基礎周壁部4aの外周囲に近接して存在する地下ケーブルや各種流体用埋設管等の埋設物に傷を付けるおそれがない。また、既設管2における所定の範囲の部分を環状に切除する作業に際し、既設管2の端部前面のインバートコンクリート9を切除する必要がなく、これにより工事の作業性及び作業時間の短縮化が図れる。
【0064】
また、管孔5内に形成した環状切除部12内に弾性変形可能な弾性止水環状部13を環状切除部12との間で液密に設け、既設管2及び弾性止水環状部13の内側に、弾性止水環状部13を跨いで且つ弾性止水環状部13との間で液密となる鋼管16を嵌合し、既設管2及び鋼管16の内側にライニング管14を配置するので、鋼管16とライニング管14とが既設管2としての役割を果たし、そして、地震が発生したとき、地震により生じる鋼管16及びライニング管14で構成される既設管2と人孔3の周壁4との動きの違いを弾性止水環状部13が吸収することにより既設管人孔接続部6が地震動で破壊されるのを防止することができ、また、地震による既設管2と人孔3の周壁4との動きの違いにより、管孔5内に嵌合している既設管2bの端部に破壊があっても鋼管16とライニング管14で十分補うことができ、既設管2としての機能を損ねるおそれはない。
【0065】
図10乃至図13は本発明に係る既設管人孔接続部の耐震化工法を実施する第3例を示すものであり、図10は人孔の周壁の管孔に嵌合している既設管の一部分を環状に切除した状態を示す縦断面図、図11は既設管の内側に環状切除部を跨いで鋼管を嵌合した状態を示す縦断面図、図12は環状切除部内に弾性止水環状部を液密に設けた状態を示す縦断面図、図13は既設管及び鋼管の内側にライニング管を配置した状態を示す縦断面図である。
【0066】
本例の工法を実施する人孔(マンホール)は、第1例を実施する図1に示す人孔と同様であり、同図を援用して説明を省略する。
【0067】
図1に示す構造の既設管人孔接続部6に対して行う本例の耐震化工法は、先ず、図10に示すように、人孔3の基礎周壁部4aの管孔5に嵌合している既設管2における、前記した人孔3の周壁4の内周壁面10と外周壁面11を超えない所定の範囲の部分を環状に切除し、人孔3の基礎周壁部4aの管孔5内に環状切除部12を形成する。
【0068】
この工程は、前記した第1例と同様なので、第1例の説明を援用し、この工程の詳細な説明を省略する。
【0069】
次に、図11に示すように、既設管2の内側に、前記の環状切除部12を跨いで鋼管16を嵌合する。この鋼管16は前記した第1例と同様にステンレス製が好ましく、鋼管16の外径は既設管2の内径と同径に形成されている。
【0070】
次に、図12に示すように、前記の環状切除部12内に弾性変形可能な弾性止水環状部13を環状切除部12及び鋼管16との間で液密に設ける。
【0071】
弾性止水環状部12は、例えばシリコン樹脂、軟性エポキシウレタン等の軟性樹脂からなる弾性止水材を環状切除部12内に注入することにより弾性止水環状部12を形成して設ける。環状切除部12内への弾性止水材の注入は、本例では、図11に示すように、既設管2の内側に鋼管16を嵌合した後、基礎周壁部4aに内周壁面10側から環状切除部12内と連通する注入孔17を形成しておき、図12に示すように、この注入孔17から環状切除部12内へ弾性止水材を注入している。注入孔17は注入した弾性止水材で塞ぐ。
【0072】
次に、図13に示すように、既設管2及び鋼管16の内側にライニング管14を配置する。この工程は前記した第1例と同様なので、第1例の説明を援用し、この工程の詳細な説明を省略する。
【0073】
このようにして、既設管人孔接続部の耐震化工法の実施の工程が完了する。
【0074】
なお、前記既設管人孔接続部6の耐震化は、図面では、図上左側にある既設管人孔接続部6の耐震化の工程が示されているが、図上右側の既設管人孔接続部6についても、前記と同様の工程で耐震化が実施される。
【0075】
上記の既設管人孔接続部の耐震化工法によれば、第1例と同様に、管孔5に嵌合している既設管2の、人孔3の基礎周壁部4aの内周壁面10と外周壁面11を超えない所定の範囲の部分を環状に切除するので、カッターは基礎周壁部4aの外に突出せず、このため基礎周壁部4aの外周壁面11と既設管2の周囲との間は閉じられた状態にあり、外周壁面11と既設管2の周囲との間から管孔5内へ基礎周壁部4aの外にある土砂が流入することを防止でき、また水の流入も防止でき或いは最小限に抑えることができることになり、作業を容易に行うことができ、また、カッターにより基礎周壁部4aの外周囲に近接して存在する地下ケーブルや各種流体用埋設管等の埋設物に傷を付けるおそれがない。また、既設管2における所定の範囲の部分を環状に切除する作業に際し、既設管2の端部前面のインバートコンクリート9を切除する必要がなく、これにより工事の作業性及び作業時間の短縮化が図れる。
【0076】
また、既設管2の内側に、環状切除部12を跨いで鋼管16を嵌合し、環状切除部12内に弾性変形可能な弾性止水環状部13を環状切除部12及び鋼管16との間で液密に設けるので、この弾性止水環状部13が弾性止水材を型枠に注入することにより現場成形されて設けられる場合、鋼管16が弾性止水環状部13の成形型枠を兼ねるものとなり、弾性止水環状部13を成形するための型枠を用意する必要がなくなる。
【0077】
また、既設管2及び鋼管16の内側にライニング管14を配置するので、鋼管16とライニング管14とが既設管2としての役割を果たし、そして、地震が発生したとき、地震により生じる鋼管16及びライニング管14で構成される既設管2と人孔3の周壁4との動きの違いを弾性止水環状部13が吸収することにより既設管人孔接続部6が地震動で破壊されるのを防止することができ、また、地震による既設管2と人孔3の周壁4との動きの違いにより、管孔5内に嵌合している既設管2bの端部に破壊があっても鋼管16とライニング管14で十分補うことができ、既設管2としての機能を損ねるおそれはない。
【0078】
図14乃至図16は本発明に係る既設管人孔接続部の耐震化工法を実施する第4例を示すものであり、図14は人孔の周壁の管孔に嵌合している既設管の一部分を切除して環状切除部を形成し、人孔の周壁の管孔の内壁に、環状切除部に開放された部分を切除して環状切除部と連通する環状溝を形成した状態を示す縦断面図、図15は環状切除部及び環状溝内に弾性止水環状部を液密に設けた状態を示す縦断面図、図16は既設管及び弾性止水環状部の内側にライニング管を配置した状態を示す縦断面図である。
【0079】
本例の工法を実施する人孔(マンホール)は、第1例を実施する図1に示す人孔と同様であり、同図を援用して説明を省略する。
【0080】
図1に示す構造の既設管人孔接続部6に対して行う本例の耐震化工法は、先ず、図14に示すように、人孔3の基礎周壁部4aの管孔5に嵌合している既設管2における、前記した人孔3の周壁4の内周壁面10と外周壁面11を超えない所定の範囲の部分を環状に切除し、人孔3の基礎周壁部4aの管孔5内に環状切除部12を形成する。
【0081】
更に、人孔3の基礎周壁部4aの管孔5内壁に、該内壁における前記した既設管2の一部分を切除して形成した環状切除部12に開放された部分を、環状切除部12に沿って環状に所定深さ切除して環状切除部12と連通する環状溝18を形成する。
【0082】
環状切除部12の形成する工程にあっては、前記した第1例と同様なので、第1例の説明を援用し、詳細な説明を省略する。また、環状溝18の形成する工程にあっては、本例では、環状切除部12の形成する工程に連続して行うものであり、既設管2の切除と同じ手段により管孔5内壁における前記した既設管2の一部分を切除して形成した環状切除部12に開放された部分を切除する。
【0083】
次に、図15に示すように、人孔3の基礎周壁部4aの管孔5内に形成した環状切除部12及び環状溝18内に弾性変形可能な弾性止水環状部13を環状切除部12及び環状溝18との間で液密に設ける。
【0084】
弾性止水環状部13は、第1例と同様に、例えばシリコン樹脂、軟性エポキシウレタン等の軟性樹脂や吸水材を含有する水膨張ゴム材等の弾性止水材を用いて成形される。弾性止水環状部13を環状切除部12内に設ける手段としては、環状切除部12及び環状溝18内に、弾性止水材を環状切除部12及び環状溝18とほぼ同じ巾で且つ環状切除部12及び環状溝18の深さ、即ち、既設管2の内面から環状溝18の溝底までの寸法とほぼ等しい厚さに環状に貼り付けて弾性止水環状部13を形成して設けてもよく、或いは弾性止水材で環状切除部12及び環状溝18とほぼ同じ巾で且つ環状切除部12及び環状溝18の深さとほぼ等しい厚さの弾性止水環状部13を成形し、この弾性止水環状部13を環状切除部12及び環状溝18に挿入して設けてもよい。本例では、弾性止水環状部13を環状切除部12及び環状溝18より僅かに広巾で且つ環状切除部12及び環状溝18の深さより内径方向に僅かに厚くし、環状切除部12及び環状溝18に圧入するようにして設けている。
【0085】
また、環状切除部12及び環状溝18に挿入して設けた弾性止水環状部13は、弾性止水環状部13と管孔5の内壁、即ち環状溝18との間及び弾性止水環状部13と後述するライニング管の外周面との間が止水されればよい。
【0086】
本例では、弾性止水環状部13は管孔5の内壁面、即ち環状溝18の内面及び管孔5の内周壁面10側に残っている既設管2aの後端面と接着剤で液密状に接着され、管孔5の外周壁面11側にある既設管2bの先端面とは非接着となっている。また、弾性止水環状部13は後述するライニング管との間は、圧接により液密が図られ、両者間は非接着となっている。
【0087】
次に、図16に示すように、既設管2及び弾性止水環状部13の内側に、弾性止水環状部13を跨いでライニング管14を配置する。この工程は前記した第1例と同様なので、第1例の説明を援用し、この工程の詳細な説明を省略する。
【0088】
このようにして、既設管人孔接続部の耐震化工法の実施の工程が完了する。
【0089】
なお、前記既設管人孔接続部6の耐震化は、図面では、図上左側にある既設管人孔接続部6の耐震化の工程が示されているが、図上右側の既設管人孔接続部6についても、前記と同様の工程で耐震化が実施される。
【0090】
上記の既設管人孔接続部の耐震化工法によれば、管孔5に嵌合している既設管2の、人孔3の基礎周壁部4aの内周壁面10と外周壁面11を超えない所定の範囲の部分を環状に切除し、また、管孔5の内壁に、該内壁における環状切除部12に開放された部分を環状に切除するので、カッターは基礎周壁部4aの外に突出せず、このため基礎周壁部4aの外周壁面11と既設管2の周囲との間は閉じられた状態にあり、外周壁面11と既設管2の周囲との間から管孔5内へ基礎周壁部4aの外にある土砂が流入することを防止でき、また水の流入も防止でき或いは最小限に抑えることができることになり、作業を容易に行うことができ、また、カッターにより基礎周壁部4aの外周囲に近接して存在する地下ケーブルや各種流体用埋設管等の埋設物に傷を付けるおそれがない。また、既設管2における所定の範囲の部分を環状に切除する作業に際し、既設管2の端部前面のインバートコンクリート9を切除する必要がなく、これにより工事の作業性及び作業時間の短縮化が図れる。
【0091】
また、管孔5内に形成した環状切除部12及び環状溝18内に弾性変形可能な弾性止水環状部13を環状切除部12及び環状溝18との間で液密に設け、既設管2及び弾性止水環状部13の内側に、弾性止水環状部13を跨いでライニング管14を配置するので、ライニング管14が既設管2としての役割を果たし、そして、地震が発生したとき、地震により生じるライニング管14で構成される既設管2と人孔3の周壁4との動きの違いを弾性止水環状部13で吸収するが、弾性止水環状部13は管孔5内に形成した環状切除部12及びこれと連通する環状溝18内に設けられるので、弾性止水環状部13の肉厚が大きくとれ、弾性止水環状部13の変形量も大きいことから、ライニング管14で構成される既設管2と人孔3の周壁4との動きの違いを効果的に吸収することができ、既設管人孔接続部6が地震動で破壊されるのを防止することができる。また、地震による既設管2と人孔3の周壁4との動きの違いにより、管孔5内に嵌合している既設管2bの端部に破壊があってもライニング管14で十分補うことができ、既設管としての機能を損ねるおそれはない。
【0092】
本例では、弾性止水環状部13は管孔5の内壁面、即ち環状溝18の内面及び管孔5の内周壁面10側に残っている既設管2aの後端面と接着剤で液密状に接着され、管孔5の外周壁面11側にある既設管2bの先端面とは非接着となっているので、既設管2が管孔5から抜け出し方向(管孔5の外周壁面11側)へ動いたとき、既設管2aの先端面が弾性止水環状部13から離反し、弾性止水環状部13を伴わず、また管孔5内に嵌合している既設管2bの端部に破壊があっても管孔5の内周壁面10側に残っている既設管2aと弾性止水環状部13はその影響を受けないことから、管孔5の内壁とライニング管14との間の止水は一層確実に維持することができる。
【0093】
図17乃至図20は本発明に係る既設管人孔接続部の耐震化工法を実施する第5例を示すものであり、図17は人孔の周壁の管孔に嵌合している既設管の一部分を切除して環状切除部を形成し、人孔の周壁の管孔の内壁に、環状切除部に開放された部分を切除して環状切除部と連通する環状溝を形成した状態を示す縦断面図、図18は人孔の周壁の管孔に形成された環状切除部及び環状溝内に弾性止水環状部を液密に設けた状態を示す縦断面図、図19は既設管及び弾性止水環状部の内側に鋼管を液密に嵌合した状態を示す縦断面図、図20は既設管及び鋼管の内側にライニング管を配置した状態を示す縦断面図である。
【0094】
本例の工法を実施する人孔(マンホール)は、第1例を実施する図1に示す人孔と同様であり、同図を援用して説明を省略する。
【0095】
図1に示す構造の既設管人孔接続部6に対して行う本例の耐震化工法は、先ず、図17に示すように、人孔3の基礎周壁部4aの管孔5に嵌合している既設管2における、前記した人孔3の周壁4の内周壁面10と外周壁面11を超えない所定の範囲の部分を環状に切除し、人孔3の基礎周壁部4aの管孔5内に環状切除部12を形成する。
【0096】
更に、人孔3の基礎周壁部4aの管孔5内壁に、該内壁における前記した既設管2の一部分を切除して形成した環状切除部12に開放された部分を、環状切除部12に沿って環状に所定深さ切除して環状切除部12と連通する環状溝18を形成する。
【0097】
次に、図18に示すように、人孔3の基礎周壁部4aの管孔5内に形成した環状切除部12及び環状溝18内に弾性変形可能な弾性止水環状部13を環状切除部12及び環状溝18との間で液密に設ける。
【0098】
以上の工程は、前記した第4例と同様なので、第4例の説明を援用し、この工程の詳細な説明を省略する。
【0099】
本例では、後述するように、弾性止水環状部13の内側に鋼管を液密に嵌合するが、弾性止水環状部13を鋼管の外周面に接着させてもよく、または、鋼管の外周面に圧接させてもよい。
【0100】
次に、図19に示すように、既設管2及び弾性止水環状部13の内側に、弾性止水環状部13を跨いで且つ弾性止水環状部13との間で液密となる鋼管16を嵌合する。この鋼管16は、前記した第2例と同様なので、第4例の説明を援用し、この工程の詳細な説明を省略する。
【0101】
次に、図20に示すように、既設管2及び鋼管16の内側にライニング管14を配置する。この工程も前記した第1例と同様なので、第1例の説明を援用し、この工程の詳細な説明を省略する。
【0102】
このようにして、既設管人孔接続部の耐震化工法の実施の工程が完了する。
【0103】
なお、前記既設管人孔接続部6の耐震化は、図面では、図上左側にある既設管人孔接続部6の耐震化の工程が示されているが、図上右側の既設管人孔接続部6についても、前記と同様の工程で耐震化が実施される。
【0104】
上記の既設管人孔接続部の耐震化工法によれば、第4例と同様に、管孔5に嵌合している既設管2の、人孔3の基礎周壁部4aの内周壁面10と外周壁面11を超えない所定の範囲の部分を環状に切除し、また、管孔5の内壁に、該内壁における環状切除部12に開放された部分を環状に切除するので、カッターは基礎周壁部4aの外に突出せず、このため基礎周壁部4aの外周壁面11と既設管2の周囲との間は閉じられた状態にあり、外周壁面11と既設管2の周囲との間から管孔5内へ基礎周壁部4aの外にある土砂が流入することを防止でき、また水の流入も防止でき或いは最小限に抑えることができることになり、作業を容易に行うことができ、また、カッターにより基礎周壁部4aの外周囲に近接して存在する地下ケーブルや各種流体用埋設管等の埋設物に傷を付けるおそれがない。また、既設管2における所定の範囲の部分を環状に切除する作業に際し、既設管2の端部前面のインバートコンクリート9を切除する必要がなく、これにより工事の作業性及び作業時間の短縮化が図れる。
【0105】
また、管孔5内に形成した環状切除部12及び環状溝18内に弾性変形可能な弾性止水環状部13を環状切除部12及び環状溝18との間で液密に設け、既設管2及び弾性止水環状部13の内側に、弾性止水環状部13を跨いで且つ弾性止水環状部13との間で液密となる鋼管16を嵌合し、既設管2及び鋼管16の内側にライニング管14を配置するので、鋼管16とライニング管14が既設管2としての役割を果たし、そして、地震が発生したとき、地震により生じる鋼管16及びライニング管14で構成される既設管2と人孔3の周壁4との動きの違いを弾性止水環状部13で吸収するが、弾性止水環状部13は人孔3の周壁4の管孔5内に形成した環状切除部12及びこれと連通する環状溝18内に設けられるので、弾性止水環状部13の肉厚が大きくとれ、弾性止水環状部13の変形量も大きいことから、ライニング管14で構成される既設管2と人孔3の周壁4との動きの違いを効果的に吸収することができ、既設管人孔接続部6が地震動で破壊されるのを防止することができる。また、地震による既設管2と人孔3の周壁4との動きの違いにより、管孔5内に嵌合している既設管2bの端部に破壊があっても鋼管16とライニング管14で十分補うことができ、既設管2としての機能を損ねるおそれはない。
【0106】
図21乃至図24は本発明に係る既設管人孔接続部の耐震化工法を実施する第6例を示すものであり、図21は人孔の周壁の管孔に嵌合している既設管の一部分を切除して環状切除部を形成し、人孔の周壁の管孔の内壁に、環状切除部に開放された部分を切除して環状切除部と連通する環状溝を形成した状態を示す縦断面図、図22は既設管の内側に環状切除部を跨いで鋼管を嵌合した状態を示す縦断面図、図23は環状切除部及び弾性止水環状部内に弾性止水環状部を液密に設けた状態を示す縦断面図、図24は既設管及び鋼管の内側にライニング管を配置した状態を示す縦断面図である。
【0107】
図1に示す構造の既設管人孔接続部6に対して行う本例の耐震化工法は、先ず、図21に示すように、人孔3の基礎周壁部4aの管孔5に嵌合している既設管2における、前記した人孔3の周壁4の内周壁面10と外周壁面11を超えない所定の範囲の部分を環状に切除し、人孔3の基礎周壁部4aの管孔5内に環状切除部12を形成する。
【0108】
更に、人孔3の基礎周壁部4aの管孔5内壁に、該内壁における前記した既設管2の一部分を切除して形成した環状切除部12に開放された部分を、環状切除部12に沿って環状に所定深さ切除して環状切除部12と連通する環状溝18を形成する。
【0109】
この工程は、前記した第4例と同様なので、第4例の説明を援用し、この工程の詳細な説明を省略する。
【0110】
次に、図22に示すように、既設管2の内側に、前記の環状切除部12を跨いで鋼管16を嵌合する。この鋼管16は前記した第1例と同様にステンレス製が好ましく、鋼管16の外径は既設管2の内径と同径に形成されている。
【0111】
次に、図23に示すように、前記の環状切除部12及び環状溝18内に弾性変形可能な弾性止水環状部13を環状切除部12,環状溝18及び鋼管16との間で液密に設ける。
【0112】
弾性止水環状部12は、前記した第3例と同様に、例えばシリコン樹脂、軟性エポキシウレタン等の軟性樹脂からなる弾性止水材を環状切除部12及び環状溝18内に注入することにより弾性止水環状部12を形成して設ける。環状切除部12内への弾性止水材の注入は、本例では、図22に示すように、既設管2の内側に鋼管16を嵌合した後、基礎周壁部4aに内周壁面10側から環状切除部12内と連通する注入孔17を形成しておき、図12に示すように、この注入孔17から環状切除部12内へ弾性止水材を注入している。注入孔17は注入した弾性止水材で塞ぐ。
【0113】
次に、図24に示すように、既設管2及び鋼管16の内側にライニング管14を配置する。この工程は前記した第1例と同様なので、第1例の説明を援用し、この工程の詳細な説明を省略する。
【0114】
このようにして、既設管人孔接続部の耐震化工法の実施の工程が完了する。
【0115】
なお、前記既設管人孔接続部6の耐震化は、図面では、図上左側にある既設管人孔接続部6の耐震化の工程が示されているが、図上右側の既設管人孔接続部6についても、前記と同様の工程で耐震化が実施される。
【0116】
上記の既設管人孔接続部の耐震化工法によれば、第4例と同様に、管孔5に嵌合している既設管2の、人孔3の基礎周壁部4aの内周壁面10と外周壁面11を超えない所定の範囲の部分を環状に切除し、また、管孔5の内壁に、該内壁における環状切除部12に開放された部分を環状に切除するので、カッターは基礎周壁部4aの外に突出せず、このため基礎周壁部4aの外周壁面11と既設管2の周囲との間は閉じられた状態にあり、外周壁面11と既設管2の周囲との間から管孔5内へ基礎周壁部4aの外にある土砂が流入することを防止でき、また水の流入も防止でき或いは最小限に抑えることができることになり、作業を容易に行うことができ、また、カッターにより基礎周壁部4aの外周囲に近接して存在する地下ケーブルや各種流体用埋設管等の埋設物に傷を付けるおそれがない。また、既設管2における所定の範囲の部分を環状に切除する作業に際し、既設管2の端部前面のインバートコンクリート9を切除する必要がなく、これにより工事の作業性及び作業時間の短縮化が図れる。
【0117】
また、既設管2の内側に、環状切除部12を跨いで鋼管16を嵌合し、環状切除部12及び環状溝18内に弾性変形可能な弾性止水環状部13を環状切除部12,環状溝18及び鋼管16との間で液密に設けるので、この弾性止水環状部13が弾性止水材を型枠に注入することにより現場成形されて設けられる場合、鋼管16が弾性止水環状部13の成形型枠を兼ねるものとなり、弾性止水環状部13を成形するための型枠を用意する必要がなくなる。
【0118】
また、既設管2及び鋼管16の内側にライニング管14を配置するので、鋼管16とライニング管14が既設管2としての役割を果たし、そして、地震が発生したとき、地震により生じる鋼管16及びライニング管14で構成される既設管2と人孔3の周壁4との動きの違いを弾性止水環状部13で吸収するが、弾性止水環状部13は人孔3の周壁4の管孔5内に形成した環状切除部12及びこれと連通する環状溝18内に設けられるので、弾性止水環状部13の肉厚が大きくとれ、弾性止水環状部13の変形量も大きいことから、ライニング管14で構成される既設管2と人孔3の周壁4との動きの違いを効果的に吸収することができ、既設管人孔接続部6が地震動で破壊されるのを防止することができる。また、地震による既設管2と人孔3の周壁4との動きの違いにより、管孔5内に嵌合している既設管2bの端部に破壊があっても鋼管16とライニング管14で十分補うことができ、既設管2としての機能を損ねるおそれはない。
【符号の説明】
【0119】
1 地盤
2 既設管
3 人孔
4 周壁
4a 基礎周壁部
4b 成型周壁部
5 管孔
6 既設管人孔接続部
7 開口部
8 蓋
9 インバートコンクリート
10 内周壁面
11 外周壁面
12 環状切除部
13 弾性止水環状部
14 ライニング管
15 筒状ライニング材
15a シート状ライニング材
16 鋼管
17 注入孔
18 環状溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管が人孔の周壁の管孔に嵌合して接続されている既設管人孔接続部の耐震化を図る既設管人孔接続部の耐震化工法であって、
前記人孔の周壁の前記管孔に嵌合している前記既設管の、前記人孔の周壁の内周壁面と外周壁面を超えない所定の範囲の部分を環状に切除して前記人孔の周壁の前記管孔内に環状切除部を形成する工程と、
前記人孔の周壁の前記管孔内に形成した環状切除部内に弾性変形可能な弾性止水環状部を環状切除部との間で液密に設ける工程と、
前記既設管及び前記弾性止水環状部の内側に、前記弾性止水環状部を跨いでライニング管を配置する工程を含むことを特徴とする既設管人孔接続部の耐震化工法。
【請求項2】
既設管が人孔の周壁の管孔に嵌合して接続されている既設管人孔接続部の耐震化を図る既設管人孔接続部の耐震化工法であって、
前記人孔の周壁の前記管孔に嵌合している前記既設管の、前記人孔の周壁の内周壁面と外周壁面を超えない所定の範囲の部分を環状に切除して前記人孔の周壁の前記管孔内に環状切除部を形成する工程と、
前記人孔の周壁の前記管孔内に形成した環状切除部内に弾性変形可能な弾性止水環状部を環状切除部との間で液密に設ける工程と、
前記既設管及び前記弾性止水環状部の内側に、前記弾性止水環状部を跨いで且つ前記弾性止水環状部との間で液密となる鋼管を嵌合する工程と、
前記既設管及び前記鋼管の内側にライニング管を配置する工程を含むことを特徴とする既設管人孔接続部の耐震化工法。
【請求項3】
既設管が人孔の周壁の管孔に嵌合して接続されている既設管人孔接続部の耐震化を図る既設管人孔接続部の耐震化工法であって、
前記人孔の周壁の前記管孔に嵌合している前記既設管の、前記人孔の周壁の内周壁面と外周壁面を超えない所定の範囲の部分を環状に切除して前記人孔の周壁の前記管孔内に環状切除部を形成する工程と、
前記既設管の内側に、前記環状切除部を跨いで鋼管を嵌合する工程と、
前記人孔の周壁の前記管孔内に形成した環状切除部内に弾性変形可能な弾性止水環状部を環状切除部及び鋼管との間で液密に設ける工程と、
前記既設管及び前記鋼管の内側にライニング管を配置する工程を含むことを特徴とする既設管人孔接続部の耐震化工法。
【請求項4】
既設管が人孔の周壁の管孔に嵌合して接続されている既設管人孔接続部の耐震化を図る既設管人孔接続部の耐震化工法であって、
前記人孔の周壁の前記管孔に嵌合している前記既設管の、前記人孔の周壁の内周壁面と外周壁面を超えない範囲の一部分を環状に切除して前記人孔の周壁の前記管孔内に環状切除部を形成する工程と、
前記人孔の周壁の前記管孔の内壁に、該内壁における前記既設管の一部分を切除して形成された環状切除部に開放された部分を、前記環状切除部に沿って環状に切除して前記環状切除部と連通する環状溝を形成する工程と、
前記人孔の周壁の前記管孔内に形成した前記環状切除部及び環状溝内に弾性変形可能な弾性止水環状部を前記環状切除部及び環状溝との間で液密に設ける工程と、
前記既設管及び前記弾性止水環状部の内側に、前記弾性止水環状部を跨いでライニング管を配置する工程を含むことを特徴とする既設管人孔接続部の耐震化工法。
【請求項5】
既設管が人孔の周壁の管孔に嵌合して接続されている既設管人孔接続部の耐震化を図る既設管人孔接続部の耐震化工法であって、
前記人孔の周壁の前記管孔に嵌合している前記既設管の、前記人孔の周壁の内周壁面と外周壁面を超えない範囲の一部分を環状に切除して前記人孔の周壁の前記管孔内に環状切除部を形成する工程と、
前記人孔の周壁の前記管孔の内壁に、該内壁における前記既設管の一部分を切除して形成された環状切除部に開放された部分を、前記環状切除部に沿って環状に切除して前記環状切除部と連通する環状溝を形成する工程と、
前記人孔の周壁の前記管孔内に形成した前記環状切除部及び環状溝内に弾性変形可能な弾性止水環状部を前記環状切除部及び環状溝との間で液密に設ける工程と、
前記既設管及び前記弾性止水環状部の内側に、前記弾性止水環状部を跨いで且つ前記弾性止水環状部との間で液密となる鋼管を嵌合する工程と、
前記既設管及び前記鋼管の内側にライニング管を配置する工程を含むことを特徴とする既設管人孔接続部の耐震化工法。
【請求項6】
既設管が人孔の周壁の管孔に嵌合して接続されている既設管人孔接続部の耐震化を図る既設管人孔接続部の耐震化工法であって、
前記人孔の周壁の前記管孔に嵌合している前記既設管の、前記人孔の周壁の内周壁面と外周壁面を超えない範囲の一部分を環状に切除して前記人孔の周壁の前記管孔内に環状切除部を形成する工程と、
前記人孔の周壁の前記管孔の内壁に、該内壁における前記既設管の一部分を切除して形成された環状切除部に開放された部分を、前記環状切除部に沿って環状に切除して前記環状切除部と連通する環状溝を形成する工程と、
前記既設管の内側に、前記環状切除部を跨いで鋼管を嵌合する工程と、
前記人孔の周壁の前記管孔内に形成した環状切除部及び環状溝内に弾性変形可能な弾性止水環状部を環状切除部,環状溝及び鋼管との間で液密に設ける工程と、
前記既設管及び前記鋼管の内側にライニング管を配置する工程を含むことを特徴とする既設管人孔接続部の耐震化工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2010−248806(P2010−248806A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100314(P2009−100314)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000220675)東京都下水道サービス株式会社 (98)
【出願人】(302059953)株式会社メーシック (24)
【Fターム(参考)】